(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128567
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】メタン発酵処理システム及びメタン発酵の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/28 20230101AFI20230907BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C02F3/28 A ZAB
C02F3/28 Z
C02F11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032980
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 庸平
【テーマコード(参考)】
4D040
4D059
【Fターム(参考)】
4D040AA02
4D040AA32
4D040AA62
4D059AA07
4D059BA13
4D059EB05
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、メタン発酵処理において、水素生成菌の活性を高め、水素生成菌が生成した生成気体をメタン発酵槽に添加することでメタン生成を行うメタン発酵処理システム及びメタン発酵の処理方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明のメタン発酵処理システムは、水素発酵槽で生成された生成気体が、メタン発酵槽に供給されることを特徴とする。これにより、水素発酵槽で生成された水素を含む生成気体が、メタン発酵槽に供給されることから、水素と二酸化炭素とでメタン生成を効率よく行うことができる効果がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素発酵槽で生成された生成気体が、メタン発酵槽に供給されることを特徴とする、メタン発酵処理システム。
【請求項2】
前記生成気体がメタン発酵槽に直接供給されることを特徴とする、請求項1に記載のメタン発酵処理システム。
【請求項3】
前記水素発酵槽のpHは、5.5以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のメタン発酵処理システム。
【請求項4】
前記生成気体を加圧する、加圧部を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のメタン発酵処理システム。
【請求項5】
水素発酵槽で生成された生成気体が、メタン発酵槽に供給されるステップを含むことを特徴とする、メタン発酵の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気処理を行うメタン発酵処理システム及びメタン発酵の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水など被処理水を処理する方法の一つとして、種々の微生物を含む汚泥を用い、嫌気的な環境下での生物処理(以下、「嫌気処理」と呼ぶ)を行うことが知られている。この嫌気処理は、曝気動力が不要で、余剰汚泥がほとんど発生しないことなど、導入に係るメリットが高いことが挙げられる。また、二酸化炭素と水素から微生物にメタンを発生させることで、二酸化炭素を消費させて、脱炭素化に貢献することが期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、メタン発酵槽の前の酸生成槽で生成された生成気体から水素を分離し、分離した水素をメタン発酵槽に投入することで、メタン生成を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、メタン発酵が行われやすくなるように、メタン発酵槽の前段の酸生成槽において有機酸を生成させており、その酸生成の過程で発生した生成気体を使用している。酸生成槽で発生する生成気体には、水素が含まれるが、有機酸の生成を優先させると、水素を生成する水素発酵菌の活性が低くなることから、酸生成槽で発生する生成気体は水素の含有量が少なく、水素を分離してからメタン発酵槽に添加しなければ、効率よく添加できないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、メタン発酵処理において、水素生成菌の活性を高め、水素生成菌が生成した生成気体をメタン発酵槽に添加することでメタン生成を行うメタン発酵処理システム及びメタン発酵の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、水素発酵槽で生成した生成気体をメタン発酵槽に供給することにより、水素発酵槽で生成した水素と二酸化炭素とでメタン発酵を行うことを見出して、本発明を完成した。
