(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012861
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ヘッドマウント装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/64 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116586
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】521079488
【氏名又は名称】ViXion株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】内海 俊晴
(57)【要約】
【課題】装用者によるヘッドマウント装置の長時間の使用を容易にする。
【解決手段】装置前方に配置される電力供給対象4,8を備えたヘッドマウント装置1であって、装用者の後頭部上側部分に当接するバンド部材40の各端部40a,40aが、装用者の頭部両側に配置される2つの装置側部9,9のそれぞれに、前記電力供給対象の重量によって装置左右方向に延びる回転中心軸Oの回りで装置前方を下げる向きに発生する回転モーメントの当該回転中心軸O上又は当該回転中心軸Oよりも前方で、接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置前方に配置される電力供給対象を備えたヘッドマウント装置であって、
装用者の後頭部上側部分に当接するバンド部材の各端部が、装用者の頭部両側に配置される2つの装置側部のそれぞれに、前記電力供給対象の重量によって装置左右方向に延びる回転中心軸の回りで装置前方を下げる向きに発生する回転モーメントの当該回転中心軸上又は当該回転中心軸よりも前方で、接続されていることを特徴とするヘッドマウント装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドマウント装置において、
前記バンド部材は、前記2つの装置側部に対して着脱可能に構成されていることを特徴とするヘッドマウント装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヘッドマウント装置において、
前記バンド部材は、弾性部材によって形成されていることを特徴とするヘッドマウント装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヘッドマウント装置において、
装用者の鼻に当たる鼻当部を有するとともに、
装用者の各耳にそれぞれ掛けられる2つの耳掛け部を前記2つの装置側部として有し、
前記電力供給対象が装用者の耳よりも前方に配置され、
前記バンド部材の各端部が、前記2つの装置側部のそれぞれに、前記回転モーメントの回転中心軸よりも前方で接続されていることを特徴とするヘッドマウント装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヘッドマウント装置において、
前記電力供給対象に電力を供給する電力供給源を備え、
前記電力供給源又は該電力供給源の電力ケーブルが、前記2つの装置側部の各後部から延出し、前記回転モーメントの回転中心軸よりも後方に配置されることを特徴とするヘッドマウント装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のヘッドマウント装置において、
前記電力供給対象は、装用者の見る方向を撮像する撮像手段と、該撮像手段により撮像された画像を装用者が見えるように表示する表示手段とを含むことを特徴とするヘッドマウント装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のヘッドマウント装置において、
前記電力供給対象は、焦点距離を電子制御可能な可変焦点レンズを含むことを特徴とするヘッドマウント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装用者に装着されるヘッドマウント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヘッドマウント装置としては、例えば、特許文献1に開示のヘッドマウントディスプレイが知られている。このヘッドマウントディスプレイは、ロービジョン患者に対して裸眼では見えにくい部分の視野情報を補完するための視覚補助装置である。具体的には、装用者が見る方向を撮像手段で撮像し、撮像した画像をロービジョン患者が視認しやすいように明暗調整を行って、装用者の眼の前方に配置された表示手段に表示する。
【0003】
また、この種のヘッドマウント装置としては、例えば、特許文献2に開示の多焦点眼鏡が知られている。この多焦点眼鏡は、焦点距離を電子制御可能な可変焦点レンズを眼鏡レンズとして用い、装用者が認識できない周期で複数の焦点距離をステップ的に繰り返し切り換える制御を実行する。
【0004】
また、この種のヘッドマウント装置としては、例えば、ウェアラブル機器(ウェアラブルコンピュータ)のディスプレイが装用者の眼の前に配置されるように、装着具を用いてウェアラブル機器を装用者の眼鏡に装着するものが知られている(特許文献3)。この装着具は、眼鏡の各テンプル部に固定された2つの合成樹脂製の保持部材に、装用者の首の後ろ側に当接する金属製のU字バンド(バンド部材)の各先端部が取り付けられた構成のものである。特許文献1によれば、この装着具のU字バンドが装用者の首の後ろ側に当接することで、しっかりとした装着状態が実現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-178236号公報
