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特開2023-128400視認装置、視認方法、視認プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128400
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】視認装置、視認方法、視認プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/04 20060101AFI20230907BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B25J19/04
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032727
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 遊士
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS13
3C707JU03
3C707JU12
3C707KS11
3C707KS35
3C707KT01
3C707KT04
3C707KT11
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】ロボットとの相対的な位置や姿勢によらずに操作者がロボットの動作情報を視認できる視認装置等を提供する。
【解決手段】ロボットアーム100の視認装置5は、ワークWを処理する切削工具20を備えるロボットアーム100の動作情報を取得する動作情報取得部51と、ロボットアーム100の操作者が当該ロボットアーム100と同時に視認可能な当該ロボットアーム100と別体の表示装置52であって、動作情報取得部51が取得した動作情報を表示する表示装置52と、を備える。表示装置52Aは、操作者の視線上に配置されるように、当該操作者が装着可能である。表示装置52Aは、透過型ディスプレイである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理する処理部を備えるロボットの動作情報を取得する動作情報取得部と、
前記ロボットの操作者が当該ロボットと同時に視認可能な当該ロボットと別体の表示装置であって、前記動作情報取得部が取得した動作情報を表示する表示装置と、
を備える視認装置。
【請求項2】
前記表示装置は、前記操作者の視線上に配置されるように、当該操作者が装着可能である、請求項1に記載の視認装置。
【請求項3】
前記表示装置は、透過型ディスプレイである、請求項1または2に記載の視認装置。
【請求項4】
前記操作者の視認方向を検知する視認方向検知部を更に備え、
前記動作情報取得部は、前記視認方向に応じた前記ロボットの部位に関する動作情報を取得し、
前記表示装置は、前記操作者が前記部位の方向を視認している際に、当該部位に関する前記動作情報を表示する、
請求項1から3のいずれかに記載の視認装置。
【請求項5】
前記視認方向検知部は、前記操作者の視線および/または頭部の方向を検知する、請求項4に記載の視認装置。
【請求項6】
前記動作情報は、前記処理部が前記被処理物から受ける力およびトルクの少なくともいずれかを含む、請求項1から5のいずれかに記載の視認装置。
【請求項7】
前記表示装置は、前記動作情報取得部が取得した前記力および前記トルクの少なくともいずれかの大きさおよび/または向きを表す画像を、前記操作者が視認している前記処理部に重畳して表示する、請求項6に記載の視認装置。
【請求項8】
前記動作情報取得部は、前記処理部に取り付けられて前記力および前記トルクの少なくともいずれかを検出可能な力覚センサを備える、請求項6または7に記載の視認装置。
【請求項9】
前記ロボットは、複数のリンクと、当該複数のリンクを相対運動可能に連結するジョイントと、少なくとも一つの前記リンクの先端部に設けられる前記処理部と、を備えるロボットアームであり、
前記動作情報取得部は、前記ジョイントに取り付けられて前記力および前記トルクの少なくともいずれかを検出可能な力覚センサを備える、
請求項6から8のいずれかに記載の視認装置。
【請求項10】
前記操作者の動作を検知する動作検知部を更に備え、
前記表示装置は、前記動作検知部が検知した動作に応じて、前記動作情報の表示態様を変更する、
請求項1から9のいずれかに記載の視認装置。
