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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128513
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】二酸化炭素の固定方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/02 20060101AFI20230907BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230907BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230907BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20230907BHJP
   B01D 53/80 20060101ALI20230907BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C04B40/02
C04B28/02
B01D53/14 210
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/80
B28B11/24
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032891
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】サンジェイ パリーク
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA07
4D002DA70
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB04
4D020AA03
4D020BA30
4D020BB01
4D020BB05
4D020CA04
4D020CA05
4D020CB40
4D020CC14
4D020CC15
4D020DA01
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB03
4D020DB04
4G055AA01
4G055BA02
4G112RA00
4G112RA02
4G112RA05
(57)【要約】
【課題】鉄筋を含まないブロック状のコンクリートを用いて二酸化炭素を固定する方法を提供すること
【解決手段】この二酸化炭素の固定方法は、レディーミクストコンクリートを調製すること、レディーミクストコンクリートを成形すること、および400ppm以上100%以下の濃度で二酸化炭素を含むガス中で、成形されたレディーミクストコンクリートを養生すること含む。養生は、可撓性を有する袋、または固定容量の容器内で行ってもよい。この固定方法はさらに、成形されたレディーミクストコンクリートを可撓性を有するシートで覆うこと、およびシートで覆われた空間に二酸化炭素を含むガスを導入することをさらに含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レディーミクストコンクリートを調製すること、
前記レディーミクストコンクリートを成形すること、および
400ppm以上100%以下の濃度で二酸化炭素を含むガス中で、成形された前記レディーミクストコンクリートを養生すること含む、二酸化炭素の固定方法。
【請求項2】
前記養生は、可撓性を有する袋、または固定容量の容器内で行われる、請求項1に記載の固定方法。
【請求項3】
成形された前記レディーミクストコンクリートを可撓性を有するシートで覆うこと、および
前記シートで覆われた空間に前記ガスを導入することをさらに含む、請求項1に記載の固定方法。
【請求項4】
前記シートで覆う前に、成形された前記レディーミクストコンクリートをパレット上に配置すること、および
前記シートを前記パレットに固定して前記空間を封止することをさらに含む、請求項3に記載の固定方法。
【請求項5】
成形された前記レディーミクストコンクリートを囲む固定フレームを配置すること、および
前記シートを前記固定フレームに固定して前記空間を封止することをさらに含み、
前記固定フレームは、溝を有する第1のフレーム、および前記溝と噛み合う第2のフレームを有する、請求項3に記載の固定方法。
【請求項6】
硬化したコンクリートブロックを可撓性を有する袋内に配置すること、および
400ppm以上100%以下の濃度で二酸化炭素を含むガスを前記袋に供給することを含む、二酸化炭素の固定方法。
【請求項7】
硬化したコンクリートブロックを可撓性を有するシートで覆うこと、および
400ppm以上100%以下の濃度で二酸化炭素を含むガスを前記シートで覆われた空間に供給することを含む、二酸化炭素の固定方法。
【請求項8】
前記シートで覆う前に、前記コンクリートブロックを囲む固定フレームを配置すること、および
