(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128511
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】掘削具位置検出装置、掘削精度管理システム、及び掘削精度管理方法
(51)【国際特許分類】
E21B 47/04 20120101AFI20230907BHJP
E21B 47/02 20060101ALI20230907BHJP
E21B 3/04 20060101ALI20230907BHJP
E21B 11/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
E21B47/04
E21B47/02
E21B3/04
E21B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032887
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000157289
【氏名又は名称】丸五基礎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 真
(72)【発明者】
【氏名】土屋 信明
(72)【発明者】
【氏名】中田 康雄
(72)【発明者】
【氏名】松田 久嗣
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA05
2D129BA27
2D129CB11
2D129CB13
2D129DA13
2D129DC05
2D129EB13
(57)【要約】
【課題】掘削孔の精度管理を迅速かつ高い精度で実施することである。
【解決手段】地盤を削孔する掘削具の位置を検出する掘削具位置検出装置であって、前記掘削具に接続された回転ロッドを囲むように並列配置される複数の索状材と、該索状材との水平離間距離を計測する距離計測器と、前記掘削具の深度を測定する深度計と、を備え、前記索状材は、前記回転ロッドに対応して長さが可変する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を削孔する掘削具の位置を検出する掘削具位置検出装置であって、
前記掘削具に接続された回転ロッドを囲むように並列配置される複数の索状材と、
該索状材との水平離間距離を計測する距離計測器と、
前記掘削具の深度を測定する深度計と、を備え、
前記索状材は、前記回転ロッドに対応して長さが可変することを特徴とする掘削具位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の掘削具位置検出装置において、
前記索状材が、一端を前記掘削具の上部に、他端を前記回転ロッドとともに回転するロータリーテーブルに接続されるとともに、
該ロータリーテーブルの変位を検出する変位検出設備を備えることを特徴とする掘削具位置検出装置。
【請求項3】
掘削具により形成された掘削孔の掘削精度を管理する掘削精度管理システムであって、
請求項1または2に記載の掘削具位置検出装置と、
前記掘削孔の形状を監視する形状監視装置と、を備え、
前記形状監視装置は、
前記距離計測器及び前記深度計の実測値に基づいて、前記掘削具の位置を算出する掘削具位置算出部と、
前記掘削具位置算出部で算出された前記掘削具の位置情報に基づいて、前記掘削孔の形状を推定する孔形状推定部と、
を備えることを特徴とする掘削精度管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の掘削精度管理システムを用いて、前記掘削具で形成した前記掘削孔の掘削精度を管理する掘削精度管理方法であって、
前記掘削具の回転が停止されるごとに、前記距離計測器で前記索状材との水平離間距離を計測し、
前記距離計測器及び前記深度計の実測値に基づいて、前記掘削具の位置を算出することを特徴とする掘削精度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を削孔する掘削具の位置を検出する掘削具位置検出装置、掘削精度管理システム、及び掘削孔の精度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤に設けた掘削孔を利用してコンクリート造などの地中構造物を構築する場合には、孔壁測定を行って掘削孔の形状を推定し掘削精度を確認する。孔壁測定には、超音波センサを用いる方法が広く知られており、例えば特許文献1には、超音波センサを利用した削孔の形状測定方法が開示されている。
【0003】
