IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人日本原子力研究開発機構の特許一覧

<>
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図1
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図2
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図3
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図4
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図5
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図6
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図7
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図8
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図9
  • 特開-粒子製造方法及び粒子製造装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128352
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】粒子製造方法及び粒子製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/06 20060101AFI20230907BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B01J2/06
C01B33/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032647
(22)【出願日】2022-03-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)一般社団法人日本原子力学会、2021年春の年会・予稿集(ダウンロード)、令和3年3月3日 (2)一般社団法人日本原子力学会、2021年春の年会(オンライン開催)、令和3年3月19日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、文部科学省、国家課題対応型研究開発推進事業原子力システム研究開発事業「合理的なMA回収工程の構築に向けた溶媒抽出/低圧損抽出クロマトグラフィを組み合わせたハイブリッド型プロセスの開発」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 創
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 康典
(72)【発明者】
【氏名】安倍 弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 健太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一郎
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072BB16
4G072CC13
4G072DD01
4G072EE10
4G072GG02
4G072GG03
4G072GG04
4G072HH18
4G072JJ33
4G072JJ45
4G072MM23
4G072MM31
4G072MM36
4G072QQ06
4G072RR12
4G072SS04
4G072UU11
(57)【要約】
【課題】粒子径が従来よりも大きく、粒子径の均一性が比較的高い粒子を製造することができる粒子製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る粒子製造方法は、組成物を、振動するノズルから、撹拌機により撹拌された溶媒中に滴下し、組成物が含まれる粒子を造粒する造粒工程(ステップS1)と、前記造粒工程(ステップS1)で得られた溶媒を含む粒子から、溶媒を除去し、粒子を得る溶媒除去工程(ステップS2)と、を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を、振動するノズルから、撹拌機により撹拌された溶媒中に滴下し、組成物が含まれる粒子を造粒する造粒工程と、
前記造粒工程で得られた溶媒を含む粒子から、溶媒を除去し、粒子を得る溶媒除去工程と、を含むことを特徴とする粒子製造方法。
