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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128576
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】立体構造材
(51)【国際特許分類】
   D03D 3/02 20060101AFI20230907BHJP
   D03D 15/40 20210101ALI20230907BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20230907BHJP
   D03D 15/62 20210101ALI20230907BHJP
   D04B 1/22 20060101ALI20230907BHJP
   D04B 21/20 20060101ALI20230907BHJP
   D04C 1/12 20060101ALI20230907BHJP
   D03D 15/60 20210101ALI20230907BHJP
【FI】
D03D3/02
D03D15/40
D03D15/56
D03D15/62
D04B1/22
D04B21/20 Z
D04C1/12
D03D15/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033004
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】591168932
【氏名又は名称】株式会社SHINDO
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正明
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 学
【テーマコード(参考)】
4L002
4L046
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA07
4L002AB02
4L002AC01
4L002AC07
4L002BA00
4L002CA00
4L002DA00
4L002EA00
4L002EA06
4L002FA06
4L046AA01
4L046AA24
4L046BA00
4L046BB00
4L048AA20
4L048AA26
4L048AA34
4L048AA51
4L048AB07
4L048AB10
4L048AB11
4L048AB19
4L048AB29
4L048AC12
4L048BB04
4L048BB06
4L048CA00
4L048CA04
4L048DA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、布地の柔軟性を維持しながら空隙部の形態安定性を高めた立体構造材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る立体構造材1は、軸方向に伸縮して軸と直交する方向に拡縮するとともに形態復元性を有する中空の筒状体4より形成される空隙部5と、筒状体4を内蔵する袋状部3が形成された布地からなる基体部2とを備えている。基体部2は、袋状部3が一体的に織成又は編成された布地からなり、筒状体4は、形態復元性を有する線状材を用いて筒状に織成された組紐体からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に伸縮して軸と直交する方向に拡縮するとともに形態復元性を有する中空の筒状体により形成される空隙部と、前記筒状体を内蔵する袋状部が形成された布地からなる基体部とを備えている立体構造材。
【請求項2】
前記基体部は、前記袋状部が一体的に織成又は編成された布地からなる請求項1に記載の立体構造材。
【請求項3】
前記基体部は、伸縮性を有する布地からなる請求項1又は2に記載の立体構造材。
【請求項4】
前記筒状体は、形態復元性を有する線状材を用いて筒状に織成された組紐体である請求項1から3のすれかに記載の立体構造材。
【請求項5】
前記空隙部は、前記筒状体が複数本並列して内蔵されることで複数形成されている請求項1から4のいずれかに記載の立体構造材。
【請求項6】
前記空隙部は、前記筒状体が部分的に前記袋状部に止着されて区画されている請求項1から5のいずれかに記載の立体構造材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の立体構造材を備えているクッション構造体。
【請求項8】
前記空隙部は、線条体を挿通可能に連通している請求項1から5のいずれかに記載の立体構造材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に変形して形態安定性を有する空隙部が形成された立体構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
