(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012840
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】液体保存容器及び該液体保存容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
A61J1/10 335C
A61J1/10 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116556
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】坂根 寛人
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047BB18
4C047CC04
4C047DD12
4C047DD13
4C047FF06
(57)【要約】
【課題】穿刺器具の挿入部分の大きさにかかわらず穿刺の際に密閉性を担保可能であり、かつ、内容物のロスの発生を低減可能である穿刺ポートを備える液体保存容器を提供すること。
【解決手段】液体を保存する液体保存容器1に設けられ、貫通孔215が形成された針管部210を有する穿刺器具200が穿刺される穿刺ポート40であって、筒状のポート本体部43と、液体導出部30と、ポート本体部43に設けられる第1の隔壁411及び第2の隔壁421と、を備え、ポート本体部43は、液体収容部10と液体導出部30との境界部分において液体導出部30と接合されている。
【選択図】
図5D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された針管部を有する穿刺器具が穿刺される穿刺ポートを備える液体保存容器であって、
液体を収容する液体収容部と、
前記液体収容部に収容された液体を導出する液体導出部と、を備え、
前記穿刺ポートは、
筒状のポート本体部と、
前記ポート本体部に設けられる第1の隔壁及び第2の隔壁と、を備え、
前記ポート本体部は、前記液体収容部と前記液体導出部との境界部分において前記液体導出部と接合されている液体保存容器。
【請求項2】
前記穿刺ポートは、一端部が前記第1の隔壁により塞がれた筒状の第1のポート部材と、一端部が前記第2の隔壁により塞がれた筒状の第2のポート部材と、を含んで構成され、
前記第2のポート部材は、その一部又は全部が前記第1のポート部材の内部のうち前記境界部分に配置され、
前記第1のポート部材、前記第2のポート部材及び前記液体導出部は、前記境界部分において溶着される請求項1に記載の液体保存容器。
【請求項3】
前記第1のポート部材及び前記第2のポート部材は、それぞれの他端部側の開口部が前記液体収容部側を向くように前記液体導出部に配置される請求項2に記載の液体保存容器。
【請求項4】
前記第2のポート部材は、前記一端部に位置し前記第1のポート部材の内径と略等しい外径の小径部分と、該小径部分に続いて他端部側に位置し前記第1のポート部材の外径と同じ等しい外径の大径部分と、を有し、
前記第2のポート部材は、前記小径部分において前記第1のポート部材を介して前記液体導出部と溶着され、前記大径部分において前記液体導出部と溶着される請求項2又は3に記載の液体保存容器。
【請求項5】
前記液体収容部は、対向して配置された一組のシート状部材の周縁部が溶着されて形成され、
前記シート状部材、前記第1のポート部材及び前記第2のポート部材は、同じ材質で構成される請求項2~4のいずれかに記載の液体保存容器。
【請求項6】
穿刺方向について、前記第1の隔壁と前記第2の隔壁との間の距離は、少なくとも前記針管部の先端部における前記貫通孔の開孔部分の前記穿刺方向の長さよりも長い請求項1~5のいずれかに記載の液体保存容器。
【請求項7】
貫通孔が形成された針管部を有する穿刺器具が穿刺される穿刺ポートと液体導出部と液体収容部とを備え、液体を保存する液体保存容器の製造方法であって、
一端部が第1の隔壁により塞がれた第1のポート部材の他端部側の開口部と一端部が第2の隔壁により塞がれた第2のポート部材の他端部側の開口部が同じ方向を向いた状態で前記第2のポート部材の一部又は全部を前記第1のポート部材に挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後、前記第1のポート部材及び前記第2のポート部材を、対向して重ね合わされた一組のシート状部材の間に配置する配置工程と、
前記配置工程の後、前記第1のポート部材、前記第2のポート部材及び前記一組のシート状部材が重なり合った部分を溶着する溶着工程と、
前記一組のシート状部材の周縁部を溶着して前記第1のポート部材及び前記第2のポート部材の開口部側に液体収容部を形成する液体収容部形成工程と、を含み、
前記液体収容部形成工程において、前記溶着工程で溶着された部分を含むように前記一組のシート状部材を溶着する液体保存容器の製造方法。
【請求項8】
前記第2のポート部材は、前記一端部に配置され前記第1のポート部材の内径と略等しい外径の小径部分と、該小径部分に続いて前記他端部側に配置され前記第1のポート部材の外径と同じ等しい外径の大径部分と、を有し、
前記挿入工程において、前記第2のポート部材の前記小径部分と前記大径部分との間の段差が前記第1のポート部材の開口部に突き当たるまで前記第2のポート部材の前記小径部分を前記第1のポート部材に挿入し、
前記溶着工程において、前記第2のポート部材は、前記小径部分において前記第1のポート部材及び前記液体導出部と溶着され、前記大径部分において前記液体導出部と溶着される請求項7に記載の液体保存容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺ポートを備える液体保存容器及び該液体保存容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞や血液等の医療用の液体を保存するために液体保存容器が用いられている。液体保存容器は、内容物の取り出しや生理食塩水等の液体の注入に用いられるびん針や注射器等の穿刺器具が刺し込まれる穿刺ポートを備える。穿刺器具は、貫通孔が形成された針管部を有して構成される。一方、穿刺ポートは、筒状構造で内部に隔壁を有している。穿刺器具により液体保存容器に保存された液体を取り出し、また液体保存容器に液体を注入する場合には、穿刺ポートの隔壁に穿刺器具の針管部を穿刺して隔壁を貫通させる。これにより針管部を通じて内容物の取り出しや注入が行われる。この内容物の取り出しの際に内容物のロスが少ない液体保存容器が求められている。
【0003】
