(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128478
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】点検計画作成装置、および、点検計画作成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20230907BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230907BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20230907BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230907BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230907BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G05D1/02 K
G01B11/30 A
G01B11/00 H
G06T7/60 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032842
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】室谷 和哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷島 範安
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴大
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇弘
【テーマコード(参考)】
2F065
5H301
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065AA65
2F065BB15
2F065BB27
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF67
2F065JJ03
2F065MM06
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU06
5H301AA01
5H301BB10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5L049CC15
5L096AA09
5L096DA02
5L096FA09
5L096FA12
5L096FA53
5L096FA67
(57)【要約】
【課題】消費電力と点検に要する時間とを低減可能な撮影箇所を計画すること。
【解決手段】 点検計画作成装置2は、カメラ11を有する自走式点検ロボット1が撮影する複数の点検対象5の設置位置を含む事前情報の入力を受け付ける事前情報入力IF21と、事前情報の各点検対象5を撮影する地点の撮影難易度を計算し、その撮影難易度が所定値以下であることで点検対象5の撮影が可能な地点の集合を撮影可能領域として判定する撮影可否判定部22と、複数の点検対象5についての撮影可能領域が重複する共通領域を、撮影可能領域が重複しない単一領域よりも優先させて選択し、その選択した領域から点検対象5を撮影する地点である撮影箇所4を決定する撮影箇所決定部23とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを有する自走式点検ロボットが撮影する複数の点検対象の設置位置を含む事前情報の入力を受け付ける事前情報入力部と、
前記事前情報の各前記点検対象を撮影する地点の撮影難易度を計算し、その撮影難易度が所定値以下であることで前記点検対象の撮影が可能な地点の集合を撮影可能領域として判定する撮影可否判定部と、
複数の前記点検対象についての前記撮影可能領域が重複する共通領域を、前記撮影可能領域が重複しない単一領域よりも優先させて選択し、その選択した領域から前記点検対象を撮影する地点である撮影箇所を決定する撮影箇所決定部とを有することを特徴とする
点検計画作成装置。
【請求項2】
前記事前情報入力部は、さらに、前記自走式点検ロボットを運用する施設の外観を含む施設情報と、前記自走式点検ロボットに搭載した前記カメラの撮影性能とを前記事前情報として受け付け、
前記撮影可否判定部は、前記点検対象を撮影するときに、前記カメラの前記撮影性能に応じて前記点検対象とともに映り込む施設の障害物8の量が多い地点ほど、前記撮影難易度を高く評価することを特徴とする
請求項1に記載の点検計画作成装置。
【請求項3】