【請求項2】
前記溶媒除去工程で得られた粒子を乾燥する乾燥工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の粒子製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程で乾燥された粒子を焼成する焼成工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の粒子製造方法。
【請求項4】
前記焼成工程で焼成された粒子を洗浄する洗浄工程をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の粒子製造方法。
【請求項5】
上下振動するノズルと、
前記ノズルに組成物を供給する配管と、
撹拌機により撹拌された溶媒中に、前記ノズルから滴下される組成物による粒子が造粒される造粒槽と、が少なくとも含まれた造粒部を有することを特徴とする粒子製造装置。
【請求項6】
組成物は、第1組成物と第2組成物とが混合されたものであることを特徴とする請求項5に記載の粒子製造装置。
【請求項7】
第1組成物と第2組成物との混合にはスタティックミキサーが用いられることを特徴とする請求項6に記載の粒子製造装置。
【請求項8】
第1組成物がシリカコロイド溶液であり、
第2組成物が気孔形成剤溶液であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の粒子製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィーのカラムなどに充填可能な多孔質粒子の製造に好適な粒子製造方法及び粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
造粒などにより製造される粒子は、例えば、触媒などの吸着材担体(固定相)として利用することができ、触媒を担持したこのような粒子は、溶液中の金属の分離や除去、或いは、医薬・食品・化学工業分野における化合物の分離・精製といった用途に用いることができる。
【0003】
上記のような粒子は、例えば、凍結乾燥法を利用した造粒などにより製造することが可能である。特許文献1(国際公開番号WO2019/175954)には、連続的に供給される原液を冷却することにより凍結造粒用チャンバ内で凍結造粒体を生成し、生成した前記凍結造粒体を凍結乾燥して乾燥粉体を製造する噴霧凍結造粒乾燥粉体製造に関する技術が記載されている。
【特許文献1】国際公開番号WO2019/175954
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高レベル放射性廃液からマイナーアクチニドを分離するため実施される抽出クロマトグラフィーにおいては、多孔質のシリカ粒子を担体とする吸着材を利用した研究が進められている。
【0005】
上記のような抽出クロマトグラフィーでは、カラムに充填した多孔質粒子に対し、高レベル放射性廃液を送り込む際には、安全性を高めるために送液における加圧を可能な限り避けることが好ましい。
【0006】
しかしながら、従来の方法により造粒される粒子では、粒径が小さいためカラムにおける圧力損失が大きくなってしまい、カラムに充填した多孔質の造粒粒子に対し、高レベル放射性廃液を送り込む際には、所定の加圧力で送液を行う必要があり、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような問題点を解決するために、本発明に係る粒子製造方法は、組成物を、振動するノズルから、撹拌機により撹拌された溶媒中に滴下し、組成物が含まれる粒子を造粒する造粒工程と、前記造粒工程で得られた溶媒を含む粒子から、溶媒を除去し、粒子を得る溶媒除去工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る粒子製造方法は、前記溶媒除去工程で得られた粒子を乾燥する乾燥工程をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る粒子製造方法は、前記乾燥工程で乾燥された粒子を焼成する焼成工程をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る粒子製造方法は、前記焼成工程で焼成された粒子を洗浄する洗浄工程をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る粒子製造装置は、上下振動するノズルと、前記ノズルに組成物を供給する配管と、撹拌機により撹拌された溶媒中に、前記ノズルから滴下される組成物による粒子が造粒される造粒槽と、