【特許文献2】特開2007-240709号公報
【特許文献3】特開2020-52429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ヘッドマウント装置に設けられる、表示手段、撮像手段、可変焦点レンズ、ウェアラブル機器などの電力供給対象は、他の装置構成部品よりも重量が相対的に重く、しかもヘッドマウント装置の前方(装用者の頭部前後方向における前側)に偏って配置されることが多い。この場合、ヘッドマウント装置の重量バランスが装置前方に偏り、ヘッドマウント装置の重量の多くが例えば装用者の鼻などの装置前方を支える部位に荷重されることになる。そのため、従来のヘッドマウント装置は、装用者が長時間使用するには不向きなものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、装置前方に配置される電力供給対象を備えたヘッドマウント装置であって、装用者の後頭部上側部分に当接するバンド部材の各端部が、装用者の頭部両側に配置される2つの装置側部のそれぞれに、前記電力供給対象の重量によって装置左右方向に延びる回転中心軸の回りで装置前方を下げる向きに発生する回転モーメントの当該回転中心軸上又は当該回転中心軸よりも前方で、接続されていることを特徴とするものである。
本ヘッドマウント装置においては、装用者の後頭部上側部分に当接するバンド部材を設け、そのバンド部材の両端部が、装用者の頭部両側に配置される各装置側部に接続されている。これによれば、本ヘッドマウント装置の各装置側部は、バンド部材により、後方に向かって斜め上方に持ち上げられるように支持される。これにより、この斜め上方に持ち上げる力のうち、水平方向成分によって本ヘッドマウント装置の前面部を装用者の頭部に引き付けて装着ズレを抑制できるとともに、鉛直方向成分によってヘッドマウント装置を支える装用者の鼻や耳などの部位に係る荷重を、バンド部材が当接する後頭部上側部分に分散して、軽減することができる。
2つの装置側部に接続される従来のバンド部材(例えば特許文献3のU字バンド)は、装用者の後頭部やその下方部分に当接することで、本ヘッドマウント装置の前面部を装用者の頭部に引き付けて装着ズレを抑制するものであった。そのため、ヘッドマウント装置を支える装用者の鼻や耳などの部位に係る荷重を分散させることのできるようなものではなく、その荷重を軽減することはできない。本ヘッドマウント装置におけるバンド部材によれば、装着ズレを抑制できるだけでなく、ヘッドマウント装置を支える装用者の鼻や耳などの部位に係る荷重を、後頭部上側部分に分散して、軽減できるというメリットがある。
ここで、相対的に重量のある電力供給対象が装置前方に配置されている場合、電力供給対象の重量により、装用者の頭部左右方向に延びる回転中心軸の回りで、装置前方を下げる向きの回転モーメントが生じ、ヘッドマウント装置の重量の多くが装用者の鼻などの装置前方を支える部位に荷重される。本ヘッドマウント装置においては、バンド部材の各端部が、前記回転モーメントの回転中心軸上又は回転中心軸よりも前方で、2つの装置側部のそれぞれに接続されるように構成されていることで、以下のように、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
本ヘッドマウント装置が、例えば、装用者の鼻に鼻当部を当てて装用者の各耳にそれぞれ各耳掛け部(装置側部)を掛けることにより装用者に装着される眼鏡型の装置形態である場合、装用者の耳よりも前方に配置される電力供給対象の重量によって生じる回転モーメントの回転中心軸は、2つの耳掛け部が掛けられる装用者の両耳の付け根上端を通る軸となる。この場合、バンド部材の各端部が前記回転モーメントの回転中心軸よりも前方で2つの耳掛け部(装置側部)のそれぞれに接続されると、バンド部材が各耳掛け部の接続位置を後方に向かって斜め上方に持ち上げる力が、当該軸(回転中心軸)の回りで装置前方を上方へ持ち上げる向きの回転モーメントを生じさせる。その結果、電力供給対象の重量によって装置前方を下げる向きの回転モーメントの少なくとも一部を相殺することができ、装用者の鼻などの装置前方を支える部位への荷重が軽減され、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
また、本ヘッドマウント装置が、例えば、装用者の各耳に装置側部を掛ける構成ではなく、バンド部材を介して後頭部上側部分によって支持する構成である場合、装用者の耳よりも前方に配置される電力供給対象の重量によって生じる回転モーメントの回転中心軸は、2つの装置側部にバンド部材の各端部が接続される位置を通る軸となる。この場合、電力供給対象の重量によって装置前方を下げる向きの回転モーメントを相殺することはできないが、装用者の耳への荷重を無くすことができるので、装用者にとって長時間の使用が容易になる。特に、ヘッドマウント装置の装置後方に重量物が配置される構成を採用している場合には、2つの装置側部にバンド部材の各端部が接続される位置を通る軸(回転中心軸)を中心として、重量物の重量によって装置前方を上方へ持ち上げる向きの回転モーメントを生じさせて、電力供給対象の重量によって装置前方を下げる向きの回転モーメントの少なくとも一部を相殺することが可能となる。このとき、装置後方に重量物を配置して全体の重量が増えても、装用者の耳への荷重が増えることはない。したがって、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
