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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128485
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】追跡システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20230907BHJP
   G01V 99/00 20090101ALI20230907BHJP
【FI】
G06Q10/04
G01V99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032854
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 篤史
(72)【発明者】
【氏名】竹下 浩
(72)【発明者】
【氏名】太田 祥司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】荒井 正仁
【テーマコード(参考)】
2G105
5L049
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB09
2G105HH01
2G105JJ05
2G105KK06
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】電波が届かない場所であっても対象者を追跡することが可能な追跡システムを提供する。
【解決手段】追跡システムは、基準時点からの時間の経過に伴って異なる匂い成分を放出する放出装置と、放出装置から放出される匂い成分を検出し、匂い成分が検出された検出位置と当該検出位置で検出された匂い成分とを対応付けて記憶し、対応付けて記憶された検出位置と匂い成分とに基づいて放出装置が検出位置に存在したタイミングを基準時点からの経過時間として算出する分析装置とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準時点からの時間の経過に伴って異なる匂い成分を放出する放出装置と、
前記放出装置から放出される前記匂い成分を検出する検出装置と、
前記検出装置により前記匂い成分が検出された検出位置と当該検出位置で検出された前記匂い成分とを対応付けて記憶し、対応付けて記憶された前記検出位置と前記匂い成分とに基づいて前記放出装置が前記検出位置に存在したタイミングを前記基準時点からの経過時間として算出する分析装置と
を備える追跡システム。
【請求項2】
前記放出装置は、前記基準時点から所定時間が経過するごとに混合比率が変更されるように複数の異なる前記匂い成分を放出し、
前記検出装置は、前記放出装置から放出される複数の前記匂い成分の前記混合比率を検出し、
前記分析装置は、前記検出位置と前記混合比率とを対応付けて記憶し、前記検出位置と前記混合比率との対応関係と、前記放出装置における前記基準時点からの経過時間と放出される複数の前記匂い成分の前記混合比率との関係と、に基づいて前記タイミングを算出する
請求項1に記載の追跡システム。
【請求項3】
前記分析装置は、算出した前記タイミングと当該タイミングに対応する前記検出位置とに基づいて、前記放出装置の移動経路、及び直近に算出した前記タイミングよりも時間的に後の時点において前記放出装置が存在する可能性のある存在範囲の少なくとも一方を推定する
請求項1又は請求項2に記載の追跡システム。
【請求項4】
前記分析装置は、前記検出位置を含む地図データに基づいて前記移動経路及び前記存在範囲の少なくとも一方を推定する
請求項3に記載の追跡システム。
【請求項5】
前記分析装置は、推定結果を地図データに重畳させて表示部に表示させる
請求項3又は請求項4に記載の追跡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追跡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