が少なくとも含まれた造粒部を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る粒子製造装置は、組成物は、第1組成物と第2組成物とが混合されたものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る粒子製造装置は、第1組成物と第2組成物との混合にはスタティックミキサーが用いられることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る粒子製造装置は、第1組成物がシリカコロイド溶液であり、第2組成物が気孔形成剤溶液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る粒子製造方法は、組成物を、振動するノズルから、撹拌機により撹拌された溶媒中に滴下し、組成物が含まれる粒子を造粒する造粒工程と、前記造粒工程で得られた溶媒を含む粒子から、溶媒を除去し、粒子を得る溶媒除去工程と、を含んでおり、このような粒子製造方法によれば、粒子径が従来よりも大きく、粒子径の均一性が比較的高い粒子を製造することができ、抽出クロマトグラフィーのカラムに用いた場合、圧力損失が小さくなり、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
【0016】
さらに、請求項3、請求項4に係る粒子製造方法によれば、粒子径が大きく、かつ、細孔容積及び細孔径の大きい多孔質粒子を得ることができるので、カラムに充填して用いた場合、圧力損失が小さくなり、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
【0017】
また、本発明に係る粒子製造装置によれば、上下振動するノズルと、前記ノズルに組成物を供給する配管と、撹拌機により撹拌された溶媒中に、前記ノズルから滴下される組成物による粒子が造粒される造粒槽と、が少なくとも含まれた造粒部を有しており、このような本発明に係る粒子製造装置によれば、粒子径が従来よりも大きく、粒子径の均一性が高い粒子を製造することができ、これを抽出クロマトグラフィーのカラムに用いた場合、圧力損失が小さくなり、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
【0018】
さらに、請求項8に係る粒子製造装置によれば、粒子径が大きく、かつ、細孔容積及び細孔径の大きい多孔質粒子を製造できるので、細孔径の観点からも、カラムに充填して用いた場合、圧力損失が小さくなり、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
【0019】
また、本発明に係る粒子製造方法、粒子製造装置においては、中実球状の多孔質粒子であって、比較的強度が高い多孔質粒子が得られると共に、粒子径の均一性が比較的高い多孔質粒子が製造できるものである。このような本発明に係る粒子製造方法、粒子製造装置によれば、多孔質粒子の製造後に、分級操作が省力化されるので、製造コストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る粒子製造方法のフローを示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る粒子製造装置1における造粒部10の装置構成を示す図である。
図3】(A)加振器20による上下振動がない場合のノズル21からの混合溶液の液滴を撮影した写真、(B)加振器20による上下振動がある場合のノズル21からの混合溶液の液滴を撮影した写真。
図4】本発明の実施形態に係る粒子製造方法における溶媒除去工程を説明する模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る粒子製造方法における乾燥工程を説明する模式図である。
図6】シリカ粒子(多孔質粒子)の内部構造の変化を説明する模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る粒子製造方法・製造装置に基づいて製造されたシリカ粒子50のSEM画像である。
図8】本発明に係る粒子製造方法で製造されたシリカ粒子50と、従来のシリカ粒子とを、それぞれカラムに充填した際の送液速度-圧力の関係を示すグラフである。(カラム無充填の場合も含む。)
図9】各実施例に係るシリカ粒子50製造時に設定されたパラメータを示すテーブルである。
図10】各実施例に係るシリカ粒子50の特性を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。 図1は本発明の実施形態に係る粒子製造方法のフローを示す図である。また、図2は本発明の実施形態に係る粒子製造装置1における造粒部10の装置構成を示す図である。
