(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128506
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】酵素架橋体、バイオ電極材料、バイオ電極及び電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
C12N 11/06 20060101AFI20230907BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20230907BHJP
H01M 8/16 20060101ALI20230907BHJP
H01M 4/86 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
C12N11/06
H01M4/90 Y
H01M8/16
H01M4/86 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032882
(22)【出願日】2022-03-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「医療負担軽減を目的とした体温測定を伴わない熱中症化学センシング」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻村 清也
(72)【発明者】
【氏名】大山 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】エムディ モタハー ホサイン
(72)【発明者】
【氏名】栗山 宏斗
(72)【発明者】
【氏名】長崎 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】甲田 優太
【テーマコード(参考)】
4B033
5H018
【Fターム(参考)】
4B033NA22
4B033NA23
4B033NC05
4B033ND16
4B033NE02
4B033NG10
4B033NH10
4B033NJ10
4B033NK10
5H018AA01
5H018EE16
(57)【要約】
【課題】高い電流密度を維持できる電気化学デバイスが得られる酵素架橋体、バイオ電極材料、バイオ電極及び電気化学デバイスの提供。
【解決手段】下記式(1)で表される構造を有する、酵素架橋体。式(1)中、Rは酵素を示し、R’は有機基を示し、nは2以上の数である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有する、酵素架橋体。
式(1)中、Rは酵素を示し、R’は有機基を示し、nは2以上の数である。
【請求項2】
酵素とマルチエポキシ化合物との反応生成物である、請求項1に記載の酵素架橋体。
【請求項3】
前記マルチエポキシ化合物は水溶性である、請求項2に記載の酵素架橋体。
【請求項4】
前記酵素は酸素の還元又は燃料の酸化を促進する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の酵素架橋体。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の酵素架橋体を含む、バイオ電極材料。
【請求項6】
請求項5に記載のバイオ電極材料と、導電性基材と、を含む、バイオ電極。
【請求項7】
請求項6に記載のバイオ電極を含む、電気化学デバイス。
【請求項8】
アノード及びカソードを含み、
前記アノードは共重合体と、酵素と、を含み、前記共重合体は前記酵素とアミド基を介して結合した構造を有する構成単位と、親水基を有する構成単位と、メディエータ分子を有する構成単位と、を含むバイオ電極であり、
前記カソードは請求項6に記載のバイオ電極である、電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素架橋体、バイオ電極材料、バイオ電極及び電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
酵素を電極の触媒として利用し、糖類、アルコールその他のバイオマス資源を燃料として発電するバイオ燃料電池をはじめとした電気化学デバイスの研究及び開発がなされている。
酵素の触媒作用を利用する電気化学デバイスは一般に、燃料の酸化を促進する酵素を含む負極(アノード)と、酸素の還元を促進する酵素を含む正極(カソード)と、を備えている。負極において燃料の酸化(たとえば、グルコースからグルコノラクトンへの変化)によって取り出された電子は正極に移動し、これを用いて酸素が還元されて水(H2O)が生じる。この過程で生じる電子の移動が発電などに利用される。
【0003】
酵素の触媒作用を利用する電気化学デバイスでは、電流密度を高めるために酵素の分子同士を結合(架橋)して酵素の電極からの脱離を抑制する場合がある。
