(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128510
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】フランジ離間防止装置
(51)【国際特許分類】
F16L 23/036 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
F16L23/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032886
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】武田 悟
【テーマコード(参考)】
3H016
【Fターム(参考)】
3H016AB05
3H016AB07
3H016AC05
(57)【要約】
【課題】一対のフランジから挟持体が逸脱することでフランジ同士が離間することを防止できるフランジ離間防止装置を提供すること。
【解決手段】対向した一対のフランジ3A,3Bを挟持して該一対のフランジ3A,3Bが離間することを防止するフランジ離間防止装置10は、基部11a及び該基部11aの両側に立設される第1壁部11b、第2壁部11cを有し、基部11aの内面が一対のフランジ3A,3Bの外周面に対向するように該一対のフランジ3A,3Bの周方向に配置され、該一対のフランジ3A,3Bを挟持する複数の20と、複数の挟持体20の基部11aの外面11m側に周方向に掛け渡され、該複数の挟持体20を径方向の内側に押圧するように保持する環状の保持体30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向した一対のフランジを挟持して該一対のフランジが離間することを防止するフランジ離間防止装置であって、
基部及び該基部の両側に立設される壁部を有し、前記基部の内面が前記一対のフランジの外周面に対向するように該一対のフランジの周方向に配置され、該一対のフランジを挟持する複数の挟持体と、
前記複数の挟持体の前記基部の外面側に周方向に掛け渡され、該複数の挟持体を径方向の内側に押圧するように保持する環状の保持体と、
を備えることを特徴とするフランジ離間防止装置。
【請求項2】
前記基部の外面は、前記保持体を管軸方向に滑らせるための管軸方向滑り部を有することを特徴とする請求項1に記載のフランジ離間防止装置。
【請求項3】
前記基部の外面は、前記保持体を周方向に滑らせるための周方向滑り部を有することを特徴とする請求項1に記載のフランジ離間防止装置。
【請求項4】
前記保持体の内面は、管軸方向に向けて平坦状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフランジ離間防止装置。
【請求項5】
前記保持体は、管軸方向に所定寸法を有する帯状部材からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のフランジ離間防止装置。
【請求項6】
前記複数の挟持体は、前記基部の径方向の寸法が同一であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のフランジ離間防止装置。
【請求項7】
前記保持体は、前記一対のフランジの対向面間に形成された隙間が外方に向けて開放状態となる位置で、前記基部の外面側に周方向に掛け渡されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のフランジ離間防止装置。
【請求項8】
前記保持体は、前記一対のフランジの対向面間に形成された隙間に対し、径方向と管軸方向とのうち少なくとも一方向に離間した位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のフランジ離間防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向した一対のフランジの離間を防止するフランジ離間防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フランジ離間防止装置として、基部及び該基部の両側に立設される壁部を有し、該基部の内面が一対のフランジの外周面に対向するように該一対のフランジの周方向に配置される複数の挟持体と、両壁部のうち一方の壁部の内側に配置される挟持片を押圧可能な回動部材と、を備え、各挟持体の挟持片を回動部材により押圧して一対のフランジを流体管の管軸方向に挟持することによりフランジ同士が離間することを防止しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許登録第6591738号公報(第5頁、
図3-
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のフランジ離間防止装置にあっては、互いに対向する一対のフランジ間に配置されるシール部材の弾性力が経年劣化等により低下したり、回動部材の緩みにより挟持片による挟持力が低下すると、挟持体がフランジから脱落してフランジ同士の離間を防止できなくなる虞があるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、一対のフランジから挟持体が逸脱することでフランジ同士が離間することを防止できるフランジ離間防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のフランジ離間防止装置は、