【0008】
上記課題を解決するための本発明のメタン発酵処理システムは、水素発酵槽で生成された生成気体が、メタン発酵槽に供給されることを特徴とする。
本発明のメタン発酵処理システムによれば、水素発酵槽で生成された水素を含む生成気体が、メタン発酵槽に供給されることから、水素と二酸化炭素とでメタン生成を効率よく行うことができる効果がある。
【0009】
さらに、本発明のメタン発酵処理システムの一実施態様としては、生成気体がメタン発酵槽に直接供給されることを特徴とする。
このメタン発酵処理システムによれば、生成気体をメタン発酵槽に直接供給できることから、分離装置が不要となり、簡素化されたメタン発酵処理システムとすることできる効果がある。
【0010】
さらに、本発明のメタン発酵処理システムの一実施態様としては、水素発酵槽のpHは、5.5以下であることを特徴とする。
このメタン発酵処理システムによれば、水素発酵槽のpHは、5.5以下であることにより、水素生成菌の活性をより上げることができ、効率よく水素を生成できる効果がある。
【0011】
さらに、本発明のメタン発酵処理システムの一実施態様としては、生成気体を加圧する、加圧部を備えることを特徴とする。
このメタン発酵処理システムによれば、生成気体を圧縮して被処理水に供給することにより、効率よく生成気体を被処理水に溶解させることができる効果がある。
【0012】
上記課題を解決するための本発明のメタン発酵の処理方法は、水素発酵槽で生成された生成気体が、メタン発酵槽に供給されることを特徴とする。
本発明のメタン発酵の処理方法によれば、水素発酵槽で生成された生成気体である水素が、メタン発酵槽に供給されることから、水素と二酸化炭素とでメタン生成を効率よく行うことができる効果がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メタン発酵処理において、水素生成菌の活性を高め、水素生成菌が生成した生成気体をメタン発酵槽に添加することでメタン生成を行うメタン発酵処理システム及びメタン発酵の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施態様に係るメタン発酵処理システムを示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第2の実施態様に係るメタン発酵処理システムを示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第3の実施態様に係るメタン発酵処理システムを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の被処理水W0は、下水処理場や食品工場等から発生する有機性廃棄物を含む排水や、スラリー等が該当する。なお、被処理水W0はこれに限定されるものではなく、嫌気処理が可能な有機物質を含むものであれば、本発明の処理対象となる。
【0016】
嫌気処理としては、有機酸からメタンを生成するメタン生成菌によるメタン発酵のほか、水素と二酸化炭素からメタン生成を行う水素資化性のメタン菌も含む。
通常のメタン発酵全体では、メタンと共に二酸化炭素も発生する。したがって、水素を外部から投入することで、二酸化炭素を消費して、水素と二酸化炭素からメタンを生成(バイオメタネーションと呼ばれる)することができる。
本発明では、この反応に着目し、バイオメタネーションを促進させることができる。
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るメタン発酵処理システム、メタン発酵の処理方法の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載するメタン発酵処理システムについては、本発明に係るメタン発酵処理システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様のメタン発酵の処理方法は、以下のメタン発酵処理システムの構成及び作動の説明に置き換えるものとする。
【0018】
[第1の実施態様]
図1には、本発明の第1の実施態様のメタン発酵処理システム1Aの概略説明図が図示されている。
【0019】
[メタン発酵処理システム]
図1を参照し、本実施態様におけるメタン発酵処理システム1Aについて説明する。本発明のメタン発酵処理システム1Aは、メタン発酵が行われる被処理水W1に水素を供給する水素発酵槽2と、被処理水W1をメタン発酵処理するメタン発酵槽3を備える。
【0020】
[水素発酵槽]
水素発酵槽2は、メタン発酵槽3のメタン発酵に使用される水素を被処理水W0のから生成するものであり、被処理水W0を水素発酵して生成された生成気体G1は、メタン発酵槽3に送られる。