例えば、非特許文献1にはグルタルアルデヒドをビリルビンオキシダーゼの架橋剤として用いた電気化学デバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G.C. Sedenho et al. Journal of Power Sources 482 (2021) 229035.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気化学デバイスの特性としては、電流密度が高いことに加え、高い電流密度を維持できることも重要である。
本発明は上記事情に鑑み、高い電流密度を維持できる電気化学デバイスが得られる酵素架橋体、バイオ電極材料、バイオ電極及び電気化学デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>下記式(1)で表される構造を有する、酵素架橋体。
式(1)中、Rは酵素を示し、R’は有機基を示し、nは2以上の数である。
<2>酵素とマルチエポキシ化合物との反応生成物である、<1>に記載の酵素架橋体。
<3>前記マルチエポキシ化合物は水溶性である、<2>に記載の酵素架橋体。
<4>前記酵素は酸素の還元又は燃料の酸化を促進する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の酵素架橋体。
<5><1>~<4>のいずれか1項に記載の酵素架橋体を含む、バイオ電極材料。
<6><5>に記載のバイオ電極材料と、導電性基材と、を含む、バイオ電極。
<7><6>に記載のバイオ電極を含む、電気化学デバイス。
<8>アノード及びカソードを含み、
前記アノードは共重合体と、酵素と、を含み、前記共重合体は前記酵素とアミド基を介して結合した構造を有する構成単位と、親水基を有する構成単位と、メディエータ分子を有する構成単位と、を含むバイオ電極であり、
前記カソードは<6>に記載のバイオ電極である、電気化学デバイス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い電流密度を維持できる電気化学デバイスが得られる酵素架橋体、バイオ電極材料、バイオ電極及び電気化学デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例で使用した測定系を分解した状態を示す図である。
【
図3】実施例で実施した電気化学測定の結果を示すグラフである。
【
図4】実施例で実施した電気化学測定の結果を示すグラフである。
【
図5】実施例で実施した電気化学測定の結果を示すグラフである。
【
図6】実施例で実施した
1HNMRスペクトルの測定結果を示す図である。
【
図7】実施例で実施したGPCの測定結果を示す図である。
【
図8】実施例で実施した電気化学測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示において(メタ)アクリル、(メタ)アクリロイル及び(メタ)アクリレートはそれぞれアクリル又はメタクリル、アクリロイル又はメタクリロイル、及びアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0010】
<酵素架橋体>
本開示の酵素架橋体は、下記式(1)で表される構造を有する酵素架橋体である。
【0011】
【化1】
式中、Rは酵素を示し、R’は有機基を示し、nは2以上の数である。
【0012】
本発明者らの検討の結果、上記酵素架橋体を電極の材料として用いた電気化学デバイスは、グルタルアルデヒドのような式(1)で表される構造を形成しない化合物で架橋させた酵素を電極の材料として用いた電気化学デバイスに比べて電流密度が上昇することがわかった。さらに、上記酵素架橋体を電極の材料として用いた電気化学デバイスは、式(1)で表される構造を形成しない化合物で架橋させた酵素を電極の材料として用いた電気化学デバイスに比べて高い電流密度が長期にわたって維持され、優れた耐久性を示すことがわかった。
【0013】
式(1)において、Rは酵素を示し、R’は有機基を示し、nは2以上の数である。
Rで表される酵素のそれぞれは、式(1)で表される構造を1個のみ有していても2個以上有していてもよい。
【0014】
式(1)において、nはR’で表される有機基が持つ酵素との結合部位の数を意味する。電流密度及びその耐久性を高める観点からは、nは3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。nの上限は特に制限されない。例えば、nは10以下であってもよく、5以下であってもよい。
【0015】
式(1)において、R’で表される有機基は、n個のエポキシ基を有する化合物の骨格部分に相当する構造であってもよい。
【0016】