対向した一対のフランジを挟持して該一対のフランジが離間することを防止するフランジ離間防止装置であって、
基部及び該基部の両側に立設される壁部を有し、前記基部の内面が前記一対のフランジの外周面に対向するように該一対のフランジの周方向に配置され、該一対のフランジを挟持する複数の挟持体と、
前記複数の挟持体の前記基部の外面側に周方向に掛け渡され、該複数の挟持体を径方向の内側に押圧するように保持する環状の保持体と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、環状の保持体が、複数の挟持体における基部の外面側に周方向に掛け渡され、各挟持体が径方向の内側に向けて押圧されることで、保持体の周方向の長さを保持するだけで、一対のフランジから挟持体が逸脱してフランジ同士が離間することを防止できる。
【0007】
前記基部の外面は、前記保持体を管軸方向に滑らせるための管軸方向滑り部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、挟持体を径方向の内側へ押圧する力を少し緩めるだけで、保持体を管軸方向に滑らせることができるので、保持体の管軸方向の取付け位置の調整を容易に行うことができる。
【0008】
前記基部の外面は、前記保持体を周方向に滑らせるための周方向滑り部を有することを特徴としている。
この特徴によれば、挟持体を径方向の内側へ押圧する力を少し緩めるだけで、保持体を周方向に滑らせることができるので、保持体の周方向の取付け位置の調整を容易に行うことができる。また、保持体が周方向に滑りやすくなるので緊締しやすくなる。
【0009】
前記保持体の内面は、管軸方向に向けて平坦状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、保持体を緊締するときに挟持体の外面を傷つけにくくなる。
【0010】
前記保持体は、管軸方向に所定幅を有する帯状部材からなることを特徴としている。
この特徴によれば、挟持体の外面が帯状部材により管軸方向にわたり均等に押圧されることで、保持体による径方向の内側への押圧力が一方の壁部側に偏って付与されて挟持体が脱落することを防止できる。
【0011】
前記複数の挟持体は、前記基部の径方向の寸法が同一であることを特徴としている。
この特徴によれば、管軸から各挟持体の基部の外面までの径寸法が全て同じになるため、保持体により各挟持体を均等な力で径方向の内側に押圧することができる。
【0012】
前記保持体は、前記一対のフランジの対向面間に形成された隙間が外方に向けて開放状態となる位置で、前記基部の外面側に周方向に掛け渡されることを特徴としている。
この特徴によれば、隙間に対し離れた位置に保持体が配置されることで、挟持体以外の部分が外方に向けて開放されるため、保持体が隙間に入り込んで隙間を押し拡げてしまったり、隙間を確認する際に保持体が邪魔になることが防止される。
【0013】
前記保持体は、前記一対のフランジの対向面間に形成された隙間に対し、径方向と管軸方向とのうち少なくとも一方向に離間した位置に配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、隙間に対し径方向と管軸方向とのうち少なくとも一方向に離れた位置に保持体が配置されることで、挟持体以外の部分が外方に向けて開放されるため、径方向の内側へ押圧された保持体が隙間に入り込んで隙間を押し拡げてしまったり、隙間を目視確認する際に保持体が邪魔になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は実施例1に係るフランジ離間防止装置を示す正面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図2】(a)は
図1のB-B端面図、(b)は
図1のC-C端面図である。
【
図4】(a)は保持体を示す正面図、(b)は(a)のD-D断面図である。
【
図5】(a)、(b)はスペーサ部材を示す図、(c)、(d)はスペーサ部材の使用状態を示す図である。
【
図6】(a)、(b)はフランジ離間防止装置の取付け状況を示す図である。
【
図7】(a)、(b)はフランジ離間防止装置の取付け状況を示す図である。
【
図8】(a)はフランジ離間防止装置がフランジ継手部に取付けられた状態を示す図、(b)は(a)の要部拡大一部断面図である。
【
図9】(a)はフランジ離間防止装置がフランジ継手部に取付けられた状態を示す図、(b)は斜視図である。
【
図10】(a)、(b)はトルク管理タイプのフランジ継手部の要部拡大断面図である。
【
図11】(a)、(b)はメタルタッチ管理のフランジ離間防止装置のフランジ継手部の要部拡大断面図である。
【
図12】(a)は実施例2に係るフランジ離間防止装置の保持体を示す図、(b)はフランジ離間防止装置を示す正面図、(c)は(b)のE-E断面図である。
【
図13】(a)、(b)はフランジ離間防止装置の取付け状況を示す図である。
【
図14】(a)、(b)はフランジ離間防止装置の取付け状況を示す図である。
