(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128548
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】液晶パネルおよび液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20230907BHJP
G02F 1/1341 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
G02F1/1341
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032950
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 智宏
【テーマコード(参考)】
2H189
【Fターム(参考)】
2H189DA04
2H189DA53
2H189DA54
2H189DA57
2H189DA72
2H189DA90
2H189EA03Y
2H189EA04Y
2H189EA04Z
2H189FA35
2H189FA36
2H189FA52
2H189FA56
2H189GA21
2H189GA41
2H189HA16
2H189JA19
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA05
2H189LA17
2H189LA19
2H189LA20
2H189NA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】仮に、使用時の温度変化に伴ってZZ配向欠陥が発生しても、表示画像に悪影響が生じるのを防止し得る液晶パネル、およびかかる液晶パネルを備える液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液晶パネルは、互いに対向する2枚の基板と、2枚の基板を貼り合わせるシール部と、2枚の基板の間であって、シール部で囲まれた領域に注入された液晶と、2枚の基板のそれぞれの対向する面側に設けられ、液晶を所定の配向規制方向に沿って配向させる配向膜とを備える。一方の基板は、矩形の画素領域を有し、シール部は、画素領域の第1の辺に沿って延在する第1の部分と、第1の辺に直交する第2の辺に沿って延在する第2の部分とを有する。一方の基板側に設けられた配向膜の平面視において、配向規制方向に沿って延在し、かつ画素領域の内側から第1の辺と第2の辺との角部を通る仮想線を規定したとき、仮想線が所定の条件を満足する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルであって、
互いに対向する2枚の基板と、
前記2枚の基板を貼り合わせるシール部と、
前記2枚の基板の間であって、前記シール部で囲まれた領域に注入された液晶と、
前記2枚の基板のそれぞれの対向する面側に設けられ、前記液晶を所定の配向規制方向に沿って配向させる配向膜と、を備え、
前記2枚の基板のうちの一方の基板は、矩形の画素領域を有し、
前記シール部は、前記画素領域の第1の辺に沿って延在する第1の部分と、前記第1の辺に直交する第2の辺に沿って延在する第2の部分とを有し、
前記一方の基板側に設けられた前記配向膜の平面視において、前記配向規制方向に沿って延在し、かつ前記画素領域の内側から前記第1の辺と前記第2の辺との角部を通る仮想線を規定したとき、以下(1)~(3)の条件のいずれか一つを満たす、液晶パネル。
(1)前記仮想線が前記第1の部分と前記第2の部分との角部を通過する。
(2)前記仮想線と前記第2の部分とのなす角度が45°以下であり、かつ、前記仮想線が前記第2の部分の長手方向の途中を通過する。
(3)前記仮想線と前記第1の部分とのなす角度が45°以下であり、かつ、前記仮想線が前記第1の部分の長手方向の途中を通過する。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶パネルにおいて、
前記(2)の条件を満たす場合における前記仮想線と前記第2の部分とのなす角度および前記(3)の条件を満たす場合における前記仮想線と前記第1の部分とのなす角度は、それぞれ、前記液晶のスイッチング角をXとしたとき、(X/2)±5°である、液晶パネル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液晶パネルにおいて、
前記配向規制方向は、前記配向膜のラビング方向である、液晶パネル。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の液晶パネルにおいて、