前記撮影可否判定部は、前記点検対象の表面の法線ベクトルと、前記撮影箇所から前記点検対象に向かうベクトルとがなす角度として示される正対誤差が大きいほど、前記撮影難易度を高く評価することを特徴とする
請求項1に記載の点検計画作成装置。
【請求項4】
前記事前情報入力部は、さらに、前記自走式点検ロボットを運用する施設の外観を表す3次元モデリングデータを含む施設情報と、前記自走式点検ロボットに搭載した前記カメラの画角の情報を含む撮影性能とを前記事前情報として受け付け、
前記撮影可否判定部は、3次元モデリングデータと画角の情報とを用いて前記撮影箇所から前記カメラが撮影すると推測される仮想的なカメラ画像を作成し、その作成した仮想的なカメラ画像に含まれる画像特徴点の量が少ないほど、前記撮影難易度を高く評価することを特徴とする
請求項1に記載の点検計画作成装置。
【請求項5】
前記撮影可否判定部は、前記自走式点検ロボットの走行難易度を計算し、その走行難易度が所定値を超過する領域である走行不可領域を算出し、前記撮影可能領域から走行不可領域を除外することを特徴とする
請求項1に記載の点検計画作成装置。
【請求項6】
前記事前情報入力部は、さらに、前記自走式点検ロボットの外形の情報を前記事前情報として受け付け、
前記撮影可否判定部は、路面上の任意地点に前記自走式点検ロボットを配置した場合の、前記自走式点検ロボットの外形の情報から前記自走式点検ロボットの周辺に存在する物体又は溝までの距離を算出し、算出した距離が短いほど前記走行難易度を高く評価することを特徴とする
請求項5に記載の点検計画作成装置。
【請求項7】
前記撮影可否判定部は、過去に計算した前記自走式点検ロボットの自己位置推定の精度が低いほど、前記走行難易度を高く評価することを特徴とする
請求項5に記載の点検計画作成装置。
【請求項8】
点検計画作成装置は、事前情報入力部と、撮影可否判定部と、撮影箇所決定部とを有しており、
前記事前情報入力部は、カメラを有する自走式点検ロボットが撮影する複数の点検対象の設置位置を含む事前情報の入力を受け付け、
前記撮影可否判定部は、前記事前情報の各前記点検対象を撮影する地点の撮影難易度を計算し、その撮影難易度が所定値以下であることで前記点検対象の撮影が可能な地点の集合を撮影可能領域として判定し、
前記撮影箇所決定部は、複数の前記点検対象についての前記撮影可能領域が重複する共通領域を、前記撮影可能領域が重複しない単一領域よりも優先させて選択し、その選択した領域から前記点検対象を撮影する地点である撮影箇所を決定することを特徴とする
点検計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検計画作成装置、および、点検計画作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式点検ロボットは、ユーザーが作成した点検計画に従って、自律的に動作しながら点検作業を遂行する。点検計画は主に、自走式点検ロボットが走行すべき経路と、点検を実行すべき箇所の情報を含む。ユーザーが点検計画を作成する際、点検対象の施設の外観や施設内の地形、及び自走式点検ロボットの性能を鑑み、自走式点検ロボットにとって実行可能な計画を作成することが求められる。点検計画の作成を容易に行うための技術として、以下のような技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、撮影対象の位置や撮影装置の性能を入力とし、複数の撮影候補地点から対象を撮影した場合の撮影の評価値を事前に推定する技術が記載されている。そして、特許文献1には、評価値の高い地点を撮影地点として選出し、選出された複数の撮影地点を結ぶことで経路を算出する技術が記載されている。
この技術を用いると、撮影に適した地点とそれを結ぶ経路を自動的に設定し、点検計画設定におけるユーザーの作業負担を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、点検対象毎に個別に最適な撮影箇所を設定する。このとき、隣接した点検対象の撮影を行う際に、撮影を行うごとに自走式点検ロボットの位置を微調整する必要があり、自走式点検ロボットの消費電力や点検に要する時間が増大する。自走式点検ロボットは搭載したバッテリを用いて動作を行うことが多く、消費電力が増大すると点検可能な項目数が減少する。また点検に要する時間が増大すると、時間当たりに点検可能な項目数が減少し、点検効率が悪化する。
【0006】
そこで、本発明では、消費電力と点検に要する時間とを低減可能な撮影箇所を計画することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の点検計画作成装置は、以下の特徴を有する。