酵素架橋体における式(1)で表される構造は、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を持つ化合物(以下、マルチエポキシ化合物ともいう)と、酵素の持つアミノ基(-NH2)との反応により形成される。すなわち、酵素架橋体は、酵素とマルチエポキシ化合物との反応生成物であってもよい。
【0017】
マルチエポキシ化合物の持つエポキシ基を酵素の持つアミノ基と反応させることで、式(1)で示される構造を有する酵素架橋体を得ることができる。
酵素がマルチエポキシ化合物と反応して酵素架橋体の状態になっているか否かは、例えば、酵素とマルチエポキシ化合物とを水中で混合して反応させた後に乾燥させ、再度水を加えた場合の水に対する溶解性により判断できる。反応後に水を加えた場合の水に対する溶解性が反応前の酵素の水に対する溶解性より低い場合は、酵素の少なくとも一部がマルチエポキシ化合物と反応して酵素架橋体を形成していると判断できる。
【0018】
マルチエポキシ化合物の種類は特に制限されず、マルチエポキシ化合物を用いて得られる酵素架橋体の用途等に応じて選択できる。酵素架橋体を水系媒体とともに使用する場合、マルチエポキシ化合物は水溶性であることが好ましい。
本開示において水溶性のマルチエポキシ化合物とは、25℃の純水(90質量部)にマルチエポキシ化合物(10質量部)を溶解したときの溶解率が30%以上であるマルチエポキシ化合物を意味する。
【0019】
水溶性のマルチエポキシ化合物として具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の1分子中に2個のエポキシ基を持つマルチエポキシ化合物、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等の1分子中に3個のエポキシ基を持つマルチエポキシ化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の1分子中に4個のエポキシ基を持つマルチエポキシ化合物、及びポリグリセロールポリグリシジルエーテル等の1分子中に4個以上のエポキシ基を持つマルチエポキシ化合物が挙げられる。
酵素と反応させるマルチエポキシ化合物は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0020】
電流密度向上の観点からは、マルチエポキシ化合物の中でも、ソルビトールポリグリシジルエーテル(SPGE)が好ましい。
SPGEは、4方向に分散してエポキシ基が配置された分子構造を持つ。このため、酵素がマルチエポキシ化合物で架橋された状態(1分子中の2つ以上のエポキシ基が酵素の持つアミノ基と反応した状態)が、他のマルチエポキシ化合物に比べて形成されやすい。
【0021】
マルチエポキシ化合物と反応させる酵素の種類は特に制限されず、酵素架橋体を用いる電気化学デバイスに供給する燃料の種類等に応じて選択できる。
酵素架橋体をカソードの材料として使用する場合、酵素架橋体は酸素の還元を促進する酵素を含む。
酸素の還元を促進する酵素として具体的には、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ等が挙げられる。
【0022】
酵素架橋体をアノードの材料として使用する場合、酵素架橋体は燃料の酸化を促進する酵素を含む。燃料の酸化を促進する酵素は、燃料を加水分解等により酸化可能な状態にする酵素と、酸化を促進する酵素との組み合わせであってもよい。
【0023】
燃料がグルコースである場合の酵素としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ピラノースオキシダーゼ及びセロビオースデヒドロゲナーゼが挙げられる。
燃料がフルクトースである場合の酵素としては、フルクトースオキシダーゼ及びフルクトースデヒドロゲナーゼが挙げられる。
燃料がスクロースである場合の酵素としては、インベルターゼとグルコースデヒドロゲナーゼの組み合わせが挙げられる。
燃料がデンプンである場合の酵素としてはアミラーゼとグルコースデヒドロゲナーゼの組み合わせが挙げられる。
燃料が乳酸である場合の酵素としては、乳酸オキシダーゼ及び乳酸デヒドロゲナーゼが挙げられる。
燃料がアルコールである場合の酵素としては、アルコールオキシダーゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼが挙げられる。
燃料がアルデヒドである場合の酵素としては、アルデヒドオキシダーゼ及びアルデヒドデヒドロゲナーゼが挙げられる。
燃料がピルビン酸である場合の酵素としては、ピルビン酸オキシダーゼ及びピルビン酸デヒドロゲナーゼが挙げられる。
【0024】
酵素架橋体に含まれる酵素は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0025】
酵素架橋体が酵素とマルチエポキシ化合物との反応生成物である場合、酵素と反応させるマルチエポキシ化合物の量は、特に制限されない。