【請求項11】
被処理物を処理する処理部を備えるロボットの動作情報を取得する動作情報取得ステップと、
前記ロボットの操作者が当該ロボットと同時に視認可能な当該ロボットと別体の表示装置によって、前記動作情報取得ステップで取得された動作情報を表示する表示ステップと、
を備える視認方法。
【請求項12】
被処理物を処理する処理部を備えるロボットの動作情報を取得する動作情報取得ステップと、
前記ロボットの操作者が当該ロボットと同時に視認可能な当該ロボットと別体の表示装置によって、前記動作情報取得ステップで取得された動作情報を表示する表示ステップと、
をコンピュータに実行させる視認プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの視認装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、物流倉庫、建設現場、病院等の産業現場において、人間の代わりに各種の作業を行う産業用ロボットが導入されている。従来の産業用ロボットは大型で高出力のものが多く、安全のために人間が入れない隔離空間を設けて作業を行わせる必要があった。一方、近年では人間と同じ空間で一緒に作業を行う協働ロボットの導入も進んでいる。従来の産業用ロボットと比べて小型の協働ロボットは狭いスペースに設置でき、低出力であることから安全確保のための大がかりなシステムを必要としない。
【0003】
協働ロボットには人間が近づけるため、例えばロボットアームの先端部において被処理物に対して各種の処理を施すエンドエフェクタやロボットハンドおよび/または被処理物を人間が直接的に見ながら、所期の処理が正常に行われていることを確認できる。特許文献1では更にロボットアームに表示部が設けられ、エンドエフェクタに加わる力やトルク等の、人間が直接的に視認できない情報を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-30058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、表示部がロボットアームに設けられるため、ロボットアームの姿勢や、ロボットアームに対する人間の位置および/または姿勢によっては、人間が表示部を視認できない可能性がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、ロボットとの相対的な位置や姿勢によらずに操作者がロボットの動作情報を視認できる視認装置等を提供することを目的とする。なお、本発明は協働ロボットに限らない一般的な産業用ロボットとしてのロボットアーム等に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の視認装置は、被処理物を処理する処理部を備えるロボットの動作情報を取得する動作情報取得部と、ロボットの操作者が当該ロボットと同時に視認可能な当該ロボットと別体の表示装置であって、動作情報取得部が取得した動作情報を表示する表示装置と、を備える。
【0008】
この態様では、ロボットの動作情報を表示する表示装置が当該ロボットと別体であるため、ロボットの操作者は当該ロボットとの相対的な位置や姿勢によらずに動作情報を視認できる。
【0009】
本発明の別の態様は、視認方法である。この方法は、被処理物を処理する処理部を備えるロボットの動作情報を取得する動作情報取得ステップと、ロボットの操作者が当該ロボットと同時に視認可能な当該ロボットと別体の表示装置によって、動作情報取得ステップで取得された動作情報を表示する表示ステップと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロボットとの相対的な位置や姿勢によらずに操作者がロボットの動作情報を視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ロボットアームの外観を示す斜視図である。
図2】ロボットアームの各ジョイントを構成する連結装置の構成を模式的に示す。
図3】ロボットアームの各ジョイントを構成する連結装置の構成を模式的に示す。
図4】切削加工開始時に切削工具をワークに押し当てる動作を模式的に示す。
図5】ワークに押し当てられた切削工具の模式的な拡大図である。
図6】ロボットアームの視認装置の機能ブロック図である。
図7】表示装置の表示例を示す。
