(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128612
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02F 3/26 20060101AFI20230907BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
F02F3/26 C
F02F1/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033060
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】口田 征人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 公二郎
(72)【発明者】
【氏名】信ヶ原 恵
(72)【発明者】
【氏名】川島 一仁
(72)【発明者】
【氏名】畠 道博
(72)【発明者】
【氏名】中本 圭太
(72)【発明者】
【氏名】外間 章悟
(72)【発明者】
【氏名】菊池 開
(72)【発明者】
【氏名】久峩 隼人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒太
(72)【発明者】
【氏名】山本 譲
(72)【発明者】
【氏名】大澤 範貢
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA06
3G024DA02
3G024FA00
(57)【要約】
【課題】ピストン頂面から突部に燃料を円滑に案内できる内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関は、シリンダを有するシリンダブロックと、シリンダヘッドと、前記シリンダを摺動するピストンと、を有する内燃機関である。内燃機関は、前記ピストンの上死点よりも前記シリンダヘッド側に配置され、前記シリンダの内側に向かって突出する突部と、前記ピストンの頂面に配置され、前記突部に向かって延びるとともに前記シリンダヘッドに向かって傾斜する傾斜部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダを有するシリンダブロックと、シリンダヘッドと、前記シリンダを摺動するピストンと、を有する内燃機関であって、
前記ピストンの上死点よりも前記シリンダヘッド側に配置され、前記シリンダの内側に向かって突出する突部と、
前記ピストンの頂面に配置され、前記突部に向かって延びるとともに前記シリンダヘッドに向かって傾斜する傾斜部と、
を備える内燃機関。
【請求項2】
前記頂面の周囲に形成され、前記頂面から前記シリンダヘッドと反対側に向かって下がった下段面を有する段部をさらに備え、
前記ピストンの上死点において、前記段部に前記突部の下端が収まる、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記突部は、前記突部の前記シリンダの内側の端部から前記シリンダの外側に向かって湾曲する湾曲面を有する、
請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記ピストンの上死点において、前記ピストンの頂面の中央が、前記突部の下端よりも前記シリンダヘッド側に位置する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピストンとシリンダヘッドの間に配置され、シリンダ内側に向かって突出するチャンバプレートを有する内燃機関が知られている(例えば、特許文献1の燃料衝突部材を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、シリンダヘッドとチャンバプレートの突部との間で燃焼室を形成する内燃機関を開示する。このため特許文献1の内燃機関は、チャンバプレートに燃料を衝突させ拡散させる。このような構造の内燃機関の場合、チャンバプレートに邪魔されてピストン頂面をシリンダヘッドに向けて高くすることが困難である。このため、圧縮比を変更することが困難である。圧縮比を変更できるようにするためには、突部に加えてピストン頂面も使用して燃料を拡散させることが好ましい。
【0005】
本開示は、ピストン頂面から突部に燃料を円滑に案内できる内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関は、シリンダを有するシリンダブロックと、シリンダヘッドと、前記シリンダを摺動するピストンと、を有する内燃機関である。内燃機関は、前記ピストンの上死点よりも前記シリンダヘッド側に配置され、前記シリンダの内側に向かって突出する突部と、前記ピストンの頂面に配置され、前記突部に向かって延びるとともに前記シリンダヘッドに向かって傾斜する傾斜部と、を備える。
【0007】
この内燃機関によれば、シリンダに供給された燃料がピストンの頂面から突部に案内され、突部によって燃料が拡散される。このため、ピストンの頂面の形状を変更しやすい。これによって、圧縮比も変更しやすい。この結果、内燃機関の燃焼がよくなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ピストン頂面から突部に燃料を円滑に案内できる内燃機関を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本開示の実施形態によるピストンおよび突部の拡大図。
【
図3】他の実施形態によるピストンおよび突部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド4と、ピストン6と、チャンバプレート8と、シリンダヘッドガスケット10と、燃料噴射弁12と、を備える。
【0012】