前記画素領域の前記角部と、前記シール部の前記角部との離間距離は、前記液晶パネルの使用温度の範囲内において前記第1の部分と前記第2の部分との間に形成される前記液晶の配向欠陥発生領域の最大範囲が前記画素領域に重ならないように設定される、液晶パネル。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の液晶パネルにおいて、
前記画素領域は、矩形の有効画素領域と、前記有効画素領域の周囲を囲む帯状のダミー画素領域とを有し、前記仮想線が通る前記画素領域の前記角部は、前記ダミー画素領域の角部である、液晶パネル。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶パネルにおいて、
前記(2)の条件を満たす場合における「前記仮想線と前記第2の部分との交点と、前記シール部の前記角部との離間距離/前記ダミー画素領域の平均幅」の数式で表される値および前記(3)の条件を満たす場合における「前記仮想線と前記第1の部分との交点と、前記シール部の前記角部との離間距離/前記ダミー画素領域の平均幅」の数式で表される値は、それぞれ、10以下である、液晶パネル。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の液晶パネルにおいて、
さらに、前記2枚の基板のうちの他方の基板の前記一方の基板と反対側の面側に設けられ、平面視において前記有効画素領域を露出させ、かつ前記ダミー画素領域の少なくとも周縁部を包含するマスクを備える、液晶パネル。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の液晶パネルにおいて、
前記シール部は、前記画素領域の対角線を介して前記角部の反対側に、前記液晶を前記2枚の基板の間の領域に注入する注入口を備える、液晶パネル。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の液晶パネルにおいて、
前記液晶は、強誘電性液晶である、液晶パネル。
【請求項10】
液晶表示装置であって、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の液晶パネルを備える、液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コントラストに優れた液晶表示装置として、強誘電性液晶を使用した液晶表示装置が知られている(特許文献1参照)。かかる液晶表示装置では、その製造時に所定の電圧を印加することにより、強誘電性液晶の初期状態での配向の均一化を図り、ジグザク欠陥(ZZ配向欠陥)の発生を防止している。
しかしながら、特許文献1には、初期状態で強誘電性液晶の配向の均一化を図ることが記載されてはいるものの、使用時等における温度変化に伴うZZ配向欠陥の発生については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
初期状態で液晶を一様に配向させたとしても、液晶を区画するシール部が存在する以上、これらの境界において液晶の配向の不連続点が形成され、温度変化に伴ってZZ配向欠陥が発生するおそれがある。そこで、本発明では上記事情に鑑み、仮に、使用時の温度変化に伴ってZZ配向欠陥が発生しても、表示画像に悪影響が生じるのを防止し得る液晶パネル、およびかかる液晶パネルを備える液晶表示装置を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、液晶パネルが提供される。この液晶パネルは、互いに対向する2枚の基板と、2枚の基板を貼り合わせるシール部と、2枚の基板の間であって、シール部で囲まれた領域に注入された液晶と、2枚の基板のそれぞれの対向する面側に設けられ、液晶を所定の配向規制方向に沿って配向させる配向膜と、を備える。2枚の基板のうちの一方の基板は、矩形の画素領域を有する。シール部は、画素領域の第1の辺に沿って延在する第1の部分と、第1の辺に直交する第2の辺に沿って延在する第2の部分とを有する。一方の基板側に設けられた配向膜の平面視において、配向規制方向に沿って延在し、かつ画素領域の内側から第1の辺と第2の辺との角部を通る仮想線を規定したとき、以下(1)~(3)の条件のいずれか一つを満たす。(1)仮想線が第1の部分と第2の部分との角部を通過する。(2)仮想線と第2の部分とのなす角度が45°以下であり、かつ、仮想線が第2の部分の長手方向の途中を通過する。(3)仮想線と第1の部分とのなす角度が45°以下であり、かつ、仮想線が第1の部分の長手方向の途中を通過する。
【0006】
かかる態様によれば、使用時の温度変化に伴ってZZ配向欠陥が発生しても、表示画像に悪影響が生じるのを防止し得る液晶パネル、およびかかる液晶パネルを備える液晶表示装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の液晶表示装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の液晶パネルの一実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図4】強誘電性液晶の層構造を模式的に示す断面図である。