前記シートを前記固定フレームに固定することをさらに含み、
前記固定フレームは、溝を有する第1のフレーム、および前記溝と噛み合う第2のフレームを有する、請求項7に記載の固定方法。
【請求項9】
前記コンクリートブロックは、屋外に敷設されたコンクリートブロックである、請求項7または8に記載の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、コンクリートを用いて二酸化炭素を固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の二酸化炭素を固定する方法として、コンクリートを二酸化炭素を含むガスと接触させる方法が知られている。この方法では、レディーミクストコンクリートを硬化させて得られるコンクリートが養生槽内に配置され、大気よりも高い濃度の二酸化炭素を含むガスが養生槽に導入される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-149456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、鉄筋を含まないブロック状のコンクリート(以下、コンクリートブロック)を用いて二酸化炭素を固定する方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、コンクリートブロックの製造方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、二酸化炭素の固定方法である。この固定方法は、レディーミクストコンクリートを調製すること、レディーミクストコンクリートを成形すること、および400ppm以上100%以下の濃度で二酸化炭素を含むガス中で、成形されたレディーミクストコンクリートを養生すること含む。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、二酸化炭素の固定方法である。この固定方法は、硬化したコンクリートブロックを可撓性を有する袋内に配置すること、および400ppm以上100%以下の濃度で二酸化炭素を含むガスを袋に供給することを含む。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、二酸化炭素の固定方法である。この固定方法は、硬化したコンクリートブロックを可撓性を有するシートで覆うこと、および400ppm以上100%以下の濃度で二酸化炭素を含むガスをシートで覆われた空間に供給することを含む。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、コンクリートブロックの製造方法である。この製造方法は、レディーミクストコンクリートを調製すること、レディーミクストコンクリートを成形すること、および400ppm以上100%以下の濃度で二酸化炭素を含むガス中で、成形されたレディーミクストコンクリートを養生すること含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示すフローチャート。
図2】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法に適用可能な容器の模式的斜視図。
図3A】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法に適用可能な袋の模式的上面図。
図3B】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法に適用可能な袋の模式的端面図。
図4A】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法に適用可能な袋の一部の模式的端面図。
図4B】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法に適用可能な袋の一部の模式的端面図。
図5A】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的斜視図。
図5B】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的斜視図。
図6A】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的上面図。
図6B】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的端面図。
図7A】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的斜視図。
図7B】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的斜視図。
図8】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的端面図。