シリンダブロック2は、シリンダ21を有する。シリンダヘッド4は、シリンダヘッドガスケット10と、チャンバプレート8とを挟んでシリンダブロック2の上方に固定される。シリンダヘッド4には、燃料噴射弁12、吸気バルブ41および排気バルブ42などが配置される。本実施形態の内燃機関1は、シリンダ21に直接燃料を噴射するディーゼルエンジンである。また、本実施形態の内燃機関1は、シリンダ21が上下方向に配置される例を用いて説明する。
【0013】
図2に示すように、ピストン6は、傾斜部61と、段部62と、を有する。ピストン6は、シリンダ21内を摺動する。傾斜部61は、円筒形のピストン6の頂面6aの周囲に配置される。傾斜部61は、後述するチャンバプレート8の突部81に向かって延びるとともにシリンダヘッド4に向かって傾斜する。言い換えると、傾斜部61は、シリンダ21の内側から外側に向かって延び、内燃機関1の上方に向けて延びる。傾斜部61は、後述するチャンバプレートの突部81に形成される湾曲面82の曲率に合わせたR面61aが設けられる。
【0014】
段部62は、頂面6aの周囲に形成され、頂面6aからシリンダヘッド4と反対側に向かって下がった下段面62aを有する。段部62は、チャンバプレートの突部8aよりも側面62bがシリンダ21の中心側に位置するように形成される。
【0015】
ピストン6は、ピストン6の上死点において、ピストン6の頂面6aの中央が、突部81の下端よりもシリンダヘッド4側に位置する。具体的には、ピストン6の頂面6aは、シリンダ21の略中心の位置から吸気バルブ41が配置される吸気側、および排気バルブ42が配置される排気側に向けてシリンダヘッド4と反対側(本実施形態では下方)に向けて傾斜するスキッシュ63が形成される。スキッシュ63は、シリンダ21の中心付近が稜線を形成し、稜線の高さがチャンバプレート8の下面よりも高い位置に形成される。これによって、圧縮比が高くできる。
【0016】
チャンバプレート8は、突部81と、湾曲面82と、を有する。本実施形態では、突部81は湾曲面82を挟んで、シリンダブロック2側と、シリンダヘッド4側と、に2つ形成される。チャンバプレート8は、ステンレスなどの金属製の板状部材である。
【0017】
突部81は、ピストン6の段部62の上死点の位置よりもシリンダヘッド4側に配置される。突部81は、シリンダ21の内側に向かって突出する。シリンダブロック2側の突部81は、ピストン6の段部62に収容される。湾曲面82は、突部81のシリンダ21の内側の端部81aからシリンダ21の外側に向かって湾曲する。
【0018】
チャンバプレート8とシリンダブロック2との間には、断熱性の高いシリンダヘッドガスケット10が配置される。チャンバプレート8と、シリンダヘッド4との間にも断熱性の高いシリンダヘッドガスケット10が配置される。シリンダヘッドガスケット10は、グラファイト、雲母、メタルガスケットに樹脂コートをしたもの、樹脂ガスケットなどの熱伝導率の低いガスケットである。これによって、チャンバプレート8を挟み込み、チャンバプレート8が温度の高い状態を保持する。この結果、内燃機関1の冷却損失が低減できる。
【0019】
図1および
図2に示すように、このように、傾斜部61とチャンバプレート8の突部81を設けることによって、燃料噴射弁12から噴射された燃料の噴霧(
図1のM参照)が傾斜部61に沿ってシリンダヘッド4側に押し上げられ、噴霧がチャンバプレート8に向けて円滑に案内される。これによって、ピストン6と突部81との間に噴霧が吸い込まれることを防止できる。
【0020】
チャンバプレート8に案内された噴霧は、湾曲面82に沿ってシリンダヘッド4側に上昇し、拡散する。また、本実施形態では、シリンダヘッド4側の突部81によって、シリンダ21の内側に向けて押し返され、さらに噴霧が拡散する。これによってシリンダ21内の燃焼がよくなる。
【0021】
さらに、ピストンの段部62とチャンバプレート8の突部81によってラビリンス構造となるため、チャンバプレート8に付着した燃料を含んだオイルなどは、ピストン6の壁面6bに落ちにくい。これによって内燃機関1のオイル希釈化を防止できる。
【0022】
また、ピストン6に段部62を形成することによって、頂面6aをシリンダヘッド4に近づけることができる。これによって、ピストン6の上死点において、燃焼室の表面積を減らせるため、内燃機関1の冷却損失を低減できる。さらに、段部62に突部81が収容されるため、頂面6aの形状を変更しやすい。このため、本実施形態のようなスキッシュ63を形成し、圧縮比を高めることもできる。
【0023】
以上説明した通り、本開示によれば、ピストン6の頂面6aから突部81に燃料を円滑に案内できる内燃機関1を提供できる。
【0024】
<他の実施形態>
以上、本実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は、必要に応じて任意に組み合わせ可能である。
【0025】
(a)上記実施形態では、突部81は、湾曲面82を挟んでシリンダブロック2側と、シリンダヘッド4側の合計2つ設けたが、本開示はこれに限定されない。
図3(a)に示すように、例えば突部81は、シリンダブロック2側に一つ設けてもよい。
【0026】
(b)上記実施形態では、チャンバプレート8に湾曲面82を設けたが、湾曲面82は必ずしも必要ではない。例えば、
図3(b)に示すように、直線的に傾斜した傾斜面282であってもよい。
【0027】
(c)上記実施形態では、湾曲面82とR面61aの曲率を合わせる例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。傾斜部61と突部81が連続した面であれば、必ずしも、湾曲面82とR面61aの曲率が一致していなくてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1:内燃機関,2:シリンダブロック
4:シリンダヘッド,6:ピストン,6a:頂面
8:チャンバプレート,8a:突部
10:シリンダヘッドガスケット,21:シリンダ
61:傾斜部,62:段部,62a:下段面,63:スキッシュ
81:突部,81a:端部,82:湾曲面