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特開2023-128402換気システム、制御装置および換気方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128402
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】換気システム、制御装置および換気方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20230907BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20230907BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032730
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】714006510
【氏名又は名称】株式会社マーベックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】大霜 慎礼
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】坂部 光希
(72)【発明者】
【氏名】木戸 稔人
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD04
3L260AB15
3L260BA12
3L260CB52
3L260CB54
3L260FC02
3L260FC04
(57)【要約】
【課題】部屋の給気量または排気量を変更可能な建物において、換気システムを安定して動作させる。
【解決手段】換気システムは、非居住空間から複数の部屋へそれぞれ空気を供給する複数の送風機と、前記複数の送風機のうちの一部の前記送風機の風量を変更する変更処理を行う場合、前記複数の送風機の風量の合計と前記非居住空間への給気量とが等しくなるように、前記非居住空間への給気、および前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量の少なくともいずれか一方を調整する調整処理を行う制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非居住空間から複数の部屋へそれぞれ空気を供給する複数の送風機と、
前記複数の送風機のうちの一部の前記送風機の風量を変更する変更処理を行う場合、前記複数の送風機の風量の合計と前記非居住空間への給気量とが等しくなるように、前記非居住空間への給気、および前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量の少なくともいずれか一方を調整する調整処理を行う制御部とを備える、換気システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記部屋を負圧化するために前記変更処理において対応の前記送風機の風量を小さくした場合、前記調整処理において、前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量を大きい値に変更する、請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記部屋を負圧化するために前記変更処理において対応の前記送風機の風量を小さくした場合、前記調整処理において、さらに、他の前記部屋が負圧化しないように対応の前記送風機の風量を大きい値に変更する、請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記制御部は、負圧化可能な前記部屋を認識可能な画面を表示する処理を行い、前記画面において選択された前記部屋に対応する前記送風機の風量を小さくする前記変更処理を行う、請求項2または請求項3に記載の換気システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記部屋の空気に関する計測結果に基づいて、前記変更処理において対応の前記送風機の風量を大きくした場合、前記調整処理において、前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量を小さい値に変更する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記調整処理において、前記風量の調整後の値が前記送風機の所定の制限値を超える場合、前記風量が前記制限値を超えないように設定するとともに、前記非居住空間へ空気を供給する給気装置の風量を変更する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項7】
非居住空間から複数の部屋へそれぞれ空気を供給する複数の送風機のうちの一部の前記送風機の風量を変更する変更処理を行い、前記変更処理を行う場合、前記複数の送風機の風量の合計と前記非居住空間への給気量とが等しくなるように、前記非居住空間への給気、および前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量の少なくともいずれか一方を調整する調整処理を行う制御部を備える、制御装置。
【請求項8】
換気システムにおける換気方法であって、
非居住空間から複数の部屋へそれぞれ空気を供給する複数の送風機のうちの一部の前記送風機の風量を変更する変更処理を行うステップと、
前記変更処理を行う場合、前記複数の送風機の風量の合計と前記非居住空間への給気量とが等しくなるように、前記非居住空間への給気、および前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量の少なくともいずれか一方を調整する調整処理を行うステップとを含む、換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気システム、制御装置および換気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の高気密化に伴い、建材に用いられている化学物質、ならびに高温多湿の環境下で発生したカビおよびダニ等が屋内を汚染することにより、いわゆるシックハウス症候群と称される健康被害が生じやすくなることが知られている。
【0003】
このため、建築基準法が改正され、屋内の空気を自動的に換気する換気システムを住宅に設置することが義務付けられるようになった。
【0004】