【0008】
前記ヘッドマウント装置において、前記バンド部材は、前記2つの装置側部に対して着脱可能に構成されていてもよい。
これによれば、バンド部材を使用する使用態様とバンド部材を使用しない使用態様とを使い分けることが可能となり、装用者の利便性が向上する。
【0009】
また、前記ヘッドマウント装置において、前記バンド部材は、弾性部材によって形成されていてもよい。
これによれば、装用者の頭部の大きさや形などに追従してバンド部材が変形することにより、多くの装用者に対するヘッドマウント装置の装着性を向上させることができる。
【0010】
また、ヘッドマウント装置において、装用者の鼻に当たる鼻当部を有するとともに、装用者の各耳にそれぞれ掛けられる2つの耳掛け部を前記2つの装置側部として有してもよく、前記電力供給対象が装用者の耳よりも前方に配置されていてもよく、前記バンド部材の各端部が、前記2つの装置側部のそれぞれに、前記回転モーメントの回転中心軸よりも前方で接続されていてもよい。
装用者の鼻に鼻当部を当てて装用者の各耳にそれぞれ各耳掛け部を掛けることにより装用者に装着される眼鏡型の装置形態は、装用者による装着作業が簡便であったり、美観に優れていたりするなどのメリットがある。ただし、重量のあるヘッドマウント装置において眼鏡型の装置形態を採用すると、装用者の鼻や耳に加わる荷重が大きすぎて、長時間の使用に不向きなものとなる。そのため、眼鏡型の装置形態は、軽量のヘッドマウント装置において主に採用される。
このような眼鏡型の装置形態に係るヘッドマウント装置では、装用者の耳よりも前方に配置される電力供給対象の重量によって生じる回転モーメントの回転中心軸は、2つの耳掛け部が掛けられる装用者の両耳の付け根上端を通る軸となる。この場合、バンド部材の各端部が前記回転モーメントの回転中心軸よりも前方で2つの耳掛け部(装置側部)のそれぞれに接続されることで、バンド部材が各耳掛け部の接続位置を後方に向かって斜め上方に持ち上げる力が、当該軸(回転中心軸)の回りで装置前方を上方へ持ち上げる向きの回転モーメントを生じさせる。その結果、電力供給対象の重量によって装置前方を下げる向きの回転モーメントの少なくとも一部を相殺することができ、装用者の鼻への荷重が軽減され、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
【0011】
また、前記ヘッドマウント装置において、前記電力供給対象に電力を供給する電力供給源を備えてもよく、前記電力供給源又は該電力供給源の電力ケーブルが、前記2つの装置側部の各後部から延出し、前記回転モーメントの回転中心軸よりも後方に配置されていてもよい。
電力供給源又は電力ケーブルは、電力供給対象の重量と同様に重い部品(重量物)である。このような重い電力供給源又は電力ケーブルを、2つの装置側部の各後部から延出させて装置後方に配置することで、電力供給源又は電力ケーブルの重量によって、2つの装置側部の各後部をバランスよく下げる力を作用させることができる。これにより、本ヘッドマウント装置では、前記回転中心軸の回りで、装置前方を上方へ持ち上げる向きの回転モーメントを適切に生じさせることができる。その結果、電力供給対象の重量によって装置前方を下げる向きの回転モーメントの少なくとも一部を相殺することができ、装用者の鼻への荷重が軽減され、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
特に、本ヘッドマウント装置が、例えば、装用者の各耳に装置側部を掛ける構成ではなく、バンド部材を介して後頭部上側部分によって支持する構成である場合、電力供給源又は電力ケーブルの重量が装用者の耳に荷重されることはないので、装用者にとって長時間の使用が更に容易になる。
【0012】
また、前記ヘッドマウント装置において、前記電力供給対象は、装用者の見る方向を撮像する撮像手段と、該撮像手段により撮像された画像を装用者が見えるように表示する表示手段とを含むことを特徴とするものである。
本ヘッドマウント装置によれば、ロービジョン患者の視覚を補助するためのヘッドマウントディスプレイにおいて、装用者の長時間の使用を容易にすることができる。
【0013】
また、前記ヘッドマウント装置において、前記電力供給対象は、焦点距離を電子制御可能な可変焦点レンズを含むことを特徴とするものである。
本ヘッドマウント装置によれば、焦点距離を電子制御可能な可変焦点レンズを備える眼鏡において、装用者の長時間の使用を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装用者によるヘッドマウント装置の長時間の使用が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ(HMD)の上面斜視図。
【
図2】同HMDを装用者が装着した状態を模式的に示す側面図。
【
図5】変形例におけるHMDを装用者が装着した状態を模式的に示す側面図。
【
図7】同HMDにおける他の構成を模式的に示す側面図。
【
図8】(a)は、
図7に示すHMDのバンド部材の各端部が装用者の耳の真上でテンプル部に接続された例を模式的に示す側面図。(b)は、