図8】表示装置の表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、産業用ロボットまたは協働ロボットの一例としてのロボットアーム100の外観を示す斜視図である。このロボットアーム100は、シリアルリンク機構による垂直多関節型のロボットアームである。本発明を適用可能なロボットは狭義のロボットアームに限られず、複数のリンク(人体における骨に相当)を相対運動可能に連結するジョイント(人体における関節に相当)を有する広義のロボットアームまたは任意のロボットでよい。また、シリアルリンク機構の代わりにパラレルリンク機構としてもよいし、垂直多関節型の代わりに水平多関節型としてもよい。
【0015】
ロボットアーム100は、台座10に近い方から順に、第1ジョイント11、第2ジョイント12、第3ジョイント13、第4ジョイント14、第5ジョイント15、第6ジョイント16、第7ジョイント17の七つのジョイントまたは軸を有する。各ジョイントは人体の各関節に相当し、第1ジョイント11は腰、第2ジョイント12は肩、第3ジョイント13は上腕(捻り)、第4ジョイント14は肘、第5ジョイント15は前腕(捻り)、第6ジョイント16は手首、第7ジョイント17は指先(捻り)に相当する。なお、各軸の方向はロボットアーム100の目的や用途に応じて適宜設計可能だが、本実施形態では台座10が水平面に置かれるとして、第1ジョイント11は鉛直方向(水平面である台座10に対して垂直)、第2ジョイント12は水平方向(水平面である台座10に対して平行)、第3ジョイント13は第2ジョイント12に対して垂直方向、第4ジョイント14は水平方向、第5ジョイント15は第4ジョイント14に対して垂直方向、第6ジョイント16は水平方向、第7ジョイント17は第6ジョイント16に対して垂直方向を向く。
【0016】
ロボットアーム100の先端部にある第7ジョイント17には、作業目的に応じた形状や機能を持つエンドエフェクタまたはロボットハンドが取り付けられる。例えば、物を掴むためのグラップル状、物を掬うためのシャベル状、物を下から支えて運搬するためのフォーク状、物を引っ掛けて運搬するためのフック状、物を吊り上げて運搬するためのクレーン状といった各種のエンドエフェクタが利用可能である。本実施形態ではエンドエフェクタとして、被処理物または被加工物としてのワークWに対して面取り(chamfering)やバリ取り(deburring)等の切削加工を施す切削工具を用いる例を説明する。なお、以下で詳細に説明する本実施形態は切削加工に限らず、処理部としてのローラを被処理物に押し当てて液体等を塗布する処理や、処理部としての組立工具を被処理物に押し当てて行う嵌合等の組立処理にも適用できる。
【0017】
図2および図3は、ロボットアーム100の各ジョイント11~17を構成する連結装置30の構成を模式的に示す。図2の連結装置30は、図1における第2ジョイント12、第4ジョイント14、第6ジョイント16等の「曲げ」の動作を行うジョイントに適用可能であり、図3の連結装置30は、図1における第1ジョイント11、第3ジョイント13、第5ジョイント15、第7ジョイント17等の「捻り」の動作を行うジョイントに適用可能である。
【0018】
図2において、連結装置30は第1部材としての第1リンク41と第2部材としての第2リンク42を相対運動可能に連結する。連結装置30は人体における関節に相当し、連結装置30で相互に連結される第1リンク41および第2リンク42は人体における骨に相当する。
【0019】
第1リンク41および第2リンク42は、連結装置30による連結態様に応じて、様々な態様の相対運動をする。本実施形態では、第1リンク41および第2リンク42の延伸方向に垂直な回転軸Aを中心として第1リンク41と第2リンク42が相対回転する例を説明する。
【0020】
なお、第1リンク41および第2リンク42の相対運動は回転運動に限らず並進運動でもよい。例えば、第1リンク41および第2リンクの延伸方向に垂直な方向(図2の紙面に垂直な方向)に第1リンク41および第2リンク42が相対的に並進運動するように構成してもよいし、第1リンク41および第2リンクの延伸方向に平行な方向(図2の上下方向)に第1リンク41および第2リンク42が相対的に並進運動するように構成してもよい。
【0021】
連結装置30は、筐体31と、制御基板32と、モータ33と、減速機34と、弾性部材35と、出力フランジ36を備える。筐体31は、回転軸Aの周りに回転対称な形状をしており、その内部に連結装置30の構成要素32~36を収容する。筐体31の外周には、第1リンク41が取り付けられる第1取付部311と、第2リンク42が取り付けられる第2取付部312が設けられる。
