(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128557
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】撮影装置および認証装置
(51)【国際特許分類】
G06V 40/145 20220101AFI20230907BHJP
G06V 40/13 20220101ALI20230907BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20230907BHJP
A61B 5/1171 20160101ALI20230907BHJP
【FI】
G06V40/145
G06V40/13
G06F21/32
A61B5/1171 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032968
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 友輔
(72)【発明者】
【氏名】三浦 直人
(72)【発明者】
【氏名】長坂 晃朗
(72)【発明者】
【氏名】野々村 洋
(72)【発明者】
【氏名】中崎 渓一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅弘
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA07
4C038VB13
4C038VC01
(57)【要約】
【課題】鮮明な波長分離画像データを取得すること。
【解決手段】撮影装置は、波長が異なる複数の波長の光を生体へ照射する照射部と、前記照射部によって照射された前記生体を撮影して、前記生体の画像データを生成する撮影部と、前記撮影部によって生成された画像データに基づいて、前記複数の波長を分離した複数の波長分離画像データを生成する画像処理部と、前記画像データと、前記画像処理部によって生成された複数の波長分離画像データと、に基づいて、前記複数の波長の光の照射光量を制御する制御部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が異なる複数の波長の光を生体へ照射する照射部と、
前記照射部によって照射された前記生体を撮影して、前記生体の画像データを生成する撮影部と、
前記撮影部によって生成された画像データに基づいて、前記複数の波長を分離した複数の波長分離画像データを生成する画像処理部と、
前記画像データと、前記画像処理部によって生成された複数の波長分離画像データと、に基づいて、前記複数の波長の光の照射光量を制御する制御部と、
を有することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影装置であって、
前記制御部は、前記画像データの輝度および前記波長分離画像データの輝度が所定の範囲内に収まるように、前記複数の波長の光の照射光量を制御する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮影装置であって、
前記画像データは、属性が異なる複数の属性画像データにより構成される、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の撮影装置であって、
前記制御部は、前記複数の属性画像データのうち、少なくとも前記照射部が照射する前記複数の波長の光の感度の総和が最大となる特定の属性画像データの輝度が所定の範囲内に収まるように、前記複数の波長の光の照射光量を制御する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の撮影装置であって、
前記制御部は、前記複数の波長分離画像データのうち、認証精度への寄与率の高い特定の波長分離画像データの輝度が所定の範囲に収まるように、前記複数の波長の光の照射光量を制御する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項6】
請求項4に記載の撮影装置であって、
前記制御部は、前記複数の属性画像データのうち、前記複数の波長の光の各々の感度と前記照射部から照射されずに前記撮影部が受光した他の波長の光の感度との総和が最大となる特定の属性画像データの輝度が、所定の範囲に収まるように、前記複数の波長の光の照射光量を制御する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項7】
請求項1に記載の撮影装置であって、
前記生体は複数の指であり、
前記制御部は、前記複数の指についての前記画像データおよび前記複数の波長分離画像データに含まれる一部の指の領域に基づいて、前記複数の波長の光の照射光量を制御する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項8】
波長が異なる複数の波長の光を生体へ照射する照射部と、
前記照射部によって照射された前記生体を撮影して、前記生体の画像データを生成する撮影部と、
前記撮影部によって生成された画像データに基づいて、前記複数の波長を分離した複数の波長分離画像データを生成する画像処理部と、
前記画像データと、前記画像処理部によって生成された複数の波長分離画像データと、に基づいて、前記複数の波長の光の照射光量を制御する制御部と、
前記複数の波長分離画像データの各々から生体特徴データを抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された複数の生体特徴データの各々を既登録の生体特徴データと照合する照合部と、
を有することを特徴とする認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体を撮影する撮影装置および生体を撮影して認証する認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を生体に照射し、その反射光を撮影した生体画像により生体認証をおこなう生体認証技術がある。近赤外光を照射光として選択されると、血管中のヘモグロビンとその他の生体組織の近赤外光の吸収特性との違いを利用して撮影した血管画像による生体認証が実現できる。また、可視光である緑や青の波長帯の光を照射光として選択することで、個人の識別が可能な指紋や関節のしわなどの皮膚の表面に存在する凹凸を撮影した表皮画像による生体認証が実現できる。
【0003】
指の血管画像や表皮画像といった生体画像を用いた認証技術を同一の装置構成で実現するための生体撮影方法として反射型方式がある。反射型方式は、光源と撮像部とを近接して配置し、光源からの照射光を生体に照射して反射する光を撮像して生体画像を取得する方法である。
【0004】