【
図15】(a)は変形例1に係るフランジ離間防止装置を示す正面図、(b)は(a)のF-F断面図である。
【
図17】(a)~(e)は本発明の変形例2を示す図である。
【
図18】(a)~(c)は本発明の変形例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るフランジ離間防止装置を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。尚、以下の説明において、
図1(a)の紙面手前側をフランジ離間防止装置の正面側として説明する。
【実施例0016】
図1及び
図2に示されるように、流体を上流側から下流側に輸送する既設の流体管1A,1B各々の一端には、各々を接続するための円環状のフランジ3A,3Bが径方向の外側に突出して形成されており、これら対向したフランジ3A,3Bの周方向に形成された管軸方向を向く複数の接続孔3cにボルトを挿通してナットを取付け、これら各ボルト・ナット7を締付け固定することでフランジ3A,3B同士が接続されている。尚、本実施例では、流体管1A,1B内の流体は上水であるが、上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水などの液体の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0017】
流体管1A,1Bは、ダクタイル鋳鉄製であって、断面視略円筒形状に形成され、内周面がエポキシ樹脂層(図示略)で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層に限らず、例えばモルタル等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0018】
図2(a)に示されるように、フランジ3A,3Bと、該フランジ3A,3Bを管軸方向に接続するボルト・ナット7と、から構成されるフランジ継手部3において、フランジ3A,3Bの対向面は、内側対向面4A,4Bと、内側対向面4A,4Bよりも径方向外側に配置される外側対向面5A,5Bと、から構成され、内側対向面4A,4Bは、外側対向面5A,5Bよりも管軸方向に向けて突設されている。内側対向面4Bには、管軸を中心とする円環状の凹溝6が形成されており、該凹溝6には、弾性変形可能な環状のシール部材8(GF形ガスケット2号とも呼ばれる)が嵌入されている。シール部材8の一部は内側対向面4Bから膨出しているため、内側対向面4Aと内側対向面4Bとがシール部材8を挟んで管軸方向に近接するようにボルト・ナット7を締付けることで、シール部材8が押し潰されて内側対向面4Aと内側対向面4Bとに密着され、フランジ3A,3Bが密封状に接続される。
【0019】
フランジ3A,3Bが密封状に接続された状態において、内側対向面4Aと内側対向面4Bとの間には隙間S1が形成されるとともに、外側対向面5Aと外側対向面5Bとの間には隙間S2が形成される。内側対向面4Aと内側対向面4Bとの離間寸法L1は、外側対向面5Aと外側対向面5Bとの離間寸法L2よりも小さい(L1<L2)。
【0020】
つまり、本実施例のフランジ継手部3は、内側対向面4Aと内側対向面4Bとの間に隙間S1が形成されるように接続され、内側対向面4Aと内側対向面4Bとの離間寸法L1が標準間隔(例えば、下限3.5mm、上限4.5mmなど)に維持されるように、後述するスペーサ部材40等を用いてボルト・ナット7により締付け固定することで密封状態を管理する隙間管理タイプの継手部とされている。尚、本実施例では、フランジ3A,3Bの呼び径が75~900mmであることから、離間寸法L1の標準間隔として下限3.5mm、上限4.5mmを適用した形態を例示したが、フランジ3A,3Bの呼び径が1000~1500mmの場合の標準間隔は下限4.5mm、上限6.0mm、フランジ3A,3Bの呼び径が1600~2400mmの場合の標準間隔は下限6.0mm、上限8.0mm、フランジ3A,3Bの呼び径が2600mmの場合の標準間隔は下限7.5mm、上限9.5mmのように、フランジの呼び径の大きさに応じて標準間隔の下限及び上限の値は異なってもよい。
【0021】
(フランジ離間防止装置10)
また、
図1及び
図2に示されるように、流体管1A,1Bは、露出配管または地中に埋設される管網を構成する配管の一部であり、地震などによる外力又は経年変化によりフランジ3A,3B間が離間したり、シール部材8が劣化したりすることにより密封性が低下する場合がある。そこで、フランジ3A,3B間の密封性の低下を防止するため、フランジ3A,3Bにはフランジ離間防止装置10が設けられている。フランジ離間防止装置10は、
図1~
図4に示されるように、後述する基部11a及び該基部11aの両側に立設される第1壁部11b、第2壁部11cを有し、基部11aの内面11dが一対のフランジ3A,3Bの外周面に対向するように該一対のフランジ3A,3Bの周方向に配置され、該一対のフランジ3A,3Bを挟持する複数の挟持体20と、複数の挟持体20の基部11aの外面側に周方向に掛け渡され、該複数の挟持体20を径方向の内側に押圧するように保持する環状の保持体30と、を備えている。
【0022】
(挟持体20)
次に、挟持体20について、
