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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012843
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】回転動力工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25F5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116561
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】510118101
【氏名又は名称】株式会社丸高工業
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】高木 一昌
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄造
(72)【発明者】
【氏名】神川 雄次
(72)【発明者】
【氏名】宮島 勝
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA01
3C064AA03
3C064AA04
3C064AA06
3C064AA08
3C064AB01
3C064AB02
3C064AC01
3C064BA01
3C064BA02
3C064BA11
3C064BA13
3C064BA20
3C064BA33
3C064BB22
3C064BB61
3C064BB80
3C064BB82
3C064BB85
3C064CB01
3C064CB63
3C064CB71
3C064CB82
3C064CB85
3C064CB91
(57)【要約】
【課題】小型・軽量・簡易な構成で、作業性に優れた回転動力工具を実現する。
【解決手段】 集塵ノズルと回転刃具100の主面の一部を突出させる開口部とを有する保護カバー60、及び、駆動源からの駆動力を回転刃具100に伝達するためのフレキシブルシャフト30の一部と集塵ノズルから排出される流体を集塵機に導くための集塵ホース40の一部とを収容するハウジング10、を備えている。保護カバー60内の回転刃具100の回転軸とハウジング10に収容されたフレキシブルシャフト30の中心軸とが一致する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵ノズルと回転刃具の主面の一部を突出させる開口部とを有する保護カバー、及び、
駆動源からの駆動力を前記回転刃具に伝達するためのフレキシブルシャフトの一部と前記集塵ノズルから排出される流体を集塵機に導くための集塵ホースの一部とを収容するハウジング、を備えており、
前記保護カバー内の回転刃具の回転軸と前記ハウジングに収容された前記フレキシブルシャフトの中心軸とが一致する、
回転動力工具。
【請求項2】
前記保護カバーの開口部と前記ハウジングの外底部とが側面視で同一平面に沿って配置されており、前記回転刃具の主面の一部が前記開口部から直交方向に突出する、
請求項1に記載の回転動力工具。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記フレキシブルシャフトの一部を当該フレキシブルシャフトが延びる方向に収容する第1ハウジング部と、前記集塵ホースの一部を当該集塵ホースが延びる方向に収容する第2ハウジング部と、を含み、前記第1ハウジング部及び前記第2ハウジング部は、上面視で少なくとも一部が重なり合い、かつ、上面視で前記第1ハウジング部の幅の最大値が前記回転刃具の直径未満である、
請求項1又は2に記載の回転動力工具。
【請求項4】
前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部のそれぞれの前端部同士又は後端部同士が連結され、それぞれの前端部同士と後端部同士との間に操作者の手指が入る空間が形成されている、
請求項3に記載の回転動力工具。
【請求項5】
前記保護カバーは、前記回転刃具の背面側を覆う第1カバー部と、前記回転刃具の表面側を覆う第2カバー部と、を含み、
