(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128338
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】鋳型切削用のサンドカッタ
(51)【国際特許分類】
B22C 23/00 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B22C23/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032624
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高岡 英誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 繁佳
(72)【発明者】
【氏名】平山 達徳
【テーマコード(参考)】
4E094
【Fターム(参考)】
4E094BB41
4E094CC71
4E094EE07
(57)【要約】
【課題】金枠高さより高い盛上げ鋳型の反キャビティ面を、任意の高さにサンドカットすることができる鋳型切削用のサンドカッタを提供する。
【解決手段】金枠高さより高く盛上げて造型された盛上げ鋳型の反キャビティ面をサンドカットする鋳型切削用のサンドカッタであって、カッタ刃26が取り付けられた刃物台20と、刃物台を昇降させるとともに、昇降途中で停止、および前記刃物台の高さを保持することができる刃物台昇降アクチュエータ19と、刃物台の高さを連続的に検出できる位置検出センサとを有するサンドカット機構14を備え、サンドカット機構を横行アクチュエータ34により横行可能としたものである。カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型の破損を防止する押さえ板39を持つバックアップユニット32を備えることが好ましい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタ刃が取り付けられた刃物台と、前記刃物台を昇降させるとともに、昇降途中で停止、および前記刃物台の高さを保持することができる刃物台昇降アクチュエータと、前記刃物台の高さを検出できる位置検出センサとを有するサンドカット機構を備え、前記サンドカット機構を横行アクチュエータにより横行可能とされた鋳型切削用のサンドカッタ。
【請求項2】
カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型に押し当て可能とされるとともに、移動の途中で停止、および停止位置での保持できる押さえ板と、前記押さえ板を昇降させるとともに、昇降途中で停止、および停止位置で保持できる昇降アクチュエータと、前記押さえ板の高さを検出できる第二位置検出センサとを有したバックアップユニットを備えた請求項1に記載の鋳型切削用のサンドカッタ。
【請求項3】
前記バックアップユニットの押さえ板は、カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型の破損を防止するため、前記盛上げ鋳型に押し当て可能とされている請求項2に記載の鋳型切削用のサンドカッタ。
【請求項4】
造型後の鋳型高さ情報に基づき、前記位置検出センサを用いて事前に設定されたサンドカット量をサンドカットする高さに、前記刃物台の高さが制御される請求項1に記載の鋳型切削用のサンドカッタ。
【請求項5】
それぞれの模型ごとに設定する鋳型を造型する際に必要な造型条件に事前にインプットしておいた鋳型高さに、前記位置検出センサを用いて前記刃物台の高さが制御される請求項1に記載の鋳型切削用のサンドカッタ。
【請求項6】
カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型に押し当て可能とされるとともに、移動の途中で停止、および停止位置での保持できる押さえ板と、前記押さえ板を昇降させるとともに、昇降途中で停止、および停止位置で保持できる昇降アクチュエータと、前記押さえ板の高さを検出できる第二位置検出センサとを有したバックアップユニットを備え、
前記制御された刃物台の高さに連動して、前記第二位置検出センサを用いて前記バックアップユニットの押さえ板の高さを制御する請求項4または5に記載の鋳型切削用のサンドカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金枠高さより高く盛上げて造型された盛上げ鋳型の反キャビティ面を、任意の高さにサンドカットすることができる移動式の鋳型切削用のサンドカッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金枠高さの制限を受けることなく鋳物素材を生産するため、上鋳型を金枠高さよりも高く造型し、その上に重錘を載せる設備の需要がある。このため金枠高さより高い盛上げ鋳型の反キャビティ面を、任意の高さにサンドカットする必要が生じるようになった。