【0022】
第1取付部311において筐体31に固定される第1リンク41は、筐体31と一体的に回転軸Aの周りに第2リンク42に対して相対回転可能である。第2取付部312は、構成要素32~36を収容する筐体31の内部空間と繋がる底面側(図2の左側)の開口部である。この開口部に設けられる出力フランジ36を介して第2リンク42は連結装置30に取り付けられる。
【0023】
制御基板32はロボットアーム100全体の制御を担う中央制御装置(不図示)の制御の下で連結装置30を制御する。例えば、モータ33に対する駆動指令の生成、出力軸エンコーダ(不図示)の測定データに基づく適応制御、弾性部材35の弾性変形に基づくトルクの検出、検出されたトルクに基づく適応制御等が制御基板32で行われる。モータ33は制御基板32からの駆動指令に応じて回転軸Aの周りに第2リンク42を回転駆動する動力を発生させるアクチュエータである。減速機34は歯車等によってモータ33の回転速度を減らし減速比に比例したトルクを発生させる。
【0024】
弾性部材35は、動力源としてのモータ33および減速機34と、動力によって回転駆動される負荷としての第2リンク42の間に直列に設けられ、連結装置30において直列弾性アクチュエータ(SEA:Series Elastic Actuator)を構成する。協働ロボットとしてのロボットアーム100と一緒に作業を行う人間が衝突したとしても、弾性部材35の弾性変形によって衝撃が吸収されるため安全性が向上する。また、弾性部材35は、モータ33および減速機34で発生した動力や第2リンク42に加わる外力を弾性エネルギーとして蓄積および解放できるため、人間の筋肉のような効率的な動作を実現できる。特に、後述するように面取りやバリ取り等のための切削工具をワークWに押し当てる場合、弾性部材35の弾性変形によって切削工具とワークWの接触の衝撃を吸収しながら、その弾性力によって切削工具をワークWに効率的に押し当てることができる。
【0025】
弾性部材35は連結装置30に弾性を付与する部材であり、例えば、ばねやゴム等の任意の弾性体によって形成される。また、弾性部材35に加えてまたは代えて、連結装置30の第1リンク41および第2リンク42の相対回転に対して抵抗を付与する抵抗付与部材を設けてもよい。抵抗付与部材としては、機械的な摩擦によって抵抗を付与するもの、油やグリース等の粘性流体の粘性によって抵抗を付与するもの等が挙げられる。弾性部材35の弾性や抵抗付与部材が付与する抵抗を制御基板32によって可変としてもよい。
【0026】
なお、弾性部材35は外力によるトルクを検出するトルクセンサとしても機能する。すなわち、外力によるトルクは弾性部材35の弾性変形を引き起こすため、その弾性変形量に基づいてトルクを検出できる。弾性部材35の弾性変形量を測定するためには、磁歪センサ、ひずみゲージ、圧電素子、偏光素子、静電容量センサ等の各種の変位センサを弾性部材35の表面等に取り付ければよい。変位センサで測定された弾性変形量は制御基板32に実装される演算装置等によってトルクに変換される。なお、連結装置30には、弾性部材35および/または他の部材によって、連結装置30に加わる力を検出する力センサを設けてもよい。以下では、力センサおよびトルクセンサを力覚センサと総称する。
【0027】
このように連結装置30には、加わる力および/またはトルクを検出可能な力覚センサが取り付けられてもよい。各ジョイント11~17を構成する連結装置30に加わる力および/またはトルクに基づいて、ロボットアーム100の先端部に設けられる処理部または加工部としてのエンドエフェクタまたはロボットハンドが、被処理物または被加工物としてのワークWから受ける力および/またはトルクを演算できる。つまり、連結装置30に設けられる力覚センサによって、エンドエフェクタがワークWから受ける力および/またはトルクを間接的に検出できる。これらの力覚センサに加えてまたは代えて、エンドエフェクタに力覚センサを取り付けることで、当該エンドエフェクタがワークWから受ける力および/またはトルクを直接的に検出してもよい。
【0028】