例えば、酵素100質量部に対して反応させるマルチエポキシ化合物の量は1質量部~1000質量部から選択してもよく、10質量部~100質量部から選択してもよく、10質量部~50質量部から選択してもよい。
【0026】
酵素架橋体をバイオ電極の材料として用いる場合、酵素架橋体の保護、電極からの脱離抑制等のために酵素架橋体がポリマー中に組み込まれた状態であってもよい。
ポリマーの種類は特に制限されないが、酵素による燃料の酸化又は酸素の還元に伴う電子又はイオン(電解質)の移動を妨げないポリマーを用いることが好ましい。例えば、Nafion(登録商標、以下同様)等のカチオンを透過するポリマー、ポリアミン等のアニオンを透過するポリマー、ポリビニルアルコール等を用いることが好ましい。
【0027】
<バイオ電極材料>
本開示のバイオ電極材料は、上述した酵素架橋体を含むバイオ電極材料である。
本開示のバイオ電極材料を用いることで、電気化学デバイスの電流密度を高めることができる。さらに、高い電流密度を長期にわたって維持することができる。
【0028】
(その他の成分)
バイオ電極材料は、酵素架橋体以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、酵素架橋体を結着するバインダーを含んでもよい。バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、Nafion等のカチオンを透過するポリマーなどが挙げられる。
【0029】
<バイオ電極>
本開示のバイオ電極は、上述したバイオ電極材料と、導電性基材と、を含む。
バイオ電極は、上述したバイオ電極材料が導電性基材の上に配置された状態であってもよい。
【0030】
導電性基材の材質は特に制限されず、炭素材料、金属等の導電性材料から選択できる。
炭素材料としては、黒鉛、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、MgO鋳型炭素粒子、カーボンナノ材料(カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ等)等が挙げられる。炭素材料は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
バイオ電極材料に含まれる酵素が燃料又は酸素と接触する面積を増大させて発電効率を向上させる観点からは、導電性基材のバイオ電極材料が配置される部位が粒子状の導電性材料を含むことが好ましい。粒子状の導電性材料としては、例えば、MgO鋳型炭素等の鋳型法により作製される多孔質の炭素粒子が挙げられる。
【0032】
バイオ電極の形態は、特に制限されない。例えば、バイオ電極はガス拡散電極であってもよい。
ガス拡散電極は、強い疎水性を有するガス拡散層が組み込まれ、大気中から酸素を受け取り、電解液からプロトンを受け取り、電極表面から供給される電子を触媒が受け取り、電極表面において酸素還元反応を行うことができる、三相構造をもつ電極である。
ガス拡散電極は一般に、ガス、電解液及び触媒が同時に接触する三相界面が多数形成されるように、構造体である多孔性基材と触媒とから構成されている。
【0033】
導電性材料は全体が導電性を有していても、一部が導電性を有していてもよい。
バイオ電極は、導電性基材を支持するための支持体等を含んでもよい。
【0034】
<電気化学デバイス>
本開示の電気化学デバイスは、上述したバイオ電極を含む。電気化学デバイスは、上述したバイオ電極をアノードとして含んでいても、カソードとして含んでいても、アノード及びカソードの両方として含んでいてもよい。
電気化学デバイスの例として具体的には、バイオ燃料電池、バイオリアクター、バイオセンサー等が挙げられる。
【0035】
以下、電気化学デバイスの一例としてバイオ燃料電池の構成について説明する。
バイオ燃料電池は、カソード及びアノードを少なくとも備えている。
バイオ燃料電池に燃料を供給すると、アノードにおいて燃料の酸化により生じた電子はカソードに移動し、カソードにおける酸素の還元に用いられる。この過程で生じる電子の移動が発電に利用される。
【0036】
バイオ燃料電池に使用される燃料は、アノードに含まれる酵素によって酸化が促進される物質であればその種類は特に制限されない。燃料として具体的には、糖類、アルコール類、アルデヒド類、アミノ酸類、アミン類、乳酸、ピルビン酸、尿酸、水素等が挙げられる。
【0037】
バイオ燃料電池に使用される燃料は、1種のみでも2種以上であってもよい。燃料は、そのままの状態でアノードに含まれる酵素によって酸化可能なものであっても、加水分解等により酸化可能な状態になるもの(たとえば、加水分解によりグルコースになるデンプン)であってもよい。
【0038】
本開示の電気化学デバイスは、上述した本開示のバイオ電極をカソードとして含み、後述するバイオ電極をアノードとして含むものであってもよい。
すなわち、本開示の電気化学デバイスの一実施形態はアノード及びカソードを含み、
