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特開2023-128383乾燥予測装置及び乾燥予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128383
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】乾燥予測装置及び乾燥予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/00 20060101AFI20230907BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20230907BHJP
   G01N 5/04 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
F26B25/00 Z
G01N27/02 A
G01N5/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032701
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】永田 真一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 功次
(72)【発明者】
【氏名】近藤 信一
【テーマコード(参考)】
2G060
3L113
【Fターム(参考)】
2G060AC01
2G060AF06
2G060HC10
3L113BA39
3L113CA02
3L113DA30
(57)【要約】
【課題】乾燥の開始から乾燥の終了まで予測が大きく変動することなく、安定的な乾燥終了時間の予測を行う。
【解決手段】乾燥対象物の乾燥度合を示す測定値を取得する乾燥度合センサ80と、所定数n(nは、正の整数)の前記測定値及び該測定値の取得時間を保持しておくための0番からn-1番までの測定値保持部105-0~105-(n-1)と、前記乾燥度合センサ80により時系列に取得される測定値及び該測定値の取得時間を、0番から順次にn-1番までの測定値保持部に保持させてゆく測定値保持更新制御手段101と、前記0番からn-2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の所定時間経過時に停止して保持内容を固定する測定値更新停止保持内容固定手段102と、前記測定値の取得開始から所定時間後になると、前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥予測時間を演算して求める乾燥時間演算手段103とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥対象物の乾燥度合を示す測定値を取得する乾燥度合センサと、
所定数n(nは、正の整数)の前記測定値及び該測定値の取得時間を保持しておくための0番からn-1番までの測定値保持部と、
前記乾燥度合センサにより時系列に取得される測定値及び該測定値の取得時間を、0番から順次にn-1番までの測定値保持部に保持させてゆき、n-1番の測定値保持部に保持させると、再び0番から順次にn-1番までの測定値保持部に保持更新させてゆく更新動作を繰り返させる測定値保持更新制御手段と、
前記0番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第1の所定時間経過時に停止して、この第1の所定時間経過時に取得された測定値を前記0番の測定値保持部へ保持させて固定し、1番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第2の所定時間経過時に停止して、この第2の所定時間経過時に取得された測定値を前記1番の測定値保持部へ保持させて固定し、2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第3の所定時間経過時に停止して、この第3の所定時間経過時に取得された測定値を前記2番の測定値保持部へ保持させて固定し、・・・、n-2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第n-1の所定時間経過時に停止して、この第n-1の所定時間経過時に取得された測定値を前記n-2番の測定値保持部へ保持させて固定する測定値更新停止保持内容固定手段と、
前記測定値の取得開始から所定時間後になると、前記0番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、前記1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、・・・、前記n-1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間と、前記乾燥対象物の乾燥度合の開始値及び前記乾燥対象物の乾燥完了時の乾燥度合の目標値に基づいて、前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥予測時間を演算して求める乾燥時間演算手段と
を具備することを特徴とする乾燥予測装置。
【請求項2】
前記乾燥度合センサは、乾燥対象物の表面と裏面との間のインピーダンスを測定して、測定値を取得するものであることを特徴とする請求項1に記載の乾燥予測装置。
