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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128465
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/38 20190101AFI20230907BHJP
   B29C 48/285 20190101ALI20230907BHJP
   B29C 48/535 20190101ALI20230907BHJP
   B29C 48/615 20190101ALI20230907BHJP
   B29C 48/605 20190101ALI20230907BHJP
   B29C 48/64 20190101ALI20230907BHJP
【FI】
B29C48/38
B29C48/285
B29C48/535
B29C48/615
B29C48/605
B29C48/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032825
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】509292076
【氏名又は名称】株式会社 日本油機
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正俊
(72)【発明者】
【氏名】森 一広
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁人
(72)【発明者】
【氏名】二上 勉
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207AL03
4F207AR07
4F207KF12
4F207KK23
4F207KL07
4F207KL15
(57)【要約】
【課題】比較的長繊維が残存する繊維強化樹脂を簡単な操作とで製造する装置の提供
【解決手段】原料供給部、第1スクリュ部、ミキシング部(混練部)、第2スクリュ部からなり、前記ミキシング部直後に強化用繊維材供給するための開口部を備え、第2スクリュ部のスクリュを、2条以上の多条形状とするとともに、回転軸方向に沿って複数の切り欠きを形成した繊維強化樹脂製造装置
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料供給部、第1スクリュ部、ミキシング部(混練部)、第2スクリュ部からなり、前記ミキシング部直後に強化用繊維材供給するための開口部を備え、第2スクリュ部のスクリュを、2条以上の多条形状とするとともに、回転軸方向に沿って複数の切り欠きを形成した繊維強化樹脂製造装置。
【請求項2】
前記切り欠きは前記回転軸の方向に所定角度ずつずれている請求項1記載の繊維強化樹脂製造装置。
【請求項3】
前記切り欠きは前記回転軸の方向と交わる断面において回転軸と対称の位置に二つずつ形成した請求項1又は2記載の繊維強化樹脂製造装置。
【請求項4】
前記切り欠きは前記回転軸の方向に沿って、回転方向に90度ずつずれている請求項1ないし3の何れかに記載の繊維強化樹脂製造装置。
【請求項5】
前記切り欠きは前記回転軸の方向に沿って少なくとも一部が間引かれている請求項1ないし4の何れかに記載の繊維強化樹脂製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベント式射出成形機を用いる繊維強化樹脂の製造装置に関する。特に、ガラス繊維や炭素繊維の一部を長繊維のまま残し、樹脂に均一に分散した繊維強化樹脂の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形において、成形品の物理的特性を向上させるため、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維や各種添加物を樹脂に含有させることは以前から知られている。
【0003】
樹脂に繊維材を含有させる方法として、繊維束に溶融樹脂を含浸させ、これを冷却固化して切断し、繊維束が混入したペレットを製造する方法(特許文献1)や、押出機へ直接繊維材を供給する方法が知られているが、前者の方法で得られたペレットがその後の射出成形工程で繊維と樹脂が分離してしまうという問題があった。
後者の場合、繊維材を原料樹脂ペレットとともにホッパから押出成形機の混練部に投入し、樹脂を溶融するとともに繊維材を樹脂中に分散させれば、樹脂中に繊維材が均質に分散されるので、この繊維が均質の分散した樹脂をペレットとし、これを原料に射出成形して繊維強化製品を製造することが、一般的に広く採用されている。
【0004】