前記第1カバー部は、前記フレキシブルシャフトの回転軸と直交する面に沿って前記ハウジングの所定部位に楔型形状の固定機構により固定され、
前記第2カバー部は、前記第1カバー部に離脱自在に接合される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の回転動力工具。
【請求項6】
前記第1カバー部と前記第2カバー部との接合面の一部が傾斜している、
請求項5に記載の回転動力工具。
【請求項7】
前記保護カバーの所定部位にその基端部が軸支され、回転刃具の外周端面と対向する部分が切り欠かれた樋状の補助カバーをさらに備えており、
前記補助カバーは、前記保護カバーの開口部から突出する前記回転刃具の被加工部位への挿入量に追従して前記樋の位置が変位する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の回転動力工具。
【請求項8】
前記補助カバーは、前記樋状の部分が弾性部材を介して前記保護カバーに連結されており、前記回転刃具が被加工部位へ挿入していない状態では、前記保護カバーから突出している当該回転刃具の主面の全体を収容する、
請求項7に記載の回転動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータのような動力源からの駆動力で回転する回転刃具を用いて被加工部材を加工する携帯用の回転動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転動力工具として、特許文献1に、駆動源によって回転駆動される回転刃の外周の一部を覆う保護カバーと、回転刃の外周の一部に開口する吸入口から粉塵を吸引して回収する集塵カバーを備え、集塵カバーを保護カバーの外周に沿って形成した携帯用工具が開示されている。また、特許文献2に、集塵ホースの引き回し状態を変更可能にすることにより、利き手が何れであっても集塵ホースを握り込むことにならず、作業の邪魔にならない集塵アタッチメント付の電動工具が開示されている。
【0003】
また、回転動力工具の一例となるグラインダの保護カバーに関する技術が特許文献3に開示されている。特許文献3に開示されている保護カバーは、可動部を備え、可動部の操作に応じて、覆われる回転刃具の領域が変化するように形状が変化する。研削用の砥石を取り付ける場合は可動部を操作して保護カバーを第一の形状に設定し、切断用の砥石を取り付ける場合には、可動部を操作してカバーを第二の形状に設定する。保護カバーは、第二の形状では第一の形状よりも先端工具の下方領域の広い範囲を覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5092567号公報
【特許文献2】特許第5775795号公報
【特許文献3】特許第6634248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯用の回転動力工具は、操作者(作業者)の作業性を考慮すると、できる限り小型・軽量・簡易構造であることが望ましい。しかしながら、特許文献1,2,3に開示されている回転動力工具は、駆動源又は動力源が、いずれもハウジングに収容されている。そのため、操作者は、駆動源又は動力源も保持した状態で加工作業を続けることになる。特許文献1,2,3に開示されている回転動力工具は、また、駆動源又は動力源における回転軸と回転刃具の回転軸とが相違する。そのため、工具内に回転軸を変える機構が必要となり、そのための工具の構造が複雑なものとなり、小型・軽量・簡易構造を実現することが困難となる。
【0006】
本発明は、小型・軽量・簡易構造で、作業性に優れた回転動力工具の提供を主たる課題とする。本発明の他の課題は、本明細書の開示から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、集塵ノズルと回転刃具の主面の一部を突出させる開口部とを有する保護カバー、及び、駆動源からの駆動力を前記回転刃具に伝達するためのフレキシブルシャフトの一部と前記集塵ノズルから排出される流体を集塵機に導くための集塵ホースの一部とを収容するハウジング、を備えており、前記保護カバー内の回転刃具の回転軸と前記ハウジングに収容された前記フレキシブルシャフトの中心軸とが一致する、回転動力工具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、駆動源からの駆動力をフレキシブルシャフトを介して回転刃具に伝達する構成であり、集塵ホースもその一部だけをハウジングに収容する構成なので、小型・軽量・簡易な構成であり、作業性に優れた回転動力工具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るグラインダの外観斜視図。