【請求項3】
前記乾燥時間演算手段は、前記0番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、前記1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、・・・、前記n-1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、を用いて最小二乗法を使って得た直線に基づき前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥時間を演算して前記乾燥予測時間を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥予測装置。
【請求項4】
前記乾燥時間演算手段は、前記最小二乗法を使って得た直線により前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥時間を求め、この乾燥時間から、前記測定値の取得開始から現在時刻までの時間を減算して前記乾燥予測時間を求めることを特徴とする請求項3に記載の乾燥予測装置。
【請求項5】
前記乾燥時間演算手段は、前記乾燥予測時間にマージン要素を考慮した係数を掛けて最終乾燥予測時間を求めることを特徴とする請求項4に記載の乾燥予測装置。
【請求項6】
最終乾燥予測時間を求める式は、次の(式1)であることを特徴とする請求項5に記載の乾燥予測装置。
【数1】
【請求項7】
測定値に通常の乾燥過程における変化とは異なる変化が見られる場合に、前記0番から第n-1番の測定値保持部に保持されている取得時間及び測定値を全てリセットし、乾燥予測を最初からやり直すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の乾燥予測装置。
【請求項8】
乾燥対象物の乾燥度合を示す測定値を取得する乾燥度合センサと、
所定数n(nは、正の整数)の前記測定値及び該測定値の取得時間を保持しておくための0番からn-1番までの測定値保持部と、
を備え、コンピュータによって乾燥予測を行う乾燥予測装置の前記コンピュータを、
前記乾燥度合センサにより時系列に取得される測定値及び該測定値の取得時間を、0番から順次にn-1番までの測定値保持部に保持させてゆき、n-1番の測定値保持部に保持させると、再び0番から順次にn-1番までの測定値保持部に保持更新させてゆく更新動作を繰り返させる測定値保持更新制御手段、
前記0番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第1の所定時間経過時に停止して、この第1の所定時間経過時に取得された測定値を前記0番の測定値保持部へ保持させて固定し、1番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第2の所定時間経過時に停止して、この第2の所定時間経過時に取得された測定値を前記1番の測定値保持部へ保持させて固定し、2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第3の所定時間経過時に停止して、この第3の所定時間経過時に取得された測定値を前記2番の測定値保持部へ保持させて固定し、・・・、n-2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第n-1の所定時間経過時に停止して、この第n-1の所定時間経過時に取得された測定値を前記n-2番の測定値保持部へ保持させて固定する測定値更新停止保持内容固定手段、
前記測定値の取得開始から所定時間後になると、前記0番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、前記1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、・・・、前記n-1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間と、前記乾燥対象物の乾燥度合の開始値及び前記乾燥対象物の乾燥完了時の乾燥度合の目標値に基づいて、前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥予測時間を演算して求める乾燥時間演算手段
として機能させることを特徴とする乾燥予測プログラム。
【請求項9】
前記乾燥度合センサは、乾燥対象物の表面と裏面との間のインピーダンスを測定して、測定値を取得するものであることを特徴とする請求項8に記載の乾燥予測プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを前記乾燥時間演算手段として、前記0番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、前記1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、・・・、前記n-1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、を用いて最小二乗法を使って得た直線に基づき前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥時間を演算して前記乾燥予測時間を求めるように機能させることを特徴とする請求項8または9に記載の乾燥予測プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを前記乾燥時間演算手段として、前記最小二乗法を使って得た直線により前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥時間を求め、この乾燥時間から、前記測定値の取得開始から現在時刻までの時間を減算して前記乾燥予測時間を求めるように機能させることを特徴とする請求項10に記載の乾燥予測プログラム。
