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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128534
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】化合物の製造方法及び触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/22 20060101AFI20230907BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20230907BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20230907BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20230907BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20230907BHJP
   C07F 9/50 20060101ALN20230907BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
C07D277/22
C08G61/12
C07D487/04 137
C07D495/04 101
C07F15/00 C
C07F9/50
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032924
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】脇岡 正幸
(72)【発明者】
【氏名】仲里 巧
(72)【発明者】
【氏名】丸山 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】綾部 真嗣
【テーマコード(参考)】
4C050
4C071
4H039
4H050
4J032
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC04
4C050EE02
4C050FF10
4C050GG03
4C050HH03
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC12
4C071CC21
4C071DD40
4C071EE13
4C071FF16
4C071GG01
4C071GG02
4C071GG03
4C071JJ01
4C071LL03
4H039CA41
4H039CA42
4H039CD20
4H039CD60
4H039CD90
4H050AA03
4H050AB40
4H050AC20
4H050BA48
4H050BB11
4H050BE12
4H050WA11
4H050WA24
4H050WB11
4H050WB21
4J032BA04
4J032BA12
4J032BA15
4J032BA20
4J032BA25
4J032BB03
4J032BB04
4J032BB05
4J032BB06
4J032BC03
4J032CA03
4J032CA04
4J032CA12
4J032CA14
4J032CD02
4J032CE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】直接アリール化反応において、パラジウム以外の金属成分を用いることなく、利用可能なモノマーの選択肢を広げることができる化合物の製造方法及び触媒組成物を提供する。
【解決手段】第1芳香環構造を構成する第1炭素原子と第2芳香環構造を構成する第2炭素原子とが単結合により直結した第1部分構造を有する化合物の製造方法であって、上記第1芳香環構造を構成する上記第1炭素原子に水素原子が結合した部分構造を有する第1化合物と、上記第2芳香環構造を構成する上記第2炭素原子に塩素原子又はトリフルオロメタンスルホン酸基が結合した部分構造を有する第2化合物とを、パラジウム錯体及び2種のホスフィン化合物の存在下で反応させる工程を備える化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1芳香環構造を構成する第1炭素原子と第2芳香環構造を構成する第2炭素原子とが単結合により直結した第1部分構造を有する化合物の製造方法であって、
上記第1芳香環構造を構成する上記第1炭素原子に水素原子が結合した部分構造を有する第1化合物と、上記第2芳香環構造を構成する上記第2炭素原子に塩素原子又はトリフルオロメタンスルホン酸基が結合した部分構造を有する第2化合物とを、パラジウム錯体、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物の存在下で反応させる工程
を備える化合物の製造方法。
【化1】
(式(1)中、Meはメチル基である。
式(2)中、Cyはシクロヘキシル基であり、i-Prはイソプロピル基である。)
【請求項2】
上記反応工程において、パラジウム錯体、上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物に加え、塩基性化合物の存在下で反応を行う請求項1に記載の化合物の製造方法。
【請求項3】
上記第1化合物が下記式(3)で表される化合物であり、
上記第2化合物が下記式(4)又は下記式(5)で表される化合物である請求項1又は請求項2に記載の化合物の製造方法。
【化2】
(式(3)中、Arは置換又は非置換の芳香環構造である。sは1以上の整数である。)
【化3】
(式(4)及び(5)中、Xは、塩素原子又はトリフルオロメタンスルホン酸基である。
式(4)中、Arは、置換又は非置換の芳香環構造である。tは、1以上の整数である。tが2以上の場合、複数のXは互いに同一又は異なる。
式(5)中、2つのArは、それぞれ独立して、置換又は非置換の芳香環構造である。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基若しくはアリール基であるか、又は2つのRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に置換又は非置換の環構造を構成する。uは、1以上の整数である。uが2以上の場合、複数のRは同一又は異なる。)
【請求項4】
上記第1部分構造が下記式(6)又は下記式(7)で表される部分構造である請求項3に記載の化合物の製造方法。
【化4】
(式(6)及び(7)中、Arは、上記式(3)と同義である。Arは、上記式(4)と同義である。Ar、R及びuは、上記式(5)と同義である。)
【請求項5】
上記式(3)で表される化合物が下記式(3-1)~(3-4)で表される化合物である請求項3又は請求項4に記載の化合物の製造方法。
【化5】
(式(3-3)中、2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基、アルキルチオ基若しくはフッ素化アルキルチオ基であるか、又は2つのRが互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に置換又は非置換の脂環構造を構成する。
式(3-4)中、Rは、上記式(3-3)と同義である。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基、アルキルチオ基又はフッ素化アルキルチオ基である。)
【請求項6】
上記式(4)で表される化合物が下記式(4-1)で表される化合物である請求項3、請求項4又は請求項5に記載の化合物の製造方法。
【化6】
(式(4-1)中、Xは、上記式(4)と同義である。A及びBは、それぞれ独立して、置換又は非置換の芳香族炭化水素環構造である。Yは、下記式(Y-1)~(Y-5)で表される基である。)
【化7】
(式(Y-1)~(Y-4)中、2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基、アルキルチオ基又はフッ素化アルキルチオ基である。)
【請求項7】
上記式(5)で表される化合物が、ビスフェノール類から誘導されるトリフルオロメタンスルホン酸ジエステルである請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
