(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128515
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】防水枠
(51)【国際特許分類】
F16J 15/14 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
F16J15/14 C
F16J15/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032893
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇気
(57)【要約】
【課題】固定対象と固定箇所との境界、及びボルト等の締結部の防水が可能な防水枠を提供する。
【解決手段】防水枠1は、外枠2と、内枠3とを備え、外枠2は、底面4と、底面4の外縁に沿って形成される外壁5とを備える上方に向けて開口する直方体形状であり、底面4は、中央に外枠貫通孔6が形成されると共に、外壁5近傍に複数の外枠流出孔7が形成され、内枠3は、外枠2の底面4の上部を閉塞する部材であり、上面視で外枠2の外壁5と相似関係の輪郭を有し、上面視中央に、外枠貫通孔6と同サイズの内枠貫通孔8が形成されると共に、周縁近傍に複数の内枠流出孔9が形成され、外枠2の底面4を内枠3で閉塞した際、外枠2と内枠3との間に形成される空間が充填空間11となり、充填空間11にゲル状のコーキング材12が充填されると共に、この充填空間11の容積が、内枠3の上下方向の摺動で変化する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠と、内枠とを備える防水枠であって、
前記外枠は、底面と、前記底面の外縁に沿って形成される外壁とを備える上方に向けて開口する直方体形状であり、
前記底面は、中央に外枠貫通孔が形成されると共に、前記外壁近傍に複数の外枠流出孔が形成され、
前記内枠は、前記外枠の前記底面の上部を閉塞する部材であり、上面視で前記外枠の前記外壁と相似関係の輪郭を有し、上面視中央に、前記外枠貫通孔と同サイズの内枠貫通孔が形成されると共に、周縁近傍に複数の内枠流出孔が形成され、
前記外枠の前記底面を前記内枠で閉塞した際、前記外枠と前記内枠との間に形成される空間が充填空間となり、
前記充填空間にゲル状のコーキング材が充填されると共に、この充填空間の容積が、前記内枠の上下方向の摺動で変化することを特徴とする防水枠。
【請求項2】
前記内枠貫通孔の周縁には、前記外枠の前記底面を塞ぐように前記内枠を前記外枠の上方から取り付けた際、前記外枠貫通孔の外周に沿って前記外枠貫通孔に挿入されるように下方に向けて突出する内壁が形成されることを特徴とする請求項1に記載の防水枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定対象を固定箇所に固定する際、固定対象と固定箇所との境界、及びボルトやビスの締結部の防水が可能な防水枠に関する。
【背景技術】
【0002】
固定対象を固定する方法として、ボルトやビス等の締付方式の固定具を用いた締結は広く用いられている。この時、ボルト等は差込孔周辺の防水効果を備えないため、差込孔から固定対象内に水が浸入することを防ぎたい場合等においては、差込孔及びその周辺部にシリコン等によるコーキングを施す必要があった。そのため、締結箇所の数が多数に亘る場合等、コーキング作業に要する時間が嵩むことが問題となっていた。
そのような中、特許文献1には、ワッシャ本体にゴム製のブッシュを嵌め込むことで、ボルトを締め付けた際、ボルトの締付力がボルトの頭部とワッシャ本体とを介してブッシュに負荷され、ブッシュが固定対象物表面で変形し、ボルト嵌挿孔を密封する防水ワッシャが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、固定対象によっては、固定対象を屋外の固定箇所に固定する場合等、固定対象と固定箇所との境界からの浸水を防止したい場合がある。