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特開2023-128468アウトリガーアーム及びアウトリガーアームを備えた自走式作業装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128468
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】アウトリガーアーム及びアウトリガーアームを備えた自走式作業装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/86 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
A01D34/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032829
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】510330541
【氏名又は名称】株式会社牛越製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 穂高
(72)【発明者】
【氏名】土田 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】牛越 弘彰
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083BA12
2B083BA18
2B083HA32
2B083HA59
2B083HA60
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、作業装置の姿勢角を安定させ、横滑りを抑制するアウトリガーアーム及びアウトリガーアームを備えた自走式作業装置を提供する。
【解決手段】作業部110を備えた本体部11と、本体部11に支持され、左右の前輪121a,121bおよび左右の後輪122a,122bを備えた走行車輪12と、を備え、傾斜状の走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する自走式作業装置1に設けられ、本体部11に支持され、走行面の谷側に配置される前輪121aと後輪122aとの間から走行面に向かって延びるアーム部141と、アーム部141に設けられ、自走式作業装置1が走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、走行面の谷側に配置される前輪121a及び後輪122aよりも走行面の谷側において走行面に対して立設し、自走式作業装置1の移動に応じて駆動する補助輪143と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部を備えた本体部と、
前記本体部に支持され、左右の前輪および左右の後輪を備えた走行車輪と、
を備え、傾斜状の走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する自走式作業装置に設けられ、
前記本体部に支持され、前記走行面の谷側に配置される前記前輪と前記後輪との間から前記走行面に向かって延びるアーム部と、
前記アーム部に設けられ、前記自走式作業装置が前記走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、前記走行面の谷側に配置される前記前輪及び前記後輪よりも前記走行面の谷側において前記走行面に対して立設し、前記自走式作業装置の移動に応じて駆動する補助輪と、
を備える、
アウトリガーアーム。
【請求項2】
前記アーム部の長さを調整する長さ調整機構を備える、
請求項1に記載のアウトリガーアーム。
【請求項3】
前記アーム部の平面視傾斜角度と、前記自走式作業装置の正面視に対する傾斜角度と、の少なくともいずれか一方を調整する第一角度調整機構を備える、
請求項1または2に記載のアウトリガーアーム。
【請求項4】
前記補助輪の平面視傾斜角度と、前記自走式作業装置の正面視に対する傾斜角度と、の少なくともいずれか一方を調整する第二角度調整機構を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアウトリガーアーム。
【請求項5】
前記補助輪は、前記走行面上を回転する回転面に、外方に向かって突出し、前記自走式作業装置が前記走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、前記走行面に埋没する硬質のエッジ部が形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアウトリガーアーム。
【請求項6】
前記補助輪は、少なくとも前記走行面の谷側に配置される前記前輪と前記後輪との間に複数配置されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアウトリガーアーム。
【請求項7】