たとえば、特許文献1(特開2000-55426号公報)には、建築物の室内と室外との間で空気を流通させることにより、室内と室外との気圧差を緩和することができる気圧差調整装置が開示されている。すなわち、気圧差調整装置は、室内と室外とを連通する玄関開口部と、該玄関開口部を開閉する玄関扉と、室内と室外とを連通するバルコニー開口部と、該バルコニー開口部を開閉するバルコニー戸とを備え、前記玄関開口部と前記バルコニー開口部とが室内を介して連通可能に構成された建築物に配設され、室内と室外の間で空気を流通させることで前記建築物の室内と室外の気圧差を緩和する気圧差調整装置であって、第1、第2給気口と、第1、第2開閉手段と、第1、第2差圧計と、制御手段とを備え、前記第1給気口は前記玄関開口部近傍における室内と室外とを連通するように構成され、前記第2給気口は前記バルコニー開口部近傍における室内と室外とを連通するように構成され、前記第1開閉手段は前記第1給気口を開閉するように構成され、前記第2開閉手段は前記第2給気口を開閉するように構成され、前記第1差圧計は前記玄関開口部近傍における室内と室外との気圧の差である差圧を計測するように構成され、前記第2差圧計は前記バルコニー開口部近傍における室内と室外との気圧の差である差圧を計測するように構成され、前記制御手段は、前記第1、第2差圧計によって計測された差圧に基づいて、前記室内と前記室外との気圧差が減少されるように前記第1、第2開閉手段の開閉制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-55426号公報
【特許文献2】特許第6940896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
換気システムが設置された建物において、ある部屋の状況の変化等の理由により当該部屋の給気量または排気量を変更した場合、建物全体の給排気量のバランスが変わり、換気システムにおける制御が困難となる場合がある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、部屋の給気量または排気量を変更可能な建物において、換気システムを安定して動作させることが可能な換気システム、制御装置および換気方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる換気システムは、非居住空間から複数の部屋へそれぞれ空気を供給する複数の送風機と、前記複数の送風機のうちの一部の前記送風機の風量を変更する変更処理を行う場合、前記複数の送風機の風量の合計と前記非居住空間への給気量とが等しくなるように、前記非居住空間への給気、および前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量の少なくともいずれか一方を調整する調整処理を行う制御部とを備える。
【0009】
このような構成により、建物における給排気量のバランスが保たれている状態において、送風機の風量を変更する変更処理を行い、かつ変更処理に伴って建物における給排気量のバランスが崩れることを防ぐことができる。したがって、部屋の給気量または排気量を変更可能な建物において、換気システムを安定して動作させることができる。
【0010】
(2)前記制御部は、前記部屋を負圧化するために前記変更処理において対応の前記送風機の風量を小さくした場合、前記調整処理において、前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量を大きい値に変更してもよい。
【0011】
このような構成により、自動的に部屋を負圧化して、たとえば汚染された空気が他の部屋へ流出しないようにすることができるため、煩雑な作業を行うことなく患者の隔離等を容易に行うことができる。また、部屋を負圧化する変更処理に伴って建物における給排気量のバランスが崩れることを防ぐことができる。
【0012】
(3)前記制御部は、前記部屋を負圧化するために前記変更処理において対応の前記送風機の風量を小さくした場合、前記調整処理において、さらに、他の前記部屋が負圧化しないように対応の前記送風機の風量を大きい値に変更してもよい。
【0013】
このような構成により、建物における給排気量のバランスを保ちながら、他の部屋から対象となる部屋へより確実に空気を流入させることができる。
【0014】
(4)前記制御部は、負圧化可能な前記部屋を認識可能な画面を表示する処理を行い、前記画面において選択された前記部屋に対応する前記送風機の風量を小さくする前記変更処理を行ってもよい。
【0015】
このような構成により、ユーザは、負圧化可能な部屋を視覚的に容易に認識し、選択した部屋を負圧化する指示を制御装置に与えることができる。
【0016】
(5)前記制御部は、前記部屋の空気に関する計測結果に基づいて、前記変更処理において対応の前記送風機の風量を大きくした場合、前記調整処理において、前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量を小さい値に変更してもよい。
【0017】
このような構成により、部屋の換気の必要性を検知し、自動的に部屋の換気を行いながら、建物における給排気量のバランスを保つことができる。
【0018】
(6)前記制御部は、前記調整処理において、前記風量の調整後の値が前記送風機の所定の制限値を超える場合、前記風量が前記制限値を超えないように設定するとともに、前記非居住空間へ空気を供給する給気装置の風量を変更してもよい。
【0019】
このような構成により、所望の調整量に対して送風機の能力が足りない場合等において、給気装置の動作を変更することができるため、建物の給排気量のバランスをより確実に保つことができる。
【0020】
(7)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる制御装置は、非居住空間から複数の部屋へそれぞれ空気を供給する複数の送風機のうちの一部の前記送風機の風量を変更する変更処理を行い、前記変更処理を行う場合、前記複数の送風機の風量の合計と前記非居住空間への給気量とが等しくなるように、前記非居住空間への給気、および前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量の少なくともいずれか一方を調整する調整処理を行う制御部を備える。
【0021】
このような構成により、自動的に部屋を負圧化して、たとえば汚染された空気が他の部屋へ流出しないようにすることができるため、煩雑な作業を行うことなく患者の隔離等を容易に行うことができる。また、部屋を負圧化する変更処理に伴って建物における給排気量のバランスが崩れることを防ぐことができる。
【0022】
(8)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる換気方法は、換気システムにおける換気方法であって、非居住空間から複数の部屋へそれぞれ空気を供給する複数の送風機のうちの一部の前記送風機の風量を変更する変更処理を行うステップと、前記変更処理を行う場合、前記複数の送風機の風量の合計と前記非居住空間への給気量とが等しくなるように、前記非居住空間への給気、および前記風量を変更する前記送風機とは別の前記部屋に対応する前記送風機の風量の少なくともいずれか一方を調整する調整処理を行うステップとを含む。