登山等における遭難対策として、例えば対象者にGPS装置を内蔵した腕時計を携行させることで、対象者の位置を検出可能な構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-19272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、対象者が携行するGPS装置によりGPS衛星を介して無線通信することで救助隊等の追跡者側と通信する構成である。そのため、対象者がGPS信号等の電波が届かない場所に存在する場合、当該対象者を追跡することが困難である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、電波が届かない場所であっても対象者を追跡することが可能な追跡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る追跡システムは、基準時点からの時間の経過に伴って異なる匂い成分を放出する放出装置と、前記放出装置から放出される前記匂い成分を検出し、前記匂い成分が検出された検出位置と当該検出位置で検出された前記匂い成分とを対応付けて記憶し、対応付けて記憶された前記検出位置と前記匂い成分とに基づいて前記放出装置が前記検出位置に存在したタイミングを前記基準時点からの経過時間として算出する分析装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電波が届かない場所であっても対象者を追跡することが可能な追跡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る追跡システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、追跡システムの一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、放出装置の一例を示す斜視図である。
図4図4は、8つの収容室と各収容室に収容される匂い成分の混合比率との関係を示す図である。
図5図5は、表示部の表示内容の一例を示す図である。
図6図6は、表示部の表示内容の他の例を示す図である。
図7図7は、追跡システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、放出装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る追跡システムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る追跡システム100の一例を示す模式図である。図2は、追跡システム100の一例を示す機能ブロック図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、追跡システム100は、放出装置10と、検出装置20と、分析装置30と、表示装置40とを備える。この追跡システム100では、放出装置10を携えた対象者を、検出装置20、分析装置30及び表示装置40を用いて追跡者が追跡する。
【0012】
放出装置10は、基準時点からの時間の経過とともに混合比率が変更されるように複数種類の異なる匂い成分を放出する。図3は、放出装置10の一例を示す斜視図である。図3では、容器11に蓋部12が装着された状態と、容器11から蓋部12が取り外された状態とを併せて示している。図3に示すように、放出装置10は、容器11と、蓋部12と、駆動部13と、匂い物質14とを有する。
【0013】
容器11は、例えば中心軸AXを有する円筒状である。容器11は、仕切り壁により、中心軸AXの軸回り方向に複数の収容室11aに区切られている。収容室11aは、例えば中心軸AXの軸回り方向に等しい角度で8分割された状態で設けられる。各収容室11aは、中心軸AXの軸方向の一方の端部が底部となっており、他方の端部が開口部11bとなっている。
【0014】
蓋部12は、容器11を覆う円筒状である。蓋部12は、収容室11aの開口部11bに対応する開口部12bを有する。開口部12bは、例えば放出装置10の使用前においては不図示のシール部材によりシールされている。蓋部12は、容器11を覆った状態で容器11に対して中心軸AXの軸回り方向に回転可能である。蓋部12が回転することにより、開口部12bの位置が中心軸AXの軸回り方向に移動するようになっている。開口部12bの位置が中心軸AXの軸回り方向に移動することにより、収容室11aが1つ1つ開放されるようになっている。なお、放出装置10は、蓋部12が容器11に対して回転する構成に限定されず、容器11側が回転する構成であってもよい。
【0015】
