(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128617
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】異常検知プログラム、異常検知方法および異常検知システム
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20230907BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20230907BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20230907BHJP
【FI】
B22D17/32 J
B22D17/20 F
H01L35/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033073
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000139687
【氏名又は名称】株式会社安永
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】古川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】一見 清秀
(72)【発明者】
【氏名】坂本 達也
(57)【要約】
【課題】射出スリーブの周辺に設けられる装置の配置の自由度が低下することを抑制しつつ、ダイカストマシンの異常を検知する。
【解決手段】射出スリーブの上部に設けられた導入口から導入した溶湯を金型に射出するダイカストマシンの異常を検知するための異常検知プログラムは、射出スリーブの下方に配置されている熱電素子であって、射出スリーブからの熱が上面に伝達され、冷却装置によって下面の温度が一定に保たれる熱電素子が、上面の温度と下面の温度との温度差に応じて発生させる発生電圧を取得する取得機能と、熱電素子の発生電圧に基づいてダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する判定機能と、をコンピュータに実現させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出スリーブの上部に設けられた導入口から導入した溶湯を金型に射出するダイカストマシンの異常を検知するための異常検知プログラムであって、
前記射出スリーブの下方に配置されている熱電素子であって、前記射出スリーブからの熱が上面に伝達され、冷却装置によって下面の温度が一定に保たれる熱電素子が、前記上面の温度と前記下面の温度との温度差に応じて発生させる発生電圧を取得する取得機能と、
前記発生電圧に基づいて前記ダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する判定機能と、
をコンピュータに実現させる、異常検知プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知プログラムであって、
前記射出スリーブの中心軸に沿って移動する射出プランジャと前記射出スリーブの内壁面との間には潤滑剤が供給され、
前記判定機能は、前記発生電圧が予め定められた第1電圧以上になった場合に、前記ダイカストマシンに異常が発生したと判定する機能を含む、異常検知プログラム。
【請求項3】
請求項1に記載の異常検知プログラムであって、
前記射出スリーブの中心軸に沿って移動する射出プランジャと前記射出スリーブの内壁面との間には潤滑剤が供給され、
前記判定機能は、前記発生電圧が予め定められた第2電圧以下になった場合に、前記ダイカストマシンに異常が発生したと判定する機能を含む、異常検知プログラム。
【請求項4】
請求項1に記載の異常検知プログラムであって、
前記射出スリーブが変形することによって、前記射出スリーブと前記熱電素子の前記上面との間の隙間の大きさが変化し、
前記判定機能は、前記発生電圧が予め定められた第3電圧以下になった場合に、前記ダイカストマシンに異常が発生したと判定する機能を含む、異常検知プログラム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異常検知プログラムであって、
前記取得機能は、前記射出スリーブの軸方向に沿って並んで配置された2つの前記熱電素子からそれぞれの前記発生電圧を取得する機能を含み、
前記射出スリーブが変形することによって、前記射出スリーブとそれぞれの前記熱電素子との間の隙間の大きさが変化し、