穿刺器具を穿刺ポートに穿刺する場合に、内容物の漏洩が生じることがある。具体的には、穿刺器具の針管部の先端部分における貫通孔の開孔部分の長さが隔壁の厚さよりも大きい場合に、開孔部分が隔壁を貫通する途中で穿刺ポートの内側と外側が連通する状態となり漏れが生じる。このように、内容物の漏洩が起こることは、内容物のロスの発生となり、また、内容物の無菌性を維持する観点からも好ましくない。
【0004】
そこで、穿刺器具の先端が穿刺ポートの隔壁を貫通する前に、穿刺器具と穿刺ポートとを嵌合させることにより、穿刺ポートを密閉可能な穿刺器具(医療用プラスチック針)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で提案された穿刺器具では、穿刺ポートの内径の大きさに応じて、穿刺器具の挿入部分(嵌合部)の外径の大きさを変える必要がある。そのため、穿刺器具の大きさによっては、穿刺ポートの密閉性を保つことができない場合が生じる。
【0007】
従って、本発明は、穿刺器具の挿入部分の大きさに制限されることなく穿刺を行う場合に密閉性を担保可能であり、かつ、内容物のロスの発生を低減可能である液体保存容器及び該液体保存容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貫通孔が形成された針管部を有する穿刺器具が穿刺される穿刺ポートを備える液体保存容器であって、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部に収容された液体を導出する液体導出部と、を備え、前記穿刺ポートは、筒状のポート本体部と、前記ポート本体部に設けられる第1の隔壁及び第2の隔壁と、を備え、前記ポート本体部は、前記液体収容部と前記液体導出部との境界部分において前記液体導出部と接合されている液体保存容器に関する。
【0009】
また、前記穿刺ポートは、一端部が前記第1の隔壁により塞がれた筒状の第1のポート部材と、一端部が前記第2の隔壁により塞がれた筒状の第2のポート部材と、を含んで構成され、前記第2のポート部材は、その一部又は全部が前記第1のポート部材の内部のうち前記境界部分に配置され、前記第1のポート部材、前記第2のポート部材及び前記液体導出部は、前記境界部分において溶着されることが好ましい。
【0010】
また、前記第1のポート部材及び前記第2のポート部材は、それぞれの他端部側の開口部が前記液体収容部側を向くように前記液体導出部に配置されることが好ましい。
【0011】
また、前記第2のポート部材は、前記一端部に位置し前記第1のポート部材の内径と略等しい外径の小径部分と、該小径部分に続いて前記他端部側に位置し前記第1のポート部材の外径と同じ等しい外径の大径部分と、を有し、前記第2のポート部材は、前記小径部分において前記第1のポート部材を介して前記液体導出部と溶着され、前記大径部分において前記液体導出部と溶着されることが好ましい。
【0012】
また、前記液体収容部は、対向して配置された一組のシート状部材の周縁部が溶着されて形成され、前記シート状部材、前記第1のポート部材及び前記第2のポート部材は、同じ材質で構成されることが好ましい。
【0013】
また、穿刺方向について、前記第1の隔壁と前記第2の隔壁との間の距離は、少なくとも前記針管部の先端部における前記貫通孔の開孔部分の前記穿刺方向の長さよりも長いことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、貫通孔が形成された針管部を有する穿刺器具が穿刺される穿刺ポートと液体導出部と液体収容部とを備え、液体を保存する液体保存容器の製造方法であって、一端部が第1の隔壁により塞がれた第1のポート部材の他端部側の開口部と一端部が第2の隔壁により塞がれた第2のポート部材の他端部側の開口部が同じ方向を向いた状態で前記第2のポート部材の一部又は全部を前記第1のポート部材に挿入する挿入工程と、前記挿入工程の後、前記第1のポート部材及び前記第2のポート部材を、対向して重ね合わされた一組のシート状部材の間に配置する配置工程と、前記配置工程の後、前記第1のポート部材、前記第2のポート部材及び前記一組のシート状部材が重なり合った部分を溶着する溶着工程と、前記一組のシート状部材の周縁部を溶着して前記第1のポート部材及び前記第2のポート部材の開口部側に液体収容部を形成する液体収容部形成工程と、を含み、前記液体収容部形成工程において、前記溶着工程で溶着された部分を含むように前記一組のシート状部材を溶着する液体保存容器の製造方法に関する。
【0015】
また、前記第2のポート部材は、前記一端部に配置され前記第1のポート部材の内径と略等しい外径の小径部分と、該小径部分に続いて前記他端部側に配置され前記第1のポート部材の外径と同じ等しい外径の大径部分と、を有し、前記挿入工程において、前記第2のポート部材の前記小径部分と前記大径部分との間の段差が前記第1のポート部材の開口部に突き当たるまで前記第2のポート部材の前記小径部分を前記第1のポート部材に挿入し、前記溶着工程において、前記第2のポート部材は、前記小径部分において前記第1のポート部材及び前記液体導出部と溶着され、前記大径部分において前記液体導出部と溶着されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、穿刺器具の挿入部分の大きさに制限されることなく穿刺を行う場合に密閉性を担保可能であり、かつ、内容物のロスの発生を低減可能である液体保存容器及び該液体保存容器の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体保存容器を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る液体保存容器を示す分解斜視図である。
【
図4A】穿刺ポート及び液体保存容器の製造工程を示す図であり、立体形状が形成された一組のシート状部材を、凹溝にポート本体部が配置された状態で重ね合わせる工程を示す図である。
【
図4B】
図4Aに示す状態から、ポート本体部の近傍を溶着する工程を示す図である。
【
図4C】
図4Bに示す状態から、液体導入部に液体導入チューブを配置する工程を示す図である。
【
図4D】
図4Cに示す状態から、一組のシート状部材の周縁部を溶着し、液体収容部及び穿刺ポート収容部を有する液体保存容器を形成する工程を示す図である。
【
図5A】第1実施形態に係る穿刺ポートの製造工程を示す断面模式図であり、第1のポート部材に第2のポート部材の一部を挿入する挿入工程を説明する図である。
【
図5B】
図5Aに示す状態から、第2のポート部材に溶着ピンを挿入した状態を示す図である。
【
図5C】
図5Bに示す状態から、第1のポート部材及び第2のポート部材を対向して重ね合わされた一組のシート状部材の間に配置する配置工程を説明する図である。
【
図5D】
図5Cに示す状態から、第2のポート部材と一組のシート状部材が重なり合った部分と、第1のポート部材、第2のポート部材及び一組のシート状部材が重なり合った部分とを溶着する溶着工程を説明する図である。