【0023】
このような構成により、自動的に部屋を負圧化して、たとえば汚染された空気が他の部屋へ流出しないようにすることができるため、煩雑な作業を行うことなく患者の隔離等を容易に行うことができる。また、部屋を負圧化する変更処理に伴って建物における給排気量のバランスが崩れることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、部屋の給気量または排気量を変更可能な建物において、換気システムを安定して動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る換気システムの構成を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る換気システムの構成を示す図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の構成を示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が表示する部屋選択画面の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が表示する部屋選択画面の他の例を示す図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の隔離運転モードにおける動作手順を定めたフローチャートである。
図7図7は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が隔離運転モードにおいて給排気制御を行なう際の動作手順を定めたフローチャート、および当該フローチャートの各ステップにおける風量調整の具体例を示す図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が熱交換器の給気量を変更する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図9図9は、本発明の第2の実施の形態に係る換気システムの構成を示す図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係る換気システムの構成を示す図である。
図11図11は、本発明の第2の実施の形態に係る制御装置が給排気制御を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図12図12は、本発明の第2の実施の形態に係る制御装置が給排気制御を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
<第1の実施の形態>
[換気システム]
図1および図2は、本発明の第1の実施の形態に係る換気システムの構成を示す図である。
【0028】
図1および図2を参照して、換気システム201は、たとえば複数の部屋Rを有する住宅等の建物に設置される。換気システム201は、複数の送風機10と、制御装置101と、エアコン121,122と、熱交換器131とを備える。
【0029】
図1では、一例として、建物の1階に設けられた4つの部屋Rである部屋R1~R4と、部屋R1~R4にそれぞれ対応して1階の床下に設けられた4つの送風機10A~10Dとを示している。制御装置101およびエアコン121は、たとえば部屋R1に設けられる。図2では、一例として、建物の2階に設けられた3つの部屋Rである部屋R5~R7と、部屋R5~R7にそれぞれ対応して2階の床下に設けられた3つの送風機10E~10Gとを示している。エアコン122は、たとえば部屋R5に設けられる。
【0030】
なお、1つの部屋Rに対応して1つの送風機10が設けられる構成に限定されず、1つの部屋Rに対応して複数の送風機10が設けられてもよい。
【0031】
送風機10は、建物の非居住空間に設けられ、当該非居住空間から対応の部屋Rへ空気を供給する。非居住空間は、ここでは建物の床下であるとして説明するが、床下に限らず、天井等であってもよい。
【0032】
各部屋Rには、給気口Msと、排気口Meとが設けられている。給気口Msおよび排気口Meは、たとえば、換気システム201の製造者により施工される。図1および図2では、一例として、各部屋Rの給気口Msおよび排気口Meが床に設けられ、部屋Rと非居住空間である床下とを連通する。なお、建物において、給気口Msおよび排気口Meの少なくともいずれか一方が設けられていない部屋Rが存在してもよい。
【0033】
送風機10は、たとえば、ファンであり、送風用の羽根および羽根を駆動するモータを有する。図1に示す例では、送風機10A~10Gは、それぞれ、部屋R1~R7の給気口Ms付近に設けられている。換気システム201における複数の送風機10は、非居住空間から複数の部屋Rへそれぞれ空気を供給する。より詳細には、各送風機10は、自己の羽根を回転させることにより、床下の空気を給気口Ms経由で対応の部屋Rへ供給する。送風機10は、無線通信または有線通信によって制御装置101から受信した制御情報に従い、モータの回転数を変更することにより送風量を変更する。
【0034】
各部屋Rへ給気口Msから空気が流入した場合、排気口Meおよび図示しないダクトを経由して各部屋Rからの空気が合流し、熱交換器131へ流入する。
【0035】
熱交換器131は、1階の床下に設けられ、図示しない給気用モータを駆動して給気用ファンの羽根を回転させることにより、建物外と建物の床下とを連通する換気口Mbを介して建物外の空気を床下へ供給する。また、熱交換器131は、図示しない排気用モータを駆動して排気用ファンの羽根を回転させることにより、換気口Mbを介して、図示しないダクト経由で流入した屋内の空気を建物外へ排出する。熱交換器131は、無線通信または有線通信によって制御装置101から受信した制御情報に従い、給気用モータおよび排気用モータを駆動する。
【0036】
熱交換器131は、図示しない熱交換素子を含み、給気対象である空気、具体的には熱交換素子へ流入する建物外の空気と、排気対象である空気、具体的には熱交換素子へ流入する屋内の空気との間で熱交換を行う。
【0037】
エアコン121,122は、非居住空間の温度を調整する。より詳細には、エアコン121,122は、それぞれ、部屋R1,R5の床に設けられた供給口Ma1,Ma2を介して床下へ空気を供給する。これにより、床下の空気の温度が、エアコン121,122により調整される。エアコン121,122は、無線通信または有線通信によって制御装置101から受信した制御情報に従い、送風量等を変更する。
【0038】