【0022】
以下の実施形態では、本発明による多孔質のシリカ粒子の製造方法と、製造装置とを例示することで説明を行うが、本発明に係る粒子製造方法や、粒子製造装置1が、シリカ以外を主要材料とする多孔質粒子の製造への適用が妨げられるものではない。本発明に係る粒子製造方法や、粒子製造装置1は、任意の材料を主要材料とする多孔質粒子に適用し得るものである。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る粒子製造方法においては、ステップS1の溶媒への滴下による造粒工程が実施される。このような造粒工程を具体的に実施するための装置構成が、図2に示す粒子製造装置1における造粒部10である。
【0024】
造粒部10で造粒される多孔質のシリカ粒子の原料となる組成物は、第1組成物貯留槽11と、第2組成物貯留槽12とにそれぞれ貯留されている。第1組成物貯留槽11には、シリカ(SiO2)のコロイド溶液(多孔質粒子の骨格となるナノサイズのシリカ粒子の弱塩基性水溶液)が貯留されており、第2組成物貯留槽12には、気孔形成剤溶液が貯留されている。
【0025】
なお、第2組成物貯留槽12に貯留される気孔形成剤溶液は、多孔質粒子における細孔形成のために添加されるものである。気孔形成剤溶液は、モリブデン酸アンモニウム(NH46Mo724・4H2O、りん酸二水素ナトリウムNaH2PO4、モリブデン酸二ナトリウムNa2MoO4・2H2Oなどの塩類が混合された水溶液であることが好ましい。
【0026】
第1組成物貯留槽11に貯留されているシリカ(SiO2)のコロイド溶液、及び、第2組成物貯留槽12に貯留されている気孔形成剤溶液は、それぞれの貯留槽と連結されている配管17中に設けられている第1ポンプ13、及び、第2ポンプ14によってスタティックミキサー15へと送液される。
【0027】
スタティックミキサー15では、シリカ(SiO2)のコロイド溶液と気孔形成剤溶液とが混合される。なお、本発明においては、シリカ(SiO2)のコロイド溶液と気孔形成剤溶液とを混合するためにスタティックミキサー15を用いることは必須ではなく、他の溶液混合手段を用いるようにしてもよい。
【0028】
スタティックミキサー15の下流側へと排出された、シリカ(SiO2)のコロイド溶液と気孔形成剤溶液との混合溶液は、ノズル21へと供給される。なお、ノズル21の先端のノズル径は、約0.5mmのものである。ノズル21の先端から、シリカ(SiO2)のコロイド溶液と気孔形成剤溶液との混合溶液が吐出される。
【0029】
ノズル21の鉛直下方部には、液体窒素23が貯留されている造粒槽25が設けられている。 なお、造粒槽25に貯留されている溶媒は液体窒素23を例としているが、液体窒素に代えて、液体アルゴン、液体ヘリウムなどの液体冷媒を用いることもできる。
【0030】
液体窒素23に浸漬されているフィン28は、ロッド27を介して攪拌機26の本体部のモーター(不図示)により回転される。これにより、造粒槽25中に貯留されている液体窒素23は、撹拌された状態とされる。
【0031】
一方、前述したノズル21は、鉛直上下の方向に加振を行う加振器20に取り付けられている。この加振器20は、コントローラー19によって振動の態様(周波数、振幅等)が制御されるようになっている。
【0032】
加振器20により上下振動しているノズル21には、シリカ(SiO2)のコロイド溶液と気孔形成剤溶液との混合溶液が配管17を介して供給される。前記の混合溶液は、ノズル21の上下振動により、形状が均一で、かつ、径がそろった略球状の液滴となりノズル21から吐出され、造粒槽25中で撹拌されている液体窒素23へと滴下される。
【0033】
図3(A)は加振器20による上下振動がない場合のノズル21からの混合溶液の液滴を撮影した写真であり、図3(B)は加振器20による上下振動がある場合のノズル21からの混合溶液の液滴を撮影した写真である。図3(B)に示すように、加振器20による上下振動により、ノズル21から吐出される混合溶液の液滴は、形状が均一で、かつ、径がそろった略球状のものであることがわかる。
【0034】
ノズル21から液体窒素23中へと滴下された混合溶液の液滴は、まず、液体窒素23中で凍結(凝固)された球状の粒子(以下、「シリカ粒子50」と言う。)となる。液体窒素23に滴下された混合溶液の液滴は、その中に含まれている水分が凍結(凝固)し、凍結球状粒子となる。
【0035】
ここで、液体窒素23はフィン28によって撹拌されているので、先のシリカ粒子50の複数同士が結合して一つの粒子となることが防止される。従って、シリカ粒子50は、粒子径が揃った(例えば、粒子径1mm程度)球状の粒子となる。