【
図6A】第1実施形態に係る穿刺ポートの変形例1を示す説明図である。
【
図6B】
図6Aに示す状態から、第2のポート部材に溶着ピンを挿入した状態を示す図である。
【
図6C】
図6Bに示す状態から、第1のポート部材及び第2のポート部材を対向して重ね合わされた一組のシート状部材の間に配置する配置工程を説明する図である。
【
図6D】
図6Aに示す第1のポート状部材、第2のポート状部材及び一組のシート状部材が重なり合った部分を溶着した状態を説明する図である。
【
図7A】第1実施形態に係る穿刺ポートの変形例2を示す説明図である。
【
図7B】
図7Aに示す状態から、第2のポート部材に溶着ピンを挿入した状態を示す図である。
【
図7C】
図7Bに示す状態から、第1のポート部材及び第2のポート部材を対向して重ね合わされた一組のシート状部材の間に配置する配置工程を説明する図である。
【
図7D】
図7Aに示す第1のポート状部材、第2のポート状部材及び一組のシート状部材が重なり合った部分を溶着した状態を説明する図である。
【
図8】第1実施形態の液体保存容器を使用する手順を示す図であり液体保存容器に液体を収容している状態を示す図である。
【
図9】
図8に示す状態から、液体収容部に液体を収容した状態を示す図である。
【
図10】
図9に示す状態から、液体導入チューブを溶断した状態を示す図である。
【
図11】液体収容部に収容された細胞を取り出す状態を示す図であり、穿刺ポート収容部を開封(切断)する状態を示す図である。
【
図12A】本発明の第1実施形態に係る穿刺ポートに穿刺器具を穿刺する際の説明図である。
【
図12B】本発明の第1実施形態に係る穿刺ポートに穿刺器具を穿刺する際の説明図である。
【
図12C】本発明の第1実施形態に係る穿刺ポートに穿刺器具を穿刺する際の説明図である。
【
図12D】本発明の第1実施形態に係る穿刺ポートに穿刺器具を穿刺する際の説明図である。
【
図12E】本発明の第1実施形態に係る穿刺ポートに穿刺器具を穿刺する際の説明図である。
【
図13A】第2実施形態に係る穿刺ポートの製造工程を示す断面模式図であり、第1のポート部材を用意する工程を説明する図である。
【
図13B】
図13Aに示す状態から、第1のポート部材に溶着ピンを挿入した状態を示す図である。
【
図13C】
図13Bに示す状態から、第1のポート部を対向して重ね合わされた一組のシート状部材の間に配置する配置工程を説明する図である。
【
図13D】
図13Cに示す状態から、第1のポート部材と一組のシート状部材が重なり合った部分を溶着する第1溶着工程を説明する図である。
【
図13E】
図13Dに示す状態から、溶着ピンを取り外し、第1のポート部材に第2のポート部材の全部を挿入する挿入工程を説明する図である。
【
図13F】
図13Eに示す状態から、第2のポート部材に溶着ピンを挿入し、第1のポート部材、第2のポート部材及び一組のシート状部材が重なり合った部分を溶着する第2溶着工程を説明する図である。
【
図14A】比較例に係る穿刺ポートを示す説明図である。
【
図14B】
図14Aに示す第1のポート状部材、第2のポート状部材及び一組のシート状部材が重なり合った部分を溶着した状態を説明する図である。
【
図15】比較例の穿刺ポートを備える液体保存容器の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の穿刺ポート及び液体保存容器の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。液体保存容器は、可撓性を有する熱可塑性樹脂からなるシート状部材を主体として構成され、生体試料から採取された幹細胞等の細胞や、これらの細胞を培養及び加工して製造される細胞製剤、血液や血液を加工して製造される血液製剤等の医療用の液体を保存する場合に用いられる。また、本発明の穿刺ポート及び液体保存容器は、医療用の液体の他にも無菌性が要求される液体を保存する場合にも適用可能である。
【0019】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の液体保存容器1について、
図1~
図3を参照しながら説明する。第1実施形態の液体保存容器1は、
図1に示すように、液体収容部10と、液体導入部20と、液体導出部30と、この液体導出部30に配置される穿刺ポート40と、穿刺ポート収容部50と、を備える。
【0020】
液体収容部10は、
図1~
図3に示すように、一組のシート状部材61,62が重ね合わせられると共に、それぞれの周縁部の大部分が接合されることで構成される。液体収容部10は、周縁部が接合されたシート状部材61,62に囲まれた空間である液体収容空間11を有する。
第1実施形態では、液体収容部10は、
図1に示すように、平面視において円形状に形成される。
【0021】
液体導入部20は、液体を液体収容部10に導入する場合に用いられる。液体導入部20は、液体導入路21と、この液体導入路21に配置される液体導入チューブ22と、を備える。
液体導入路21は、シート状部材61,62それぞれに形成され、液体収容部10から外側に延びる液体導入溝211により構成される。液体導入溝211の一端部は、液体収容空間11に連続する。液体導入溝211の他端部は、シート状部材61,62の縁部(シート状部材61,62が接合される部分の外縁)まで延びてもよい。
【0022】
液体導入チューブ22は、液体導入路21に配置される。液体導入チューブ22は、生体試料から採取された細胞等の液体を無菌的かつ気密の状態で液体収容部10に導く。この液体導入チューブ22は、EVA樹脂等の熱可塑性樹脂により構成される。第1実施形態では、液体導入チューブ22は、一端側が液体収容空間11に連通するように、シート状部材61,62に形成された液体導入溝211に配置される。
液体導入チューブ22には、この液体導入チューブ22の流路を開閉させるチューブクリップ23が取り付けられる。また、液体導入チューブ22の先端部には、液体保存容器1に細胞を導入する場合に用いられるシリンジ等の器具を接続可能な接続ポート24が取り付けられる。
【0023】
液体導出部30は、液体収容部10に収容された液体を導出する場合に用いられる。液体導出部30は、円形状の液体収容部10において液体導入部20が配置された位置と対向する位置に配置される。液体導出部30は、シート状部材61,62それぞれに形成される凹溝31により構成され、液体収容部10の外側に延びる。液体導出部30の一端部は、液体収容空間11に連続する。
【0024】
穿刺ポート40は、液体導出部30に配置される。穿刺ポート40は、筒状のポート本体部43と、第1の隔壁411と、第2の隔壁421と、を備える。第1実施形態では、穿刺ポート40は、第1のポート部材41及び第2のポート部材42により構成される。
【0025】
