(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128360
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ステアリング計測機器校正装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G01B5/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032662
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】谷本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏和
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA10
2F062AA71
2F062DD21
2F062GG51
2F062MM01
(57)【要約】
【課題】内側が中空の環状体形状のステアリング計測機器に対して誤差の小さい校正を行うための校正装置であり、ステアリング計測機器の中心位置をより分かりやすくすることのできるステアリング計測機器校正装置を提供する。
【解決手段】本体盤部と、本体盤部の中央部から端部に向けて放射状に形成された複数のレール部と、複数のレール部のそれぞれに載置され本体盤部の中央部と端部との間を進退自在に摺動してステアリング計測機器の内周部に当接する当接ブロックと、それぞれの当接ブロックをレール部に沿って本体盤部の中央部から端部へ押出する複数の押出部材と、本体盤部の中央部に配置され本体盤部の中央部から均等に複数の押出部材の全てを前進させる調整機構部とを備え、ステアリング計測機器の内周部に当接ブロックを当接させてステアリング計測機器の本体盤部におけるステアリング計測機器の載置の位置を調整する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング計測機器の校正を行うステアリング計測機器校正装置であって、
ステアリング計測機器校正装置は、
本体盤部と、
前記本体盤部の中央部から端部に向けて放射状に形成された複数のレール部と、
前記複数のレール部のそれぞれに載置され前記本体盤部の中央部と端部との間を進退自在に摺動して前記ステアリング計測機器の内周部に当接する当接ブロックと、
前記それぞれの当接ブロックを前記レール部に沿って前記本体盤部の中央部から端部へ押出する複数の押出部材と、
前記本体盤部の中央部に配置され前記本体盤部の中央部から均等に前記複数の押出部材の全てを前進させる調整機構部と、を備え、
前記ステアリング計測機器の内周部に前記当接ブロックを当接させて前記ステアリング計測機器の前記本体盤部における前記ステアリング計測機器の載置の位置を調整する
ことを特徴とするステアリング計測機器校正装置。
【請求項2】
前記調整機構部は、
前記本体盤部の前記中央部において前記複数のレール部の軸線方向の中心に垂直に立設される基準軸と、
前記基準軸に挿通され前記基準軸と対向して上方側へ拡径開口する傾斜面部を備え、前記複数の押出部材と当接する外周部とを備える円盤当接部と、
前記基準軸に挿通され前記傾斜面部と当接するテーパ部を備え、前記円盤当接部を下方に押下する押下調整部と、
を備える請求項1に記載のステアリング計測機器校正装置。
【請求項3】
前記調整機構部は、
前記押下調整部を前記円盤当接部に押下する接続部を備える請求項2に記載のステアリング計測機器校正装置。
【請求項4】
前記複数のレール部同士は、等角度間隔により前記本体盤部に放射状に形成され、前記当接ブロック及び前記押出部材は3個備えられる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のステアリング計測機器校正装置。
【請求項5】
前記当接ブロックに傾斜部が形成され、前記傾斜部が前記ステアリング計測機器の内周部に当接する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のステアリング計測機器校正装置。
【請求項6】
前記本体盤部の外周部に、前記ステアリング計測機器の内周部に当接して支持する平行調整ブロックが備えられる請求項1ないし5のいずれか1項に記載のステアリング計測機器校正装置。
【請求項7】
前記押出部材に前記当接ブロックと前記押出部材とを接続するばねが備えられる請求項1ないし6のいずれか1項に記載のステアリング計測機器校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング計測機器校正装置に関し、特にステアリング計測機器の角度について校正するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング計測のため、ステアリング計測機器が車両のハンドル(ステアリングホイール)に装着される。そして、ステアリング計測機器に対してステアリング角度の校正を行う校正機器が存在する。この場合、ステアリング計測器、または工場検査用のステアリング計測器を校正するに際し、校正の精度を担保する意味からステアリング計測器の中心と校正機器の中心を正確に一致させる必要がある。