図7に示すHMDのバンド部材の各端部が装用者の耳よりも後方でテンプル部に接続された例を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るヘッドマウント装置を、ロービジョン患者の視覚を補助するための視覚補助装置であるヘッドマウントディスプレイに適用した一実施形態について説明する。
なお、ここでいう「ロービジョン」とは、矯正ができないほど視機能が弱いが、全盲ではない視覚障害を意味する。ロービジョン患者の具体例としては、暗い場所だと極端に視力が低下する夜盲症、緑内障などが挙げられる。
【0017】
図1は、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ(以下「HMD」ともいう。)の上面斜視図である。
図2は、本実施形態に係るHMD1を装用者が装着した状態を模式的に示す側面図である。
図3は、本実施形態に係るHMD1の概略構成を示す説明図である。
本実施形態に係るHMD1は、装用者の鼻に鼻当部7を当てて装用者の各耳にそれぞれ各耳掛け部であるテンプル部9,9を掛けることにより装用者に装着される眼鏡型のヘッドマウントディスプレイである。本実施形態のHMD1は、主に、HMD本体10と、コントローラ20と、HMD本体10とコントローラ20とを接続しているケーブル30と、バンド部材40とから構成される。
【0018】
HMD本体10は、装用者に装着される眼鏡型フレーム2を備えている。眼鏡型フレーム2は、ブリッジ部4と、カメラ部5と、左右一対のレンズ保持部6,6と、鼻当部7と、左右一対のヨロイ部8,8と、左右一対のテンプル部9,9と、を備えている。
【0019】
ブリッジ部4は、装用時に装用者の額付近に配置され、眼鏡レンズ3,3を保持する左右のレンズ保持部6,6、鼻当部7などを支持する部材である。ブリッジ部4は、左右のヨロイ部8,8間にわたって左右方向に延在し、ブリッジ部4の左右方向両端部にヨロイ部8,8が一体的に設けられている。また、ブリッジ部4の内部には、電力供給対象である撮像手段としてのカメラ部5、表示手段を構成する左右のハーフミラー部13,13などが配置されている。
【0020】
カメラ部5は、装用者の見る方向を撮像する撮像手段であり、カメラレンズ、撮像素子、カメラ制御基板などを備えている。カメラレンズとして、広角レンズを用いることで、より広い範囲の画像を撮像することができる。カメラレンズは、用途に応じて交換可能な構成としてもよい。
【0021】
カメラ部5は、ブリッジ部4の左右中央付近(左右の眼鏡レンズ3,3の中間位置付近)に配置され、装用時に装用者の眉間付近に配置される。なお、カメラ部5の配置は、これに限らず、適宜変更可能である。また、カメラ部5は、複数の撮像部を備えたものであってもよく、例えば、焦点距離の異なる複数の撮像部を備えたものや、ステレオカメラであってもよい。本実施形態のカメラ部5は、低照度高感度カメラであり、装用者が暗所や夜間の環境下(暗い環境下)にいるとき、装用者の見る方向の視認対象物の画像を高品質で撮像することができる。
【0022】
レンズ保持部6,6は、眼鏡レンズ3,3を保持する部材である。眼鏡レンズ3,3は、視力矯正用の屈折力のあるレンズであってもよいし、屈折力のないレンズであってもよい。また、焦点距離を電子制御可能な可変焦点レンズ(電力供給対象)であってもよい。
【0023】
鼻当部7は、ブリッジ部4に支持され、装用者がHMD1を装着した際に装用者の鼻に当接してHMD1の位置を位置決めする部材である。
【0024】
ヨロイ部8,8は、ブリッジ部4とテンプル部9,9とを連結する部材であり、装用時に装用者の眼の外側(例えばこめかみ付近)に配置される。本実施形態におけるヨロイ部8,8の内部には、それぞれ、電力供給対象である制御部11、表示手段を構成する電力供給対象である画像投写部12などが配置されている。
【0025】
テンプル部9,9は、装用者の頭部両側に配置される2つの装置側部であり、本実施形態では、装用者がHMD1を装着した際に装用者の耳に掛けられる耳掛け部である。本実施形態における左右のテンプル部9,9は、ヨロイ部8,8の後端側に取り付けられている。テンプル部9,9の内部には、それぞれ、各ヨロイ部8,8に配置されている制御部11とコントローラ20のコントローラ制御部21との間の信号ラインや、コントローラ20のバッテリー23からHMD本体10の電力供給対象(カメラ部5、制御部11、画像投写部12等)へ電力を供給するための電力ラインなどが配線されている。
【0026】
図4は、本実施形態におけるHMD1の制御系を示すブロック図である。
なお、本実施形態のHMD1は、右眼側も左眼側も同様の構成であるため、
図4では、HMD1の左眼側についてのみ図示し、HMD1の右眼側についての図示は省略している。
【0027】
本実施形態のHMD本体10のブリッジ部4には、
図3及び
図4に示すように、装用者の眉間付近に配置されるカメラ部5と、左右の眼鏡レンズ3,3の後方(各眼鏡レンズ3,3と装用者の各眼との間)に配置されるハーフミラー部13,13とが設けられている。
【0028】
カメラ部5は、ブリッジ部4内に配線されている電力ラインを通じて、左右いずれかのヨロイ部8(ここでは左眼側のヨロイ部8)に配置されている電源回路14により電力が供給される。また、カメラ部5は、ブリッジ部4内に配線されている信号ラインを通じて、左右のヨロイ部8に配置されている各制御部11,11にそれぞれ接続されている。カメラ部5で撮像された画像のデータは、左右の各制御部11,11にそれぞれ出力される。