第1のポート部材41は、一端部が第1の隔壁411により塞がれた筒状に構成される(
図5A~
図5D参照)。第1のポート部材41の他端部側の開口部に第1のポート部材41の長手方向に延びる一対のスリット413が形成される。第1のポート部材41は、スリットが形成された他端部側が液体収容部10側に位置するように配置される。即ち、他端部側の開口部が液体収容部10側を向くように配置される。この一対のスリット413は、シート状部材61,62の面に沿わない部分に配置される。よって、第1のポート部材41の開口部のうち、一対のスリット413が形成されていない部分は、シート状部材61,62の面に沿っており、穿刺の際にびん針等の穿刺器具の先端が直接シート状部材61,62に接触することを防ぐ保護部414となる。また、一対のスリット413が形成されることで、収容された液体が穿刺器具200の開孔部分220(
図12参照)へ向けて流れやすくなる。
【0026】
第2のポート部材42は、一端部が第2の隔壁421により塞がれた筒状に構成され、また、その外径は第1のポート部材41の内径と略等しく形成される(
図5A~
図5D参照)。第2のポート部材42は、第1のポート部材41よりも長さが短く構成される。そして、第2のポート部材42は、他端部側の開口部が液体収容部10側を向いた状態で第1のポート部材41の内部に挿入され、第1のポート部材41のうちスリット413が形成されていない部分に配置される。
【0027】
穿刺ポート40(ポート本体部43)は、第2のポート部材42が第1のポート部材41に挿入された状態で液体導出部30に配置される。本実施形態では、第1のポート部材41の一端部側の一部(ポート本体部43の一部)は、液体導出部30から外側に突出する。尚、第1のポート部材41の一部は、液体導出部30から外側に突出していなくてもよい。
穿刺ポート40を構成する第1のポート部材41及び第2のポート部材42は、EVA樹脂等の熱可塑性樹脂により形成される。
【0028】
穿刺ポート40において、第1の隔壁411と第2の隔壁421との間の距離Dは、穿刺ポート40に刺し込まれる穿刺器具200の針管部210に形成される貫通孔215の開孔部分220の長さHLよりも長く設定される(
図12参照)。この距離Dと開孔部分220の長さHLとの関係については、後述する。
【0029】
また、第1のポート部材41の内径及び第2のポート部材42の内径は、穿刺器具の挿入部分の外径よりも大きく構成される。これにより、穿刺ポート40の内周面と穿刺器具の挿入部分の外周面との接触面積を減らすことができる。よって、穿刺器具を穿刺ポート40に穿刺する際の穿刺抵抗を低減することができる。
【0030】
穿刺ポート収容部50は、液体収容部10を構成するシート状部材61,62が液体導出部30側に延出した部分により構成される。シート状部材61,62は、穿刺ポート40(ポート本体部43)の第1のポート部材41の外側の端部(一端部)を超えて延出している。そして、シート状部材61,62の延出した部分は、平面視において、穿刺ポート40の周辺部、即ち、穿刺ポート40から所定距離離間した部分よりも外側が溶着により接合され、これにより、シート状部材61,62によって囲まれた穿刺ポート収容空間51を有する穿刺ポート収容部50が形成される。この穿刺ポート収容部50を形成することにより、後述するように、穿刺ポート収容部50を開封(幅方向Xに切断)してびん針等の穿刺器具を穿刺ポート40に穿刺して接続するまで、穿刺ポート40の無菌性を維持することができる。
【0031】
尚、液体保存容器1の強度を保つ観点及び穿刺ポート収容部50の開封部分を好適に開口させる観点から、シート状部材61,62として、可撓性及び弾性を有するEVA樹脂(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)を用いることが好ましい。また、シート状部材61,62の厚さは、0.2mmから0.7mmであることが好ましく、0.35mmから0.5mmであることがより好ましい。
【0032】
また、シート状部材61,62及び穿刺ポート40の材質を、同じ材質で構成することにより、凍結保存する等、低温で保存する場合に、両者の変形特性が同様になるので、穿刺ポート40内の隔壁間の密閉性や、液体収容空間11の密閉性を高めることがきる。
【0033】
第1実施形態では、
図1に示すように、穿刺ポート収容空間51の縁部は、穿刺ポート40の近傍において角部を有さない曲線状に形成される。
穿刺ポート収容空間51の縁部を、穿刺ポート40の近傍において角部を有さない曲線状に形成することで、エチレンオキサイドガス(EOG)を用いて液体保存容器1を滅菌する場合に、穿刺ポート収容空間51にEOGが浸透して穿刺ポート収容空間51が膨張した状態において、穿刺ポート収容空間51の縁部の一点に力が集中することを抑制できる。
【0034】
次に、第1実施形態の液体保存容器1の製造方法について、
図4A~
図5Dを参照しながら説明する。
図4A~
図4Dは、液体保存容器1の製造工程における分解斜視図を示し、
図5A~
図5Dは、穿刺ポート40の製造工程における断面模式図を示す。
【0035】
まず、
図4Aに示すように、シート状部材61,62に、液体導入溝211、及び液体導出部30の形状に対応する凹溝31が立体成形により形成される。第1実施形態では、シート状部材61,62には、それぞれ同形状の立体形状が形成される。
【0036】
次いで、第1のポート部材41の内部に第2のポート部材42の全部を挿入する(挿入工程、
図5A参照)。次に、第2のポート部材42に溶着ピン111を挿入し、その状態(
図5B参照)で、一方のシート状部材(シート状部材62)の凹溝31に第2のポート部材42が挿入された第1のポート部材41を配置し、その後、他方のシート状部材(シート状部材61)を、液体導入溝211、及び凹溝31の位置が一致するように重ね合わせる(配置工程、
図5C参照)。
【0037】
尚、第2のポート部材42を第1のポート部材41に挿入し、第2のポート部材42に溶着ピン111を挿入する工程において、順番は、いずれが先でもよい。即ち、配置工程においては、第2のポート部材42が第1のポート部材41に挿入された状態、かつ、第2のポート部材42に溶着ピン111が配置された状態で、第1のポート部材41及び第2のポート部材42が凹溝31に配置されればよい。
【0038】
次いで、
図4Bに示すように、重ね合わされたシート状部材61,62と、シート状部材61,62の間に配置された第1のポート部材41及び第2のポート部材42とを、凹溝31及びその近傍において溶着ピン111と溶着金型110,110により挟み込んで溶着する(溶着ピン111は図示せず)。この溶着金型110は、第2のポート部材42の外周面と、それと接する第1のポート部材41の内周面とを溶着するように配置される。これにより、凹溝31及びその近傍において、シート状部材61,62と、シート状部材61,62の間に配置されたポート本体部43(第1のポート部材41及び第2のポート部材42)と、が溶着されて溶着部431が形成される(