【0003】
特許文献1には、カッタ刃取付台を鋳型の搬送ラインの下方に設置された水平な回転軸に支持させ、シリンダを用いてカッタ刃取付台を回転させてカッタ刃を上昇させ、搬送ラインを移動する鋳型の余剰砂を切削する固定式のサンドカッタが記載されている。しかしこの構造はカッタ刃取付台の回転軸が固定されているため、盛上げ鋳型の反キャビティ面を、任意の高さでサンドカットすることはできなかった。
【0004】
特許文献2には、鋳型の搬送ラインの下方で搬送ラインと直交する方向に刃物を往復移動させ、余剰砂を切削する移動式のサンドカッタが記載されている。しかし往復移動の経路は固定されておりサンドカット面の高さを変えることはできないため、盛上げ鋳型の反キャビティ面を、任意の高さでサンドカットすることはできなかった。
【0005】
また、特許文献1の固定式のサンドカッタにより金枠高さより高く盛上げて造型された盛上げ鋳型の反キャビティ面をサンドカットする場合、カッタ刃の行き端側の盛上げ鋳型がサンドカット時の反力にて破損し、鋳型を金枠高さよりも高く造型する利点を損なう結果となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-199305号公報
【特許文献2】特開2014-057988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の第1の目的は、金枠高さより高い盛上げ鋳型の反キャビティ面を、任意の高さにサンドカットすることができる鋳型切削用のサンドカッタを提供することである。また本発明の第2の目的は、サンドカット時の反力によるカッタ刃の行き端側の鋳型の破損を防止することができる鋳型切削用のサンドカッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した第1の目的を解決するためになされた請求項1の発明は、カッタ刃が取り付けられた刃物台と、前記刃物台を昇降させるとともに、昇降途中で停止、および前記刃物台の高さを保持することができる刃物台昇降アクチュエータと、前記刃物台の高さを検出できる位置検出センサとを有するサンドカット機構を備え、前記サンドカット機構を横行アクチュエータにより横行可能とされたものである。
【0009】
また上記した第2の目的を解決するためになされた請求項2の発明は、請求項1の発明において、カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型に押し当て可能とされるとともに、移動の途中で停止、および停止位置での保持できる押さえ板と、前記押さえ板を昇降させるとともに、昇降途中で停止、および停止位置で保持できる昇降アクチュエータと、前記押さえ板の高さを検出できる第二位置検出センサとを有したバックアップユニットを備えたものである。前記バックアップユニットの押さえ板は、カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型の破損を防止するため、前記盛上げ鋳型に押し当て可能とされている。
【0010】
請求項1の鋳型切削用のサンドカッタは、造型後の鋳型高さ情報に基づき、前記位置検出センサを用いて事前に設定されたサンドカット量をサンドカットする高さに、前記刃物台の高さが制御されるものとすることができる。あるいは、それぞれの模型ごとに設定する鋳型を造型する際に必要な造型条件に事前にインプットしておいた鋳型高さに、前記位置検出センサを用いて前記刃物台の高さが制御されるものとすることができる。さらに、カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型に押し当て可能とされるとともに、移動の途中で停止、および停止位置での保持できる押さえ板と、前記押さえ板を昇降させるとともに、昇降途中で停止、および停止位置で保持できる昇降アクチュエータと、前記押さえ板の高さを検出できる第二位置検出センサとを有したバックアップユニットを備え、前記制御された刃物台の高さに連動して、前記第二位置検出センサを用いて前記バックアップユニットの押さえ板の高さを制御することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鋳型切削用のサンドカッタによれば、金枠高さより高い盛上げ鋳型の反キャビティ面を、任意の高さにサンドカットすることができる。またバックアップユニットを備えた本発明のサンドカッタによれば、サンドカット時の反力によるカッタ刃の行き端側の鋳型の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】反キャビティ面を上枠の端レベルでサンドカットした上鋳型に、重錘を載せた枠付き鋳型を示す正面図である。