水素発酵槽2は、槽内において、水素生成菌による水素発酵処理を行うことができ、被処理水W1に水素を含む生成気体G1を供給することができる機能及び構造を備えているものであれば、特に限定されない。また、水素を含む生成気体G1は、メタン発酵槽3に供給される前のラインL1の被処理水W1に供給される場合でも、メタン発酵槽3の内部の液体に水素を含む生成気体G1を供給する場合のどちらであってもよい。本実施態様では、生成気体G1がラインL2を通してラインL1上の被処理水W1に添加する場合を例示した。
【0021】
また、水素発酵槽2は、嫌気性処理が行われ、水素発酵菌による水素の生成が促進されるように、水素発酵菌を活性化する目的でpHの調整が行われることが好ましい。具体的には、水素発酵槽2のpHは、5.5~5.0の範囲に調整及び維持されることが好ましい。このpHの範囲であれば、水素発酵菌以外の他の嫌気性菌による発酵を抑制できることから、水素発酵槽2で生成される生成気体G1が、水素の含有量の高い水素ガスにすることができる。水素の含有量の高い水素ガスを生成させることにより、水素発酵槽2で発生した生成気体G1を分離する必要がなく、被処理水W1に直接添加できる効果がある。また、生成気体G1から水素を分離する分離装置が不要となり、メタン発酵処理システム1Aを簡素化できる点で好ましい。なお、生成気体G1には、水素の他に、二酸化炭素も含む。
【0022】
[メタン発酵槽]
メタン発酵槽3は、嫌気処理を行うことができ、メタン生成菌によるメタン発酵が行われるものであれば、特に限定されない。メタン発酵槽3は、内部に水素発酵槽2で生成した水素が供給された被処理水W2が貯留され、供給された水素と、二酸化炭素からメタン生成を行うことができれば、特に限定されない。なお、二酸化炭素は、生成気体G1に含まれるものと、メタン発酵槽3で生成されたものの両方を含む。
また、メタン発酵槽3は、メタン生成の元となる酸生成菌による有機酸の生成も同時に行われる場合も含む。
【0023】
[その他の構成]
その他の構成として、メタン発酵処理システム1Aは、ラインL0、L1、L2、L3及びL4を有する。ラインL0は、被処理水W0を水素発酵槽2に供給するための管である。L1は水素発酵槽2で被処理水W0が処理された水素発酵槽2後の被処理水W1を、メタン発酵槽3に送るための管である。ラインL2は、水素発酵槽2から被処理水W1に生成気体G1を供給するための管である。ラインL3は、メタン発酵槽3で生成されたメタンガスG2を外部に送るための管である。ラインL4は、メタン発酵槽3で処理された処理水W2を後の工程に送るための管である。
【0024】
[メタン発酵処理システムの動作について]
図1を参照し、メタン発酵処理システム1Aの処理の流れ、動作について説明する。
【0025】
まず、被処理水W0がラインL0を通過して水素発酵槽2に供給される。この工程を供給ステップとする。
【0026】
水素発酵槽2に供給された被処理水W0は、水素生成菌により生成気体G1が生成される。この工程を水素生成ステップとする。
【0027】
生成気体G1は、ラインL2を通過して水素発酵槽2から後の工程に送られた被処理水W1に供給される。この工程を、水素発酵槽2で生成された生成気体G1が、メタン発酵槽3に供給されるステップとする。
また、被処理水W1は、ラインL1を通過してメタン発酵槽3に供給される。
【0028】
次に、メタン発酵槽3において、メタン発酵が行われる。この工程をメタン発酵ステップとする。
メタン発酵により、供給された水素と二酸化炭素からメタンガスG2が生成される。生成されたメタンガスG2は、ラインL3を通して外部に排出される。また、被処理水W1は処理され、処理水W2がラインL4を通して後の工程に送られる。
以上の工程により、本発明のメタン発酵処理システム1Aの動作が完了する。
【0029】
[第2の実施態様]
図2を参照し、本発明の第2の実施態様のメタン発酵処理システム1Bについて説明する。本実施態様のメタン発酵処理システム1Bは、メタン発酵処理システム1Aに加圧部4を備え、水素発酵槽2で生成された生成気体G1が加圧され、被処理水W1に供給することで生成気体G1を含む被処理水W3としてメタン発酵槽3に供給される点が異なる。
【0030】
[加圧部]
加圧部4は、水素発酵槽2で生成された生成気体G1を加圧し、被処理水W1に圧縮気体として供給できるものであれば、特に限定されない。
加圧部4が生成気体G1を圧縮して被処理水W1に供給することで、メタン発酵槽3の内部でマイクロバルブとなり、水に溶解性の低い水素を溶解させやすくでき、効率よく生成気体G1をメタン発酵菌に対し供給することが可能となる効果がある。