布地等のシート材に形成された空隙部によりクッション性を持たせた立体構造材が提案されている。例えば、特許文献1には、上下の地組織の一重織部で高収縮糸を織り込んで二重織部で高収縮糸を浮糸とすることで、高収縮糸を収縮させて二重織部を連続筒状に形成した立体構造布が記載されている。
【0003】
また、シート材に形成された空隙部にクッション材を挿入してクッション性を持たせた立体構造材についても提案されている。例えば、特許文献2には、2枚の布地を重ね合わせて所定間隔で縫着することで、挿入筒部を形成し、形成された挿入筒部にクッション性を有する筒状の網状体を挿入して構成した敷き寝具が記載されている。特許文献3には、布地を用いて縫製された外装体のスリーブにクッションパッドを収納してクッション性を持たせた背当てクッションが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-226044号公報
【特許文献2】特開2016-83247号公報
【特許文献3】特開2018-191758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上下の地組織により連続筒状に形成して空隙部を形成してクッション性を持たせるようにしているが、筒状に形成した部分では軸と直交する方向に変形するように押圧された場合に湾曲した糸が横倒れする現象が発生しやすくなり、クッション性の点で課題がある。
【0006】
特許文献2及び3に記載されているように、布地に形成された挿入部にクッションパッド等のクッション材を挿入して構成する場合、クッション性が高まるものの布地の柔軟性よりも固くなるため、柔軟性が求められる用途には向いておらず、汎用性の点で難点がある。
【0007】
そこで、本発明は、布地の柔軟性を維持しながら空隙部の形態安定性を高めた立体構造材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る立体構造材は、軸方向に伸縮して軸と直交する方向に拡縮するとともに形態復元性を有する中空の筒状体により形成される空隙部と、前記筒状体を内蔵する袋状部が形成された布地からなる基体部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のような構成を備えていることで、軸方向に伸縮して軸と直交する方向に拡縮するとともに形態復元性を有する筒状体により空隙部を形成しているので、布地の柔軟性を維持しながら空隙部の形態安定性を高めるととも軽量化を図ることができ、汎用性の高い立体構造材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る立体構造材に関する斜視図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】伸縮性を有する袋状部を押圧変形させた場合に関する説明図である。
図4図1に示す実施形態の変形例に関する斜視図である。
図5図1に示す実施形態の別の変形例に関する斜視図及び平面図である。
図6】筒状体に関する斜視図及び筒状体を軸方向に引張した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明に係る立体構造材に関する斜視図であり、図2は、図1のA-A断面図である。立体構造材1は、布地からなる基体部2に袋状部3が形成されており、袋状部3には、筒状体4が内蔵されて空隙部5が形成されている。この例では、立体構造材1は、基体部2が袋状部3を連設して帯状に形成されており、袋状部3内に形成された複数の空隙部5は円筒状に連通して並列配置されている。
【0013】
空隙部5を形成する中空の筒状体4は、軸方向に伸縮して軸と直交する方向に拡縮するとともに形態復元性を有するようになっている。筒状体4は、軸と直交する方向に拡縮して形態を復元する特性を備えているので、袋状部3に内蔵された状態では袋状部3を押し拡げるように作用して空隙部5を形成するようになる。
【0014】
また、袋状部3が伸縮性を有する布地からなる場合には、袋状部3の伸縮に追随して筒状体4が伸縮するようになり、基体部2の伸縮変形に対しても形状安定性を備えている。
【0015】
図3は、伸縮性を有する袋状部3を押圧変形させた場合に関する説明図である。この例では、袋状部3は、織り込まれた又は編み込まれた弾性糸により伸縮性を有する布地からなっており、袋状部3には筒状体4が内蔵されて空隙部5を形成している。
【0016】
袋状部3に対して外部から押圧力Fを加えた場合、袋状部3に内蔵された筒状体4は、幅方向に圧縮されるため軸方向に伸長しようとするが(図3(a))、袋状部3は、弾性糸の作用により押圧部分に引き込まれるように収縮しようとする(図3(b))。そのため、筒状体4は、袋状部3の収縮する作用に引きずられて収縮し、押圧部分で拡径する方向に変形して袋状部3を押し拡げるようになり、押圧力Fに対する反発力Gが生じるようになる(図3(c))。こうして反発力を高めることで、クッション性の向上を図ることができる。
【0017】
基体部2が圧縮変形又は曲げ変形等の形状が変形した場合に、それに追随して変形するとともに空隙部5が元の形状に復元するように作用するようになる。そのため、立体構造材1を取り付ける製品の形状に沿うように容易に変形することができ、様々な製品の部位に取り付け可能な汎用性を備えている。