【0003】
ステアリング計測機器は一般に中央部分が開口している環状の部材である。当該ステアリング計測機器の校正に際し、ステアリング(装着されるハンドル)の仮想中心線が標準器の中心に合わせられて校正機器が接続される。そして、ステアリング計測機器は左右方向に適度に回転され、基準の角度と比較される。
【0004】
この場合、校正結果に影響を及ぼす誤差要因として、(1)標準軸に対して水平軸との直交誤差、(2)ステアリング計測器と標準器との平行誤差、(3)芯だしの偏芯誤差(中心位置の誤差)が挙げられる。特に三つ目の芯だしの偏芯誤差の問題、つまりステアリング計測機器の中心位置がわかりにくいことが問題とされている。
【0005】
ステアリング計測機器等の環状体の中心位置を求めるための装置または機構として、芯出し機構が提案されている(特許文献1等参照)。しかしながら、特許文献1に開示の芯出し機構では、ステアリング計測機器において高精度で中心位置を求めることは、依然として困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の点に鑑みなされたものであり、内側が中空の環状体形状のステアリング計測機器に対して校正を行うための校正装置であり、ステアリング計測機器の中心位置に対して誤差の小さいステアリング計測機器校正装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、実施形態のステアリング計測機器校正装置は、ステアリング計測機器の校正を行うための装置であって、本体盤部と、本体盤部の中央部から端部に向けて放射状に形成された複数のレール部と、複数のレール部のそれぞれに載置され本体盤部の中央部と端部との間を進退自在に摺動してステアリング計測機器の内周部に当接する当接ブロックと、それぞれの当接ブロックをレール部に沿って本体盤部の中央部から端部へ押出する複数の押出部材と、本体盤部の中央部に配置され本体盤部の中央部から均等に複数の押出部材の全てを前進させる調整機構部とを備え、ステアリング計測機器の内周部に当接ブロックを当接させてステアリング計測機器の本体盤部におけるステアリング計測機器の載置の位置を調整することを特徴とする。
【0009】
さらに、ステアリング計測機器校正装置の調整機構部は、本体盤部の中央部において複数のレール部の軸線方向の中心に垂直に立設される基準軸と、基準軸に挿通され基準軸と対向して上方側へ拡径開口する傾斜面部を備え、複数の押出部材と当接する外周部とを備える円盤当接部と、基準軸に挿通され傾斜面部と当接するテーパ部を備え、円盤当接部を下方に押下する押下調整部とを備えることとしてもよい。
【0010】
さらに、ステアリング計測機器校正装置の調整機構部は、押下調整部を円盤当接部に押下する接続部を備えることとしてもよい。
【0011】
さらに、ステアリング計測機器校正装置の複数のレール部同士は、等角度間隔により本体盤部に放射状に形成され、当接ブロック及び押出部材は3個備えられることとしてもよい。
【0012】
さらに、ステアリング計測機器校正装置の当接ブロックに傾斜部が形成され、傾斜部がステアリング計測機器の内周部に当接することとしてもよい。
【0013】
さらに、ステアリング計測機器校正装置の本体盤部の外周部に、ステアリング計測機器の内周部に当接して支持する平行調整ブロックが備えられることとしてもよい。
【0014】
さらに、ステアリング計測機器校正装置の押出部材に当接ブロックと押出部材とを接続するばねが備えられることとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のステアリング計測機器校正装置は、本体盤部と、本体盤部の中央部から端部に向けて放射状に形成された複数のレール部と、複数のレール部のそれぞれに載置され本体盤部の中央部と端部との間を進退自在に摺動してステアリング計測機器の内周部に当接する当接ブロックと、それぞれの当接ブロックをレール部に沿って本体盤部の中央部から端部へ押出する複数の押出部材と、本体盤部の中央部に配置され本体盤部の中央部から均等に複数の押出部材の全てを前進させる調整機構部とを備え、ステアリング計測機器の内周部に当接ブロックを当接させてステアリング計測機器の本体盤部におけるステアリング計測機器の中心位置を調整するため、内側が中空の環状体形状のステアリング計測機器に対して校正を行うための校正装置となり、ステアリング計測機器の中心位置の誤差を非常に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態のステアリング計測機器校正装置に校正対象のステアリング計測機器を装着する様子を示す概要図である。
【
図2】ステアリング計測機器校正装置の平面斜視図である。
【
図3】本体盤部に設置されている円盤当接部の斜視図である。
【
図5】調整機構部の動作を示す概略縦断面模式図である。