以上の構成において、減速機34、弾性部材35、抵抗付与部材は、それぞれジョイントとしての連結装置30に柔軟性を付与する柔軟性付与部を構成する。ここで、柔軟性とはジョイントの曲がりやすさを意味し、外力によってジョイントが曲がる場合に柔軟性があるという。例えば、減速機34は減速比に比例したトルクを発生させるため、減速比を低くすることで外力によってジョイントが曲がりやすい柔軟性の高い状態を実現できる。また、弾性部材35や抵抗付与部材は、外力に抗する弾性力や抵抗を発生させつつもジョイントが曲がることを許容するため、ジョイントに柔軟性を付与しているといえる。なお、柔軟性付与部は少なくとも一つのジョイントに設ければよく、図1の七つのジョイント11~17全てに柔軟性付与部を設けなくてもよい。
【0029】
出力軸エンコーダ(不図示)は、第2リンク42の第1リンク41に対する回転軸Aの周りの回転位置を測定するロータリエンコーダである。出力フランジ36は、減速機34が生成したトルクを弾性部材35を介して第2リンク42に伝え、回転軸Aの周りに第2リンク42を回転させる。出力フランジ36の周囲には、筐体31に対する第2リンク42の回転を円滑化する軸受361が設けられる。
【0030】
図3の連結装置30では、第1リンク41と第2リンク42が、それぞれの延伸方向に平行な回転軸Bを中心として相対回転する。筐体31の第2リンク42側に設けられる切欠37によって、モータ33による第2リンク42の回転軸Bの周りの回転を筐体31が阻害しない構成になっている。
【0031】
続いて、ロボットアーム100の先端部にある第7ジョイント17(図1)に取り付けられて、ワークWの面取りやバリ取り等の切削加工を施す処理部または加工部としての切削工具20について説明する。図4は、切削加工開始時に切削工具20をワークWに押し当てる動作を模式的に示す。本図におけるロボットアーム100は図1と同様に構成できるが大幅に簡略化して図示されている。例えば、本図では七つの軸またはジョイント11~17のうち、第2ジョイント12、第4ジョイント14、第7ジョイント17のみが模式的に示されており、その他の四つのジョイント11、13、15、16の図示は省略されている。
【0032】
切削工具20は、図4の紙面内において、処理対象物または加工対象物としてのワークWに近づくように駆動される。図4の例では、主に第2ジョイント12が時計回り方向に回転駆動され、ロボットアーム100の先端部にある第7ジョイント17に設けられた切削工具20がワークWに接触する。この際、第2ジョイント12および/または他のジョイント11、13~17に設けられる弾性部材35が弾性変形することで、切削工具20とワークWの接触の衝撃を効果的に吸収する。そして、接触した切削工具20とワークWの密着性が向上するように各弾性部材35が弾性変形するため、切削工具20のワークWに対する位置や姿勢が自然に微調整される。このように、ロボットアーム100全体の制御を担う中央制御装置(不図示)による切削工具20のワークWに対する位置決め精度が低い場合(例えば、ロボットアーム100のダイレクトティーチング時)でも、各ジョイント11~17に設けられる直列弾性アクチュエータが切削工具20をワークWに確実に押し当てられる。また、弾性部材35の弾性力によってワークWに押し当てられた切削工具20は、ワークWの被加工部位または被処理部位に対して効果的に面取りやバリ取り等の切削加工を施せる。
【0033】
なお、ロボットアーム100では一般的に六つの軸またはジョイントによって、3次元空間(XYZ空間等)の各軸(X軸、Y軸、Z軸等)に関するエンドエフェクタの並進方向および回転方向の運動を実現できる。これに対して本実施形態のロボットアーム100(図1)は七つの軸またはジョイント11~17を有する。すなわち、本実施形態のロボットアーム100は、エンドエフェクタとしての切削工具20に互いに冗長性のある運動を付与する複数の冗長ジョイントを含んでいる。このような冗長ジョイントによって、ロボットアーム100の取りうる姿勢の自由度が増大し、切削工具20に対する各ジョイント11~17の位置や姿勢のバリエーションから、各ジョイント11~17が切削工具20に付与する柔軟性またはコンプライアンスを調整できる。このように冗長軸を設けることによって、形状や材質が異なる各種のワークWにも適応可能な汎用性の高いロボットアーム100を実現できる。
【0034】
図5は、ワークWに押し当てられた処理部としての切削工具20の模式的な拡大図である。切削工具20は、ロボットアーム100の先端部に設けられ、被加工物または被処理物としてのワークWを加工または処理する。具体的には、切削工具20は、ロボットアーム100の第7ジョイント17を先端部とし第6ジョイント16を基端部または後端部とするリンクの先端部に設けられる。切削工具20は、ワークWに対して面取りやバリ取り等の切削加工を施すために、一または複数の鋭利なブレードまたは刃、やすり等の研磨部等を備える。各ブレードの面は図5の紙面に略平行であり、切削工具20を紙面に交差する処理方向または加工方向(例えば紙面に垂直な方向)にワークWに対して相対移動させることで、ワークWの被加工部位(図5の例では左上の角部)に面取りやバリ取り等の切削加工を施す。