【請求項12】
前記乾燥時間演算手段は、前記乾燥予測時間にマージン要素を考慮した係数を掛けて最終乾燥予測時間を求めることを特徴とする請求項11に記載の乾燥予測プログラム。
【請求項13】
最終乾燥予測時間を求める式は、次の(式1)であることを特徴とする請求項12に記載の乾燥予測プログラム。
【数2】
【請求項14】
測定値に通常の乾燥過程における変化とは異なる変化が見られる場合に、前記0番から第n-1番の測定値保持部に保持されている取得時間及び測定値を全てリセットし、乾燥予測を最初からやり直すことを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の乾燥予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乾燥予測装置及び乾燥予測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、試料を乾燥させるために加熱する試料加熱部と、試料を秤量して連続的又は断続的に質量値mを出力する試料秤量部と、連続的又は断続的に出力された一連且つ所定の期間の有限個の質量値に基づいて、試料が含んでいた水分量又は水分率を算出する秤量データ処理部とを具備する水分量測定装置が開示されている。秤量データ処理部では、一連且つ所定の期間の有限個の質量値を用いて、試料が完全に乾燥するまでの質量値の減少の時間推移、又は質量値の時間変化量の時間推移を所定の予測演算で予測して、測定前に試料が含んでいた水分量又は水分率を推定して算出する。
【0003】
具体的演算方法では、時間変化量が一旦最大Δmpになった後、時間変化量があらかじめ定めた値(以下ΔMAと表記(ΔMA<Δmp))以下になった時間(以下taと表記)から予め定めた期間(以下TAと表記)における時間変化量の値に基づいて、時間ta+TA以降の時間変化量の推移を予測演算する。
【0004】
特許文献2の発明は、基本的に特許文献1の発明を発展させたものである。即ち、特許文献1のものにおいて、加熱温度コントローラによって一定の温度で安定して試料を乾燥させる点が異なっている発明である。予測手法等は、特許文献1のものと同じである。
【0005】
特許文献3には、測定水分量の減少率を示す減少近似曲線を全ての測定水分量を用いて最小二乗法により計算し、減少近似曲線の傾きを乾減率として、[(乾燥開始時の水分量-目標水分量)/乾減率]により到達時間を計算する乾燥時間の予測装置が開示されている。
【0006】
特許文献4には、水分量データを測定して最小二乗法により変化曲線を作成し、乾燥の閾値を求め、閾値までの時間を乾燥予測時間とする乾燥予測システムが開示されている。
【0007】
また、本願特許出願人が出願した乾燥予測装置にあっては、乾燥特性を3区間に分けて、それぞれの区間でそれぞれ所定の計算手法により乾燥終了予測を行うものであった(特願2020-165831)。この手法は、区間ごとに適切な予測を行えることを狙ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-145174号公報
【特許文献2】特開2009-250819号公報
【特許文献3】特開2016-192075号公報
【特許文献4】特開2019-097954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように従来の乾燥予測においては、乾燥の開始から乾燥の終了まで予測が大きく変動することなく、安定的な乾燥終了時間の予測を行うという観点はないものであった。
【0010】
本発明は上記のような乾燥予測の分野における現状に鑑みてなされたもので、その目的は、乾燥の開始から乾燥の終了まで予測が大きく変動することなく、安定的な乾燥終了時間の予測を行うことができる乾燥予測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る乾燥予測装置は、乾燥対象物の乾燥度合を示す測定値を取得する乾燥度合センサと、所定数n(nは、正の整数)の前記測定値及び該測定値の取得時間を保持しておくための0番からn-1番までの測定値保持部と、前記乾燥度合センサにより時系列に取得される測定値及び該測定値の取得時間を、0番から順次にn-1番までの測定値保持部に保持させてゆき、n-1番の測定値保持部に保持させると、再び0番から順次にn-1番までの測定値保持部に保持更新させてゆく更新動作を繰り返させる測定値保持更新制御手段と、前記0番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第1の所定時間経過時に停止して、この第1の所定時間経過時に取得された測定値を前記0番の測定値保持部へ保持させて固定し、1番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第2の所定時間経過時に停止して、この第2の所定時間経過時に取得された測定値を前記1