前記アーム部は、少なくとも前記走行面の谷側に配置される前記前輪と前記後輪との間に複数配置されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載のアウトリガーアーム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のアウトリガーアームを備え、
前記作業部は、前記走行面に対向配置される草刈り機を備える、
自走式作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトリガーアーム及びアウトリガーアームを備えた自走式作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜面の草刈り作業における作業者の負担を軽減するために傾斜面を自律走行して草刈りを行う草刈り機(作業装置)が知られている。この様な作業装置では、等高線に沿って傾斜面を走行する際に、作業装置の自重や重力等の影響により作業装置の姿勢角が谷側に向くことで、等高線から外れて走行したり、横滑りを起こすことを抑制するために作業装置の車輪を傾斜面に対してキャンバ角を設け、車輪を傾斜面に対して立設させることで、車輪を傾斜面に食い込ませ、作業装置の姿勢角を傾斜面の山側に向ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-174759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の様な車輪にキャンバ角を設ける機構は複雑であり、キャンバ角を形成する機構の製作が困難であるという課題があった。また、車輪にキャンバ角を設けると、作業装置が傾斜面に対して平行にならないため、作業装置に備えられている草刈り用の刃の先端が傾斜面に刺さり、草刈りの作業効率が低下する虞があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、作業装置の姿勢角を安定させ、横滑りを抑制するアウトリガーアーム及びアウトリガーアームを備えた自走式作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、作業部を備えた本体部と、前記本体部に支持され、左右の前輪および左右の後輪を備えた走行車輪と、を備え、傾斜状の走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する自走式作業装置に設けられ、前記本体部に支持され、前記走行面の谷側に配置される前記前輪と前記後輪との間から前記走行面に向かって延びるアーム部と、前記アーム部に設けられ、前記自走式作業装置が前記走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、前記走行面の谷側に配置される前記前輪及び前記後輪よりも前記走行面の谷側において前記走行面に対して立設し、前記自走式作業装置の移動に応じて駆動する補助輪と、を備えることを特徴とする。
【0007】
アウトリガーアームは、補助輪を走行面の谷側において前記走行面に対して立設させることにより、前輪及び後輪を走行面に対して略垂直に接地させた状態となる。この結果、補助輪のキャンバ効果により、走行面における自走式作業装置の姿勢角を安定させ、等高線に沿って走行させることができ、自走式作業装置の横滑りを抑制できる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記アーム部の長さを調整する長さ調整機構を備えることを特徴とする。
【0009】
アウトリガーアームは、長さ調整機構を備えることにより、補助輪を確実に走行面に立設させ、キャンバ効果を発揮できる。また、アーム部を長くすることで、山側の前輪及び後輪の荷重分布が増加し、横滑りを抑制できる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、前記アーム部の平面視傾斜角度と、前記自走式作業装置の正面視に対する傾斜角度と、の少なくともいずれか一方を調整する第一角度調整機構を備えることを特徴とする。
【0011】
アウトリガーアームでは、アーム部の角度が可変であることによって、前輪及び後輪の構成を考慮してアーム部及び補助輪を配置できる。したがって、前輪及び後輪の構成や走行面の凹凸に影響されず補助輪のキャンバ効果を発揮させることができる。
【0012】
請求項4に記載した発明は、前記補助輪の平面視傾斜角度と、前記自走式作業装置の正面視に対する傾斜角度と、の少なくともいずれか一方を調整する第二角度調整機構を備えることを特徴とする。
【0013】
アウトリガーアームは、補助輪の角度を可変とすることで、走行面の凹凸に影響されず安定して補助輪を立設させることができる。
【0014】
請求項5に記載した発明において、前記補助輪は、前記走行面上を回転する回転面に、外方に向かって突出し、前記自走式作業装置が前記走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、前記走行面に埋没する硬質のエッジ部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