図9A】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的上面図。
図9B】本発明の実施形態の一つである二酸化炭素の固定方法を示す模式的端面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0012】
本明細書では、コンクリートとは、原料の一つであるセメントが水と反応して生成するセメント水和物が硬化することで得られる、流動性を示さない硬化物を指す。したがって、骨材を含まないモルタルもコンクリートの範疇に含まれる。コンクリートには直径が5mm以下の細骨材および直径が5mmを超える(例えば、5mmよりも大きく20mm以下、または10mm以上20mm以下)粗骨材を含んでもよい。一方、硬化前のコンクリート、すなわち、セメントと水を含み、かつ、完全に硬化せずに流動性を有する混合物をレディーミクストコンクリート(生コンクリートとも呼ばれる)と呼ぶ。レディーミクストコンクリートは、セメント、水、および骨材の他、AE剤(気泡分散剤)流動化剤、増粘剤などの添加剤を含んでもよい。
【0013】
本明細書では、「養生」とはレディーミクストコンクリートを硬化するための工程を指し、レディーミクストコンクリートを養生することにより、硬化したレディーミクストコンクリート、すなわちコンクリートが形成される。
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態の一つに係る二酸化炭素の固定方法について述べる。以下の説明から理解できるように、この二酸化炭素の固定方法では、成形されたレディーミクストコンクリートの養生時に二酸化炭素が用いられ、二酸化炭素が固定されるとともに、得られるコンクリートの強度を増大させることができる。このため、この二酸化炭素の固定方法は、コンクリートブロックの製造方法と言うこともでき、したがって、本発明の実施形態は、コンクリートブロックの製造方法も含む。
【0015】
本発明の実施形態の一つに係る二酸化炭素の固定方法のフローチャートを図1に示す。図1に示すように、本固定方法では、最初にレディーミクストコンクリートを調製・成形する。その後、レディーミクストコンクリートは養生(一次養生)され、引き続き、二酸化炭素を含むガス中で養生(二次養生)され、二酸化炭素を固定したコンクリートブロックが得られる。
【0016】
1.レディーミクストコンクリートの調製
レディーミクストコンクリートは、セメント、骨材、水、および添加剤を混合することで調製される。セメントの種類に制約はなく、普通ポルトランドセメント、酸化鉄を含む白色ポルトランドセメント、アルミナを含むアルミナセメント、鋼材の製造工程で副生する高炉スラグが添加された高炉セメント、石灰灰の燃焼時に副生するフライアッシュセメントが添加されたフライアッシュセメント、焼却灰や汚泥などの廃棄物を含むエコセメントなどを用いることができる。骨材としては、砂、砂利、軽石、高炉スラグなどを用いてもよく、あるいは、廃棄されたコンクリートを破砕して得られる再生砕石を用いてもよい。セメントと骨材の重量比も、得られるコンクリートブロックに求められる特性を考慮して適宜設定すればよく、例えば、セメントに対して3倍以上10倍以下の重量の骨材を使用すればよい。水/セメント比にも制約はないが、10%から100%の範囲から選択すればよい。添加剤としては、上述した各種添加剤をコンクリートブロックの用途などに応じて適宜用いればよい。
【0017】
さらに、骨材と共に、あるいは骨材に替わり、フライアッシュやスラグ、バイオマス灰や焼却灰などの灰、シリカヒュームなどを混和材として加えてもよい。混和材の量も適宜決定すればよいが、水結合材比(W/B)が10%以上100%以下となるように調整すればよい。ここで、結合材とはセメントと混和材を指し、水結合材比とはセメントと混和材の総質量に対する水の質量である。
【0018】
以上の工程により、流動性を有するレディーミクストコンクリートが得られる。ただし、ここで得られるレディーミクストコンクリートは高い流動性を有する必要は無く、パサパサの状態でもよい。すなわち、ここまでの工程で得られるレディーミクストコンクリートは、セメントや骨材、混和材などの各成分の間に大量の空隙を有し、外部から力が加わった場合に容易に変形する固体の状態を有していればよい。
【0019】
2.成形
成形は、レディーミクストコンクリートを鋳型に充填し、加圧することで行われる。加圧時の圧力は、例えば1MPa以上10MPa以下の範囲から選択すればよい。このとき、鋳型の内部全体に高密度でレディーミクストコンクリートが充填されるよう、振動を加えて鋳型に混入した空気を除去してもよい。なお、鋳型内部には鉄筋は配置されない。
【0020】
3.一次養生
この後、一次養生が行われる。一次養生とは、成形されたレディーミクストコンクリートが流動性を保持し、かつ、自立可能な状態まで硬化する工程である。ここで、自立可能な状態とは、外部から力を加えても容易に変形せず、成形によって創り出された三次元形状を維持できる状態を指す。したがって、一次養生ではレディーミクストコンクリートは完全に硬化せず、硬化前のコンクリートブロックを与える。