直接アリール化反応に用いられる触媒組成物であって、
パラジウム錯体と、
下記式(1)で表される化合物と、
下記式(2)で表される化合物と
を含有する触媒組成物。
【化8】
(式(1)中、Meはメチル基である。
式(2)中、Cyはシクロヘキシル基であり、i-Prはイソプロピル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の製造方法及び触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香環構造を主鎖にもつ重合体は、高耐熱変形、高酸化耐性、高寸法安定性、高酸塩基耐性、低吸水性、低加水分解性などの既存材料にはない優れた特性を有しており、次世代の高速通信用材料や航空宇宙産業などの分野における次世代材料として広く注目されている。
【0003】
上記重合体の製造方法としては、鈴木・宮浦カップリング、右田・小杉・スティルカップリング等のカップリング反応を用いた製造方法が広く採用されてきた。
【0004】
鈴木・宮浦カップリングでは原料モノマーとして有機ホウ素化合物を用い、右田・小杉・スティルカップリングでは原料モノマーとして有機スズ化合物を用いる。上記有機金属化合物に由来する金属成分が材料中に残留することから、材料特性を低下させる要因となっていた。
【0005】
有機金属化合物を使用しない重合体の製造方法としては、モノマー構造に含まれる芳香環構造を構成する炭素原子とこの炭素原子に直結する水素原子との間の結合(C-H結合)を、パラジウムなどの遷移金属によって切断して、芳香族ハロゲン化物とカップリングさせる方法等が報告されている(下記特許文献1及び下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-251121号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Polym.Chem.2019,10,2298-2304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1には、H-Ar-Hとカップリングする原料モノマーとしてX-Ar-X(Xはハロゲン原子)が記載されている。しかしながら、上記特許文献1に記載された反応条件で収率良く反応が進行するのはXが臭素原子である場合に限られていた。また、Xが臭素原子であるモノマーはXが他のハロゲン原子(例えば、塩素原子)であるモノマーと比較して高価である。したがって、利用可能な原料モノマーの選択の幅を広げることや、より安価な原料モノマーを使用できる手法の開発が望まれている。
【0009】
上記非特許文献1には、原料モノマーとしてジクロロアリールモノマーを用い、触媒としてパラジウム/銅の二元触媒を用いることによって直接アリール化重縮合を実現し、高分子量ポリマーを良好な収率で生成できたことが記載されている。しかしながら、得られたポリマーには触媒由来の銅成分が残留するおそれがある。ポリマー中に銅成分が残留した材料を電子・通信用材料などとして使用すると、性能低下を招いてしまうおそれがある。また、ポリマー中に残留した銅成分の除去は難しい。したがって、金属成分の残留の少ない手法の開発が望まれている。
【0010】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、直接アリール化反応(DArP:Direct Arylation Polymerization)において、パラジウム以外の金属成分を用いることなく、利用可能なモノマーの選択肢を広げることができる化合物の製造方法及び触媒組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた発明は、第1芳香環構造を構成する第1炭素原子と第2芳香環構造を構成する第2炭素原子とが単結合により直結した第1部分構造を有する化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)の製造方法であって、上記第1芳香環構造を構成する上記第1炭素原子に水素原子が結合した部分構造を有する第1化合物(以下、「[B]化合物」ともいう)と、上記第2芳香環構造を構成する上記第2炭素原子に塩素原子又はトリフルオロメタンスルホン酸基が結合した部分構造を有する第2化合物(以下、「[C]化合物」ともいう)とを、パラジウム錯体、下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物(以下、2つの化合物をまとめて「ホスフィン化合物」ともいう)の存在下で反応させる工程(以下、「反応工程」ともいう)を備える化合物の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)である。
【化1】
(式(1)中、Meはメチル基である。
式(2)中、Cyはシクロヘキシル基であり、i-Prはイソプロピル基である。)
【0012】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、直接アリール化反応に用いられる触媒組成物であって、パラジウム錯体と、上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物とを含有する触媒組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法及び触媒組成物によれば、直接アリール化反応において、パラジウム以外の金属成分を用いることなく、利用可能なモノマーの選択肢を広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の製造方法及び触媒組成物について詳説する。
【0015】
<製造方法>
当該製造方法は、後述する[A]化合物を製造する方法である。当該製造方法は、[B]化合物と[C]化合物とを、パラジウム錯体、後述する式(1)で表される化合物及び後述する式(2)で表される化合物の存在下で反応させる工程(反応工程)を備える。
【0016】
当該製造方法は、上記反応工程以外の他の工程をさらに備えていてもよい。
【0017】
当該製造方法によれば、上記反応工程においてパラジウム触媒の配位子として特定の2種のホスフィン化合物を用いることで、金属成分としてパラジウムのみを用い、芳香族C-Clや芳香族C-ORなどのモノマーを用いることが可能となる。したがって、当該製造方法によれば、直接アリール化反応において、パラジウム以外の金属成分を用いることなく、利用可能なモノマーの選択肢を広げることができる。
【0018】
また、当該製造方法によれば収率良く[A]化合物を製造することができる。
【0019】
以下、当該製造方法が備える工程について説明する。
【0020】
[反応工程]
本工程では、[B]化合物と、[C]化合物とを、パラジウム錯体及び2種のホスフィン化合物の存在下で反応させる。本工程により、後述する[A]化合物が合成される。本工程における反応は、[B]化合物におけるC-H結合を[C]化合物により直接官能基化する直接アリール化反応である。
【0021】
本工程における反応温度としては、例えば50℃~160℃程度であり、60℃~120℃が好ましい。反応時間としては、例えば0.1時間~200時間程度であり、1時間~30時間が好ましい。
【0022】
本工程を行う雰囲気としては特に制限されないが、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気や真空等の触媒の失活を抑制できる雰囲気が好ましい。
【0023】
本工程は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられる。
【0024】
炭化水素系溶媒としては、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0025】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジフェニルエーテル、アニソールなどが挙げられる。
【0026】
アミド系溶媒としては、例えばN-メチルピロリドン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等などが挙げられる。