建物の1階および2階間は階段等を介して空気が流れる一方で、1階の非居住空間である床下と2階の非居住空間である床下とはそれぞれ独立した空間である。熱交換器131およびエアコン121は、1階の床下へ空気を供給する給気装置の一例である。エアコン122は、2階の床下へ空気を供給する給気装置の一例である。熱交換器131は、非居住空間を介して換気を行う換気装置の一例である。
【0039】
[課題]
換気システムの普及により、建物の気密性が増し、空気の流れを制御可能な建物が作られている。
【0040】
上述のように、換気システムが設置された建物において、ある部屋の状況の変化等の理由により当該部屋の給気量または排気量を変更した場合、建物全体の給排気量のバランスが変わり、換気システムにおける制御が困難となる場合がある。
【0041】
たとえば、上記バランスが崩れると、建物内において隙間から空気が漏れることにより、所望の制御を行うことが困難となる。また、ある送風機10の風量を設定しても、床下への給気量が足りないことにより、当該送風機10の風量が設定値に到達しない場合がある。
【0042】
そこで、本発明の実施の形態に係る換気システムでは、以下のような構成により、上記課題を解決する。
【0043】
[制御装置]
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【0044】
図3を参照して、制御装置101は、通信部51と、制御部52と、記憶部53と、表示部55とを含む。通信部51および制御部52の少なくともいずれか一方は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。記憶部53は、たとえば不揮発性メモリである。記憶部53は、後述する送風機10の制限値を記憶する。表示部55は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。なお、表示部55は、制御装置101の外部に設けられる構成であってもよい。
【0045】
通信部51は、送風機10、エアコン121および熱交換器131等と無線通信または有線通信を行う。
【0046】
制御部52は、通信部51を介して制御情報を送風機10へ送信することにより、送風機10の風量を設定する。制御部52は、通信部51を介して制御情報をエアコン121,122へ送信することにより、エアコン121,122の風量をそれぞれ設定する。制御部52は、通信部51を介して制御情報を熱交換器131へ送信することにより、熱交換器131の換気量すなわち給気量および排気量を設定する。
【0047】
制御部52は、複数の送風機10の風量の合計と非居住空間への給気量とが等しくなるように、非居住空間への給気、および各送風機10の風量を設定する。
【0048】
より詳細には、制御部52は、送風機10、エアコン121および熱交換器131の風量を設定することにより、建物の1階の給排気を制御する。
【0049】
具体的には、制御部52は、以下の式(1)~式(3)を満たすように、送風機10A~10Dの風量N1~N4、エアコン121の風量S1、ならびに熱交換器131の給気量N0および排気量n0を設定する。
【0050】
N0=n0・・・(1)
N0+S1=N1+N2+N3+N4・・・(2)
n0=n1+n2+n3+n4+n2F・・・(3)
但し、n1,n2,n3,n4は部屋R1~R4からの排気量であり、n2Fは2階からの排気量であり、n1,n2,n3,n4,n2F,N1,N2,N3,N4>0である。
【0051】
なお、1階の部屋R1~R4に供給された空気の一部は、部屋R1~R4の隙間および階段等を介して2階へ流れる。これにより、n2Fを含めた式(1)~式(3)が成り立つ。
【0052】
また、制御部52は、送風機10E~10Gの風量N5~N7およびエアコン122の風量S2を設定することにより、建物の2階の給排気を制御する。
【0053】
具体的には、制御部52は、以下の式(4)を満たすように、送風機10E~10Gの風量N5~N7およびエアコン122の風量S2を設定する。
S2=N5+N6+N7・・・(4)
【0054】
制御部52は、上記各式を満たしている状態、すなわち建物における給排気量のバランスが保たれている状態において、所定条件を満たす場合、換気システム201における複数の送風機10のうちの一部の送風機10の風量を変更する変更処理を行う。
【0055】
たとえば、ある部屋Rにおいて患者を隔離する等、当該部屋Rを隔離部屋にすることが考えられる。この場合、当該部屋Rの空気がウィルス等により汚染される。このため、患者を隔離した部屋Rは、負圧化する必要がある。すなわち、隔離部屋への床下からの給気を止めることにより、隔離部屋へは隣の部屋Rから空気が流入するだけで、隣の部屋Rへは空気が流出しない空気の流れを作る。これにより、隔離部屋から排気口Meを介して建物外へ確実に排気を行うことができ、建物における他者への感染の可能性を抑えることができる。
【0056】
このような場合、ユーザは、リモコン等を操作することにより、隔離運転モードで動作する指示を制御装置101に与える。
【0057】
通信部51は、リモコン等から、隔離運転モードで動作する指示を示す指示情報を受信した場合、当該指示情報を制御部52へ出力する。
【0058】
制御部52は、通信部51から当該指示情報を受けて、制御装置101の動作モードを通常モードから隔離運転モードに変更する。
【0059】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が表示する部屋選択画面の一例を示す図である。
【0060】
図4を参照して、隔離運転モードにおいて、制御部52は、建物の1階および2階の各部屋Rに名称等が付された間取り図を含む部屋選択画面を、たとえばタッチパネル式のディスプレイである表示部55に表示する処理を行う。ユーザは、表示部55に対してタップ操作等を行うことにより、特定の部屋R(以下、対象部屋とも称する。)を選択する。制御部52は、当該操作の内容を示す操作情報を表示部55から受けて、対象部屋を他の部屋Rと異なる態様で表示部55に表示する処理を行う。
【0061】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が表示する部屋選択画面の他の例を示す図である。
【0062】
隔離運転モードにおいて、制御部52は、負圧化可能な部屋Rを認識可能な画面を表示する処理を行い、当該画面において選択された部屋Rに対応する送風機10の風量を小さくする変更処理を行う構成であってもよい。
【0063】
具体的には、図5を参照して、制御部52は、建物の1階および2階の各部屋Rに名称等が付された間取り図において、負圧化可能な部屋Rが他の部屋Rと異なる態様で示された部屋選択画面を、たとえばタッチパネル式のディスプレイである表示部55に表示する処理を行う。負圧化可能な部屋Rは、たとえば、排気口Meを有する部屋R1~R7である。
【0064】
ユーザは、表示部55に対してタップ操作等を行うことにより、負圧化可能な部屋Rの中から特定の部屋Rを対象部屋として選択する。なお、制御部52は、対象部屋を、負圧化可能な他の部屋Rとさらに異なる態様で表示する処理を行う構成であってもよい。