番の測定値保持部へ保持させて固定し、2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第3の所定時間経過時に停止して、この第3の所定時間経過時に取得された測定値を前記2番の測定値保持部へ保持させて固定し、・・・、n-2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第n-1の所定時間経過時に停止して、この第n-1の所定時間経過時に取得された測定値を前記n-2番の測定値保持部へ保持させて固定する測定値更新停止保持内容固定手段と、前記測定値の取得開始から所定時間後になると、前記0番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、前記1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、・・・、前記n-1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間と、前記乾燥対象物の乾燥度合の開始値及び前記乾燥対象物の乾燥完了時の乾燥度合の目標値に基づいて、前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥予測時間を演算して求める乾燥時間演算手段とを具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態の構成図。
図2】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態を実現するコンピュータの構成図。
図3】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態の動作を示すフローチャート。
図4】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態の動作を示すフローチャート。
図5】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態の動作を示すフローチャート。
図6】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態に備えられるキュー(測定値保持部)における保持動作の時系列を示す図。
図7】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態に備えられる乾燥時間演算手段が最終乾燥予測時間を求めるために用いるマージンを考慮した係数の、乾燥度合に対する変化を示す曲線の図。
図8】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態に備えられる乾燥時間演算手段が最終乾燥予測時間を求めるために用いる係数に関するマージンの役割を説明する図。
図9】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態に備えられるキュー(測定値保持部)の内容の固定タイミングを示す図。
図10】本発明に係る乾燥予測装置の実施形態に備えられるキュー(測定値保持部)の内容変化(右側)と、乾燥時間演算手段演算(斜線枠で示す)により各時点において最小二乗法を使って得た直線の積み重ねによってできる曲線(左側)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下添付図面を参照して、本発明に係る乾燥予測装置及び乾燥予測プログラムの実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1に実施形態に係る乾燥予測装置の構成図を示す。図1において、80は、乾燥対象物の乾燥度合を示す測定値を取得する乾燥度合センサであって、例えば特開2020-173142号公報に示される乾湿度合測定装置の構成を採用することができる。
【0014】
図1の100は、本体装置であり、コンピュータの構成を採用することができる。本体装置100は、コンピュータにより実現される、測定値保持更新制御手段101、測定値更新停止保持内容固定手段102、乾燥時間演算手段103を具備している。乾燥度合センサ80には通信部81が備えられており、本体装置100には通信部110が備えられており、乾燥度合センサ80により取得された測定値は通信部81により送られ、本体装置100の通信部110が受信して乾燥予測に用いる。本体装置100には、所定数n(nは、正の整数)の測定値保持部105-0~105-(n-1)が備えられている。この測定値保持部105-0~105-(n-1)は、前記乾燥度合センサが取得した測定値及び該測定値の取得時間を保持しておくためのものである。
【0015】
測定値保持更新制御手段101は、前記乾燥度合センサ80により時系列に取得される測定値及び該測定値の取得時間を、0番から順次にn-1番までの測定値保持部105-0~105-(n-1)に保持させてゆき、n-1番の測定値保持部105-(n-1)に保持させると、再び0番から順次にn-1番までの測定値保持部105-0~105-(n-1)に保持更新させてゆく更新動作を繰り返させるものである。
【0016】