【0027】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン又はシクロペンチルメチルエーテルが好ましい。この場合、得られる[A]化合物の溶解性を向上させることができる。
【0028】
本工程では、パラジウム錯体、後述する式(1)で表される化合物及び後述する式(2)で表される化合物に加え、塩基性化合物の存在下で反応を行うことが好ましい。この場合、反応によって副生する強酸(H-X)を中和し、触媒の分解等の強酸による望ましくない反応を抑制することができる。
【0029】
塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、tert-ブトキシカリウム等の無機塩などが挙げられる。中でも、炭酸塩が好ましく、炭酸セシウムがより好ましい。炭酸セシウムは、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの金属炭酸塩よりも有機溶媒への溶解性が高く、反応によって副生する強酸による望ましくない反応をより抑制することができる。
【0030】
塩基性化合物の添加量としては、[B]化合物1モルに対して、通常0.5モル~100モルであり、0.9モル~20モルが好ましく、1モル~10モルがより好ましい。
【0031】
本工程において塩基性化合物として無機塩を添加する場合、無機塩の溶解性を向上させることができるため、通常、無機塩の水溶液として反応系に添加する。本工程では、水相及び有機相の2相の溶媒中で反応を行ってもよい。この場合、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相関移動触媒をさらに添加してもよい。
【0032】
本工程では、有機酸をさらに添加することが好ましい。この場合、本工程における触媒反応を促進することができる。有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバル酸、安息香酸等のカルボン酸、スルホン酸などが挙げられる。有機酸としては、有機溶媒への溶解性や精製の容易性の観点から、カルボン酸が好ましく、ピバル酸がより好ましい。
【0033】
有機酸の添加量としては特に制限されず、適宜決定することができる。本工程において塩基性化合物の存在下で反応を行う場合、有機酸の添加量としては、塩基性化合物1モルに対して、0.01モル~90モルが好ましく、0.1モル~70モルがより好ましい。
【0034】
([A]化合物)
[A]化合物は、第1芳香環構造を構成する第1炭素原子と第2芳香環構造を構成する第2炭素原子とが単結合により直結した第1部分構造を有する化合物である。第1芳香環構造は[B]化合物由来の芳香環構造であり、第2芳香環構造は[C]化合物由来の芳香環構造である。より詳細には、[A]化合物は、後述する[B]化合物における第1芳香環構造を構成する第1炭素原子-水素原子結合に対し、後述する[C]化合物における第2芳香環構造を構成する第2炭素原子-X結合を直接官能基化し、第1炭素原子-第2炭素原子結合を形成させた化合物である。
【0035】
[A]化合物は電子・通信用の機能性材料として好適に用いることができる。[A]化合物は、当該製造方法により製造されるため、パラジウム以外の金属成分の含有量が極めて低い。そのため、[A]化合物を電子・通信用の機能性材料として用いた場合、上記金属成分の含有による性能低下が少なく、性能の向上が期待される。
【0036】
[A]化合物は、パラジウム以外の金属成分の含有量が極めて低い。特に、当該製造方法では銅化合物を触媒成分として用いないため、銅成分の含有量として極めて低い値を実現することができる。[A]化合物における銅成分の含有量としては、50ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下がさらに好ましい。また、[A]化合物は実質的に銅成分を含有しないことが特に好ましい。「実質的に銅成分を含有しない」とは、[A]化合物に含まれる銅成分が検出限界未満であることを意味する。銅成分に代表される金属成分の含有量の測定方法としては、例えば原子吸光分析法、発光分光分析法、プラズマ発光分析法、蛍光X線分析法、プラズマ質量分析法、グロー放電質量分析法、イオンクロマトグラフ分析法などの元素分析法が挙げられる。
【0037】
本明細書において、「芳香環構造」には「芳香族炭化水素環構造」及び「芳香族複素環構造」が含まれる。芳香環構造のうち芳香族炭化水素環構造及び芳香族複素環構造を含む多環のものは「芳香族複素環構造」に該当するものとする。「多環」には、2つの環が2つの共有原子を有する縮合多環だけでなく、2つの環が共有原子を持たず、単結合で連結している環集合型の多環も含まれる。
【0038】
第1芳香環構造及び第2芳香環構造については、それぞれ後述の([B]化合物)及び([C]化合物)の項において説明する。
【0039】
上記第1部分構造としては、例えば下記式(6)又は下記式(7)で表される部分構造が挙げられる。
【0040】
【化2】
【0041】
上記式(6)及び(7)中、Arは、後述する式(3)と同義である。Arは、後述する式(4)と同義である。Ar、R及びuは、後述する式(5)と同義である。
【0042】
特に断りのない限り、本明細書において「化合物」は、「重合体」及び重合体でない「化合物」(すなわち、繰り返し単位を有しない化合物)の両方を包含する広義の化合物を意味する。
【0043】
[A]化合物は、重合体でない低分子化合物(以下、「[A1]化合物」ともいう)であってもよいし、繰り返し単位を有する重合体(以下、「[A2]重合体」ともいう)であってもよい。なお、「低分子化合物」との用語は、「重合体」を包含する広義の「化合物」と重合体を包含しない狭義の「化合物」とを文言上区別するために便宜的に用いているものであり、「低分子」との用語により「低分子化合物」の分子量が制限されることを意図するものではない。
【0044】
[A1]化合物としては、上記式(6)又は上記式(7)で表される部分構造を有する低分子化合物が挙げられる。
【0045】
[A1]化合物の分子量としては、例えば200~2000であり、230~1500が好ましい。[A1]化合物の分子量は、例えば、H-NMRによって目的とする分子構造が形成されていることを確認し、その構造から決定することができる。
【0046】
[A1]化合物としては、例えば下記式(A-1)~(A-6)で表される低分子化合物などが挙げられる。
【0047】
【化3】
【0048】
上記式(A-2)中、Meはメチル基である。上記式(A-5)中、Phはフェニル基である。上記式(A-6)中、Rは、2-デシルテトラデシル基である。
【0049】
[A2]重合体は、上記第1部分構造を繰り返し単位として有する重合体である。[A2]重合体としては、上記式(6)又は上記式(7)で表される部分構造を繰り返し単位として有する重合体が挙げられる。
【0050】
[A2]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)としては、2,000~1,000,000が好ましく、3,000~600,000がより好ましい。
【0051】
[A2]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(以下、「Mn」ともいう)としては、1,000~500,000が好ましく、1,500~300,000がより好ましい。
【0052】
[A2]重合体の分子量分布(以下、「Mw/Mn」ともいう)としては、1.5~5.0が好ましく、1.6~4.0がより好ましい。
【0053】
[A2]重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば溶離液としてテトラヒドロフランを用いたGPCシステム(東ソー(株)の「HLC-8420GPC」)又は溶離液としてクロロホルムを用いたGPCシステム(ポンプ:日本分光(株)の「PU-980」、RI検出器:日本分光(株)の「RI-1530」、カラム:昭和電工(株)の「SHODEX K-801」、「同K-803L」及び「同K-805L」)により測定することができる。分子量分布(Mw/Mn)は、上記Mw及びMnの測定値から算出した値である。