しかし、長尺の繊維材を使用しても樹脂との混練過程で、大きな圧力や剪断力が加わるため、繊維切断により必要以上に繊維材の短小化が進み、かかるペレットを使用して得られた製品の強度が上がらないという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、特許文献1では、繊維材の供給を押出成形機のサイドフィード用供給口又はベント穴部から供給するようにして、繊維強化樹脂ペレットを製造している。
この方法によれば、押出機の上流から供給される溶融樹脂に対し前記繊維材が混合されるので、繊維材への大きな剪断力の付加が避けられ、繊維切断が軽減されるとしている。
【0006】
さらに、このような長繊維を含有する原料ペレットを使用して射出成形により製品を製造するには、射出成形機で混練・溶融工程を経る必要があり、できるだけ繊維が切断しな
いようにするため、スクリュの形状を改良する方法が提案されている(特許文献2,3)。
【0007】
以上のような改良技術により、比較的長繊維を含有する繊維強化樹脂による射出成形品を製造することができるようになった。
しかし、この従来方法では、射出工程のほかに、ペレット化工程が不可欠で、しかも夫々の工程で樹脂を溶融するので、コストが大きくなるといった問題があった。
【0008】
これらの問題を解決するため、特許文献4では、ベントアップが発生し難いベント式射出成形機を使用し、ベント口から繊維材を供給し、上流から溶融樹脂に混合させることにより、比較的長い繊維が均質に分散した繊維強化樹脂からなる成形品を直接、安定的に製造できる技術が開示されている。
【0009】
しかし、かかる技術においても、繊維を樹脂中に均一に分散させるには十分攪拌する必要があり繊維の細断化は避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-654号公報
【特許文献2】特開平08-318561号公報
【特許文献3】特開2005-169646号公報
【特許文献4】特許第5649244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記従来技術における問題を解決し、簡単な装置で比較的長尺な繊維が残存し、且つ樹脂中に均一に分散した繊維強化樹脂の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の概要は以下のとおりである。
〔1〕原料供給部、第1スクリュ部、ミキシング部(混練部)、第2スクリュ部からなり、前記ミキシング部直後に強化用繊維材供給するための開口部を備え、第2スクリュ部のスクリュを、2条以上の多条形状とするとともに、回転軸方向に沿って複数の切り欠きを形成した繊維強化樹脂製造装置。
〔2〕前記切り欠きは、前記回転軸の方向に所定角度ずつずれて形成されている〔1〕の繊維強化樹脂製造装置。
〔3〕前記切り欠きは、前記回転軸の方向と交わる断面において回転軸と対称の位置に二つずつ形成されている〔1〕又は〔2〕の繊維強化樹脂製造装置。
〔4〕前記切り欠きは前記回転軸の方向に向けて、回転方向に90度ずつずれて形成されている〔1〕ないし〔3〕の何れかの繊維強化樹脂製造装置。
〔5〕前記切り欠きは前記回転軸の方向に沿って少なくとも一部が間引かれて形成されている〔1〕ないし〔4〕の何れかの繊維強化樹脂製造装置。
【0013】
本発明によれば、樹脂を繊維が混合される第2スクリュ部のスクリュに切り欠きを形成したので、樹脂に添加された繊維の一部は、この切り欠きを短絡し、細断化されるのが防止される。
【0014】
本発明のスクリュに形成される「切り欠き」は、スクリュ羽根の先端部から切り欠き部を設けてもよく、スクリュ羽根に開口部を設けてもよい。また、切り欠き部の深さは、スクリュ羽根の高さの1/4から羽根の高さと同等、その幅は切り欠き部の深さに対して1/2から2.5培程度が好ましく、切り欠き部の開口面積があまり大きいとスクリュによる移送力が低下し、ベントアップしやすくなり、あまり小さいと切り欠き部を短絡する繊維の量が少なくなるので本発明の効果が十分達成できなくなる。
【0015】
本発明の切り欠き部をスクリュの回転軸の方向に所定角度ずつずれて形成することにより、スクリュの重量バランスが取れるためスクリュの回転に伴う軸ブレを提言し、安定的に運転することができる。
【0016】
また、本発明の切り欠き部をスクリュの回転軸の方向と交わる断面において回転軸と対称の位置に二つずつ形成することにより、切り欠き部を短絡する繊維の量を増やすことができ、切り欠き部が点対称の位置に新在するので、マトリクス中に点在する繊維の切り欠き部までの平均距離が短くなる。
【0017】
また、本発明の切り欠き部をスクリュの回転軸の方向に向けて90度ずつずれて形成することにより、マトリクス中の繊維が回転方向に沿って分散することに加え、切り欠きに向けて回転方向と逆向きに分散するので、マトリクス中の繊維の分散性が向上する。
【0018】