【0036】
一方、仮に、造粒槽25中で液体窒素23が撹拌されていないものとすると、ノズル21から滴下された液滴一つによって生成される粒子同士が合一化してしまい、粒子径が不揃いで、しかも、球状でない粒子が多くなってしまうこととなる。
【0037】
さて、上記に説明したような造粒工程の実施によって得られた、粒子径の大きなシリカ粒子50に対する処理を実施していき、細孔が設けられた完成形のシリカ粒子50とする工程を以下に説明していく。
【0038】
図1に戻り、ステップS2においては、シリカ粒子50の周囲に残留している液体窒素23(溶媒)を除去する溶媒除去工程が実施される。図4は本発明の実施形態に係る粒子製造方法における溶媒除去工程を説明する模式図である。
【0039】
造粒槽25の液体窒素23中で造粒したシリカ粒子50は、例えばフラスコなどのガラス容器30中に回収される。チャンバ43中には不凍液44が貯留されている。溶媒除去工程においては、チャンバ43中で、ガラス容器30を0℃以下に冷却した不凍液44に接触させることで、シリカ粒子50内の凍結した水分を融解することなく余分な液体窒素23を蒸発させる。
【0040】
ステップS2に引き続き、ステップS3において乾燥工程が実施される。図5は本発明の実施形態に係る粒子製造方法における乾燥工程を説明する模式図である。
【0041】
図5に示すように、溶媒除去工程を経たガラス容器30の開口部には、排気管36が挿通されているゴム栓35が装着される。排気管36のガラス容器30内の端部でない方の端部には、不図示の真空ポンプが取り付けられる。この真空ポンプを動作させることで、ガラス容器30内を減圧してシリカ粒子50における水分を除去する。
【0042】
ステップS3に引き続き、ステップS4では仮焼成工程が実施され、さらにステップS4に引き続き、ステップS5では本焼成工程が実施される。
【0043】
仮焼成工程・本焼成工程の各工程を実施するために、ガラス容器30内のシリカ粒子50は、るつぼなどの耐熱性容器(不図示)に移され、当該るつぼは電気炉(不図示)中に投入され、各焼成工程が実施される。仮焼成工程は例えば350℃で、また、本焼成工程は例えば690℃の温度で各所定時間(例えば、1時間程度)実施される。なお、各焼成工程を実施するための器具として、るつぼや電気炉は必須のものではなく、あくまで一例として示したものである。
【0044】
上記のような仮焼成工程・本焼成工程の各工程を実施する目的は、スピノーダル分解を利用して、分相を起こすことである。分相された2相のうち第1の相は、SiO2を主成分とするシリカ粒子の骨格部となる相であり、第2の相は、リンモリブデン酸などの複合塩の相である。
【0045】
上記のような各焼成工程を実施した後には、ステップS6として、洗浄工程が実施される。この洗浄工程では、1mol/Lの硝酸溶液及び90℃の熱水を用いることで、分相されたうちの第2の相である複合塩等を洗浄・除去する。
【0046】
ステップS6の洗浄工程の後に、ステップS7の乾燥工程を実施することで、第1の相として残った多孔質のシリカ粒子50を得ることができる。
【0047】
ステップS4~S7工程におけるシリカ粒子50の内部構造の変化を図6の模式図を用いて説明する。図6の各図は、シリカ粒子50の一部拡大図である。図6の最左端側の図は、ステップS3の工程を経た未分相状態のシリカ粒子50の内部構造を示している。
【0048】
この未分相のシリカ粒子50に対して、S4、S5の各焼成工程を実施することで、SiO2を主成分とする相と、複合塩等を主成分とする相とに分相がされる。(図6の中央の図)
分相されたシリカ粒子50に対して、ステップS6で、酸と熱水で洗浄することで、複合塩等の相を洗い流して除去し、S7の乾燥工程で不要な水分を飛ばすことで、最終的に細孔が設けられた多孔質のシリカ粒子50を得ることができる。
【0049】
図7に、本発明の実施形態に係る粒子製造方法・製造装置に基づいて製造されたシリカ粒子50のSEM画像を示す。図7(A)はシリカ粒子50全体を撮影したものであり、図7(B)はシリカ粒子50表面を撮影したものである。図7(A)からも分かるように、本発明によりなる多孔質のシリカ粒子50の粒径は約1mmに近づくものである。また、図7(B)からは、シリカ粒子50の表面には多数の細孔を確認することができる。
【0050】
以上のような本発明に係る粒子製造方法によって製造されたシリカ粒子50と、従来のシリカ粒子の比較を行った。なお、従来のシリカ粒子としては、市販品を用いた。本発明によりなるシリカ粒子50と、従来のシリカ粒子の粒度分布測定を行った結果、前者の平均粒子径は1mm程度であったのに対して、後者の平均粒子径は約50μm程度であった。これから分かるように、本発明によりなるシリカ粒子50の粒子径は、従来のシリカ粒子の粒子径に比して、オーダーで2桁程度の差を有していることがわかる。なお、平均粒子径の測定には、レーザー回折・散乱法を用いた。