図1~
図3に基づいて説明する。
図1~
図3に示されるように、挟持体20は、一対のフランジ3A,3Bにおいて周方向に隣接するボルト・ナット7、7同士の間に取付けられている。各挟持体20は、挟持部材11、方向変換部材としての挟持片12、回動部材14、進退部材15、進退移動規制手段としての係止部16より主に構成される。
【0023】
図2(b)及び
図3に示されるように、挟持部材11は、一対のフランジ3A,3Bの外周面に対向する内面11dを有する基部11aと、該基部11aの両端に立設される第1壁部11b、第2壁部11cからなる側面視略コ字状の部材である。基部11aの一端側及び第1壁部11bは、後述する回動部材14と、該回動部材14の回動により進退を伴う進退部材15、進退部材15の進退方向と異なる方向に変位を生成する方向変換部材としての挟持片12を有する。第2壁部11cの内壁には、内面11dに連なりフランジの管軸方向端面を押圧するフランジ押圧面11fが形成されている。
【0024】
また、基部11aの外面側には、外面11mと、外面11mに対し径方向の外側に隆起する隆起部11nと、が形成されている。隆起部11nは、基部11aにおける第1壁部11b側に形成されている。また、外面11mは、管軸方向を向く縁辺11r,11rと周方向を向く縁辺11s,11tとにより長方形状をなす平坦面にて形成され、縁辺11r,11rには径方向の内側に向けて傾斜する傾斜面11pが隣接して形成され、縁辺11sには径方向の内側に向けて傾斜する傾斜面11qが隣接して形成され、縁辺11tには径方向の外側に向けて傾斜する傾斜面11uが隣接して形成されている。また、外面11m(縁辺11r,11r)の管軸方向の長さ寸法L5は、分割部材31の所定幅寸法L4よりも長寸とされている(L5>L4)。
【0025】
方向変換部材としての挟持片12は、フランジの管軸方向の端面を押圧するフランジ押圧面12a、進退部材15の進退方向に対し傾斜する傾斜受圧面12b、第1壁部11bに形成された壁部傾斜面11eに当接する当接傾斜面12eを有する側面視略台形状の部材である。
【0026】
挟持片12は、該挟持片12に形成された溝12fと、挟持部材11の内面に形成された溝部11kと、の間に設けられた弾性体17の反発力によって第1壁部11bに保持されている。このように挟持片12は弾性体17によって保持されることで、挟持片12に曲げ力が加わったときであっても、弾性体17が変形して挟持片12は追従するので、フランジ3A,3Bに無理な力が加わることなく、フランジ3A,3Bの傷付きを防ぐことができる。
【0027】
回動部材14は、雄ネジ部14a、係止凹部14b、回動部材頭部14cを有するボルトにて構成されている。また、進退部材15は、内周面に雌ネジ部15aを有する筒状部材で、回動部材14の雄ネジ部14aと進退部材15の雌ネジ部15aとが螺合した状態で挟持部材11に形成された孔11jに挿入されている。
【0028】
挟持部材11は、回動部材14の軸周りの回動による軸方向への進退移動を規制する進退移動規制手段としての係止部16を備え、回動部材14の係止凹部14bに係止されることによって回動部材14の進退移動を規制している。進退移動規制手段としての係止部16を設けることによって、回動部材14を回動させても回動部材14は軸方向に進退移動することがないので、回動部材14の回動方向の動きを効率よく進退部材15に伝達することができ、延いては進退部材15を効率良く進退させることができる。進退部材15は、回動部材14の軸方向に移動可能に設けられ、回動部材14に対する供回りを防止するための供回り防止機構(図示略)と、挟持片12に対する供回りを防止するための供回り防止機構(図示略)とを備えている。
【0029】
ここで、挟持体20の動作について説明する。図示しない工具等を用いて回動部材頭部14cを回動すると、回動部材14の雄ネジ部14aに螺合する進退部材15が進退する。回動部材14は挟持部材11に対する進退移動が規制されるとともに、進退部材15は回動部材14と供回りしないようになっているので、回動部材14の回動方向の動きは進退部材15に伝達され、進退部材15は効率よく進退する。挟持片12は、進退部材15の進退部材傾斜面15bにより押圧される傾斜受圧面12bと、壁部傾斜面11eに当接する当接傾斜面12eとから押圧されるので、進退部材15の押圧方向(
図2(b)中白矢印方向)と異なる方向(
図2(b)中黒矢印方向)の変位が効率よく生成され、フランジ押圧面12aは、進退部材15の押圧方向に対し交差する方向に変位する。
【0030】
また、回動部材14の回動力は、挟持片12の傾斜受圧面12b及び壁部傾斜面11eに当接する当接傾斜面12eの楔効果で増幅され、挟持片12のフランジ押圧面12aと挟持部材11のフランジ押圧面11fとの間で一対のフランジ3A,3Bを強力に挟持して、一対のフランジが離間することを防止することができる。
【0031】
(保持体30)
次に、保持体30について、
図1及び
図4に基づいて説明する。
図1及び
図4に示されるように、保持体30は、所定幅寸法L4を有する帯板状の金属部材からなる複数の分割部材31と、各分割部材31の端部同士を連結するボルト・ナットからなる連結部材32と、から構成される。各分割部材31は円弧状に形成され、周方向の端部には、連結部材32を挿通可能な挿通孔33aを有する連結片33が、径方向の外側に屈曲して形成されている。