測定値更新停止保持内容固定手段102は、上記0番の測定値保持部105-0への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第1の所定時間経過時に停止して、この第1の所定時間経過時に取得された測定値を前記0番の測定値保持部へ保持させて固定し、1番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第2の所定時間経過時に停止して、この第2の所定時間経過時に取得された測定値を前記1番の測定値保持部へ保持させて固定し、2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第3の所定時間経過時に停止して、この第3の所定時間経過時に取得された測定値を前記2番の測定値保持部へ保持させて固定し、・・・、n-2番の測定値保持部への測定値及び該測定値の取得時間の保持更新を前記測定値の取得開始時後の第n-1の所定時間経過時に停止して、この第n-1の所定時間経過時に取得された測定値を前記n-2番の測定値保持部へ保持させて固定するものである。
【0017】
乾燥時間演算手段103は、前記測定値の取得開始から所定時間後になると、前記0番の測定値保持部105-0に保持された測定値及び該測定値の取得時間、前記1番の測定値保持部105-1に保持された測定値及び該測定値の取得時間、・・・、前記n-1番の測定値保持部105-(n-1)に保持された測定値及び該測定値の取得時間と、前記乾燥対象物の乾燥度合の開始値及び前記乾燥対象物の乾燥完了時の乾燥度合の目標値に基づいて、前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥予測時間を演算して求めるものである。
【0018】
本体装置100は、図2に示されるパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータの構成を有する。このほかにも、スマートフォンやPDA(パーソナルディジタルアシスタント)など、図2のような構成を採用する携帯端末によって本体装置100を実現しても良い。
【0019】
図2のコンピュータは、CPU10が主メモリ11内のプログラムやデータを用いて各部を制御して乾燥予測装置として機能する。CPU10はバス12を介して外部記憶インタフェース13、入力インタフェース14、表示インタフェース15、通信インタフェース16が接続されている。
【0020】
外部記憶インタフェース13には、外部記憶装置23が接続され、入力インタフェース14には、キーボードやタッチパネルなどの入力装置24が接続されている。また、表示インタフェース15には、LCDなどの表示装置25が接続されており、画像を表示することが可能である。通信インタフェース16は通信ネットワークへ繋がる回線26が接続されており、本実施形態では乾燥度合センサ80などの他のデバイスと通信することが可能である。
【0021】
以上のように構成された乾燥予測装置では、CPU10が主メモリ11内の図3図5に示すフローチャートに対応するプログラムやデータを用いて各部を制御して乾燥予測装置として機能する。乾燥予測装置が起動されると、CPU10は各パラメータ等の初期化を行う(S11)。各パラメータ等としては、乾燥度合の開始値、乾燥完了時の乾燥度合の目標値、第1パラメータbase、第2パラメータpを挙げることができる。乾燥度合の開始値は例えば215をデフォルト値とすることができ、乾燥完了時の乾燥度合の目標値は例えば1050をデフォルト値とすることができる。
【0022】
第1パラメータbase、第2パラメータpについては、乾燥時間演算手段103が求めた乾燥予測時間にマージン要素を考慮した係数を乗じて最終乾燥予測時間を求める場合に用いるパラメータであり、後に詳細に説明する。CPU10は各パラメータ等の初期化を終えると、乾燥度合センサ80から検査対象物の乾燥度合の測定値を時系列で取得し(S12)、第0~第(n-1)のキュー(queue)へ順次に測定値を保持させ、第(n-1)のキューまで保持させると、第0のキューへ戻って第0~第(n-1)のキューへ順次に測定値を保持させる処理を繰返す(S13)。ここで、第0~第(n-1)のキューは、上述の測定値保持部105-0~105-(n-1)であり、例えば主メモリ11内に設けられる。
【0023】
上記の処理を図6に示す。ここでは、キューが、q[0]~q[15]の16個あるものとし、測定値が1秒毎に得られるものとしている。図6(a)は、3秒経過時点のq[0]~q[15]の保持内容を示す。そして、16秒経過すると図6(b)に示す如く、q[0]~q[15]に測定値と測定値の取得時間が記憶される。
【0024】
上記ステップS13に次いで、CPU10は予測出力をすべき時間が到来したかを検出し(S14)、時間が到来していなければステップS12へ戻って処理を続ける。ステップS14においてYESへ分岐すると、乾燥完了となる時間を演算出力する(S15)。出力は表示装置25においてなされる。
【0025】
本実施形態では、乾燥時間演算手段103は、前記0番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、前記1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、・・・、前記n-1番の測定値保持部に保持された測定値及び該測定値の取得時間、に対し最小二乗法を使って得た直線に基づき前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥時間を演算して前記乾燥予測時間を求める。
【0026】