【0021】
一次養生は、レディーミクストコンクリートが鋳型に充填された状態で行ってもよいが、成形直後のレディーミクストコンクリートが、外力を加えると変形し得るものの、重力以外の外力が無い場合にはその形状を維持できる状態であれば、脱型した後に行ってもよい。一次養生は、室内行ってもよく、屋外で行ってもよい。あるいは、養生は専用の養生室で行ってもよい。一次養生の温度は室温でもよいが、室温以上の高温で行ってもよい。また、一次養生において、高温の蒸気をレディーミクストコンクリートに吹き付けてもよい。鋳型内で一次養生を行う場合には、一次養生中、または終了後にレディーミクストコンクリートが鋳型から取り出される。
【0022】
4.二次養生
鋳型から取り出されたレディーミクストコンクリートは、その後、二次養生される。二次養生では、完全に硬化されるまで、一次養生によってされたレディーミクストコンクリートが二酸化炭素を含むガス中で養生される。二次養生は、例えば図2に示す固定容量を有する耐圧性の容器100で行うことができる。容器100の容量はコンクリートブロック160の大きさや形状に基づいて決定すればよい。また、容器100は複数のコンクリートブロック160が収容できるように構成してもよい。容器100は、本体102と蓋104を有し、蓋104と本体102によって内部が密閉できるように容器100が構成される。本体102と蓋104は、例えば鉄やアルミニウム、ステンレスなどの金属、あるいは樹脂を含んでもよい。図2に示す容器100は本体102と蓋104が分離されているが、本体102と蓋104は互いに接続され、蝶番などを用いて開閉できるように容器100を構成してもよい。
【0023】
本体102または蓋104には、排気装置に接続される排気管114や、二酸化炭素を含むガスを充填するためのインレット108が設けられる。インレット108は、バルブ106によって開閉できるように構成されてもよい。任意の構成として、容器100は、内部の圧力を測定するための圧力計110を備えてもよい。圧力計110は蓋104に接続されてもよく、図示しないが、本体102またはインレット108に接続されてもよい。さらに、蓋104、本体102、またはインレット108に、水または水蒸気を注入するための注水管112を設けてもよい。図示しないが、容器100はさらに、内部の湿度を測定するための湿度計や二酸化炭素濃度を測定するための濃度計などを有してもよい。
【0024】
あるいは、図3A図3Aの鎖線A-A´に沿った端面の模式図(図3B)に示すように、二次養生は、一つまたは複数のコンクリートブロック160が収容可能な可撓性の袋120内で行ってもよい。袋120は可視光を透過する材料を含んでもよく、あるいは可視光を透過しない材料を含んでもよい。例えば、袋120は、ポリエチレンやポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン-ビニルアルコール共重合体などのガスバリア性の高い高分子材料を含んでもよい。あるいは、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトンなどの機械的強度の高い高分子(例えば、エンジニアリングプラスチック)の繊維を用いて袋120を構成してもよい。この繊維には、ガラス繊維や炭素繊維が複合されていてもよい。袋120を構成する材料のガス透過性が高い場合には、袋120内側および/または外側をアルミニウムなどの金属膜でコーティングしてもよい。
【0025】
袋120は、一つまたは複数のコンクリートブロック160を出し入れできるよう、少なくとも一端が開放される。この開放端には、袋120の内部を密閉できるよう、チャック122が設けられてもよい。さらに、袋120内部の空気を二酸化炭素を含むガスで置換し、かつ、袋120内部を密閉できるよう、キャップ構造124を設けてもよい。キャップ構造124の構成は任意に決定すればよく、袋120の内部空間を開放し、かつ、密閉できる構造であれば任意の構成を適用することができる。例えば図3Aの鎖線B-B´に沿った端面の模式図(図4A)に示すように、キャップ構造124は、袋120に取り付けられるリング126、リング126を塞ぐキャップ130で構成されてもよい。リング126は、内壁に雌ねじ構造を有してもよく、キャップ130もリング126に噛み合う雄ねじ構造を有するスクリューキャップでもよい。これにより、キャップ130の一部をリング126に挿入するまたは捩じ込むことで、リング126の開口128を閉じることができる。
【0026】
あるいは、図5A図5Bに示すように、複数のコンクリートブロック160をパレット140上に配置し、可撓性のシート142で複数のコンクリートブロック160覆い、シート142で覆われた空間で二次養生を行ってもよい。パレット140は、コンクリート、鉄やステンレスなどの金属、木材などで構成すればよい。一方、シート142は、袋120で使用可能な材料を含むことができ、シート142の片面または両面は金属膜でコーティングされていてもよい。シート142には、上述したキャップ構造124と同様のキャップ構造144が設けられてもよい。
