(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128398
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】測位装置、駆動装置、測位方法、測位プログラム
(51)【国際特許分類】
H02K 41/02 20060101AFI20230907BHJP
H02P 25/06 20160101ALI20230907BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H02K41/02 Z
H02P25/06
G01D5/244 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032725
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】岸 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 和彦
【テーマコード(参考)】
2F077
5H540
5H641
【Fターム(参考)】
2F077AA38
2F077CC02
2F077JJ03
2F077JJ07
2F077JJ23
2F077NN05
2F077NN24
2F077PP05
2F077TT57
2F077TT62
2F077TT71
2F077VV21
5H540AA01
5H540FA03
5H540FB02
5H641GG02
5H641HH03
5H641JB00
(57)【要約】
【課題】可動子に設けられる基準マークを確実に検知できる測位装置等を提供する。
【解決手段】測位装置4は、可動子に取り付けられる磁気スケールC1、C2を測位するために当該可動子の移動方向に沿って配置される複数の磁気センサS1~S5であって、その間隔が磁気スケールC1、C2の移動方向の長さより小さく、可動子に設けられるリファレンスマークZ1、Z2を検知することで当該可動子の基準位置を特定する複数の磁気センサS1~S5と、磁気スケールC1、C2が二つの隣接する磁気センサS1/S2、S2/S3、S3/S4、S4/S5の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサの検知範囲外に移動した場合、他方の磁気センサによるリファレンスマークZ1、Z2の検知を有効にする基準マーク検知有効化部41と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該可動子の移動方向に沿って配置される複数の位置検知部であって、その間隔が前記測位スケールの前記移動方向の長さより小さく、前記可動子に設けられる基準マークを検知することで当該可動子の基準位置を特定する複数の位置検知部と、
前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態から一方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、他方の位置検知部による前記基準マークの検知を有効にする基準マーク検知有効化部と、
を備える測位装置。
【請求項2】
前記基準マーク検知有効化部によって有効化された前記他方の位置検知部が前記基準マークを検知した場合、当該他方の位置検知部による当該基準マークの検知を無効にする基準マーク検知無効化部を更に備える、請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記基準マーク検知有効化部によって前記他方の位置検知部が有効化された後、当該他方の位置検知部が前記基準マークを検知する前に、前記測位スケールが前記一方の位置検知部および前記他方の位置検知部の検知範囲に跨がっている状態に戻り、更に前記他方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、当該他方の位置検知部による前記基準マークの検知を無効にする基準マーク検知無効化部を更に備える、請求項1または2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記基準マーク検知有効化部によって前記他方の位置検知部が有効化された後、当該他方の位置検知部が前記基準マークを検知する前に、前記測位スケールが前記一方の位置検知部および前記他方の位置検知部の検知範囲に跨がっている状態に戻った場合、前記他方の位置検知部による前記基準マークの検知を無効にする基準マーク検知無効化部を更に備える、請求項1または2に記載の測位装置。
【請求項5】
前記基準マーク検知有効化部によって前記他方の位置検知部が有効化された後、当該他方の位置検知部が前記基準マークを検知する前に、前記測位スケールが前記一方の位置検知部および前記他方の位置検知部の検知範囲に跨がっている状態に戻り、更に前記他方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、前記基準マーク検知有効化部は前記一方の位置検知部による前記基準マークの検知を有効にする、請求項1から4のいずれかに記載の測位装置。
【請求項6】
前記測位スケールは、前記移動方向に沿って設けられる複数の目盛りを備え、
前記位置検知部は、検知した前記各目盛りを計数する計数部を備え、
前記基準マーク検知有効化部は、二つの隣接する前記位置検知部における前記計数部の計数値が同じ態様で変化している場合に、前記測位スケールが二つの隣接する検知範囲に跨がっている状態であると判定する、
請求項1から5のいずれかに記載の測位装置。
【請求項7】
前記基準マークは、前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該二つの検知範囲に挟まれた位置にある、請求項1から6のいずれかに記載の測位装置。
【請求項8】
前記基準マークと前記測位スケールの前記移動方向の両端の各距離は、前記複数の位置検知部の間隔より小さい、請求項1から7のいずれかに記載の測位装置。
【請求項9】
軌道に沿って駆動される複数の可動子と、
前記各可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために前記軌道に沿って配置される複数の位置検知部であって、その間隔が前記測位スケールの軌道方向の長さより小さく、前記各可動子に設けられる基準マークを検知することで当該各可動子の基準位置を特定する複数の位置検知部と、
前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態から一方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、他方の位置検知部による前記基準マークの検知を有効にする基準マーク検知有効化部と、
を備える駆動装置。
【請求項10】