【0035】
図5において切削工具20に重畳して示される力FおよびトルクTは、それぞれ切削工具20が接触しているワークWの被加工部位から受ける力およびトルクの大きさおよび向きを矢印によって視覚的に表す。これらは後述するロボットアーム100と別体の表示装置によって、当該ロボットアーム100の操作者の視線上に表示される。ロボットアーム100の操作者は、操作対象のロボットアーム100(特にエンドエフェクタとしての切削工具20)と、力FやトルクT等のロボットアーム100の動作情報の両方を視界に入れながら、当該ロボットアーム100を安全かつ効率的に操作できる。特に、エンドエフェクタまたは処理部としての切削工具20に加わる力FやトルクT等の人間が直接的に視認できない動作情報を操作者に対して可視化することで、力Fおよび/またはトルクTが過大になって切削工具20および/またはワークWを破損することや、力Fおよび/またはトルクTが過小になって切削加工の効率が低下することを効果的に防止できる。
【0036】
また、力FやトルクT等のロボットアーム100の動作情報を表示する表示装置が当該ロボットアーム100と別体であるため、ロボットアーム100の操作者は当該ロボットアーム100との相対的な位置や姿勢あるいはロボットアーム100と操作者の間にある障害物等によらずに動作情報を常に視認できる。つまり、後述するように、表示装置はロボットアーム100と操作者の間において当該操作者の視線上に配置可能であるため、表示装置が表示する力FやトルクT等の動作情報は操作者の視界においてロボットアーム100より常に前景に配置される。従って、後景におけるロボットアーム100の位置や姿勢によらず、操作者は前景におけるロボットアーム100の動作情報を常に視認できる。
【0037】
なお、図5のように矢印等の画像によって力FやトルクT等のロボットアーム100の動作情報を表す場合、それぞれの大きさは矢印等の長さ、太さ、色、動き等によって表現できる。また、力FやトルクT等のロボットアーム100の動作情報は、必ずしも視認対象部位である切削工具20に重畳しなくてもよく、操作者の視線上に配置される表示装置の画面上の任意の位置に任意の態様で表示すればよい。更に、力FやトルクT等のロボットアーム100の動作情報の表示態様は矢印に限らず、それぞれの大きさや向きを数字、文字、記号、色等で表示してもよい。
【0038】
図6は、ロボットアーム100の視認装置5の機能ブロック図である。視認装置5は、動作情報取得部51と、表示装置52と、画像取得部53と、視認方向検知部54と、動作検知部55を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。例えば、視認装置5の機能ブロックの一部または全部を、ロボットアーム100と同じ敷地や建物に設けられるコンピュータやプロセッサで分散的または集中的に実現してもよいし、ロボットアーム100と異なる敷地や建物に設けられるコンピュータやプロセッサで分散的または集中的に実現してもよい。
【0039】
動作情報取得部51は、被処理物としてのワークWを処理する処理部としての切削工具20を備えるロボットアーム100の各部の動作情報を取得する。図5において例示したように、ロボットアーム100の動作情報は、切削工具20がワークWから受ける力FおよびトルクTの少なくともいずれかを含む。切削工具20に加わる力Fおよび/またはトルクTは、切削工具20に取り付けられる力覚センサから直接的に取得してもよいし、各ジョイント11~17に取り付けられる力覚センサから間接的に取得(演算)してもよい。
【0040】