しかし、特許文献1に記載の防水ワッシャは、固定対象の固定に利用されるボルト嵌挿孔の密封は可能となるが、固定対象と固定箇所との境界からの浸水を防止することはできない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、固定対象と固定箇所との境界、及びボルト等の締結部の防水が可能な防水枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、外枠と、内枠とを備える防水枠であって、外枠は、底面と、底面の外縁に沿って形成される外壁とを備える上方に向けて開口する直方体形状であり、底面は、中央に外枠貫通孔が形成されると共に、外壁近傍に複数の外枠流出孔が形成され、内枠は、外枠の底面の上部を閉塞する部材であり、上面視で外枠の外壁と相似関係の輪郭を有し、上面視中央に、外枠貫通孔と同サイズの内枠貫通孔が形成されると共に、周縁近傍に複数の内枠流出孔が形成され、外枠の底面を内枠で閉塞した際、外枠と内枠との間に形成される空間が充填空間となり、充填空間にゲル状のコーキング材が充填されると共に、この充填空間の容積が、内枠の上下方向の摺動で変化することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成に加え、内枠貫通孔の周縁には、外枠の底面を塞ぐように内枠を外枠の上方から取り付けた際、外枠貫通孔の外周に沿って外枠貫通孔に挿入されるように下方に向けて突出する内壁が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び2に記載の発明によれば、固定対象と固定箇所との間に防水枠を挿入することで、ボルト等を用いて固定対象を防水枠ごと固定箇所に固定する際、ボルト等の締め付けに伴い、固定対象が内枠を押し込み、充填空間の容積が減少し、充填空間に充填されたコーキング材が外枠流出孔及び内枠流出孔から流出する。流出したコーキング材により、ボルト等と固定対象及び防水枠に設けられたボルト等の螺着孔との隙間、固定対象と防水枠との隙間、及び防水枠と固定箇所との隙間をコーキングすることができ、固定対象と固定箇所との境界、及びボルト等の締結部に確実な防水処理を容易に施すことができる。また、締結作業に要する時間のみでコーキング作業を同時に行えるため、作業時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の防水枠を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【
図2】本発明の防水枠の中央縦断面の一部を示す説明図である。
【
図3】本発明の防水枠の使用例を示す説明図である。
【
図4】本発明の防水枠の使用時における締結部の中央縦断面図であり、(a)はコーキング材の流出前、(b)はコーキング材の流出後である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の防水枠を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
図2は、本発明の防水枠の中央縦断面の一部を示す説明図である。
防水枠1は、
図1(a)に示すように、外枠2と、内枠3とを備える。
外枠2は、
図1(b)に示すように、底面4と、外枠2の外縁に沿って形成される四角柱状の外壁5とを備え、上方に向けて開口している中空直方体形状である。底面4の中央には、固定対象Bとして分電盤等の背面から配線を通すようなものを採用する場合に、当該配線を挿通可能な所定径で四角形状の外枠貫通孔6が形成されている。また、底面4の外壁5近傍には、底面4を貫通する外枠流出孔7が所定数形成されている。
【0010】
内枠3は、外枠2の底面4の上部を閉塞する部材であって、上面視で外枠2の外壁5と相似関係の輪郭を有し、本実施の形態における輪郭は、外壁5の内面に沿う四角形状であり、内枠3の中央には、外枠貫通孔6と同等の大きさを有する内枠貫通孔8が形成される。また、内枠3の周縁近傍には、内枠3の天板3aを貫通する内枠流出孔9が所定数形成される。さらに、外枠2の底面4を塞ぐように内枠3を外枠2の上方から取り付けた際、外枠貫通孔6の外周に沿って外枠貫通孔6に挿入されるように下方に向けて突出する内壁10が形成されている。
【0011】
防水枠1は、外枠2に対し、外枠2の開口側(上方)から、外枠2の底面4の上部を閉塞するように内枠3を取り付けることで形成される。この時、
図2に示すように、外枠2と内枠3との間に形成される空間が、充填空間11となり、充填空間11にゲル状のコーキング材12が充填される。また、内枠3は、外枠2に対し、上下方向に摺動可能であり、内枠3の摺動により充填空間11の容積が変化する。
【0012】
図3は本発明の防水枠の使用例を示す説明図である。
図4は、本発明の防水枠の使用時における締結部の中央縦断面図であり、
図4(a)はコーキング材の流出前、
図4(b)はコーキング材の流出後である。
防水枠1は、
図3に示すように、固定対象Bを所定の固定箇所に固定する際、固定対象Bと固定箇所のとの間に挿入される。なお、実際には、地面に垂直な壁面Wを固定箇所として、壁面Wに設けられた設置穴Hに固定対象Bを取り付ける場合が想定されるが、