【0065】
制御部52は、部屋選択画面において対象部屋を負圧化するために、対応の送風機10の風量を最小値minにする変更処理を行う。
【0066】
最小値minは、ゼロに近い正の値、またはゼロである。前者のように最小値min≒0とする場合、部屋Rの埃が送風機10側、すなわち送風機10のフィルタまたは床下にたまることを防ぐことができる。また、対象部屋のウィルス等が床下へ流れることを防ぐことができる。以下では、説明を簡単にするために、最小値min=ゼロを例として説明する。
【0067】
このような変更処理において、単に対象部屋の送風機10の風量を小さくした場合、建物における給排気量のバランスが崩れ、たとえば、N0+S1≫N1+N2+N3+N4またはS2≫N5+N6+N7となる。この場合、床の隙間から対象部屋へ空気が流入し、汚染された空気が対象部屋から他の部屋Rへ流れ込む可能性がある。
【0068】
そこで、制御部52は、換気システム201における複数の送風機10のうちの一部の送風機10の風量を変更する変更処理を行う場合、当該複数の送風機10の風量の合計と非居住空間への給気量とが等しくなるように、非居住空間への給気、および風量を変更する送風機10とは別の部屋Rに対応する送風機10の風量の少なくともいずれか一方を調整する調整処理を行う。
【0069】
より詳細には、制御部52は、部屋Rを負圧化するために変更処理において対応の送風機10の風量を小さくした場合、調整処理において、風量を変更する送風機10とは別の部屋Rに対応する送風機10の風量を大きい値に変更する。
【0070】
ユーザは、隔離部屋の設定を解除する場合、リモコン等を操作することにより、通常モードで動作する指示を制御装置101に与える。制御装置101は、当該指示を受けて、動作モードを隔離運転モードから通常モードに変更する。
【0071】
[動作の流れ]
次に、本発明の第1の実施の形態に係る換気システムにおける動作の流れについて図面を用いて説明する。
【0072】
本発明の実施の形態に係る制御装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。このプログラムは、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0073】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の隔離運転モードにおける動作手順を定めたフローチャートである。
【0074】
図6を参照して、まず、制御装置101は、ユーザの操作に従い、隔離運転モードを開始する(ステップS1)。
【0075】
次に、制御装置101は、たとえば図4または図5に示す部屋選択画面を表示部55に表示する(ステップS2)。
【0076】
次に、制御装置101は、ユーザによる部屋Rの選択を受け付け(ステップS3)、選択された部屋Rが負圧化可能な部屋である場合(ステップS4でYES)、給排気制御を行う(ステップS5)。
【0077】
一方、制御装置101は、選択された部屋Rが負圧化不可の部屋である場合(ステップS4でNO)、選択不可である旨を表示部55に表示する(ステップS6)。
【0078】
そして、制御装置101は、たとえばユーザによる隔離運転モードの終了指示を示す指示情報を受信した場合、動作モードを通常モードに変更する(ステップS7でYES)。
【0079】
一方、制御装置101は、ユーザによる新たな部屋Rの選択を受け付けた場合(ステップS7でNOかつステップS3)、新たに選択された部屋Rが負圧化可能な部屋であるか否かを確認する(ステップS4)。
【0080】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が隔離運転モードにおいて給排気制御を行なう際の動作手順を定めたフローチャート、および当該フローチャートの各ステップにおける風量調整の具体例を示す図である。図7は、図6に示すステップS5の詳細を示している。図7において、送風機10、エアコン121,122および熱交換器131の風量の単位は[m^3/h]であり、送風機10のモータの回転数の単位は[rpm]である。なお、演算子「^」は、べき乗を表す。
【0081】
図7を参照して、まず、制御装置101は、対象部屋の給気風量すなわち対象部屋に対応する送風機10の風量を最小値minに設定する(ステップS11)。
【0082】
次に、制御装置101は、熱交換器131の給気量N0を維持するために、すなわち式(2)を満たすように、建物の1階における各送風機10の風量を再設定する。これにより、建物の1階における給排気量のバランスが保たれる(ステップS12)。
【0083】
次に、制御装置101は、式(4)を満たすように、建物の2階における各送風機10の風量を再設定する。これにより、建物の2階における給排気量のバランスが保たれる(ステップS13)。
【0084】
次に、制御装置101は、再設定の結果である各送風機10の風量に相当する回転数になるように各送風機10のモータを制御する(ステップS14)。
【0085】
図7に示す例1~例3において、式(1)~式(4)を満たす初期状態、すなわち建物の給排気量のバランスが保たれている初期状態の各数値は、以下の通りとする。
【0086】
すなわち、N1=60、N2=60、N3=40、N4=80、N5=40、N6=0、N7=60、S1=100、S2=100、N1+N2+N3+N4=240、N0=n0=140である。
【0087】
また、制御装置101において、風量増減のルールは予め設定されており、この例では、1階および2階の各々において、若番の部屋Rに対応する送風機10から風量の設定を一定値ずつ、具体的には20[m^3/h]ずつ変更していく。なお、対象部屋に対応する送風機10の風量の増減分を、他の部屋Rに対応する送風機10の風量に等分に分配してもよい。
【0088】
また、制御装置101において、同一階において風量をゼロに設定した対象部屋以外の他の部屋Rでは送風機10の風量ゼロを禁止してもよい。すなわち、制御部52は、部屋Rを負圧化するために変更処理において対応の送風機10の風量を小さくした場合、調整処理において、さらに、他の部屋Rが負圧化しないように対応の送風機10の風量を大きい値に変更する構成であってもよい。これにより、他の部屋Rから対象部屋へより確実に空気を流入させることができる。
【0089】
例1は、建物の1階の部屋R1を対象部屋とした場合であり、例2は、建物の2階の部屋R7を対象部屋とした場合であり、例3は、建物の2階の部屋R5および部屋R7を対象部屋とした場合である。
【0090】