【0029】
ハーフミラー部13,13は、
図3に示すように、左右のヨロイ部8,8の内部に配置されている各画像投写部12からの画像光L1を反射して装用者のそれぞれの眼に入射させるように構成されている。これにより、ハーフミラー部13,13がスクリーンのように機能し、各画像投写部12からの画像光L1によって映し出される画像(虚像)を装用者のそれぞれの眼で視認することができる。
【0030】
また、ハーフミラー部13,13は、眼鏡レンズ3,3を通じて入射する視認対象物(装用者の前方)からの可視光L2を透過し、装用者のそれぞれの眼に入射させるように構成されている。これにより、装用者は、ハーフミラー部13,13及び眼鏡レンズ3,3を通じて、前方の視認対象物を直接的に(画像投写部12により映し出される画像を介することなく)視認することもできる。
【0031】
本実施形態のHMD本体10の左右のヨロイ部8の内部には、
図3及び
図4に示すように、制御部11と、画像投写部12と、電源回路14とが配置されている。
【0032】
制御部11は、例えば、画像投写部12を制御するための制御基板によって構成され、カメラ部5から出力される画像データに基づいて、その画像データに対応する画像光L1を画像投写部12から投写させるための制御信号を画像投写部12に出力する。制御部11は、ケーブル30を通じて接続されているコントローラ20のコントローラ制御部21と通信可能である。
【0033】
画像投写部12は、制御部11の制御の下、カメラ部5で撮像された撮像画像のデータに基づく画像光L1をハーフミラー部13へ投写する。具体的には、画像投写部12は、制御部11から出力される制御信号によって制御される画像生成部で生成される画像をハーフミラー部13へ投写する。これにより、画像投写部12からの画像光L1がハーフミラー部13,13で反射して装用者の各眼に入射し、画像光L1によって映し出される画像(虚像)が装用者に視認される。
【0034】
画像投写部12の構成は、HMD本体10に搭載可能なものであれば、制限はない。したがって、画像投写部12の構成は、例えば、画像表示素子(液晶パネル、DMD:Digital Micromirror Device等)を制御部11から出力される制御信号によって制御するものであってもよい。また、画像投写部12の構成は、例えば、制御部11から出力される制御信号に基づいて変調されたレーザーをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等による偏向器(光走査装置)によって偏向(走査)して二次元画像を生成するものであってもよい。
【0035】
電源回路14は、コントローラ20の電力供給源であるバッテリー23からケーブル30を介して入力される電力を、HMD本体10の電力供給対象であるカメラ部5、制御部11、画像投写部12等に出力する。
【0036】
コントローラ20には、主に、コントローラ制御部21と、操作部22と、バッテリー23とが備わっている。なお、コントローラ20は、装用者の服のポケットに入れたり、ベルトに取り付けたり、肩掛けバンドを接続して肩に掛けたりして、装用者に装着される。
【0037】
コントローラ制御部21は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定のプログラムを実行することにより、HMD1の全体的な制御を行う。本実施形態では、コントローラ制御部21は、操作部22が受け付けた操作内容に基づいて、HMD本体10の制御部11,11に制御命令を出力し、受け付けた操作内容に応じた制御を行う。
【0038】
操作部22は、装用者によって操作されることで、装用者の操作内容を示す操作信号をコントローラ制御部21に出力する。操作部22が受け付ける操作内容としては、例えば、電源のオンオフ操作、コントローラ制御部21又は制御部11の実行指示、コントローラ制御部21又は制御部11の制御内容の変更などが挙げられる。操作部22は、受け付ける操作内容に適した種類の操作器(機械式や静電タッチ式などのボタン、ダイヤルなどの回転型操作部など)によって構成される。
【0039】
バッテリー23は、HMD1の電力供給源として機能し、HMD1の電力供給対象へ供給するための電力を出力する。バッテリー23は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。また、太陽光パネルなどの発電機能を備えたものであってもよい。
【0040】
ケーブル30は、HMD本体10とコントローラ20とを接続する可撓性を有する部材であり、コントローラ20のバッテリー23の電力を伝送するための電力ラインを含む電力ケーブルである。本実施形態のケーブル30は、HMD本体10の制御部11とコントローラ20のコントローラ制御部21との間の信号ラインも含んでいる。この信号ラインは、制御部11,21間の制御信号を伝送するラインのほか、例えば、HMD本体10のカメラ部5で撮像された画像データを伝送するラインであってもよい。この場合、HMD本体10のカメラ部5で撮像された画像データを、ケーブル30を介してコントローラ20へ伝送し、コントローラ20からパソコンなどの外部機器に出力することが可能となる。
【0041】