図4C、
図5D参照)。この溶着部431は、液体導出部30となる凹溝31のうち、液体収容部10が形成される側の端部、つまり液体導出部30における液体収容部10との境界部分に形成される。
【0039】
ここで、液体導出部30における液体収容部10との境界部分とは、液体導出部30となる凹溝31のうち、液体収容部10が形成される側の端部、及びこの端部から若干(1mm~3mm程度)外側にずれた位置を含む。即ち、溶着部431の形成位置が、液体収容空間11の外縁(液体導出部30が配置されていない部分)の延長線上の位置から若干外側にずれた場合も、当該溶着部431の形成位置は「液体導出部30における液体収容部10との境界部分」に含まれる。
【0040】
次いで、
図4Cに示すように、シート状部材61,62における液体導入溝211が形成された部分にピン(図示せず)が挿入された液体導入チューブ22を配置する。
【0041】
次いで、
図4Dに示すように、液体導入溝211、及び凹溝31の位置が一致するようにシート状部材61,62を重ね合わせた状態で、シート状部材61,62のうち、液体収容部10を形成する部分の外側である周縁部を溶着により接合して液体収容部10を形成する(液体収容部形成工程)と共に、穿刺ポート40の周辺部を溶着により接合して液体導出部30を形成し(液体導出部形成工程)、穿刺ポート収容部50を形成する。また、液体導入チューブ22をシート状部材61,62と溶着して液体導入路21を形成する。ここで、液体導出部30のうち、液体収容部10との境界部分において、第1のポート部材41、第2のポート部材42及びシート状部材61,62は、溶着部431により接合されている状態となる。
尚、このとき、液体収容部10よりも外側の部分の一部において、高周波溶着(熱溶着)を行わない領域Rを設けてもよい。
【0042】
これにより、液体収容部10及び穿刺ポート収容部50を有する液体保存容器1が製造される。ここで、第1実施形態では、シート状部材61,62における液体収容部10及び穿刺ポート収容部50に対応する部分には、立体成形は施されていないが、所定の径(厚み)を有する穿刺ポート40を挟み込んだ状態でシート状部材61とシート状部材62とが接合されるため、シート状部材61とシート状部材62との間には、所定の容積を有する液体収容空間11及び穿刺ポート収容空間51が形成される。
【0043】
液体保存容器1には、その後、EOG滅菌処理が施される。EOG滅菌処理においては、液体保存容器1を滅菌器の内部に配置した状態で、滅菌器にEOGを所定の圧力で導入し、液体保存容器1の外表面を滅菌すると共に、EOGを液体収容空間11及び穿刺ポート収容空間51にも浸透させ、液体収容部10の内部及び穿刺ポート収容部50の内部も滅菌する。
【0044】
第1実施形態では、穿刺ポート収容空間51の縁部を、穿刺ポート40の近傍において角部を有さない曲線状に形成することで、EOG滅菌工程において、穿刺ポート収容空間51にEOGが浸透して穿刺ポート収容空間51が膨張した状態において、穿刺ポート収容空間51の縁部の一点に力が集中することを抑制できる。これにより、EOG滅菌工程において、穿刺ポート収容部50が破損することを防げる。
【0045】
以上説明した製造方法で、第1実施形態に係る穿刺ポート40及び液体保存容器1を製造することができる。
【0046】
次に、第1実施形態に係る穿刺ポートの形状の変形例1を
図6A~
図6Dに示す。
図6に示す穿刺ポート40A(ポート本体部43A)は、第1のポート部材41A及び第2のポート部材42Aの形状において第1実施形態の穿刺ポート40と異なる。変形例では、第2のポート部材42Aの一部が第1のポート部材41Aに挿入されて配置される。
【0047】
第1のポート部材41Aは、一端部が第1の隔壁411により塞がれた筒状に構成される(
図6A~
図6D参照)。また、第1のポート部材41Aは、他端部側の開口部が液体収容部10側を向くように配置される。
【0048】
第2のポート部材42Aは、一端部が第2の隔壁421により塞がれた筒状に構成され、また、その外径は第1のポート部材41Aの内径と略等しく形成される。第2のポート部材42Aの他端部側の開口部に第2のポート部材42Aの長手方向に延びる一対のスリット413A及び保護部414Aが形成される。第2のポート部材42Aは、スリットが形成された他端部側が液体収容部10側に位置するように配置される。即ち、第2のポート部材42は、他端部側の開口部が液体収容部10側を向くように、かつ、一対のスリット413A及び保護部414Aが第1のポート部材41Aから突出するように配置される。
【0049】
変形例1では、
図6Aに示すように、上述の挿入工程において、第2のポート部材42Aの一部(第2の隔壁421が形成された一端部側)が第1のポート部材41Aの内部に挿入される。そして、第2のポート部材42Aには溶着ピン111が挿入され、第1のポート部材41A、第2のポート部材42A及び液体導出部30となる凹溝31(シート状部材61,62)の重なり合った部分が溶着され、溶着部431Aが形成される。
このように1回の溶着工程により、穿刺ポート40A(ポート本体部43A)が形成され、液体収容部10のとの境界部分が溶着部431Aにより接合される。
【0050】
次に、第1実施形態に係る穿刺ポートの形状の変形例2を
図7A~
図7Dに示す。
図7に示す穿刺ポート40B(ポート本体部43B)は、第2のポート部材42Bの形状において第1実施形態の穿刺ポート40と異なる。変形例では、第2のポート部材42Bは、小径部分422及び大径部分423を有し、第2のポート部材42Bの一部である小径部分422が第1のポート部材41Bに挿入されて配置される。
【0051】
第1のポート部材41Bは、一端部が第1の隔壁411により塞がれた筒状に構成される(
図7A~
図7D参照)。また、第1のポート部材41Bは、他端部側の開口部が液体収容部10側を向くように配置される。
【0052】
第2のポート部材42Bは、一端部が第2の隔壁421により塞がれた筒状に構成される。また、第2のポート部材42Bは、一端部に外径が第1のポート部材41Bの内径と略等しい小径部分422と、この小径部分422に続いて他端部側に第1のポート部材41Bの内径及び外径と略同径の大径部分423と、を備える。また、第2のポート部材42Bの他端部側の開口部に第2のポート部材42Bの長手方向に延びる一対のスリット413B及び保護部414Bが形成される。第2のポート部材42Bは、スリットが形成された他端部側が液体収容部10側に位置するように配置される。即ち、他端部側の開口部が液体収容部10側を向くように配置される。