可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該可動子の移動方向に沿って配置される複数の位置検知部であって、その間隔が前記測位スケールの前記移動方向の長さより小さく、前記可動子に設けられる基準マークを検知することで当該可動子の基準位置を特定する複数の位置検知部を備える測位装置において、
前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態から一方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、他方の位置検知部による前記基準マークの検知を有効にする基準マーク検知有効化ステップを備える測位方法。
【請求項11】
可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該可動子の移動方向に沿って配置される複数の位置検知部であって、その間隔が前記測位スケールの前記移動方向の長さより小さく、前記可動子に設けられる基準マークを検知することで当該可動子の基準位置を特定する複数の位置検知部を備える測位装置において、
前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態から一方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、他方の位置検知部による前記基準マークの検知を有効にする基準マーク検知有効化ステップをコンピュータに実行させる測位プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動子を軌道に沿って移動させる駆動装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動子を軌道に沿って移動させる駆動装置としてのリニア搬送システムが開示されている。軌道に沿って配置された複数の磁気センサが、可動子に取り付けられた磁気スケール(すなわち可動子)を測位する。磁気センサは、可動子に設けられたリファレンスマークを検知することで、当該可動子の基準位置を特定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のリニア搬送システムでは、複数の磁気センサの間隔が磁気スケールの軌道方向の長さより小さくなっている。このため、一つの磁気スケール(すなわち可動子)が二つの隣接する磁気センサの検知範囲に跨がることがある。また、複数の可動子が存在する場合、二つの異なる磁気スケール(すなわち可動子)が二つの隣接する磁気センサの検知範囲に同時に入ることがある。このように複雑な場合であっても、磁気センサは各リファレンスマークを確実に検知し、当該各リファレンスマークが設けられた可動子を特定できなければならない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、可動子に設けられる基準マークを確実に検知できる測位装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測位装置は、可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該可動子の移動方向に沿って配置される複数の位置検知部であって、その間隔が測位スケールの移動方向の長さより小さく、可動子に設けられる基準マークを検知することで当該可動子の基準位置を特定する複数の位置検知部と、測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に跨がっている状態から一方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、他方の位置検知部による基準マークの検知を有効にする基準マーク検知有効化部と、を備える。
【0007】
この態様では、測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に跨がっている状態から一方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、他方の位置検知部による基準マークの検知が有効にされる。例えば複数の可動子(すなわち測位スケール)が存在する場合に、二つの異なる測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に同時に入ったとしても、その状態では基準マークの検知が有効にされないため、基準マークの誤検知を防止できる。
【0008】
本発明の別の態様は、駆動装置である。この装置は、軌道に沿って駆動される複数の可動子と、各可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために軌道に沿って配置される複数の位置検知部であって、その間隔が測位スケールの軌道方向の長さより小さく、各可動子に設けられる基準マークを検知することで当該各可動子の基準位置を特定する複数の位置検知部と、測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に跨がっている状態から一方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、他方の位置検知部による基準マークの検知を有効にする基準マーク検知有効化部と、を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様は、測位方法である。この方法は、可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該可動子の移動方向に沿って配置される複数の位置検知部であって、その間隔が測位スケールの移動方向の長さより小さく、可動子に設けられる基準マークを検知することで当該可動子の基準位置を特定する複数の位置検知部を備える測位装置において、測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に跨がっている状態から一方の位置検知部の検知範囲外に移動した場合、他方の位置検知部による基準マークの検知を有効にする基準マーク検知有効化ステップを備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可動子に設けられる基準マークを確実に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】リニア搬送システムの全体構造を示す斜視図である。
【
図2】リニア搬送システムにおける位置検知部および測位スケールによって構成される測位装置を模式的に示す。
【
図3】移動する磁気スケールの測位主体が移動元の磁気センサから移動先の磁気センサに切り替わる様子を模式的に示す。
【