前記判定機能は、2つの前記発生電圧の電圧差に基づいて前記ダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する機能を含む、異常検知プログラム。
【請求項6】
射出スリーブの上部に設けられた導入口から導入した溶湯を金型に射出するダイカストマシンの異常を検知するための異常検知方法であって、
前記射出スリーブの下方に配置されている熱電素子であって、前記射出スリーブからの熱が上面に伝達され、冷却装置によって下面の温度が一定に保たれる熱電素子が、前記上面の温度と前記下面の温度との温度差に応じて発生させる発生電圧を取得する取得工程と、
前記発生電圧に基づいて前記ダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する判定工程と、
を有する、異常検知方法。
【請求項7】
異常検知システムであって、
溶湯を導入する導入口が上部に設けられた射出スリーブを有し、前記導入口から前記射出スリーブに導入した前記溶湯を金型に射出するダイカストマシンと、
前記射出スリーブの下方に配置されており、前記射出スリーブからの熱が上面に伝達される熱電素子と、
前記射出スリーブの下方に配置されており、前記熱電素子の下面の温度を一定に保つ冷却装置と、
前記上面の温度と前記下面の温度との温度差に応じて前記熱電素子が発生させる発生電圧を取得し、前記発生電圧に基づいて前記ダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する異常検知装置と、
を備える、異常検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常検知プログラム、異常検知方法および異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイカストマシンの射出スリーブの上面に接触する熱電対と、射出スリーブの下面に接触する熱電対とを用いて、射出スリーブの上面と下面との温度差による射出スリーブの歪を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のダイカストマシンのように、ダイカストマシンでは、一般に、射出スリーブの上面に設けられた開口部を通じて、射出スリーブ内に溶湯が注ぎ込まれる。そのため、上記文献のように射出スリーブの上面に熱電対等の計測機器が設けられると、例えば、射出スリーブ内に溶湯を注ぎ込む装置などの射出スリーブの周辺に設けられる装置の配置の自由度が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、射出スリーブの上部に設けられた導入口から導入した溶湯を金型に射出するダイカストマシンの異常を検知するための異常検知プログラムが提供される。この異常検知プログラムは、前記射出スリーブの下方に配置されている熱電素子であって、前記射出スリーブからの熱が上面に伝達され、冷却装置によって下面の温度が一定に保たれる熱電素子が、前記上面の温度と前記下面の温度との温度差に応じて発生させる発生電圧を取得する取得機能と、前記発生電圧に基づいて前記ダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する判定機能と、をコンピュータに実現させる。
この形態の異常検知プログラムによれば、熱電素子の下面の温度が冷却装置によって一定に保たれるので、ダイカストマシンの異常によって熱電素子の上面の温度が変化すると、取得される熱電素子の発生電圧が変化する。そのため、射出スリーブの上方に計測機器を設けずに、射出スリーブの下方に配置された熱電素子の発生電圧に基づいてダイカストマシンの異常を検知できる。したがって、射出スリーブの周辺に設けられる装置の配置の自由度が低下することを抑制できる。
(2)上記形態の異常検知プログラムにおいて、前記射出スリーブの中心軸に沿って移動する射出プランジャと前記射出スリーブの内壁面との間には潤滑剤が供給され、前記判定機能は、前記発生電圧が予め定められた第1電圧以上になった場合に、前記ダイカストマシンに異常が発生したと判定する機能を含んでもよい。
射出スリーブの内壁面に供給される潤滑剤が不足すると、溶湯の熱が射出スリーブに伝わりやすくなり、熱電素子の発生電圧が上昇する。この形態の異常検知プログラムによれば、上記現象を利用して、ダイカストマシンの異常のうち、射出スリーブの内壁面に供給される潤滑剤が不足する異常を検知できる。