アウトリガーアームは、エッジ部を備えることにより、補助輪の走行面への食い込み量を増加させ、自走式作業装置の横滑り抑制効果をさらに向上できる。
【0016】
請求項6に記載した発明において、前記補助輪は、少なくとも前記走行面の谷側に配置される前記前輪と前記後輪との間に複数配置されていることを特徴とする。
【0017】
アウトリガーアームは、複数の補助輪を備えることにより、補助輪のキャンバ効果を増大させ、自走式作業装置の横滑り抑制効果をさらに向上できる。
【0018】
請求項7に記載した発明において、前記アーム部は、少なくとも前記走行面の谷側に配置される前記前輪と前記後輪との間に複数配置されていることを特徴とする。
【0019】
アウトリガーアームは、複数のアーム部により、補助輪を複数備える構成においてもアウトリガーアームの構成を簡素化できる。
【0020】
上記の課題を解決するために、請求項8に記載した発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のアウトリガーアームを備え、前記作業部は、前記走行面に対向配置される草刈り機を備えることを特徴とする。
【0021】
自走式作業装置は、アウトリガーアームを備えることにより、草刈り機である作業部を走行面に対して平行に配置できるため、草刈り機の刃と走行面とが接触することなく効率よく草を刈ることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、簡易な構成で、作業装置の姿勢角を安定させ、横滑りを抑制するアウトリガーアーム及びアウトリガーアームを備えた自走式作業装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る自走式作業装置を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る自走式作業装置を示す上面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る走行面設置時における自走式作業装置を示す正面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る自走式作業装置の移動方法を示す説明図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る自走式作業装置のアウトリガーアームの長さと自走式作業装置の横滑り量との関係を示すグラフである。
図6】本発明の第2実施形態に係る自走式作業装置を示す斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る自走式作業装置のアウトリガーアームの長さと自走式作業装置の横滑り量との関係を示すグラフである。
図8】本発明の第3実施形態に係る自走式作業装置の斜視図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る自走式作業装置の上面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る自走式作業装置の補助輪数と自走式作業装置の横滑り量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るアウトリガーアーム及びアウトリガーアームを備えた自走式作業装置について、図1から図10に基づいて説明する。図面において、自走式作業装置の前後方向をX方向、自走式作業装置の幅方向をY方向、自走式作業装置の高さ方向をZ方向と記載する。
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1から図5を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、自走式作業装置1(以下、「作業装置1」)は、本体部11と、走行車輪12と、走行駆動部13と、アウトリガーアーム14と、を備えている。図3に示すように、作業装置1は、傾斜角度αの傾斜を有する走行面F上を走行する。走行面Fは例えば棚田や水田の間にある傾斜状の畦畔であってもよいし、河川敷の土手や堤防であってもよい。以下の説明において、走行面Fにおける傾斜の下側を谷側と称し、傾斜の上側を山側と称する。
【0026】
本体部11は作業装置1を走行させながら作業を行う作業部110を備えている。作業部110は、作業部110のX方向及びY方向の略中央部において走行面Fに対向配置された公知の草刈り機111を備える。作業装置1は、走行面F上を走行しながら草刈り機111により走行面Fに繁茂する草を刈り取る。
【0027】
走行車輪12は、本体部11の前端部のZ方向両端に支持された前輪121a,121bと、本体部11の後端部のZ方向両端に支持された後輪122a,122bと、を備える。作業装置1は、走行駆動部13により走行車輪12を駆動させ、X方向前方または後方に移動する。走行車輪12は、例えば公知のゴムタイヤである。
【0028】