【
図6】ステアリング計測機器校正装置に校正対象のステアリング計測機器を装着した状態の平面図である。
【
図7】ステアリング計測機器校正装置に校正対象のステアリング計測機器を装着して調整中の斜視図である。
【
図8】ステアリング計測機器の装着時の断面模式図である。
【
図9】ステアリング計測機器の装着時の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態のステアリング計測機器校正装置は、中央部分が中空の環状形態のステアリング計測機器を校正するための装置である。校正の様子は
図1の概要図として示される。実施形態のステアリング計測機器校正装置10は、回転テーブル60の上部に水平かつ中心位置が合わせられて設置される。そして、ステアリング計測機器校正装置10の外周側に合わせて中央部分が中空の環状形態のステアリング計測機器50が載置される。そこで、ステアリング計測機器校正装置10を通じて、ステアリング計測機器50の水平、垂直、そして、中心軸が合わせられる。そして、回転テーブル60の作動に伴って種々の動作がステアリング計測機器50に加えられる。
【0018】
図2はステアリング計測機器校正装置10の平面斜視図である。ステアリング計測機器校正装置10は本体盤部11に、レール部12、押出部材13、当接ブロック14、調整機構部20、持ち手31、平行調整ブロック33を備える。各部材、要素について順に説明する。図示の本体盤部11は角部分を欠いた三角形(3辺を長くした六角形)であり、ステンレス綱等の金属製の部材である。本体盤部11には肉抜き穴部17が形成され、ステアリング計測機器校正装置10の重量が軽減される。本体盤部11の各辺は対称形状である。本体盤部11は、各長辺に設けられた各平行調整ブロック33により、ステアリング計測機器50を均等に支持可能としている。
【0019】
レール部12は、本体盤部11の中央部(調整機構部20の設置位置)から本体盤部11の端部に向けて等角度間隔により放射状に3対形成されている。3対であるため、レール部12は本体盤部11の中央部を中心に相互に120°の角度間隔である。レール部12は本体盤部11の表面に凹状の窪みまたは貫通して形成されている。また、レール部12と平行する補助レール部18が備えられる(後出の
図9参照)。
【0020】
レール部12上には当接ブロック14と押出部材13が摺動自在に載置される。3対のレール部12はそれぞれ同構造のため、便宜上、12a,12b,12cとする。各レール部12に載置される当接ブロック14も同構造のためそれぞれは14a,14b,14cとし、押出部材13も同構造のためそれぞれは13a,13b,13cとする。レール部12aには当接ブロック14a及び押出部材13aが進退自在に摺動する。同様に、レール部12bには当接ブロック14b及び押出部材13bが進退自在に摺動し、レール部12cには当接ブロック14c及び押出部材13cが進退自在に摺動する。
【0021】
当接ブロック14(14a,14b,14c)は、複数のレール部12(12a,12b,12c)のそれぞれに載置され、本体盤部11の中央部と端部との間を進退自在に摺動する。そして当接ブロック14(14a,14b,14c)はステアリング計測機器50の内周部51(
図8、
図9参照)に当接する。すなわち、当接ブロック14はステアリング計測機器50をステアリング計測機器校正装置10に載置した際、ステアリング計測機器50を内側から均等に圧迫する部材である。
【0022】
押出部材13(13a,13b,13c)は、各当接ブロック14(14a,14b,14c)をレール部12(12a,12b,12c)に沿って本体盤部11の中央部から端部へ押出する。押出部材13(13a,13b,13c)の動作には次述の調整機構部20が用いられる。調整機構部20により直接当接ブロック14(14a,14b,14c)を摺動させることは可能である。しかしながら、ステアリング計測機器50に当接されるためには、調整機構部20自体に大きさが必要となる。このためステアリング計測機器校正装置10は過大に重量増加し、また、加工精度の維持も容易ではない。そこで、調整機構部20を適度な大きさにして重量増加を抑制し、また、調整機構部20の加工精度を維持するため、調整機構部20と当接ブロック14(14a,14b,14c)とを接続する部材として押出部材13(13a,13b,13c)が備えられる。
【0023】
さらに、押出部材13(13a,13b,13c)には当接ブロック14(14a,14b,14c)と当該押出部材13(13a,13b,13c)とを接続するばね34が備えられる。押出部材13(13a,13b,13c)が本体盤部11の端部側から中央部側へ後退する際、当接ブロック14(14a,14b,14c)は、ばね34により牽引される。そこで、押出部材13(13a,13b,13c)と当接ブロック14(14a,14b,14c)の後退は連動するようになる。
【0024】