【0027】
シート142とパレット140の間から二酸化炭素を含むガスが漏洩しないよう、シート142とパレット140を固定するための固定機構をパレット140に設けてもよい。固定機構に制約はなく、パレット140の端部の一部の模式的上面図(図6A)とその鎖線C-C´に沿った端面の模式図(図6B)に示すように、パレット140に設けられる溝、およびこの溝に噛み合い、配置されたコンクリートブロック160を囲むように構成される一つまたは複数のリム146を固定機構として採用することができる。パレット140の溝とシート142が重なるようにコンクリートブロック160をシート142で覆い、シート142の端部を溝とリム146で挟むことで、シート142に覆われた空間が封止される。
【0028】
あるいは、図7A図7Bに示すように、パレット140に替わり、複数のコンクリートブロック160を囲むフレーム148を配置し、コンクリートブロック160とフレーム148を覆うようにシート142でコンクリートブロック160を覆い、シート142で覆われた空間で二次養生を行ってもよい。この場合、コンクリートブロック160やフレーム148は地面に直接配置してもよく、パレット140の上にコンクリートブロック160とフレーム148を配置してもよい。パレット140と同様、フレーム148もコンクリート、鉄やステンレスなどの金属、木材などで構成してもよく、あるいは樹脂で構成してもよい。フレーム148の模式的端面図(図8)に示すように、フレーム148にもリム146と噛み合う溝を設けてもよい。この構成により、フレーム148とリム146でシート142を挟んで固定することができるため、二酸化炭素を含有するガスの漏洩を抑制することができる。
【0029】
二次養生の温度も任意に設定することができる。例えば、容器100または袋120が置かれる環境の温度、またはシート142に覆われた状態のコンクリートブロック160が配置される環境の温度で行ってもよい。この場合、二次養生において温度制御は不要であり、これにより、低コストで二次養生を行うことができる。あるいは、容器100または袋120内に収容されたコンクリートブロック160を室内に配置し、40℃以上60℃以下の温度で二次養生を行ってもよい。
【0030】
二次養生における二酸化炭素を含むガスの二酸化炭素の濃度は、大気の二酸化炭素濃度よりも高い。より具体的には、二酸化炭素濃度は、400ppm以上100%以下の濃度から適宜選択される。二酸化炭素を含むガスは、二酸化炭素が充填されたボンベから供給してもよく、あるいは、二次養生を行う現場付近に二酸化炭素を大量に排出する施設(化学プラント、ゴミ焼却施設、火力発電所、その他各種工場など)が既設されている場合、これらの施設で排出されるガス、または排出ガスに対して脱塵、脱硫、脱硝などを行うことで得られる精製された二酸化炭素を二酸化炭素を含むガスとして利用してもよい。この場合、これらの施設が二酸化炭素を含むガスの供給源として機能し、二酸化炭素を運搬するためのコストが削減され、運搬に伴う二酸化炭素の更なる排出が防止される。
【0031】
図示しないが、二酸化炭素を含むガスに加湿器を接続し、水蒸気を添加して二酸化炭素を含むガスの湿度を適宜調整してもよい。
【0032】
固定容量を有する容器100を用いる場合には、二酸化炭素を含むガスの導入は、インレット108を用いて行えばよい。例えば、バルブ106を開けた後、インレット108に図示しないロータリーポンプなどの排気装置を接続する。その後、容器100内の圧力が例えば10Pa以上1000Paになるように排気(脱気)する。排気時間も任意であり、1分以上1日以下の範囲から適宜設定すればよい。その後、二酸化炭素を含むガスを導入し、バルブ106を閉鎖する。容器100内の二酸化炭素を含むガスの圧力は、1気圧(0.10MPa)以上が好ましく、0.20MPa以上2MPa以下、または0.5MPa以上1MPa以下がさらに好ましい。圧力計110が設けられている場合、圧力計から得られる容器100内の圧力をモニターし、一定の圧力になるように二酸化炭素を含むガスを断続的に供給してもよい。
【0033】
袋120を用いる場合には、袋120に一つまたは複数のコンクリートブロック160を配置し、チャック122を閉じる。その後、キャップ構造124のキャップ130を外し、開口128に排気装置を接続し、内部を排気する。その後、二酸化炭素を含むガスを供給するための供給管132を開口128に接続し(図4B参照。)、二酸化炭素を含むガスを袋120内に導入し、キャップ130を閉じればよい。二酸化炭素を含むガスの圧力は、上述した範囲から適宜選択される。
【0034】
なお、チャック122やキャップ構造124が設けられない袋120を用いる場合には、開放端を狭め、狭められた開放端に排気装置を接続し、内部を排気する。その後、二酸化炭素を含むガスを開放端から導入し、開放端を結んで内部を密閉してもよい。この場合には、二酸化炭素を含むガスを供給する供給管132に開放端を固定した状態を維持しつつ、二酸化炭素を含むガスを断続的に、または定常的に供給してもよい。