図2】(a)はグラインダの正面図、(b)は背面図。
図3】(a)は上面視によるグラインダの平面図、(b)は右側面図、(c)は底面図、(d)は左側面図。
図4図3(a)におけるA-A’断面図。
図5】刃具装着機構の第1ハウジング部への固定構造例を示す説明図。
図6】保護カバーの第1カバー部と第2カバー部との接合部の状態例を示す図。
図7】第1カバー部と第2カバー部とが接合されている状態例を示す図。
図8】第2カバー部が第1カバー部から取り外されている状態例を示す図。
図9】(a)は補助カバーの基本姿態例を示す正面図、(b)は右側面図。
図10図9の基本姿態における補助カバーの背面側を模式的に示した構造説明図。
図11】加工作業時の補助カバーの背面側を模式的に示した構造説明図。
図12】(a)はストッパが機能しているときの補助カバーの姿態例を示す正面図、(b)は右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、回転動力工具の一例となるグラインダの実施の形態例を説明する。グラインダは、被加工部材(以下、「ワーク」)を加工(切削、研削等、以下同じ)する工具であり、回転刃具として、ディスク状に成型された刃具を用いることができる。
【0011】
説明の便宜上、図面上にxyzの三次元軸を設定し、+X方向を前方向、-X方向を後方向、X方向を前後方向、+z方向を上方向、-Z方向を下方向、Z方向を上下方向、+y方向を右方向、-Y方向を左方向、Y方向を左右方向と表記する。またZ軸とX軸とを含む平面をZX面、X軸とY軸とを含む平面をXY面、Z軸とY軸とを含む平面をZY面と表記する。また、左方向から右方向(あるいはその逆)を視ることを側面視、上から下を視ることを上面視ないし平面視、下から上を視ることを底面視、前方から視ることを正面視、後方から視ることを背面視と呼ぶ場合がある。
【0012】
図1は、グラインダ1の外観斜視図である。図2(a)はグラインダ1の正面図、同(b)は背面図である。図3(a)は上面視によるグラインダ1の平面図、同(b)は右側面図、同(c)は底面図、同(d)は左側面図である。図4図3(a)におけるA-A’断面図である。
【0013】
図1図4を参照して、グラインダ1の構造例を説明する。グラインダ1は、操作者が片手で把持可能なサイズのハウジング10を有する。ハウジング10は、それぞれ側面視で前後方向に長尺状に延びる第1ハウジング部11と第2ハウジング部12とを一定間隔をおいてZ方向に配置し、各々の前端部同士と後端部同士とをそれぞれ連結して構成される。二つのハウジング部11,12は、上面視で少なくとも一部が重なり合っており、前後方向及び左右方向における拡がりが抑制されている。
【0014】
二つのハウジング部11,12のそれぞれの前端部同士と後端部同士との間には、操作者の手指が入る把持用空間13が形成される。この把持用空間13が形成されることにより、操作者は、第1ハウジング部11だけを把持して操作したり、第2ハウジング部12だけを把持して操作することができる。その際、第1ハウジング部11と第2ハウジング部12の一方をXZ平面上で傾けた状態で把持することができるので、ワークの位置に応じた加工が容易となり、作業性を高めることができる。
【0015】
第1ハウジング部11は、硬質絶縁性部材、例えばプラスチックから成り、ZX面において面対称となる一対の筐体11a,11bの端部同士を対向させてネジ止め固定している。一対の筐体11a,11bは、それぞれ端部がZX面で対向する。また、筐体11aには、端部から+Y方向に向かう部分に部品収容領域が形成され、筐体11bには、端部から-Y方向に向かう部分に部品収容領域が形成されている。部品収容領域は、スピンドル20と、このスピンドル20に回転力を伝達するフレキシブルシャフト30の前端部のグリッドゴム30cの外形に沿った形状で区分けされている。第1ハウジング部11の部品収容領域は、グリッドゴム30c用に区分けされた部分が最も大きく、それ以外の部分との間は、テーパ状に小さくなっている。なお、筐体11bの底面は、空冷のために、一部が長方形状の孔110として切り欠かれている(図3(c)参照)。