走行駆動部13は、本体部11に載置される。走行駆動部13は、走行車輪12を駆動させる第一電源部131と、草刈り機111を駆動させる第二電源部132と、を備える。
【0029】
アウトリガーアーム14は、アーム部141と、支持部142と、補助輪143と、を備えている。
【0030】
アーム部141は、平面視で一方向が長手の直方体形状を有する。アーム部141は、長手方向の略中間部で支持部142に接続され、本体部11に支持される。アーム部141は、作業装置1を走行面F上に配置した際に、走行面Fの谷側に配置される前輪121aと後輪122aとの間から走行面Fの谷側に向かって延びる。
【0031】
アーム部141は、長手方向の長さL1を調整する長さ調整機構144を備える。長さ調整機構144は、例えば公知のリニアアクチュエータにようにモーター等の動力源の駆動により自動で長さを調整する機構であってもよいし、例えば公知のボールねじのように手動で長さを調整する機構であってもよい。
【0032】
支持部142は、本体部11上の前輪121aと後輪122aとの間に載置され、アーム部141を支持する。
【0033】
アーム部141は、長さ調整機構144を駆動させる第三電源部145を備える。第三電源部145は、アーム部141に内蔵されてもよいし、支持部142に内蔵されてもよい。また、第一電源部131又は第二電源部132により長さ調整機構144を駆動させる構成であってもよい。
【0034】
補助輪143は、アーム部に設けられ、作業装置1が走行面Fの傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、走行面Fの谷側に配置される前輪121a及び後輪122aよりも走行面Fの谷側において走行面Fに接地し、作業装置1の移動に応じて駆動する。補助輪143は、走行車輪12と同様の公知のゴムタイヤである。
【0035】
補助輪143を駆動させる構成は、第一電源部131及び第二電源部132のいずれか一方と接続される構成としてもよいし、走行駆動部13に補助輪143を駆動させる電源部を設けてもよい。
【0036】
補助輪143は、アーム部141の谷側先端141aにおいて回転自在に接続されている。補助輪143は、アウトリガーアーム14に回転数を調整する制御モーターを設けて回転を制御する構成であってもよいし、走行車輪12の回転に応じて回転するパッシブ機構として設けられてもよい。補助輪143は、作業装置1の移動時に接地部との摩擦力により無電源で回転する車輪であってもよい。
【0037】
作業装置1は、走行車輪12及び補助輪143の平面視における向きを調整し、作業装置1の移動方向を変更する機構をさらに備えてもよい。作業装置1は、走行面Fを一方向に走行した後に、ユーザが走行面Fの山側又は谷側に直接持ち運んで移動させてもよい。
【0038】
作業装置1は、作業装置1の移動、アーム部141及び草刈り機111の駆動に影響することなく、作業部110を上方から覆う筐体をさらに備えてもよい。
【0039】
作業装置1による走行面Fの草刈り作業方法について説明する。図4に示すように、作業装置1は、作業時、走行面Fの傾斜方向に対する平面視直交方向に移動する。
【0040】
作業装置1は、走行面Fの山側から走行面Fに入り、図3および図4に示すようにアーム部141を谷側に向け、前輪121a及び後輪122aを作業装置1の進行方向に向けて配置する。
【0041】
長さ調整機構144を駆動させてアーム部141の長手方向の長さL1を調整し、補助輪143の下端部の山側側面143aを走行面Fに接地させる。この時、補助輪143は、走行面Fの基準面F1(水平面)に対して略垂直または補助輪143が山側に傾斜する(図3における左側に傾斜する)ように配置される。
【0042】
上記の状態で、草刈り機111を等高線に沿って駆動させ、走行面Fの草を刈り取りながら作業装置1を前進させる。前進を完了した後、作業装置1を谷側に移動させ、同様の手順で走行面Fの下端まで草仮作業を進める。作業装置1の移動は、走行面Fの谷側から開始してもよい。作業装置1の移動は遠隔操作であってもよいし、自律走行させてもよい。
【0043】
次に、上述した本発明の実施形態によるアウトリガーアーム14及び作業装置1の作用・効果について図面を用いて説明する。
【0044】
図1から図4に示すように、アウトリガーアーム14を操作することにより、補助輪143の山側側面143aを走行面Fに食い込ませ、補助輪143を走行面Fの基準面F1に対して略垂直または補助輪143が山側に傾斜するように取り付ける。この時、図3に示すように、補助輪143の正面視における軸線L2は、走行面Fに直交する仮想線L3に対してキャンバ角βだけ傾斜している。上記の状態で、作業装置1の前輪121a,121b及び後輪122a,122bを走行面Fに対して略垂直または山側に傾斜するように立設させる。作業装置1は、補助輪143によって、走行面Fに対して傾斜した状態で支持される。この状態で作業装置1を走行させた時、作業装置1は補助輪143の山側側面143aの食い込みと、補助輪143のキャンバ角βにより、走行面Fの谷側に横滑りすることなく配置される。また、補助輪143を走行面Fの山側に傾斜するように取り付けた状態で作業装置1を走行させると、谷側の前輪121a及び後輪122aは、補助輪143のキャンバ角βにより空転するが谷側には横滑りしない。以下、作業装置1の走行面Fに対する谷側への横滑りする変位量を単に「横滑り量」と記載する。