特許文献1における削孔の形状測定方法は、超音波センサを削孔に吊り下ろしたのち、超音波センサを回転させつつ昇降させながら孔壁までの水平距離を測定する。次に、測定結果と測定時の超音波センサの位置や向きに基づいて、孔壁の3次元位置座標を複数個所で割り出す。こののち、複数個所の3次元位置座標に基づいて、孔壁の形状を把握する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように超音波センサを採用すれば、安定液で満たされた孔壁の形状を精度よく把握することができる。ところが、上記の測定作業は、測定時間に多大な時間を要することから、掘削精度の確認作業が何度も必要となる場合には掘削能率が低下し、工期に影響を及ぼしかねない。
【0006】
このため、超音波センサを利用した確認作業の実施回数を低減させて作業時間の短縮を図るべく、掘削機の運転手や会番者の目視により、掘削機の垂直精度確認を実施する場合がある。しかし、目視による確認作業は個人差があるため判断基準が曖昧になりやすく、孔曲がりなどの発見が遅れるなどの不具合が生じやすい。孔曲がりが許容範囲を逸脱すると、修正掘削を実施せざるを得ず、さらに工期遅延を招きやすい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、掘削孔の精度管理を迅速かつ高い精度で実施することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の掘削具位置検出装置は、地盤を削孔する掘削具の位置を検出する掘削具位置検出装置であって、前記掘削具に接続された回転ロッドを囲むように並列配置される複数の索状材と、該索状材との水平離間距離を計測する距離計測器と、前記掘削具の深度を測定する深度計と、を備え、前記索状材は、前記回転ロッドに対応して長さが可変することを特徴とする。
【0009】
本発明の掘削具位置検出装置は、前記索状材が、一端を前記掘削具の上部に、他端を前記回転ロッドとともに回転するロータリーテーブルに接続されるとともに、該ロータリーテーブルの変位を検出する変位検出設備を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の掘削精度管理システムは、掘削具により形成された掘削孔の掘削精度を管理する掘削精度管理システムであって、本発明の掘削具位置検出装置と、前記掘削孔の形状を監視する形状監視装置と、を備え、前記形状監視装置は、前記距離計測器及び前記深度計の実測値に基づいて、前記掘削具の位置を算出する掘削具位置算出部と、前記掘削具位置算出部で算出された前記掘削具の位置情報に基づいて、前記掘削孔の形状を推定する孔形状推定部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の掘削精度管理システムを用いて、前記掘削具で形成した前記掘削孔の掘削精度を管理する掘削精度管理方法であって、前記掘削具の回転が停止されるごとに、前記距離計測器で前記索状材との水平離間距離を計測し、前記距離計測器及び前記深度計の実測値に基づいて、前記掘削具の位置を算出することを特徴とする。
【0012】
本発明の掘削具位置検出装置及び掘削精度管理システム、及び掘削精度管理方法によれば、削孔開始時と削孔開始後に、距離計測器を用いて回転ロッドを囲んで並列配置される複数の索状材との水平離間距離を計測する。これにより、距離計測器の走査面上にある回転ロッドの位置(もしくは視準点の位置)を、削孔開始時と削孔開始後で取得できる。
【0013】
すると、これらの位置と深度計で計測した掘削具の深度に基づいて、掘削具の3次元位置を取得することができる。したがって、掘削具の3次元位置から掘削孔の孔壁形状を即時に推定でき、掘削孔の精度管理を迅速かつ高い精度で実施することが可能となる。
【0014】
また、距離計測器を用いて複数の索状材との水平離間距離を計測する作業は、排土工程など掘削具の回転が停止しているタイミングで行えばよい。これにより、削孔作業を阻害することなく断続的に掘削具の位置を確認でき、掘削孔に孔曲がりを生じる兆候を捉えることも可能となる。したがって、孔曲がりの初期の段階で、掘削具の位置調整を実施できるとともに、調整時には、推定した掘削孔の孔壁形状を参考情報として利用することも可能となる。
【0015】