本発明は、カメラを有する自走式点検ロボットが撮影する複数の点検対象の設置位置を含む事前情報の入力を受け付ける事前情報入力部と、
前記事前情報の各前記点検対象を撮影する地点の撮影難易度を計算し、その撮影難易度が所定値以下であることで前記点検対象の撮影が可能な地点の集合を撮影可能領域として判定する撮影可否判定部と、
複数の前記点検対象についての前記撮影可能領域が重複する共通領域を、前記撮影可能領域が重複しない単一領域よりも優先させて選択し、その選択した領域から前記点検対象を撮影する地点である撮影箇所を決定する撮影箇所決定部とを有することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費電力と点検に要する時間とを低減可能な撮影箇所を計画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に関する自走式点検ロボットの動作を説明するための模式図である。
【
図2】実施例1に関する点検計画作成装置の構成図である。
【
図3】実施例1に関する点検計画作成装置と関連して動作する自走式点検ロボットの概要を説明するための模式図である。
【
図4】実施例1に関する点検計画作成装置における撮影難易度の算出方法を説明するための模式図である。
【
図5】実施例1に関する撮影可否判定部が撮影可否を判定する方法を説明するための模式図である。
【
図6】実施例1に関する撮影箇所決定部が撮影箇所を決定する方法を説明するための模式図である。
【
図7】実施例1に関する撮影可否判定部が撮影難易度を算出する方法を説明するための図である。
【
図8】実施例1に関する
図7の撮影箇所から3つの点検対象を撮影する様子を示す図である。
【
図9】実施例1に関する
図8の撮影結果として生成される画像データを示す図である。
【
図10】実施例2に関する撮影シーンの模式図である。
【
図11】実施例2に関する
図10の撮影シーンから撮影された撮影画像の模式図である。
【
図12】実施例2に関する(第1の映り込み評価方法)の説明図である。
【
図13】実施例2に関する(第2の映り込み評価方法)の説明図である。
【
図14】実施例3に関する撮影可否判定部が所望の位置で撮影したときの撮影画像の模式図である。
【
図15】実施例3に関する撮影可否判定部が
図14の所望の位置よりもずれて撮影したときの撮影画像の模式図である。
【
図16】実施例4に関する照明や太陽などの映り込みにより画像の明瞭さが失われるリスクを撮影難易度として評価する方法を説明するための模式図である。
【
図17】実施例5に関する点検計画作成装置の構成例を示す図である。
【
図18】実施例5に関する走行可能領域算出部において、障害物への衝突リスクを走行難易度として評価する方法を説明するための模式図である。
【
図19】実施例6に関する走行可能領域算出部において、自己位置推定の方式として衛星測位システムを用いた場合の、走行難易度の算出方法を説明するための模式図である。
【
図20】実施例6に関する撮影シーンの模式図である。
【
図21】実施例6に関する
図20の仮想点群から平面及び法線ベクトルを抽出する方法の概要を示した模式図である。
【
図22】実施例6に関する撮影シーンの模式図である。
【
図23】実施例6に関する
図22に示す撮影シーンにおいて、カメラによって撮影されると推測される仮想画像の模式図である。
【
図24】各実施例に関する点検システムに含まれる自走式点検ロボットおよび点検計画作成装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【実施例0011】
図1は、自走式点検ロボット1の動作を説明するための模式図である。自走式点検ロボット1は、予め定められた走行経路3を自律的に走行し、撮影箇所4に到達する。そして、自走式点検ロボット1は、ロボット本体に設けられたカメラ11を用いて点検対象5に指定された施設を撮影し、施設の外観の異常及び計器の異常の有無を確認する点検を実行する。このように、自走式点検ロボット1は、従来人手で行っている電力施設内での点検を自動化し、省力化する。
なお、実施例1の点検システムは、
図1の自走式点検ロボット1と、その自走式点検ロボット1の点検計画を作成する
図2の点検計画作成装置2とがネットワークで接続されて構成される。点検計画作成装置2は、一つまたは複数の点検対象5を撮影することが可能な地点に撮影箇所4を設定することにより、撮影位置の微調整が不要となる撮影箇所4を設定する。
【0012】
図2は、点検計画作成装置2の構成図である。点検計画作成装置2は、事前情報入力IF21と、撮影可否判定部22と、撮影箇所決定部23とを有する。
以下、
図3から
図6を用いて、点検計画作成装置2の詳細を明らかにする。
【0013】