特許文献1は、光音響イメージング(Photoacoustic Imaging:PAI)で得られる情報中における、測定対象外の成分の影響を低減する被検体情報取得装置を開示する。この被検体情報取得装置は、第1の波長λ1である第1の光と、第2の波長λ2である第2の光を照射する光源と、被検体から発生する光音響波を検出信号に変換する検出手段と、検出信号から特性情報を取得する信号処理手段と、被検体に照射される入射光強度を取得する光強度取得手段を有し、信号処理手段は、第1の光がヘモグロビンに吸収されて発生する信号と、第2の光がヘモグロビンに吸収されて発生する信号との差し引き処理により特性情報を取得し、第1と第2の波長はそれぞれ780~810nm、840~920nmであり、第1と第2の光の入射光強度をそれぞれΦ(λ1)、Φ(λ2)とするとき、Φ(λ1)≦Φ(λ2)を満たし、かつ、Φ(λ1)とΦ(λ2)との差が所定範囲内になるように調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の波長の光を同時に生体に照射して鮮明な生体画像を撮影しようとする場合、RGB画像データのいずれかの成分の画像データの生体部位において輝度が飽和したり、小さすぎると、その生体部位では生体情報が失われる。したがって、RGB画像データの分光処理により生成される波長分離画像データにおいても生体部位の生体情報が失われてしまう可能性がある。また、RGB画像データが適切な明るさ(輝度)となるように複数の波長の光の光量を調整したとしても、生成される波長分離画像データが適切な明るさ(輝度)になるとは限らない。
【0007】
本発明は、鮮明な波長分離画像データを取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の一側面となる撮影装置は、波長が異なる複数の波長の光を生体へ照射する照射部と、前記照射部によって照射された前記生体を撮影して、前記生体の画像データを生成する撮影部と、前記撮影部によって生成された画像データに基づいて、前記複数の波長を分離した複数の波長分離画像データを生成する画像処理部と、前記画像データと、前記画像処理部によって生成された複数の波長分離画像データと、に基づいて、前記複数の波長の光の照射光量を制御する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態によれば、鮮明な波長分離画像データを取得することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、実施例1にかかる撮影装置および認証装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例1にかかる撮影装置および認証装置のブロック構成例1を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施例1にかかる撮影装置および認証装置のブロック構成例2を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施例1にかかる生体画像撮影処理手順例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、近赤外光量とR成分画像データの輝度との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、緑光量と差分との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例2にかかる生体画像撮影処理手順例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施例3にかかる生体画像撮影処理手順例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施例4にかかる生体画像撮影処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
<生体認証例>
図1は、生体認証例を示す説明図である。
図1では、3本の指を撮像して生体認証を行う例を示す。認証装置は、多波長の光を出力する光源から照射された指を撮像して、指の撮影画像データIsを生成する。指の撮影画像データIsは、R成分画像データIr、G成分画像データIg、およびB成分画像データIbを含むRGB画像データである。ここでは、一例として、光源から照射する波長の光が、近赤外の波長の光および緑光の波長の光を含んでおり、G成分画像データIgの輝度が最も高く、輝度飽和が生じやすい場合について説明する。
【0012】
このため、認証装置は、波長分離により、撮影画像データIsから、近赤外波長分離画像データIiと緑光波長分離画像データIcとを生成する。認証装置は、R成分画像データIr、G成分画像データIg、およびB成分画像データIbの中で最も高輝度のG成分画像データIgを用いて、近赤外波長分離画像データIiおよび緑光波長分離画像データIcの各々の輝度が目標輝度となるように光源の光量を制御する。
【0013】
具体的には、たとえば、認証装置は、
(A)R成分画像データIrの輝度と、近赤外波長分離画像データIiおよび緑光波長分離画像データIcの各々の輝度との関係
(B)G成分画像データIgの輝度と、近赤外波長分離画像データIiおよび緑光波長分離画像データIcの各々の輝度との関係
(C)B成分画像データIbの輝度と、近赤外波長分離画像データIiおよび緑光波長分離画像データIcの各々の輝度との関係
に基づいて、G成分画像データIgの輝度が所定範囲内で、かつ、近赤外波長分離画像データIiおよび緑光波長分離画像データIcの各々の輝度が目標輝度となるように光源の光量を調整する。これにより、撮影した画像データIsの輝度飽和抑制と近赤外波長分離画像データIiおよび緑光波長分離画像データIcの各輝度の安定化との両立を図る。
【0014】
<撮影装置および認証装置の構成例>
図2は、実施例1にかかる撮影装置および認証装置の構成例を示すブロック図である。撮影装置200は、被写体として筐体200Aの上面板部200B上方にかざされた手210の指を撮影する。実施例1では、例として、人差し指211、中指212および薬指213を被写体(撮像対象)とする。ただし、被写体となる指211~213は、両手210の10本の指のうち2本以上含まれればよい。なお、指211~213の手210の甲側の面を指211~213のオモテ面と称し、指211~213の手210のひら側の面を指211~213のウラ面と称す。
【0015】
図2では、撮影装置200は、筐体200Aと、撮像部201と、光源202と、データメモリ206と、を有する。撮影装置200にコントローラ207が接続された装置が認証装置208である。筐体200Aは、たとえば、設置面220に取り付けまたは載置(以下、総称して「設置」)される。設置面220は、地面、天井面または机など地面に平行な台の表面でもよく、壁など地面に垂直な面でもよい。なお、設置面220に直交する軸をZ軸とし、Z軸において設置面220から離間する方向を+Z方向とし、設置面220に近接する方向を-Z方向とする。また、設置面220は、XY平面に平行である。XY平面はX軸とY軸とにより張られる平面である。
【0016】
図2に示したように、手210が上面板部200Bにかざされるように、撮影装置200および認証装置208は設置される。この場合、X軸は、手210が提示されたときの指の長手方向である。Y軸は、指211~213の配列方向である。
【0017】
筐体200A内部に撮像部201と複数の光源202(
図1では、光源202-1、202-2)とを含む。光源202-1、202-2を区別しない場合は、単に光源202と表記する。また、撮像部201と筐体200Aの上面板部200Bとの間には、第1光学フィルタ203が設けられる。