【0016】
フレキシブルシャフト30は、可撓軸あるいは撓み軸とも呼ばれるシャフトであり、図示しない電動モータを駆動側とし、駆動側の回転運動を、任意の方向に向きを自由に変えて、従動側であるスピンドル20へと伝達する。フレキシブルシャフト30は、軸回転するインナーシャフト(図示省略)と、インナーシャフトの外周を覆うアウターチューブ30bとを備える公知構造の部品である。
【0017】
アウターチューブのうち、第1ハウジング部11の部品収容領域に収容される部分は、回転運動の従動側であるスピンドル20と接合する接合部を有している。アウターチューブ30b及びスピンドル20の接合部の外周を覆う部品が上述のグリッドゴム30cである。グリッドゴム30cは、弾性部材から成り、第1ハウジング部11の部品収容領域に弾性保持される。そのため、第1ハウジング部11への振動が抑制されるほか、フレキシブルシャフト30の第1ハウジング部11からの離脱が防止される。インナーシャフトとアウターチューブ30b、あるいは、さらにグリッドゴム30cを特に区別する必要がない場合は、以下、フレキシブルシャフト30という。
【0018】
第1ハウジング部11に収容されたフレキシブルシャフト30は、中心部のシャフト軸がスピンドル20の回転軸とX方向で一致するように配置される。フレキシブルシャフト30の駆動側に接続される電動モータ(図示省略)は、その電源装置(図示省略)と共に、例えばグラインダ1の操作者の身体の一部に固定される。
【0019】
第2ハウジング部12もまた、第1ハウジング部11と同様、硬質絶縁性部材、例えばプラスチックから成り、ZX面において面対称となる一対の筐体12a,12bの対向端部の一方を蝶番12cを介して固定し、この蝶番12cを支点として、他方の対向端部が開閉するように構成される。一対の筐体12a,12bの外周端面は、それぞれZX面で対向する。
【0020】
また、筐体12aには、端部から-Z方向に向かう部分に部品収容領域が形成され、筐体12bには、端部から+Z方向に向かう部分に部品収容領域が形成されている。部品収容領域には、集塵ホース40の端部41が収容される。集塵ホース40は、例えば蛇腹状のホースであり、その出力端は、図示しない集塵機に接続される。第2ハウジング部12に収容される端部41は、筐体12bの部品収容領域で、集塵ホース40への出力端とは反対側となる入力端の部分のアタッチメント91に固定されている。後述する集塵ノズル60cに?がる中継ホース90aは、筐体12bのアタッチメント受け部90bに固定されており、アタッチメント91を装着し、筐体12aを塞いで固定するだけで、集塵ホース40の取付が可能となる。集塵ホース40を取り外すときは、筐体12aを開けるだけで足りるため、作業性を高めることができる。
【0021】
第1ハウジング部11のX方向の前端部には、刃具装着機構50が固定される。刃具装着機構50は、回転刃具100を離脱自在に装着する機構であり、その形状・構造は様々である。本実施形態では、ZY平面と平行の端面を有し、この端面の中央部に、雌ネジが螺刻されている柱状の台座50aと、この台座50aの背面側(端面と反対側)に台座50aと一体に形成され、先端が第1ハウジング部11の内部に挿入されて固定される脚部50bとを含んで刃具装着機構50を構成した。台座50a及び脚部50bは、第1ハウジング部11に楔状に係合固定される。回転刃具100は、台座50aの端面に雄ネジにより離脱自在に固定される。
【0022】
第1ハウジング部11の幅の最大値は、上面視で回転刃具100の直径未満である。そのため、加工作業が、第1ハウジング部11により妨げられることが防止される。
【0023】
脚部50bは、スピンドル20の前端部と連結され、かつ第1ハウジング部11の前端部に固定される。脚部52は、フレキシブルシャフト30からスピンドル20に伝達される回転力が、台座50aを介して回転刃具100に伝達されるように機能する。その際、フレキシブルシャフト30の回転軸(インナーシャフト)-スピンドル20の回転軸-台座50aの中心軸-回転刃具100の中心軸が、X軸上で一致する。