【0053】
変形例2では、
図7Aに示すように、上述の挿入工程において、第2のポート部材42Bの一部(小径部分422)が第1のポート部材41Bの内部に挿入される。この挿入の際、小径部分422と大径部分423との間の段差部分が第1のポート部材41Bの開口部の端面に突き当たるまで挿入することで、容易に位置合わせが可能となる。
図7Bに示すように、溶着ピン111Bは、第2のポート部材42Bの内壁に接するような形状に構成さており、第2のポート部材42Bに挿入される。そして、第1のポート部材41B、第2のポート部材42Bの小径部分422及び液体導出部30となる凹溝31(シート状部材61,62)の重なり合った部分と、第2のポート部材42B及び液体導出部30となる凹溝31(シート状部材61,62)の重なり合った部分が溶着され、溶着部431Bが形成される。
このように1回の溶着工程により、穿刺ポート40B(ポート本体部43B)が形成され、液体導出部30における液体収容部10との境界部分が溶着部431Bにより接合される。
【0054】
次に、第1実施形態の液体保存容器1の使用方法について、
図8~
図12を参照しながら説明する。
【0055】
液体保存容器1に液体を収容する場合、液体Lは、
図8に示すように、シリンジ等の器具100により、液体導入チューブ22を介して液体収容部10に導入される。液体収容部10に液体Lが収容された後、
図9に示すように、チューブクリップ23により液体導入チューブ22の流路は閉塞される。次いで、
図10に示すように、液体導入チューブ22は、チューブクリップ23よりも液体収容部10側において溶断され、これにより、液体保存容器1は密閉される。この状態で、液体保存容器1は保存される。
【0056】
保存された液体保存容器1に収容された液体を使用する場合には、
図11に示すように、穿刺ポート収容部50におけるY方向の端部を、幅方向Xにハサミ等により切断する。すると、可撓性を有するシート状部材61,62の弾性により、穿刺ポート収容部50の切断部分は、シート状部材61,62の厚さ方向に開口する。この状態で、びん針等の穿刺器具200の先端部を穿刺ポート40に挿入し、液体収容部10に収容された液体を採取する。
【0057】
穿刺ポート40に穿刺器具200を穿刺する際の状態について、
図12を参照して詳しく説明する。本実施形態では、穿刺器具200として、びん針を用いた場合について説明する。
穿刺器具200は、
図12Aに示すように、穿刺ポート40に挿入される針管部210を有する。針管部210は、長さ方向に貫通する貫通孔215を有する。また、針管部210の先端側は、所定の傾斜角度のテーパ面となっており、針管部210には、テーパ面に開孔する貫通孔215の開孔部分220が形成される。針管部210における貫通孔215の開孔部分220は、穿刺器具200の穿刺方向について所定の長さHLを有する。穿刺ポート40は、第1の隔壁411及び第2の隔壁421の2つの隔壁を内部に有しており、これら2つ隔壁の間の距離Dが開孔部分220の長さHLよりも長くなるように構成されている。
【0058】
具体的には、穿刺器具200としてびん針を用いた場合、びん針の貫通孔215の開孔部分220の長さHLは、11.5mm~13.4mmに設定される。そのため、穿刺ポート40における第1の隔壁411と第2の隔壁421との間の距離Dは、13.5mm~26mmに設定されることが好ましい。
【0059】
図12Aに示す状態から、穿刺ポート40に穿刺器具200を挿入し始め、その穿刺器具200の先端部が第1の隔壁411を貫通する途中の状態を
図12Bに示す。この状態においては、貫通孔215の開孔部分220の基端側は、第1の隔壁411よりも外側にあり、先端側は第1の隔壁411よりも内側(第1の隔壁411と第2の隔壁421との間)にあるので、第1の隔壁411と第2の隔壁421との間の空間の密閉性は一時的に失われるが、第2の隔壁421よりも液体収容部10側の密閉性は保たれている。
【0060】
図12Bに示す状態から、さらに穿刺器具200を挿入し、貫通孔215の開孔部分220が第1の隔壁411と第2の隔壁421との間にある状態を
図12Cに示す。この状態においては、貫通孔215の開孔部分220の全体が第1の隔壁411と第2の隔壁421との間に入っており、第1の隔壁411の貫通部分は穿刺器具200により塞がれているため、第1の隔壁411と第2の隔壁421との間の空間は、再び密閉状態となる。
【0061】
図12Cに示す状態から、さらに穿刺器具200を挿入し、その先端部が第2の隔壁421を貫通する途中の状態を
図12Dに示す。この状態においては、貫通孔215の開孔部分220の基端側は、第1の隔壁411と第2の隔壁421との間にあり、先端側は第2の隔壁421よりも内側(液体収容部10側)にあるので、第1の隔壁411と第2の隔壁421との間の空間と液体収容部10とは連通状態となるが、第1の隔壁411の貫通部分は穿刺器具200により塞がれているため、第1の隔壁411から内側の密閉性は保たれる。
【0062】
図12Dに示す状態から、さらに穿刺器具200を挿入し、その先端部が第2の隔壁421を貫通した状態を
図12Eに示す。この状態においては、貫通孔215の開孔部分220の全長が第2の隔壁421よりも液体収容部10側にあるので、液体収容部10内の密閉性を保ちつつ、液体を良好に取り出すことができる。
【0063】
(比較例)
ここで、比較例として第1のポート部材41D及び第2のポート部材42Dのそれぞれの開口部が液体収容部10とは反対側を向いて配置される穿刺ポート40Dを備える液体保存容器について、
図14及び
図15を参照して説明する。
この比較例の場合、第1のポート部材41Dは、液体収容部側の端部に形成された一対のスリット413D及び保護部414Dを有し、また、内部に第1の隔壁411を有する。比較例において、1回の溶着工程で第1のポート部材41D、第2のポート部材42D及びシート状部材61,62の重なり合う部分を溶着すると、溶着部431Dは、凹溝31(液体導出部30)のうち液体収容部10から離れた位置に形成される(
図14B参照)。よって、比較例の液体保存容器に液体を保存すると、液体収容部に収容された液体が液体導出部30の内部に入り込んでしまうため、穿刺器具を用いてその部分の液体を取り出すことが難しくなる(
図15参照)。
【0064】
比較例に比べて本発明の第1実施形態(変形例1及び2を含む)の製造方法では、1回の溶着工程で第1のポート部材41(41A,41B)、第2のポート部材42(42A,42B)及びシート状部材61,62の重なり合う部分を溶着して穿刺ポート40(40A,40B)を形成すると共に、凹溝31(液体導出部30)のうち液体収容部10との境界部分に溶着部431(431A,431B)を形成できる。よって、液体収容部10に収容された液体は、液体導出部30に入り込むことがないので、内容物のロスの発生を低減することができる(