駆動部13は、蓋部12を回転させる。駆動部13は、モータ等の駆動源と、駆動源で生じる駆動力を蓋部12に伝達する伝達機構とを有する。駆動部13は、例えば起動開始時点等の基準時間からの時間の経過とともに開口部12bの位置が収容室11aのそれぞれを順に開放するように蓋部12を回転させる。駆動部13は、例えば基準時間から所定時間が経過したら蓋部12を中心軸AXの軸回り方向に45°回転させ、以降も同様に所定時間が経過するごとに蓋部12を中心軸AXの軸回り方向に45°ずつ回転させるようにする。
【0016】
匂い物質14は、容器11の各収容室11aに収容される。匂い物質14は、複数の匂い成分で構成される。本実施形態において、匂い物質14は、匂い成分A、匂い成分Bの2つの匂い成分で構成される。匂い物質14について、複数の匂い成分である匂い成分Aと匂い成分Bとが収容室11aごとに異なる混合比率となっている。
【0017】
図4は、8つの収容室11aと各収容室11aに収容される匂い成分A、Bの混合比率との関係を示す図である。図4に示すように、匂い成分Aは、8つの収容室11a(以下、収容室R1~収容室R8と表記する)にそれぞれ比率A1(%)~比率A8(%)となるように設けられる。また、匂い成分Bは、収容室R1~収容室R8にそれぞれ比率B1(%)~比率B8(%)となるように設けられる。なお、A1~A8は、互いに異なる値である。また、B1~B8は、互いに異なる値である。また、収容室R1~収容室R8において、匂い成分Aの比率と匂い成分Bの比率との和は100%である。
【0018】
図2に示すように、検出装置20は、匂い検出部21と、位置検出部22と、通信部23とを有する。検出装置20は、複数設けられてもよい。この場合、複数の検出装置20は、それぞれ別個に検出及び検出結果の送信を行うことが可能である。
【0019】
匂い検出部21は、放出装置10から放出される匂い成分を検出する。匂い検出部21は、例えば公知の技術により2種類の匂い成分A、Bを検出可能な匂いセンサを含む。匂い検出部21は、2種類の匂い成分A、Bを検出し、当該2種類の匂い成分A、Bの混合比率を判別可能である。
【0020】
位置検出部22は、検出装置20の位置を検出する。位置検出部22は、例えばGPSセンサ等の位置センサを含む。位置検出部22は、例えば追跡者が位置を入力可能な構成である場合には、追跡者の入力結果に基づいて位置を検出する構成であってもよい。この場合、GPS信号等の信号が届かない場所においても位置を検出することができる。
【0021】
位置検出部22は、匂い検出部21により匂い成分が検出された時点における検出装置20の位置を検出位置として検出する。位置検出部22は、検出した検出位置と、当該検出位置での匂い検出部21の検出により判別した混合比率とを対応付けた情報として、通信部23から分析装置30に送信させる。
【0022】
分析装置30は、検出装置20によって検出された検出結果に基づいて分析を行う。分析装置30は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶装置を有する。本実施形態において、分析装置30は、例えば対象者を追跡するための拠点に設けられる等、検出装置20とは別個に設けられる。なお、分析装置30は、検出装置20と一体であってもよい。分析装置30は、通信部31と、処理部32と、記憶部33とを有する。
【0023】
通信部31は、検出装置20との間で有線又は無線による通信を行う。検出装置20が複数設けられる場合、通信部31は、複数の検出装置20との間で通信が可能である。
【0024】
処理部32は、各種の情報処理を行う。処理部32は、通信部31で受信した検出装置20での検出結果を記憶部33に記憶させる。処理部32は、記憶部33に記憶された対応する検出位置と混合比率とに基づいて、放出装置10が当該検出位置に存在したタイミングを基準時点からの経過時間として算出する。放出装置10において放出される匂い成分A、Bの混合比率と、基準時点からの経過時間との対応関係を、予め記憶部33に記憶しておくことができる。処理部32は、検出装置20における検出結果である検出位置と混合比率との対応関係と、記憶部33に記憶された放出装置10における経過時間と混合比率との対応関係と、に基づいて検出位置と経過時間とを算出することができる。
【0025】
処理部32は、算出したタイミングと、当該タイミングに対応する検出位置とに基づいて、放出装置10の移動経路を推定することができる。処理部32は、放出装置10が異なるタイミングで異なる検出位置に存在した旨の検出結果を得た場合、検出位置同士をタイミングの先後順に結ぶ経路を放出装置10の移動経路として推定することができる。
【0026】