【0051】
以上のように、本発明に係る粒子製造方法・粒子製造装置で製造されたシリカ粒子50は、粒子径が従来よりも大きい粒子を製造することが可能である。
【0052】
次に、本発明に係る粒子製造方法によって製造されたシリカ粒子50と、従来のシリカ粒子をそれぞれカラムに充填し、送液速度と圧力の関係を調べた。なお、参考として、カラムに何も充填していない無充填の場合についても、送液速度と圧力の関係を調べた。図8は、これら3通りの場合の送液速度-圧力の関係を示すグラフである。
【0053】
送液速度-圧力の関係を取得する手順は以下の通りであった。まず、イオン交換水に良く馴染ませた粒子等を、空気が入らないよう注意しながらガラスカラム(10mmφ×400mmH)に高さ380mmまで充填する。
【0054】
次に、プランジャーポンプと圧力センサ(日本電産コパル電子株式会社製アンプ内蔵圧力センサPA-750)を接続後、イオン交換水(25℃)を送液し、送液速度を増加させていったときの圧力センサの電圧値を測定する。
【0055】
圧力センサの電圧値を圧力値に変換することで、圧力を求めた。
【0056】
なお、従来のシリカ粒子としては、市販品を用いた。
【0057】
図8に示すように、本発明に係る粒子製造方法で製造されたシリカ粒子50が充填されたカラムは、カラムに何も充填されていない時の送液速度-圧力の関係性と、ほぼ変わらなかった。これに対して、従来のシリカ粒子が充填されたカラムは、送液速度の増加に伴う圧力の増加が著しいことがわかる。
【0058】
図8に関連する検証からも、本発明に係る粒子製造方法・粒子製造装置で製造されたシリカ粒子50は、例えば高レベル放射性廃液からマイナーアクチニドを分離する際に、カラムに充填して用いることで、圧力損失を小さくでき、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
(実施例)
以下、本発明に係る粒子製造方法及び粒子製造装置に基づいて、複数のシリカ粒子50の実施例を製造したので説明する。各実施形態で製造時に設定されたパラメータはそれぞれ異なっており、図9のテーブルにこれを示す。また、図10は各実施例に係るシリカ粒子50の特性を示すテーブルである。
【0059】
図9のテーブルの(a)列で攪拌機26として用いたのは、柴田科学株式会社製のM-102である。また、4枚羽根フィンの径は60mmであり、6枚羽根フィンの径は120mmである。また、攪拌機26で撹拌する液体窒素23が貯留される造粒槽25には、株式会社スギヤマゲン製のBT-100を用いた。この製品の内寸法はφ200mm×140mmであり、材質はSUS304t1.0である。
【0060】
図9のテーブルにおいて、(c)列に記載されているスノーテックス(登録商標)はシリカ(SiO2)のコロイド溶液(多孔質粒子の骨格となるナノサイズのシリカ粒子の弱塩基性水溶液)であり、日産化学株式会社の製品である。スノーテックス(登録商標)の型番N-40はシリカ濃度40%で、コロイド溶液中のシリカ粒子径が22nmである。
【0061】
また、図9のテーブルの(e)列における気孔形成剤溶液において、モリブデン酸アンモニウムと、りん酸二水素ナトリウムと、モリブデン酸二ナトリウムとの混合比率は、重量比率で、それぞれ1.5:1:0.75であった。
【0062】
また、図9のテーブルの(g)列に関連して、加振器20としてはIMV株式会社製のPET-05が用いられた。
【0063】
また、図9のテーブルの(h)列で言う「送液速度」とは、第1ポンプ13及び第2ポンプ14の流量である。
【0064】
また、図10のテーブルの(i)列における「平均粒子径」では、Malvern Panalytical社製のMastersizer 3000(AeroSによる乾式分散での測定)を用いて粒度分布を測定し、体積基準50%粒?径を平均粒?径とした。
【0065】
また、図10のテーブルの(j)列における「均一性」は、上記Malvern Panalytical社製のMastersizer 3000(AeroSによる乾式分散での測定)を用いて粒度分布を測定し、粒度分布の結果を下式に当てはめて算出し、均一性とした。
【0066】
【数1】
【0067】
ただし、
【0068】
【数2】
【0069】
はサイズクラスiの体積[%]及び粒径[mm]であり、
【0070】
【数3】
【0071】
はメディアン径(平均粒子径)[mm]である。
均一性は粒子径の分布状態を示す一つの指標数値であり、値が小さいほど平均粒子径に対する粒子の分布が狭い(粒子径の均一性が高い)ことを表している。