【
図5】ラビング方向に対するダミー画素領域とシール部との位置関係を示す平面図である。
【
図6】ラビング方向に対するダミー画素領域とシール部との位置関係を示す平面図である。
【
図7】ZZ配向欠陥が広がる様子を示す平面写真である。
【
図8】ラビング方向に対するダミー画素領域とシール部との位置関係を示す平面図である。
【
図9】ラビング方向に対するダミー画素領域とシール部との位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0009】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュ-タが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサ-バからダウンロ-ド可能に提供されてもよいし、外部のコンピュ-タで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピュ-ティング)するように提供されてもよい。
【0010】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハ-ドウェア資源と、これらのハ-ドウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0011】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィ-ルドプログラマブルゲ-トアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0012】
図1は、本発明の液晶表示装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の液晶パネルの一実施形態を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2中のA-A線断面図である。
図4は、強誘電性液晶の層構造を模式的に示す断面図である。
図5、
図6、
図8および
図9は、それぞれラビング方向に対するダミー画素領域とシール部との位置関係を示す平面図である。
図7は、ZZ配向欠陥が広がる様子を示す平面写真である。
なお、以下の説明では、
図1、
図3および
図4中の上側を「上」または「上方」と、下側を「下」または「下方」と言う。また、
図2、
図5~
図9中の紙面手前側を「上」または「上方」と、紙面奥側を「下」または「下方」と言う。
【0013】
<液晶表示装置>
液晶表示装置100は、デジタルカメラや携帯電話等の電子機器から入力される画像データに従ってカラー画像を表示する、反射型の液晶表示装置である。
図1に示す液晶表示装置100は、アクティブ駆動される液晶パネル1、筐体10、回路基板20、光源30、反射部材40、拡散板50、偏光板60、透明部材70、偏光ビームスプリッター80および接眼レンズ90を備える。
光源30は、R色、G色およびB色のLEDを備え、回路基板20の上面に配置されている。光源30から出射された各色の光Lは、反射部材40によって偏光ビームスプリッター80へ向かって反射される。
【0014】
反射部材40によって反射された光Lは、拡散板50によって拡散し、偏光板60によって直線偏光化される。その後、光Lは、透明部材70を透過し、偏光ビームスプリッター80によって反射され、ほぼ均一な平行光となって液晶パネル1の画像表示面を照明する。
液晶パネル1の画像表示面から出射された光Lの一部は、偏光ビームスプリッター80と接眼レンズ90を透過し、観察者に画像として視認される。
なお、光源30は、LED以外の発光装置で構成されていてもよい。また、反射部材40、拡散板50、透明部材70等は、省略されていてもよい。
【0015】
また、液晶表示装置100は、例えば、回路基板20に搭載された液晶パネル制御回路および光源制御回路(いずれも図示せず)を有する。
液晶パネル制御回路は、液晶表示装置100が接続される電子機器の本体(図示せず)の全体制御CPU等から入力される画像データを受信する。そして、液晶パネル制御回路は、ソースドライバおよびゲートドライバを制御して、液晶パネル1の各画素の透過光量の制御を行う。
また、液晶パネル制御回路は、光源30との同期を取るためのタイミング信号を光源制御回路へ送信する。
【0016】
また、回路基板20には、演算素子と、記憶素子とが実装されている。