前記アノードは共重合体と、酵素と、を含み、前記共重合体は前記酵素とアミド基を介して結合した構造を有する構成単位と、親水基を有する構成単位と、メディエータ分子を有する構成単位と、を含むバイオ電極であり、
前記カソードは上述した本開示のバイオ電極である、電気化学デバイスである。
【0039】
(共重合体)
アノードに含まれる共重合体は、酵素とアミド基を介して結合した構造を有する構成単位と、親水基を有する構成単位と、メディエータ分子を有する構成単位と、を含む。
【0040】
上記共重合体をアノードの材料として用いた電気化学デバイスは、共重合体と結合していないメディエータ分子をアノードの材料として用いた電気化学デバイスに比べて電流密度が大幅に上昇する。これは、共重合体とアミド基を介して結合することで酵素の近傍に固定された状態のメディエータ分子が電極と酵素との間の電子移動を効率よく媒介するためと考えられる。
【0041】
さらに、上記共重合体は親水基を有する構成単位を含む。この親水基によって共重合体の酵素に対する親和性が高められ、共重合体に含まれるメディエータ分子が電極と酵素との間の電子移動を効率よく媒介すると考えられる。
【0042】
(第1級アミンと反応してアミド基を形成する官能基)
共重合体の酵素とアミド基を介して結合した構造を有する構成単位は、例えば、第1級アミンと反応してアミド基を形成する官能基を有する構成単位を含む共重合体を酵素が持つ第1級アミン(-NH2)と反応させて形成することができる。
共重合体に含まれる第1級アミンと反応してアミド基を形成する官能基の種類は、特に制限されない。
第1級アミンとの反応性の観点からは、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)エステル基が好ましい。HNSエステル基と第1級アミノ基との反応では、アミド結合が形成されるとともにN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)が遊離する。
共重合体に含まれる第1級アミンと反応してアミド基を形成する官能基は1種のみでも2種以上であってもよい。
【0043】
(親水基)
共重合体に含まれる親水基の種類は、特に制限されない。
親水基は、窒素原子を含んでいてもよい。例えば、酵素の表面がカルボキシ基等によって負に帯電している場合には、窒素原子を含む親水基との静電相互作用によって共重合体の酵素に対する親和性をより高めることができる。
窒素原子を含む親水基として第2級アミノ基、第3級アミノ基、アンモニウム基等が挙げられ、これらの中でも第3級アミノ基及びアンモニウム基が好ましく、ジメチルアミノ基及びアンモニウム基がより好ましい。
親水基は、アニオン性の親水基であってもよい。例えば、酵素の表面がアミノ基等によって正に帯電している場合には、アニオン性基である親水基との静電相互作用によって共重合体の酵素に対する親和性をより高めることができる。
アニオン性の親水基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
共重合体に含まれる親水基は1種のみでも2種以上であってもよい。共重合体に含まれる親水基は、塩を形成していてもよい。
【0044】
(メディエータ分子)
共重合体に含まれるメディエータ分子は、酵素と電極との間の電子伝達を媒介するものであれば特に制限されない。
メディエータ分子として具体的には、AzureA(3-アミノ-7-(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム・クロリド)、チオニン(3,7-ジアミノフェノチアジン)、トルイジンブルー(3-アミノ-2-メチル-7-(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム・クロリド)、アミノフェロセン、ニュートラルレッド、アミノアントラキノン、アミノナフトキノン、アミノベンゾキノン、アミノ基を有するリガンド(アミノピリジン、ジアミノビピリジン等)を配位子とし、鉄、オスミウム、ルテニウム、ニッケル、銅等の遷移金属を中心金属とする金属錯体などが挙げられる。
【0045】
共重合体の合成しやすさの観点からは、メディエータ分子は第1級アミノ基を有するものであることが好ましい。メディエータ分子が第1級アミノ基を有していると、共重合体に含まれる第1級アミンとアミド基を形成する官能基と反応させることでメディエータ分子を共重合体に導入することができる。すなわち、共重合体に含まれるメディエータ分子は、アミド基を介して主鎖に結合していてもよい。
共重合体に含まれるメディエータ分子は1種のみでも2種以上であってもよい。
【0046】
共重合体における第1級アミンと反応してアミド基を形成する官能基を有する構成単位が全構成単位に占める割合は、特に制限されない。
例えば、共重合体における第1級アミンと反応してアミド基を形成する官能基を有する構成単位が全構成単位に占める割合は1モル%~90モル%の範囲から選択してもよく、2モル%~50モル%の範囲から選択してもよく、3モル%~10モル%の範囲から選択してもよい。