図3は、点検計画作成装置2と関連して動作する自走式点検ロボット1の概要を説明するための模式図である。
図3には、施設の一例として、発電所や変電所などの電力施設内を自律的に走行して点検対象5の施設(例えば、発電施設や変電施設類)の点検を実行する自走式点検ロボット1が示されている。
自走式点検ロボット1は、自己位置推定機能を有し、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)から得られる信号を受信して自己位置を推定しながら、走行機構19によって自律的に走行する。
【0014】
カメラ11は、自走式点検ロボット1が点検対象5の施設(例えば、架線、鉄塔、及び計器などを含む変電施設類)を点検するための要素であり、点検対象5を撮影する。カメラ11はいかなる種類のカメラ11であってもよく、例えば、撮影方向を制御可能なPTZ(Pan-Tilt-Zoom)カメラ11を例示する。
事前情報入力IF21は、自走式点検ロボット1を運用する施設の外観の情報と路面の情報とを含む施設情報と、複数の点検対象5の設置位置と、カメラ11の撮影性能と、を含む事前情報を入力する。事前情報入力IF21により事前に入力される事前情報は、撮影可否判定部22へ供給される。
【0015】
施設情報のうち施設の外観を表す情報としては、例えば、施設内の3次元地形(建築物や施設等の人工物を含んでもよい)を表現した点群データやメッシュデータ、もしくは図面データを例示できる。施設情報としてはその他、自走式点検ロボット1の点検の能力と関係のある任意の要素を含めてもよい。
【0016】
点検対象5の設置位置としては、施設内での点検対象5の3次元座標、又は、点検対象5の地球上での位置を表す緯度、経度、標高を例示できる。カメラ11の撮影性能としては、例えば、カメラ11の画角や解像度、焦点距離、受光感度などの情報や、カメラ11の撮影方向の操作可能範囲とその分解能、操作精度などの撮影性能全般を想定できる。その他、自走式点検ロボット1及びカメラ11の性能のうち、点検対象5や周囲の物体に対する撮影結果に影響を及ぼす要素も、カメラ11の撮影性能に任意に含めてもよい。
カメラ11の撮影性能については、例えば、撮影性能を入力するためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ上に表示し、マウス操作とキーボード操作を用いてユーザーが手入力する構成としてもよい。
【0017】
事前情報入力IF21は、事前情報を入力することができれば、その実装方法は任意の形態をとる。施設の外観を表す情報については、例えば、3次元CAD(Computer Aided Design)ツールを用いて、ユーザーが施設の3次元形状をモデリング(3次元モデリングデータを作成)する構成としてもよい。もしくは、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサとSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて作成した3次元点群ファイルを読み込む構成としてもよい。
また、施設の規模、又は撮影地点から点検対象5までの距離によっては、RGB-D(Red Green Blue-Depth)カメラ11で撮影された2次元画像に対応する3次元点群を用いてもよい。また、事前情報入力IF21が、ネットワークを介して、施設の外観を表す3次元メッシュデータを読み込む構成でもよい。
【0018】
点検対象5の設置位置については、例えば、点検対象5のIDと3次元座標、もしくは緯度、経度、標高を入力するためのGUIをディスプレイ上に表示し、マウス操作とキーボード操作を用いてユーザーが手入力する構成としてもよい。もしくは、例えば、対象物の3次元位置を計測することが可能な機器によって点検対象5ごとに計測した3次元位置が、自動的に施設情報に埋め込まれるようにソフトウェアを構成してもよい。そのような3次元位置計測機器としては、トータルステーションや、衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の測量機を例示できる。
【0019】
図4は、点検計画作成装置2における撮影難易度の算出方法を説明するための模式図である。
撮影可否判定部22は、
図4で示すように、事前情報の各点検対象5を撮影する任意地点の撮影難易度を計算し、その撮影難易度が所定値以下であることで点検対象5の撮影が可能な地点の集合を撮影可能領域として判定する。
撮影可否判定部22は、カメラ11の点検対象5の正対位置からのずれ量(角度)である正対誤差θと、カメラ11と点検対象5の距離lを用いて、撮影難易度Dsを(数式1)のように評価する。ここで、b1、b2は重み係数である。
Ds=b1×θ+b2×l …(数式1)
【0020】