【0018】
撮像部201は、第1光学フィルタ203を通過した被写体光を受光する。被写体光は、光源202からの照射光が被写体に反射された光(反射光)である。第1光学フィルタ203は特定の波長の光のみを透過させる。これにより、余計な光を撮像部201が受光することを防ぎ、撮影した画像データIsにノイズが発生するのを抑えることができる。撮像部201および筐体200Aの上面板部200Bは、提示される手210と対向する。
【0019】
また、撮像部201から+Z方向に存在する上面板部200Bの領域には、光源202の照射光が指211~213のような生体で反射した光を透過させる透光板205が設けられる。透光板205は、たとえば、アクリルやガラスなどの透明な部材で構成される。また、透光板205に、特定の波長の光のみを通過させるフィルムが貼着されてもよい。これにより、撮影装置200内部を外部から視認しにくい状態にすることができる。
【0020】
また、第1光学フィルタ203および第2光学フィルタ204は、偏光フィルタでもよい。これにより、指211~213のような生体に照射して反射された光成分のうち、皮膚表面での鏡面反射成分を低減することができる。したがって、撮影装置200は、生体の血管像をより鮮明に撮像することができる。また、第2光学フィルタ204は、光源202からの照射光の特定の波長のみを透過する帯域フィルタでもよい。これにより、撮像部201はより効率的に特定の波長の光を受光することができる。
【0021】
撮像部201は、たとえば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサのようなカラー撮像素子により構成され、RGBなどの複数色の画像データを生成する。撮像部201の撮像面は、上面板部200Bに対向する。
【0022】
撮像部201は、筐体200A外から上面板部200Bの透光板205および第1光学フィルタ203を介して入射されてくる光を撮像面で受光し、光電変換する。撮像部201は、データメモリ206に接続されており、光電変換した画像データIsをデータメモリ206に格納する。
【0023】
画像データIsは、指の血管や、指紋のような皮膚表面の凹凸、メラニンや角質といった皮膚組織の吸光特性の違いに基づく皮膚表面の色情報などの複数の生体情報を含む指画像データである。指の血管のみを示す画像データIs(指血管画像データ)でもよく、指紋のような皮膚表面の凹凸や、メラニンや角質といった皮膚組織の吸光特性の違いに基づく皮膚表面の色情報のみを表す画像データIs(指表面画像データ)でもよい。以降では、指画像データおよび指血管画像データ、指表面画像データを総称して、指画像データIsと称す。データメモリ206は、コントローラ207に接続される。
【0024】
光源202は、第2光学フィルタ204を介して、上面板部200Bから+Z方向に存在する被写体に光を照射する。指の血管を撮影する場合には、光源202からの照射光は、たとえば、近赤外光となる。また、指の皮膚表面を撮影する場合には、光源202からの照射光は、たとえば、緑や青といった可視光となる。
【0025】
光源202は、筐体200A外のコントローラ207に接続される。コントローラ207は、光源202から照射される光量を制御する。また、コントローラ207は、指211~213の位置を検出したり、指画像データから指211~213内の血管や指紋の特徴を抽出したりする。また、コントローラ207は、データメモリ206に記憶された複数の指画像データを認証してもよい。
【0026】
具体的には、たとえば、コントローラ207は、指画像データIsを2つデータメモリ206から取得し、指の血管の特徴や指の皮膚表面の特徴から両指画像データIsの人差し指211、中指212、および薬指213が同一人物の人差し指211、中指212、および薬指213であるかを認証する。
【0027】
図3は、実施例1にかかる撮影装置200および認証装置208のブロック構成例1を示すブロック図である。撮影装置200は、光源制御部300を有する。光源制御部300は、光源202からの照射光の光量を制御する。光源制御部300は、
図2に示したコントローラ207に含まれる。コンピュータ310は、認証機能を含む。コンピュータ310は、
図1に示したコントローラ207に含まれる。
【0028】
コンピュータ310は、プロセッサ311と、記憶デバイス312と、入力デバイス313と、出力デバイス314と、通信インターフェース(通信IF)315と、を有する。プロセッサ311、記憶デバイス312、入力デバイス313、出力デバイス314、および通信IF315は、バス316により接続される。プロセッサ311は、コンピュータ310を制御する。記憶デバイス312は、プロセッサ311の作業エリアとなる。また、記憶デバイス312は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス312としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk DrIie)、フラッシュメモリがある。入力デバイス313は、データを入力する。入力デバイス313としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナがある。出力デバイス314は、データを出力する。出力デバイス314としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカがある。通信IF315は、ネットワークと接続し、データを送受信する。
【0029】
上述した記憶デバイス312に記憶されたプログラムとしては、たとえば、画像処理プログラムや光源制御プログラム、認証プログラムがある。画像処理プログラムは、プロセッサ311に、撮像部201からの出力信号に基づいて画像データを生成させるプログラムである。光源制御プログラムは、プロセッサ311に、光源202からの照射光量を増減させるプログラムである。認証プログラムは、プロセッサ311に、記憶デバイス312に記憶された指画像データIsの同一性を認証させるプログラムである。なお、画像処理、光源制御および認証の各機能についてソフトウェアでの実現例について説明したが専用回路により、画像処理、光源制御および認証の各機能が実現されてもよい。
【0030】
すなわち、光源制御部300が含まれない撮影装置200は、
図2に示した撮影装置200であり、光源制御部300が含まれた撮影装置200は、
図3に示した撮影装置200である。また、画像処理、光源制御および認証の各機能を有する認証装置208は、光源制御部300およびコンピュータ310を含み、
図2および
図3の認証装置208に対応する。
【0031】
図4は、実施例1にかかる撮影装置200および認証装置208のブロック構成例2を示すブロック図である。
図4に示す撮影装置200および認証装置208は、コンピュータ310を内蔵する。データメモリ206は、記憶デバイス312により実現される。光源制御部300は、記憶デバイス312に記憶されたプログラムをプロセッサ311に実行させることにより実現される。また、認証機能は、記憶デバイス312に記憶されたプログラムをプロセッサ311に実行させることにより実現される。コンピュータ310に認証機能がなければ撮影装置200であり、コンピュータ310に認証機能があれば認証装置208である。