調整機構部20は、本体盤部11の中央部に配置され当該本体盤部11の中央部から均等に複数の押出部材13(13a,13b,13c)の全てを前進させる。調整機構部20は、基準軸21に遊嵌されている円盤状の部材により構成される。調整機構部20の構造、動作については、後出の
図3ないし
図5にて説明する。
【0025】
ステアリング計測機器校正装置10の本体盤部11には、ステアリング計測機器50の内周部51(
図8、
図9参照)に当接して支持する平行調整ブロック33(33a,33b,33c)が備えられる。平行調整ブロック33(33a,33b,33c)は、本体盤部11の周縁部であり、主にそれぞれの長辺の中央位置に設置される。平行調整ブロック33(33a,33b,33c)は3箇所でステアリング計測機器50の内周部51を下側から受け止める。
【0026】
平行調整ブロック33(33a,33b,33c)は3箇所とも同形状であるため、均等にステアリング計測機器50の内周部51を支持し、かつ標準器(図示せず)と平行とすることができる。従って、ステアリング計測機器50がステアリング計測機器校正装置10に載置されることにより、ステアリング計測機器50の水平(平行)が保持される。
【0027】
加えて、ステアリング計測機器校正装置10の搬送、回転テーブル60への取り付けの便宜から、本体盤部11に持ち手31が備えられている。実施形態では、レール部12、当接ブロック14、押出部材13の数は互いに対応して3個としている。4個以上に数を増やすことも可能であるものの、ステアリング計測機器50との当接に関与しない当接ブロック14が生じる場合があり、逆に不安定化する。そこで、安定性と重量増加の抑制の点からそれぞれ3個とすることが望ましい。
【0028】
図3ないし
図5を用いて調整機構部20の構造と作用を説明する。調整機構部20は、主に基準軸21、円盤当接部24、押下調整部26の部材を含んで構成される。
図3の斜視図は本体盤部11に装着された円盤当接部24を示す。本体盤部11は平面視対称形状であり、基準軸21は本体盤部11の中央部においてレール部12(12a,12b,12c)の軸線方向の延長線の中心に立設される(
図2参照)。基準軸21の中心に、校正用の標準器(図示せず)が設置される。
【0029】
図3から理解されるように、円盤当接部24は基準軸21に挿通するための円盤開口部42を備え、かつ、円盤開口部42側において基準軸21と対向して上方側へ拡径開口する傾斜面部22を備える。そして、円盤当接部24は複数の押出部材13(13a,13b,13c)と当接する外周部23を備える。傾斜面部22は横断面において真円となるように精度設計されている。さらに、円盤当接部24の上部には調整ばね44が複数備えられている。
【0030】
図4は押下調整部26をステアリング計測機器校正装置10から取り外して示す斜視図である。押下調整部26は基準軸21に挿通するための押下開口部43を備え、かつ、円盤当接部24の傾斜面部22と当接するテーパ部25(逆向きの円錐)を備える。テーパ部25は下向きに縮径して形成され、テーパ部25は横断面において真円となるように精度設計されている。押下調整部26は、当該押下調整部26を円盤当接部24側に押下する接続部41(ボルト)を備える。接続部41の接続先は、調整ばね44の設置箇所に形成された螺合穴(図示せず)である。
【0031】
図5は押下調整部26と円盤当接部24との当接状態を示す概略縦断面模式図である。図示では、調整ばね44は省略されている。円盤当接部24は複数の押出部材13のいずれ(13a,13b,13c)に対しても当接可能である。そして、円盤当接部24は基準軸21に挿通され、本体盤部11上にて適度に移動可能に遊嵌されている。これに対し基準軸21に挿通される押下調整部26は、基準軸21により図示の上下方向のみに移動が規制される。円盤当接部24の傾斜面部22及び押下調整部26のテーパ部25の横断面は真円の精度設計である。
【0032】
このため、押下調整部26が複数の接続部41(ボルト)の緊締により下方に押下(降下)した場合、押下調整部26のテーパ部25(その端部)は円盤当接部24の傾斜面部22に均等に当接可能となる。調整ばね44は、接続部41の接合力(螺着力)による水平維持が崩れることを防いでいる。結果、円盤当接部24の中心は、常に本体盤部11の中心(基準軸21の中心)と等しく調整され、円盤当接部24の外周部23と当接する押出部材13(13a,13b,13c)を通じて当接ブロック14(14a,14b,14c)の位置合わせが行われる。
【0033】
図6はステアリング計測機器校正装置10に中央部分が中空の環状形態のステアリング計測機器50を載置した状態の平面図である。
図5の説明より、調整機構部20の円盤当接部24と押下調整部26の動作に伴い、円盤当接部24の外周部23と当接して押出部材13(13a,13b,13c)が摺動し、連動して当接ブロック14(14a,14b,14c)も摺動する。個々の当接ブロック14(14a,14b,14c)の本体盤部11の中心(基準軸21の中心)からの距離は等しく、ステアリング計測機器50の中心は本体盤部11の中心に揃えられる。換言すると、複数の当接ブロック14(14a,14b,14c)の全てがステアリング計測機器50と当接(接触)すると、ステアリング計測機器校正装置10の中心とステアリング計測機器50の中心が一致する。中心の確認については、基準軸21の中心を測定する標準器(図示せず)が用いられる。