【0047】
共重合体におけるメディエータ分子を有する構成単位が全構成単位に占める割合は、特に制限されない。
例えば、共重合体におけるメディエータ分子を有する構成単位が全構成単位に占める割合は1モル%~20モル%の範囲から選択してもよく、2モル%~10モル%の範囲から選択してもよく、3モル%~5モル%の範囲から選択してもよい。
【0048】
共重合体における親水基を有する構成単位が全構成単位に占める割合は、特に制限されない。
例えば、共重合体における親水基を有する構成単位が全構成単位に占める割合は60モル%~98モル%の範囲から選択してもよく、70モル%~95モル%の範囲から選択してもよく、80モル%~90モル%の範囲から選択してもよい。
【0049】
必要に応じ、共重合体は、酵素とアミド基を介して結合した構造を有する構成単位、親水基を有する構成単位、及びメディエータ分子を有する構成単位以外の構成単位をさらに含んでもよい。例えば、アルキル基、アリール基、アルキレンオキシ基等の置換基を含む構成単位を含んでもよい。
共重合体が酵素とアミド基を介して結合した構造を有する構成単位、親水基を有する構成単位、及びメディエータ分子を有する構成単位以外の構成単位を含む場合、その割合は全構成単位の15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
共重合体の分子量は、特に制限されない。例えば、共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量は10,000~500,000の範囲内であってもよい。また、共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される数平均分子量は1,000~200,000の範囲内であってもよい。
【0051】
共重合体は、ポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0052】
(共重合体の合成方法)
共重合体の合成方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。
共重合体は、1段階の反応で合成しても、2段階以上の反応で合成してもよい。
1段階の反応で共重合体を合成する方法としては、第1級アミノ基と反応してアミド基を形成する官能基と重合性基とを含む重合性化合物と、親水基と重合性基とを含む重合性化合物と、メディエータ分子と重合性基とを含む重合性化合物と、を反応させる方法が挙げられる。
【0053】
2段階の反応で共重合体を合成する方法としては、第1級アミノ基と反応してアミド基を形成する官能基と重合性基とを含む重合性化合物と、親水基と重合性基とを含む重合性化合物と、を反応させてベースポリマーを合成し、次いで、ベースポリマー中の第1級アミノ基と反応してアミド基を形成する官能基と、第1級アミノ基を含むメディエータ分子と、を反応させる方法が挙げられる。この際、第1級アミノ基と反応してアミド基を形成する官能基の一部をメディエータ分子と反応させることで、未反応の官能基を酵素との結合に用いることができる。
【0054】
共重合体を含むアノードに含まれる酵素及びその他の成分は特に制限されず、上述したバイオ電極に含まれる成分から選択してもよい。
【実施例0055】
以下、実施例に基づき本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
(1)組成物の調製
ビリルビンオキシダーゼ(BOD)の0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)溶液と、Nafion117の0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)溶液と、架橋剤(CL)の0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)溶液を、BOD、CL及びNafionの量(固形分)が表1の組み合わせとなるように混合して、組成物を調製した。
【0057】
架橋剤としては、酵素のアミノ基と反応する官能基としてエポキシ基を有するソルビトールポリグリシジルエーテル(SPGE)、酵素のアミノ基と反応する官能基としてアルデヒド基を有するグルタルアルデヒド(GA)、酵素のアミノ基と反応する官能基としてNHSエステル基を有するビス(NHS)PEG5及びビス(NHS)PEG9をそれぞれ使用した。
【0058】
【0059】
(2)ガス拡散電極の作製
カーボンクロスの片面に、40%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液を均一にコーティングし、室温で30分乾燥させた。その後、370℃のオーブンで15分加熱し、室温にて冷却した。次いで、乾燥させたPTFE層の上にさらに40%PTFE分散液を均一にコーティングし、30分乾燥させた。その後、370℃のオーブンで15分加熱し、室温で冷却した。この撥水加工により、カーボンクロス上にPTFEからなるガス拡散層を形成した。