図4】基準マーク検知有効化部および/または基準マーク検知無効化部を利用しない実施例を示す。
【
図5】基準マーク検知有効化部および/または基準マーク検知無効化部を利用しない実施例を示す。
【
図6】基準マーク検知有効化部および/または基準マーク検知無効化部を利用する実施例を示す。
【
図7】基準マーク検知有効化部および/または基準マーク検知無効化部を利用する実施例を示す。
【
図8】最小接近可能距離まで接近した二つの磁気スケールが、一つの磁気センサの検知範囲に同時に入っている状態を模式的に示す。
【
図9】複数の可動子が等速度で移動している第1の実施例を示す。
【
図10】複数の可動子が等速度で移動している第1の実施例を示す。
【
図11】複数の可動子が等速度で移動している第2の実施例を示す。
【
図12】複数の可動子が等速度で移動している第2の実施例を示す。
【
図13】複数の可動子が等速度で移動している第3の実施例を示す。
【
図14】複数の可動子が等速度で移動している第3の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明に係る駆動装置の一態様であるリニア搬送システム1の全体構造を示す斜視図である。リニア搬送システム1は、環状のレールまたは軌道を構成する固定子2と、当該固定子2に対して駆動されレールに沿って移動可能な複数の可動子3A、3B、3C、3D(以下では可動子3と総称する)を備える。固定子2に設けられる電磁石またはコイルと、可動子3に設けられる永久磁石が互いに対向することで、環状のレールに沿ってリニアモータが構成されている。なお、固定子2が形成するレールは環状に限らない任意の形状でよい。例えば、レールは直線状でもよいし、曲線状でもよいし、一つのレールが複数のレールに分岐してもよいし、複数のレールが一つのレールに合流してもよい。また、固定子2が形成するレールの設置方向も任意である、
図1の例では水平面内にレールが配設されるが、レールは鉛直面内に配設されてもよいし、任意の傾斜角の平面内や曲面内に配設されてもよい。
【0015】
固定子2は、水平方向を法線方向とするレール面21を有する。レール面21はレールの形成方向に沿って帯状に延在し、
図1の例のように環状のレールを形成する場合は(仮想的な)両端が連結された無端帯状となる。このように任意の形状のレールを形成可能なレール面21には、電磁石を備える複数の駆動モジュール(不図示)が、レールに沿って連続的または周期的に埋設または配置されている。駆動モジュールにおける電磁石は、可動子3の永久磁石および/または電磁石自体に対してレールに沿った推進力を及ぼす磁界を発生させる。具体的には、これらの多数の電磁石に三相交流等の駆動電流を流すと、永久磁石を備える可動子3をレールに沿う所望の接線方向に直線駆動する移動磁界が発生する。なお、
図1の例では環状のレールを水平面内に形成するレール面21の法線方向が水平方向であったが、レール面21の法線方向は鉛直方向その他の任意の方向でもよい。
【0016】
固定子2において、レール面21に対して垂直な上面または下面に設けられる測位部22には、可動子3に取り付けられる測位対象または測位スケールとしての磁気スケール(
図1では不図示)の位置を測定可能な複数の位置検知部としての磁気センサ(
図1では不図示)が連続的にまたは周期的に埋設されている。一定ピッチの縞状の磁気パターンまたは磁気目盛りによって形成される磁気スケールを測位対象とする磁気センサは、一般的に複数の磁気検出ヘッドを備える。磁気スケールの磁気パターンのピッチまたは周期に対して、複数の磁気検出ヘッドの間隔をずらすことによって、磁気センサは磁気スケールの位置を高精度に測定できる。二つの磁気検出ヘッドが設けられる典型的な磁気センサでは、例えば、二つの磁気検出ヘッドの間隔が磁気スケールの磁気パターンに対して1/4ピッチずれている(位相が90度ずれている)。なお、以上とは逆に、可動子3に磁気センサを設け、固定子2に磁気スケールを設けてもよい。また、測位部22によって測定された可動子3の位置を時間で微分すれば可動子3の速度を検知でき、当該速度を時間で微分すれば可動子3の加速度を検知できる。
【0017】
固定子2に設けられる位置検知部および可動子3に取り付けられる測位対象または測位スケールは以上のような磁気式に限らず、光学式その他の方式でもよい。光学式の場合、可動子3には一定ピッチの縞模様または目盛りによって形成される光学スケールが取り付けられ、固定子2には光学スケールの縞模様を光学的に読み取り可能な光学センサが設けられる。磁気式や光学式では、位置検知部が測位対象(磁気スケールや光学スケール)を非接触で測定するため、可動子3が搬送する被搬送物が飛散して測位箇所(固定子2の上面)に入り込んだ場合の位置検知部の故障等のリスクを低減できる。但し、光学式では測位箇所に入り込んだ液体や粉体等の被搬送物によって光学スケールが覆われると測位精度が悪化してしまうため、磁性が無視できる被搬送物であれば測位箇所に入り込んでも測位精度を悪化させない磁気式とするのが好ましい。
【0018】
可動子3は、固定子2のレール面21に対向する可動子本体31と、可動子本体31の上部から水平方向に張り出して固定子2の測位部22に対向する被測位部32と、被測位部32とは反対側(固定子2から遠い側)に可動子本体31から水平方向に張り出して被搬送物が載置または固定される搬送部33を備える。可動子本体31は、レールに沿って固定子2のレール面21に埋設されている複数の電磁石と対向する一または複数の永久磁石(不図示)を備える。固定子2の電磁石が発生させる移動磁界が可動子3の永久磁石および/または電磁石自体にレールの接線方向の直線動力または推進力を加えるため、可動子3は固定子2に対してレール面21に沿って直線駆動される。
【0019】
可動子3の被測位部32には、測位対象または測位スケールとしての磁気スケールや光学スケールが、固定子2の測位部22に設けられる位置検知部(磁気センサや光学センサ)と対向するように設けられる。位置検知部が固定子2の上面に設けられる
図1の例では、磁気スケール等の測位対象が可動子3の被測位部32の下面に取り付けられる。測位部22および被測位部32が磁気式の場合、レール面21の電磁石および可動子本体31の永久磁石の間の磁界が、測位部22および被測位部32の磁気測位に影響しないように、固定子2においてはレール面21と測位部22を異なる面または離れた箇所に形成し、可動子3においては可動子本体31と被測位部32を異なる面または離れた箇所に形成するのが好ましい。
【0020】
図1では四つの可動子3A、3B、3C、3Dが例示されたが、例えば少量の被搬送物を多数搬送するリニア搬送システム1では、1,000を超える数の可動子3が必要になることも想定される。このような場合、二つの異なる測位スケール(すなわち可動子3)が二つの隣接する位置検知部の検知範囲に同時に入る事態が頻発する。また、互いに近接している二つの可動子3(すなわち測位スケール)が、一つの位置検知部の検知範囲に同時に入ってしまう可能性もある。このように複雑な場合であっても、各位置検知部は以下で述べる可動子3のリファレンスマークを確実に検知し、当該各リファレンスマークが設けられた可動子3を一意的に特定できなければならない。