ここで、最小二乗法を使って得た直線がy=ax+bとすると、最小二乗法では、aとbは、次式により求めることができる。
【数1】
【数2】
更に、
【数3】
【0027】
上記において、
【数4】
【0028】
上記(式3)におけるyは、乾燥予測時間を求めるときには、乾燥度合の目標値Yであるから、
【数5】
【0029】
本実施形態では、乾燥時間演算手段103は、最小二乗法を使って得た直線により前記測定値の取得開始から前記乾燥対象物の乾燥完了時までの乾燥時間を求め、この乾燥時間から、前記測定値の取得開始から現在時刻までの時間xnを減算して前記乾燥予測時間を求める。上記の(式4)は、
【数6】
となる。
【0030】
本実施形態では、乾燥時間演算手段103が求めた乾燥予測時間にマージン要素を考慮した係数をかけて最終乾燥予測時間を求める。そのため、前述の第1パラメータbase、第2パラメータpを用いて係数を作り出す。係数として、指数関数的に変化し、図7に示すように乾燥度合が500付近では、(式5)を1.5倍程度大きくし、乾燥度合が目標値(1020)の付近の1050では(式5)を1倍程度大きくする係数を狙って、次の式(6)のものとしてみた。ynは現在のAD値(測定値)である。
【数7】
【0031】
ここで、マージンについて図8を参照して考察する。マージン1として、乾燥が完了したときの乾燥度合が十分でない場合を考える。要は、本実施形態の乾燥予測装置が乾燥完了として表示(出力)しても、ユーザが感覚的に乾燥不十分と思う場合である。係る場合には、図8の「マージン1」に示すように、乾燥度合の目標値Yを大きく(先の1020より大きく)することが考えられる。乾燥予測装置に設定を変更できる入力キーなどを設けることができる。
【0032】
マージン2として、乾燥加減を鈍らせたいときを考える。上記(式6)の値を1より小さく0より大きな値とする。これについては、第1パラメータbase、第2パラメータpを変更すれば良いのであるが、ユーザにとっては第1パラメータbase、第2パラメータpを変更させる意味が不明と思われるので、乾燥加減を鈍らせる入力キーを設けてこれにより調整を行わせることができる。
【0033】
マージン3として、残り乾燥時間にマージンを持たせたいときを考える。上記(式6)の値を1より大きな値とする。これについても、残り乾燥時間を多めにするキーを設けて対応することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、最終乾燥予測時間を求める式は、次の(式1)であることを特徴とする。
【数8】
【0035】
本実施形態では、ステップS15に続き、第0のキューの保持内容を固定する時間の到来を検出し(S16)時間が到来していなければステップS12へ戻って処理を続け、時間が到来したときに取得された測定値を第0のキューの保持内容として固定する(S17)。なお第0のキューの保持内容を固定するタイミングと乾燥完了となる時間を演算出力するタイミングについて、いずれが先になるかは装置の設計によって変わるものであるから、ステップS16とステップS17の処理を、ステップS14とステップS15の処理よりも先に行う実施形態もある。
【0036】
図4は、第1のキューの保持内容を固定するまでの処理を示すものである。乾燥度合センサ80から検査対象物の乾燥度合の測定値を時系列で取得し(S18)、第1~第(n-1)のキュー(queue)へ順次に測定値を保持させ、第(n-1)のキューまで保持させると、第1のキューへ戻って第1~第(n-1)のキューへ順次に測定値を保持させる処理を繰返す(S19)。
【0037】
上記ステップS19に次いで、CPU10は予測出力をすべき時間が到来したかを検出し(S20)、時間が到来していなければステップS18へ戻って処理を続ける。ステップS20においてYESへ分岐すると、乾燥完了となる時間を演算出力する(S21)。この予測時間を求める処理は、既に説明した通りである。ステップS21に続き、第1のキューの保持内容を固定する時間の到来を検出し(S22)時間が到来していなければステップS18へ戻って処理を続け、時間が到来すると現時点の測定値を第1のキューへ保持させ、その保持内容を固定する(S23)。保持内容を固定して固定していない測定値保持部の保持内容を前番側へシフトする。本実施形態では、第0のキューの保持内容を固定するタイミングがスタートから1秒後、第1のキューの保持内容を固定するタイミングがスタートから2秒後であるので、第2のキュー以降の保持内容をシフトする処理が生じる。この動作を図6(c)に示す。なお第1のキューの保持内容を固定するタイミングと乾燥完了となる時間を演算出力するタイミングについて、いずれが先になるかは装置の設計によって変わるものであるから、ステップS22とステップS23の処理を、ステップS20とステップS21の処理よりも先に行う実施形態もある。
【0038】
図5は、第2のキューの以降のキューについて保持内容を固定するまでの処理と、その後の処理を示すものである。即ち、第2のキューの以降のキューについてもステップS19~S23と同様の処理が行われ(S24)、乾燥完了となる時間が演算出力されてゆく。第(n-2)のキューについて保持内容が固定されたかを検出し(S25)、第(n-2)まで進んでいなければステップS24に戻って処理が続けられる。第(n-2)のキューについて保持内容が固定された場合には、第(n-1)のキューについて保持内容を更新しながら全てのキューの保持内容を用いて乾燥完了の時間を予測し、出力を行ってゆく。