【0032】
各分割部材31には、後述するスペーサ部材40を挿通可能に径方向に貫通した貫通孔34が周方向に向けて延設されている。また、貫通孔34の周方向の長さは、フランジ3A,3Bの周方向に取付けられる所定数(本実施例では3つ)のボルト・ナット7に対応する長さとされている。
【0033】
このように構成された分割部材31は、一の分割部材31の一端側の連結片33の挿通孔33aに挿入したボルトを、他の分割部材31の他端側の連結片33の挿通孔33aに挿入し、突出したボルトの先端にナットを螺合することで連結することができる。そして、4つの分割部材31を連結部材32にて連結することで、流体管1A,1Bのフランジ3A,3Bの外径R1よりも大きい外径R2を有する円環状の保持体30が構成される(R1<R2)。すなわち外径R2は、フランジ3A,3Bの外径R1に、挟持部材11の基部11aにおける径方向の厚み寸法L3(
図2参照)の2倍の長さを加算した寸法とされている(R2=R1+L3×2)。尚、分割部材31の厚み寸法は小さいため考慮しない。
【0034】
(スペーサ部材40)
次に、スペーサ部材40について、
図5に基づいて説明する。
図5に示されるように、スペーサ部材40は、一方向に延びる金属部材からなり、先端に向け先細りの楔状に形成され、フランジ3A,3Bの間に形成される隙間S1、S2に挿入される挿入部40aと、隙間S1、S2の外側に配置される操作部40bと、から構成されている。また、操作部40bは挿入部40aに対し板厚方向にずれた位置から延設され、挿入部40aと操作部40bとの間にはクランク状の段部40cが形成されている。
【0035】
挿入部40aの板厚寸法L10は、内側対向面4Aと内側対向面4Bとの離間寸法L1と同じ標準間隔の範囲とされている(L10=L1)。また、挿入部40aの長さ寸法L11は、
図5(c)に示されるように、挿入部40aがフランジ3A,3Bの間に挿入され、段部40cがフランジ3Bの外周面に当接して径方向の内側への移動が規制されたときに、挿入部40aの一端部が内側対向面4Aと内側対向面4Bとの間の隙間S1に挿し込まれる長さとされている。また、操作部40bの長さ寸法L12は、挟持部材11の基部11aの径方向の厚み寸法L3よりも大きい(L12>L3)。
【0036】
このように、段部40cがフランジ3Bの外周面に当接するまで挿入部40aを差し込むことで、内側対向面4Aと内側対向面4Bとの間の隙間S1に所定長さの挿入部40aが挿し込まれるため、複数のスペーサ部材40の挿入作業を容易に行うことができる。また、
図5(d)に示されるように、操作部40bを、ペンチ等の工具等を用いて引き抜けば簡単に取外すことができる。
【0037】
(フランジ離間防止装置10の取付工程)
次に、フランジ離間防止装置10の取付工程について、
図6~
図9に基づいて説明する。尚、以下においては、既設の流体管1A,1Bのフランジ継手部3[隙間管理]にフランジ離間防止装置10を取付ける場合の工程について説明する。
【0038】
図6(a)に示されるように、まず、フランジ3A,3Bの周方向に複数形成された接続孔3c(
図2(a)参照)に、図示しない既存のボルト・ナットに替えて新規のボルト・ナット7を取付けた後、内側対向面4Aと内側対向面4Bとの離間寸法L1が標準間隔の範囲となるようにボルト・ナット7を締付け固定する。尚、新設の流体管1A,1Bのフランジ継手部3にフランジ離間防止装置10を取付ける場合は、フランジ3A,3Bの接続孔3cに初めから新規のボルト・ナット7を取付け、離間寸法L1が標準間隔の範囲となるように締付け固定する。
【0039】
次いで、
図6(b)に示されるように、所定のボルト・ナット7の周方向の一方側にスペーサ部材40を挿し込み、これらボルト・ナット7及びスペーサ部材40の周方向の両側に挟持体20を配置し、落下しない程度に仮止めする。仮止めは、第1壁部11bと第2壁部11cとの間にフランジ3A,3Bが配置され、かつ、基部11aの内面11dがフランジ3A,3Bの外周面に当接または近接するように挟持部材11を配置した後、回動部材14を軽く締付けて進退部材15を進入させ、挟持片12のフランジ押圧面12aと挟持部材11のフランジ押圧面11fとで、一対のフランジ3A,3Bを軽く挟持する。
【0040】
また、
図7(a)に示されるように、他の複数のスペーサ部材40及び挟持体20も同じように配置する。尚、
図7(a)においては、約45度の範囲に5個のボルト・ナット7、4個の挟持体20及び2個のスペーサ部材40が配置されているが、設置条件に応じて、フランジ3A,3Bを締付け固定する複数のボルト・ナット7、7…の間全てに挟持体20及びスペーサ部材40を配置してもよいし、複数のボルト・ナット7の複数個おきに配置してもよい。尚、
図1(a)、(b)において、フランジ離間防止装置10は、すべての回動部材14が流体管1A側に配置されるように取付けられているが、すべての回動部材14が流体管1B側に配置されるように取付けてもよいし、回動部材14が流体管1A側と流体管1B側とに混在して配置されるように取付けてもよい。
【0041】
次いで、回動部材14の回動部材頭部14cを回動して規定トルクにて締付けを行う。回動部材14の回動により進退部材15が進入し(