【0021】
図2は、リニア搬送システム1における位置検知部および測位スケールによって構成される測位装置4を模式的に示す。測位装置4は、複数(図示の例では二つ)の可動子C1、C2に取り付けられる測位スケールとしての磁気スケール(以下では便宜的に磁気スケールC1、C2ともいう)を測位するために、固定子2の軌道方向または可動子C1、C2の移動方向(
図2における左右方向)に沿ってレール面21に埋設または配置される複数(図示の例では五つ)の位置検知部としての磁気センサS1~S5を備える。
【0022】
各磁気センサS1~S5の移動方向の間隔は互いに異なっていてもよいが、本実施形態では全ての間隔が等しい例を説明する。この場合の各磁気センサS1~S5の移動方向の間隔は例えば30mmである。また、各磁気スケールC1、C2の移動方向の長さも互いに異なっていてもよいが、本実施形態では全ての長さが等しい例を説明する。この場合の各磁気スケールC1、C2の移動方向の長さは例えば48mmである。このように、本実施形態では、各磁気センサS1~S5の移動方向の間隔(30mm)が、各磁気スケールC1、C2の移動方向の長さ(48mm)より小さい。
【0023】
磁気スケールC1は、移動方向における両端部E1L、E1Rと、当該両端部E1L、E1Rに移動方向の両側から挟まれた長尺のスケール本体AB1を有する。スケール本体AB1には、移動方向に沿って等間隔に設けられる多数の磁気目盛りまたは磁気パターンが形成されている。スケール本体AB1における磁気目盛りを検知した各磁気センサS1~S5は、公知のリニアエンコーダにおいて一般的なA相およびB相のパルスを出力する。典型的には、A相のパルスとB相のパルスは位相が互いに90度異なっている。なお、磁気スケールC1の両端部E1L、E1Rにも、スケール本体AB1と同様の磁気目盛りが形成されていてもよい。
【0024】
磁気スケールC1の各端部E1L、E1Rの移動方向の長さは例えば8mmである。この場合のスケール本体AB1の移動方向の長さは、磁気スケールC1の長さ48mmから両端部E1L、E1Rの合計の長さ16mmを引いた32mmである。このように、本実施形態では、各磁気センサS1~S5の移動方向の間隔(30mm)が、磁気スケールC1のスケール本体AB1移動方向の長さ(32mm)より小さい。
【0025】
可動子C1および/または磁気スケールC1には基準マークとしてのリファレンスマークZ1が設けられる。リファレンスマークZ1を磁気的に検知した各磁気センサS1~S5は、公知のリニアエンコーダにおいて一般的なZ相のパルスを出力する。詳しくは後述するが、リファレンスマークZ1に応じて出力されるZ相のパルスは可動子C1の基準位置の特定に利用される。図示の例では、リファレンスマークZ1が磁気スケールC1および/またはスケール本体AB1の移動方向の中央に設けられる。リファレンスマークZ1と磁気スケールC1の移動方向の両端の各距離(24mm)は、複数の磁気センサS1~S5の間隔(30mm)より小さい。また、リファレンスマークZ1とスケール本体AB1の移動方向の両端の各距離(16mm)は、複数の磁気センサS1~S5の間隔(30mm)より小さい。
【0026】
以上の磁気スケールC1についての説明は、磁気スケールC2等の他の磁気スケールにも同様に当てはまる。但し、以上の各部の寸法やリファレンスマークの位置は磁気スケール毎に任意に決められる。以下でも特に言及しない限り、磁気スケールC1についての説明は磁気スケールC2等にも同様に当てはまるものとし、磁気スケールC2等についての重複する説明は省略する。
【0027】
各磁気センサS1~S5は、磁気スケールC1のスケール本体AB1および/または両端部E1L、E1Rに形成されているA/B相の磁気目盛りを計数する計数部51~55を備える。各計数部51~55における計数値の増減の方向は、各磁気センサS1~S5が検知する磁気スケールC1(すなわち可動子C1)の移動方向に対応する。例えば、可動子C1が
図2における左側から右側に移動する場合に各計数部51~55における計数値が、各磁気センサS1~S5が出力するA/B相のパルスの数に応じて増加し、可動子C1が
図2における右側から左側に移動する場合に各計数部51~55における計数値が、各磁気センサS1~S5が出力するA/B相のパルスの数に応じて減少する。
【0028】
可動子C1がレール上を移動すると、その磁気スケールC1を測位する磁気センサS1~S5が順次切り替わる。
図3は、左側から右側に移動する磁気スケールC1の測位主体が移動元の磁気センサS1から移動先の磁気センサS2に切り替わる様子を模式的に示す。図示されるように、磁気センサS1、S2の切り替えは、磁気スケールC1のスケール本体AB1が二つの隣接する磁気センサS1、S2の検知範囲に跨がっている状態で行われる。図示の例では、磁気センサS1、S2が磁気スケールC1の移動方向の中央(リファレンスマークZ1の位置)に関して対称な位置SW1、SW2にあるタイミングで、磁気スケールC1の測位主体が磁気センサS1から磁気センサS2に切り替えられる。
【0029】
第1切替位置SW1は、左端部E1Lとスケール本体AB1の境界から所定距離のスケール本体AB1内の位置であり、第2切替位置SW2は、右端部E1Rとスケール本体AB1の境界から所定距離のスケール本体AB1内の位置である。図示の例では、第1切替位置SW1のスケール本体AB1の左端からの距離と、第2切替位置SW2のスケール本体AB1の右端からの距離は例えば1mmである。この場合、第1切替位置SW1のスケール本体AB1の中央からの距離と、第2切替位置SW2のスケール本体AB1の中央からの距離は15mmであり、その和(30mm)が磁気センサS1、S2の間隔と一致する。
【0030】
磁気スケールC1の測位主体が磁気センサS1から磁気センサS2に切り替わる際、移動元の磁気センサS1の計数部51の計数値が、移動先の磁気センサS2の計数部52の計数値に引き継がれる。以下では、各磁気センサS1~S5が磁気スケールC1の中央(リファレンスマークZ1の位置)を検知する場合の各計数部51~55の計数値を零、各磁気センサS1~S5が磁気スケールC1の中央より可動子C1の移動方向と反対側(
図3における左側)において磁気目盛りを検知する場合の各計数部51~55の計数値を正、各磁気センサS1~S5が磁気スケールC1の中央より可動子C1の移動方向側(
図3における右側)において磁気目盛りを検知する場合の各計数部51~55の計数値を負とする。
【0031】