さらに、前記索状材が接続されるロータリーテーブルの変位を検出する変位検出設備を備えると、削孔開始時と削孔開始後で、索状材及び回転ロッドの上方側に生じた変位をも捉えることができる。これにより、掘削具の3次元位置をより高い精度で取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転ロッドを囲んで並列配置される複数の索状材と、これら索状材との水平離間距離を計測する距離計測器とを用いることで、削孔作業を阻害することなく、掘削具の位置を確認できるとともに、掘削具の位置から掘削孔の孔壁形状を推定でき、掘削孔の精度管理を迅速かつ高い精度で実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態における掘削機の概略を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態における削孔作業の手順を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における掘削精度管理システム及び掘削具位置検出装置を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における掘削具の位置検出方法を示す図である(その1)。
【
図5】本発明の実施の形態における掘削具の位置検出方法を示す図である(その2)。
【
図6】本発明の実施の形態における形状監視装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、回転ロッドを囲んで並列配置した複数の索状材を利用して、回転ロッドに接続された掘削具の位置を検出するとともに、掘削具の位置に基づいて掘削精度を管理するものである。回転ロッドは、掘削具に水平方向の回転力を伝達する回転軸として機能する部材であればいずれでもよく、掘削具も、回転ロッドに接続されて地盤を削孔するものであれば、アースオーガーやドリリングバケットなど、いずれにも採用可能である。
【0019】
本実施の形態では、回転ロッドにケリーバーを採用し、掘削具にドリリングバケットを採用する場合を事例に挙げ、本発明の掘削具位置検出装置、掘削精度管理システム、及び掘削精度管理方法の詳細を、
図1~
図6を参照しつつ以下に説明する。これに先立ち、まずはケリーバー及びドリリングバケットを備えた掘削機について、説明する。
【0020】
≪≪≪掘削機10≫≫≫
図1で示すように、掘削機10は、ベースマシン(図示せず)に対して傾動可能に設けられたブーム11とフロントアーム12とを有し、ブーム11の先端部には、ウィンチ11aが設置されている。ウィンチ11aには吊りロープ13が掛け回され、この吊りロープ13を介してケリーバー14が懸吊支持されている。ケリーバー14は伸縮自在な管材であり、その先端に、掘削具であるドリリングバケット15が取り付けられている。
【0021】
ドリリングバケット15は、底部151に掘削ビットを有する円筒体よりなり、ケリーバー14を回転軸にして一体回転することで地盤を削孔する。底部151は開閉自在に構成されており、開状態とすることで、掘削の進行に伴って内部に取り込まれた掘削土砂を排出できる。このような、ドリリングバケット15及びケリーバー14の回転は、フロントアーム12の先端に取り付けられた回転駆動装置16により実現される。
【0022】
回転駆動装置16は、上下方向に挿通されたケリーバー14に対して上下方向に相対移動可能に構成されるとともに、ケリーバー14に回転力を付与する機構を備えている。そして、回転駆動装置16の下方には、ケリーバー14とともに回転するロータリーテーブル18が取り付けられ、ホースリール17や各種計測器が設置されている。計測器には、後述する深度計80が含まれている。
【0023】
≪≪掘削機10を用いた削孔作業≫≫
上記の構成を有する掘削機10による地盤の削孔作業は、大まかに次の手順で実施される。
【0024】
まず、掘削機10を所定位置に据え付け、ドリリングバケット15を削孔予定位置の直上で位置決めする。次に、
図2(a)で示すように、回転駆動装置16を作動させてケリーバー14及びドリリングバケット15を回転し、このドリリングバケット15により地盤表層を先行削孔する。そして、
図2(b)で示すように、先行掘削跡に表層ケーシングPを建込で地盤の表層部分を保護する。こののち、
図2(c)で示すように、削孔作業を再開し地盤を削孔して掘削孔Hを構築する。
【0025】
削孔作業は、安定液Mを供給しつつ行い、ドリリングバケット15が掘削土砂で充填されたところで、
図2(d)で示すように、ケリーバー14及びドリリングバケット15の回転を停止する。こののち、ドリリングバケット15を地上に引き上げ土砂を排出する。このような地盤を削孔する作業と掘削土砂を排出する作業とが、繰り返し実施される。
【0026】
本実施の形態では、この掘削土砂を排出する前後のいずれかの時点で、つまり、ケリーバー14及びドリリングバケット15の回転が停止しているタイミングで、