図3及び4では、防水枠1が
図1及び2と同方向を向くように図示している。
壁面Wへの固定対象Bの取り付けは、まず、壁面Wに穿設された設置穴Hに内壁10が挿入されるように防水枠1を取り付け、防水枠1の外壁5で囲まれた区域に納まるように固定対象Bを防水枠1の内枠3の天板3aに当接させる。そして、固定対象B及び防水枠1に予め設けられたボルト挿入用の孔にボルト13を挿通し、設置穴Hにボルト13を螺着することで固定対象B及び防水枠1が壁面Wに固定される。なお、壁面Wにボルト13を螺着する際、アンカーを設ける必要があればアンカーを予め設けておく必要があるが、設置穴Hがアンカーを必要としない程度に強固な場合はその限りではない。
【0013】
この時、ボルト13を締め込んでいくと、
図4(a)に示す状態から
図4(b)に示すように、内枠3に固定対象Bを介して外力が加わり、外枠2に対し内枠3が押し込まれる。内枠3が押し込まれるのに伴い、充填空間11の容積が減少し、充填空間11に充填されたコーキング材12が、外枠流出孔7及び内枠流出孔9を介して充填空間11の外部へ流出する。これにより、外枠流出孔7及び内枠流出孔9から流出したコーキング材12が、ボルト13と固定対象B及び防水枠1に設けられたボルト13の挿通孔との隙間(図示せず)、固定対象Bと防水枠1との隙間、並びに防水枠1と壁面W及び設置穴Hとの隙間に流れ込み、これらの隙間をコーキングすることができる。よって、固定対象Bと壁面Wとの間に防水枠1を挿入することで、固定対象Bを取り付ける作業を行うだけで固定対象B、防水枠1、壁面W及び設置穴Hの隙間に確実な防水処理を容易に施すことができる。
【0014】
上記形態の防水枠1は、外枠2と、内枠3とを備え、外枠2は、底面4と、底面4の外縁に沿って形成される外壁5とを備える上方に向けて開口する直方体形状であり、底面4は、中央に外枠貫通孔6が形成されると共に、外壁5近傍に複数の外枠流出孔7が形成され、内枠3は、外枠2の底面4の上部を閉塞する部材であり、上面視で外枠2の外壁5と相似関係の輪郭を有し、上面視中央に、外枠貫通孔6と同サイズの内枠貫通孔8が形成されると共に、周縁近傍に複数の内枠流出孔9が形成され、外枠2の底面4を内枠3で閉塞した際、外枠2と内枠3との間に形成される空間が充填空間11となり、充填空間11にゲル状のコーキング材12が充填されると共に、この充填空間11の容積が、内枠3の上下方向の摺動で変化する。
また、内枠貫通孔8の周縁には、外枠2の底面4を塞ぐように内枠3を外枠2の上方から取り付けた際、外枠貫通孔6の外周に沿って外枠貫通孔6に挿入されるように下方に向けて突出する内壁10が形成される。
このようにして構成される防水枠1によれば、固定対象Bと設置穴Hとの間に防水枠1を挿入することで、ボルト13を用いて固定対象Bを防水枠1ごと設置穴Hに固定する際、ボルト13の締め付けに伴い、固定対象Bが内枠3を押し込み、充填空間11の容積が減少し、充填空間11に充填されたコーキング材12が外枠流出孔7及び内枠流出孔9から流出する。流出したコーキング材12により、ボルト13と固定対象B及び防水枠1に設けられたボルト13の螺着孔との隙間、固定対象Bと防水枠1との隙間、並びに防水枠1と壁面W及び設置穴Hとの隙間をコーキングすることができ、固定対象Bと壁面Wとの境界、及びボルト13の締結部に確実な防水処理を容易に施すことができる。また、締結作業に要する時間のみでコーキング作業を同時に行えるため、作業時間を短縮できる。
【0015】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。
例えば、防水枠を構成する素材は、金属であっても樹脂であっても良い。
また、外枠の外壁や外枠貫通孔、内枠貫通孔等の寸法は、形成される充填空間が、締結部の確実な防水を可能とする量のコーキング材を充填可能であれば、限定されない。
また、充填空間の容積、流出孔の形状、数及び大きさは、コーキング材の所望流出と固定対象の固定前の充填空間内へのコーキング材の保持とを両立できれば、任意に設定可能である。
また、コーキング材は、コーキング材として利用可能なゲル状の材料であれば、任意のコーキング材を選択できる。
また、図示していないが、内枠は内壁が形成されていない板状部材であっても良い。さらに、内枠の大きさは、外枠の外壁の内面から一回り程度小さな大きさであってもよい。
【符号の説明】
【0016】
1・・防水枠、2・・外枠、3・・内枠、4・・底面、5・・外壁、6・・外枠貫通孔、7・・外枠流出孔、8・・内枠貫通孔、9・・内枠流出孔、10・・内壁、11・・充填空間、12・・コーキング材、13・・ボルト。