【
図2】反キャビティ面を上枠の端レベルより高い位置でサンドカットした上鋳型に、重錘を載せた枠付き鋳型を示す正面図である。
【
図4】実施形態のサンドカッタを示す正面図であり、金枠の端よりも高い位置で、盛上げ鋳型の反キャビティ面をサンドカットする場合の原位置を示している。
【
図5】サンドカッタの平面図である。(
図4のA-A矢視図)
【
図6】サンドカッタの側面図である。(
図4のB-B矢視図)
【
図7】バックアップユニットの側面図である。(
図4のC-C矢視図)
【
図8】金枠の端レベルで下鋳型の反キャビティ面をサンドカットする場合の原位置を示す正面図である。
【
図9】サンドカッタの部分側面図である。(
図8のD-D矢視図)
【
図11】反キャビティ側の金枠の端より最も高い位置で盛上げ鋳型をサンドカットする前の状態を示す正面図である。(バックアップユニットの抑え板前進)
【
図12】反キャビティ側の金枠の端より少し高い位置で盛上げ鋳型をサンドカットする前の状態を示す正面図である。(バックアップユニットの抑え板前進)
【
図13】反キャビティ側の金枠の端より高い位置で盛上げ鋳型をサンドカットした状態を示す正面図である。
【
図14】反キャビティ側の金枠の端より高い位置で盛上げ鋳型をサンドカットした後、バックアップユニットの押さえ板を清掃する状態を示す正面図である。
【
図15】反キャビティ側の金枠の端レベルで下鋳型をサンドカットした状態を示す正面図である。(バックアップユニットは作動させず)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は定盤台車4に下鋳型2aと上鋳型2bを載せた枠付き鋳型を示す正面図である。上鋳型2bは反キャビティ面5を上枠3bの端レベルでサンドカットされており、その上に重錘1が載せられている。
図2は定盤台車4に下鋳型2aと盛上げ鋳型2cを載せた枠付き鋳型を示す正面図である。盛上げ鋳型2cは反キャビティ面5を上枠3bの端レベルよりも高い位置でサンドカットされており、その上に重錘1が載せられている。このように定盤台車4に下鋳型2a、上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2c、重錘1を載せるために、定盤台車4と接する下鋳型2aの反キャビティ面5や、重錘1と接する上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2cの反キャビティ面5を、平面にサンドカットする必要がある。なお3aは下枠である。
【0014】
(全体構成)
図3は鋳型造型ライン6の全体を示す正面図である。鋳型造型ライン6の入側には枠送りプッシャ7が配置され、出側にはクッション装置8が配置されている。上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2cと下鋳型2aは、枠送りプッシャ7とクッション装置8に挟まれた状態で鋳型造型ライン6のローラコンベア9上を矢印方向に1枠分ずつ搬送される。なお、上鋳型2b、2cと下鋳型2aはローラコンベア9上を交互に搬送される。
【0015】
鋳型造型ライン6にはその入側から出側に向けて、空枠搬入トラバーサ10、空枠分離装置11、造型機12、上下枠反転機13、本発明のサンドカッタ31、定盤セット装置15、上枠反転機16、枠合わせ装置17、合わせ枠搬出トラバーサ18などが配置されている。なお、上下鋳型の搬送に関係がない湯口掘り装置、ガス穴明け装置、中子セット装置等は、本図から省いている。
【0016】
空枠搬入トラバーサ10で鋳型造型ライン6に搬入された上枠3b、下枠3aは空枠分離装置11で分離され、上枠3bを先行させて交互に造型機12に送られる。造型機12では上枠3bの内部に上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2cが造型され、下枠3aの内部に下鋳型2aが造型される。造型機12は、造型後の鋳型高さを検出する機能を備えている。造型された上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2c、下鋳型2aは上下枠反転機13で上下を反転され、反キャビティ面5を下側としてローラコンベア9上に載せられる。