図3で示すような掘削精度管理システム20を用いて、ドリリングバケット15の位置検出作業を行う。また、検出結果に基づいて掘削孔Hの孔壁形状を推定し、掘削孔Hの掘削精度を管理する。
【0027】
≪≪掘削精度管理システム及び掘削具位置検出装置≫≫
掘削精度管理システム20は、
図3で示すように、形状監視装置30と、掘削具位置検出装置40とを備える。また、掘削具位置検出装置40は、距離計測器50と、ワイヤー60と、ワイヤーリール70と、深度計80とを備える。
【0028】
≪≪掘削具位置検出装置40≫≫
深度計80は、ドリリングバケット15の深度を検知できる計器であればいずれの計器を採用してもよい。本実施の形態では、他の計測器類とともにあらかじめ掘削機10に搭載されている深度計80を採用する場合を例示している。
【0029】
ワイヤーリール70は、ケリーバー14とともに回転するロータリーテーブル18上に、ケリーバー14を挟んで2基が対をなして設置されている。ワイヤー60は、2基のワイヤーリール70各々からケリーバー14と平行に吊り下されている。これら対をなすワイヤー60は、
図4(a)で示すように、ケリーバー14に対して等間隔に配置されるとともに、ケリーバー14を挟んで対称に配置されている。
【0030】
そして、ワイヤー60各々の先端は
図1で示すように、ロータリーテーブル18と同様でケリーバー14とともに回転するドリリングバケット15の上面に接続されている。これにより、削孔作業中であっても、対をなすワイヤー60は常時平行に延在し、また、ケリーバー14が伸長するとこれに対応してワイヤーリール70から巻き出される態様となる。
【0031】
距離計測器50は、対をなすワイヤー60各々との水平離間距離を計測可能な機器であれば、いずれの計測器も採用可能であるが、二次元走査型の側域センサが好ましい。側域センサを採用すると、
図4(a)で示すように、走査面上における対をなすワイヤー60各々との離間距離を同時に計測できる。また、側域センサを原点O’(スキャン中心位置)とする走査面C上の対をなすワイヤー60の極座標データを取得できる。
【0032】
≪≪掘削具の位置検出方法≫≫
上記の構成を有する掘削具位置検出装置40を用いて、ドリリングバケット15の3次元位置を検出する手順を、距離計測器50に二次元走査型の側域センサを採用する場合を事例に挙げ、以下に
図4及び
図5を参照しつつ説明する。
【0033】
本実施の形態では、
図4(a)で示すように、距離計測器50の走査面C上の原点O’を距離計測器50のスキャン中心位置とし、注視する方向にY軸、Y軸に垂直な面における紙面右方向をX軸とする。また、
図5で示すように、ドリリングバケット15の3次元位置の原点Oは、走査面C上の原点O’を、深度計80で0mとなる高さ位置に移動した地点と仮定し、Y軸に垂直な面における下方向をZ軸とする。
【0034】
3次元位置の検出にあたっては、例えば、
図4(a)で示すように、対をなすワイヤー60各々との水平離間距離が同一となる位置に距離計測器50を据え付ける。また、
図5で示すように、距離計測器50の走査面Cが表層ケーシングPの上端より上方に位置するよう調整する。そして、深度計で0mとなる高さ位置から走査面Cまでの距離を走査面高さH
0として計測しておく。併せて、走査面Cとロータリーテーブル18との距離を基準距離H
1として計測しておく。
【0035】
これにより、次の手順で
図5で示すような、削孔作業を開始する時点のドリリングバケット15の初期位置座標(0,Y
C0,D
0)を算出できる。まず、
図4(a)で示すように、距離計測器50で、対をなすワイヤー60までの水平離間距離を計測し、離間距離初期値L1を取得する。すると、取得した離間距離初期値L
1とワイヤー間距離L
2から、ケリーバー14における走査面C上の初期位置座標(0,Y
C0)を取得できる。したがって、深度計80で削孔を開始する時点のドリリングバケット15の深度D
0を計測すれば、ドリリングバケット15の初期位置座標(0,Y
C0,D
0)を計測することができる。
【0036】
また、
図5で示すような、削孔作業開始した後のドリリングバケット15の位置座標(X,Y,Z)は、まず、
図4(b)で示すように、距離計測器50で、対をなすワイヤー60までの水平離間距離を計測し、離間距離実測値L
3、L
4を取得する。すると、取得した離間距離実測値L
3、L
4とワイヤー間距離L
2から、ケリーバー14における走査面C上の位置座標(X
C,Y
C)を取得できる。
【0037】