図示の例では、リファレンスマークZ1の位置が計数値「0」に対応し、第1切替位置SW1が例えば計数値「+15,000」に対応し、第2切替位置SW2が例えば計数値「-15,000」に対応する。以下では、第1切替位置SW1の計数値「+15,000」を切替計数値ともいい、第2切替位置SW2の計数値「-15,000」を開始計数値ともいう。図示の例では、切替計数値と開始計数値は正負の符号のみが異なる。図示の状態において磁気スケールC1の第1切替位置SW1が磁気センサS1の上に来ると、その計数部51の切替計数値「+15,000」が第2切替位置SW2にある磁気センサS2の計数部52の開始計数値「-15,000」に変換される。以降は磁気センサS2が磁気スケールC1の測位主体となって、その計数部52が開始計数値「-15,000」から次の(磁気センサS3への)切替計数値「+15,000」まで計数する。
【0032】
図2における基準マーク検知制御部40は、各計数部51~55における計数値に応じて各磁気センサS1~S5によるリファレンスマークZ1の検知を有効にする基準マーク検知有効化部41と、各計数部51~55における計数値に応じて各磁気センサS1~S5によるリファレンスマークZ1の検知を無効にする基準マーク検知無効化部42を備える。
【0033】
基準マーク検知有効化部41および/または基準マーク検知無効化部42によるリファレンスマークZ1の検知の制御について説明する前に他の実施例を
図4および
図5に示す。
図4に示されるように、可動子C1をリニア搬送システム1で初めて使用する場合、磁気スケールC1のリファレンスマークZ1を複数の磁気センサ(
図4の例ではS1、S2)のいずれかによって検知することで、可動子C1の基準位置または初期位置を特定または登録する必要がある。各磁気センサS1、S2は、リファレンスマークZ1を確実に検知し、当該リファレンスマークZ1が可動子C1のものであることを特定できなければならない。そこで、リファレンスマークZ1および/または可動子C1の誤検知を防止するため、各磁気センサS1、S2は原則としてリファレンスマークZ1を検知できない状態にあり、確実にリファレンスマークZ1および可動子C1を検知できる場合に限ってリファレンスマークZ1の検知が有効化される。
【0034】
図4に示されるように、リニア搬送システム1に初期位置が未登録の可動子C1が、磁気センサS1の左方から右方に向かってレールに沿って移動してくるものとする。
図4の状態における磁気スケールC1の位置は、いずれの磁気センサS1、S2の上にもなく、
図5において「S1左」と示されている。この「S1左」の状態では、いずれの磁気センサS1、S2も磁気スケールC1のA/B相の磁気目盛りを検知していないため、それぞれの計数部51、52(
図2)の計数値を模式的に表す
図5における「S1-A/B相」および「S2-A/B相」がいずれも「0」になっている。
【0035】
可動子C1が
図4の状態から移動して、その磁気スケールC1の少なくとも右端部E1Rが磁気センサS1の上に来ると、当該磁気センサS1が右端部E1Rおよび/またはスケール本体AB1に形成されているA/B相の磁気目盛りを検知し、計数部51における計数値が磁気センサS1からのA/B相のパルスの数に応じて増加する。
図5の例では、磁気スケールC1の「スケール位置」が「S1左」から「S1上」に切り替わると、計数部51の計数値を表す「S1-A/B相」が「1」から「12」まで増加する。この「S1上」の状態では、磁気スケールC1が磁気センサS2の上になく、当該磁気センサS2が磁気スケールC1のA/B相の磁気目盛りを検知していないため、計数部52の計数値を表す「S2-A/B相」は「0」のままである。なお、本実施例では説明の簡素化のために、計数値「18」が一つの磁気スケールの全長を表すものとするが、実際のリニア搬送システム1における一つの磁気スケール当たりの計数値は非常に大きく、例えば
図3に関して前述したように「30,000」(「-15,000」~「+15,000」)程度である。
【0036】
図5の「S1-A/B相」の計数値が「9」になった時点で「S1-Z相」の欄に現れる「Z」は、磁気センサS1の上にリファレンスマークZ1が来ていることを意味する。しかし、前述のように磁気センサS1は原則としてリファレンスマークZ1を検知できない状態にある(「S1-Z検出」が「不可」になっている)ため、「S1-A/B相」の計数値が「9」になった時点におけるリファレンスマークZ1を検知しない。
【0037】
図5の「S1-A/B相」の計数値が「13」~「18」の間は、磁気スケールC1が磁気センサS1、S2の両方の上にある「S1&S2上」の状態になっている。具体的には、磁気スケールC1におけるリファレンスマークZ1より左側の部分(左端部E1Lやスケール本体AB1の左側の部分)が磁気センサS1の上にあり、磁気スケールC1におけるリファレンスマークZ1より右側の部分(右端部E1Rやスケール本体AB1の右側の部分)が磁気センサS2の上にある。この「S1&S2上」の状態では、いずれの磁気センサS1、S2も磁気スケールC1のA/B相の磁気目盛りを検知しているため、それぞれの計数部51、52の計数値を表す「S1-A/B相」および「S2-A/B相」がいずれも同様に増加する。
【0038】
本実施例では、「S1-A/B相」および「S2-A/B相」が略同じタイミングで同じ方向に所定計数値分(図示の例では「3」計数値分)連続して増減した場合、その増減方向すなわち可動子C1の移動方向側の磁気センサによるリファレンスマークZ1の検知が有効化される。図示の例では、「S1-A/B相」の「13」~「15」の増加と「S2-A/B相」の「1」~「3」の増加が略同じタイミングで「3」計数値分連続して発生するため、増加方向すなわち可動子C1の左側から右側への移動方向側(つまり右側)の磁気センサS2によるリファレンスマークZ1の検知が有効化される。こうして「S2-A/B相」の計数値「4」以降において「S2-Z検出」が「不可」から「可」に切り替わる。
【0039】
この状態で「S2-A/B相」の計数値が「9」になると磁気センサS2の上にリファレンスマークZ1が来る(「S2-Z相」の欄に「Z」が現れる)ため、当該磁気センサS2によってリファレンスマークZ1が検知されて可動子C1の初期位置がリニア搬送システム1に登録される。なお、「S2-A/B相」の計数値が「9」の時点では磁気スケールC1が磁気センサS1を右側に通過しているため、「スケール位置」は磁気スケールC1が磁気センサS2上(のみ)にあることを意味する「S2上」となっており、「S1-A/B相」の計数値は最大値の「18」のまま一定である。
【0040】
以上のように
図4および