【0017】
次に下鋳型2aは反キャビティ面5を下枠3aの端レベルに合わせた位置で、また上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2cは反キャビティ面5をそれぞれ設定された高さに合わせた位置で、本発明のサンドカッタ31によりサンドカットされる。本発明のサンドカッタ31の構造と作用については後述する。
【0018】
定盤台車4は図示しない別ルートで定盤セット装置15に搬送される。定盤セット装置15において下鋳型2aに定盤台車4をセットされ、上枠反転機16で上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2cのみが再反転され、反キャビティ面5を上側とする。次に枠合わせ装置17で上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2cを吊り上げ、枠合わせ装置17の下に搬入された下鋳型2aの上に上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2cを載せ、枠合わせを完了する。枠合わせ後の上下鋳型は合わせ枠搬出トラバーサ18にて後工程に搬出される。そしてサンドカットされた上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2cの上面に、図示しない後工程において重錘1が載せられ、注湯される。
【0019】
(サンドカッタ)
以下に
図4~
図6を参照しつつ、サンドカッタ31の構造を説明する。サンドカッタ31は鋳型造型ライン6のローラコンベア9の下側に設けられる。
図5に示すように、鋳型の搬送方向と直交する方向に2本のガイドピン35が配置され、ガイドピンホルダ33上に載せられたサンドカット機構14が、横行アクチュエータ34により横行可能な構造となっている。ここで横行とは、鋳型の搬送方向と直交する方向に移動することを意味する。
【0020】
サンドカット機構14はその左右のフレームに縦向きに固定された2本のガイドピン21を備え、左右のガイドピンホルダ22を刃物台20でつなぎ、刃物台昇降アクチュエータ19により刃物台20を昇降できる構造となっている。刃物台昇降アクチュエータ19は、センタークローズの3ポジション電磁弁で昇降させる油圧シリンダまたはブレーキ付きの電動シリンダを使用し、昇降の途中で停止、および停止位置で保持できる機能を有するものとする。この実施形態ではサンドカット機構14のコンパクト化を図るため、センタークローズの3ポジション電磁弁で昇降させる油圧シリンダを用いている。
【0021】
ガイドピン21の片側近くに、ガイドピン21と平行に刃物台20の高さを連続的に検出できる位置検出センサ23が固定されている。
図6に示すように、ガイドピン21に沿って昇降するガイドピンホルダ22にポインタ25を取付けて刃物台20の高さを検出させる。なおこの部分の詳細は
図10に示されている。この実施形態では位置検出センサ23はリニアエンコーダであるが、その代わりに、測距センサーを用いて刃物台20の高さを検出してもよい。
【0022】
図4、
図5に示されるように、刃物台20には鋳型の全長にわたる長さのカッタ刃26が取り付けられている。この実施形態ではカッタ刃26は前後2列に設けられているが、1列であってもよい。
図4には上枠3b内に造型された盛上げ鋳型2cがカッタ刃26によりサンドカットされる様子が示されている。
【0023】
上鋳型2bまたは盛上げ鋳型2c、下鋳型2aはローラ36とサイドローラ37で構成されたローラコンベア9上を搬送される。搬送された鋳型が停止した状態で、
図4のように横行アクチュエータ34によりサンドカット機構14を横行させれば、
図4にSとして示した部分がサンドカットされる。
【0024】
なお、
図4~
図6は盛上げ鋳型2cの上枠3bよりも高い位置でサンドカットする状態を示す図であり、
図8~
図9は下鋳型2aの反キャビティ面5の下枠3aの端レベルでサンドカットする状態を示す図である。
【0025】
(サンドカットレベル)