MgO鋳型炭素粒子(平均細孔径:100nm)と、バインダーとしてのPTFEと、溶媒としてのイソプロパノールを混合して、混合物を得た。この混合物(MgOCインク)を、ガス拡散カーボンクロスの撥水加工面の反対面の全体に均一に塗布し、60℃で16時間乾燥させて、多孔質の炭素粒子を含むMgOC層と、カーボンクロスと、ガス拡散層とがこの順に積層されたガス拡散電極を作製した。
作製したガス拡散電極のMgOC層に、(1)で調製した組成物を塗布し、4℃で一晩乾燥させてBODとSPGEとを反応させて酵素架橋体を形成し、電気化学測定用のガス拡散電極のサンプルを作製した。
【0060】
比較のため、BOD(3.0mg)のみを含む組成物(BOD only)と、BOD(3.0mg)とNafion(0.5mg)のみを含む組成物(BOD+Nafion)をそれぞれガス拡散電極のMgOC層に塗布し、4℃で一晩乾燥させて電気化学測定用のガス拡散電極のサンプルを作製した。
【0061】
(3)電気化学測定
対極としてのPt電極と、参照極としてのAg/AgCl電極と、リン酸バッファー(1M、pH7.0)を用いて、作製したガス拡散電極の電気化学測定を行った。
電気化学測定は、
図1及び
図2に示す構成の測定系を用いたクロノアンペロメトリー測定(CA)を0.2V、300秒の条件で実施し、測定開始から250秒経過したときの電流密度値を測定した。結果を
図3に示す。
【0062】
図1に電気化学測定で使用した測定系を分解した状態を示し、
図2に測定系の断面図を示す。
図1に示すように、ガス拡散電極のサンプル1は、集電体としてのチタンメッシュシート2とシリコーンゴム製のスペーサ3とともに、ブロックA及びブロックBに挟まれた状態である。
【0063】
図2に示すように、ブロックAは中央に通気孔4を有している。サンプル1は、PTFE層が通気口4と対向するように配置されている。
ブロックBは、対極5と参照極6を配置するための空間7を有している。空間7をリン酸バッファーで満たした状態で、電気化学測定が行われる。
【0064】
図3に示すように、SPGEを用いた酵素架橋体を含むサンプルは、他のサンプルに比べて高い電流密度を示した。
【0065】
(4)長期連続測定実験
BODの0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)溶液と、Nafion117の0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)溶液と、架橋剤(SPGE又はGA)の0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)溶液を、BODが3.0mg、架橋剤が0.5mg、Nafionが0.5mg(いずれも固形分)となるように混合して組成物を調製し、(2)と同様にして電気化学測定用のガス拡散電極のサンプルを作製した。
【0066】
作製したサンプルに対し、上記(3)と同じ測定系を用いて、ポテンショスタットを用いて0.2Vにおける電流密度を測定した。測定は3日間連続して実施した。結果を
図4に示す。
【0067】
図4に示すように、SPGEを用いた酵素架橋体を含むサンプルは、GAを用いた酵素架橋体を含むサンプルに比べて高い電流密度を示し、かつ、高い電流密度が長期間にわたって維持されていた。
【0068】
(5)電気化学測定(グルコースデヒドロゲナーゼを使用)
グルコースデヒドロゲナーゼのリン酸バッファー溶液(25mg/mL)と、架橋剤のリン酸バッファー溶液(12.5mg/mL)を、それぞれの量を7μLと8μLとして混合して電極形成用の組成物を調製した。この組成物(2μL)をグラッシーカーボンディスク電極(3mm直径)の端部に載せて、30時間、26℃で30時間乾燥させて、酵素架橋体を含む層を形成した。
架橋剤としては、マルチエポキシ化合物としてのSPGEと、比較用の架橋剤としてのGA及びビス(NHS)PEG5を用いた。
得られた電極をリン酸バッファー(pH7.0)で洗浄し、0.1Mのグルコースを含むリン酸バッファーと、0.1mMの1,4-ナフトキノンを含むリン酸バッファーとを用いて、サイクリックボルタンメトリーによる電気化学測定を行った。測定ではPt電極を対極、Ag/AgCl電極を参照電極として用いた。溶液の温度は25℃とし、掃引速度は10mVs
-1とし、測定範囲は-0.4Vから0.5Vとした。結果を
図5に示す。
【0069】
<アノード用電極材料>
(1)ベースポリマーの合成
下記の反応スキームに従って、ベースポリマーを合成した。
【化1】
【0070】