図5の実施例では、二つの隣接する磁気センサS1、S2の計数値が略同じタイミングで同じ方向に所定計数値分連続して変化した場合に限って、可動子C1の移動方向側の磁気センサS2によるリファレンスマークZ1の検知が有効化されるため、両磁気センサS1、S2で同時に検知した可動子C1のリファレンスマークZ1を移動先の磁気センサS2で確実に検知できる。しかし、互いに近接している二つの可動子が等速度で移動している場合、各可動子を個別に検知する二つの隣接する磁気センサの計数値が略同じタイミングで同じ方向に所定計数値分連続して変化するという状況が実現されてしまうため、リファレンスマークおよび/または可動子を誤検知してしまう可能性が残る。以下で説明する本実施形態によれば、
図2に示した構成(特に、基準マーク検知有効化部41および/または基準マーク検知無効化部42)によって、リファレンスマークおよび/または可動子の誤検知の可能性を更に低減できる。
【0041】
図2において、基準マーク検知有効化部41は、各計数部51~55における計数値に基づいて、磁気スケールC1、C2が二つの隣接する磁気センサS1/S2、S2/S3、S3/S4、S4/S5の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS1~S5の検知範囲外に移動した場合、他方の磁気センサS1~S5によるリファレンスマークZ1、Z2の検知を有効にする。
【0042】
図6および
図7に示される単純な実施例では、基準マーク検知有効化部41が、計数部51、52(
図6では不図示)における計数値に基づいて、磁気スケールC1が二つの隣接する磁気センサS1/S2の検知範囲に跨がっている状態から、破線で示されるように一方の磁気センサS1の検知範囲外に移動した場合、可動子C1の移動方向側の他方の磁気センサS2によるリファレンスマークZ1の検知を有効にする。
【0043】
図7に示されるように、基準マーク検知有効化部41は、
図5と同様に二つの隣接する磁気センサS1、S2における計数部51、52の計数値が同じ態様で変化している(図示の例では、磁気センサS1の計数値が「13」~「15」に増加している間に、磁気センサS2の計数値が「1」~「3」に増加している)場合に、磁気スケールC1が二つの隣接する検知範囲に跨がっている「S1&S2上」の状態であると判定する。この「S1&S2上」の状態における磁気スケールC1は、
図6に実線で示されるように磁気センサS1、S2の両方の上にある。この時のリファレンスマークZ1は、二つの隣接する磁気センサS1、S2の検知範囲に挟まれた位置にある。
【0044】
図7に示されるように、磁気スケールC1が二つの隣接する検知範囲に跨がっている「S1&S2上」の状態は、磁気センサS1の計数値が「18」および磁気センサS2の計数値が「6」になるまで継続し、更に磁気センサS1の計数値が「18」のまま磁気センサS2の計数値だけが「7」に増加すると、
図6に破線で示されるように可動子C1が移動方向と反対側の一方の磁気センサS1の検知範囲外に移動して「S2上」の状態となる。そこで、基準マーク検知有効化部41は、磁気センサS2だけの計数値が「7」に増加したタイミングで、可動子C1の移動方向側の他方の磁気センサS2によるリファレンスマークZ1の検知を有効にする。なお、基準マーク検知有効化部41は、磁気センサS1が磁気スケールC1のA/B相の磁気目盛りを検知できなくなったタイミングで、可動子C1の移動方向側の他方の磁気センサS2によるリファレンスマークZ1の検知を有効にしてもよい。
【0045】
この時点のリファレンスマークZ1は
図6に破線で示されるように依然として二つの隣接する磁気センサS1、S2の検知範囲に挟まれた位置にあるため、可動子C1が更に同じ方向に移動することでリファレンスマークZ1が磁気センサS2の上に来る。具体的には、磁気センサS2の計数値が「9」になると磁気センサS2の上にリファレンスマークZ1が来る(「S2-Z相」の欄に「Z」が現れる)ため、当該磁気センサS2によってリファレンスマークZ1が検知されて可動子C1の初期位置がリニア搬送システム1に登録される。
図2における基準マーク検知無効化部42は、基準マーク検知有効化部41によってS2計数値「7」で有効化された移動方向側の他方の磁気センサS2がS2計数値「9」でリファレンスマークZ1を検知した場合、当該他方の磁気センサS2による当該リファレンスマークZ1の検知をS2計数値「10」以降で無効にする(「S2-Z検出」を「不可」にする)。
【0046】
続いて、複数の可動子が存在する場合について説明する。この場合、互いに近接している二つの可動子(すなわち磁気スケール)が、一つの磁気センサの検知範囲に同時に入ってしまう可能性があるため、
図8に示すような各磁気スケールの誤検知防止のための措置を予め講じておくのが好ましい。
【0047】
図8では、最小接近可能距離まで接近した二つの磁気スケールC1、C2が、一つの磁気センサS1~S5の検知範囲Rに同時に入っている状態を模式的に示す。この例では、二つの磁気スケールC1、C2の最小接近可能距離(図示の状態における磁気スケールC1の右端と磁気スケールC2の左端の距離)が2mmであり、磁気センサS1~S5の検知範囲Rの軌道方向(
図8における左右方向)の長さが5mmである。前述のように、磁気スケールC1の右端部E1Rおよび磁気スケールC2の左端部E2Lには、磁気スケールC1のスケール本体AB1および磁気スケールC2のスケール本体AB2と同様にA/B相の磁気目盛りが形成されているため、図示の状態では磁気センサS1~S5が右端部E1RのA/B相の磁気目盛りと左端部E2LのA/B相の磁気目盛りを同時に検知してしまう。この場合の磁気センサS1~S5は二つの磁気スケールC1、C2を区別して検知できない。
【0048】
このように近接した二つの磁気スケールC1、C2の誤検知を防止するために、磁気スケールC1の右端部E1Rおよび/または磁気スケールC2の左端部E2Lを磁気センサS1~S5の検知範囲Rから遮蔽する遮蔽部材B1Rおよび/または遮蔽部材B2Lが設けられる。
【0049】
遮蔽部材B1Rは、磁気スケールC1の右端部E1Rにおいて、少なくともスケール本体AB1から遠い右端側に設けられるA/B相の磁気目盛りを遮蔽する。具体的には、前述のように全長8mmの右端部E1Rのうち、右端側の部分が遮蔽部材B1Rによって遮蔽される。遮蔽部材B1Rの軌道方向の長さを、磁気センサS1~S5の検知範囲Rの軌道方向の長さ(5mm)以上とすれば、遮蔽部材B1R単独で磁気センサS1~S5の検知範囲Rを遮蔽して、磁気スケールC1が磁気スケールC2と同時に検知されることを防止できる。また、遮蔽部材B1Rの軌道方向の長さを、磁気センサS1~S5の検知範囲Rの軌道方向の長さ(5mm)から可動子C1、C2の最小接近可能距離(2mm)を引いた長さ(3mm)以上とすれば、遮蔽部材B1R単独で磁気センサS1~S5の検知範囲Rを実質的に遮蔽して、磁気スケールC1が磁気スケールC2と同時に検知されることを防止できる。更に、遮蔽部材B1Rの軌道方向の長さを、磁気センサS1~S5の検知範囲Rの軌道方向の長さ(5mm)から可動子C1、C2の最小接近可能距離(2mm)を引いた長さ(3mm)の半分(1.5mm)以上とすれば、同様の長さの遮蔽部材B2Lと共に磁気センサS1~S5の検知範囲Rを実質的に遮蔽して、磁気スケールC1が磁気スケールC2と同時に検知されることを防止できる。