【0032】
認証の前段階で、コンピュータ310は、入力デバイス313によりユーザIDおよび暗証番号を受け付けたり、通信IF315によりICチップやユーザが所持する通信端末からユーザIDおよび暗証番号をワイヤレス受信したりすることにより、記憶デバイス312に、ユーザIDおよび暗証番号を、当該ユーザの指画像データIsと関連付けて登録してもよい。
【0033】
また、コンピュータ310は、上述のように入力デバイス313または通信IF315からユーザIDおよび暗証番号と、指画像データIsと、を取得することにより、記憶デバイス312に記憶されているユーザIDおよび暗証番号に関連付けられる指画像データIsを特定し、両指画像データIsを認証してもよい(いわゆる1対1認証)。認証の前段階で暗証番号によってユーザIDを特定し、ユーザIDに関連付けられた指画像データIsと認証することで、より正確な認証が可能となる。なお、コンピュータ310は、記憶デバイス312に記憶されている指画像データ群から、今回入力された指画像データIsと一致する指画像データIsを特定してもよい(いわゆる1対N認証)。
【0034】
図2~
図4における光源202からの照射光は、それぞれ異なる複数の波長の光を含む。指の血管を撮影する場合には、光源202からの照射光は、たとえば、近赤外光となる。また、指の指紋のような皮膚表面の生体情報を撮影するための光として、たとえば、青または緑といった波長の光を用いることができる。光源202からの複数の波長の照射光は、それぞれ独立に制御して照射する光量を調整することができる。したがって、光源202からの複数の波長の照射光は同時に照射することができ、また、それぞれの波長を異なるタイミングで個別に照射することもできる。
【0035】
<生体画像撮影処理>
図5は、実施例1にかかる生体画像撮影処理手順例を示すフローチャートである。
図5では、一例として実行主体を認証装置208とするが、撮影装置200であってもよい。
【0036】
ステップS501で撮影処理が開始されると、認証装置208は、ステップS502の光源制御により光源202を制御し、光の照射を行う。このとき、光源202は、複数の波長の光を同時に照射する。
【0037】
つぎに、認証装置208は、ステップS503で画像撮影を行い、取得した画像データIsに対してステップS504で波長分離処理を施す。これにより、画像データIsは、照射した各波長の光の成分に相当する複数の波長分離画像データIi、Icに分離される。ここでは2つの波長分離画像データに分離する例について説明するが、さらにもう1つの波長を設定し、3つの波長分離画像データに分離することもできる。たとえば、青の波長の光に対応する波長分離画像データを用いることで、生体特徴の種類を増やし、認証精度を高めることが可能となる。
【0038】
つぎに、認証装置208は、ステップS505で、ステップS503で取得した画像データIsおよびステップS504で生体した波長分離画像データIi、Icに対して画像処理を施すことで、指の検出処理を行う。指の検出処理の一例として、画像データの各画素の輝度に対する閾値処理で手の領域を2値化し、2値化した画像データの輪郭線の形状に基づいて指を検出する処理がある。
【0039】
認証装置208は、ステップS506の指の検出判定において、ステップS505の指検出処理の結果に基づいて、指が検出されたか否かを判定する。指の検出判定(ステップS506)で、指が検出されないと判定した場合(ステップS506:No)、ステップ402の光源制御に戻り、指検出処理を繰り返す。
【0040】
一方、指が検出されたと判定した場合(ステップS506:Yes)、ステップS507の指領域の輝度算出の処理に移行し、認証装置208は、ステップS503で取得した画像データIsおよびS504で生成した波長分離画像データIi、Icの指領域内の輝度算出を行う。
【0041】
ステップS508では、認証装置208は、ステップS507で算出した指領域の輝度に基づいて、次回撮影時における複数の光源202の各光量値を計算する。
【0042】
ステップS509の撮影終了判定では、認証装置208は、たとえば、認証が完了したか否か、撮影時間のタイムアウトが発生したか否か、といった撮影を終了するか否かの判定を行う。撮影が終了すると判定された場合(ステップS509:Yes)、認証装置208は、ステップS510で撮影が終了し、撮影が終了しないと判定された場合(ステップS509:No)、ステップS502に戻り、光源制御を繰り返す。
【0043】
ステップS502の光源制御では、ステップS508において各光源202の光量値が計算されている場合、認証装置208は、計算された光量値で各光源202を照射するようにし、ステップS503の画像取得を行う。
【0044】
ステップS507の指領域の輝度算出では、認証装置208は、ステップS503で撮影したRGB成分を含む画像データIsおよびステップS504で生成した複数の波長分離画像データIi、Icに対して、ステップS505の指検出処理で検出した指領域の中の、特に生体特徴の抽出を行う領域の輝度情報を求める。
【0045】
輝度情報とは、たとえば、指領域内の特に生体特徴の抽出を行う領域の画素の輝度平均値である。指の検出本数が複数ある場合には、検出したすべての指領域の輝度平均を輝度情報としてもよい。また、生体の個体差や手の姿勢変動が大きく、一部の指領域の輝度が大きすぎたり小さすぎたりする可能性がある。
【0046】
このように、すべての指を一律に適正な範囲内の輝度に調整することが難しい場合、認証装置208は、一部の指を除外した上で輝度算出を行うことで、認証精度の低下を抑えることが可能となる。たとえば、認証装置208は、複数本の指が検出されている中で、輝度飽和が発生した上限輝度以上の指や下限輝度以下の指を除外し、残りの指の指領域の輝度平均を用いて、ステップS508の各光源202の光量値計算を行う。これにより、すべての指領域の輝度を適正な範囲内の輝度に調整することが難しい場合でも、一部の指を除いた残りの指の輝度を適正な範囲内にすることで、高い認証精度を維持することができる。
【0047】
なお、適正な範囲とは、たとえば、輝度飽和しない輝度の上限値(上限輝度)から、生体情報が欠落しない輝度の下限値(下限輝度)までの所定範囲である。下限輝度の一例としては、画像データ中の血管領域において輝度の明暗のコントラストが十分に観測可能な範囲の下限の輝度とすることができる。
【0048】
また、ステップS508における各光源202の光量値計算については、複数の波長の光を同時に照射して撮影したRGB画像データIsの各色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbおよび、波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcが輝度情報として用いられる。
【0049】
認証装置208は、撮影したRGBの指画像データIsの中で、同時に照射した各波長の光に対する感度の総和が最大となる色成分画像データ(たとえば、画像データIg)の輝度Lgが適正な範囲内の輝度となるように光量を調整する。その上で、各波長分離画像データIi、Icについても同様に、認証装置208は、輝度Li、Lcが適正な範囲内の輝度となるように各光源202の光量値を調整する。
