(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128412
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/231 20210101AFI20230907BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230907BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20230907BHJP
H05K 5/04 20060101ALI20230907BHJP
H01M 50/233 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/24 20210101ALI20230907BHJP
【FI】
H01M50/231
H01M50/224
H01M50/204 401F
H05K9/00 Q
H05K5/04
H01M50/233
H01M50/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032748
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 吉則
(72)【発明者】
【氏名】梶川 勝弘
【テーマコード(参考)】
4E360
5E321
5H040
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360AB20
4E360BB22
4E360BC05
4E360EA03
4E360EA12
4E360EA25
4E360ED02
4E360EE12
4E360FA12
4E360GA26
4E360GA34
4E360GA52
4E360GB99
4E360GC03
4E360GC04
5E321AA01
5E321AA05
5E321BB23
5E321BB53
5E321CC22
5E321GG05
5E321GH10
5H040AA31
5H040AA35
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040CC20
5H040JJ04
5H040LL01
(57)【要約】
【課題】アッパーケースにおいて、耐火性を向上でき、軽量化を図れ、電磁波シールド性を向上し得るバッテリーケースを提供する。
【解決手段】バッテリーケース10は、ロアケース30と、アッパーケース40と、を備え、ロアケース30とアッパーケース40とが組み付けられた状態で内部にバッテリー20が収容される。アッパーケース40は、金属材料からなるベース層45と、ベース層45に積層されるシールド層46と、を有している。ベース層45の比重は、鉄の比重よりも小さい。シールド層46は、ベース層45の透磁率よりも大きな透磁率の金属材料からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアケースと、アッパーケースと、を備え、前記ロアケースと前記アッパーケースとが組み付けられた状態で内部にバッテリーが収容されるバッテリーケースであって、
前記アッパーケースは、
金属材料からなるベース層と、
前記ベース層に積層されるシールド層と、
を有し、
前記ベース層の比重は、鉄の比重よりも小さく、
前記シールド層は、前記ベース層の透磁率よりも大きな透磁率の金属材料からなるバッテリーケース。
【請求項2】
前記シールド層は、めっきからなる請求項1に記載のバッテリーケース。
【請求項3】
前記シールド層は、ニッケルを含む請求項1又は請求項2に記載のバッテリーケース。
【請求項4】
前記ロアケースは、金属材料からなり、
前記ロアケースと前記アッパーケースとの接触面にカチオン電着による塗膜が設けられている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるバッテリーケースは、バッテリー受け部と、バッテリーカバーと、を備えている。バッテリー受け部とバッテリーカバーとの間の空間に、バッテリーが収容されている。バッテリーカバーは、樹脂層とその片面に金属層が積層された積層体である。金属層は、バッテリーカバーの電磁波シールドを向上させるために設けられている。金属層は、金属溶射により溶射されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のバッテリーカバーにおいて、金属層は、金属溶射により形成されたものであるため、薄い膜である。そのため、バッテリーカバーの耐火性が劣ってしまう懸念がある。そこで、耐火性を向上でき、軽量化を図れ、さらに電磁波シールド性を向上できるバッテリーケースが求められている。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、アッパーケースにおいて、耐火性を向上でき、軽量化を図れ、電磁波シールド性を向上し得るバッテリーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバッテリーケースは、
ロアケースと、アッパーケースと、を備え、前記ロアケースと前記アッパーケースとが組み付けられた状態で内部にバッテリーが収容されるバッテリーケースであって、
前記アッパーケースは、
金属材料からなるベース層と、
前記ベース層に積層されるシールド層と、