例えば、第1タイミングで第1検出位置に放出装置10が存在し、第1タイミングよりも時間的に後の第2タイミングで第1検出位置とは異なる第2検出位置に放出装置10が存在する旨の検出結果を得た場合、処理部32は、放出装置10が第1検出位置から第2検出位置へと移動した旨の移動経路を推定することができる。
【0027】
また、処理部32は、放出装置10の移動開始時点と移動開始位置とが判明している場合において、例えば第3タイミングにおいて第3検出位置に放出装置10が存在する旨の検出結果を得た場合、移動開始位置から第3検出位置へと移動した旨の移動経路を推定することができる。
【0028】
処理部32は、算出したタイミングよりも時間的に後の時点において放出装置10が存在する可能性のある存在範囲を、移動経路に基づいて推定することができる。この場合、処理部32は、例えば推定した移動経路を移動する際の放出装置10の移動速度と移動方向を算出する。処理部32は、算出した移動速度及び移動方向と、最後に算出したタイミングからの経過時間とに基づいて、移動経路の先端から放出装置10が当該経過時間の間に移動可能な範囲を推定する。
【0029】
放出装置10の移動経路を推定する際、及び放出装置10の存在する可能性のある存在範囲を推定する際、処理部32は、地図データを用いることができる。処理部32は、地図データを用いることにより、放出装置10を携えた対象者が実際に移動可能な経路をより適切に推定できる。地図データは、予め記憶部33に記憶しておくことができる。
【0030】
処理部32は、推定結果である移動経路及び存在範囲を表示装置40に表示させる。処理部32は、移動経路及び存在範囲を表示させる際、例えば地図データに重畳させて表示させることができる。
【0031】
記憶部33は、各種情報を記憶する。記憶部33は、検出装置20から送信された対応情報、すなわち、匂い検出部21で匂い成分を検出した検出位置と、当該検出位置での検出により判別した混合比率とを対応付けた情報を記憶する。記憶部33は、放出装置10における経過時間と当該経過時間に対応する2種類の匂い成分の混合比率との関係についての情報を記憶する。記憶部33は、処理部32で算出されたタイミングを検出位置と対応付けて記憶する。記憶部33は、処理部32で推定された放出装置10の移動経路及び存在範囲を記憶する。
【0032】
表示装置40は、各種情報を表示する。表示装置40としては、例えば液晶ディスプレイ等が用いられる。表示装置40は、分析装置30と別体で設けられてもよいし、分析装置30と一体で設けられてもよい。また、検出装置20、分析装置30及び表示装置40が一体で設けられた構成であってもよい。
【0033】
上記のように構成された追跡システム100の動作の一例を説明する。本実施形態では、放出装置10を携えて移動する対象者を追跡する場合を例に挙げて説明する。追跡システム100は、放出装置10を追跡することにより、放出装置10を携える対象者を追跡することができる。まず、対象者は、蓋部12の開口部12bのシール部材を除去して放出装置10を起動し、起動後に例えば登山等の移動を開始する。以下、放出装置10を起動した時点が基準時点となる。
【0034】
放出装置10は、起動した後、駆動部13により蓋部12が所定時間経過するごとに中心軸AXの軸回り方向に45°ずつ回転する。蓋部12の回転により、開口部12bの位置が収容室R1から収容室R8を順番に開放される。収容室R1から収容室R8が開放される間、各収容室に収容される匂い物質14から匂い成分A、Bが放出される。以降、蓋部12が5時間経過するごとに中心軸AXの軸回り方向に45°ずつ回転するものとして説明する。
【0035】
このようにして、放出装置10は、所定時間ごとに混合比率の異なる匂い成分Aと匂い成分Bとを放出し続ける。対象者が放出装置10を携えて移動する経路においては、基準時間からの経過時間に応じて混合比率の異なる匂い成分A、Bが存在することになる。
【0036】
一方、対象者を追跡する追跡者は、検出装置20を携えて移動する。対象者が移動した経路に追跡者が到達した場合、検出装置20の匂い検出部21は、経路に残った匂い成分A、Bを検出する。匂い検出部21は、検出した匂い成分A、Bから混合比率を判別する。位置検出部22は、匂い検出部21で匂い成分A、Bが検出された時点において、検出装置20の位置を検出位置として検出する。位置検出部22は、検出した検出位置を、匂い検出部21で判別された混合比率と対応付けた情報として、通信部23から分析装置30へ送信させる。
【0037】