なお、ケーブル30は、電力ラインを含む電力ケーブルに代えて、電力ラインを含まないケーブル(すなわち電力ケーブルではない)、例えば、上述した信号ライン(例えばカメラ部5の画像データの映像信号を伝送するライン)を含む信号ケーブルであってもよい。
【0042】
ケーブル30の一端は、コントローラ20に接続され、ケーブル30の他端側は、2つのケーブル部30A,30Bに分岐している。2つのケーブル部30A,30Bは、それぞれ、HMD本体10における左右のテンプル部9,9の後部9a,9aに接続されている。これにより、2つのケーブル部30A,30Bは、
図2に示すように、装用者の各耳に掛けられる各テンプル部9,9の各後部9a,9aから装用者の後頭部後方まで延出するように配置される。
【0043】
ここでいうテンプル部9の後部9aとは、テンプル部9のうち、装着時にテンプル部9が掛けられる耳の付け根上端よりも後方に位置する部分を指す。本実施形態における2つのケーブル部30A,30Bは、
図2に示すように、左右のテンプル部9,9の後部9a,9aから下方に向かって延びている。ケーブル30の長さは、例えば、コントローラ20が通常の装着状態(例えば装用者の腰付近に装着されている状態)において、ケーブル30が十分に弛むほどの長さに設定されている。
【0044】
本実施形態のHMD1は、ロービジョン患者(例えば夜盲症の患者)が装用することにより、低照度高感度カメラであるカメラ部5によって撮像された装用者の見る方向の視認対象物の画像が、制御部11,11、画像投写部12,12及びハーフミラー部13,13によって、装用者の各眼の視野内に映し出される。このように映し出される画像は、視認対象物を裸眼で見る場合よりも明るく、高輝度であるため、ロービジョン患者(夜盲症の患者)であっても十分な視力をもって視認することができる。したがって、ロービジョン患者(夜盲症の患者)は、本HMD1を装用することにより、暗所や夜間などの暗い環境下であっても、装用者の見る方向の視認対象物を視認することができるようになる。
【0045】
ここで、本実施形態においては、
図2に示すように、装用者の後頭部上側部分に当接するバンド部材40が設けられている。このバンド部材40の各端部40a,40aは、装用者の頭部両側に配置される装置側部である耳掛け部としての2つのテンプル部9,9のそれぞれに接続されている。例えば、2つのテンプル部9,9の外面には、それぞれリブ9b,9bが設けられており、そのリブ9b,9bにバンド部材40の各端部40a,40aに設けられるリング状の紐部を取り付けることにより、バンド部材40がテンプル部9,9に接続される。したがって、本実施形態は、バンド部材40がテンプル部9,9に対して着脱可能に構成されている。このような構成により、本HMD1を装用する装用者は、バンド部材40を使用する使用態様とバンド部材40を使用しない使用態様とを使い分けることが可能となり、装用者の利便性が向上する。もちろん、バンド部材40がテンプル部9,9に対して容易に着脱できないように固定されていてもよい。
【0046】
このようなバンド部材40を設けることで、HMD本体10の各テンプル部9,9には、
図2に示すように、後方に向かって斜め上方に向かう力F2が作用する。この力F2のうちの水平方向成分により、HMD本体10のブリッジ部4が装用者の頭部に引き付けられ、ブリッジ部4の額当部が装用者の額に水平方向から当接し、また、鼻当部7が装用者の鼻に水平方向から押し付けられる。その結果、HMD本体10の装着位置が安定し、装着ズレを抑制することができる。
【0047】
更に、バンド部材40による力F2のうちの鉛直方向成分により、HMD本体10は鉛直方向上側へ持ち上げられる。そのため、HMD本体10の重量の少なくとも一部がバンド部材40を介して装用者の後頭部上側部分に荷重されることになり、HMD本体10を鼻当部7やテンプル部9,9を介して支えている装用者の鼻及び耳の部位に係る荷重が軽減される。そのため、装用者にとってHMD1の長時間の使用が容易になる。
【0048】
ここで、本実施形態のHMD本体10は、
図3に示すように、その構成部のうちの相対的に重量のある電力供給対象(カメラ部5、制御部11、画像投写部12等)が、装用者の耳よりも前方に偏って配置される。したがって、HMD本体10の重量バランスは前方に大きく偏った構成であり、HMD本体10の重量の多くが鼻当部7を介して装用者の鼻に荷重されることになる。
【0049】
ただし、本実施形態では、HMD本体10の電力供給対象に電力を供給する電力供給源であるバッテリー23のケーブル30が、各テンプル部9,9の各後部9a,9aから後方へ延出するように設けている。好ましくは、ケーブル30が装用者の後頭部後方まで延出するように設ける。すなわち、本実施形態においては、ケーブル30が、電力供給対象の重量によって装置左右方向に延びる回転中心軸Oの回りで装置前方を下げる向きに発生する回転モーメントの当該回転中心軸よりも後方に配置されている。
【0050】
そして、このケーブル30は、装用時に装用者の後頭部付近から垂れ下がるように配置される。これにより、HMD本体10には、
図2に示すように、ケーブル30の重量によって、各テンプル部9,9の各後部9a,9aを下方へ押し下げる力F1が作用する。その結果、HMD本体10には、テンプル部9,9が掛けられる装用者の両耳の付け根上端(テンプル部9,9を下支えしている箇所)を通る軸Oを中心にして、鼻当部7を上方へ持ち上げる向きに回転する回転モーメントMを生じさせることができる。したがって、装用者の鼻への荷重F0が軽減され、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