(3)上記形態の異常検知プログラムにおいて、前記射出スリーブの中心軸に沿って移動する射出プランジャと前記射出スリーブの内壁面との間には潤滑剤が供給され、前記判定機能は、前記発生電圧が予め定められた第2電圧以下になった場合に、前記ダイカストマシンに異常が発生したと判定する機能を含んでもよい。
射出スリーブの内壁面に塗布される潤滑剤が過剰になると、溶湯の熱が射出スリーブに伝わりにくくなり、熱電素子の発生電圧が低下する。この形態の異常検知プログラムによれば、上記現象を利用して、ダイカストマシンの異常のうち、射出スリーブの内壁面に塗布される潤滑剤が過剰になる異常を検知できる。
(4)上記形態の異常検知プログラムにおいて、前記射出スリーブが変形することによって、前記射出スリーブと前記熱電素子の前記上面との間の隙間の大きさが変化し、前記判定機能は、前記発生電圧が予め定められた第3電圧以下になった場合に、前記ダイカストマシンに異常が発生したと判定する機能を含んでもよい。
射出スリーブの変形量が大きくなると、射出スリーブと熱電素子との間の隙間が大きくなって射出スリーブの熱が熱電素子の上面に熱が伝わりにくくなり、熱電素子の発生電圧が低下する。この形態の異常検知プログラムによれば、上記現象を利用して、ダイカストマシンの異常のうち、射出スリーブの変形による異常を検知できる。
(5)上記形態の異常検知プログラムにおいて、前記取得機能は、前記射出スリーブの軸方向に沿って並んで配置された2つの前記熱電素子からそれぞれの前記発生電圧を取得する機能を含み、前記射出スリーブが変形することによって、前記射出スリーブとそれぞれの前記熱電素子との間の隙間の大きさが変化し、前記判定機能は、2つの前記発生電圧の電圧差に基づいて前記ダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する機能を含んでもよい。
この形態の異常検知プログラムによれば、1つの熱電素子の発生電圧に基づいて射出スリーブの変形による異常を検知する形態に比べて精度良く射出スリーブの変形による異常を検知できる。
(6)本開示の第2の形態によれば、射出スリーブの上部に設けられた導入口から導入した溶湯を金型に射出するダイカストマシンの異常を検知するための異常検知方法が提供される。この異常検知方法は、前記射出スリーブの下方に配置されている熱電素子であって、前記射出スリーブからの熱が上面に伝達され、冷却装置によって下面の温度が一定に保たれる熱電素子が、前記上面の温度と前記下面の温度との温度差に応じて発生させる発生電圧を取得する取得工程と、前記発生電圧に基づいて前記ダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する判定工程と、を有する。
この形態の異常検知方法によれば、熱電素子の下面の温度が冷却装置によって一定に保たれるので、ダイカストマシンの異常によって熱電素子の上面の温度が変化すると、取得される熱電素子の発生電圧が変化する。そのため、射出スリーブの上方に計測機器を設けずに、射出スリーブの下方に配置された熱電素子の発生電圧に基づいてダイカストマシンの異常を検知できる。したがって、射出スリーブの周辺に設けられる装置の配置の自由度が低下することを抑制できる。
(7)本開示の第3の形態によれば、異常検知システムが提供される。この異常検知システムは、溶湯を導入する導入口が上部に設けられた射出スリーブを有し、前記導入口から前記射出スリーブに導入した前記溶湯を金型に射出するダイカストマシンと、前記射出スリーブの下方に配置されており、前記射出スリーブからの熱が上面に伝達される熱電素子と、前記射出スリーブの下方に配置されており、前記熱電素子の下面の温度を一定に保つ冷却装置と、前記上面の温度と前記下面の温度との温度差に応じて前記熱電素子が発生させる発生電圧を取得し、前記発生電圧に基づいて前記ダイカストマシンに異常が発生したか否かを判定する異常検知装置と、を備える。
この形態の異常検知システムによれば、熱電素子の下面の温度が冷却装置によって一定に保たれるので、ダイカストマシンの異常によって熱電素子の上面の温度が変化すると、取得される熱電素子の発生電圧が変化する。そのため、射出スリーブの上方に計測機器を設けずに、射出スリーブの下方に配置された熱電素子の発生電圧に基づいてダイカストマシンの異常を検知できる。したがって、射出スリーブの周辺に設けられる装置の配置の自由度が低下することを抑制できる。
本開示は、異常検知プログラムや異常検知方法や異常検知システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、異常検知装置などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】異常検知システムの概略構成を模式的に示す説明図。