次に、深度計80でドリリングバケット15の深度実測値Dを計測するとともに、ドリリングバケット15とロータリーテーブル18との距離を、掘削具高さH2(H2=H0+H1+D)として算出する。これにより、ドリリングバケット15の位置座標(X,Y,Z)は、基準距離H1、掘削具高さH2、走査面C上におけるケリーバー14の初期位置座標(0,YC0,H0)及び削孔開始後の位置座標(XC,YC,H0)に基づいて算出できる。
【0038】
上記のとおり、掘削具位置検出装置40によれば、距離計測器50のスキャン中心位置を、深度計で0mとなる高さ位置に移動した地点を原点Oとするドリリングバケット15の3次元位置座標を容易に取得できる。これにより、ドリリングバケット15の位置を迅速かつ容易に検出できるとともに、これら位置情報から、ドリリングバケット15の位置確認だけでなく、掘削孔Hの孔壁形状を推定することもできる。
【0039】
≪≪形状監視装置30≫≫
形状監視装置30は、
図6で示すように、入力部31、演算処理部32、及び出力部33を備える装置であればいずれでもよく、パソコンやノートPC、タブレット端末などを採用することができる。
【0040】
入力部31は、距離計測器50及び深度計80と無線または有線で接続され、距離計測器50で取得した対をなすワイヤー60各々との離間距離実測値L3、L4や、深度計80で取得したドリリングバケット15の深度実測値Dなどの情報を受信する。また、図示を省略するが、キーボードやマウス、スキャナなどの入力装置と入力部31を接続し、これらに入力された情報を受信する構成としてもよい。
【0041】
出力部33は、データ出力部331と警報出力部332とを備える。データ出力部331は、入力部31を介して取得した情報や、演算処理部32で処理した処理データなどを、表示装置34に出力する。また、警報出力部332は、後述する演算処理部32の掘削具位置検証部323で、ドリリングバケット15の位置に異常を確認した場合に、警報情報を表示装置34に出力する。
【0042】
表示装置34は、出力部33と無線または有線で接続されたモニターや、その他ディスプレイ、プリンタなど、いずれであってもよい。また、警報出力部332から出力する警報情報は、表示装置34に出力するだけでなく、スピーカーなど音声で報知可能な出力装置に出力する構成としてもよい。
【0043】
さらに、作業員が携帯する携帯端末や工事事務所に設置されている管理用パソコンなどの端末装置35と形状監視装置30とを、通信ネットワークを介して相互にデータ送信可能としてもよい。こうすると、この端末装置35から入力部31を介して形状監視装置30に情報を入力する、もしくは形状監視装置30から出力部33を介して情報を端末装置35に出力できる。なお。通信ネットワークとしては、インターネット、専用通信回線等いずれにより構築されるものであってもよい。
【0044】
演算処理部32は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶部を備え、形状監視装置30の動作を制御する。このような演算処理部32は、少なくとも掘削具位置算出部321、孔形状推定部322、及び掘削具位置検証部323を備える。詳細は、掘削精度管理システム20を利用した掘削精度管理方法で説明するが、概略は次のとおりである。
【0045】
掘削具位置算出部321は、掘削具位置検出装置40の距離計測器50で取得した離間距離実測値L3、L4、及び深度計80で取得した深度実測値Dに基づいて、前述した掘削具の位置検出方法で説明したようなドリリングバケット15の位置座標(X,Y,Z)を算定し、位置情報を検出する。
【0046】
孔形状推定部322は、掘削具位置算出部321で検出されるドリリングバケット15の位置情報とドリリングバケット15の断面径に基づいて、孔壁の形状を推定する。そして、掘削具位置検証部323は、ドリリングバケット15の位置情報と、あらかじめ設定した位置座標の判定閾値とに基づいて、ドリリングバケット15の位置修正が必要か否かを判定する。
【0047】
≪≪掘削精度管理システムを利用した掘削精度管理方法≫≫
上記の構成を有する掘削精度管理システム20を用いて、ドリリングバケット15の位置を検出し、ドリリングバケット15で形成した掘削孔Hの掘削精度を管理する手順を以下に説明する。
【0048】
≪≪事前準備≫≫
まず、掘削具位置検出装置40を所定位置に設置する。
図1で示すように、ロータリーテーブル18に対をなすワイヤーリール70を設置するとともにワイヤー60を巻き出して、その先端部をドリリングバケット15の上面に接続する。対をなすワイヤー60は、ケリーバー14を挟んで等間隔かつ平行に配置する。これらの作業は、