を有し、
前記ベース層の比重は、鉄の比重よりも小さく、
前記シールド層は、前記ベース層の透磁率よりも大きな透磁率の金属材料からなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アッパーケースにおいて、耐火性を向上でき、軽量化を図れ、電磁波シールド性を向上し得るバッテリーケースを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1のバッテリーケースを例示する側断面図である。
【
図2】実施例1のバッテリーケースが取り付けられた車両を例示する側面図である。
【
図3】
図1における、両フランジ部の接続箇所を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のバッテリーケースによれば、アッパーケースは、金属材料からなるため、樹脂材料からなる構成に比べて耐火性を向上させることができる。また、ベース層の比重が鉄の比重よりも小さいため、アッパーケースの軽量化を図ることができる。さらに、シールド層は、ベース層の透磁率よりも大きな透磁率の金属材料からなるため、アッパーケースの電磁波シールド性を高めることができる。
【0010】
本発明のバッテリーケースにおいて、前記シールド層は、めっきからなることが好ましい。これにより、めっきからなるシールド層は薄いため、シールド層の材料の比重が比較的大きくてもアッパーケースの重量の増大を防ぐことができる。
【0011】
本発明のバッテリーケースにおいて、前記シールド層は、ニッケルを含むことが好ましい。これにより、ベース層の透磁率よりも大きな透磁率の金属材料として、ニッケルを好適に用いることができる。
【0012】
本発明のバッテリーケースにおいて、前記ロアケースは、金属材料からなり、前記ロアケースと前記アッパーケースとの接触面にカチオン電着による塗膜が設けられていることが好ましい。これにより、塗膜によってロアケースとアッパーケースとを絶縁することができ、ロアケースとアッパーケースとの間の電食を防ぐことができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1、
図2を参照して説明する。以下の説明では、説明の便宜上、
図1、
図2にあらわれる上下方向をそのまま上下方向として定義するが、バッテリーケース10の実際の配置状態における上下方向と一致しなくてもよい。
【0014】
(バッテリーケースの構成)
本実施例のバッテリーケース10は、
図1に示すように、バッテリー(例えばバッテリーモジュール)20を収容する。バッテリーケース10は、複数のバッテリー20を収容可能である。バッテリーケース10は、例えば平面視で略四角形状である。バッテリーケース10は、例えば、ブラケット(図示省略)によって下方側から支持された状態で、
図2に示すように、車両ボディBの下面S(床下の外面)に取り付けられている。バッテリーケース10は、例えばCPU、センサ等の電気部品も収容している。
【0015】
バッテリーケース10は、
図1に示すように、ロアケース30と、アッパーケース40と、を備えている。バッテリーケース10は、ロアケース30とアッパーケース40とが組み付けられた状態で、内部にバッテリー20を収容している。ロアケース30の内側の底面に、バッテリー20が載置されている。アッパーケース40は、ロアケース30の開口を覆って閉塞している。
【0016】
ロアケース30は、金属材料からなる。ロアケース30は、
図1に示すように、底壁31と、側壁32と、フランジ部33と、を有している。底壁31は、四角板状である。側壁32は、底壁31の周縁から立ち上がっている。フランジ部33は、側壁32の上端から外側に張り出している。
【0017】
アッパーケース40は、金属材料からなる。アッパーケース40は、
図1に示すように、天井壁41と、側壁42と、フランジ部43と、を有している。天井壁41は、四角板状である。側壁42は、天井壁41の周縁から下方に延出している。フランジ部43は、側壁42の下端から外側に張り出している。
【0018】
図1に示すように、締結部材であるボルト51とナット52によって、ロアケース30とアッパーケース40とが締結されている。ボルト51とナット52は、例えば金属製である。フランジ部33,43にそれぞれ形成された貫通孔34,44に、ボルト51が挿通されている。ボルト51の頭部とナット52とによって、両フランジ部33,43が挟まれて締結されている。これにより、ロアケース30、アッパーケース40、ボルト51、およびナット52が電気的に導通する。
【0019】
(ロアケースの構成)
ロアケース30は、鉄を含んでいる。そのため、ロアケース30は、強度を確保することができる。ロアケース30の厚さは、0.7mm以上1.2mm以下が好ましい。
図3に示すように、ロアケース30の表面全体には、塗膜35が設けられている。塗膜35は、カチオン電着によって構成されている。ロアケース30とアッパーケース40との接触面(フランジ部33の上面およびフランジ部43の下面)に塗膜35が設けられている。そのため、塗膜35によってロアケース30とアッパーケース40とを絶縁し、ロアケース30とアッパーケース40との間の電食を防ぐことができる。また、カチオン電着に用いられる塗料は水性塗料である場合、有機溶剤が不要であり、環境に対する悪影響が少ない。
【0020】