以下に、サンドカットレベルの制御について説明する。ここで、サンドカット量とは造型後の鋳型高さから切削される砂鋳型の高さのことを指し、サンドカットレベルとはサンドカット後に求められる砂鋳型の高さのことを指すものとする。位置検出センサ23で検出した刃物台20の高さを、図示しない制御手段から指示されたレベルに合致させることで、サンドカットレベルを制御する。サンドカットレベルの制御は次の2種を選択することができる。一つ目は、造型機12から送られてくる造型後の鋳型高さ情報に基づく方法である。すなわち、位置検出センサ23により検出される刃物台20の高さを、造型後の鋳型高さ情報と、事前にインプットしておいたサンドカット量とに基づいて制御する。例えば、サンドカット量を1mmとインプットした場合、造型後の鋳型高さを1mmサンドカットする制御とする。このように造型後の鋳型高さを基準にサンドカットすることにより、上枠3bの高さ以上に盛上げ造型した鋳型をサンドカットする際の反力による盛上げ鋳型の破損を低減することができる。
【0026】
二つ目は、それぞれの模型ごとに設定する鋳型を造型する際に必要な造型条件に事前にインプットしておいた鋳型高さに、刃物台20の高さを制御する方法である。例えばサンドカット後の鋳型高さを上枠3bの高さ+50mmにインプットした場合、造型後の鋳型高さが変化しても常に上枠3bの高さ+50mmにサンドカットする制御とする。各模型ごとにサンドカット後の鋳型高さを一定とすることにより、注湯条件(取鍋からキャビティまでの高さ)を一定にすることができる。
【0027】
なお、上記した実施形態では上鋳型のみを金枠の高さ以上に盛上げ造型したが、下鋳型も同様に金枠の高さ以上に盛上げ造型し、サンドカットしてもよい。
【0028】
(バックアップユニット)
次に、カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型の破損を防止するバックアップユニット32について説明する。
図7に示すように、カッタ刃行き端側の固定フレーム45には2本のガイドピン46が縦方向に設けられており、昇降台41はその両側のガイドピンホルダ47をこれらのガイドピン46に保持させ、昇降アクチュエータ40により昇降される。昇降アクチュエータ40は昇降途中で停止、および停止位置を保持可能なセンタークローズの3ポジション電磁弁で昇降させる油圧シリンダまたはブレーキ付きの電動シリンダを使用し、前記した鋳型のサンドカットレベルに追従して昇降させる。次に述べる通り昇降台41には押さえ板39が搭載されており、押さえ板39の高さは第二位置検出センサ42により連続的に検出される。第二位置検出センサ42はガイドピン46と平行に固定され、昇降するガイドピンホルダ47にポインタ48を取り付け、押さえ板39の高さを検出する。第二位置検出センサ42としてこの実施形態ではリニアエンコーダを用いたが、その代わりに、測距センサーを用いて刃物台20の高さを検出してもよい。
【0029】
図7に示されるように、この昇降台41には水平に2本のガイドピン44が設けられており、押さえ板39はその両側のガイドピンホルダ43をこれらのガイドピン44に保持させ、
図11に示されるように、水平アクチュエータ38によりカッタ刃行き端側の盛上げ鋳型2cに向けて移動される。水平アクチュエータ38も昇降アクチュエータ40と同様に、途中停止位置を保持可能なセンタークローズの3ポジション電磁弁で昇降させる油圧シリンダまたはブレーキ付きの電動シリンダを使用することが望ましい。押さえ板39は盛上げ鋳型2cの側面に密着するまで前進し、停止する。
【0030】
隙間を生ずることなく押さえ板39を盛上げ鋳型2cに密着させるため、水平アクチュエータ38はストロークに余裕を持ち、かつ押さえ板39の押し付け力で盛上げ鋳型2cを壊すことがないものとする必要がある。そこでこの実施形態では押さえ板39の押し付け力を制御できるように、水平アクチュエータ38の油圧回路に減圧弁を設けた。また、図示しない圧力スイッチにより油圧回路の圧力上昇を検出し、押さえ板39が盛上げ鋳型2cに密着したことを検出したときにセンタークローズの3ポジション電磁弁を中立位置に戻すことにより、押さえ板39の押出位置を保持させている。このようにセンタークローズの3ポジション電磁弁で押さえ板39の押出位置を保持することにより、減圧された押出力でもサンドカット機構14を横行させる横行アクチュエータ34の推力に負けることなく、盛上げ鋳型2cをバックアップすることができる。
【0031】
サンドカット機構14は制御手段から指示されたサンドカット高さに連動して、第二位置検出センサ42を用いて押さえ板39の高さを制御する。例えば、押さえ板39の下面がカッタ刃26の先端よりも5mm高い位置になるように制御する。このようにカッタ刃26の高さに連動して押さえ板39の高さを制御することにより、カッタ刃26に近接した位置で盛上げ鋳型2cをバックアップする押さえ板39とカッタ刃26との衝突を防止することができる。
【0032】