図2(a)で示すような、掘削機10による先行掘削の前後いずれの段階で実施してもよい。
【0049】
次に、
図3で示すように、表層ケーシングPにドリリングバケット15を挿入するとともに、距離計測器50を据え付ける。併せて、
図4(a)で示すように、削孔作業を開始する時点の、ケリーバー14における走査面C上の初期位置座標(0,Y
c0)とドリリングバケット15の初期位置座標(0,Y
0,D
0)を算出する。これらの作業は、上記の≪≪掘削具の位置検出方法≫≫で説明したとおりである。
【0050】
また、削孔作業が進行するにつれて、ドリリングバケット15の位置にズレが生じた場合に、許容可能な上限値を予め算出しておく。そして、この上限値とドリリングバケット15の初期位置座標(0,Y0,D0)とに基づいて、位置修正が必要か否かを判定するための位置座標の判定閾値を設定しておく。
【0051】
上記の事前準備で取得した情報は、入力部31を介して形状監視装置30の演算処理部32に格納しておく。こののち、
図2(c)で示すように、安定液Mを供給しつつ、ドリリングバケット15による削孔作業を開始する。
【0052】
≪≪削孔作業及び掘削具の位置検出≫≫
削孔作業は、回転駆動装置16を作動させてケリーバー14及びドリリングバケット15を回転することで実施される。削孔作業中、対をなすワイヤー60もこれらとともに回転することから、ドリリングバケット15の位置検出作業は、ドリリングバケット15が停止されるごとに実施する。
【0053】
前述したように、ドリリングバケット15が掘削土砂で満たされると、
図2(d)で示すように、ドリリングバケット15の回転を一旦停止させ、掘削土砂を排出する準備を行う。このドリリングバケット15の回転を停止させ掘削孔Hからを引き抜く前の準備期間中に、距離計測器50にて対をなすワイヤー60との水平離間距離を計測し、離間距離実測値L
3、L
4を取得する。同様に、深度計80にて、ドリリングバケット15の深度実測値Dを取得する。
【0054】
もしくは、ドリリングバケット15を掘削孔Hから引き抜いて土砂を排出し掘削孔Hに再度貫入したのち、削孔作業を開始するべくドリリングバケット15を回転させる前に、計測作業を実施する。
【0055】
形状監視装置30は、入力部31を介して離間距離実測値L3、L4と深度実測値Dを受信すると、演算処理部132が掘削具位置算出部321の指令を受けて、ドリリングバケット15の位置座標(X,Y,Z)を算出する。位置座標の算出方法は、上記の≪≪掘削具の位置検出方法≫≫で説明したとおりである。
【0056】
ドリリングバケット15の位置検出は、ドリリングバケット15の位置座標(X,Y,Z)を算出した結果をそのまま位置情報として採用する。もしくは、位置座標を複数回算出して平均値や中央値、または最頻値などを算出するといった統計処理を実施し、この統計処理結果を位置情報として採用する。
【0057】
位置座標を複数回算出する場合は、計測作業を実施するごとに掘削機10の回転駆動装置16を作動させてケリーバー14及びドリリングバケット15を少量回転し、距離計測器50から視認できる対をなすワイヤー60の位置を、適宜変化させると良い。こうすると、より高い精度でドリリングバケット15の位置情報を取得することができる。
【0058】
≪≪掘削孔の孔壁形状の推定≫≫
ドリリングバケット15の位置情報が取得されると、演算処理部132が孔形状推定部322の指令を受けて、掘削孔Hの孔壁形状を推定する。
【0059】
孔壁形状は、ドリリングバケット15の初期位置座標(0,Y
0,D
0)及び位置座標(X,Y,Z)と、ドリリングバケットの断面径に基づいて算出できる。推定された孔壁形状は、演算処理部622の記憶領域に格納してもよいし、例えば、
図5で示すような2次元モデル、もしくは3次元モデルとして、表示装置624に出力してもよい。
【0060】
≪≪位置修正の必要性検証≫≫
また、ドリリングバケット15の位置座標(X,Y,Z)が算出されると、演算処理部132が掘削具位置検証部323の指令を受けて、あらかじめ設定した判定閾値とを比較する。判定閾値を超えた場合に、ドリリングバケット15の位置修正が必要と判定する。
【0061】
位置修正が必要と判定した場合、演算処理部32は警報出力部332を介して、表示装置34に警告メッセージを発報する。作業員は、表示装置34で警告メッセージを受信すると、回転駆動装置16の作動を一時中断し、ドリリングバケット15の位置座標(X,Y,Z)や推定した孔壁形状を参照する。そのうえで、ドリリングバケット15の位置を適宜調整するなどの対応をすればよい。