正対誤差θは、点検対象5表面(例えば正面)の一点鎖線で示す法線ベクトル6aと、撮影箇所4に自走式点検ロボット1が停止した場合のカメラ11の位置から点検対象5の中心に向かって延ばしたベクトル6b(破線)とのなす角度として定義される。距離lは、ベクトル6bの長さとして定義される。
変電施設に多く使用されるメータである円形アナログメータでは、文字盤から若干浮いた位置に針が設置されていることが多く、正面から確認しなければ正しく計測値を読み取ることができない。また、カメラ11の解像度やズーム性能には限界があるため、カメラ11と点検対象5が離れていると十分な解像度で撮影ができない。
従って、正対誤差θ、及び距離lが大きいほど撮影難易度Dsが高いため、撮影可否判定部22は、(数式1)を用いて撮影難易度Dsを評価する。つまり、撮影可否判定部22は、点検対象5の表面の法線ベクトルと、撮影箇所4から点検対象5に向かうベクトルとがなす角度として示される正対誤差θが大きいほど、撮影難易度Dsを高く評価する。
これにより、点検対象5をほぼ正面から撮影できるので、文字盤から若干浮いた位置に針が設置されていても、正しく計測値を読み取れる。
【0021】
図5は、撮影可否判定部22が撮影可否を判定する方法を説明するための模式図である。
撮影可否判定部22が判定の対象とする範囲101は、GUIを用いてユーザーが指定してもよいし、システムが自動的に設定してよく、様々な方法が考えられる。そのような方法の典型的な一例としては、施設内の全域に、一定間隔で網羅的に地点の候補を設定すればよい。即ち、範囲101内のグリッドの一つ一つが撮影可否判定の対象地点である。
【0022】
また、判定の対象とする点検対象5は、
図5では、3つの円形アナログメータ5B,5A,5Cとした。なお、全ての点検対象5を撮影可否判定部22の判定の対象としてもよいし、一部の点検対象5であってもよい。判定対象を選択する方法は様々考えられるが、一例としては、任意地点に対して、そこから一定距離以内に存在する全ての点検対象5を対象としてもよい。
【0023】
撮影可否の判定方法は様々考えられるが、実施例1においては、判定の指標となる撮影難易度を用いる方法を例示して説明する。撮影難易度とは、ある地点を撮影箇所4に設定した場合に、自走式点検ロボット1により自律的に撮影されると推測される画像が、点検に適したものであるかどうかを判断するための指標であり、様々な定義を適用できる。
符号102に示すように、撮影可否判定部22は、撮影難易度が所定値以下となる地点の集合を撮影可能領域と判定し、撮影難易度が所定値を超過した地点の集合を撮影不可領域と判定する。
図5では、撮影可能領域を網掛け表示している。
【0024】
図6は、撮影箇所決定部23が撮影箇所4を決定する方法を説明するための模式図である。
撮影可否判定部22は、円形アナログメータ5Aの文字盤を撮影可能な撮影可能領域を、符号111に示すように求める。
撮影可否判定部22は、円形アナログメータ5Bの文字盤を撮影可能な撮影可能領域を、符号112に示すように求める。
撮影可否判定部22は、円形アナログメータ5Cの文字盤を撮影可能な撮影可能領域を、符号113に示すように求める。
このように、撮影可否判定部22は、複数の点検対象5について、それぞれの撮影可能領域を算出する。
そして、撮影箇所決定部23は、それぞれの点検対象5に対して、撮影可否判定部22が判定した撮影可能領域の中から撮影箇所4を決定する。つまり、撮影箇所決定部23は、複数の点検対象5についての撮影可能領域が重複する共通領域を、撮影可能領域が重複しない単一領域よりも優先させて選択し、その選択した領域から点検対象5を撮影する地点である撮影箇所4を決定する。
【0025】
図7は、撮影可否判定部22が撮影難易度を算出する方法を説明するための図である。
撮影可否判定部22は、
図6の符号111~符号113の各撮影可能領域を、同じ空間121上に配置することで、複数の点検対象5の撮影が可能と判定された共通領域を求める(符号122)。なお、共通領域において重複する撮影可能領域の数が多いほど、空間121での網掛けを濃く図示する。一方、1つの点検対象5の撮影が可能な撮影可能領域は、単一領域とする。
【0026】
そして、撮影箇所決定部23は、共通領域を単一領域よりも優先的に選択し、その選択した共通領域内の地点を撮影箇所4として選択する。さらに、撮影箇所決定部23は、共通領域内で、撮影可能な点検対象5の数が最も多い地点、つまり、共通領域が最も重なっている部分(最も網掛けが濃い部分)から順番に選択することが望ましい。これにより、撮影箇所4の数を削減できるので、自走式点検ロボット1を撮影箇所4で停止するなどの走行負担を削減でき、省電力化が期待される。
【0027】
図8は、
図7の撮影箇所4から3つの点検対象5を撮影する様子を示す図である。