【0054】
[A2]重合体としては、下記式(A-7)~(A-10)で表される重合体が挙げられる。
【0055】
【化4】
【0056】
[A2]重合体としては、特に上記式(7)で表される部分構造を繰り返し単位として有する重合体が好ましい。換言すると、[A2]重合体としては、下記式(8)で表される繰り返し単位を有する重合体(以下、「[A2-1]重合体」ともいう)が好ましい。
【0057】
【化5】
【0058】
上記式(8)中、Arは、後述する式(3)と同義である。Arは、後述する式(4)と同義である。Ar、R及びuは、後述する式(5)と同義である。
【0059】
[A2-1]重合体の具体例としては、例えば上記式(A-7)又は(A-8)で表される重合体などが挙げられる。
【0060】
([B]化合物)
[B]化合物は、第1芳香環構造を構成する第1炭素原子に水素原子が結合した部分構造を有する化合物である。
【0061】
第1芳香環構造の環員数としては、例えば5~30であり、5~20が好ましい。「環員数」とは、環構造を構成する原子数をいい、多環の場合はこの多環を構成する原子数をいう。
【0062】
第1芳香環構造としては、例えば環員数6~30の芳香族炭化水素環構造、環員数5~30の芳香族複素環構造などが挙げられる。
【0063】
上記芳香族炭化水素環構造としては、例えばベンゼン構造;ナフタレン構造、インデン構造、アントラセン構造、フルオレン構造、ビフェニレン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、ペリレン構造等の縮合多環型芳香族炭化水素環構造;ビフェニル構造、テルフェニル構造、ビナフタレン構造、フェニルナフタレン構造等の環集合型芳香族炭化水素環構造などが挙げられる。
【0064】
上記芳香族複素環構造としては、例えばフラン構造、ピラン構造、ベンゾフラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造、ピロール構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造、キノリン構造、ジケトピロロピロール構造等の窒素原子含有複素環構造、チオフェン構造、ジベンゾチオフェン構造等の硫黄原子含有複素環構造、シラフルオレン構造等のケイ素原子含有複素環構造、オキサゾール構造、チアゾール構造等の2以上のヘテロ原子を含有する複素環構造などが挙げられる。
【0065】
上記第1芳香環構造としては、ベンゼン構造、ビフェニル構造、チオフェン構造、チアゾール構造、オキサゾール構造、フラン構造、ジケトピロロピロール構造又はこれらの2以上の構造が単結合で結合した構造が好ましい。
【0066】
上記第1芳香環構造における一部の水素原子は置換基で置換されていてもよい。但し、上記第1芳香環構造における第1炭素原子に結合する水素原子は置換基により置換されてはいけない。置換基としては、例えばフッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基、アルキルチオ基又はフッ素化アルキルチオ基などが挙げられる。「フッ素化アルキル基」とは、アルキル基における一部又は全部の水素原子をフッ素原子で置換した基をいう。他の「フッ素化アルコキシ基」及び「フッ素化アルキルチオ基」も同様である。
【0067】
上記アルキル基又はフッ素化アルキル基の炭素数としては、通常1~30である。「炭素数」とは、基を構成する炭素原子数をいう。「アルキル基」には、鎖状アルキル基だけでなく、シクロアルキル基も含まれるものとする。
【0068】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2-デシルテトラデシル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基などが挙げられる。
【0069】
上記アルコキシ基又はフッ素化アルコキシ基の炭素数としては、通常1~30である。「アルコキシ基」には、鎖状アルコキシ基だけでなく、シクロアルキルオキシ基も含まれるものとする。
【0070】
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2-メトキシエチルオキシ基などが挙げられる。
【0071】
上記、アルキルチオ基又はフッ素化アルキルチオ基の炭素数としては、通常1~30であり、1~20が好ましい。「アルキルチオ基」には、鎖状アルキルチオ基だけでなく、シクロアルキルチオ基も含まれるものとする。
【0072】
アルキルチオ基としては、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基などが挙げられる。
【0073】
上記第1芳香環構造が2以上の置換基を有する場合、隣接する置換基が互いに合わせられこれらが結合する原子鎖と共に置換又は非置換の脂環構造を構成していてもよい。「脂環構造」には「脂肪族炭化水素環構造」及び「脂肪族複素環構造」が含まれる。置換基は上記と同様である。
【0074】
脂環構造の環員数としては、例えば4~20であり、4~10が好ましい。
【0075】
脂環構造としては、例えば環員数4~20の脂肪族炭化水素環構造、環員数4~20の脂肪族複素環構造などが挙げられる。
【0076】
上記脂肪族炭化水素環構造としては、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等の単環の飽和脂環構造;ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の飽和脂環構造;シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造等の単環の不飽和脂環構造;ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造、テトラシクロドデセン構造等の多環の不飽和脂環構造などが挙げられる。
【0077】
上記脂肪族複素環構造としては、ジオキソラン構造、ジオキサン構造等の酸素原子含有複素環構造、ジチオラン構造、ジチアン構造等の硫黄原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0078】
上記第1芳香環構造が芳香族炭化水素環構造である場合、置換基としてはフッ素原子が好ましく、2以上のフッ素原子がより好ましい。この場合、[B]化合物の反応性を向上させることができる。
【0079】
上記第1芳香環構造が芳香族複素環構造である場合、芳香族複素環構造としては、硫黄原子含有複素環構造が好ましく、チオフェン構造がより好ましい。この場合、[B]化合物の反応性を向上させることができる。
【0080】
[B]化合物としては、例えば下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
【化6】
【0082】
上記式(3)中、Arは置換又は非置換の芳香環構造である。sは1以上の整数である。
【0083】
Arを与える芳香環構造は、上記第1芳香環構造である。
【0084】
sとしては、1~6が好ましい。
【0085】
Arが芳香族炭化水素環構造である場合の[B]化合物(以下、「[B1]化合物」ともいう)としては、例えば下記式(B1-1)~(B1-67)で表される化合物などが挙げられる。
【0086】
【化7】
【0087】
【化8】
【0088】
上記式(B1-1)~(B1-67)中、Rは、上記置換基のうちフッ素原子以外の置換基である。
【0089】
[B1]化合物としては、下記式(3-1)又は(3-2)で表される化合物が好ましい。この場合、[B]化合物の反応性を向上させることができる。
【0090】
【化9】
【0091】
Arが芳香族複素環構造である場合の[B]化合物(以下、「[B2]化合物」ともいう)としては、例えば下記式(B2-1)~(B2-31)で表される化合物などが挙げられる。
【0092】
【化10】
【0093】
上記式(B2-1)~(B2-31)中、Rは、上記置換基である。
【0094】
[B2]化合物としては、下記式(3-3)又は(3-4)で表される化合物が好ましい。この場合、[B]化合物の反応性を向上させることができる。
【0095】
【化11】
【0096】