演算素子は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等で構成される。演算素子は、記憶素子に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、液晶表示装置100に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶素子に記憶されているソフトウェアによる情報処理が演算素子によって具体的に実現される。
なお、演算素子は、単一であることに限定されず、機能ごとに複数の演算素子を設けるようにしてもよい。また、それらの組合せであってもよい。
【0017】
記憶素子は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、演算素子によって実行される液晶表示装置100に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステ-トドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレ-ジデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施することができる。
また、記憶素子は、演算素子によって実行される液晶表示装置100に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0018】
図2および
図3に示す液晶パネル1は、ガラス基板21およびシリコン基板22(互いに対向する2枚の基板)と、ガラス基板21とシリコン基板22との間に設けられ、それらの間隔を一定に保持するためのスペーサ31を含むシール部3とを有する。
スペーサ31は、例えば、シリカ粒子で構成される。また、シール部3の主たる部分は、例えば、紫外線硬化型(活性エネルギー線硬化型)の接着剤、熱硬化型の接着剤のような接着剤32で構成される。
したがって、シール部3は、ガラス基板21とシリコン基板22との離間距離を規定するとともに、2枚の基板21、22を貼り合わせる機能を有する。
【0019】
かかるシール部3は、スペーサ31を含有する接着剤32をシリコン基板22側に印刷のような各種塗布法により塗布し、ガラス基板21側を貼り合わせた後、一定時間の紫外線の照射、加熱等により接着剤32を硬化させることにより得られる。なお、シール部3は、
図2に示すように、接着剤32がガラス基板21およびシリコン基板22から外方に漏れ出すことを回避するために、各基板21、22の周縁部よりも内側に塗布される。
【0020】
ガラス基板21の内側(シリコン基板22と対向する面)には、液晶6に電圧を印加するための透明電極(共通電極)41が設けられている。透明電極41は、例えば、ITO、FTO、ZTOのような透明導電性材料で構成される。
また、シリコン基板22の内側(ガラス基板21と対向する面)にも、液晶6に電圧を印加するための複数の画素電極42および複数のTFT(スイッチング素子)が設けられている。画素電極42は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のような導電性材料で構成される。なお、TFTは、MOSFET等の他のスイッチング素子に置き換えることが可能である。
【0021】
本実施形態では、複数の画素電極42および複数のTFTは、マトリクス状(行列状)にされており、複数の画素電極42および複数のTFTが配置される領域のうちの一部が矩形(長方形または正方形)の有効画素領域4Eを構成し、その他の一部が有効画素領域4Eの周囲を囲む帯状のダミー画素領域4Dを構成している。有効画素領域4Eは、電子機器から入力される画像データに応じた画像(実画像)が表示される領域であり、ダミー画素領域4Dは、電子機器から入力される画像データに関わらず常に黒色の画像が一様に表示される見切り(額縁)としての領域である。
ダミー画素領域4Dの周囲には、各画素電極42に表示信号を印加するソースドライバ、各TFTにゲート信号を印加するゲートドライバ等が配置されている。これらのドライバが配置される領域は、画像の見え方(光Lの透過)に直接影響を与えない領域である。
【0022】
したがって、本実施形態のシリコン基板(一方の基板)22は、有効画素領域4Eとダミー画素領域4Dとで構成される矩形の画素領域4を有している。
なお、ソースドライバおよびゲートドライバを介して、所定のタイミングで液晶6に電圧を印加することにより、液晶6中の液晶分子61の配向状態を変化させ、液晶パネル1の各画素の透過光量を制御することができる。
【0023】
また、シリコン基板22のシール部3より外側には、電極パッド43が設けられている。この電極パッド43は、
図1に示すように、ボンディングワイヤBWを介して、回路基板20に電気的に接続されている。