図5D、
図6D、
図7D及び
図12等参照)。
【0065】
以上説明した第1実施形態、変形例1及び変形例2の穿刺ポート40及び液体保存容器1によれば、以下のような効果を奏する。
【0066】
(1)液体保存容器1を、液体収容部10と、液体導出部30と、筒状のポート本体部43と、ポート本体部43に設けられる第1の隔壁411及び第2の隔壁421と、を含んで構成し、ポート本体部43を、液体収容部10と液体導出部30との境界部分において液体導出部30と接合して構成した。これにより、第1の隔壁411及び第2の隔壁421の二つの隔壁を有することで穿刺器具200を穿刺ポート40に穿刺する場合の内容物の漏洩を防げる。また、液体収容部10と液体導出部30との境界部分においてポート本体部43と液体導出部30とが接合することで、ポート本体部43と液体導出部30との隙間に液体が入り込んでしまうことを防げるので、内容物のロスの発生を低減できる。
【0067】
(2)ポート本体部43を、一端部が第1の隔壁411により塞がれた筒状の第1のポート部材41と、一端部が第2の隔壁421により塞がれた筒状の第2のポート部材42と、を含んで構成し、第1のポート部材41及び第2のポート部材42を、それぞれの他端部側の開口部が液体収容部10側を向くように液体導出部30に配置し、第2のポート部材42の一部又は全部を第1のポート部材41の内部における液体収容部10と液体導出部30との境界部分に配置した。そして第1のポート部材41、第2のポート部材42及び液体導出部30を、液体収容部10との境界部分において溶着した。これにより、第1のポート部材41及び第2のポート部材42の2部材でポート本体部43を構成でき、ポート本体部43を形成すると共に液体導出部30との溶着が可能となる。よって、低コストでポート本体部43を形成することができる。
【0068】
(3)第2のポート部材42Bを、一端部に第1のポート部材41Bの内径と略等しい外径の小径部分422と、他端部側に第1のポート部材41Bの外径と同じ等しい外径の大径部分423と、を含んで構成し、第2のポート部材42Bを、小径部分422において第1のポート部材41Bを介して液体導出部30と溶着させ、大径部分423において直接液体導出部30と溶着させた。これにより、第1のポート部材41Bに対する第2のポート部材42Bの位置合わせを容易に行えるので、密閉性の高い穿刺ポート40Bを得ることができる。
【0069】
(4)液体収容部10を、対向して配置された一組のシート状部材61,62の周縁部を溶着して形成し、シート状部材61,62、第1のポート部材41及び第2のポート部材42を、同じ材質で構成した。これにより、液体保存容器1を凍結保存する等、低温で保存する場合に、穿刺ポート40とシート状部材61,62の変形特性が同様になるので、穿刺ポート40の内部の第1の隔壁411と第2の隔壁421との間の密閉性や、液体収容空間11の密閉性を高めることがきる。
【0070】
(5)穿刺ポート40を、第1の隔壁411と第2の隔壁421との間の距離Dが、少なくとも穿刺器具200の針管部210の先端部における貫通孔215の開孔部分220の穿刺方向の長さHLよりも長くなるよう設定した。これにより、穿刺器具200の貫通孔215の開孔部分220の先端が第1の隔壁411を貫通し始めるときに、穿刺器具200の貫通孔215の開孔部分220の基端が第1の隔壁411と第2の隔壁421との間に位置するので、穿刺器具200の貫通孔215の開孔部分220を介して液体保存容器1の内部の液体が漏洩することを防げる。よって、穿刺器具200と穿刺ポート40とを嵌合させる等しなくても液体の取り出しを行う状態における密閉性を保つことができる。また、貫通孔215の開孔部分220の長さHLの大きさが最も大きい穿刺器具200に合わせて第1の隔壁411と第2の隔壁421との間の距離Dを設定することで、穿刺器具200の貫通孔215の開孔部分220の大きさ(長さ)に依らず使用可能な汎用性の高い穿刺ポート40を提供できる。
また、第1の隔壁411によりこの第1の隔壁411よりも内側の密閉性を確保させることにより、穿刺ポート40の内径の設定の自由度を高められる。即ち、穿刺ポート40の内面と穿刺器具200の外面とを密着させることなく密閉性を確保できるので、穿刺ポート40の内径を大きめに設定することで、種々の大きさ(外径)の穿刺器具200に対応させられる。また、穿刺器具200を穿刺ポート40に挿入する場合における穿刺器具200の外周面と穿刺ポート40の内周面との接触面積を小さくすることができるので、穿刺器具200を穿刺ポート40に穿刺する際の穿刺抵抗を低減することができる。
【0071】
(6)液体保存容器1の製造方法を、第1のポート部材41の他端部側の開口部と第2のポート部材42の他端部側の開口部が同じ方向を向いた状態で第2のポート部材42の一部又は全部を第1のポート部材41に挿入する挿入工程と、第1のポート部材41及び第2のポート部材42を、対向して重ね合わされた一組のシート状部材61,62の間に配置する配置工程と、第1のポート部材41、第2のポート部材42及び一組のシート状部材61,62が重なり合った部分を溶着する溶着工程と、一組のシート状部材61,62の周縁部を溶着して第1のポート部材41及び第2のポート部材42の開口部側に液体収容部10を形成する液体収容部形成工程と、を含んで構成し、液体収容部形成工程において、溶着工程で溶着された部分を含むように一組のシート状部材61,62を溶着した。これにより、穿刺ポート40の形成とシート状部材61,62との境界部分における溶着を同時に行えるので、穿刺ポート40を溶着により形成してから、シート状部材61,62と溶着する場合等に比べて、少ない工程数で液体保存容器1を製造することができる。
【0072】
(7)第2のポート部材42Bを、一端部に配置され第1のポート部材41Bの内径と略等しい外径の小径部分422と、他端部側に配置され第1のポート部材41Bの外径と同じ等しい外径の大径部分423と、を含んで構成し、挿入工程において、小径部分422と大径部分423との間の段差が第1のポート部材41Bの開口部に突き当たるまで小径部分422を第1のポート部材41Bに挿入し、溶着工程において、第2のポート部材42Bを小径部分422において第1のポート部材41Bを介して液体導出部30と溶着し、大径部分423において直接液体導出部30と溶着した。これにより、挿入工程において位置合わせを容易に行うことができる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の液体保存容器が備える穿刺ポート40Cについて、
図13A~
図13Fを参照しながら説明する。第2実施形態に係る穿刺ポート40C(ポート本体部43C)は、第1のポート部材41Cの内部に第1の隔壁411を有する点、また、第2のポート部材42Cの開口部が液体収容部10側とは反対側を向いている点において、第1実施形態と異なる。