【0018】
こうした空隙部5の形態復元性により、立体構造材1はクッション性を備えることができ、また、空隙部5が連通した状態を保持することから、配線、光ファイバ等の線条体を挿通可能な連通状態とすることで、線条体を筒状体で保護して負荷を与えることなく安定した状態で保持することができる。
【0019】
図4は、図1に示す実施形態の変形例に関する斜視図である。この例では、基体部2は、連設された袋状部3の両側に所定幅の接続部分6が延設されている。接続部分6は、縫い代として用いることで、立体構造材1を様々な製品に容易に縫着することができる。
【0020】
図5は、図1に示す実施形態の別の変形例に関する斜視図(図5(a))及び平面図で(図5(b))ある。この例では、袋状部3を部分的に封止又は狭窄した止着部7を所定間隔で設けている。そのため、空隙部5は、止着部7により所定長さで区画されて複数の区分空隙部5aで構成されている。止着部7では、内蔵する筒状体4が部分的に軸方向にずれないように止着されるため、区分空隙部5aでは、筒状体4に対する圧縮変形又は曲げ変形に対する反発力が高まり、クッション性の向上を図ることが可能となる。
【0021】
また、筒状体4は、軸方向に伸縮して軸と直交する方向に拡縮するので、軸方向に沿って引張力を加えて伸長した場合に細く線状に変形するようになる。そのため、基体部2を織成又は編成する際に、袋状部3を形成する組織に挿入糸として織編することで、筒状体4を袋状部3に内蔵しながら基体部2を一体的に製織又は製編することが可能となり、立体構造材を効率よく製造することができる。また、筒状体4を細く線状に変形した状態で袋状部3に挿入して取り付けたり、取り外すことも可能で、基体部2に必要に応じて筒状体4を着脱することができ、容易にメンテナンス等を行うことが可能となる。
【0022】
立体構造材1は、帯状以外の形状に形成することも可能で、例えば、複数の空隙部5が形成された布地をシート状、筒状又は袋状に形成して基体部2を構成することもでき、特に限定されない。また、基体部2の袋状部3は、様々なレイアウトで配置することが可能で、特に限定されない。上述したように空隙部5を並列配置したり、所定間隔を空けて並列配置したり、基体部2の一部の領域のみに配置する場合には、空隙部5のレイアウトに合わせて袋状部3を形成すればよい。
【0023】
立体構造材1としては、一本の筒状体4を被覆するように基体部2を形成することで、1つの空隙部5が連通したパイプ状に形成することも可能で、用途に合わせて様々な形状に構成することができる。また、複数の空隙部5を多層に積層した立体構造材とすることも可能である。
【0024】
基体部2に形成される袋状部3は、図1に示すように、連通した状態で形成したり、図5に示すように、部分的に封止又は狭窄することもでき、空隙部5を用途に合わせて連通状態又は区画された状態に設定することが可能である。この場合、袋状部3は、製織、製編又は縫製といった方法で部分的に封止又は狭窄することができ、プレス加熱、超音波加熱といった公知の手段により部分的に接着することでも形成可能である。
【0025】
基体部2は、繊維材料からなる糸により織成又は編成した布地からなるものが好ましい。糸に用いる繊維材料は、公知のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、合成繊維材料としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、パラ系アラミド、メタ系アラミド、ポリアリレート、ポリベンゾイミダゾール等が挙げられ、天然繊維材料としては、綿、ウール、麻等が挙げられ、無機繊維材料としてはガラスが挙げられる。そして、これらの繊維材料を混合したものであってもよい。
【0026】
こうした合成繊維材料又は天然繊維材料からなるモノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸が好ましく、伸縮性を付与する弾性糸を用いる場合には、ポリウレタン、合成ゴム、天然ゴム、シリコーン等の弾性材料からなる弾性糸が好ましい。
【0027】
合成繊維材料又は天然繊維材料からなる糸は、繊度に特に限定されることはないが、30デシテックス~1200デシテックスのものが好ましい。
【0028】
弾性糸としては、ポリウレタンを用いた糸の場合、繊度13デシテックス~2500デシテックスのものが好ましく、より好ましくは繊度22デシテックス~1240デシテックスである。合成ゴム、天然ゴム、シリコーンを用いた糸の場合、単糸直径0.3mm~1.5mmのものが好ましく、より好ましくは単糸直径0.4mm~1.3mmである。
【0029】
また、糸としては、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸又は紡績糸が用いられるが、フィラメント糸で構成されたものが好ましい。糸は、構成する繊維材料がばらけないように10回/m~300回/mの撚りを付与しておくとよい。
【0030】