【0072】
また、図10のテーブルの(k)列、(l)列の「細孔」に関連するデータ取得には、Quantachrome Instruments(現Anton Paar)社製のPoreMaster 60を用いて、水銀圧入法により細孔分布を測定した。また、平均細孔径は、体積基準50%細孔径に基づいている。
【0073】
以上から、本発明に係る粒子製造方法及び粒子製造装置によれば、各パラメータを適宜設定することで、1.07~1.38mmの粒子径を有するシリカ粒子50を製造可能であることが確認できた。
【0074】
また、本発明に係る粒子製造方法及び粒子製造装置によれば、各パラメータを適宜設定することで、均一性が0.27~0.40の比較的均一性が良好なシリカ粒子50を製造可能であることが確認できた。
【0075】
また、本発明に係る粒子製造方法及び粒子製造装置によれば、各パラメータを適宜設定することで、全細孔容積が1.67mL/g以上の、比較的大きな細孔容積を有するシリカ粒子50を製造可能であった。
【0076】
また、本発明に係る粒子製造方法及び粒子製造装置によれば、各パラメータを適宜設定することで、平均細孔径が0.90μm以上の、大きな細孔径を有するシリカ粒子50を製造可能であった。
【0077】
このように、本発明に係る粒子製造方法・粒子製造装置で製造されたシリカ粒子50は、粒子径が大きく、かつ、細孔容積及び細孔径の大きいシリカ粒子50である。
【0078】
以上、本発明に係る粒子製造方法は、組成物を、振動するノズルから、撹拌機により撹拌された溶媒中に滴下し、組成物が含まれる粒子を造粒する造粒工程と、前記造粒工程で得られた溶媒を含む粒子から、溶媒を除去し、粒子を得る溶媒除去工程と、を含んでおり、このような粒子製造方法によれば、粒子径が従来よりも大きく、粒子径の均一性が高い粒子を製造することができ、抽出クロマトグラフィーのカラムに用いた場合、圧力損失が小さくなり、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
【0079】
さらに、請求項3、請求項4に係る粒子製造方法によれば、粒子径が大きく、かつ、細孔容積及び細孔径の大きい多孔質粒子を得ることができるので、カラムに充填して用いた場合、圧力損失が小さくなり、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
【0080】
また、本発明に係る粒子製造装置1によれば、上下振動するノズル21と、前記ノズル21に組成物を供給する配管17と、攪拌機26により撹拌された溶媒中に、前記ノズル21から滴下される組成物による粒子が造粒される造粒槽25と、が少なくとも含まれた造粒部10を有しており、このような本発明に係る粒子製造装置1によれば、粒子径が従来よりも大きく、粒子径の均一性が比較的高い粒子を製造することができ、これを抽出クロマトグラフィーのカラムに用いた場合、圧力損失が小さくなり、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
【0081】
さらに、請求項8に係る粒子製造装置1によれば、粒子径が大きく、かつ、細孔容積及び細孔径の大きい多孔質粒子を製造できるので、カラムに充填して用いた場合、圧力損失が小さくなり、より安全な高レベル放射性廃液の送液が可能となる。
【0082】
また、本発明に係る粒子製造方法、粒子製造装置1においては、中実球状の多孔質粒子であって、比較的強度が高い多孔質粒子が得られると共に、粒子径の均一性が比較的高い多孔質粒子が製造できるものである。このような本発明に係る粒子製造方法、粒子製造装置1によれば、多孔質粒子の製造後に、分級操作が省力化されるので、製造コストの削減が可能となる。
【符号の説明】
【0083】
1・・・粒子製造装置
10・・・造粒部
11・・・第1組成物貯留槽
12・・・第2組成物貯留槽
13・・・第1ポンプ
14・・・第2ポンプ
15・・・スタティックミキサー
17・・・配管
19・・・コントローラー
20・・・加振器
21・・・ノズル
23・・・液体窒素(溶媒)
25・・・造粒槽
26・・・攪拌機
27・・・ロッド
28・・・フィン
30・・・ガラス容器
35・・・ゴム栓
36・・・排気管
43・・・チャンバ
44・・・不凍液
50・・・シリカ粒子(多孔質粒子)
ステップS1・・・溶媒への滴下による造粒工程
ステップS2・・・溶媒除去工程
ステップS3・・・乾燥工程
ステップS4・・・仮焼成工程
ステップS5・・・本焼成工程
ステップS6・・・洗浄工程
ステップS7・・・乾燥工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10