【0035】
シート142を用いる場合には、まず、パレット140またはフレーム148を配置する。その後、パレット140上に複数のコンクリートブロック160を配置する、または、フレーム148に囲まれるように複数のコンクリートブロック160を配置する。その後、シート142でコンクリートブロック160を覆い、リム146を用いてシート142をパレット140またはフレーム148に固定する。その後、キャップ構造144を利用してシート142に覆われた空間を排気し、この空間に二酸化炭素を含むガスを供給する。二酸化炭素を含むガスの供給は、定常的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0036】
なお、シート142を固定するための固定機構を用いない場合には、土嚢、金属製ロッドなどの重量物を用いてシート142を固定し、シート142とパレット140の間、またはシート142とフレーム148の間に供給管132を挿入し、二酸化炭素を含むガスを定常的にまたは断続的に供給してもよい。
【0037】
二次養生の時間は、温度、二酸化炭素を含むガスの湿度と二酸化炭素濃度、コンクリートブロックの大きさ、水/セメント比などに応じて適宜決定すればよく、例えば1日以上1ヶ月以下、1日以上10日以下の範囲から選択すればよい。二次養生が終了した後、供給された二酸化炭素を含むガスをポンプで吸引してタンクなどの容器内に回収し、再度二次養生に利用してもよい。
【0038】
以上の工程により、二酸化炭素をコンクリートブロック160に固定することができ、かつ、二酸化炭素が固定された、鉄筋を含まないコンクリートブロック160を提供することができる。この方法では、コンクリートブロック160を養生するための専用の養生槽が不要であるため、二次養生を行うための設備の建造に必要なコストを大幅に削減することができる。このため、より低コストで大量の二酸化炭素を固定することができる。実際、実施例で述べるように、本固定方法により、大気下で二酸化炭素を固定する場合と比較し、約40倍から50倍の二酸化炭素を固定することが可能である。さらに、特にシート142や袋120を用いる場合には、シート142や袋120は可撓性を有するため、コンクリートブロック160の大きさや形状が多様に変化しても、本固定方法を適用することができる。したがって、様々な大きさや形状を有するコンクリートブロック160の製造が可能となるとともに、コンクリートブロック160の大きさや形状に制約を受けることなく二酸化炭素の固定が可能である。
【0039】
さらに、本方法で製造されるコンクリートブロック160は大量の二酸化炭素を固定するため、高い強度を有するコンクリートブロックを提供することが可能である。実施例で述べるように、本方法を適用することで、大気下で二次養生した場合と比較し、圧縮強度が数%から十数%程度増大したコンクリートブロック160を製造することが可能である。
【0040】
<第2実施形態>
本実施形態では、成形後のレディーミクストコンクリートを硬化して得られるコンクリートブロックに対して二酸化炭素を固定する方法について説明する。第1実施形態と同様または類似する構成については、説明を割愛することがある。
【0041】
1.コンクリートブロックの作製
本実施形態では、まず、レディーミクストコンクリートを鋳型に充填し、加圧し、その後、一時養生が行われ、鋳型から取り出される。一時養生されたレディーミクストコンクリートは、大気下において、室温または40℃以上60℃以下の温度で二次養生されて硬化し、コンクリートブロックが得られる。ここまでの工程は、公知の方法を適宜適用して行うことができるので、詳細な説明は割愛する。
【0042】
2.二酸化炭素の固定
二酸化炭素の固定に供されるコンクリートブロックは、敷設される前のコンクリートブロックでもよく、あるいは道路や法面、崖面などに既に敷設されたコンクリートブロックでもよい。二酸化炭素の固定は、第1実施形態で述べた二次養生と同様に行えばよい。具体的には、一つまたは複数のコンクリートブロックを第1実施形態で述べた固定容量の容器100または可撓性の袋120に収容する(図2図3A図3B参照)。敷設されたコンクリートブロックを用いる場合には、敷設された状態のコンクリートブロックを引き剥がし、容器100または袋120に収容すればよい。その後、第1実施形態で述べたように、容器100または袋120内を排気し、さらに容器100または袋120に二酸化炭素を含むガスを注入する。二酸化炭素を含むガスの注入は一度でもよく、断続的に複数回行ってもよく、あるいは定常的に行ってもよい。
【0043】
あるいは、複数のコンクリートブロックをパレット140上に配置する、または、フレーム148に囲まれるように配置する(図5A図5B図7A図7B参照。)。その後、シート142を用いて複数のコンクリートブロックを覆い、コンクリートブロックで覆われた空間を排気し、この空間に二酸化炭素を含むガスを供給する。二酸化炭素を含むガスの供給は一度でもよく、断続的に複数回行ってもよく、あるいは定常的に行ってもよい。