上記式(3-3)中、2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基、アルキルチオ基若しくはフッ素化アルキルチオ基であるか、又は2つのRが互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に置換又は非置換の脂環構造を構成する。
【0097】
上記式(3-4)中、Rは、上記式(3-3)と同義である。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基、アルキルチオ基又はフッ素化アルキルチオ基である。
【0098】
[B]化合物の添加量としては、目的に応じて適宜決定することができる。
【0099】
([C]化合物)
[C]化合物は、第2芳香環構造を構成する第2炭素原子に塩素原子又はトリフルオロメタンスルホン酸基が結合した部分構造を有する化合物である。
【0100】
当該製造方法では、パラジウム錯体及び2種のホスフィン化合物を用いるため、直接アリール化反応における原料モノマーとして、塩素原子やトリフルオロメタンスルホン酸基が結合した芳香族化合物を用いることができる。これにより、直接アリール化反応における原料として利用可能なモノマーの選択肢を広げることができる。
【0101】
第2芳香環構造の環員数としては、例えば5~30であり、5~20が好ましい。第2芳香環構造としては、例えば環員数6~30の芳香族炭化水素環構造、環員数5~30の芳香族複素環構造などが挙げられる。芳香族炭化水素環構造及び芳香族複素環構造の例示については第1芳香環構造と同様である。また、置換基についても第1芳香環構造と同様である。
【0102】
上記第2芳香環構造としては、ベンゼン構造、ナフタレン構造、インデン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、フルオレン構造、ビフェニル構造、テルフェニル構造、ピレン構造、ペリレン構造、ジベンゾチオフェン構造又はシラフルオレン構造好ましい。
【0103】
[C]化合物としては、下記式(4)で表される化合物(以下、「[C1]化合物」ともいう)又は下記式(5)で表される化合物(以下、「[C2]化合物」ともいう)が挙げられる。
【0104】
【化12】
【0105】
上記式(4)及び(5)中、Xは、塩素原子又はトリフルオロメタンスルホン酸基(トリフラート基又はOTfともいう)である。
【0106】
上記式(4)中、Arは、置換又は非置換の芳香環構造である。tは、1以上の整数である。tが2以上の場合、複数のXは互いに同一又は異なる。
【0107】
上記式(5)中、2つのArは、それぞれ独立して、置換又は非置換の芳香環構造である。2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基若しくはアリール基であるか、又は2つのRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に置換又は非置換の環構造を構成する。uは、1以上の整数である。uが2以上の場合、複数のRは同一又は異なる。
【0108】
Ar又はArを与える芳香環構造は、上記第2芳香環構造である。
【0109】
アリール基の炭素数としては、通常6~30であり、6~20が好ましい。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0110】
「環構造」には「脂環構造」及び「芳香環構造」が含まれる。
【0111】
2つのRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成する環構造としては、例えばシクロヘキシル構造、シクロドデカン構造、フルオレン構造、フタリド構造などが挙げられる。
【0112】
tとしては、1~6が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0113】
uとしては、1~3が好ましく、1がより好ましい。
【0114】
[C]化合物が[C1]化合物である場合、Xとしては塩素原子が好ましい。[C]化合物が[C2]化合物である場合、Xとしてはトリフルオロメタンスルホン酸基が好ましい。
【0115】
[C1]化合物としては、下記式(C1-1)~(C1-56)で表される化合物などが挙げられる。
【0116】
【化13】
【0117】
【化14】
【0118】
上記式(C1-1)~(C1-56)中、Xは、上記式(4)と同義である。Rは、上記置換基である。
【0119】
[C1]化合物としては、下記式(4-1)で表される化合物が好ましい。
【0120】
【化15】
【0121】
上記式(4-1)中、Xは、上記式(4)と同義である。A及びBは、それぞれ独立して、置換又は非置換の芳香族炭化水素環構造である。Yは、下記式(Y-1)~(Y-5)で表される基である。
【0122】
【化16】
【0123】
上記式(Y-1)~(Y-4)中、2つのRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基、アルキルチオ基又はフッ素化アルキルチオ基である。
【0124】
[C2]化合物としては、ビスフェノール類から誘導されるトリフルオロメタンスルホン酸ジエステルなどが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールE、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ジフェノール(BisP-MIBK)、ビスフェノールAP、ビスフェノールBP、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビスフェノールZ、4,4’-シクロドデシリデンビスフェノール、ビスフェノールTMCなどが挙げられる。
【0125】
[C2]化合物としては、下記式(C2-1)~(C2-16)で表される化合物などが挙げられる。
【0126】
【化17】
【0127】
(パラジウム錯体)
パラジウム錯体は、クロスカップリング反応において触媒として用いられるパラジウム錯体であれば特に制限されず、例えばパラジウム(0)錯体、パラジウム(II)錯体などが挙げられる。具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムなどが挙げられる。これらの中でも、反応操作の容易さや反応速度の向上の観点から、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))が好ましい。
【0128】
パラジウム錯体の添加量としては、触媒としての有効量であれば特に制限されず、適宜決定することができる。パラジウム錯体の添加量としては、[B]化合物1モルに対して、通常、0.0001モル~0.5モルであり、0.0003モル~0.2モルが好ましい。
【0129】
(ホスフィン化合物)
2種のホスフィン化合物は、下記式(1)で表される化合物(以下、「P(2-OMePh)」ともいう)及び下記式(2)で表される化合物(以下、「XPhos」ともいう)である。
【0130】
【化18】
【0131】
上記式(1)中、Meはメチル基である。上記式(2)中、Cyはシクロヘキシル基であり、i-Prはイソプロピル基である。
【0132】
当該製造方法では、P(2-OMePh)及びXPhosをパラジウム錯体と共に用いることで、[B]化合物と[C]化合物とが反応して[A]化合物が生成される反応が進行する。P(2-OMePh)及びXPhosのいずれか一方が欠けた場合、上記反応は進行せず、[A]化合物は生成されない。反応系中において、P(2-OMePh)及びXPhosはパラジウム錯体の配位子としてパラジウム原子に配位しているものと推測される。
【0133】
P(2-OMePh)及びXPhosそれぞれの添加量としては、パラジウム原子1モルに対して、通常0.5~4モルであり。1モル~3モルが好ましく、1~2モルがより好ましい。
【0134】
[他の工程]
他の工程としては、例えば上記反応工程により得られた化合物の洗浄を行う工程(洗浄工程)、上記反応工程により得られた化合物の精製を行う工程(精製工程)等が挙げられる。洗浄工程や精製工程の具体的方法は特に制限されず、公知の方法に従って行うことができる。