【0050】
遮蔽部材B2Lは、磁気スケールC2の左端部E2Lにおいて、少なくともスケール本体AB2から遠い左端側に設けられるA/B相の磁気目盛りを遮蔽する。具体的には、前述のように全長8mmの左端部E2Lのうち、左端側の部分が遮蔽部材B2Lによって遮蔽される。遮蔽部材B2Lの軌道方向の長さを、磁気センサS1~S5の検知範囲Rの軌道方向の長さ(5mm)以上とすれば、遮蔽部材B2L単独で磁気センサS1~S5の検知範囲Rを遮蔽して、磁気スケールC2が磁気スケールC1と同時に検知されることを防止できる。また、遮蔽部材B2Lの軌道方向の長さを、磁気センサS1~S5の検知範囲Rの軌道方向の長さ(5mm)から可動子C1、C2の最小接近可能距離(2mm)を引いた長さ(3mm)以上とすれば、遮蔽部材B2L単独で磁気センサS1~S5の検知範囲Rを実質的に遮蔽して、磁気スケールC2が磁気スケールC1と同時に検知されることを防止できる。更に、遮蔽部材B2Lの軌道方向の長さを、磁気センサS1~S5の検知範囲Rの軌道方向の長さ(5mm)から可動子C1、C2の最小接近可能距離(2mm)を引いた長さ(3mm)の半分(1.5mm)以上とすれば、同様の長さの遮蔽部材B1Rと共に磁気センサS1~S5の検知範囲Rを実質的に遮蔽して、磁気スケールC2が磁気スケールC1と同時に検知されることを防止できる。
【0051】
磁気スケールC1において、右端部の遮蔽部材B1R(または磁気スケールC2の左端部の遮蔽部材B2L)と同様の遮蔽部材が不図示の左端部に設けられてもよいし、左端部のみに遮蔽部材が設けられてもよい。同様に、磁気スケールC2において、左端部の遮蔽部材B2L(または磁気スケールC1の右端部の遮蔽部材B1R)と同様の遮蔽部材が不図示の右端部に設けられてもよいし、右端部のみに遮蔽部材が設けられてもよい。
【0052】
遮蔽部材B1Rおよび/または遮蔽部材B2Lは、磁気スケールC1および/または磁気スケールC2の少なくとも一方の端部を磁気センサS1~S5から磁気的に遮蔽する強磁性材料によって形成される。強磁性材料としては、鉄、コバルト、ニッケル、ガドリニウム、マンガン等の金属や合金が例示される。なお、測位スケールとして磁気スケールの代わりに光学スケールが用いられる場合は、位置検知部としての光学センサを光学的に遮蔽する遮光材料によって遮蔽部材を形成すればよい。以上のように、
図8のような措置を講じることによって、互いに近接している二つの可動子の測位スケールの端部が一つの位置検知部の検知範囲に同時に入ったとしても、当該端部の少なくとも一方に設けられる遮蔽部材によって、二つの測位スケールが位置検知部によって同時に誤検知されることを防止できる。
【0053】
続いて、
図4および
図5の実施例(基準マーク検知有効化部41および/または基準マーク検知無効化部42を利用しない実施例)ではリファレンスマークおよび/または可動子を誤検知してしまう可能性があった、互いに近接している二つの可動子が等速度で移動している複数の実施例について説明する。
【0054】
図9および
図10に示される第1の実施例では、
図9に示される初期状態(初期位置が未登録の可動子C1、C2が右方向への移動を開始する状態)において、可動子C1が磁気センサS2、S3の両方の上にあり、可動子C2が磁気センサS4の上にある。
図10に示されるように、基準マーク検知有効化部41は、計数部52、53における計数値に基づいて、磁気スケールC1が二つの隣接する磁気センサS2/S3の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS2の検知範囲外に移動した場合、可動子C1の移動方向側の他方の磁気センサS3によるリファレンスマークZ1の検知を有効にする。
【0055】
この状態で可動子C1が更に同じ方向に移動すると、磁気センサS3の上にリファレンスマークZ1が来るため、当該磁気センサS3によってリファレンスマークZ1が検知されて可動子C1の初期位置がリニア搬送システム1に登録される。基準マーク検知無効化部42は、磁気センサS3によってリファレンスマークZ1が検知された後、当該磁気センサS3による当該リファレンスマークZ1の検知を無効にする。なお、この後に磁気スケールC1が二つの隣接する磁気センサS3/S4の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS3の検知範囲外に移動する事態が発生するが、磁気スケールC1のリファレンスマークZ1は磁気センサS3によって検知済であるため、磁気センサS4によるリファレンスマークZ1の検知は有効にされない。
【0056】
一方、基準マーク検知有効化部41は、計数部54、55における計数値に基づいて、磁気スケールC2が二つの隣接する磁気センサS4/S5の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS4の検知範囲外に移動した場合、可動子C2の移動方向側の他方の磁気センサS5によるリファレンスマークZ2の検知を有効にする。この状態で可動子C2が更に同じ方向に移動すると、磁気センサS5の上にリファレンスマークZ2が来るため、当該磁気センサS5によってリファレンスマークZ2が検知されて可動子C2の初期位置がリニア搬送システム1に登録される。基準マーク検知無効化部42は、磁気センサS5によってリファレンスマークZ2が検知された後、当該磁気センサS5による当該リファレンスマークZ2の検知を無効にする。以上のように、互いに近接している二つの可動子C1、C2が等速度で移動している場合でも、各可動子C1、C2のリファレンスマークZ1、Z2を確実に検知できる。
【0057】
図11および
図12に示される第2の実施例では、
図11に示される初期状態において、可動子C1が磁気センサS2の上にあり、可動子C2が磁気センサS3、S4の両方の上にある。
図12に示されるように、基準マーク検知有効化部41は、計数部53、54における計数値に基づいて、磁気スケールC2が二つの隣接する磁気センサS3/S4の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS3の検知範囲外に移動した場合、可動子C2の移動方向側の他方の磁気センサS4によるリファレンスマークZ2の検知を有効にする。
【0058】