ガラス基板21の内側(シリコン基板22と対向する面側)およびシリコン基板22の内側(ガラス基板21と対向する面側)には、それぞれ液晶分子61の配向を促す機能を有する配向膜51、52が設けられている。配向膜51、52は、例えば、ポリイミドのような有機材料で構成されている。配向膜52の一部は、複数の画素電極42同士の隙間に充填されており、隣り合う画素電極42同士の絶縁性が確保されている。
【0024】
また、配向膜51、52には、ラビング処理により液晶分子61(液晶6)を所定の配向規制方向に沿って配向させるための異方性が付与されている。ラビング処理には、例えば、ロールに巻かれた布(例えば、コットン製、レーヨン製)で表面を擦る処理、紫外線を照射する処理等を使用することができる。
なお、配向膜51、52は、シリコン酸化物を斜方蒸着することにより形成された無機配向膜で構成することもできる。
【0025】
配向膜51(ガラス基板21)と配向膜52(シリコン基板22)との間であって、シール部3で囲まれた領域には、液晶6として強誘電性液晶が注入されている。
シール部3は、注入口38を備えている。この注入口38から、液晶6として強誘電性液晶を注入した後、注入口38は、液晶6の漏れを阻止するために封止材39により封止されている。封止材39は、例えば、紫外線硬化型(活性エネルギー線硬化型)の接着剤等で構成される。封止材39は、シール部3とは別の部材であるが、実質的にシール部3の一部であるとも言える。
【0026】
強誘電性液晶の場合、その粘度が高いために、スメクチック相よりも高い温度のフェイズ(例えば、ネマティック相、等方相)で、シール部3で囲まれた領域に注入される。その後、液晶パネル1(液晶表示装置100)として使用される室温付近まで温度を低下させること(冷却状態とすること)により、スメクチック相が発現する。
ここで、スメクチック相は秩序性が高いので、液晶分子61は、
図4に示すような層構造と呼ばれる結晶に近い構造を取る。このため、この冷却状態が均一になるように液晶6を処理して、製造時における配向欠陥(ZZ配向欠陥)の発生を防止している。
【0027】
さらに、液晶パネル1は、
図2および
図3に示すように、ガラス基板21(他方の基板)のシリコン基板22(一方の基板)と反対側の面側に設けられたマスク7を備える。このマスク7は、マスク開口71を有している。
そして、マスク7は、平面視においてマスク開口71から有効画素領域4Eを露出させ、かつダミー画素領域4Dの少なくとも周縁部を包含する(覆う)ように配置されている。なお、マスク7は、ダミー画素領域4Dを有効画素領域4Eとの境界まで包含するような形態であってもよい。
【0028】
ここで、本発明者らの検討によれば、製造時における液晶6の配向欠陥(ZZ配向欠陥)の発生を防止したとしても、使用時の温度変化に伴って、
図7(a)に示すように、液晶6とシール部3との境界(液晶6の配向の不連続点)から配向欠陥が形成されることが判明した。
そして、この配向欠陥は、
図7(b)および
図7(c)に示すように、画素領域4に向かって広がっていき、最終的には、
図7(d)および
図8に示すように、画素領域4(ダミー画素領域4D)と重なるような直角三角形状の配向欠陥発生領域が形成される。
【0029】
また、この配向欠陥発生領域の斜辺は、配向膜51、52のラビング方向(配向規制方向)に依存し、具体的には、
図5、
図6および
図8中二点鎖線で示される矢印の方向と一致するラビング方向の法線方向に沿って延びることも判明した。
さらに、この配向欠陥は、高温および低温のいずれの温度変化でも生じるとともに、温度が高くなるにつれて、あるいは、温度が低くなるにつれて、拡大していくことも判明した。
【0030】
そこで、本発明では、シリコン基板(一方の基板)22側に設けられた配向膜52の平面視において、配向規制方向に沿って延在し、かつ画素領域の内側から画素領域4の角部4Cを通る仮想線VLを規定し、この仮想線VLがシール部3の所定の位置を通過するように設定した。
なお、本実施形態では、仮想線VLが通る画素領域4の角部4Cは、ダミー画素領域4Dの角部(第1の外辺4Aと、第1の外辺4Aに直交する第2の外辺4Bとの交点)に一致する。
【0031】
また、シール部3は、画素領域4(ダミー画素領域4D)の第1の外辺4Aに沿って延在する第1の部分3Aと、第2の外辺4Bに沿って延在する第2の部分3Bとを有する。本実施形態では、第1の部分3Aと第2の部分3Bは、互いに直交する。
そして、仮想線VLが第1の部分3Aと第2の部分3Bとの角部3C(
図5参照)または第2の部分3Bの長手方向の途中(
図6参照)を通過するように設定した。
なお、本実施形態では、角部3Cは、第1の部分3Aの内辺と第2の部分3Bの内辺との交点に一致する。
【0032】
特に、本実施形態では、仮想線VLと第2の部分3Bとのなす角度θを、45°以下、好ましくは40°以下、より好ましくは35°以下、さらに好ましくは30°以下、特に好ましくは25°以下に設定した。言い換えると、仮想線VLと第1の部分3Aとのなす角度(90°-θ)を、45°超に設定した。