【0024】
脚部52は、第1ハウジング部11の所定部位に、楔型形状の固定構造により固定される。楔型形状の固定機構は、第1ハウジング部11において楔型形状の部分が被固定される部位のサイズが僅かに小さく、それが固定される際に、物理的な反作用が楔型形状の部分に及ぶようにした機構である。このような機構により、刃具装着機構50が第1ハウジング部11に強固に固定され、作業時におけるフレキシブルシャフト30の回転軸(インナーシャフト)-スピンドル20の回転軸-台座51の中心軸-回転刃具100の中心軸のブレが抑制される。
【0025】
ここで、楔型形状の固定構造について詳しく説明する。図5は、刃具装着機構50の第1ハウジング部11への固定構造例を示す説明図であり、図4のA-A’断面図のうち、第1ハウジング部11を構成する一対の筐体11a,11bの前端部(グリッドゴム30c、台座50a及び脚部50bを含む部分)を拡大した図である。
前述の通り、第1ハウジング部11の部品収容領域では、グリッドゴム30cの外径が最も大きくなっている。そのため、部品収容領域において、グリッドゴム30cとそれ以外の筐体11a,11bの前端部に、テーパ状に径が変化する隙間が生じる。
本実施形態では、この隙間を上記被固定される部位とし、脚部50bの先端形状を上記隙間より僅かに大きい形状に成型する。そして、筐体11a,11bをネジ止め固定する前に、スピンドル20及びグリッドゴム30cと共に、上記隙間に脚部50bを嵌合し、その上で、筐体11a,11bを対向させてネジ止め固定する。これにより、刃具装着機構50の脚部50bが楔状に係合固定されることになる。
【0026】
このような固定構造では、筐体11a,11b同士をネジ止め固定する際に、当該筐体11a,11bと接する各部において、図5に破線で示される方向の力が作用する。すなわち、筐体11a,11bに、脚部50b及びスピンドル20を挟み込む力1-1が生じる。また、筐体11a,11bのテーパ状の部分に、グリッドゴム30cを押す力1-2が生じる。さらに、台座50aが筐体11a,11bの端部に強く押し当たる力1-3が生じる。そのため、第1ハウジング部11に対して台座50aが傾きにくくなるので、フレキシブルシャフト30の中心軸-スピンドル20の回転軸-回転刃具100の回転軸のずれが無くなり、精度のよい加工作業が可能になる。
【0027】
刃具装着機構50のうち、少なくとも台座50aと回転刃具100は、保護カバー60で覆われている。保護カバー60は、台座50aに固定され、回転する回転刃具100の主面ならびに研削刃が形成された端面を覆いつつ、ワークへ挿入される部分を開口させた(開口部)略円筒形状のものである。保護カバー60は、回転刃具100でワークを加工する際に、周囲に粉塵が飛び散ることを防止するとともに、粉塵を集塵機によって収集するために使用される。
【0028】
保護カバー60の開口部は、回転刃具100の主面の一部が-Z方向に突出するように開口している。保護カバー60の開口部と第1ハウジング11の下底部とは、側面視で同一平面に沿うように位置決めされる。その結果、回転刃具100の主面の一部だけが開口部から-Z方向(回転軸に対して直交方向)に突出する。この突出した回転刃具100の主面がワークへの挿入量(切り込み量)となる。本実施形態のグラインダ1では、例えば直径59φの回転刃具100を用いた場合、ワークの加工時に、外周から中心に向けて15mm以上の挿入量(切り込み量)が確保される。
【0029】
保護カバー60は、台座50aの背面側に設けられる第1カバー部60aと、台座50a及び回転刃具100の主面を覆う第2カバー部60bとを含んで構成される。第1カバー部60aは、回転刃具100の背面側を覆うので、加工時にワークから巻き上がる粉塵のグラインダ1の外部への飛散が防止される。第1カバー部60aには、集塵ノズル60cが一体成形される。集塵ノズル60cは、中間ホース90a、アタッチメント受け部90b、アタッチメント91を経て、集塵ホース40と接続される。第1カバー部60aは、フレキシブルシャフト30の回転軸と直交する面に沿って第1ハウジング部11の所定部位に固定される。
【0030】