ロボットアーム100の他の動作情報としては、切削工具20の処理方向または加工方向(例えば図6の紙面に垂直な方向)の速度や加速度(一般化すれば処理部による処理内容、処理速度、処理効率等)、切削工具20に加わる力Fおよび/またはトルクTあるいはロボットアーム100および/または切削工具20の動作設定に基づいて推定されるワークWの現在までの切削量および/または将来の切削量(一般化すれば処理部による過去および/または将来の処理結果)、冗長軸を含む7軸以上のロボットアーム100において各ジョイント11~17の位置や姿勢に応じて切削工具20に付与される柔軟性またはコンプライアンスを視覚的に表すインピーダンスマッチング楕円体やコンプライアンス楕円体、各ジョイント11~17に加わる力および/またはトルク、切削工具20や各ジョイント11~17等のロボットアーム100の各可動部位における負荷、消費電力、現在までの稼働履歴、異常等の診断結果や推定結果が例示される。このように、ロボットアーム100の動作情報は、ロボットアーム100の過去、現在、将来に亘る動作に関する情報であって、ロボットアーム100の操作者が直接的に視認できない任意の情報を含む。
【0041】
表示装置52は、ロボットアーム100の操作者が当該ロボットアーム100と同時に視認可能な当該ロボットアーム100と別体の表示装置であり、動作情報取得部51が取得した動作情報を表示する。図6では三種類の表示装置52を例示する。
【0042】
表示装置52の第1の例は、透過型ディスプレイ52Aである。透過型ディスプレイ52Aは、ロボットアーム100が設置されたエリアにおいて実際のロボットアーム100を視認しながら操作する操作者(図6では「Operator (Local)」と示され、以下では現地操作者ともいう)の視線上に配置されるように、当該現地操作者が装着可能な眼鏡型のディスプレイである。透過型ディスプレイ52Aを装着した現地操作者は、透過性を有する画面を通してロボットアーム100を視認できる。それと同時に、透過型ディスプレイ52Aの画面には動作情報取得部51が取得した動作情報が表示される。例えば、現地操作者が透過型ディスプレイ52Aの画面を通して切削工具20および/またはワークWを視認しながら切削加工の操作または監視を行う際、切削工具20に加わる力FやトルクT等の動作情報を表す画像が透過型ディスプレイ52Aの画面上において現地操作者が視認している切削工具20に重畳されて表示される。図5は、この時の現地操作者の視界を模式的に示す。図5において、前景における力FおよびトルクTは透過型ディスプレイ52Aが表示しているものであり、後景における切削工具20やワークWは現地操作者が透過型ディスプレイ52Aの画面を通して視認しているものである。
【0043】
表示装置52の第2の例は、現地操作者がロボットアーム100の操作時または監視時に携帯するタブレット等の携帯端末52Bである。携帯端末52Bは、現地操作者の視線上に配置されるように、当該現地操作者が装着可能なヘッドマウントディスプレイ等でもよい。携帯端末52Bの画面には、ロボットアーム100を撮影するために設置されたカメラCAMによって撮影されたロボットアーム100の画像や、携帯端末52B自体が備える不図示のカメラによって撮影されたロボットアーム100の画像が後景に表示される。そして、動作情報取得部51が取得した力FやトルクT等の動作情報が、携帯端末52Bの画面の前景に表示される。このため、現地操作者は携帯端末52Bの画面上において、操作対象または監視対象のロボットアーム100と動作情報を同時に視認できる。例えば、携帯端末52Bの画面には図5のように、後景のロボットアーム100と前景の動作情報が合成された画像が表示される。このように、ロボットアーム100の動作情報を表示する携帯端末52Bが当該ロボットアーム100と別体であるため、ロボットアーム100の現地操作者は当該ロボットアーム100との相対的な位置や姿勢によらずに動作情報を視認できる。
【0044】
表示装置52の第3の例は、ロボットアーム100が設置されたエリア外において遠隔からロボットアーム100を視認しながら操作する操作者(図6では「Operator (Remote)」と示され、以下では遠隔操作者ともいう)が、ロボットアーム100の操作時または監視時に視認するモニタ等の遠隔端末52Cである。遠隔端末52Cは、遠隔操作者の視線上に配置されるように、当該遠隔操作者が装着可能なヘッドマウントディスプレイ等でもよい。遠隔端末52Cの画面には、遠隔操作者が操作可能なカメラCAMから画像取得部53が取得したロボットアーム100の画像が後景に表示される。そして、動作情報取得部51が取得した力FやトルクT等の動作情報が、遠隔端末52Cの画面の前景に表示される。このため、遠隔操作者は遠隔端末52Cの画面上において、操作対象または監視対象のロボットアーム100と動作情報を同時に視認できる。例えば、遠隔端末52Cの画面には図5のように、後景のロボットアーム100と前景の動作情報が合成された画像が表示される。このように、ロボットアーム100の動作情報を表示する遠隔端末52Cが当該ロボットアーム100と別体であるため、ロボットアーム100の遠隔操作者は当該ロボットアーム100の位置や姿勢によらずに動作情報を視認できる。