トルエン8.56mLにメタクリル酸N-スクシンイミジル(以下、NHSMA)187.3mg(50mM)と、テトラリン(内部標準)0.2mLと、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(以下、DMAEMA)1.55mL(450mM)を入れて、窒素バブリングを5分間行った。その後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)のトルエン溶液(100mM)を10.22mL加え(最終濃度は50mM)、撹拌しながら65℃で6時間反応させた。その後、容器を液体窒素に少し接触させて反応を停止させた。
得られた反応液を、アセトンに対しての透析(分画分子量3500)を24時間行った。その後、水に対しての透析を24時間行った。透析後の反応液を回収し、凍結乾燥によってポリマーを取り出した。
【0071】
図6は反応前後での
1HNMRスペクトルを示している(上側が反応前、下側が反応後)。測定装置としてBruker社のAVANCE―600 NMR Spectrometerを使用し、測定溶媒としてCDCl
3を使用した。
図6に示すように、反応によってモノマーが消費され、ポリマーを表す新たなピークが出現していた。ピークの積分値よりモノマー消費量を求めたところ、精製したポリマーの構造比率はNHSMA部位が10.1モル%、DMAEMA部位が89.9モル%であった。
得られたポリマーの分子量をGPCによって測定した。装置としては日本分光株式会社のUV-4075(UV/VisDetector)、AS-4050(HPLC Autosampler)及びPU-4180(RHPLC Pump)、フィルターとしては東ソー株式会社のTSKgel α-M 7.8mm I.D.×30cm、溶媒としてはLiBr(10mM)を含むDMFを使用し、測定時間は50分とし、注入量は20μLとし、流速は0.6mL/minとした。
GPCの結果、ポリマーのMnが5574、Mwが20797、Mw/Mnが3.7309であった。
【0072】
(2)メディエータ分子の導入
下記の反応スキームに従って、ベースポリマーにメディエータ分子(AzureA)を導入した。
【化2】
【0073】
蒸留水にポリマー(10mg/mL)とAzureA(1.72mg/mL)を溶解し、撹拌しながら室温で24時間反応させた。
AzureAの濃度は、ベースポリマー内のNHSMA部位の一部がAzureAのアミン部位と反応し、残りのNHSMA部位が未反応の状態で残存するように定めた。
【0074】
図7に反応後のGPCの結果を示す。測定装置として上記と同じ装置を使用し、溶媒としてLiBr(10mM)を含むDMFを使用し、測定時間は50分とし、注入量は20μLとし、流速は0.6mL/minとし、UV-Vis測定波長は600nm(AzureAの吸収波長)とした。
図7に示すように、高分子量側に600nmでの吸光が見られ、ベースポリマーにAzureAが結合していることがわかった。
【0075】
(3)電極の作製
フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(50,000Unit)(FAD-GDH)の水溶液20μLと、PEGDGEの水溶液(10.0mg/mL)5μLと、Bis-AEEの水溶液(3.0mg/mL)5μLを混合して混合液を得た。この混合液14μLを、AzureAを導入したポリマーの溶液10μLと混合した。
【0076】
得られた混合液を、あらかじめ10分間のプラズマ処理(親水化処理)を施したグラッシーカーボンディスク電極(直径3.0mm、BAS)の端部に2.4μL滴下した。滴下は1.2μLずつ2回に分けて行った。滴下後、室温で一晩乾燥させた。このようにして作製した電極をサンプルAとした。
【0077】
比較のため、AzureAを導入したポリマーの溶液の代わりに同量(1.72mg/mL)のAzureAの水溶液を用いたこと以外はサンプルAと同様にして電極を作製した。このようにして作製した電極をサンプルBとした。
【0078】
(4)電気化学測定
作製した電極を用いてサイクリックボルタンメトリーによる電気化学測定を実施した。
測定溶液として0.5Mのグルコースを含む0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)を使用し、作用極としてサンプルA又はサンプルBの電極、対極としてPt電極、参照極としてAg/AgCl電極を使用した。測定装置としてはPalmsens社のMultiEmStatを使用し、測定範囲は-0.6~0.4V vs.Ag/AgClとし、掃引速度は10mV/sとした。
【0079】
電気化学測定の2サイクル目の結果を
図8に示す。ポリマーに結合したAzureAを含むサンプルAは、ポリマーに結合していないAzureAを含むサンプルBと比較して、10倍ほど高い電流密度を示した。
電気化学測定を4回実施したときの電位0.1Vにおける電流密度の平均値はサンプルAが258μA/cm
2であり、サンプルBの19μA/cm
2よりも大きかった。