【0135】
<触媒組成物>
当該触媒組成物は、パラジウム錯体と、2種のホスフィン化合物(P(2-OMePh)及びXPhos)を含有する。パラジウム錯体及び2種のホスフィン化合物については上記<製造方法>の項で説明している。
【0136】
当該触媒組成物によれば、直接アリール化反応において、パラジウム以外の金属成分を用いることなく、利用可能なモノマーの選択肢を広げることができる。また、収率良く[A]化合物を合成できる。
【実施例0137】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を以下に示す。
【0138】
[NMRスペクトル測定]
合成例1及び2並びに実施例1~10の化合物のNMRスペクトルは、重溶媒である重クロロホルム又は重トルエンに化合物を溶解させ、核磁気共鳴スペクトル測定装置(Bruker社の「AVANCEIII-400」)を用いて測定した。
【0139】
[分子量測定]
合成例1及び2並びに実施例1~6で得られた化合物ついては、H-NMRの積分値より、目的とする分子量をもつ分子構造が構築されていることを確認した。実施例7及び8で得られた重合体の分子量(数平均分子量及び重量平均分子量)は、溶離液としてテトラヒドロフランを用いたGPCシステム(東ソー(株)の「HLC-8420GPC」)により測定した。実施例9及び10で得られた重合体の分子量(数平均分子量及び重量平均分子量)は、溶離液としてクロロホルムを用いたGPCシステム(ポンプ:日本分光(株)の「PU-980」、RI検出器:日本分光(株)の「RI-1530」、カラム:昭和電工(株)の「SHODEX K-801」、「同K-803L」及び「同K-805L」)により測定した。
【0140】
<[C]化合物の合成>
以下の方法に従って、[C]化合物として、下記式(C-1)~(C-2)で表される化合物(以下、「化合物(C-1)~(C-2)」ともいう)を合成した。
【0141】
【化19】
【0142】
[合成例1]化合物(C-1)の合成
磁気回転子を入れた500mLの4つ口フラスコに、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下、「BPTMC」ともいう)を0.029mol加え、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。ジクロロメタンを50mL、ピリジンを0.29mol加えたのち、氷浴で0℃まで冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を0.087mol滴下した。その後、4つ口フラスコを室温にもどし、攪拌しながら4時間反応させた。反応終了後、4つ口フラスコを0℃まで冷却し10%の塩酸水溶液を加え、10%の塩酸水溶液で3回、純水で3回洗浄したのち、有機層をエバポレーターで濃縮した。得られた淡黄色オイル上の液体をカラムクロマトグラフィー(SiO、トルエン)で精製し、透明なオイル状の液体として化合物(C-1)を収率92%で得た。化合物(C-1)は、1,1-ビス(4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下、「BPTMC-OTf」ともいう)である。
【0143】
化合物(C-1)の合成スキームを以下に示す。
【0144】
【化20】
【0145】
化合物(C-1)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.31(s,3H),0.88(t,J=13Hz,1H),1.00(s,6H),1.19(t,J=13Hz,1H),1.42(d,J=13Hz,1H),1.96(d,J=13Hz,1H),1.98(br,1H),2.43(d,J=13Hz,1H),2.65(d,J=14Hz,1H),7.11(d,J=8.2Hz,2H),7.19(d,J=8.1Hz,2H),7.23-7.26(d,2H),7.40(d,J=8.2Hz,2H).
【0146】
[合成例2]化合物(C-2)の合成
磁気回転子を入れた500mLの4つ口フラスコに、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下、「BCTMC」ともいう)を0.058mol加え、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。ジクロロメタンを100mL、ピリジンを0.58mol加えたのち、氷浴で0℃まで冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を0.17mol滴下した。その後、4つ口フラスコを室温にもどし、攪拌しながら4時間反応させた。反応終了後、4つ口フラスコを0℃まで冷却し10%の塩酸水溶液を加え、10%の塩酸水溶液で3回、純水で3回洗浄したのち、有機層をエバポレーターで濃縮した。得られた淡黄色オイル上の液体をカラムクロマトグラフィー(SiO、トルエン)で精製し、透明なオイル状の液体として化合物(C-2)を収率97%で得た。化合物(C-2)は、1,1-ビス(3-メチル-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下、「BCTMC-OTf」ともいう)である。
【0147】
化合物(C-2)の合成スキームを以下に示す。
【0148】
【化21】
【0149】
化合物(C-2)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.32(s,3H),0.86(t,J=13Hz,1H),1.00(s,6H),1.14(t,J=13Hz,1H),1.40(d,J=13Hz,1H),1.91(d,J=14Hz,1H),1.97(br,1H),2.31(s,3H),2.34(s,3H),2.42(d,J=14Hz,1H),2.63(d,J=14Hz,1H),7.03-7.27(m,6H).
【0150】
<[A]化合物の合成>
以下の方法に従って、[A1]化合物としての下記式(A-1)~(A-6)で表される化合物「以下、「化合物(A-1)~(A-6)」ともいう)及び[A2]重合体としての下記式(A-7)~(A-10)で表される重合体(以下、「重合体(A-7)~(A-10)」ともいう)を合成した。
【0151】
【化22】
【0152】
上記式(A-2)中、Meはメチル基である。上記式(A-5)中、Phはフェニル基である。上記式(A-6)中、Rは、2-デシルテトラデシル基である。
【0153】
[実施例1]化合物(A-1)の合成
磁気回転子を入れた耐圧反応容器を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を1.3μmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを5.0μmol、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(以下、「XPhos」ともいう)を5.0μmol、反応後NMR収率を測定する際の内部標準物質として4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニルを0.25mmol加えた。真空ポンプで反応容器内部を真空にした後、グローブボックスに移動し、クロロベンゼンを1.0mmol、3,4-エチレンジオキシチオフェンを0.50mmol、炭酸セシウムを1.5mmol、ピバル酸を0.50mmol及び重トルエンを1mL加えた。反応容器をグローブボックスから取り出し、室温で30分攪拌したのち、オイルバスを用いて反応液を100℃に加熱し、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。その後、生成物の収率をNMRで求めたところ、98%であった。
【0154】
化合物(A-1)の合成スキームを以下に示す。
【0155】
【化23】
【0156】
化合物(A-1)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=4.37(s,4H),7.23(tt,J=7.5,1.1Hz,2H),7.34-7.41(m,4H),7.76(dd,J=8.4,1.1Hz,4H).