【0050】
以下では、光源202の照射光は、近赤外光および緑の光とする。この2つの波長の光を光源202から同時に指に照射し、近赤外光および可視光に感度を持つ撮像部201で取得したRGB画像データIsを利用する場合の各光源202の光量値計算(ステップS508)の一例を示す。
【0051】
撮影したRGB画像データIsの各色成分画像データIr、Ig、Ibの指領域内の画素の輝度Lr、Lg、Lbは、光源202が照射する近赤外光の波長分離画像データIiおよび緑光の波長分離画像データIcの画素の輝度Li、Lcの関数として、下記式(1)~(3)式で表すことができる。
【0052】
Lr=Fr(Li,Lc)・・・(1)
Lg=Fg(Li,Lc)・・・(2)
Lb=Fb(Li,Lc)・・・(3)
【0053】
関数Fr、Fg、Fbは、波長分離画像データIiおよび波長分離画像データIcの指領域内の画素の輝度Li、Lcを入力とする関数である。また、波長分離画像データIiおよび波長分離画像データIcは、RGB画像データIsの各色成分画像データIr、Ig、Ibの指領域内の画素の輝度Lr、Lg、Lbに基づいて認証装置208が波長分離処理(S504)を実行することで得られる。波長分離画像データIiおよび波長分離画像データIcの指領域内の画素の輝度Li、Lcは、それぞれ光源202の照射する近赤外光量Qi、緑光量Qcの関数として、下記式(4)、(5)で表すことができる。
【0054】
Li=Fi(Qi)・・・(4)
Lc=Fc(Qc)・・・(5)
【0055】
関数Fi、Fcは、それぞれ近赤外光量Qi、緑光量Qcの値を入力とする関数である。認証装置208は、RGB画像データIsの色成分画像データIr、Ig、Ibの指領域内の画素の輝度Lr、Lg、Lbを用いて上記(1)~(3)の連立方程式を解くことで、2つの未知数である波長分離画像データIiおよび波長分離画像データIcの指領域内の画素の輝度Li、Lcを求めることができる。
【0056】
認証装置208は、上記式(4)、(5)より、2つの波長の光の各照射光量Qi、Qcと、波長分離画像データIiおよび波長分離画像データIcの輝度Li、Lcと、の関係を求める。そして、認証装置208は、観測したR、G、Bの色成分画像データIr、Ig、Ibの各画素の輝度Lr、Lg、Lbが適正な範囲内にあり、かつ波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcがそれぞれ所定の輝度となるように、各光源202の照射光量(Qi、Qc)を調整する。所定の輝度としては、たとえば、輝度飽和しない輝度の上限輝度と血管領域やその他の生体領域において輝度の明暗のコントラストが十分に観測可能な輝度の下限の間にある輝度とすることができる。
【0057】
上記式(4)、(5)での輝度Li、Lcは、指領域内の画素群の代表値(平均値、最大値、最小値、中央値、最頻値)でもよい。
【0058】
たとえば、色成分画像データIr、Ig、Ibのうち光源202から同時に指に照射した近赤外光の感度と緑光の感度との総和が最大となる色成分画像データが、G成分画像データIgであったとする。光源202から近赤外光と緑光を同時に照射して撮影した場合、G成分画像データIgの輝度Lgが最も大きく、輝度飽和が生じるなどの生体情報が欠落する状態になりやすい。G成分画像データIgの生体情報が欠落した状態では、G成分画像データIgを用いて生成される波長分離画像データIi、Icにおいても同様に生体情報が欠落する可能性がある。
【0059】
したがって、認証装置208は、少なくとも光源202の照射する複数の光の感度の総和が最大となる色成分画像データ(この例は、G成分画像データIg)の輝度が適正な範囲に収まる状態にしつつ、波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcがそれぞれ所定の輝度となるように各光源202の照射光量(Qi、Qc)を調整する。これにより、鮮明な波長分離画像データIi、Icが得られる。所定の輝度としては、たとえば、輝度飽和しない輝度の上限輝度と血管領域やその他の生体領域において輝度の明暗のコントラストが十分に観測可能な輝度の下限の間にある輝度とすることができる。
【0060】
同時に指に照射した近赤外光と緑光の感度の総和が最大となるのがG成分画像データIgの場合の例においては、認証装置208は、少なくともG成分画像データIgの輝度Lgを利用して光源202の光量を調整する。この場合、認証装置208は、R成分画像データIrやB成分画像データIbの輝度Lr、Lbも併用して光源202の光量を調整してもよい。波長分離画像データIi、Icを生成するために必要となるRGB画像データIsの各色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbをすべて適正な範囲内に収めることでより鮮明な波長分離画像データIi、Icが得られる。
【0061】
つぎに、観測したRGB画像データIsから得られる色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbが複数の波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcの線形結合によって表現できると仮定した場合の、光源制御方法の一例を説明する。色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbは、光源202の照射する近赤外光の成分に相当する波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcと線形性があるとして、下記式(6)~(8)式で表すことができる。
【0062】
Lr=Ar×(αR×Li+βR×Lc)・・・(6)
Lg=Ag×(αG×Li+βG×Lc)・・・(7)
Lb=Ab×(αB×Li+βB×Lc)・・・(8)
【0063】
上記式(6)~(8)のAr、Ag、Abは、任意の値をとる係数である。αR、αG、αBは、近赤外光の波長において撮像部201で撮影したRGB画像データIsの各色成分R、G、Bの受光感度を表す既知の係数である。βR、βG、βBは、緑光の波長においてRGB画像データIsの各色成分R、G、Bの受光感度を表す既知の係数である。また、近赤外光の波長分離画像データIiの輝度Liと近赤外光量Qiとの関係は下記式(9)により、緑光の波長分離画像データIcの輝度Lcと緑光量Qcとの関係は下記式(10)により表すことができる。
【0064】
Li=αi×Qi・・・(9)
Lc=βc×Qc・・・(10)
【0065】
αiは、近赤外光量Qiと波長分離画像データIiの輝度Liとの関係を表す係数である。βcは、緑光量Qcと波長分離画像データIcの輝度Lcとの関係を表す係数である。近赤外光量Qiおよび緑光量Qcは、輝度Liおよび輝度Lcを観測したときの認証装置208において設定した光源202の光量の値として読み取ることが可能な既知の値である。近赤外光量Qiおよび観測した輝度Liの関係から上記式(9)により係数αiが求められ、緑光量Qcおよび観測した輝度Lcの関係から上記式(10)により係数βcが求められる。