かかる構成によれば、形成される配向欠陥発生領域の斜辺を除く2辺のうち、長さが短い方の辺(本実施形態では、シール部3の第2の部分3B)に沿って、画素領域4をシール部3の第1の部分3Aから離間させることにより、液晶パネル1の大型化を防止しつつ、配向欠陥発生領域が画素領域4に重なるのを防止することができる。
すなわち、シール部3の第2の部分3Bに沿って画素領域4をシール部3の第1の部分3Aから僅かに離間させるだけで、画素領域4の角部4Cと配向欠陥発生領域の斜辺との離間距離(直線距離)を大きく広げることができるため(斜辺の角度と離間距離との数学的な関係による)、液晶パネル1の大型化を最小限に抑えつつ、配向欠陥発生領域が画素領域4に重なり難くすることができる。
なお、画素領域4をシール部3の第1の部分3Aから離間させる方法としては、所定の位置に固定されたシール部3の第1の部分3Aから画素領域4を遠ざける方法、所定の位置に固定された画素領域4からシール部3の第1の部分3Aを遠ざける方法、画素領域4およびシール部3の第1の部分3Aのそれぞれを互いに遠ざける方法のいずれかを適宜選択することができる。
【0033】
仮想線VLと第2の部分3Bとのなす角度は、液晶6(液晶分子61)のスイッチング角に基づいて規定することもできる。具体的には、液晶6のスイッチング角をXとしたとき、(X/2)±5°であることが好ましく、(X/2)±4°であることがより好ましく、(X/2)±3°であることがさらに好ましい。これにより、液晶パネル1のコントラストを高めつつ、明暗のスイッチング速度をより向上させることができる。
配向規制方向は、配向膜51、52のラビング方向である。この場合、本発明を適用するのが好適である。ただし、配向規制方向は、ラビング方向に限らず、斜方蒸着等により定められた方向であってもよい。
【0034】
画素領域4(ダミー画素領域4D)の角部4Cと、シール部3の角部3Cとの離間距離(直線距離)は、液晶パネル1の使用温度の範囲内において第1の部分3Aと第2の部分3Bとの間に形成される液晶6の配向欠陥発生領域の最大範囲が画素領域4に重ならないように設定されるのが好ましい。この場合、配向欠陥発生領域が画素領域4に重なるのをより確実に阻止することができる。なお、液晶パネル1の使用温度の範囲は、設計上の動作保証温度の範囲であり、例えば、-10℃~70℃であるが、この範囲には限定されない。
他の側面からは、「仮想線VLと第2の部分3Bとの交点と、シール部3の角部3Cとの離間距離(
図6中D)/ダミー画素領域の平均幅(
図6中W)」の数式で表される値は、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。これにより、シール部3と画素領域4との離間距離が必要以上に大きくなること、すなわち液晶パネル1の大型化を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態のシール部3は、画素領域4の対角線(角部3Cの対辺)49を介して角部3Cの反対側に、液晶6を2枚の基板21、22の間の領域に注入する注入口38を備えている。
かかる構成において、配向規制方向を画素領域4の角部4Cからシール部3の角部3Cと反対側(注入口38)に向かう配向膜51、52のラビング方向に設定すれば、注入口38近傍でZZ配向欠陥が生じ易くなる。この場合、注入口38近傍に角部3Cと同様のシール部3の角部、あるいは、シール部3と封止材39(シール部3の一部)との角部が存在すれば、その角部と注入口38近傍の画素領域4の角部との位置関係を、
図5および
図6に示したシール部3の角部3Cと画素領域4の角部4Cとの位置関係と同様に設定することにより、上述したのと同様の効果が得られる。
【0036】
上記実施形態の液晶パネル1によれば、画素領域とシール部との関係を適切に設定したので、大型化を防止しつつ、仮に、使用時の温度変化に伴ってZZ配向欠陥が発生しても、表示画像に悪影響が生じ難くすることができる。また、かかる液晶パネルを備える液晶表示装置は、小型で、かつ優れた表示性能を持続して発揮することができる。
上記実施形態の液晶パネル1は、以下(1)または(2)の条件を満たすと言うことができる。
(1)仮想線VLがシール部3の角部3Cを通過する。
(2)仮想線VLとシール部3の第2の部分3Bとのなす角度θが45°以下であり、かつ、仮想線VLがシール部3の第2の部分3Bの長手方向の途中を通過する。
【0037】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記液晶パネルにおいて、前記(2)の条件を満たす場合における前記仮想線と前記第2の部分とのなす角度および前記(3)の条件を満たす場合における前記仮想線と前記第1の部分とのなす角度は、それぞれ、前記液晶のスイッチング角をXとしたとき、(X/2)±5°である、液晶パネル。