例1において、まず、N1を60からゼロに設定する(ステップS11)。次に、N0=n0を満たすために、N2,N3,N4を増加させる。具体的には、N2~N4を20ずつ増加させることにより、N1+N2+N3+N4=240を維持する(ステップS12)。N5~N7は変更なしである(ステップS13)。次に、設定を変更した3つの送風機10のモータの回転数を、変更後のN2~N4にそれぞれ対応する400rpm、300rpmおよび500rpmに変更する(ステップS14)。
【0091】
このように、部屋R1に対応する送風機10からの給気を止めることにより、他の部屋Rから部屋R1へ空気が流入する。そして、部屋R1へ流入した空気は、排気口Meから屋外へ排出される。
【0092】
なお、制御装置101における制御部52は、対象部屋以外の他の部屋Rの送風機10の風量を変更する構成に限らず、N0=n0を満たすために、熱交換器131の排気量n0を減少させる構成であってもよい。但し、建物の換気量が減少するため、送風機10の風量を変更する構成の方が好ましい。
【0093】
例2において、まず、N7を60からゼロに設定する(ステップS11)。N1~N4は変更なしである(ステップS12)。次に、S2=N5+N6+N7を満たすために、N5,N6を増加させる。具体的には、N5を40増加させ、N6を20増加させることにより、N5+N6+N7=100を維持する(ステップS13)。次に、設定を変更した2つの送風機10のモータの回転数を、変更後のN5,N6にそれぞれ対応する400rpmおよび120rpmに変更する(ステップS14)。
【0094】
このように、部屋R7に対応する送風機10からの給気を止めることにより、他の部屋Rから部屋R7へ空気が流入する。そして、部屋R7へ流入した空気は、排気口Meから屋外へ排出される。
【0095】
また、例2では、N7をゼロに設定する一方で、ゼロであったN6を20に変更している。すなわち、同一階において風量をゼロに設定した対象部屋以外の他の部屋Rでは送風機10の風量ゼロが禁止されている。
【0096】
例3において、まず、N5を40からゼロに設定し、かつN7を60からゼロに設定する(ステップS11)。N1~N4は変更なしである(ステップS12)。次に、S2=N5+N6+N7を満たすために、N6を増加させる。具体的には、N6を100増加させることにより、N5+N6+N7=100を維持する(ステップS13)。次に、設定を変更した1つの送風機10のモータの回転数を、変更後のN6に対応する500rpmに変更する(ステップS14)。
【0097】
なお、たとえばN6=80が送風機10の上限値すなわち制限値である場合、S2=N5+N6+N7を満たすために、N6=80に設定するとともに、エアコン122の風量S2を100から80に減少させてもよい。すなわち、制御部52は、調整処理において、風量の調整後の値が送風機10の所定の制限値を超える場合、当該送風機10の風量が制限値を超えないように設定するとともに、非居住空間へ空気を供給する給気装置の風量を変更する構成であってもよい。
【0098】
また、上述した内容を含め、例1~例3において、制御部52は、他の部屋Rの送風機10の風量を増加させることに加えて、エアコン121の風量S1またはエアコン122の風量S2を減少させる構成であってもよい。また、例1~例3において、制御部52は、送風機10の風量を増加させる代わりに、エアコン121の風量S1またはエアコン122の風量S2を減少させる構成であってもよい。
【0099】
また、例1~例3において、上述のように最小値min≒0としてもよい。この場合、最小値minは、たとえば3[m^3/h]である。
【0100】
また、制御装置101は、1階の給排気制御において、送風機10の風量、エアコン121の風量および熱交換器131の風量を調整対象とする構成に限らず、送風機10の風量のみを調整対象とする構成であってもよいし、エアコン121の風量および熱交換器131の一方と送風機10の風量とを調整対象とする構成であってもよい。また、制御装置101は、2階の給排気制御において、送風機10の風量およびエアコン122の風量を調整対象とする構成に限らず、送風機10の風量のみを調整対象とする構成であってもよい。
【0101】
また、建物において、1階の床下へ空気を供給する給気装置である熱交換器131およびエアコン121のいずれか一方が設けられない構成であってもよい。熱交換器131が設けられない場合、各部屋Rの空気は、たとえば、排気口Meおよび図示しないダクトを介して直接建物外へ排気される。
【0102】
また、制御装置101において、制御部52は、建物に設けられた換気扇152の運転状態に応じて熱交換器131の給気量を変更する構成であってもよい。
【0103】
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が熱交換器の給気量を変更する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0104】
図8を参照して、まず、制御装置101は、たとえば部屋R2に設けられた換気扇152の状態を監視し(ステップS21でNO)、換気扇152の動作がオンされた場合(ステップS21でYES)、現在の熱交換器131の給気量N0をNyとして記憶部53に保存する(ステップS22)。
【0105】
次に、制御装置101は、熱交換器131の給気量N0を、換気扇152の排気風量Nx相当分増加させる(ステップS23)。
【0106】
次に、制御装置101は、換気扇152の状態を監視し(ステップS24でNO)、換気扇152の動作がオフされた場合(ステップS24でYES)、熱交換器131の給気量N0を元の風量Nyに戻す(ステップS25)。
【0107】
このような構成により、換気扇152が動作することにより建物における排気量が増加した場合において、建物の給排気量のバランスを保つことができる。
【0108】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0109】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る換気システムと比べて異なる契機で給排気制御を行う換気システムに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る換気システムと同様である。
【0110】
図9および図10は、本発明の第2の実施の形態に係る換気システムの構成を示す図である。図9および図10を参照して、換気システム202は、本発明の第1の実施の形態に係る換気システムと比べて、さらに、1または複数のセンサ151を備える。
【0111】
図9では、一例として、建物の1階に設けられた部屋R1~R4にそれぞれ設けられた4つのセンサ151A~151Dを示している。図10では、一例として、建物の2階に設けられた部屋R5~R7にそれぞれ設けられた3つのセンサ151E~151Gを示している。なお、建物における各部屋Rの一部にセンサ151が設けられてもよい。
【0112】