【0045】
上記の構成により、アウトリガーアーム14は、補助輪143をキャンバ角βだけ傾斜させて走行面F上に配置させることにより、走行車輪12を基準面F1に対して略垂直または山側に傾斜するように立設した状態を保持させることができる。上記構成により、作業装置1の姿勢角が走行面Fに対して水平または走行面Fの山側を向き、走行面Fの山側の前輪121b及び後輪122bに作用する荷重が増加する。以上により、作業装置1を傾斜した走行面Fに安定配置させ、かつ走行面Fの谷側への横滑り量を抑制し、作業装置1を等高線に沿って走行面F上を安定走行させることができる。
【0046】
アウトリガーアーム14は、長さ調整機構144によりアーム部141の長手方向の長さL1を調整することによって、補助輪143を確実に走行面Fの基準面F1に対して略垂直または補助輪143が山側に傾斜するように配置し、補助輪143によるキャンバ効果を発揮できる。
【0047】
アウトリガーアーム14は、長さ調整機構144によりアーム部141の長手方向の長さL1を長くすることで、作業装置1の山側の前輪121b及び後輪122bに作用する荷重が増加し、作業装置1の横滑りを抑制できる。例えば、図5に示すように、アーム部141の長さを増加させていくと、作業装置1の横滑り量が減少する。図5において、破線L4は、アウトリガーアーム14を備えず、走行車輪12をキャンバ角βだけ傾斜させた作業装置1を走行面F上で走行させた場合における作業装置1の横滑り量の下限値を示す。本実施形態に係る作業装置1の横滑り量及び破線L4より、アウトリガーアーム14によって補助輪143を上記の構成で配置することで、作業装置1の横滑りを確実に抑制できる。
【0048】
アウトリガーアーム14は、補助輪143の回転数を増加させることで作業装置1の横滑り量が減少する。つまり、アウトリガーアーム14は、補助輪143の山側側面143aの食い込み及び補助輪143のキャンバ角βによる効果に加えて、補助輪143の回転数を増加させることによっても作業装置1の横滑り量を抑制できる。
【0049】
作業装置1によれば、アウトリガーアーム14を本体部11に取り付けることにより上記効果を奏する。したがって、既存の作業装置にアウトリガーアーム14を取り付けることによって、横滑りする既存の作業装置であっても、傾斜した走行面Fの等高線に沿って前進可能にできる。この他、各種作業装置にアウトリガーアーム14を取り付けて使用できるため、汎用性に優れる。
【0050】
作業装置1は、アウトリガーアーム14により走行車輪12にキャンバ角を設けることなく、走行車輪12を走行面Fに対して略垂直または走行車輪12が山側に傾斜するように立設させることができる。そのため、草刈り機111の刃等の構成部と走行面Fとが接触することなく効率よく草刈り作業を実施できる。
【0051】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について、図6及び図7を参照しながら説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、補助輪143は、公知の金属材料により形成され、走行面F上を回転する回転面143bにエッジ部143cが回転方向に一定間隔で複数形成されている。
【0053】
補助輪143の回転面143bは、平坦面で構成され、補助輪143は正面視で矩形状に形成される。この構成により、補助輪143の走行面Fに接地する山側側面143aは、走行面Fの基準面F1に対して略垂直または山側に傾斜するように延びる。正面視矩形形状の補助輪143により、補助輪143の山側側面143aは、第1実施形態に係る補助輪143よりも深く走行面Fに食い込む。
【0054】
エッジ部143cは、外方に向かって突出し、作業装置1が走行面F上を移動する際に、走行面Fに埋没可能な硬質の突出部である。エッジ部143cの材質は、公知の金属材料でもよいし、FRP等の硬質のプラスチック材料でもよい。
【0055】
エッジ部143cは、回転面143bの回転方向に直交する方向に延びる直線形状であってもよいし、Z方向上向きに延びる山形形状に形成されてもよい。
【0056】
上記の構成により、アウトリガーアーム14は、山側側面143aを介して補助輪143を走行面Fにさらに食い込み地盤に埋没させることができるため、作業装置1の横滑り防止効果をより向上できる。例えば、図5及び図7に示すように、補助輪143にエッジ部143cを備えることにより、エッジ部143cを備えない補助輪143よりも作業装置1の横滑り量を抑制できる。
【0057】
エッジ部143cは、補助輪143を走行面Fに対して、食い込ませ、作業装置1の横滑り量を抑制できればよい。エッジ部143cは、例えば、回転面143bにゴム材等を貼って補助輪143の進行方向には抵抗を発生させず補助輪143を推進させる羽根状やパドル状の形状であってもよい。