【0066】
認証装置208は、観測したRGB画像データIsの色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbと、既知であるRGB画像データIsの各色成分R、G、Bの受光感度αR、αG、αB、βR、βG、βBと、を用いて、上記(6)~(8)の連立方程式を解くことで、2つの未知数である波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcを求めることができる。
【0067】
また、認証装置208は、上記式(9)、(10)の関係より、現在の撮影フレームにおいて設定した近赤外光量Qiおよび上記(6)~(8)の連立方程式を解いて求めた輝度Liの関係から係数αiを求める。そして、認証装置208は、緑光量Qcおよび上記(6)~(8)の連立方程式を解いて求めた輝度Lcの関係から係数βcを求める。
【0068】
次の撮影フレームにおいて、認証装置208は、算出された波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcが所定の輝度となるように、それぞれ近赤外光量Qi、緑光量Qcを調整する。所定の輝度は、たとえば、血管領域や生体領域の輝度の明暗のコントラストが十分に観測できる値とする。認証装置208は、少なくとも2つの光源202の波長の光の色成分ごとの受光感度の総和{(αR+βR)、(αG+βG)、(αB+βB)}のうち、最大であるG成分画像データIg((αG+βG)が最大)において輝度飽和などが発生しないように適正な範囲内の輝度になるように、かつ、波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcがそれぞれ適正な範囲内の輝度になるように、次の撮影フレームにおける各光源202の照射光量(Qi、Qc)を調整する。適正な範囲内の輝度は、たとえば、輝度飽和しない輝度の上限輝度と血管領域や生体領域の輝度の明暗のコントラストが十分に観測可能な輝度の下限の間にある輝度とする。
【0069】
これにより、輝度飽和が発生しやすいG成分画像データIgの輝度飽和の発生を抑制しつつ、波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcを適正な範囲内の輝度値にすることが可能となる。さらに、G成分画像データIgだけでなく、R成分画像データIrおよびB成分画像データIbの輝度Lr、Lbについても適正な範囲内の輝度となるように光源制御を行うことで波長分離画像データIi、Icの鮮明さをより高めることが可能である。
【0070】
つぎに、光源202の照射する複数の波長の光と撮影したRGB画像データIsの関係性を簡潔にして、より効率的に光源制御を行う方法の一例を説明する。これまでの説明と同様に、認証装置208は、光源202により近赤外光および緑光を照射光として同時に指に照射し、撮像部201により近赤外光および可視光に感度を持つ撮像部201でRGB画像データIsを撮影する。
【0071】
撮像部201のRGBの各色成分画像データIr、Ig、Ibの感度特性の特徴として、近赤外光に対しては、R成分画像データIr、G成分画像データIg、B成分画像データIbのすべてにおいてほぼ同等の感度を持つ場合を仮定する。
【0072】
また、緑光に対してはG成分画像データIgが最も感度が大きく、R成分画像データIrにおいては感度をほぼ持たない場合を仮定する。
【0073】
これらの仮定を踏まえると、上記式(6)、(7)においてはαR≒αGとみなすことができ、上記式(6)においてはβR≒0とみなすことができる。また任意変数についてAr=Ag=1とすると、上記式(6)で表されたR成分画像データIrの輝度Lrは、下記式(11)のように波長分離画像データIiの輝度Liのみによって表現でき、上記式(7)で表されたG成分画像データIgは、下記式(12)のように、波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcの線形結合で表現できる。
【0074】
Lr=αR×Li・・・(11)
Lg=αR×Li+βG×Lc・・・(12)
【0075】
近赤外光と緑光を同時に指に照射した場合に、両方の波長の光に感度を持ち、R成分画像データIrよりも輝度が大きくなるG成分画像データIgにおいて、認証装置208は、波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcが輝度飽和などが生じない適正な範囲内の輝度となるように光源202の光量制御を行い、近赤外光量Qiおよび緑光量Qcを再設定する。
【0076】
この例では、R成分画像データIrは近赤外光にのみ感度αRを持つため、認証装置208は、はじめに上記式(11)に基づき、観測した輝度Lrおよび既知の係数αRから輝度Liを求める。次に、認証装置208は、上記式(9)に基づき、現在の撮影フレームにおいて設定した近赤外光量Qiおよび上記式(11)で求めた輝度Liの関係から係数αiを求める。認証装置208は、上記式(9)で求めた係数αiおよび上記式(11)に基づき、波長分離画像データIiの輝度LiおよびR成分画像データIrの輝度Lrが所定の範囲の輝度となるように、次の撮影フレームにおける近赤外光量Qiを決定する。
【0077】
上記式(11)によりR成分画像データIrの輝度Lrと波長分離画像データIiの輝度Liの関係性を示す感度αRを先に求めておくことで、認証装置208は、上記式(12)において波長分離画像データIiの影響を差し引いた上でのG成分画像データIgの輝度Lgと波長分離画像データIcの輝度Lcとの関係性を示す感度βGを求めることができる。
【0078】
つぎに上記(12)および上記式(10)に基づき、認証装置208は、G成分画像データIgの輝度Lgと波長分離画像データIcの輝度Lcとを用いて緑光の光量計算を行う。具体的には、たとえば、認証装置208は、G成分画像データIgの輝度Lgが適正な範囲内に収まり、かつ波長分離画像データIcの輝度Lcが適正な範囲内の所定の輝度となるときの緑光量Qcを、上記式(12)式および上記式(10)に基づいて算出する。所定の輝度としては、たとえば、輝度飽和しない輝度の上限輝度と血管領域や生体領域において輝度の明暗のコントラストが十分に観測可能な輝度の下限の間にある輝度とすることができる。
【0079】
このように、2つの波長の光を同時に照射して被写体を撮影した場合でも、そのRGB画像データIsと照射した波長の光との関係性を簡潔化したことで、認証装置208は、近赤外光と緑光との光源制御を個別に行うことができ、それぞれの波長光量を効率的に制御することができる。
【0080】
上記式(1)~(12)で説明した色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbや波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcと、光源202の照射光量との関係性は、認証装置208に提示される指の位置や姿勢の変化に伴い、リアルタイムに変動すると考えられる。
【0081】