前記液晶パネルにおいて、前記配向規制方向は、前記配向膜のラビング方向である、液晶パネル。
前記液晶パネルにおいて、前記画素領域の前記角部と、前記シール部の前記角部との離間距離は、前記液晶パネルの使用温度の範囲内において前記第1の部分と前記第2の部分との間に形成される前記液晶の配向欠陥発生領域の最大範囲が前記画素領域に重ならないように設定される、液晶パネル。
前記液晶パネルにおいて、前記画素領域は、矩形の有効画素領域と、前記有効画素領域の周囲を囲む帯状のダミー画素領域とを有し、前記仮想線が通る前記画素領域の前記角部は、前記ダミー画素領域の角部である、液晶パネル。
前記液晶パネルにおいて、前記(2)の条件を満たす場合における「前記仮想線と前記第2の部分との交点と、前記シール部の前記角部との離間距離/前記ダミー画素領域の平均幅」の数式で表される値および前記(3)の条件を満たす場合における「前記仮想線と前記第1の部分との交点と、前記シール部の前記角部との離間距離/前記ダミー画素領域の平均幅」の数式で表される値は、それぞれ、10以下である、液晶パネル。
前記液晶パネルにおいて、さらに、前記2枚の基板のうちの他方の基板の前記一方の基板と反対側の面側に設けられ、平面視において前記有効画素領域を露出させ、かつ前記ダミー画素領域の少なくとも周縁部を包含するマスクを備える、液晶パネル。
前記液晶パネルにおいて、前記シール部は、前記画素領域の対角線を介して前記角部の反対側に、前記液晶を前記2枚の基板の間の領域に注入する注入口を備える、液晶パネル。
前記液晶パネルにおいて、前記液晶は、強誘電性液晶である、液晶パネル。
液晶表示装置であって、前記液晶パネルを備える、液晶表示装置。
もちろん、この限りではない。
【0038】
既述のとおり、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を何ら限定するものではない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0039】
例えば、本発明の液晶パネルでは、液晶6として、強誘電性液晶に代えて、TN液晶、STN液晶、反強誘電性液晶等も使用可能である。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を期待することができる。
【0040】
また、仮想線VLとシール部3の第2の部分3Bとのなす角度θが45°超である場合、言い換えると、仮想線VLとシール部3の第1の部分3Aとのなす角度(90°-θ)が45°以下である場合には、シール部3の第1の部分3Aに沿って、画素領域4をシール部3の第2の部分3Bから離間させるようにすればよい。この場合、仮想線VLは、
図9に示すように、シール部3の第1の部分3Aの長手方向の途中を通過するように設定される。この場合でも、上記実施形態と同様の効果を期待することができる。
図9に示す実施形態の液晶パネル1は、以下(3)の条件を満たすと言うことができる。
(3)仮想線VLとシール部3の第1の部分3Aとのなす角度(90°-θ)が45°以下であり、かつ、仮想線VLが第1の部分3Aの長手方向の途中を通過する。
【0041】
なお、
図9に示す実施形態の液晶パネル1において、仮想線VLとシール部3の第1の部分3Aとのなす角度(90°-θ)の好ましい値、「仮想線VLと第1の部分3Aとの交点と、シール部3の角部3Cとの離間距離/ダミー画素領域の平均幅」の数式で表される値の好ましい値、仮想線VLと第1の部分3Aとの交点とシール部3の角部3Cとの離間距離の好ましい値、画素領域4の角部4Cとシール部3の角部3Cとの離間距離の好ましい値等は、それぞれ、
図5および
図6に示す実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0042】
100 :液晶表示装置
10 :筐体
20 :回路基板
30 :光源
40 :反射部材
50 :拡散板
60 :偏光板
70 :透明部材
80 :偏光ビームスプリッター
90 :接眼レンズ
1 :液晶パネル
21 :ガラス基板
22 :シリコン基板
3 :シール部
3A :第1の部分
3B :第2の部分
3C :角部
31 :スペーサ
32 :接着剤
38 :注入口
39 :封止材
4 :画素領域
4A :第1の外辺
4B :第2の外辺
4C :角部
4D :ダミー画素領域
4E :有効画素領域
41 :透明電極
42 :画素電極
43 :電極パッド
49 :対角線
51 :配向膜
52 :配向膜
6 :液晶
61 :液晶分子
7 :マスク
71 :マスク開口
BW :ボンディングワイヤ
D :離間距離
L :光
VL :仮想線
W :平均幅
θ :角度