【0058】
アウトリガーアーム14は、エッジ部143cを備えることにより、作業装置1が駆動中においてクランクの振動機構により振動する場合において、補助輪143の山側側面143aを走行面Fに容易に食い込ませることができる。そのため、作業装置1の駆動中においても作業装置1の横滑りを容易に抑制できる。
【0059】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について、図8から図10を参照しながら説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
図8及び図9に示すように、作業装置1は、前輪121aと後輪122bとの間に2基のアウトリガーアーム14a,14bを備えている。アウトリガーアーム14a,14bは、同一の構成を有する。
【0061】
上記の構成により、アウトリガーアーム14a,14bは、2基の補助輪143,143により走行面Fとのキャンバ角βを有する接地箇所を複数有する構成となる。この構成によって、キャンバ角βによる作業装置1の横滑り抑制効果をX方向に均等に発揮することができ、作業装置1の横滑り量をより抑制できる。例えば、図10に示すように、補助輪143が2基の場合、作業装置1の横滑りはほとんど発生しない。
【0062】
アウトリガーアーム14a,14bは、補助輪143と走行面Fとの接地箇所が複数となることにより、アウトリガーアーム14a,14bの走行面Fに対する平面視軸点が複数となるため、走行時の移動方向のブレを防ぎ、作業装置1の走行方向を一方向(直線)に近づけ、走行をより安定化できる。
【0063】
また、アウトリガーアーム14a,14bが備えられることにより、例えば走行面Fが凹凸を有する場合等、各補助輪143を走行面Fに接地させるために要する各アーム部141の長さが異なる場合においても、各補助輪143を確実に所望の傾きで配置できる。
【0064】
以上、本発明に係るアウトリガーアーム及びアウトリガーアームを備えた自走式作業装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
アウトリガーアーム14は、アーム部141のY方向に対する平面視傾斜角度を調整する角度調整機構と、アーム部141のY方向に対する正面視傾斜角度を調整する角度調整機構と、の少なくともいずれか一方を備える構成であってもよい。アーム部の角度を可変に構成することで、前輪及び後輪の構成を考慮してアーム部及び補助輪を配置でき、前輪及び後輪の構成に影響されず補助輪のキャンバ効果を発揮できる。
【0066】
アウトリガーアーム14は、補助輪143のY方向に対する平面視傾斜角度を調整する角度調整機構と、補助輪143のY方向に対する正面視傾斜角度を調整する角度調整機構と、の少なくともいずれか一方を備えてもよい。補助輪143の角度を可変に構成することにより、走行面Fの凹凸に影響されず安定して補助輪143を立設させることができる。
【0067】
また、アウトリガーアーム14は、アーム部141の角度調整機構と、補助輪143の角度調整機構のいずれか一方を備える構成であってもよい。
【0068】
上記の各実施形態に係る作業装置1は、左右の前輪121a,121bと、左右の後輪122a,122bの四輪を備えるが、例えば走行面Fの谷側に位置する前輪121aまたは後輪122aを省略した三輪の構成であってもよい。
【0069】
上記の第1及び第2実施形態に係る作業装置1は1基のアウトリガーアーム14を備え、第3実施形態に係る作業装置1は2基のアウトリガーアーム14a,14bを備えるが、作業装置1は3基以上のアウトリガーアーム14を備える構成であってもよい。
【0070】
上記の各実施形態においては、補助輪143は、タイヤ状の車輪として備えられるが、車輪以外の構成であってもよく、例えば公知のクローラ(キャタピラ)として備えられてもよい。
【0071】
上記の第3実施形態において、2基のアーム部141,141にそれぞれ補助輪143が接続されているが、上記の構成に限らず例えば1基のアーム部141に複数の補助輪143が接続されている構成とすることで、アウトリガーアーム14の構成を簡素化してもよい。
【0072】
上記の各実施形態に係るアウトリガーアーム14は、草刈り機111を備える作業装置1に設けられるが、上記の構成以外の斜面を走行する作業装置に備えられてもよい。例えば、斜面の清掃装置や、月面等の軟弱地盤による斜面を横断する宇宙探査ロボットに備えられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 自走式作業装置(作業装置)
11 本体部
12 走行車輪
14,14a,14b アウトリガーアーム
110 作業部
111 草刈り機
121a,121b 前輪
122a,122b 後輪
141 アーム部
143 補助輪
143c エッジ部
144 長さ調整機構
F 走行面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10