【0074】
【0075】
図13Aに示すように、第1のポート部材41Cは筒状に構成される。穿刺器具200が挿入される側を第1のポート部材41Cの一端部側とすると、他端部側(液体収容部10が形成される側)に第1のポート部材41Cの長手方向に延びる一対のスリット413Cが形成される。第1のポート部材41Cは、スリット413Cが形成された部分よりも一端部側に配置され筒状部分を塞ぐ第1の隔壁411を有する。
【0076】
次に、第1のポート部材41Cに溶着ピン111C1を挿入し、その状態(
図13B参照)で、一方のシート状部材(シート状部材62)の凹溝31に第1のポート部材41Cを配置し、その後、他方のシート状部材(シート状部材61)を、液体導入溝211、及び凹溝31の位置が一致するように重ね合わせる(配置工程、
図13C参照)。
【0077】
次いで、重ね合わされたシート状部材61,62と、シート状部材61,62の間に配置された第1のポート部材41Cとを、凹溝31及びその近傍において溶着ピン111C1と溶着金型(図示せず)により挟み込んで溶着する。この溶着金型は、液体導出部30となる凹溝31のうち、液体収容部10が形成される側の端部に配置され、第1のポート部材41Cの外周面と、それと接する凹溝31の内周面とを溶着する。これにより、凹溝31及びその近傍において、シート状部材61,62と、シート状部材61,62の間に配置された第1のポート部材41Cと、が溶着されて溶着部431C1が形成される(
図13D参照)。
【0078】
次いで、
図13Dに示す状態から溶着ピン111C1を取り外し、第1のポート部材41Cに第2のポート部材42Cの全部を挿入する(挿入工程、
図13E参照)。
【0079】
次いで、第2のポート部材42Cに溶着ピン111C2を挿入し、重ね合わされたシート状部材61,62と、シート状部材61,62の間に配置された第1のポート部材41C及び第2のポート部材42Cとを、凹溝31及びその近傍において溶着ピン111C2と溶着金型110,110により挟み込んで溶着し、溶着部431C2が形成される。
このように2回の溶着工程で溶着部431C1及び溶着部431C2が形成され、穿刺ポート40C(ポート本体部43C)が形成される。
【0080】
次いで、第1実施形態で説明した場合と同様に液体導入溝211、及び凹溝31の位置が一致するようにシート状部材61,62を重ね合わせた状態で、シート状部材61,62のうち、液体収容部10を形成する部分の外側である周縁部を溶着により接合して液体収容部10を形成する(液体収容部形成工程)と共に、穿刺ポート40の周辺部を溶着により接合して液体導出部30を形成し(液体導出部形成工程)、穿刺ポート収容部50を形成する。
これにより、穿刺ポート40Cを備える液体保存容器が製造される。
【0081】
以上、第2実施形態で説明したように、液体導出部30のうち液体収容部10との境界部分において穿刺ポート40C(ポート本体部43C)と液体導出部30とが溶着等により接合されていれば、上述の効果(1)と同様の効果を奏することができる。
【0082】
以上、本発明の穿刺ポート及び液体保存容器の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第1実施形態、変形例1、2及び第2実施形態では、液体収容部の形成に一組のシート状部材の一例として2枚のシート状部材を用いたがこれに限らない。即ち、円筒状のシート状部材や1枚のシート状部材を折り曲げて重ね合わせることにより一組のシート状部材としてもよい。
【0083】
また、第1実施形態、変形例1、2及び第2実施形態では、一例として、穿刺ポートのうち液体収容部側に一対のスリットが形成され、保護部を有する形状を示したが、これに限らない。穿刺ポートが液体収容部側に延出せず、保護部を有さない形状でもよい。
【0084】
また、各実施形態では、液体導出部30を、液体収容部10において液体導入部20が配置された位置と対向する位置に配置したが、これに限らない。液体導出部を、液体導入部に対向しない位置、例えば、液体導入部に対して90度となる位置、に配置してもよい。また、液体導出部を複数配置してもよい。
【0085】
また、第2実施形態では、一例として第2のポート部材の全部が第1のポート部材の内部に挿入される構造を示したが、これに限らない。即ち、第1実施形態の変形例2と同様に、第2のポート部材を小径部分及び大径部分を有するように構成し、第2のポート部材の一部(小径部分)を第1のポート部材の内部に挿入し、溶着するように構成してもよい。
【0086】
また、第1実施形態、変形例1、2及び第2実施形態では、第1のポート部材、第2のポート部材で構成されるポート本体部と凹溝とを1回又は2回の溶着工程で溶着して形成する製造方法を示したが、これに限らない。即ち、予め第1のポート部材及び第2のポート部材を溶着してポート本体部を形成しておき、ポート本体部と凹溝とを液体収容部との境界部分において溶着して得られる液体保存容器も本発明の範囲に含まれる。
【0087】
また、第1実施形態では、液体収容部の形状を円形状としたが、これに限らない。即ち、液体収容部の形状は、角部を有さない曲線形状であればよく、円形状の他、楕円形状でもよい。また、液体収容部が矩形形状の場合は、角部に丸みを付けることが好ましい。これにより、液体を導入後、液体導入部を封止する前に、液体導入部内からの気泡の除去が容易となる。
【0088】
また、第1及び第2実施形態では、穿刺ポート収容部50及び液体収容部10を、シート状部材61,62に立体成形を形成することなく構成したが、これに限らない。即ち、液体収容部10及び穿刺ポート収容部50を、シート状部材61,62にそれぞれ立体形状を形成し、立体形状部分の位置が一致するようにシート状部材61,62を重ね合わせてこれらシート状部材61,62を接合して構成してもよい。
【0089】
また、第1実施形態では、液体保存容器1にEOG滅菌を施したが、これに限らない。即ち、液体保存容器にガンマ線や電子線等の放射線滅菌を施してもよい。
【0090】
また、各実施形態において、第1の隔壁411には、微小な貫通孔を形成してもよい。これにより、液体保存容器を滅菌するときに、第1の隔壁と第2の隔壁との間の空間をより効率的に滅菌できる。
【符号の説明】
【0091】
1 液体保存容器
10 液体収容部
20 液体導入部
30 液体導出部
40,40A,40B,40C 穿刺ポート
41,41A,41B,41C 第1のポート部材
42,42A,42B,42C 第2のポート部材
43 ポート本体部
50 穿刺ポート収容部
51 穿刺ポート収容空間
411 第1の隔壁
421 第2の隔壁
200 穿刺器具
210 針管部
215 貫通孔
220 開孔部分