なお押さえ板39は高さ方向の厚さを有しているため、金枠と干渉しない高さまでしか盛上げ鋳型2cをバックアップすることができない。もし押さえ板39が金枠と干渉してしまう取合となる低い盛上げ鋳型2cをサンドカットする場合には、バックアップユニット32を作動させず、盛上げ鋳型2cをバックアップすることなくサンドカットする制御を行わせる。
【0033】
(作用)
次に本発明の鋳型切削用のサンドカッタの作用を説明する。
図11は反キャビティ側の上枠3bより最も高い位置で盛上げ鋳型2cをサンドカットするために、サンドカット機構14のカッタ刃26とバックアップユニット32の押さえ板39を最も低い位置とし、押さえ板39を盛上げ鋳型2cに密着させた状態を示している。この状態から
図13に示すようにカッタ刃26を横行させ、
図11にSとして示された部分をサンドカットする。カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型2cは押さえ板39に支えられバックアップされているので、サンドカット時に破壊されることがない。その後に
図14に示すように、バックアップユニット32の押さえ板39を後退させたうえで上昇させ、固定ブラシ49で押さえ板39の鋳型押え面を清掃することが好ましい。
【0034】
図12は、反キャビティ側の上枠3bより少し高い位置で盛上げ鋳型2cをサンドカットするために、サンドカット機構14のカッタ刃26とバックアップユニット32の押さえ板39を中間高さとした図である。
図12中に仮想線で示したように押さえ板39を前進させて盛上げ鋳型2cに密着させ、カッタ刃26を横行させて
図12にSとして示された部分をサンドカットする。
【0035】
前記したように、押さえ板39は高さ方向の厚さを有しているため、
図12よりも高い位置まで上昇させると金枠と干渉してしまい、押さえ板39を盛上げ鋳型2cに密着させてバックアップすることができない。このため
図12よりも高い位置で盛上げ鋳型2cをサンドカットする場合には、バックアップユニット32を作動させず、盛上げ鋳型2cをバックアップすることなくサンドカットする。
【0036】
図15は反キャビティ側の下枠3aの端レベルで下鋳型2aをサンドカットする状態を示している。この場合には下鋳型2aに押さえ板39を密着させる部位がないので、バックアップユニット32を作動させずにサンドカットが行われる。この場合にはカッタ刃行き端側で下鋳型2aが破壊されるおそれもない。
【0037】
(まとめ)
以上に説明したとおり、本発明には次のようなメリットがある。
(1)重錘を載せることにより注湯時の上枠の浮き上がりを防止する造型ラインにおいて、金枠高さより高い鋳型を造型できる造型機と組み合わせることにより、金枠高さ以上に大きな鋳物を生産することが可能となる。
(2)カッタ刃行き端側の盛上げ鋳型をバックアップすることにより、金枠高さ以上に盛上げ造型した鋳型をサンドカットする際の反力による盛上げ鋳型の破損を防止することができる。
(3)造型後の鋳型高さを検出する機能を備える造型機と組み合わせ、造型後の鋳型高さを基準としてサンドカットすることにより、金枠高さ以上に盛上げ造型した鋳型をサンドカットする際の反力による盛上げ鋳型の破損を確実に防止することができる。
(4)造型条件に事前にインプットしておいた鋳型高さを基準としてサンドカットすることにより、注湯条件(取鍋からキャビティまでの高さ)を一定にすることができる。
(5)刃物台の高さに連動させて押さえ板を昇降させることにより、カッタ刃に近接した位置で鋳型をバックアップする押さえ板とカッタ刃との衝突を防止することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 重錘
2a 下鋳型
2b 上鋳型
3a 下枠
3b 上枠
4 定盤台車
5 反キャビティ面
6 鋳型造型ライン
7 枠送りプッシャ
8 クッション装置
9 ローラコンベア
10 空枠搬入トラバーサ
11 空枠分離装置
12 造型機
13 上下枠反転機
14 サンドカット機構
15 定盤セット装置
16 上枠反転機
17 枠合わせ装置
18 合わせ枠搬出トラバーサ
19 刃物台昇降アクチュエータ
20 刃物台
21 ガイドピン
22 ガイドピンホルダ
23 位置検出センサ
24 フレーム
25 ポインタ
26 カッタ刃
31 サンドカッタ
32 バックアップユニット
33 ガイドピンホルダ
34 横行アクチュエータ
35 ガイドピン
36 ローラ
37 サイドローラ
38 水平アクチュエータ
39 押さえ板
40 昇降アクチュエータ
41 昇降台
42 第二位置検出センサ
43 ガイドピンホルダ
44 ガイドピン
45 固定フレーム
46 ガイドピン
47 ガイドピンホルダ
48 ポインタ
49 固定ブラシ
S 鋳型のサンドカットされる部分