図2(b)中の白矢印方向参照)、進退部材15の変位は方向変換部材としての挟持片12によって、進退部材の進退方向と異なる方向(
図2(b)中の黒矢印方向参照)に変位が生成され、挟持片12のフランジ押圧面12aと挟持部材11のフランジ押圧面11fとの間で一対のフランジ3A,3Bを挟持して、一対のフランジ3A,3Bが離間することが防止される。
【0042】
同様に、周方向に沿って複数配設される他の挟持体20についても、回動部材14を順次規定トルクにて締付けることで、一対のフランジ3A,3Bは挟持片12のフランジ押圧面12aと挟持部材11のフランジ押圧面11fとの間で周方向に亘って挟持される。尚、回動部材14は片締めにならないように、例えば、一の回動部材14の締付け後、対角線上にある回動部材14を均等に少しずつ締めていくことが好ましい。
【0043】
また、回動部材14を回動して規定トルクにて締付けを行うが、スペーサ部材40が隙間S1に挿し込まれていることで、内側対向面4Aと内側対向面4Bとの離間寸法L1が標準間隔の範囲に維持されているか否かを容易に判別することができる。つまり、過剰なトルクが加わったとしても、スペーサ部材40が挿し込まれていることで離間寸法L1が標準間隔の下限値未満となることを防止できる。
【0044】
次いで、
図7(b)に示されるように、例えば、連結部材32により2つの分割部材31、31を緩めに連結して半円環状にした状態で、フランジ3A,3Bの径方向の一方向と他方向とから覆うように、各挟持体20の基部11aの外面11m側に周方向に掛け渡す。ここで、
図5(c)に示されるように、スペーサ部材40は、操作部40bの長さ寸法L12が挟持部材11の基部11aの径方向の厚み寸法L3よりも大きいことで(L12>L3)、
図8(a)、(b)に示されるように、操作部40bの先端が基部11aの外面11mよりも径方向の外側に突出するので、隣り合う2つのスペーサ部材40の操作部40bに一の分割部材31の貫通孔34を挿通させることで、各分割部材31を、基部11aの外面11m側における管軸方向の適正位置、つまり、フランジ3A,3Bの隙間S1、S2に対応する位置に容易に配置することができる(
図9(a)参照)。
【0045】
次いで、一方の半円環状の分割部材31、31と他方の半円環状の分割部材31、31との端部同士を連結部材32により連結することにより、円環状の保持体30が形成される。
図7(b)に示されるように円環状の保持体30が形成された状態で、保持体30を周方向に回動させて、各連結部材32が周方向に隣接するボルト・ナット7,7間に位置するように、周方向の配置位置を調整する。また、保持体30を管軸方向にスライド移動させることで、外面11mにおける管軸方向の配置位置を調整する。
【0046】
ここで、分割部材31は所定の曲率にて円弧状に形成される一方で、外面11mは平坦面にて形成されていることで、分割部材31は、外面11mにおける周方向の2つの縁辺11r,11rに線接触するだけで、外面11mや傾斜面11p,11pにはほぼ面接触しない。よって、外面11mに面接触する場合に比べて摩擦抵抗が小さくなって保持体30を周方向や管軸方向に容易に回動させ、設置位置を調整することができるので、作業性が向上する。
【0047】
また、基部11aにおける外面11mと傾斜面11p,11pとの内角が90度以上とされている(面取り加工が施されている)ことで、保持体30を周方向や管軸方向に回動させたときに分割部材31が縁辺11r,11rに引っ掛かりにくくなるので、保持体30の周方向の回動により挟持体20が周方向に倒れることを防止できる。
【0048】
また、縁辺11r,11rは管軸方向に直線状に形成されていることで、分割部材31を管軸方向にスライド移動させやすいため、分割部材31の外面11mにおける管軸方向の配置位置を容易に調整することができる。
【0049】
そして、各分割部材31を連結する4つの連結部材32をそれぞれ均等に締付けることで、保持体30により各挟持体20が径方向の内側に押圧された状態で保持されるため、各挟持体20のフランジ3A,3Bからの脱落が防止される。
【0050】
最後に、各スペーサ部材40を貫通孔34を通じて径方向の外側に引き抜いた後、フランジ3A,3Bの隙間S1における管軸方向の離間寸法L1を周方向の複数位置にて測定する。ここで、貫通孔34の管軸方向の開口寸法は、スペーサ部材40全体の管軸方向の寸法よりも大きく形成されているため、保持体30による保持状態を干渉することなく、スペーサ部材40を引き抜くことができる。尚、スペーサ部材40をペンチ等の工具を用いても抜き取ることが困難な場合は、その近傍のボルト・ナット7と挟持体20の回動部材14とのうち少なくともいずれか一方を僅かに緩めてから引き抜けばよい。また、測定により、離間寸法L1が標準間隔の上限値を超えている個所がある場合は、再度スペーサ部材40を挿入し、その近傍のボルト・ナット7と挟持体20の回動部材14とのうち少なくともいずれか一方を締付けて調整し、スペーサ部材40を径方向の外側に引き抜いた後、離間寸法L1を改めて測定する。または、スペーサ部材40を挿入せずにボルト・ナット7と挟持体20の回動部材14とのうち少なくともいずれか一方を締付けながら離間寸法L1を測定し調整してもよい。一方、離間寸法L1が標準間隔の下限値未満の個所がある場合は、その近傍のボルト・ナット7と挟持体20の回動部材14とのうち少なくともいずれか一方を緩めて調整した後、離間寸法L1を改めて測定する。