【0051】
特に、電力ケーブルであるケーブル30は、その機能確保のために比較的重量があり、しかも本実施形態では、装用時にケーブル30のより多くの部分が垂れ下がるように配置される。そのため、HMD本体10の電力供給対象による装用者の鼻への荷重F0のより多くを、ケーブル30の重量による回転モーメントMによって相殺することができる。よって、装用者の鼻への荷重F0を大幅に軽減でき、条件によっては、装用者の鼻への荷重F0をケーブル30の重量による回転モーメントMによって完全に相殺することも可能である。
【0052】
しかも、本実施形態におけるケーブル30は、2つに分岐したケーブル部30A,30Bの構成や長さが互いに同じになるように構成されているため、これらのケーブル部30A,30Bの重量は互いに等しい。その結果、各テンプル部9,9の各後部9a,9aから延出しているケーブル30は、各テンプル部9,9に作用する重量バランスが略等しくなるように構成されたものとなっている。これにより、ケーブル30の重量によって、装用者の左右の耳への荷重のバランスが崩れることがない。したがって、装用者の左右の耳への荷重のバランスが略等しいので、ケーブル30の重量により適切な回転モーメントMを発生させることができ、装用者の鼻への荷重F0を適切に軽減して、装用者による長時間の使用が容易になる。
【0053】
なお、HMD本体10の左右の重量バランスが崩れている場合、ケーブル部30A,30Bの長さを変えるなどして、ケーブル部30A,30Bにより各テンプル部9,9に作用する重量バランスが略等しくなるように調整してもよい。
【0054】
加えて、本実施形態においては、
図2に示すように、バンド部材40の各端部40a,40aが、電力供給対象の重量によって装置前方を下げる向きの回転モーメントの回転中心軸よりも前方で、すなわち、テンプル部9,9が掛けられる装用者の両耳の付け根上端を通る軸Oよりも前方で、テンプル部9,9に接続されている。これにより、バンド部材40が接続されている各テンプル部9,9のリブ9b,9bには、後方に向かって斜め上方に持ち上げる力F2が作用し、当該軸(回転中心軸)Oの回りで鼻当部7を上方へ持ち上げる向きに回転する回転モーメントMを増大させることができる。したがって、装用者の鼻への荷重F0が更に軽減され、装用者にとって長時間の使用が更に容易になる。
【0055】
なお、本実施形態におけるバンド部材40は、撓みの少ない剛性部材であってもよいが、好ましくは、伸縮可能なゴム製の部材、可逆的に撓むことのできる可撓性の部材(例えば金属製の板バネ部材)のような弾性部材によって形成される。このような弾性部材で形成されたバンド部材40であれば、装用者の頭部の大きさや形などに追従してバンド部材40が変形でき、多くの装用者に対するHMD本体10の装着性を向上させることができる。なお、バンド部材40の長さを調整可能な構造を採用してもよい。
【0056】
〔変形例〕
次に、本実施形態におけるHMD1の一変形例について説明する。
図5は、本変形例におけるHMD1を装用者が装着した状態を模式的に示す側面図である。
図6は、本変形例におけるHMD1の概略構成を示す説明図である。
本変形例は、
図5及び
図6に示すように、上述した実施形態におけるコントローラ20と同様の構成及び動作を担う連結部20'がHMD本体10に取り付けられた構成である点で、上述した実施形態とは異なっている。なお、本変形例におけるHMD本体10の構成及び動作は上述した実施形態のものと同様であるため、説明を適宜省略する。
【0057】
本変形例のHMD1は、HMD本体10における左右のテンプル部9,9の各後部9a,9aの間が連結部20'によって連結されている。連結部20'には、上述した実施形態のコントローラ20と同様、コントローラ制御部21、操作部22、バッテリー23が設けられている。したがって、本変形例では、電力供給源であるバッテリー23を含む連結部20'が、
図5に示すように、装用者の各耳に掛けられる各テンプル部9,9の各後部9a,9aから後方へ延出するように配置されている。すなわち、本実施形態においては、装用時に装用者の後頭部後方に配置されるバッテリー23を含む連結部20'が、電力供給対象の重量によって装置左右方向に延びる回転中心軸Oの回りで装置前方を下げる向きに発生する回転モーメントの当該回転中心軸よりも後方に配置されている。
【0058】
本変形例においても、装用時に装用者の後頭部後方に配置されるバッテリー23を含む連結部20'の重量により、HMD本体10には、
図5に示すように、各テンプル部9,9の各後部9a,9aを下方へ押し下げる力F1'が作用する。その結果、HMD本体10には、テンプル部9,9が掛けられる装用者の両耳の付け根上端を通る軸Oを中心にして、鼻当部7を上方へ持ち上げる向きに回転する回転モーメントMを生じさせることができる。したがって、装用者の鼻への荷重が軽減され、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
【0059】
また、連結部20'に設けられる構成部の中で最も重量のある電力供給源であるバッテリー23は、HMD1の左右方向中央付近に位置するように、連結部20'内に配置されている。そのため、バッテリー23の重量によって、装用者の左右の耳への荷重のバランスが崩れることがない。したがって、装用者の左右の耳への荷重のバランスが略等しく、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