【0045】
視認方向検知部54は、ロボットアーム100の操作者の視認方向を検知する。例えば、視認方向検知部54は、操作者の視線および/または頭部の方向を検知する。視認方向検知部54は、例えば、操作者が装着する透過型ディスプレイ52Aやヘッドマウントディスプレイに搭載される視線センサ(eye tracker)や慣性センサ等、操作者が装着または携帯する他のデバイスに搭載される視線センサや慣性センサ等、操作者の視線、位置、姿勢等を検知する画像センサ等によって構成される。なお、操作者が携帯するタブレット等の携帯端末(52B等)を表示装置52として使用する場合の視認方向検知部54は、当該携帯端末が備えるカメラの方向を仮想的な操作者の視線の方向として検知してもよいし、当該携帯端末の位置や姿勢を仮想的な操作者の頭部の方向として検知してもよい。
【0046】
動作情報取得部51は、視認方向検知部54が検知した視認方向に応じたロボットアーム100の部位に関する動作情報を取得する。表示装置52は、操作者が当該部位の方向を視認している際に、当該部位に関する動作情報を表示する。例えば、視認方向検知部54が検知した視認方向に切削工具20および/またはワークWがある場合、動作情報取得部51は切削工具20に関する動作情報を取得し、表示装置52は切削工具20に関する動作情報を図5のように表示する。
【0047】
また、視認方向検知部54が検知した視認方向にロボットアーム100の台座10がある場合、動作情報取得部51はロボットアーム100の全体に関する動作情報、例えばロボットアーム100の全体の負荷や消費電力等を取得し、図7に模式的に示されるように表示装置52(図7における矩形の太枠は表示装置52の画面を表す)は当該負荷や消費電力等を数字やグラフ等によって表示してもよい。更に、図8に模式的に示されるように、視認方向検知部54が検知した視認方向から切削工具20および/またはワークWが外れているが、操作者の視界または表示装置52の画面の縁には映り込んでいる場合、表示装置52は、図5における力FおよびトルクTの矢印の画像の代わりに、力Fおよび/またはトルクTの大きさのみを簡易的に表す例えば楕円状の画像を表示してもよい。力Fおよび/またはトルクTの大きさは、例えば、楕円状の画像の色、大きさ、動き等によって表現できる。このように本実施形態によれば、視認方向検知部54が検知した視認方向に応じて、動作情報を表示するロボットアーム100の部位、表示する動作情報、動作情報の表示態様を変更できる。
【0048】
動作検知部55は、操作者の動作またはジェスチャーを検知する。動作検知部55は、例えば、操作者が装着する透過型ディスプレイ52Aやヘッドマウントディスプレイに搭載される慣性センサ等、操作者が装着または携帯する他のデバイスに搭載される慣性センサ等、操作者の位置、姿勢、動き等を検知する画像センサ等によって構成される。表示装置52は、動作検知部55が検知した動作に応じて、動作情報の表示態様を変更する。例えば、動作検知部55によって操作者の両腕を広げる動作が検知された場合、表示装置52は動作情報を拡大する(例えば、力Fおよび/またはトルクTを表す矢印の画像を長くしたり太くしたりする)。表示装置52として画面が非透過型の携帯端末52Bや遠隔端末52Cを使用する場合、動作情報の背景に表示するロボットアーム100の画像も、動作検知部55が検知した動作に応じて表示態様を変更するのが好ましい。
【0049】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せに様々な変形例が可能なこと、またそのような変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0050】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0051】
5 視認装置、20 切削工具、30 連結装置、35 弾性部材、41 第1リンク、42 第2リンク、51 動作情報取得部、52 表示装置、52A 透過型ディスプレイ、52B 携帯端末、52C 遠隔端末、53 画像取得部、54 視認方向検知部、55 動作検知部、100 ボットアーム。
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