第2カバー部60bは、第1カバー部60aに離脱自在に接合される。接合は、例えばネジ止めにより行うことができる。第1カバー部60aと第2カバー部60bとの接合面601は、図6に示すように、対応する傾斜面601を介して接合される。傾斜面601は、接合面の一部だけであってもよい。接合面が傾斜面601なので、傾斜を有しない接合態様に比べて接触面積が大きくなり、第1カバー部60aと第2カバー部60bとの気密性が保たれる。
【0031】
なお、第1カバー部60aと第2カバー部60bの一方が凸状に突出し、他方が凹状に窪んだ状態で接合する態様であってもよい。あるいは、第1カバー部60aと第2カバー部60bの一方と他方とが互いにジグザグ状の入れ子状態で係合する態様であってもよい。このような態様で第1カバー部60aと第2カバー部60bとを接合することで、接合端面を側面に対して直交させた場合に比べて接合面積を大きくすることができ、気密性をより高くすることができるだけでなく、一方が他方の離脱を防ぐ役割を果たし、接合の際の位置決めや組立作業等を容易にすることができる。
【0032】
本実施形態のグラインダ1は、第2カバー部60bを第1カバー部60aから取り外して使用することができる。通常の作業時は、図7に示すように、第2カバー部60bが第1カバー部60aと共に回転刃具100の主面の一部を覆う。そのため、回転刃具100は、ワークへの挿入量の分だけ突出する。ただし、ワークの構造によっては、第2カバー部60bを、第1カバー部60aから取り外して作業することができる。図8は、その状態を示す。第2カバー部60bを取り外すことにより、回転刃具1のX方向に延びる第2カバー部60bの厚み分だけ回転刃具100の主面をX方向に近づけることができるので、例えば、壁面が直交する角部などでは、より角部に近い部位まで加工することができる。この場合、角部の壁面が実質的に第2カバー部60bの役割を果たすことになる。ワークの加工部位が角部でない場合であっても、第2カバー60bが存在しない分だけ、加工可能となる領域が拡がり、きめの細かい加工作業が可能となる。
【0033】
次に、図9図12を参照して、保護カバー60の機能を補助する補助カバー70について説明する。補助カバー70は、回転刃具100の主面を保護する部位が、加工作業の進捗状況に応じて変位する。図9はグラインダ1における補助カバー70の基本姿態例、すなわち加工作業前の姿態例を示す図であり、同(a)は正面図、(b)は右側面図である。図10は、説明の便宜上、図9の基本姿態における補助カバー70の背面側を模式的に示した構造説明図である。図11は、グラインダ1における補助カバー70の加工作業時の姿態例を模式的に示す説明図である。図10図11において、図1図9に示した部品と同じ部品については、同一符号を付してある。
【0034】
これらの図を参照し、補助カバー70は、保護カバー60の一部と、保護カバー60の開口部から-Z方向に突出する回転刃具100とを覆いつつ、回転刃具100のワークへの挿入量に追従して、その位置が変位するように作動する。そのために、補助カバー70は、略長方形状の主面を有する底面部70aと、底面部70aの一対の長辺のうち前方側の辺を起点として底面部70aから+Z方向に略円弧状に延びる第1側壁部70bと、一対の長辺のうち後方側の辺の端部付近で+Z方向に僅かに略円弧状に延びる第2側壁部70cと、底面部70aの一対の長辺のうち後方側の外端部付近に+Z方向に延びるスライドスティ70dとを備えて、樋状に構成される。
【0035】
底面部70aの短辺側の長さは第1カバー部60aと第2カバー部60bとの合算値の約2倍の長さであり、底面部70aの長辺側の長さは、第1カバー部60aと第2カバー部60bの幅の約1.2倍の長さである。第1側壁部70b及び第2側壁部70cの基端部は、保護カバー60の右端部付近に回動自在に軸支される。
【0036】
底面部70aのうち、回転刃具100の外端面と対向する部分は、切り欠かれて、回転刃具100が突出する孔701が形成されている。切り欠かれた孔701の幅は、回転刃具100の厚みよりも僅かに大きい。また、孔701の長さは、保護カバー60の開口部のサイズとほぼ同じか、僅かに小さい。
【0037】
第1側壁部70bには、弧外周の曲率と同じ曲率部分を主たる内形状とする連続孔702が形成されている。スライドスティ70の中央部には、第1側壁部70bの連続孔702と同じ形状の連続孔704が形成されている。これらの連続孔702,704には、ボルトとナットとが遊嵌状態で接合されている。遊嵌状態とは、滑動自在に固定されている状態をいう。第1側壁部70bには、また、回転刃具100の相対位置を監視するための監視孔703が形成されている。