基体部2に形成する袋状部3は、袋織、筒織等の公知の製織方法又は袋編、筒編等の公知の製編方法により一体的に形成することができる。また、複数枚の布地を重ね合わせた状態で所定間隔を空けて縫製することで袋状に形成することも可能で、生地の表面に帯状の布地を配置して布地の両側端を縫製して袋状に形成するようにしてもよい。
【0031】
筒状体4としては、形態復元性を有する線状材を用いて筒状に織成された組紐体が好ましい。筒状体4にこうした組紐体を用いることで、線状材の織密度を変化させて様々な重量及びサイズの筒状体を得ることができ、様々な用途にきめ細かく対応した立体構造材を得ることができる。
【0032】
図6は、筒状体4に関する斜視図(図6(a))及び筒状体4を軸方向に引張した状態を示す斜視図(図6(b))である。こうした組紐体は、複数の線状材が螺旋状に織り込まれて筒状に形成されているため、軸方向に伸縮するようになり、伸縮により軸と直交する方向に拡縮するようになる。そして、線状材が形態復元性を有しているため、組紐体が圧縮変形又は曲げ変形した場合でも元の筒状の形態に復元するようになり、軽量で形状安定性も備えている。
【0033】
また、組紐体を軸方向に引張することで、軸方向に伸長して細長い紐状に変形するようになり、基体部2の織成又は編成の際に挿入糸として使用することが可能となる。そして、基体部2の織成又は編成後に組紐体が元の形状に復元するように拡径することで、空隙部が形成されるようになる。
【0034】
図4に例示された立体構造材を製造する場合には、細長い紐状に引張した状態で基体部2を織成又は編成する際に、細長く変形した組紐体の両側まで狭窄するように止着部7を形成しておくことで、製造後に止着部7に狭窄された組紐体の部分は拡径せずにそれ以外の部分が元の形状に復元するように拡径して区分空隙部5aが形成されるようになる。
【0035】
組紐体に用いる形態復元性を有する線状材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維材料からなるモノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸が好ましく、形状記憶合金、超弾性合金等の金属材料からなる線状材といったものが挙げられる。
【0036】
また、合成繊維材料からなるモノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸の場合、単糸直径は、0.05mm~1.0mmが好ましく、より好ましくは0.1mm~0.5mmである。
【0037】
組紐体は、直径が3mm~30mmに形成することが好ましく、より好ましくは直径5mm~20mmである。また、組紐体を製織する場合には、打ち数を8打~64打に設定することが好ましく、より好ましくは16打~48打である。また、組目角度は30度~60度に設定することが好ましく、より好ましくは40度~50度である。
【0038】
筒状体としては、上述した組紐体以外のものを用いることができ、特に限定されない。例えば、ポリウレタン、シリコーン等の弾性材料により形成した弾性チューブでもよい。また、樹脂材料又は金属材料により成形された厚さの薄い円筒体を、組紐体のようにメッシュ状にくり抜いて形成することで、組紐体と同様の変形特性を備えた筒状体を作成することができる。また、樹脂材料又は金属材料からなる線状材をコイルバネ状に成形加工して筒状体を形成することで、軸方向に伸縮して軸と直交する方向に拡縮するとともに形態復元性を備えた特性を持たせることができる。
【0039】
立体構造材は、上述したように、基体部を製織又は製編する際に伸長した状態の筒状体を挿入することで製造することができる。また、袋状部を形成した基体部に対して袋状部内に筒状体を伸長した状態で挿入して製造することも可能である。また、布地上に筒状体を配置して別の布地を被覆するように重ね合わせ、筒状体の両側を縫着又は接着することで袋状部を形成して製造することもできる。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
<使用材料>
〇基体部
経糸として、ポリエステル製マルチフィラメント糸(167デシテックス)及びダブルカバーリングしたポリウレタン糸(芯糸:ポリウレタン糸620デシテックス、鞘糸:ポリエステル製マルチフィラメント糸167デシテックス)を用いた。また、緯糸として、ポリエステル製マルチフィラメント糸(167デシテックス)を用いた。
〇筒状体
線状材として、ポリエステル製モノフィラメント糸(単糸直径0.2mm)を用いた。
【0042】
<筒状体の製造>
製紐機に線状材をセットし、32打ちで組目角度が40度~50度となるように丸紐に組み上げて、直径約8mmの筒状体を得た。
【0043】
得られた筒状体は、軸方向に伸縮するとともに軸と直交する方向に拡縮する特性を備えており、最大限伸長した状態で幅約3mmまで細幅となった後元の形状に復元することが確認された。
【0044】
<立体構造材の製造>