【0062】
上記の作業を、掘削孔Hが所望深度に到達するまで繰り返す。このように、距離計測器50による計測作業は、排土工程などドリリングバケット15の回転が停止しているタイミングで実施できる。これにより、削孔作業を阻害することなく断続的にドリリングバケット15の位置を確認でき、掘削孔Hに孔曲がりを生じる兆候を捉えることが可能となる。したがって、孔曲がりの初期の段階で、ドリリングバケット15の位置調整を実施できるとともに、調整時には、推定した掘削孔Hの孔壁形状を参考情報として利用することも可能となる。
【0063】
本発明の掘削具位置検出装置及び掘削精度管理システム、及び掘削精度管理方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0064】
例えば、本実施の形態では、
図4(a)で示すように、ワイヤー60をケリーバー14を挟んで等間隔に並列配置したが、これに限定するものではない。距離計測器50との水平離間距離を計測可能で、かつケリーバー14の走査面C上の位置座標(X
c,Y
c)を取得できれば、ワイヤー60とケリーバー14とは必ずしも等間隔でなくてもよく、またワイヤー60の本数もいずれでもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、断面径6mm程度の市場に流通されている一般的なワイヤー60を索状材として採用したが、距離計測器50で認識でき、またケリーバー14に対応して長さを可変できるものであれば、その太さや材質はいずれでもよい。
【0066】
さらに、掘削具位置検出装置40は、ロータリーテーブル18の変位を検出する変位検出設備90を備えてもよい。ロータリーテーブル18は、ベースマシン(図示せず)に備えたフロントアーム12を介して片持ち状に支持されている。したがって、不慮の事態により水平方向もしくは鉛直方向に変位する場合がある。
【0067】
このため、削孔作業開始時と開始後で、ロータリーテーブル18の変位を検出可能な変位検出設備90を準備し、入力部31を介して変位に係る情報を形状監視装置30の演算処理部32に格納する。すると、演算処理部32は、掘削具位置算出部321の指令を受けて、ロータリーテーブル18の変位を考慮し、ドリリングバケット15の位置座標(X,Y,Z)を算出することができる。
【0068】
変位検出設備90としては、例えば
図2(d)で示すように、一端を地盤等の不動位置に固定するとともに他端をロータリーテーブル18にリールなどを介して接続したワイヤーを採用することができる。こうすると、距離計測器50に側域センサを用いれば、変位検出設備90であるワイヤーにおける、走査面C上の水平離間距離と角度(極座標データ)を取得できる。したがって、ロータリーテーブル18に変位が生じていれば、削孔作業開始時点と開始後各々の水平離間距離と角度(極座標データ)と、変位検出設備90の一端を固定した不動位置とに基づいて、ロータリーテーブル18の変位を把握できる。
【0069】
また、本実施の形態では、ワイヤーリール70をロータリーテーブル18に設置するとともに、ワイヤー60をドリリングバケット15の上部に接続したが、これに限定されるものではない。例えば、ロータリーテーブル18の近傍でケリーバー14とともに回転する部材や、ドリリングバケット15の上部近傍でケリーバー14とともに回転する部材があれば、これらを適宜利用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 掘削機
11 ブーム
11a ウィンチ
12 フロントアーム
13 吊りロープ
14 ケリーバー(回転ロッド)
15 ドリリングバケット(掘削具)
151 底部
16 回転駆動装置
17 ホースリール
18 ロータリーテーブル
20 掘削精度管理システム
30 形状監視装置
31 入力部
32 演算処理部
321 掘削具位置算出部
322 孔形状推定部
323 掘削具位置検証部
33 出力部
331 データ出力部
332 警報出力部
34 表示装置
35 端末装置
40 掘削具位置検出装置
50 距離計測器
60 ワイヤー(索状材)
70 ワイヤーリール
80 深度計
90 変位検出設備
H 掘削孔
P 表層ケーシング
M 安定液
L1 離間距離初期値
L2 ワイヤー間距離
L3 離間距離実測値
L4 離間距離実測値
H0 走査面高さ(深度0m地点から走査面までの距離)
H1 基準距離(走査面からロータリーテーブルまでの距離)
H2 掘削具高さ(掘削具からロータリテーブルまでの距離)
D0 削孔開始時のドリリングバケットの深度
D 削孔開始後のドリリングバケットの深度