各センサ151は、部屋Rの空気に関する計測を行う。たとえば、各センサ151は、部屋Rの空気の汚染度を計測する。具体的には、たとえば、各センサ151は、自己が設けられた部屋RのCO2濃度を計測し、自己の識別情報および対応する部屋RのCO2濃度の計測結果、を示す計測情報を、無線通信または有線通信によって定期的または不定期に制御装置101へ送信する。
【0113】
なお、センサ151は、CO2濃度を計測する構成に限らず、一酸化炭素または埃等、他を測定対象とする構成であってもよい。
【0114】
制御装置101において、通信部51は、各センサ151から送信された計測情報を受信し、受信した計測情報を受信時刻と対応付けて記憶部53に保存する。
【0115】
記憶部53には、各部屋RのCO2濃度の許容上限値を示す閾値Thcが、たとえばユーザにより予め登録されている。
【0116】
制御部52は、記憶部53に保存された、計測情報の示すCO2濃度、および閾値Thcに基づいて、送風機10の風量、熱交換器131の風量、およびエアコン121,122の風量を調整する。
【0117】
より詳細には、制御部52は、式(1)~式(4)を満たしている状態、すなわち建物における給排気量のバランスが保たれている状態において、センサ151から受信した計測情報に基づいて、すなわち計測情報が所定条件を満たす場合、換気システム201における複数の送風機10のうちの一部の送風機10の風量を変更する変更処理を行う。
【0118】
たとえば、制御装置101は、ある部屋RのCO2濃度が上昇し、閾値Thcを超えた場合、当該部屋RのCO2濃度を下げるために、対応の送風機10の風量を大きくする変更処理を行う。
【0119】
この変更処理において、単に当該部屋Rの送風機10の風量を大きくした場合、建物における給排気量のバランスが崩れ、たとえば、N0+S1≪N1+N2+N3+N4またはS2≪N5+N6+N7となる。この場合、部屋Rの床の隙間から床下へ空気が流出し、汚染された空気が床下経由で他の部屋Rへ給気される可能性がある。
【0120】
そこで、制御部52は、部屋Rの空気に関する計測結果に基づいて、変更処理において対応の送風機10の風量を大きくした場合、調整処理において、風量を変更する送風機10とは別の部屋Rに対応する送風機10の風量を小さい値に変更する。
【0121】
以下で説明する例4は、建物の1階の部屋R4を対象部屋とした場合であり、例5は、建物の2階の部屋R5を対象部屋とした場合である。
【0122】
[例4]
たとえばリビングである部屋R4に人が集まり、センサ151DにおいてCO2の計測値が上昇し、閾値Thcを超えたとする。この場合、制御部52は、部屋R4にきれいな空気を供給するために、対応の送風機10Dの風量N4を増加させる。そして、制御部52は、1階における他の部屋R1~R3の送風機10の風量N1~N3を減少させる。
【0123】
なお、制御部52は、調整処理において、風量の調整後の値が送風機10の所定の制限値を超える場合、当該送風機10の風量が制限値を超えないように設定するとともに、非居住空間へ空気を供給する給気装置の風量を変更する構成であってもよい。
【0124】
たとえば、制御部52は、変更後の風量N1~N3が送風機10の下限値すなわち制限値を下回る場合、風量N1~N3を下限値に設定するとともに、エアコン121の風量S1を増加させ、N0+S1=N1+N2+N3+N4を満たすように維持する。
【0125】
さらに、制御部52は、変更後の風量S1がエアコン121の上限値を上回る場合、風量S1を上限値に設定するとともに、熱交換器131の給気量N0を増加させ、N0+S1=N1+N2+N3+N4を満たすように維持する。また、制御部52は、N0=n0を満たすため、熱交換器131の排気量n0も同様に増加させる。
【0126】
そして、部屋R4に集まった人が解散すると、センサ151DにおいてCO2の計測値が下降し、閾値Thc以下となる。この場合、制御部52は、部屋R4に対応する送風機10Dの風量N4を元に戻す。また、制御部52は、1階における他の部屋R1~R3の送風機10の風量N1~N3を元に戻す。
【0127】
[例5]
たとえば2階の洋室である部屋R5に人が集まり、センサ151EにおいてCO2の計測値が上昇し、閾値Thcを超えたとする。この場合、制御部52は、部屋R5にきれいな空気を供給するために、対応の送風機10Eの風量N5を増加させる。そして、制御部52は、2階における他の部屋R6,R7の送風機10の風量N6,N7を減少させる。
【0128】
ここで、制御部52は、変更後の風量N6,N7が送風機10の下限値すなわち制限値を下回る場合、風量N6,N7を下限値に設定するとともに、エアコン122の風量S2を増加させ、S2=N5+N6+N7を満たすように維持する。
【0129】
そして、部屋R5に集まった人が解散すると、センサ151EにおいてCO2の計測値が下降し、閾値Thc以下となる。この場合、制御部52は、部屋R5に対応する送風機10Eの風量N5を元に戻す。また、制御部52は、2階における他の部屋R6,R7の送風機10の風量N6,N7を元に戻す。
【0130】
なお、例4,例5において、制御部52は、送風機10の風量を減少させる代わりに、エアコン121の風量S1またはエアコン122の風量S2を増加させる構成であってもよい。
【0131】
[動作の流れ]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る換気システムにおける動作の流れについて図面を用いて説明する。
【0132】
図11および図12は、本発明の第2の実施の形態に係る制御装置が給排気制御を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0133】
図11および図12を参照して、まず、制御装置101は、風量がデフォルト値に設定された各送風機10が各部屋Rへ送風を行っている状態において(ステップS31)、1分間待機し(ステップS32)、各部屋Rのセンサ151から計測結果であるCO2濃度Cを示す計測情報を受信する。なお、制御装置101は、同じセンサ151から1分間で計測情報を複数回受信する場合、1分間分の計測情報の示す計測結果の平均値をCO2濃度Cとしてもよい(ステップS33)。
【0134】
次に、制御装置101は、各部屋RのCO2濃度Cが800ppm未満である場合(ステップS34でYES)、異常なしと判断し、再び1分間待機する(ステップS32)。
【0135】
一方、制御装置101は、ある部屋RのCO2濃度Cが800ppm以上となった場合、異常ありと判断し、当該部屋Rを対象部屋として給排気制御を行う(ステップS34でNO)。
【0136】
給排気制御において、制御装置101は、対象部屋に対応する送風機10のファンモータの回転数(以下、ファンモータ回転数とも称する。)の設定が上限値に達していない場合(ステップS35でNO)、当該送風機10のファンモータ回転数の設定を1段階アップするとともに、同じ階のCO2濃度の最も低い部屋Rに対応する送風機10のファンモータ回転数の設定を1段階ダウンする。ファンモータ回転数は、送風機10の風量に対応する(ステップS36)。