自走式点検ロボット1は、同じ撮影箇所4に停止した状態で、3つの円形アナログメータ5B,5A,5Cそれぞれにカメラ11の撮影方向131R,132R,133Rを向けて、合計3枚の撮影を行う。これにより、3か所の撮影箇所4に停止するよりも、省電力化が期待される。
【0028】
図9は、
図8の撮影結果として生成される画像データを示す図である。
撮影方向131Rで撮影された円形アナログメータ5Bの写真131Pと、撮影方向132Rで撮影された円形アナログメータ5Aの写真132Pと、撮影方向133Rで撮影された円形アナログメータ5Cの写真133Pとが撮影される。
これらの写真は、それぞれ撮影可能領域内で撮影されているので、円形アナログメータの文字盤と針とが示す計測値を読み取り可能な程度に、充分な精度の写真となっている。
【0029】
以上説明したように、実施例1の点検計画作成装置2は、複数の点検対象5をまとめて撮影可能な共通領域から優先的に撮影箇所4を設定する。これにより、ロボット位置の微調整の回数を低減できるので、消費電力と点検に要する時間を低減できる。
次に、実施例2の点検計画作成装置2について説明する。実施例2の点検計画作成装置2の基本構成は、実施例1の点検計画作成装置2と同じである。以下では、実施例2の点検計画作成装置2について、実施例1の点検計画作成装置2と異なる点を主に説明する。
実施例1の点検計画作成装置2では、撮影難易度の具体的な定義と算出方法の一例を示した。しかし、撮影難易度は他にも複数の方法で定義することができ、さらに複数の定義を併用することで、より実態に即した難易度の評価が可能になる。実施例2では、撮影難易度の異なる定義及び算出方法を開示する。
(数式2)を用いて映り込みの評価値Gを計算することで、画像に映り込んだ物体の画像中の面積を、点検対象5の中心までの距離で重みづけした値が得られる。映り込みの評価値Gが大きい場合、画像中の点検対象5が遮へいされる可能性が高くなる。したがって、撮影難易度Dsを、例えば、(数式3)のように算出できる。b2は重み係数である。
Ds=b2×G …(数式3)
このように、(第1の映り込み評価方法)では、少なくとも、施設情報は、施設の外観を表す3次元モデリングデータを含み、カメラ11の撮影性能は、カメラ11の画角の情報を含む。
そして、撮影難易度評価部221は、撮影箇所4から撮影されると推測されるカメラ画像を、3次元モデリングデータとカメラ11の画角を用いて作成し、カメラ画像における、点検対象5以外の物体(障害物8)が映り込んだ画素の量によって、撮影難易度を評価する。
撮影可否判定部22は、路面を示す点群の除去には、例えば、RANSAC(RANdom SAmple Consensus)を用いた平面推定アルゴリズムなどを用いる。点検対象5より奥にある点群の除去は、撮影箇所4から各点までの距離を計算し、撮影箇所4から点検対象5までの距離の方が小さくなる点を除去することで実行できる。
算出した点群の各点をci(0<i<n)とする。nは算出した点群に含まれる点ciの総数である。このとき、物体の映り込みの量を(数式4)で評価できる。ここで、diは点検対象撮影箇所4から点ciまでの距離、dmは撮影箇所4から点検対象5までの距離、総和記号Σはiについての総和を取るものとする。例えば、撮影箇所4から点検対象5までの距離dmは、撮影箇所4から点検対象5上の複数の点ciまでの距離の平均値、又は、撮影箇所4から点検対象5上の特定の点ci(例えば、重心)までの距離である。
G=Σ(dm-di) …(数式4)
(数式4)を用いて映り込みの評価値Gを計算することで、カメラ11の画角の範囲Imp内に収まる点群のうち、点検対象5より手前にある点ciの点数を、撮影箇所4への近さで重みづけした値が得られる。映り込みの評価値Gが大きい場合、画像中の点検対象5が障害物8で遮へいされる可能性が高くなる。したがって、(第1の映り込み評価方法)と同様に、撮影難易度評価部231は、(数式4)で得られた映り込みの評価値Gを(数式3)に用いて、撮影難易度Dsを算出できる。
このように、(第2の映り込み評価方法)では、少なくとも、施設情報は、施設の外観を表す3次元点群データを含み、カメラ11の撮影性能は、カメラ11の画角の情報を含む。
そして、撮影可否判定部22は、撮影箇所4に自走式点検ロボット1が停止し、カメラ11を点検対象5に向けた場合に、画角内に収まる3次元点群のうち、点検対象5よりも手前にある3次元点群の量によって撮影難易度を評価する。
以上説明したように、実施例2の点検計画作成装置2は、点検対象5の画像を撮影する際、他の物体がどの程度映り込むかを評価する。点検計画作成装置2は、自走式点検ロボット1の停止時の位置誤差によって、画像中の点検対象5が遮へいされるリスクがどの程度あるかを評価する。