分析装置30において、通信部31は、検出装置20からの検出結果を受信する。処理部32は、受信した検出結果を記憶部33に記憶させる。処理部32は、記憶部33に記憶した検出結果に基づいて、検出位置に存在したタイミングを算出する。例えば、検出位置に対応する混合比率が、匂い成分AについてはA2、匂い成分BについてはB2であった場合(図4参照)、検出位置に存在したタイミングは基準時点からの経過時間が5時間以上、10時間未満のタイミングであると算出される。この算出結果により、検出位置で検出した時点からどのくらい時間的に前に対象者が検出位置に存在したかを求めることができる。例えば、上記の例で基準時点から11時間経過後に検出位置で匂い成分A、Bを検出した場合、対象者は、検出時点よりも1時間前~6時間前に検出位置に存在していたことになる。
【0038】
処理部32は、この算出結果に基づいて、放出装置10の存在範囲を推定することができる。上記したように基準時点から11時間経過後に検出位置で匂い成分A、Bを検出した場合には、処理部32は、検出位置から最大で6時間の間に移動可能な範囲を存在範囲として推定することができる。処理部32は、推定した結果を表示装置40に表示することができる。図5は、表示装置40の表示内容の一例を示す図である。図5に示すように、処理部32は、匂い成分A、Bを検出した検出位置D1と、推定した結果である存在範囲AR1を地図データMに重畳させて示すことができる。追跡者は、存在範囲AR1の範囲内を重点的に捜索することにより、効率的な捜索が可能となる。
【0039】
図6は、表示装置40の表示内容の他の例を示す図である。以下、図6では、異なる3つの検出位置D2、D3、D4で匂い成分A、Bが検出された場合を例に挙げて説明する。例えば、検出位置D2に対応する混合比率が、匂い成分AについてはA2、匂い成分BについてはB2であり、検出位置D3に対応する混合比率が、匂い成分AについてはA3、匂い成分BについてはB3であり、検出位置D4に対応する混合比率が、匂い成分AについてはA4、匂い成分BについてはB4であったとする(図4参照)。この場合、放出装置10が検出位置D2に存在したタイミングは、基準時点からの経過時間が5時間以上、10時間未満のタイミングであると算出される。また、放出装置10が検出位置D3に存在したタイミングは、基準時点からの経過時間が10時間以上、15時間未満のタイミングであると算出される。また、放出装置10が検出位置D4に存在したタイミングは、基準時点からの経過時間が15時間以上、20時間未満のタイミングであると算出される。この結果から、放出装置10(当該放出装置10を携えた対象者)は、検出位置D2、検出位置D3、検出位置D4の順に移動していることがわかる。
【0040】
処理部32は、この算出結果に基づいて、放出装置10の移動経路を推定することができる。すなわち、処理部32は、検出位置D2と、検出位置D3と、検出位置D4とを時系列順に結んだ経路を移動経路として推定することができる。処理部32は、図6に示すように、検出位置D2~D4と、推定した結果である移動経路RTを地図データMに重畳させて示すことができる。
【0041】
処理部32は、この算出結果に基づいて、放出装置10の存在範囲を推定することができる。例えば、算出された直近の検出位置D4に対象者が最大で5時間前に存在していた旨の結果が得られた場合、検出位置D4から最大で5時間の間に移動可能な範囲を存在範囲として推定することができる。この場合、処理部32は、推定した移動経路RTに基づいて存在範囲を推定してもよい。例えば、処理部32は、移動経路RTに基づいて放出装置10の移動速度及び移動方向を判別し、判別した結果に基づいて存在範囲を推定することができる。また、処理部32は、地図データを用いて地形等を判別することで、対象者がより移動しやすい範囲を存在範囲として推定することができる。図6に示すように、処理部32は、推定した結果である存在範囲AR2を地図データMに重畳させて示すことができる。追跡者は、存在範囲AR2の範囲内を重点的に捜索することにより、放出装置10及び当該放出装置10を携えた対象者を効率的に捜索することが可能となる。
【0042】
図7は、追跡システム100の動作の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、追跡システム100において、放出装置10が起動された場合、放出装置10は、起動された時点を基準時点として、基準時点から所定時間が経過するごとに蓋部12を回転させる。蓋部12の回転により、基準時点から所定時間が経過するごとに異なる混合比率の匂い成分A、Bが放出装置10から放出される(ステップS10)。