【0060】
また、本変形例においても、バンド部材40が設けられているため、上述した実施形態と同様、バンド部材40による力F2のうちの鉛直方向成分により、HMD本体10を鼻当部7やテンプル部9,9を介して支えている装用者の鼻及び耳の部位に係る荷重が軽減される。また、上述した実施形態と同様、回転中心軸Oの回りで鼻当部7を上方へ持ち上げる向きに回転する回転モーメントMを増大させることができるので、装用者の鼻への荷重F0が更に軽減される。したがって、装用者にとって長時間の使用が更に容易になる。
【0061】
なお、本実施形態(上述した変形例を含む。)では、装用者の鼻に鼻当部7を当てて装用者の各耳にそれぞれ各耳掛け部であるテンプル部9,9を掛けることにより装用者に装着される眼鏡型のヘッドマウントディスプレイの例で説明したが、本発明が適用可能なヘッドマウント装置は、このような眼鏡型の装着形態のものに限定されない。
【0062】
例えば、
図7に示すように、装用者の各耳に装置側部を掛ける構成ではなく、バンド部材40を介して後頭部上側部分によって支持する構成であってもよい。なお、
図7に示す例は、上述した変形例のHMD1におけるテンプル部9,9が装用者の各耳の上方に配置され、装用者の後頭部上側部分に当接するバンド部材40によってテンプル部9,9が装用者の各耳から浮いた状態になるように支持する構成となっている。
【0063】
図7のような構成においては、装置前方に配置される電力供給対象の重量によって生じる回転モーメントの回転中心軸は、2つのテンプル部9,9にバンド部材40の各端部40a,40aが接続されるリブ9b,9bを通る軸O'となる。この場合、電力供給対象の重量によって装置前方を下げる向きの回転モーメントを、バンド部材40による力F2による回転モーメントMの増大分による相殺はできないが、装用者の耳への荷重を無くすことができる。このように装用者の耳への荷重が無くなることで、装用者によるHMD1の長時間の使用が容易になる。
【0064】
また、
図7のような構成においても、上述した変形例と同様、バッテリー23を含む連結部20'の重量により、リブ9b,9bを通る軸O'を中心にして、鼻当部7を上方へ持ち上げる向きに回転する回転モーメントMを生じさせ、電力供給対象の重量によって装置前方を下げる向きの回転モーメントの少なくとも一部を相殺し、装用者の鼻への荷重を軽減できる。ただし、上述した変形例の場合、バッテリー23を含む連結部20'の重量が装用者の各耳に荷重される。これに対し、
図7のような構成の場合、バッテリー23を含む連結部20'の重量が装用者の各耳に荷重されない。この点で、
図7のような構成は、装用者の耳への荷重が無い分、装用者にとって長時間の使用が容易になる。
【0065】
なお、
図7の構成では、バンド部材40の各端部40a,40aが、装用者の耳よりも前方でテンプル部9,9に接続されているが、
図8(a)に示すように、装用者の耳の真上でテンプル部9,9に接続されていてもよいし、
図8(b)に示すように、装用者の耳よりも後方でテンプル部9,9に接続されていてもよい。
【0066】
なお、本実施形態(上述した変形例を含む。)では、装用者の両眼それぞれに対応する2つの表示手段(制御部11,11、画像投写部12,12、ハーフミラー部13,13)を備えたHMD1について説明したが、装用者のいずれか一方の眼だけに表示手段を設けるようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態(上述した変形例を含む。)では、ヘッドマウント装置として、ヘッドマウントディスプレイ(HMD1)を例に挙げて説明したが、本発明が適用可能なヘッドマウント装置はこれに限られない。例えば、焦点距離を電子制御可能な可変焦点レンズを電力供給対象として備える可変焦点眼鏡のようなヘッドマウント装置であっても同様に適用可能である。可変焦点眼鏡は、眼鏡型フレーム2の眼鏡レンズ3,3の位置に可変焦点レンズが配置される構成であり、重量バランスが前方に大きく偏った構成となるので、装用者の鼻への荷重が軽減される本発明の構成を採用することは有効である。
【0068】
なお、可変焦点レンズは、電気的に制御可能な可変焦点機能を有する可変焦点レンズであれば、焦点可変方式に限定されない。例えば、液晶層の屈折率を電気的に制御して焦点距離を変更可能な液晶方式のものや、液体界面を屈折面とし、液体の濡れ性を電気的に制御して当該界面の曲率を変更することで焦点距離を変更可能な静電液体方式(エレクトロウェッティングデバイス、液体レンズなどとも言う。)などが挙げられる。特に、焦点距離の変化範囲が広く、焦点距離の変化速度が高速である静電液体方式が好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 :HMD
2 :眼鏡型フレーム
3 :眼鏡レンズ
4 :ブリッジ部
5 :カメラ部
6 :レンズ保持部
7 :鼻当部
8 :ヨロイ部
9 :テンプル部
9a :後部
9b :リブ
10 :HMD本体
11 :制御部
12 :画像投写部
13 :ハーフミラー部
14 :電源回路
20 :コントローラ
20' :連結部
21 :コントローラ制御部
22 :操作部
23 :バッテリー
30 :ケーブル
30A,30B:ケーブル部
40 :バンド部材
40a :端部
L1 :画像光
L2 :可視光
M :回転モーメント
O,O':軸