図1に示すように、3つの袋状部が連設された帯状の基体部を筒織により織成するとともに挿入糸として筒状体を伸長した状態で織り込んで立体構造材を製造した。織機に経糸及び緯糸をセットするとともに筒状体を伸長した状態で経糸としてセットし、帯状に地組織を織成しながら等間隔で経方向に沿って連結することで袋状部が連設された基体部を織成し、その際に袋状部に筒状体が挿入されるように織り込んで立体構造材を得た。
【0045】
得られた立体構造材は、袋状部に内蔵された筒状体が拡径して直径約8mmの空隙部が形成されていた。空隙部は、圧縮変形及び曲げ変形に対して変形した状態から元の形状に戻る形態復元性を備えていることが確認された。
【0046】
また、立体構造材は、基体部が経方向に伸縮性を有しており、基体部の経方向の伸縮に追随して筒状体が伸縮するようになり、形態復元性を備えていることが確認された。また、空隙部は、始端から終端までパイプ状の連通した状態を保持する形状安定性を備えていることが確認された。また、立体構造材の空隙部を潰すように押圧変形させた場合、変形に対応して反発力が生じるようになり、クッション性を備えていることが確認された。
【0047】
[実施例2]
<使用材料>
実施例1と同様の材料を用いた。
<筒状体の製造>
実施例1と同様に製造した。
【0048】
<立体構造材の製造>
図4に示すように、連設された3つの袋状部の両側に接続部分を形成した帯状の基体部を筒織により織成とともに挿入糸として筒状体を伸長した状態で織り込んで立体構造材を製造した。実施例1と同様に、織機に経糸及び緯糸とともに挿入糸として筒状体をセットし、帯状に地組織を織成しながら等間隔で経方向に沿って連結するとともに両側を所定幅で連結することで袋状部及び接続部分が連設された基体部を織成し、その際に袋状部に筒状体が挿入されるように織り込んで立体構造材を得た。
【0049】
得られた立体構造材は、袋状部に内蔵された筒状体が拡径して直径約8mmの空隙部が形成されていた。空隙部は、圧縮変形及び曲げ変形に対して変形した状態から元の形状に戻る形態復元性を備えていることが確認された。
【0050】
また、立体構造材は、実施例1と同様に、基体部が経方向に伸縮性を有しており、基体部の経方向の伸縮に追随して筒状体が伸縮するようになり、形態復元性を備えていることが確認された。
【0051】
また、接続部分を別の布地に縫製により取り付けることができ、取り付けた布地の変形に追随して立体構造材が変形して柔軟性及び形態復元性を備えていることが確認された。また、空隙部は、始端から終端までパイプ状の連通した状態を保持する形状安定性を備えていることが確認された。また、立体構造材の空隙部を潰すように押圧変形させた場合、変形に対応して反発力が生じるようになり、クッション性を備えていることが確認された。
【0052】
[実施例3]
<使用材料>
実施例1と同様の材料を用いた。
<筒状体の製造>
実施例1と同様に製造した。
【0053】
<立体構造材の製造>
図5に示すように、連設された3つの袋状部を形成した帯状の基体部を筒織により織成とともに挿入糸として筒状体を伸長した状態で織り込むとともに袋状部を所定間隔で狭窄して止着部を形成した立体構造材を製造した。実施例1と同様に、織機に経糸及び緯糸とともに挿入糸として筒状体をセットし、帯状に地組織を織成しながら等間隔で経方向に沿って連結するとともに連結ラインの間の幅を所定長さ毎に伸長した筒状体の幅まで狭くなるように連結することで袋状部及び止着部が形成された基体部を織成し、その際に袋状部に筒状体が挿入されるように織り込んで立体構造材を得た。
【0054】
得られた立体構造材は、袋状部に内蔵された筒状体が拡径した状態で空隙部が形成されており、止着部では狭窄されて筒状体が縊れた状態で移動できないように止着されていた。止着部により区画された空隙部は、圧縮変形及び曲げ変形に対して変形した状態から元の形状に戻る形態復元性を備えているとともに止着されていない場合に比べて弾力性を備えていることが確認された。
【0055】
そして、立体構造材は、実施例1と同様に、基体部が経方向に伸縮性を有しており、基体部の経方向の伸縮に追随して区画された空隙部が伸縮変形するようになり、形態復元性及び弾力性を備えていることが確認された。また、立体構造材の空隙部を潰すように押圧変形させた場合、変形に対応して実施例1の場合よりも大きい反発力が生じるようになり、クッション性が向上していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る立体構造材は、軽量で柔軟性を備えるとともに空隙部の形態復元性及びクッション性を備えているので、衣服、サポータ、靴、マット、座布団、ベッド、カバン、椅子、カーシート等の各種クッション材及び緩衝材に幅広く使用することができる。また、空隙部が連通状態を保持する形状安定性を備えているので、配線、光ファイバ等の線条体を挿通するスリーブ材として使用することができ、ウェアラブルコンピュータ技術への適用が可能であり、汎用性の高い素材として様々な分野で活用することが期待される。
【符号の説明】
【0057】
1・・・立体構造材、2・・・基体部、3・・・袋状部、4・・・筒状体、5・・・空隙部、6・・・接続部分、7・・・止着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6