【0043】
検出装置20において、匂い検出部21は、放出装置10から放出された匂い成分A、Bを検出した場合(ステップS20のYes)、匂い成分A、Bの混合比率を判別する(ステップS30)。また、この場合、位置検出部22は、検出位置を検出し(ステップS30)、検出位置と混合比率とを対応付けた情報を検出結果として分析装置30に送信させる(ステップS40)。なお、匂い成分A、Bが検出されない場合(ステップS20のNo)、ステップS20の処理を繰り返し行う。
【0044】
分析装置30において、通信部31で検出装置20での検出結果を受信した場合、処理部32は、通信部31で受信した検出装置20での検出結果を記憶部33に記憶させる(ステップS50)。処理部32は、記憶部33に記憶された対応する検出位置と混合比率とに基づいて、放出装置10が当該検出位置に存在したタイミングを基準時点からの経過時間として算出する(ステップS60)。また、処理部32は、算出結果に基づいて、放出装置10の移動経路及び存在範囲を推定する(ステップS70)。処理部32は、推定結果を表示装置40に表示させる(ステップS80)。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る追跡システム100は、基準時点からの時間の経過に伴って異なる匂い成分A、Bを放出する放出装置10と、放出装置10から放出される匂い成分A、Bを検出する検出装置20と、検出装置20により匂い成分A、Bが検出された検出位置と当該検出位置で検出された匂い成分A、Bとを対応付けて記憶し、対応付けて記憶された検出位置と匂い成分A、Bとに基づいて放出装置10が検出位置に存在したタイミングを基準時点からの経過時間として算出する分析装置30とを備える。
【0046】
この構成によれば、基準時点からの時間の経過に伴って異なる匂い成分A、Bを放出装置10から放出する場合に、検出装置20で匂い成分A、Bを検出し、検出結果に基づいて放出装置10が検出位置に存在したタイミングを分析装置30により算出するため、電波が届かない場所であっても放出装置10を追跡することが可能となる。
【0047】
本実施形態に係る追跡システム100において、放出装置10は、基準時点から所定時間が経過するごとに混合比率が変更されるように2種類の異なる匂い成分A、Bを放出し、検出装置20は、放出装置10から放出される2種類の匂い成分A、Bの混合比率を検出し、分析装置30は、検出位置と混合比率とを対応付けて記憶し、検出位置と混合比率との対応関係と、放出装置10における基準時点からの経過時間と放出される複数の匂い成分A、Bの混合比率との関係と、に基づいてタイミングを算出する。この構成によれば、2種類の異なる匂い成分A、Bの混合比率を用いてタイミングを算出するため、放出装置10が検出位置に存在したタイミングを精度よく算出することができる。
【0048】
本実施形態に係る追跡システム100において、分析装置30は、算出したタイミングと当該タイミングに対応する検出位置とに基づいて、放出装置10の移動経路、及び直近に算出したタイミングよりも時間的に後の時点において放出装置10が存在する可能性のある存在範囲の少なくとも一方を推定する。この構成によれば、放出装置10の移動経路及び存在範囲の少なくとも一方を推定することができるため、放出装置10の位置をより高精度かつ効率的に追跡することができる。
【0049】
本実施形態に係る追跡システム100において、分析装置30は、検出位置を含む地図データに基づいて移動経路及び存在範囲の少なくとも一方を推定する。この構成によれば、地図データに基づいて移動経路及び存在範囲の少なくとも一方を推定するため、より高精度に移動経路及び存在範囲を推定できる。
【0050】
本実施形態に係る追跡システム100において、分析装置30は、推定結果を地図データに重畳させて表示装置40に表示させる。この構成によれば、推定結果を追跡者に対して直感的に認識させることができる。
【0051】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、放出装置10が基準時点からの時間の経過に伴って異なる匂い成分A、Bを放出し続ける構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0052】
図8は、放出装置の他の例を示す図である。図8に示す放出装置110は、容器111と、カプセル112と、開閉部113と、匂い物質114とを有する。
【0053】