【0137】
あるいは、制御装置101は、対象部屋に対応する送風機10のファンモータ回転数が上限値に設定されており(ステップS35でYES)、かつ同じ階のエアコンの風量が上限値に達していない場合(ステップS37でNO)、エアコンの風量の設定を1段階アップする(ステップS38)。
【0138】
あるいは、制御装置101は、対象部屋に対応する送風機10のファンモータ回転数が上限値に設定されており(ステップS35でYES)、同じ階のエアコンの風量が上限値に達しており(ステップS37でYES)、対象部屋が1階であり(ステップS39でNO)、かつ熱交換器131の換気量が上限値に達していない場合(ステップS40でNO)熱交換器131の換気量すなわち給気量N0および排気量n0の設定を1段階アップする(ステップS41)。
【0139】
一方、制御装置101は、熱交換器131の換気量が上限値に達している場合(ステップS40でYES)、表示部55において警告表示を行い、再び1分間待機する(ステップS32)。
【0140】
また、制御装置101は、対象部屋に対応する送風機10のファンモータ回転数が上限値に設定されており(ステップS35でYES)、同じ階のエアコンの風量が上限値に達しており(ステップS37でYES)、対象部屋が2階である場合(ステップS39でYES)、表示部55において警告表示を行い、再び1分間待機する(ステップS32)。
【0141】
次に、制御装置101は、ファンモータ回転数、エアコンの風量または換気量を1段階アップすると、Cc=Cとして、すなわち最新のCO2濃度Cを保持して(ステップS43)、1分間待機し(ステップS44)、対象部屋のセンサ151から計測結果であるCO2濃度Cを示す計測情報を新たに受信する(ステップS45)。
【0142】
次に、制御装置101は、Cc-Cがゼロ未満である場合、すなわち風量設定を変更したが対象部屋のCO2濃度が増加している場合(ステップS46でYES)、風量設定を再び変更する(ステップS35)。
【0143】
一方、制御装置101は、Cc-Cがゼロ以上である場合、すなわち風量設定の変更後における対象部屋のCO2濃度が一定または減少している場合(ステップS46でNO)、Cc=Cとして(ステップS47)、1分間待機し(ステップS48)、対象部屋のセンサ151から計測結果であるCO2濃度Cを示す計測情報を新たに受信する(ステップS49)。
【0144】
次に、制御装置101は、Cc-Cがゼロ未満である場合、すなわち対象部屋のCO2濃度が再び増加している場合(ステップS50でYES)、風量設定を再び変更する(ステップS35)。
【0145】
一方、制御装置101は、Cc-Cがゼロ以上である場合、すなわち風量設定の変更後における対象部屋のCO2濃度が2分間、一定または減少しており(ステップS50でNO)、かつ対象部屋のCO2濃度Cが800ppm以上を維持している場合(ステップS51でNO)、Cc=Cとして(ステップS47)、再び1分間待機し(ステップS48)、対象部屋のセンサ151から計測結果であるCO2濃度Cを示す計測情報を新たに受信する(ステップS49)。
【0146】
他方、制御装置101は、Cc-Cがゼロ以上である場合、すなわち風量設定の変更後における対象部屋のCO2濃度が2分間、一定または減少しており(ステップS50でNO)、かつ対象部屋のCO2濃度Cが800ppm未満となった場合(ステップS51でYES)、対象部屋の設定を解除し、変更した各風量を元に戻すための給排気制御を行う。
【0147】
給排気制御において、制御装置101は、対象部屋が1階であり(ステップS52でNO)、かつ熱交換器131の換気量がデフォルト値でない場合(ステップS53でNO)、熱交換器131の換気量すなわち給気量N0および排気量n0の設定を1段階ダウンする(ステップS54)。
【0148】
あるいは、制御装置101は、対象部屋が2階である場合(ステップS52でYES)または熱交換器131の換気量がデフォルト値である場合(ステップS53でYES)であって、エアコンの風量がデフォルト値でない場合(ステップS55でNO)、エアコンの風量の設定を1段階ダウンする(ステップS56)。
【0149】
一方、制御装置101は、エアコンの風量がデフォルト値である場合(ステップS55でYES)、対象部屋に対応する送風機10のファンモータ回転数の設定を1段階ダウンするとともに、同じ階のCO2濃度の最も低い部屋Rに対応する送風機10のファンモータ回転数の設定を1段階アップする(ステップS57)。
【0150】
次に、制御装置101は、各部屋Rの送風機10のファンモータ回転数がデフォルト値に戻っていない場合(ステップS58でNO)、Cc=Cとして(ステップS47)、再び1分間待機し(ステップS48)、対象部屋のセンサ151から計測結果であるCO2濃度Cを示す計測情報を新たに受信する(ステップS49)。
【0151】
一方、制御装置101は、各部屋Rの送風機10のファンモータ回転数がデフォルト値に戻った場合(ステップS58でYES)、各部屋RのCO2濃度の監視を継続する。すなわち、制御装置101は、1分間待機し(ステップS32)、各部屋Rのセンサ151から計測結果であるCO2濃度Cを示す計測情報を受信する(ステップS33)。
【0152】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る換気システムと同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0153】
なお、換気システム201,202は、建物の1階および2階の両方に設けられる構成に限らず、建物の1階および2階のいずれか一方に設けられる構成であってもよい。また、制御装置101は、建物の2階に設けられる構成であってもよいし、建物外に設けられる構成であってもよい。
【0154】
また、本発明の実施の形態に係る制御装置の機能の一部または全部が、クラウドコンピューティングによって提供されてもよい。すなわち、本発明の実施の形態に係る制御装置が、複数のサーバによって構成されるクラウドサーバであってもよい。
【0155】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0156】
10,10A~10G 送風機
51 通信部
52 制御部
53 記憶部
55 表示部
101 制御装置
121,122 エアコン
131 熱交換器
151,151A~151G センサ
201,202 換気システム
R,R1~R7 部屋
Ma1,Ma2 供給口
Mb 換気口
Me 排気口
Ms 給気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12