また、本実施形態では、加圧部4が生成気体G1をラインL1上で被処理水W1に供給して被処理水W3とし、ラインL5を通してメタン発酵槽3に供給する場合を例示したが、加圧部4で圧縮された生成気体G1をメタン発酵槽3に供給するようにしてもよい。
なお、メタン発酵槽3の下部から上部に向けて被処理水を通過させる上向流式の場合、メタン発酵槽3の下部から生成気体G1を供給することで、生成気体G1に含まれる二酸化炭素をメタン発酵槽3の下部から供給でき、効率よくメタン発酵を行わせることができる効果がある。
【0031】
[メタン発酵処理システムの動作について]
図2を参照し、メタン発酵処理システム1Bの処理の流れ、動作について説明する。
【0032】
メタン発酵処理システム1Aと同様に、供給ステップと水素生成ステップと水素生成ステップが行われる。
【0033】
生成された生成気体G1は、ラインL2を通過して水素発酵槽2から後の工程に送られた被処理水W1に供給される。この時、生成気体G1が、加圧部4に供給され、被処理水W1に生成気体G1が供給される。この工程を加圧供給ステップとする。
【0034】
その後、被処理水W3が、ラインL5を通過してメタン発酵槽3に供給されることで、水素発酵槽2で生成された生成気体G1が、メタン発酵槽3に供給されるステップとなる。
【0035】
その後、メタン発酵ステップが行われ、メタンガスG2が、ラインL3を通して外部に排出される。また、処理水W2がL4を通して、後の工程に送られる。
以上の工程により、本発明のメタン発酵処理システム1Bの動作が完了する。
【0036】
[第3の実施態様]
図3を参照し、本発明の第3の実施態様のメタン発酵処理システム1Cについて説明する。本実施態様のメタン発酵処理システム1Cは、メタン発酵処理システム1Aに酸生成槽5を備え、被処理水W1から有機酸を含む被処理水W4を生成し、被処理水W4をメタン発酵槽3に供給する点が異なる。
【0037】
[酸生成槽5]
酸生成槽5は、水素発酵槽2で処理された被処理水W1に対し、酸生成菌による嫌気処理を行うものであり、被処理水W1からメタン発酵槽3で使用される被処理水W4を生成できるものであれば、特に限定されない。
酸生成槽5は、ラインL1から被処理水W1が供給され、pHの調整された被処理水W1を酸生成菌の発酵が促進されるようにpH調整することが好ましい。具体的には、酸生成槽5の液体のpHは、水素発酵槽2のpHよりも高く、6.0~8.0の範囲に調整及び維持されることが好ましい。このpHの範囲であれば、水素発酵菌による発酵を抑制でき、酸生成槽5で効率よく酸生成を行うことができる。
また、酸生成槽5は、メタン発酵槽3の処理水W5がラインL7を通して供給されることにより、pHが調整されてもよい。
さらに、生成気体G1がラインL2を通して、ラインL6上で被処理水W4に供給される場合を例示したが、ラインL1に供給されてもよく、メタン発酵槽3に供給されてもよい。
【0038】
[メタン発酵処理システムの動作について]
図3を参照し、メタン発酵処理システム1Cの処理の流れ、動作について説明する。
【0039】
メタン発酵処理システム1Aと同様に、供給ステップと水素生成ステップと水素生成ステップが行われる。
【0040】
生成された生成気体G1は、ラインL2を通過して水素発酵槽2から後の工程に送られた被処理水W4に供給される。この工程を、水素発酵槽2で生成された生成気体G1が、メタン発酵槽3に供給されるステップとする。
また、被処理水W1は、ラインL1を通過して酸生成槽5に供給される。
【0041】
酸生成槽5に供給された被処理水W4は、酸生成菌により酸生成が行われる。この工程を酸生成ステップとする。
酸生成菌により処理された被処理水W4はラインL6を通してメタン発酵槽3に供給される。
【0042】
その後、メタン発酵ステップが行われ、メタン発酵槽3の処理水W5がラインL7を通して、酸生成槽5に返送される。この工程を返送ステップとする。
そして、メタンガスG2が、ラインL3を通して外部に排出される。また、処理水W2がL4を通して、後の工程に送られる。
以上の工程により、本発明のメタン発酵処理システム1Cの動作が完了する。
【0043】
本実施態様では、メタン発酵処理システム1Aに酸生成槽5を備える場合を例示したが、メタン発酵処理システム1Bに酸生成槽5を備える態様であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のメタン発酵処理システム、メタン発酵の処理方法は、嫌気処理が可能な被処理水に利用される。例えば、下水処理場や食品工場等から発生する有機性廃棄物を含む排水や、メタン発酵可能なスラリー等に好適に使用される。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B,1C メタン発酵処理システム
2 水素発酵槽
3 メタン発酵槽
4 加圧部
5 酸生成槽