【0044】
上述した工程により、コンクリートブロックは高濃度で二酸化炭素を含むガスと接触する。この時の条件、例えば温度、湿度、接触時間などは、第1実施形態で述べたそれと同様の条件を選択すればよい。
【0045】
本固定方法では、敷設されたコンクリートブロックに直接二酸化炭素を含むガスを接触させてもよい。この場合、例えば図9Aに示すように、溝が形成されたフレーム148を、敷設された複数のコンクリートブロック162を囲むように配置する。この後、図9Aの鎖線D-D´に沿った端面の模式図(図9B)に示すように、敷設された状態のコンクリートブロック162を覆うようにシート142を被せ、シート142をフレーム148とリム146を用いて固定する。さらに、キャップ構造144を用いてシート142に覆われた空間を排気し、その後、この空間に二酸化炭素を含むガスを導入すればよい。なお、コンクリートブロックが略水平面に平行に敷設されている場合には、固定機構を用いず、シート142を土嚢などの重量物で固定してもよい。
【0046】
この方法では、敷設されたコンクリートブロックの回収と再敷設が不要となるので、より短時間で二酸化炭素の固定を行うことができる。また、コンクリートブロックに含まれる水酸化カルシウムと二酸化炭素の反応による炭酸カルシウムの生成によってコンクリートブロックが膨張すると、コンクリートブロック回収前の初期状態を再現することが困難となるが、本方法を用いることで、初期状態を容易に維持することができるとともに、コンクリートブロック間の摩擦力を増大することができるので、より強固にコンクリートブロック同士を接合させることができる。
【実施例0047】
本実施例では、容器100を用い、硬化したコンクリートブロックに二酸化炭素を固定した例について説明する。
【0048】
1.コンクリートブロックの作製
1m3あたり350kgの普通ポルトランドセメント、150kgの水、100kgの高炉スラグ微粉末、100kgの細骨材(粒径5mm以下)、333kgの粗骨材(粒径5mmから10mm)、および20kgの混和材を混合してレディーミクストコンクリートを調製した。この時の水セメント比は43%であり、水結合材比は33%であった。得られたレディーミクストコンクリートを100mm×200mm×60mmの鉄製鋳型に充填し、鋳型の上から100mm×200mmの金属製治具を用いて8MPaの圧力で加圧・圧縮した。その後、レディーミクストコンクリートを鋳型から取り出し、温度20℃、湿度50%の高温恒湿室で7日間養生することでコンクリートブロックを作製した。この段階におけるコンクリートブロックを比較例とする。
【0049】
上記コンクリートブロックを直径400mm、高さ600mmの円筒形耐圧性容器に配置した。真空ポンプを用いて内部を3時間脱気した後、容器内の圧力が0.5MPaを維持するように100%の濃度の二酸化炭素を24時間導入することで実施例のコンクリートブロックを作製した。比較例と実施例のn数はそれぞれ5であった。
【0050】
2.結果
比較例と実施例のコンクリートブロックの質量を比較したところ、後者は前者よりも3%から4%高いことが確認された。比較例と実施例のコンクリートブロック中の炭酸カルシウムを熱重量示唆熱分析装置(リガク社製TG-DTA)を用いて定量し、得られた炭酸カルシウムの量から二酸化炭素の固定量を算出した結果、比較例では2kg/m3から5kg/m3であったのに対し、実施例では80kg/m3から100kg/m3であった。さらに、実施例のコンクリートブロックを切断し、フェノールフタレインの1%エタノール溶液を指示薬としてコンクリートブロックの断面に吹きかけた結果、断面全体に指示薬の呈色が確認された。このことから、実施例では、コンクリートブロックの略全体に亘って二酸化炭素が固定されていることが分かった。
【0051】
JISA1108の規定に従って圧縮強度を測定した結果、比較例と実施例のコンクリートブロックの圧縮強度はそれぞれ24N/mm2、28N/mm2であった。このことから、本発明の実施形態の一つであるコンクリートブロックの製造方法により、圧縮強度の高いコンクリートブロックを製造できることが確認された。
【0052】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0053】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0054】
100:容器、102:本体、104:蓋、106:バルブ、108:インレット、110:圧力計、112:注水管、114:排気管、120:袋、122:チャック、124:キャップ構造、126:リング、128:開口、130:キャップ、132:供給管、140:パレット、142:シート、144:キャップ構造、146:リム、148:フレーム、160:コンクリートブロック、162:コンクリートブロック
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B