(アッパーケースの構成)
アッパーケース40は、
図1に示すように、ベース層45と、シールド層46と、を有している。ベース層45は、金属材料からなる。シールド層46は、ベース層45に積層されている。シールド層46は、金属材料からなる。このように、アッパーケース40(ベース層45およびシールド層46)は、金属材料からなるため、樹脂材料からなる構成に比べて耐火性を向上させることができる。
【0021】
ベース層45の比重は、鉄の比重(7.87g/cm3程度)よりも小さい。例えば、ベース層45は、比重が2.71g/cm3程度のアルミニウムを含んでいる。ベース層45の比重が鉄の比重よりも小さいため、アッパーケース40の軽量化を図ることができる。ベース層45の厚さは、0.7mm以上1.2mm以下が好ましい。
【0022】
シールド層46は、ベース層45の全体を覆っている。具体的には、シールド層46は、ベース層45の上面および下面に積層されている。シールド層46は、ベース層45の透磁率よりも大きな透磁率の金属材料からなる。例えば、シールド層46は、ニッケルを含んでいる。そのため、アッパーケース40の電磁波シールド性を高めることができる。具体的には、バッテリーケース10の外側から内側への電磁波シールド性を高めるとともに、バッテリーケース10の内側から外側への電磁波シールド性を高めることができる。
【0023】
シールド層46は、めっき(例えば電解めっき、無電解めっき)からなる。そのため、シールド層46は薄く、シールド層46の材料の比重が比較的大きくてもアッパーケース40の重量の増大を防ぐことができる。めっきからなるシールド層46は、防錆に優れている。めっきからなるシールド層46とロアケース30とが接することで、アッパーケース40とロアケース30との間の電食を防ぐことができる。
【0024】
(本実施例の効果)
以下、本実施例1の効果について説明する。本実施例1のバッテリーケース10によれば、アッパーケース40は、金属材料からなるため、樹脂材料からなる構成に比べて耐火性を向上させることができる。また、ベース層45の比重が鉄の比重よりも小さいため、アッパーケース40の軽量化を図ることができる。さらに、シールド層46は、ベース層45の透磁率よりも大きな透磁率の金属材料からなるため、アッパーケース40の電磁波シールド性を高めることができる。
【0025】
本実施例1のバッテリーケース10において、シールド層46は、めっきからなる。これにより、めっきからなるシールド層46は薄いため、シールド層46の材料の比重が比較的大きくてもアッパーケース40の重量の増大を防ぐことができる。
【0026】
本実施例1のバッテリーケース10において、シールド層46は、ニッケルを含む。これにより、ベース層45の透磁率よりも大きな透磁率の金属材料として、ニッケルを好適に用いることができる。
【0027】
本実施例1のバッテリーケース10において、ロアケース30は、金属材料からなり、ロアケース30とアッパーケース40との接触面にカチオン電着による塗膜35が設けられている。これにより、塗膜35によってロアケース30とアッパーケース40とを絶縁することができ、ロアケース30とアッパーケース40との間の電食を防ぐことができる。
【0028】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1において、アッパーケース40のベース層45の材料として、アルミニウムを例示したが、比重が鉄の比重よりも小さい材料であればその他の材料を含んでいてもよい。例えば、ベース層45の材料として、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼、銅などを用いてもよい。
(2)上記実施例1において、アッパーケース40のシールド層46が、めっきからなる構成であったが、めっき以外の方法(溶射など)で形成されてもよい。
(3)上記実施例1において、アッパーケース40のシールド層46の材料として、ニッケルを例示したが、透磁率がベース層45の透磁率よりも大きい材料であればその他の材料を含んでいてもよい。例えば、ベース層45にアルミニウムを用いた場合に、シールド層46の材料として、パーマロイなどを用いてもよい。
(4)上記実施例1において、ボルト51およびナット52によって、ロアケース30とアッパーケース40とが締結されていたが、クリップなどによって締結する構成であってもよい。
(5)上記実施例1において、ロアケース30が鉄を含んでいたが、その他の材料を含んでいてもよい。例えば、ロアケース30は、アルミニウムを含んでいてもよい。この場合、ロアケース30の厚さは、2.0mm以上が好ましい。
(6)上記実施例1において、シールド層46がベース層45の全体を覆っていたが、ベース層45の上面および下面の一方面のみを覆っていてもよい。
(7)上記実施例1において、塗膜35が、ロアケース30に設けられていたが、アッパーケース40のフランジ部43の下面に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…バッテリーケース
20…バッテリー
30…ロアケース
31…底壁
32…側壁
33…フランジ部
34…貫通孔
35…塗膜
40…アッパーケース
41…天井壁
42…側壁
43…フランジ部
44…貫通孔
45…ベース層
46…シールド層
51…ボルト
52…ナット
B…車両ボディ
S…下面