この状態で可動子C2が更に同じ方向に移動すると、磁気センサS4の上にリファレンスマークZ2が来るため、当該磁気センサS4によってリファレンスマークZ2が検知されて可動子C2の初期位置がリニア搬送システム1に登録される。基準マーク検知無効化部42は、磁気センサS4によってリファレンスマークZ2が検知された後、当該磁気センサS4による当該リファレンスマークZ2の検知を無効にする。なお、この後に磁気スケールC2が二つの隣接する磁気センサS4/S5の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS4の検知範囲外に移動する事態が発生するが、磁気スケールC2のリファレンスマークZ2は磁気センサS4によって検知済であるため、磁気センサS5によるリファレンスマークZ2の検知は有効にされない。
【0059】
一方、基準マーク検知有効化部41は、計数部52、53における計数値に基づいて、磁気スケールC1が二つの隣接する磁気センサS2/S3の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS2の検知範囲外に移動した場合、可動子C1の移動方向側の他方の磁気センサS3によるリファレンスマークZ1の検知を有効にする。この状態で可動子C1が更に同じ方向に移動すると、磁気センサS3の上にリファレンスマークZ1が来るため、当該磁気センサS3によってリファレンスマークZ1が検知されて可動子C1の初期位置がリニア搬送システム1に登録される。基準マーク検知無効化部42は、磁気センサS3によってリファレンスマークZ1が検知された後、当該磁気センサS3による当該リファレンスマークZ1の検知を無効にする。以上のように、互いに近接している二つの可動子C1、C2が等速度で移動している場合でも、各可動子C1、C2のリファレンスマークZ1、Z2を確実に検知できる。
【0060】
図13および
図14に示される第3の実施例では、
図13に示される初期状態において、可動子C1が磁気センサS1、S2の両方の上にあり、可動子C2が磁気センサS3、S4の両方の上にある。
図14に示されるように、基準マーク検知有効化部41は、計数部51、52における計数値に基づいて、磁気スケールC1が二つの隣接する磁気センサS1/S2の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS1の検知範囲外に移動した場合、可動子C1の移動方向側の他方の磁気センサS2によるリファレンスマークZ1の検知を有効にする。
【0061】
この状態で可動子C1が更に同じ方向に移動すると、磁気センサS2の上にリファレンスマークZ1が来るため、当該磁気センサS2によってリファレンスマークZ1が検知されて可動子C1の初期位置がリニア搬送システム1に登録される。基準マーク検知無効化部42は、磁気センサS2によってリファレンスマークZ1が検知された後、当該磁気センサS2による当該リファレンスマークZ1の検知を無効にする。なお、この後に磁気スケールC1が二つの隣接する磁気センサS2/S3の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS2の検知範囲外に移動する事態が発生するが、磁気スケールC1のリファレンスマークZ1は磁気センサS2によって検知済であるため、磁気センサS3によるリファレンスマークZ1の検知は有効にされない。
【0062】
一方、基準マーク検知有効化部41は、計数部53、54における計数値に基づいて、磁気スケールC2が二つの隣接する磁気センサS3/S4の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS3の検知範囲外に移動した場合、可動子C2の移動方向側の他方の磁気センサS4によるリファレンスマークZ2の検知を有効にする。
【0063】
この状態で可動子C2が更に同じ方向に移動すると、磁気センサS4の上にリファレンスマークZ2が来るため、当該磁気センサS4によってリファレンスマークZ2が検知されて可動子C2の初期位置がリニア搬送システム1に登録される。基準マーク検知無効化部42は、磁気センサS4によってリファレンスマークZ2が検知された後、当該磁気センサS4による当該リファレンスマークZ2の検知を無効にする。なお、図示は省略するが、この後に磁気スケールC2が二つの隣接する磁気センサS4/S5の検知範囲に跨がっている状態から一方の磁気センサS4の検知範囲外に移動する事態が発生するが、磁気スケールC2のリファレンスマークZ2は磁気センサS4によって検知済であるため、磁気センサS5によるリファレンスマークZ2の検知は有効にされない。以上のように、互いに近接している二つの可動子C1、C2が等速度で移動している場合でも、各可動子C1、C2のリファレンスマークZ1、Z2を確実に検知できる。
【0064】
以上の第1~第3の実施例では各可動子C1、C2の移動方向が一定であったが、各可動子C1、C2の移動方向が変わる場合でも、各可動子C1、C2のリファレンスマークZ1、Z2を確実に検知できる。例えば、基準マーク検知有効化部41によって他方(例えば右側)の磁気センサが有効化された後、当該他方の磁気センサがリファレンスマークZ1、Z2を検知する前に、磁気スケールC1、C2が一方(例えば左側)の磁気センサおよび他方の磁気センサの検知範囲に跨がっている状態に戻り、更に他方の磁気センサの検知範囲外に移動した場合、基準マーク検知有効化部41は一方の磁気センサによるリファレンスマークZ1、Z2の検知を有効にする。
【0065】
この際、基準マーク検知無効化部42は、基準マーク検知有効化部41によって他方の磁気センサが有効化された後、当該他方の磁気センサがリファレンスマークZ1、Z2を検知する前に、磁気スケールC1、C2が一方の磁気センサおよび他方の磁気センサの検知範囲に跨がっている状態に戻り、更に他方の磁気センサの検知範囲外に移動した場合、当該他方の磁気センサによるリファレンスマークZ1、Z2の検知を無効にしてもよい。あるいは、基準マーク検知無効化部42は、基準マーク検知有効化部41によって他方の磁気センサが有効化された後、当該他方の磁気センサがリファレンスマークZ1、Z2を検知する前に、磁気スケールC1、C2が一方の磁気センサおよび他方の磁気センサの検知範囲に跨がっている状態に戻った場合、他方の磁気センサによるリファレンスマークZ1、Z2の検知を無効にしてもよい。
【0066】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0067】
実施形態では、可動子に設けられる永久磁石と固定子に設けられる電磁石の間の磁力に基づいて可動子を駆動するリニア搬送システムを例示したが、本発明は磁気以外の任意の原理(例えば電気や流体)に基づく任意の駆動装置に適用できる。
【0068】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 リニア搬送システム、2 固定子、3 可動子、4 測位装置、40 基準マーク検知制御部、41 基準マーク検知有効化部、42 基準マーク検知無効化部、51 計数部、AB1 スケール本体、B1R 遮蔽部材、C1 磁気スケール、S1 磁気センサ、Z1 リファレンスマーク。