【0157】
[実施例2]化合物(A-2)の合成
磁気回転子を入れた耐圧反応容器を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を1.3μmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを5.0μmol、XPhosを5.0μmol、反応後NMR収率を測定する際の内部標準物質として4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニルを0.25mmol加えた。真空ポンプで反応容器内部を真空にしたのち、グローブボックスに移動し、4-メトキシクロロベンゼンを1.0mmol、3,4-エチレンジオキシチオフェンを0.52mmol、炭酸セシウムを1.5mmol、ピバル酸を0.50mmol、重トルエンを1mL加えた。反応容器をグローブボックスから出し、室温で30分攪拌したのち、オイルバスを用いて反応液を100℃に加熱し、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。その後、生成物の収率をNMRで求めたところ、98%であった。
【0158】
化合物(A-2)の合成スキームを以下に示す。下記合成スキーム中、Meはメチル基である。
【0159】
【化24】
【0160】
化合物(A-2)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=3.83(s,6H),4.34(s,4H),6.92(d,J=8.9Hz,4H),7.66(d,J=8.9Hz,4H).
【0161】
[実施例3]化合物(A-3)の合成
磁気回転子を入れた耐圧反応容器を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を1.3μmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを5.0μmol、XPhosを5.0μmol、反応後NMR収率を測定する際の内部標準物質として4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニルを0.25mmol加えた。真空ポンプで反応容器内部を真空にしたのち、グローブボックスに移動し、4-クロロベンゾトリフルオリドを1.0mmol、3,4-エチレンジオキシチオフェンを0.50mmol、炭酸セシウムを1.5mmol、ピバル酸を0.50mmol、重トルエンを1mL加えた。反応容器をグローブボックスから出し、室温で30分攪拌したのち、オイルバスを用いて反応液を100℃に加熱し、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。その後、生成物の収率をNMRで求めたところ、98%であった。
【0162】
化合物(A-3)の合成スキームを以下に示す。
【0163】
【化25】
【0164】
化合物(A-3)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=4.42(s,4H),7.62(d,J=8.2Hz,4H),7.86(d,J=8.2Hz,4H).
【0165】
[実施例4]化合物(A-4)の合成
磁気回転子を入れた耐圧反応容器を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を1.3μmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを5.0μmol、XPhosを5.0μmol、反応後NMR収率を測定する際の内部標準物質として4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニルを0.25mmol加えた。真空ポンプで反応容器内部を真空にしたのち、グローブボックスに移動し、2,6-ジメチルクロロベンゼンを1.0mmol、3,4-エチレンジオキシチオフェンを0.50mmol、炭酸セシウムを1.5mmol、ピバル酸を0.50mmol、重トルエンを1mL加えた。反応容器をグローブボックスから出し、室温で30分攪拌したのち、オイルバスを用いて反応液を100℃に加熱し、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。その後、生成物の収率をNMRで求めたところ、85%であった。
【0166】
化合物(A-4)の合成スキームを以下に示す。
【0167】
【化26】
【0168】
化合物(A-4)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=2.29(s,12H),4.19(s,4H),7.12(d,J=7.6Hz,4H),7.18(dd,J=8.5,6.2Hz,2H).
【0169】
[実施例5]化合物(A-5)の合成
磁気回転子を入れた耐圧反応容器を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を1.3μmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを5.0μmol、XPhosを5.0μmol、反応後NMR収率を測定する際の内部標準物質として4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニルを0.25mmol加えた。真空ポンプで反応容器内部を真空にしたのち、グローブボックスに移動し、クロロベンゼンを56.6mg(0.50mmol)、2-フェニルチアゾールを0.50mmol、炭酸セシウムを1.0mmol、ピバル酸を0.50mmol、重トルエンを1mL加えた。反応容器をグローブボックスから出し、室温で30分攪拌したのち、オイルバスを用いて反応液を100℃に加熱し、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。その後、生成物の収率をNMRで求めたところ、98%であった。
【0170】
化合物(A-5)の合成スキームを以下に示す。下記合成スキーム中、Phはフェニル基である。
【0171】
【化27】
【0172】
化合物(A-5)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.35(tt,J=7.4,1.2Hz,1H),7.40-7.49(m,5H)7.62(d,J=8.0Hz,2H),7.98(dd,J=7.1,1.9Hz,2H),8.03(s,1H).
【0173】
[実施例6]化合物(A-6)の合成
磁気回転子を入れた耐圧反応容器を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。3,6-ジチエニル-2,5-ビス(2-デシルテトラデシル)-ピロロ[3,4-c]ピロール-1,4-ジオンを0.25mmol、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を1.3μmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを5.0μmol、XPhosを5.0μmol、反応後NMR収率を測定する際の内部標準物質として4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニルを0.13mmol加えた。真空ポンプで反応容器内部を真空にしたのち、グローブボックスに移動し、クロロベンゼンを0.52mmol、炭酸セシウムを0.75mmol、ピバル酸を0.25mmol、重トルエンを1mL加えた。反応容器をグローブボックスから出し、室温で30分攪拌したのち、オイルバスを用いて反応液を100℃に加熱し、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。その後、生成物の収率をNMRで求めたところ、90%であった。
【0174】
化合物(A-6)の合成スキームを以下に示す。下記合成スキーム中、Rは2-デシルテトラデシル基である。
【0175】
【化28】
【0176】
化合物(A-6)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CCD):δ=0.83-0.92(m,12H),1.11-1.54(m,80H),2.14(br,2H),4.15(d,J=7.4Hz,4H),6.98-7.15(m,10H)7.62(d,J=8.0Hz,2H),7.44(d,J=8.4Hz,4H),8.03(s,1H),9.44(d,J=4.1Hz,2H).