【0039】
本実施形態では、各キューの内容の固定は図9に(fix)が記載された数値に示すように開始から2n秒毎に進み、最も下の1行に一覧表示されている。第14のキューであるq[14]において、固定時間は約9時間後に固定されることが判る。当然のことながら、測定値が乾燥度合の目標値Yを超えた値となれば、第何番目かのキューが固定されたときに、予測出力は終了する。従って、全てのキューが固定状態となるまで処理が続けられる訳ではない。
【0040】
図10には、右側にキューの内容変化を示し、左側に乾燥時間演算手段103の演算(斜線枠で示す)により各時点において最小二乗法を使って得た直線の積み重ねによってできる曲線を示す。各図において、キューを8個示しているが、本実施形態は16個の例であり、9個目以降を省略してある。図10(a)は、開始から8秒経過までの各キューの内容と演算を行っている時間帯を示す。ここでは右側に最終的に積み重ねによる曲線を示しているが、実際は初期のいくつかの直線が得られている。
【0041】
図10(b)は、第0のキューであるq[0]の内容が固定されたときを示す。このときには、図10(a)と殆ど変更はない。図10(c)は、第0~第7のキューq[0]~q[7]の内容が固定されたときを示す。q[7]付近(100秒付近)の測定値が用いられていることが斜線枠により示されている。他に演算に用いられるのは、固定されたq[0]~q[7]の内容であり、離散的な時間の測定値である。
【0042】
図10(d)は、第0~第9のキューであるq[0]~q[9]の内容が固定されたときを示す。q[9]付近(1000秒付近)の測定値が用いられていることが斜線枠により示されている。他に演算に用いられるのは、固定されたq[0]~q[9]の内容であり、離散的な時間の測定値である。
【0043】
本実施形態では、最小二乗法を使って得た直線を求めるために、予測の当初からの測定値を固定して残しておいた値を用いる。このため、予測の当初からの時間が長くなるほど、全キューの数に対する固定されたキューの割合が増加し、最小二乗法を使って得る直線の傾きが変化し難くなり、乾燥の開始から乾燥の終了まで予測が大きく変動することなく、安定的な乾燥終了時間の予測を行うことができると期待できる。
【0044】
なお、本実施形態では、(式1)に示した最終乾燥予測時間を求めるときに、測定値に通常の乾燥過程における変化とは異なる変化が見られる場合に、上記0番から第n-1番の測定値保持部に保持されている取得時間及び測定値を全てリセットし、乾燥予測を最初からやり直す。当然、キューの内容の固定も最初のq[0]からやり直すものである。このようにして、誤った予測から早期に脱却できる。
【0045】
「測定値に通常の乾燥過程における変化とは異なる変化が見られる場合」の第1の例としては、変化が単にマイナスになる場合であり、測定値が減少傾向になった場合リセットする。ここに、減少傾向とは、過去の測定値と比べて一定期間、一定値以上マイナスの場合である。一定期間とは、例えば現在から2回分の過去のキューの内容(測定値)と比べて、値が小さい場合である。一定値以上をより具体的に述べると、例えば、測定装置や測定物によっては、10以上のマイナス差が発生した例を挙げることができる。
【0046】
「測定値に通常の乾燥過程における変化とは異なる変化が見られる場合」の第2の例としては、変化が単にマイナスになる場合であり、現在の測定値が、過去の固定したキューの測定値と比べて一定期間、一定値以上マイナスの場合(対象物が濡れている場合)にリセットする。ここに、一定期間とは、過去の固定したキュー(直近の固定キューの値)と比べて、たとえば、最近2回分の測定値がマイナスの場合である。一定値以上をより具体的に述べると、例えば、測定装置や測定物によっては、10以上のマイナス差が発生した例を挙げることができる。
【0047】
「測定値に通常の乾燥過程における変化とは異なる変化が見られる場合」の第3の例としては、測定値の変化が大きすぎる場合であり、短時間の間の測定値の差が大き過ぎる場合にリセットする。ここに、差が大きすぎる場合とは、例えば、測定値の範囲を0-1020とした場合、測定値において、50以上の変化が5分以内に起こった場合である。そして、測定値の差が大き過ぎる場合とは、通常乾燥スピードには変化しないため、変化が大きい場合は、何らかの外的な要因があり値が変化していると考えられるときである。より具体的に説明すると、例えば、乾燥測定機器である乾燥度合センサ80が、乾燥対象物から外れた、とか、外れているとか、雨が降ってきたなどの例を挙げることができる。
以上の3つの例は、通常の乾燥状態と異なる状態があったことを意味し、測定値に通常の乾燥過程における変化とは異なる変化が見られる場合に相当する。これらを検知した場合には、上記の如くリセットを行う。
【符号の説明】
【0048】
10 CPU 11 主メモリ
12 バス 13 外部記憶インタフェース
14 入力インタフェース 15 表示インタフェース
16 通信インタフェース 23 外部記憶装置
24 入力装置 25 表示装置
26 回線 80 乾燥度合センサ
81 通信部 100 本体装置
101 測定値保持更新制御手段 102 測定値更新停止保持内容固定手段
103 乾燥時間演算手段
105-0~105-(n-1) 測定値保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10