したがって、上記式(1)~(12)の関係性は、連続的に撮影して同一フレーム(RGB画像データIs)から得られる色成分画像データIr、Ig、Ibおよび波長分離画像データIi、Icごとに計算を行う。そして、上記式(1)~(12)の関係性を毎フレーム計算した上で、次のフレームの撮影において、認証装置208は、鮮明な色成分画像データIr、Ig、Ibおよび波長分離画像データIi、Icが得られるように各光源202の光量を調整する。
【0082】
このように、色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbおよび波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcと光源202の照射光量の関係性をリアルタイムに更新しながら計算することによって、指の位置や姿勢の変化に対応して鮮明な色成分画像データIr、Ig、Ibおよび波長分離画像データIi、Icを取得することが可能となる。
【0083】
つぎに、連続的に撮影するフレームごとに色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbおよび波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcと光源202の照射光量の関係性を求め、次のフレームの撮影時の各光源202の照射光量の計算方法について述べる。
【0084】
ここでは、R成分画像データIrの輝度Lrが上記式(11)で、G成分画像データIgの輝度Lgが上記式(12)で表現できる場合を例に説明する。上記式(11)よりR成分画像データIrの輝度Lrは、近赤外光の波長分離画像データIiの輝度Liに比例し、上記式(9)より波長分離画像データIiの輝度Liは近赤外光量Qiと比例関係にあるため、R成分画像データIrの輝度Lrは近赤外光量Qiと比例関係にある。
【0085】
したがって、R成分画像データIr中の指領域内の輝度Lrの平均輝度Lravを算出すると、Lrav=a×近赤外光量Qiの関係性より係数a(比例定数)が求められる。上記式(11)より、R成分画像データIrの輝度Lrと波長分離画像データIiの輝度Liは線形性を持つ関係である。そこで、予め波長分離画像データIiの輝度Liの目標輝度TLiを設定しておき、R成分画像データIrの輝度Lrと波長分離画像データIiの輝度Liとの関係から、波長分離画像データIiの輝度Liが目標輝度TLiとなるときのR成分画像データIrの輝度Lrを目標輝度TRとして定める。
【0086】
図6は、近赤外光量QiとR成分画像データIrの輝度Lrとの関係を示すグラフである。
図6に示すように、近赤外光量Qi=IR1と近赤外光量IR1で照射した場合に観測したR成分画像データIrの指領域の平均輝度Lrav=R1との関係は直線近似できる(R1=a×IR1)。認証装置208は、この関係性からR成分画像データIrの輝度Lrを目標輝度TRにするための近赤外光量Qi=TIRを推定し、次回撮影時の照射光量とすることができる。
【0087】
つぎに、認証装置208は、緑光量Qcの調整を行う。ここで、上記式(12)から上記式(11)を引き算することで下記式(13)が得られる。
【0088】
Lg-Lr=βG×Lc・・・(13)
【0089】
G成分画像データIgの輝度LgとR成分画像データIrの輝度Lrとの差分(Lg-Lr)は、緑光の波長分離画像データIcの輝度Lcに比例し、上記式(10)より波長分離画像データIcの輝度Lcは緑光量Qcに比例する。このため、G成分画像データIgの輝度LgとR成分画像データIrの輝度Lrとの差分(Lg-Lr)は、緑光量Qcに比例することがわかる。
【0090】
つまり、G成分画像データIgとR成分画像データIrとの指領域内の輝度差分(Lg-Lr)をDavとすると、Dav=b×緑光量Qcの関係性より係数b(比例定数)が求められる。このように、上記式(13)および上記式(10)に基づき、観測したG成分画像データIgの輝度LgとR成分画像データIrの輝度の差分(Lg-Lr)と緑光量Qcとの関係性が求まる。これにより、認証装置208は、G成分画像データIgの輝度Lgおよび波長分離画像データIcの輝度Lcが適正な大きさとなるように緑光量Qcを調整することができる。
【0091】
具体的には、たとえば、予め、G成分画像データIgの輝度Lgが適正な範囲に収まりつつ、波長分離画像データIcの輝度Lcが適正な範囲内の目標輝度TLcを設定しておく。また、G成分画像データIgの輝度LgとR成分画像データIrの輝度Lrとの輝度差分Davと波長分離画像データIcの輝度Lcとの関係から、波長分離画像データIcの輝度Lcが目標輝度TLcとなるときのG成分画像データIgの輝度LgとR成分画像データIrの輝度Lrとの輝度差分Davを輝度差分目標値TDとして定める。
【0092】
図7は、緑光量Qcと輝度差分Davとの関係を示すグラフである。
図7に示すように、緑光量QcがQc=G1のときに観測したG成分画像データIgとR成分画像データIrの指領域の輝度差分値D1と、緑光量G1との関係は、直線で近似できる(D1=b×G1)。この関係性から、認証装置208は、G成分画像データIgの輝度LgとR成分画像データIrの輝度Lrとの輝度差分Davを輝度差分目標値とするための緑光量Qc=TGを推定し、次回撮影時の照射光量とする。
【0093】
このように、認証装置208は、近赤外光量Qi、緑光量Qcの順番で、次のフレーム撮影時の光量値を求め、光源制御を行うことで、指の位置や姿勢が変動した場合でも、その変動に対応して鮮明な色成分画像データIr、Ig、Ibおよび波長分離画像データIi、Icを得ることができるようになる。
【0094】
今回の例では、色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbおよび波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcが線形性を持ち、いくつかの近似により光量計算が簡略化できる場合について説明した。しかし、上記式(1)~(5)において色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbおよび波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcとの関係が線形性を持たない場合においても、フレーム毎に光源202の光量値と色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbおよび波長分離画像データIi、Icの輝度Li、Lcとの関係性が求められれば、指の位置や姿勢が変動に対応した光源制御を行うことができることは言うまでもない。
実施例2は、実施例1において、すべての波長分離画像データIi、Icが同時に適正な範囲内の輝度に調整できない場合に、高い認証精度を実現するために光源制御を行う例である。実施例1と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
実施例1では、認証装置208は、複数の波長の光を指に同時に照射して撮影したRGB画像データIsから生成する複数の波長分離画像データIi、Icが鮮明となるように各光源の照射光量を制御する。ここで、すべての波長分離画像データIi、Icを同時に目標輝度にしようとすると、生体の個人差や、指の姿勢変動などによりRGB画像データIsの中の一部の色成分画像データで輝度飽和が生じる可能性がある。