容器111は、例えば円筒状である。容器111は、内部に長手方向に沿って複数のカプセル112が収容される。図8に示す例では、例えば8つのカプセル112が容器111に収容される。カプセル112は、例えば空気に触れることで溶解する材料を用いることができる。容器111は、複数のカプセル112を収容した状態で内部を密閉可能である。開閉部113は、例えば起動開始時点等の基準時間からの時間の経過とともに開閉し、カプセル112を1つずつ容器111の外部に放出する。開閉部113は、例えば基準時間から所定時間が経過するごとに開閉して、カプセル112を1つずつ放出する。
【0054】
匂い物質114は、カプセル112に収容される。カプセル112が容器111の外部に放出された場合、カプセル112が分解され、匂い物質114がカプセル112の外部に放出される。匂い物質114は、2種類の匂い成分C、Dで構成される。本実施形態において、2種類の匂い成分C、Dは、上記実施形態に記載の匂い成分A、匂い成分Bの2種類と同様とすることができる。なお、2種類の匂い成分C、Dは、上記実施形態に記載の匂い成分A、匂い成分Bの2種類とは異なってもよい。匂い物質114について、匂い成分Cと匂い成分Dとがカプセル112ごとに異なる混合比率となっている。混合比率としては、上記実施形態における図4で示す例と同様に、匂い成分Cは、8つのカプセル112にそれぞれ比率C1(%)~比率C8(%)となるように設けられる。また、匂い成分Dは、8つのカプセル112にそれぞれ比率D1(%)~比率D8(%)となるように設けることができる。なお、C1~C8は、互いに異なる値である。また、D1~D8は、互いに異なる値である。また、それぞれのカプセル112において、匂い成分Cの比率と匂い成分Dの比率との和は100%である。
【0055】
放出装置110を用いた場合、基準時点からの経過時間に応じて容器111からカプセル112が放出される。カプセル112が放出された場合、カプセル112の放出位置でカプセル112が空気に触れて溶解し、匂い成分C、Dがカプセル112の外部に放出される。このため、匂い成分C、Dは、カプセル112の放出位置及びその近傍に存在することになる。
【0056】
したがって、検出装置20では、匂い成分C、Dの強さを検出することで、カプセル112の放出位置を検出位置として高精度に推定することができる。カプセル112の放出位置を高精度に推定することで、放出装置110が当該カプセル112の放出位置にいつ存在したかを精度よく算出することができる。また、算出結果に基づいて、放出装置110の移動経路及び存在範囲を高精度に推定できるため、放出装置110及び当該放出装置110を携えた対象者の追跡範囲をより絞ることができる。
【0057】
なお、対象者は、上記実施形態に係る放出装置10と放出装置110との両方を携えて移動してもよい。この場合、放出装置10に収容される匂い成分A、Bと、放出装置110に収容される匂い成分C、Dとを異なる種類とすることができる。また、この場合、匂い成分A、Bを検出するが匂い成分C、Dを検出しない検出装置20と、匂い成分C、Dを検出するが匂い成分A、Bを検出しない検出装置20とをそれぞれ用いてもよい。これにより、放出装置10から放出され続ける匂い成分A、Bを検出することで対象者の移動した経路を容易に検出でき、放出装置110から放出される匂い成分C、Dを検出することで対象者の移動した経路を高精度に検出できる。
【0058】
また、上記実施形態では、異なる匂い成分として、2種類の匂い成分A、B(又はC、D)の混合比率を異ならせる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、異なる匂い成分として3種類以上の匂い成分を用いてもよいし、所定時間が経過するごとに種類自体が異なる匂い成分を順に放出する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
AR1,AR4…範囲、AX…中心軸、D1,D2,D3,D4…検出位置、M…地図データ、R1~R8,11a…収容室、10,110…放出装置、11,111…容器、11b,12b…開口部、12…蓋部、13…駆動部、14,114…匂い物質、20…検出装置、21…検出部、22…位置検出部、23,31…通信部、30…分析装置、32…処理部、33…記憶部、40…表示装置、100…追跡システム、112…カプセル、113…開閉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8