【0038】
グラインダ1は、また、ストッパ70eと圧縮バネ70fとを備えている。ストッパ70eは、保護カバー60の右端にZ方向に設けられ、中央部にネジ孔が螺刻された台座と、この台座のネジ孔に係合させる有頭ボルトと、有頭ボルトの台座への挿入を所定量に固定しておくための蝶ネジとを備えて構成される。台座から有頭ボルトの先端が多く突出するほど、回転刃具100の挿入量(ワークへの切り込み量)を小さくすることができる。
【0039】
圧縮バネ70fは、第1カバー60aの背部の所定部位と補助カバー70の第2側壁部70cとの間に設けられる。圧縮バネ70fは、消勢時、すなわち、図9及び図10に示すように、グラインダ1による加工作業前で、回転刃具100がワークへ挿入していない状態では、保護カバー60の開口部から突出(露出)している当該回転刃具100の主面の全体を補助カバー70の底面部70aが収容するように作用する。回転刃具100の全主面が補助カバー70で覆われているため、操作者の安全が確保されるとともに、回転刃具100の破損も防止される。
【0040】
回転刃具100がワークに挿入されると、それに追従して、圧縮バネ70fが補助カバー70の底面部70aに押されて縮み始め、底面部70aをワークに押し当てるように付勢される。そのため、底面部70aは、加工作業中、常時ワークに接触している状態となり、操作者が回転刃具100に触れることが無いから加工作業の安全性が保たれる。回転刃具100のワークへの挿入量が最大になったときの状態が図11である。図11の状態では、ストッパ70eは機能していない。
【0041】
回転刃具100のワークへの挿入量が図10図11に至る途中で制限されている状態を示したのが図12である。すなわち図12(a)はストッパ70eが機能しているときの補助カバーの姿態例を示す正面図であり、同(b)は左側面図である。ストッパ70eは、回転刃具100の挿入量のバラツキを抑制するとき等に活用されるが、異なるワークにおいて、あるいは同じワークで異なる位置で、同じ深さの加工作業を繰り返す際に、特に有用なツールとなる。すべての加工作業を終了したときは、ストッパ70eの機能を外して図9のようにすれば、操作者の安全が確保されるとともに、回転刃具100の破損も防止される。
【0042】
このように、本実施形態におけるグラインダ1は、ハウジング10に駆動源又は動力源が存在しないので、小型・軽量・簡易な構成であり、作業性を高めることができる。特に、集塵ノズル60cと回転刃具100の主面の一部を突出させる開口部とを有する保護カバー60のほか、フレキシブルシャフト30の一部と集塵ホース40の一部とを収容するハウジング10の内部に収容しているので、集塵ホース40が加工作業の邪魔をすることが無くなる。
【0043】
また、ハウジング10に操作者の手指が入る把持用空間13が形成されており、保護カバー60の開口部とハウジング10の外底部とが側面視で同一平面に沿って配置され、回転刃具100の主面の一部が開口部から直交方向に突出するので、操作者は、片手で第1ハウジング部11と第2ハウジング部12のいずれかを任意の角度に傾けて把持するだけでワークの加工作業ができるようになる。
【0044】
また、保護カバー60内の回転刃具100の回転軸とハウジング10に収容されたフレキシブルシャフト30の中心軸とが一致するので、途中で回転軸を変える機構に比べて構成が簡略化されるとともに、回転駆動力を直に回転刃具100に付与することができ、ワークへのきめ細かな加工作業ができるようになる。
【0045】
なお、本実施形態では、ハウジング10における第1ハウジング部11と第2ハウジング部12の各々の前端部同士と後端部同士とを接合した場合の例を説明したが、前端部同士だけ、あるいは、後端部同士だけを接合してもよい。
本実施形態では、また、回転動力工具としてグラインダ1の例を説明したが、電動ドリル、電動ドライバ、ハンマドリル、丸鋸、その他の任意の携帯用工具に対しても同様に適用することができる。
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図9
図10
図11
図12