【0177】
[実施例7]重合体(A-7)の合成
磁気回転子を入れた耐圧重合容器を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。合成例1で得たBPTMC-OTf(単量体(C-1))を5.0mmol、1,2,4,5-テトラフルオロベンゼンを5.0mmol、炭酸セシウムを15mmol、ピバル酸を5.0mmol、テトラヒドロフランを10mL加えたのち、10分間窒素でバブリングした。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を0.050mmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを0.20mmol、XPhosを0.20mmol加え、打栓により密閉した。オイルバスを用いて反応液を100℃に加熱し、攪拌しながら6時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。その後、トルエンを加え、純粋で3回洗浄した。洗浄後の有機層をろ紙を用いてろ過し、エバポレーターを用いて濃縮した。その後、濃縮した溶液をメタノールに注ぎ、固体を再沈殿させることで、淡黄色の固体として重合体(A-7)を得た。重合体(A-7)の収率は63%であった。重合体(A-7)のポリスチレン換算の数平均分子量は14,700であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は27,600であり、分子量分布は1.9であった。
【0178】
重合体(A-7)の合成スキームを以下に示す。
【0179】
【化29】
【0180】
重合体(A-7)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.41(s,3H),0.95(br,1H),1.02(s,6H),1.27(br,1H),1.43(br,1H),2.05(br,1H),2.06(br,1H),2.58(d,J=12Hz,1H),2.81(d,J=13Hz,1H),7.39(br,4H),7.45(br,2H),7.52(br,2H).
【0181】
[実施例8]重合体(A-8)の合成
磁気回転子を入れた耐圧重合容器を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。合成例2で得たBCTMC-OTf(単量体(C-2))を5.0mmol、1,2,4,5-テトラフルオロベンゼンを5.0mmol、炭酸セシウムを15mmol、ピバル酸を5.0mmol、テトラヒドロフランを10mL加えたのち、10分間窒素でバブリングした。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を0.050mmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを0.20mmol、XPhosを0.20mmol、加え、打栓により密閉した。オイルバスを用いて反応液を100℃に加熱し、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。その後、トルエンを加え、純粋で3回洗浄した。洗浄後の有機層をろ紙を用いてろ過し、エバポレーターを用いて濃縮した。その後、濃縮した溶液をメタノールに注ぎ、固体を再沈殿させることで、淡黄色の固体として重合体(A-8)を得た。重合体(A-8)の収率は75%であった。重合体(A-8)のポリスチレン換算の数平均分子量は15,100であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は25,600であり、分子量分布は1.7であった。
【0182】
重合体(A-8)の合成スキームを以下に示す。
【0183】
【化30】
【0184】
重合体(A-8)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.41(s,3H),0.91(t,J=12Hz,1H),1.02(s,6H),1.26(t,J=12Hz,1H),1.42(d,J=11Hz,1H),2.01(d,J=14Hz,1H),2.08(br,1H),2.17(s,3H),2.24(s,3H),2.57(d,J=13Hz,1H),2.79(d,J=13Hz,1H),7.12-7.24(m,4H),7.36(br,2H).
【0185】
[実施例9]重合体(A-9)の合成
磁気回転子を入れたシュレンク管を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。2,7-ジクロロ-9,9-ジオクチルフルオレンを0.50mmol、4H,4’H-オクタフルオロビフェニルを0.50mmol、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を1.3μmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを5.0μmol、XPhosを5.0μmol加えた。真空ポンプで反応容器内部を真空にしたのち、グローブボックスに移動し、炭酸セシウムを1.5mmol、ピバル酸を0.50mmol、シクロペンチルメチルエーテルを1mL加えた。反応容器をグローブボックスから取り出し、還流管を取り付け室温で30分攪拌した。その後、オイルバスを用いて反応液を還流条件下、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。反応溶液に対し、クロロホルムを加え、水で洗浄したのち、クロロホルム溶液をメタノールに注ぎ、固体を再沈殿させることで、白色の固体として重合体(A-9)を得た。重合体(A-9)の収率は96%であった。重合体(A-9)のポリスチレン換算の数平均分子量は61,200であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は189,700であり、分子量分布は3.1であった。
【0186】
重合体(A-9)の合成スキームを以下に示す。
【0187】
【化31】
【0188】
重合体(A-9)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.76(br,4H),0.79-0.86(m,6H),1.03-1.28(m,20H),2.07(br,4H),7.50-7.67(m,4H),7.94(d,J=8.1Hz,2H).
【0189】
[実施例10]重合体(A-10)の合成
磁気回転子を入れたシュレンク管を加熱乾燥後、内部の雰囲気を窒素で置換して窒素雰囲気とした。2,7-ジクロロ-9,9-ジオクチルフルオレンを0.50mmol、3,4-エチレンジオキシチオフェンを0.50mmol、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体を1.3μmol、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンを5.0μmol、XPhosを5.0μmol加えた。真空ポンプで反応容器内部を真空にしたのち、グローブボックスに移動し、炭酸セシウムを1.5mmol、ピバル酸を0.50mmol、トルエンを1mL加えた。反応容器をグローブボックスから取り出し、還流管を取り付け室温で30分攪拌した。その後、オイルバスを用いて反応液を還流条件下、攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、オイルバスを外し、室温まで放冷した。反応溶液に対し、クロロホルムを加え、水で洗浄したのち、クロロホルム溶液をメタノールに注ぎ、固体を再沈殿させることで、白色の固体として重合体(A-10)を得た。重合体(A-10)の収率は95%であった。重合体(A-10)のポリスチレン換算の数平均分子量は124,600であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は311,300であり、分子量分布は2.5であった。
【0190】
重合体(A-10)の合成スキームを以下に示す。
【0191】
【化32】
【0192】
重合体(A-10)のNMR測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.76(br,4H),0.78-0.86(m,6H),1.03-1.28(m,20H),2.05(br,4H),4.45(br,4H),7.66-7.73(m,4H),7.82(d,J=8.1Hz,2H).
【0193】
[比較例1~6]
配位子としてXPhosを用いず、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン5.0μmolのみを用いたこと以外は実施例1~6と同じ操作を実施した。その結果、いずれの系においても反応は全く進行せず、目的化合物は得られなかった。