さらに、本発明の切り欠き部をスクリュの回転軸の方向に沿って少なくとも一部を間引いて形成すれば、一部に形成された切り欠きを通じて繊維を短絡させることにより、繊維長の細断を抑制しつつ、切り欠きのないところで確実に繊維とマトリクス樹脂の混錬を行うことで、繊維のマトリクス樹脂中の分散性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明によれば、装置も操作も簡単な繊維強化樹脂製造装置で、比較的長繊維が残存する繊維が均一に分散し、強度が向上した繊維強化樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に使用する繊維強化樹脂製造装置の全体図
図2】本発明で使用する切り欠きを形成した第2スクリュ(TYPE1)の斜視図
図3】本発明で使用する切り欠きを形成した第2スクリュ(TYPE2)の斜視図
図4】本発明で使用する切り欠きを形成した第2スクリュ(TYPE3)の斜視図
図5】本発明で使用する切り欠きを形成した第2スクリュ(TYPE1~3)の側面図
【符号の説明】
【0021】
1 原料供給装置
2 シリンダ
3 スクリュ
4 第1ステージ
5 第2ステージ
6 一条ねじ部
7 ミキシング部
8 多条ねじ部
9 ベント部兼繊維材供給部
10 ヒータ
11 ホッパ
12 スクリュフィーダ
13 シリンダの原料供給部
14 モニター
15 繊維材
16 切り欠き
【発明を実施するための形態】
【実施例0022】
以下、本発明の繊維強化樹脂製造装置の実施例を図面に沿って説明するが、本発明はこれに限定されないことは、本件発明の趣旨から明らかである。
【0023】
図1は、繊維強化樹脂製造装置の全体図で、原料供給装置1、シリンダ部2からなり、シリンダ部2には加熱用ヒータ10が装着されている。
シリンダ2内にはスクリュ3が配され、スクリュ3は、一条ねじ部6とミキシング部7からなる第1ステージ4と2条以上の多条ねじ部からなる第2ステージを有し、第2ステージには溶融樹脂中の揮発成分を揮散させるベント部9が設けられ、さらに、第2ステージのスクリュ3には、後述する切り欠き16が形成されている。
【0024】
繊維強化樹脂製造装置の原料供給装置1は、ホッパ11、供給量を調整可能なスクリュフィーダ12、シリンダ内の原料供給部13の原料供給状態を視認可能なモニター14からなる。図1中の丸枠内は、モニター14がシリンダ内の原料供給部13の原料供給状態を表示している画面を示す。
【0025】
ホッパ11内の原料樹脂ペレットは、スクリュフィーダ12により供給量を制御されてシリンダ2の原料供給部13に落下する。この原料供給部13における原料ペレットの供給状態は、供給装置内に設けられた撮像手段により撮影し、モニター14により、常時、視認が可能となっている。
【0026】
原料ペレットの供給量は、上記丸枠内のモニター画面が表示するように、原料供給部13のスクリュ3上に落下したペレットが原料供給部13に常時少量滞留している状態となるように調整する。このように原料ペレットの供給量を調整することにより、シリンダ内には、常時、必要最小限の原料が存在することとなり、シリンダの第1ステージ内の圧力が安定する。
【0027】
上記原料ペレットの供給量の調整は、操作者がモニターを視認しながら手動で行うこともできるが、モニター画面の解析ソフトを利用し自働的に供給量を調整することも可能である。
【0028】
第1ステージ4の一条ねじ部6は従来どおりのスクリュデザインでよく、ミキシング部7も、従来周知のダルメージ型、バリヤ型、サブフライト型、ウェーブ型などを採用することができる。
【0029】
第2ステージ5のスクリュ3は、2条以上の多条ねじ部8とする。
一方、条数を大きくしすぎても個々のねじ溝が狭くなり、溝側壁との樹脂の摩擦抵抗が大きくなり、繊維の切断が生じるなどの問題が生じるため、好ましくは5条以下である。
【0030】
第2ステージ5のスクリュ部のピッチ幅を第1ステージ4のスクリュ部のピッチ幅より小さくすることで、第1ステージ4からの溶融樹脂を、ベント部で滞留させることなくスムーズに移送させることができる。
第2ステージ5のスクリュ部のピッチ幅は、スクリュ軸の直径Dの1.1~1.3が好ましく、第1ステージ4のスクリュ部のピッチ幅の1.2~1.6程度とすることが好ましい。1.6倍を超えるとねじ溝の側壁と溶融樹脂との摩擦が大きくなり好ましくない。
【0031】
第2ステージ5のスクリュ3には、図2~5に示されるような切り欠き16が形成されている。図2~4は、3条の第2ステージ5スクリュ3の斜視図で、図2(TYPE1)は、切り欠き16が対称位置に90度ずらせて2か所形成した例であり、図3(TYPE2)は、切り欠き16が対称位置に90度ずらせて1か所形成した例であり、図4(TYPE3)は、切り欠き16が定位置に間引いて形成した例である。
【0032】
図5は、2条の第2ステージ5スクリュ3(TYPE1~3)の側面図で、図に示した位置における断面図により、各TYPEの切り欠きの位置関係を示している。
図1
図2
図3
図4
図5