【0051】
このように、測定と調整を繰り返し行い、周方向の複数個所の離間寸法L1が標準間隔の範囲に調整されることで、フランジ離間防止装置10の取付作業が終了する。最終的には、全てのスペーサ部材40は除去され、挟持体20と保持体30とからなるフランジ離間防止装置10が流体管1A,1Bのフランジ継手部3に装着される。
【0052】
また、
図8及び
図9に示されるように、フランジ離間防止装置10は、フランジ継手部3への取付作業が終了した後、各挟持体20の外面11m側に周方向に円環状の保持体30が掛け渡された状態において、
図9(a)に示されるように、分割部材31が基部11aの外面11mにおける隙間S1に対応する位置に配置されていても、分割部材31に貫通孔34が形成されていることで、フランジ3A,3Bの間に形成される隙間S1を、保持体30の外側から貫通孔34を通して目視により確認することができる。
【0053】
また、保持体30の分割部材31は、フランジ3A,3Bの外周面に対し所定寸法(例えば、基部11aにおける径方向の厚み寸法L3)を隔てて配置されていることで、
図9(b)に示されるように、フランジ3A,3Bの間に形成される隙間S1(またはS2)を、管軸方向にずれた位置から目視により確認することができる。よって、隙間管理を容易に行うことができる。
同様に、周方向に沿って複数配設される他の挟持体20についても、回動部材14を順次規定トルクにて締付けることで、一対のフランジ3A,3Bは挟持片12のフランジ押圧面12aと挟持部材11のフランジ押圧面11fとの間で周方向に亘って挟持される。尚、回動部材14は片締めにならないように、例えば、一の回動部材14の締付け後、対角線上にある回動部材14を均等に少しずつ締めていくことが好ましい。また、挟持体20を規定トルクにて締付けたことによりいずれかのボルト・ナット7が緩んだ場合は規定トルクにて締付け直せばよい。
次いで、一方の半円環状の分割部材31A、31Aと他方の半円環状の分割部材31A、31Aとの端部同士を連結部材32により連結することにより、円環状の保持体30Aが形成される。そして、各分割部材31Aを連結する4つの連結部材32をそれぞれ均等に締付けることで、保持体30Aにより各挟持体20が径方向の内側に押圧された状態で保持されるため、各挟持体20のフランジ3A,3Bからの脱落が防止される。
このように、保持体30Bがバンド部材51と締付具52とから構成されることで、複数の分割部材31を連結することなく環状の保持体30Bを形成することができるので、作業性が向上する。
また、外面11mの周方向の両側に傾斜面11p,11pが形成されていることで、バンド部材51を各挟持体20に緩く掛け渡した状態で周方向の位置調整を行う際に、径方向の内側に撓んだバンド部材51が傾斜面11p,11pにより外面11mに乗り上がるように案内されるため、周方向への回動を容易に行うことができる。
スペーサ部材60は、実施例1のスペーサ部材40や変形例2のスペーサ部材50のように、フランジ3A,3Bの外周面の外側から抜き差しするものでなく、隙間S2においてボルト・ナット7が挿通可能な円環状の金属部材などから構成されていてもよいし、樹脂材またはゴム部材で構成されてもよい。スペーサ部材60の厚み寸法L30は、外側対向面5Aと外側対向面5Bとの離間寸法L2と同じとされている(L30=L2)。このように、ボルト・ナット7が配置される隙間S2における離間寸法L2を特定間隔に維持することで、離間寸法L1を標準間隔の範囲に維持することができるようにしてもよい。
尚、スペーサ部材60は、ボルト・ナット7の取付けまたは交換の際に取付けられ、シール部材8よりも径方向の外側の隙間S2に配置されるので密封に影響が及ぶこともなく、また、フランジ3A,3Bの外周面よりも外側に突出することもないので、フランジ離間防止装置10を取付けた後において除去せずに隙間S2に取付けたままとすることができる。
このようにすることで、環状の保持体が、複数の挟持体における基部11aの外面11m側に周方向に掛け渡され、各挟持体が径方向の内側に向けて押圧されることで、保持体の周方向の長さを維持するだけで、一対のフランジ3A,3Bから挟持体が逸脱してフランジ3A,3B同士が離間することを防止できる。
また、基部11aの外面11mは、保持体(例えば、保持体30、30A、30B)を管軸方向に滑らせるための管軸方向滑り部(例えば、平坦状の外面11m、傾斜面11p,11p、傾斜面11q)を有する。このようにすることで、挟持体を径方向の内側へ押圧する力を少し緩めるだけで、保持体を管軸方向に滑らせることができるので、保持体の管軸方向の取付け位置の調整や、保持体を緩めて環状のまま挟持体から容易に取外すことができるとともに、再度取付ける際に、保持体を傾斜面11qにより外面11mに乗り上がるように案内することができる。
尚、管軸方向滑り部は、挟持部材11における平坦状の外面11mにて構成されているが、外面11mは、少なくとも管軸方向に向けて平坦状に形成されていれば、周方向に向けて湾曲するなど、必ずしも平坦面にて形成されていなくてもよい。