輝度飽和が発生すると波長分離画像データIi、Icの指領域において生体情報が欠落するため、認証精度が低下してしまう。そこで、高い認証精度を維持するため、複数の波長分離画像データIi、Icのうち、高精度化に寄与する割合が大きい波長分離画像データの輝度を適正にすることを優先する。複数の波長分離画像データIi、Icのすべての輝度を適正にできない場合でも、より高精度化に寄与する波長分離画像データの輝度を優先して適正な値にすることで、高い認証精度を維持することができる。
ステップS801で撮影処理が開始されると、認証装置208は、ステップS802の光源制御により光源202を制御し、光の照射を行う。このとき、光源202は、複数の波長の光を同時に照射する。つぎに、認証装置208は、ステップS803で画像撮影を行って画像データIsを取得し、ステップS804で画像データIsに対して波長分離処理を施す。これにより、認証装置208は、ステップS803の撮影で得られた画像データIsを、照射した複数の波長の光の各波長成分で分離して、複数の波長分離画像データIi、Icを生成する。
つぎに、認証装置208は、ステップS805で、ステップS803で取得した画像データIsまたはステップS804で生成した波長分離画像データIi、Icに対して画像処理を施すことで、指領域の検出処理を行う。
ステップS806の指の検出判定では、認証装置208は、ステップS805の指検出処理の結果に基づいて、指が検出されたか否かを判定する。指の検出判定(ステップS805)で、指が検出されないと判定した場合(ステップS806:No)、ステップ602の光源制御に戻り、指検出処理を繰り返す。
指の検出判定(ステップS805)で、指が検出されたと判定した場合(ステップS806:Yes)、ステップS807の指領域の輝度算出の処理に移行し、認証装置208は、ステップS803で取得した画像データIsの色成分画像データIr、Ig、Ibの指領域内の輝度Lr、Lg、Lbと、ステップS804で生成した波長分離画像データIi、Icの指領域内の輝度Li、Lcを算出する。
ステップS808では、認証装置208は、ステップS807で算出した指領域内の輝度と光源202の光量値に基づいて、画像データの輝度調整可否判定を行う。そして、認証装置208は、光源制御によってすべての波長分離画像データIi、Icが同時に適正な範囲内の輝度に調整可能か否かを判定する。
すべての波長分離画像データIi、Icが調整可能と判定した場合(ステップS808:Yes)、ステップS809の各光源の第1光量値計算に進む。そして、認証装置208は、ステップS807で算出した指領域の輝度に基づいて、ステップS803で取得した画像データIsおよびすべての波長分離画像データIi、Icが適正な範囲内の輝度になるように、次回撮影時における複数の光源202の各光量値を計算する。
画像データIsおよびすべての波長分離画像データIi、Icが調整不可能と判定した場合(ステップS808:No)、ステップS810の各光源202の第2光量値計算(ステップS810)に進む。そして、認証装置208は、高精度化に寄与する割合の高い波長分離画像データを優先して、適正な範囲内の輝度になるように次回撮影時における複数の光源202の各光量値を計算する。
優先する波長分離画像データは、実験から事前に求めた高精度化への寄与の割合に基づいて決定される。たとえば、波長分離画像データIiを用いた場合の誤認証率および波長分離画像データIcを用いた場合の誤認証率をそれぞれ実験で求めて記憶デバイス312に格納しておく。
認証装置208は、記憶デバイス312から誤認証率を取得して、誤認証率の低い方の波長分離画像データを優先する。また、認証装置208は、過去の認証結果(履歴情報)を用いて、波長分離画像データIi、Icごとに誤認証率を算出して、記憶デバイス312に上書きしてもよい。これにより、認証装置208は、記憶デバイス312から最新の誤認証率を取得して、誤認証率の低い方の波長分離画像データを優先する。これにより、より高精度な認証を実現することが可能となる。
ステップS811の撮影終了判定では、認証装置208は、たとえば、認証が完了したか否かや、撮影時間のタイムアウトが発生したか否かといった撮影の終了判定を行う。撮影が終了すると判定された場合(ステップS811:Yes)、ステップS812で撮影が終了する。一方、撮影が終了しないと判定された場合(ステップS811:No)、ステップS802に戻り、認証装置208は、光源制御を行う。
ステップS802の光源制御では、ステップS808において、各光源202の光量値が計算されている場合、認証装置208は、各光源202が計算された光量値で照射するようにし、ステップS803の画像取得を行う。
ステップS808の画像データの輝度調整可否判定では、ステップS803で取得した画像データIsがRGB画像データの場合、認証装置208は、たとえば、いずれかの色成分画像データIr、Ig、Ibにおいて指領域で輝度飽和が発生したり、しきい値以下の輝度となるときに、ステップS804で生成したすべての波長分離画像データIi、Icを同時に適正な範囲内の輝度にできないと判定する。
ステップS803で取得したRGB画像データIsのいずれの色成分画像データIr、Ig、Ibも適正な範囲内の輝度であっても、ステップS809の第1光量値計算によって算出された光量値で各光源202を照射すると、次の撮影において取得されるRGB画像データIsのいずれかの色成分画像データIr、Ig、Ibにおいて、輝度飽和が発生したり、しきい値以下の輝度となることがある。このような場合についても、認証装置208は、画像データの輝度調整が不可能と判定することができる。
また、ステップS808の画像データの輝度調整可否判定では、認証装置208は、連続的に撮影する複数フレームにまたがって判定を行うことで、より正確に輝度の調整可否判定ができるようになる。たとえば、複数フレームで連続的にステップS809の各光源の第1光量値計算を行った場合に、撮影するRGB画像データIsおよび生成した波長分離画像データIi、Icが同程度の輝度で安定するが、RGB画像データIsの一部の色成分画像データで輝度飽和が発生したり、輝度がしきい値以下になるといった場合がある。このような場合、認証装置208は、画像データの輝度調整が不可能であると判定することができる。
ステップS810の各光源202の第2光量値計算は、複数の波長分離画像データIi、Icのうち、高精度化に寄与する割合の高い波長分離画像の輝度が適正な範囲内の輝度になるように優先的に光源202の光量値を調整する処理である。具体的には、優先する波長分離画像データ(優先画像データ)および波長分離画像データIi、Icを生成するために、認証装置208は、生成元となるRGB画像データIsの色成分画像データIr、Ig、Ibの輝度Lr、Lg、Lbが適正な範囲内の輝度となるように各光源202の光量調整を行う。
優先画像データ以外の波長分離画像データの輝度については、優先画像データおよびRGB画像データIsが適正な範囲内の輝度である目標輝度から所定範囲外に逸脱しないという条件付きで、認証装置208は、適正な範囲内の輝度である目標輝度から所定範囲内の輝度となるように、各光源202の光量調整を行う。