【0034】
図7はステアリング計測機器50をステアリング計測機器校正装置10に載置し調整機構部20の調整の様子を示す斜視図である。押下調整部26の上面側に露出している複数の接続部41(ボルト)は、例えば、図示の六角レンチR等により緊締される。緊締により押下調整部26は円盤当接部24側に押下(降下)する。ステアリング計測機器50をステアリング計測機器校正装置10から取り外す場合、接続部41(ボルト)の緊締を解除することにより、当接ブロック14(14a,14b,14c)とステアリング計測機器50との当接は弱まる。
【0035】
図8は当接ブロック14とステアリング計測機器50との当接状態を示す概略断面図である。当接ブロック14(14a,14b,14cのいずれも共通)には当該当接ブロック14の上方から下方にかけて傾斜する傾斜部16が形成される。そして、傾斜部16がステアリング計測機器50の内周部51と当接する。実施形態のように、傾斜部16が当接ブロック14に形成されることにより、ステアリング計測機器50は容易に当接ブロック14側へ載置されやすくなる。なお、傾斜部16はステアリング計測機器50の載置のしやすさを考慮した傾斜角度として抑制される。
【0036】
当接ブロック14(14a,14b,14cのいずれも共通)の傾斜部16は、
図8に示されるように、単純な傾斜面の形状では無く緩やかな円弧状の膨らみを有している。具体的には、当接ブロック14は円錐を切りとった形状であり、傾斜部16は円錐の表面に相当する部分である。仮に傾斜部16が平坦な斜面の場合、1個の当接ブロック14がステアリング計測機器50の内周部51と当接する際の接点が2箇所となり、安定しにくい。また、ステアリング計測機器50の大きさは種々であるため、当接ブロック14を通じてのステアリング計測機器50の位置決めが難しくなる。これに対して、実施形態の傾斜部16は円弧状の膨らみを備えているため、異なる大きさのステアリング計測機器50であっても、その内周部51と1点のみで接触し、ステアリング計測機器校正装置1では合計3点のみの接触となり、位置決めの際の安定感が高まり、種々の大きさに対しても柔軟に対応可能となる。
【0037】
図9は当接ブロック14とステアリング計測機器50との当接状態を示す拡大斜視図である。図示から理解されるように、当接ブロック14(14a)の傾斜部16はステアリング計測機器50の内周部51と当接して押圧して支える。他の当接ブロック14(14b,14c)も同様である。また、レール部12(
図2参照)の他に、補助レール部18が当該レール部12の両側に平行に形成されている。補助レール部18は本体盤部11の表面に凹状の窪みまたは貫通して形成されている。
【0038】
当接ブロック14(14a,14b,14c)の進退の摺動時のぶれは、レール部12(12a,12b,12c)により規制される。さらに、当接ブロック14(14a,14b,14c)の進退の摺動時のぶれは、補助レール部18により抑制される。
図9から理解されるように、当接ブロック14(14a)の傾斜部16の側面側には当接ブロック14(14a)と補助レール部18(本体盤部11)とを係合させるボルト締めされた摺動部材が適宜備えられる。レール部12に補助レール部18が加わることにより、当接ブロック14(14a,14b,14c)は進退方向のみに規制される。結果、当接ブロック14(14a,14b,14c)に対する調整機構部20の中心位置の調整の精度がより高められる。
【0039】
一連の説明から理解されるように、実施形態のステアリング計測機器校正装置にあっては、その中心に設置された調整機構部に備えられる円盤当接部と押下調整部の互いに断面円径の部材同士の当接を利用して高精度で当接ブロックを摺動可能である。そこで、ステアリング計測機器の内周部に当接ブロックを当接させてステアリング計測機器の本体盤部におけるステアリング計測機器の載置の位置を調整することができる。このため、従前、容易ではなかったステアリング計測機器の正確な中心の把握が、調整機構部の機構により簡便に可能となった。この結果、ステアリング計測機器校正装置は、ステアリング計測機器に対する校正の精度向上に貢献し得る。
【符号の説明】
【0040】
10 ステアリング計測機器校正装置
11 本体盤部
12(12a,12b,12c) レール部
13(13a,13b,13c) 当接ブロック
14(14a,14b,14c) 押出部材
16 傾斜部
17 肉抜き穴
18 補助レール部
20 調整機構部
21 基準軸
22 傾斜面部
23 外周部
24 円盤当接部
25 テーパ部
26 押下調整部
31 持ち手
33(33a,33b,33c) 平行調整ブロック
34 ばね
41 接続部(ボルト)
44 調整ばね
50 ステアリング計測機器
51 内周部
60 回転テーブル
R 六角レンチ