また、基部11aの外面11mは、保持体(例えば、保持体30、30A、30B)を周方向に滑らせるための周方向滑り部(例えば、平坦状の外面11m、傾斜面11p,11p、傾斜面11q)を有する。このようにすることで、挟持体を径方向の内側へ押圧する力を少し緩めるだけで、保持体を周方向に滑らせることができるので、保持体の周方向の取付け位置の調整(例えば、連結部材32や締付具52の周方向の配置位置の調整など)を容易に行うことができる。また、保持体が周方向に滑りやすくなることで、保持体を緊締したときに挟持体に対し滑りやすくなるため、締付け力の低下を防止できる。
尚、周方向滑り部は、挟持部材11における平坦状の外面11mにて構成されているが、外面11mは、少なくとも周方向に向けて平坦状に形成されていれば、管軸方向に向けて湾曲するなど、必ずしも平坦面にて形成されていなくてもよい。
また、保持体(例えば、保持体30、30A、30B)の内面は、管軸方向に向けて平坦状に形成されている。このようにすることで、保持体を緊締するときに挟持体の外面を傷つけにくくなる。
また、保持体(例えば、保持体30、30A、30B)は、管軸方向に所定寸法(例えば、所定幅寸法L4)を有する帯状部材からなる。このようにすることで、挟持体の外面11mが帯状部材により管軸方向にわたり均等に押圧されることで、保持体による径方向の内側への押圧力が第1壁部11bと第2壁部11cとのうち一方側に偏って付与されて挟持体が脱落することを防止できる。
また、実施例1のように、外面11mの管軸方向の長さ寸法L5は、保持体30の分割部材31の所定幅寸法L4よりも長寸とされていることで(L5>L4)、保持体30を挟持体20の外面11m上で管軸方向に位置調整することができ、フランジ3A,3Bを挟持する挟持体20の取付位置によらず、分割部材31を管軸方向の適正位置(例えば、隙間S1,S2に対応する位置など)に配置することができる。
また、複数の挟持体(例えば、挟持体20)は、基部11aの径方向の寸法(例えば、厚み寸法L3)が同一である。このようにすることで、管軸から各挟持体の基部11aの外面11mまでの半径寸法が全て同じ長さになるため、保持体により各挟持体を均等な力で径方向の内側に押圧することができる。
また、保持体(例えば、保持体30、30A、30B)は、一対のフランジ3A,3Bの対向面間に形成された隙間S1(S2)に対し、径方向と管軸方向とのうち少なくとも一方向に離間した位置に配置される。このようにすることで、隙間S1に対し径方向と管軸方向とのうち少なくとも一方向に離れた位置に保持体が配置されることで、挟持体以外の部分が外方に向けて開放されるため、保持体が隙間S2に入り込んで隙間S1を押し拡げてしまったり、隙間S1を確認する際に保持体が邪魔になることを防止できる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例1、2及び変形例1~3では、保持体30、30A、30Bは、フランジ離間防止装置の取付け作業が終了した後もフランジ継手部3から除去しない形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の挟持体20を取付ける際に脱落しないように保持体30、30A、30Bを取付けた後、フランジ離間防止装置の取付け作業が終了した後にフランジ継手部3から除去してもよい。
また、前記実施例1、2及び変形例1~3では、保持体の一例として、金属部材からなる分割部材31と連結部材32や、バンド部材51と締付具52とから構成される保持体30、30A、30Bを適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ゴム材等により伸縮可能に形成されたバンド部材にて構成し、連結部材32や締付具52等の締付力付与手段を用いることなく、バンド部材の弾性力を利用して挟持体20を径方向の内側に向けて押圧可能な保持体を適用してもよい。
また、前記実施例1、2及び変形例1~3では、保持体30、30Aは、外面11mにおける隙間S1に対応する位置に配置されることで、一の挟持体20を用いて一対のフランジ3A,3Bを均等に押圧することができるようになっていたが、保持体30Bのように、外面11mにおける隙間S1から管軸方向にずれた位置に配置されてもよい。
また、前記実施例1及び変形例1~3では、隙間管理タイプのフランジ継手部3に本発明のフランジ離間防止装置を取付ける際に、スペーサ部材40、50、60を用いる形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、必ずしもスペーサ部材40、50、60を用いる必要はなく、例えば、トルク管理により隙間S1の離間寸法L1を標準間隔の範囲に維持できるようにしてもよい。
また、挟持部材11の内面11d、フランジ押圧面11fや、挟持片12のフランジ押圧面12aに介在体を設け、フランジ3A,3Bの保護や絶縁を行ってもよい。また、挟持部材11の外面11mと保持体(30、30A、30B)との間にも介在体を設け、挟持部材11の外面11mと保持体(30、30A、30B)とが接触しないように保護や絶縁を行ってもよい。尚、介在体は、樹脂材またはゴム材等を成形した絶縁体を接着したり、ナイロンコーティング、ゴムライニング、プラスチック塗装、エポキシ樹脂粉体塗装等により形成することができる。