【
図5】ダイカスト製品製造時の熱電素子の発生電圧の推移を示すタイムチャート。
【
図6】曲げ変形発生時の熱電素子の発生電圧と温度差との関係を示すグラフ。
【
図7】潤滑剤不足時の熱電素子の発生電圧と温度差との関係を示すグラフ。
【
図8】潤滑剤過剰時の熱電素子の発生電圧と温度差との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における異常検知システム50の概略構成を示す説明図である。異常検知システム50は、ダイカストマシン100と、2つの熱電素子200と、冷却装置300と、固定具400と、潤滑剤供給装置500と、異常検知装置600と、表示装置650とを備えている。
【0009】
ダイカストマシン100は、型締装置110と、射出装置120と、押出装置130とを備えている。ダイカストマシン100には、金型150が装着される。金型150は、固定型151と、可動型152とを備えている。
【0010】
型締装置110は、固定盤111と、可動盤112と、タイバー115と、図示されていない駆動装置とを備えている。固定盤111は、棒部材であるタイバー115の先端部に固定されている。可動盤112は、駆動装置によってタイバー115に沿って移動する。固定盤111には固定型151が装着され、可動盤112には可動型152が装着される。型締装置110は、可動盤112とともに可動型152を移動させることによって金型150の開閉を実行し、可動盤112とともに可動型152を固定型151に押し付けることによって型締めを実行する。
【0011】
射出装置120は、射出スリーブ121と、射出プランジャ125と、図示されていない駆動装置とを備えている。本実施形態では、射出スリーブ121は、円筒状に構成されている。射出スリーブ121の一方の端部は、固定盤111に固定されている。射出スリーブ121の上部には、射出スリーブ121内に溶湯MMを導入する導入口122が設けられている。射出スリーブ121内には、導入口122を通じて溶湯MMが注ぎ込まれる。本実施形態では、溶湯MMは、溶融したアルミニウム合金である。溶湯MMは、溶融したアルミニウム合金に限られず、例えば、溶融した亜鉛合金、あるいは、溶融したマグネシウム合金でもよい。本実施形態では、溶湯MMは、ダイカストマシン100の近傍に設置された図示されていない溶湯保持炉に貯留されており、ラドルを備える自動給湯機によって溶湯保持炉から掬い出されて、導入口122に注ぎ込まれる。
【0012】
射出プランジャ125は、固定盤111とは反対側の射出スリーブ121の端部から射出スリーブ121内に挿入されている。射出プランジャ125は、射出スリーブ121内の溶湯MMを金型150内に射出する。射出プランジャ125は、駆動装置によって射出スリーブ121の中心軸に沿って移動する。射出プランジャ125の先端部には、射出スリーブ121に嵌合するプランジャチップ126が装着されている。プランジャチップ126が射出スリーブ121の内壁面上を金型150に向かって摺動することによって、射出スリーブ121内の溶湯MMが金型150内に圧送される。溶湯MMが金型150内で冷却されて凝固することにより、ダイカスト製品が製造される。
【0013】
押出装置130は、押出ピン131と、押出板132と、図示されていない駆動装置とを備えている。押出ピン131の一方の端部は、可動型152に設けられた貫通穴に挿入されており、押出ピン131の他方の端部は、押出板132に固定されている。押出ピン131および押出板132は、駆動装置によって可動型152に対して移動する。押出装置130は、金型150が型開きされるときに、可動型152から固定型151に向けて押出ピン131を突き出させることによって、可動型152からダイカスト製品を離型させる。
【0014】
2つの熱電素子200は、射出スリーブ121の下方に、射出スリーブ121の軸方向に沿って並んで配置されている。各熱電素子200は、ゼーベック効果によって、熱エネルギを電気エネルギに変換する。本実施形態では、各熱電素子200は、Mg-Si系の熱電素子が用いられる。各熱電素子200は、配線を介して、異常検知装置600に接続されている。各熱電素子200の具体的な構成については後述する。なお、本実施形態では、熱電素子200は、射出スリーブ121の上方には設けられていない。他の実施形態では、3つ以上の熱電素子200が、射出スリーブ121の下方に、射出スリーブ121の軸方向に沿って並んで配置されてもよい。
【0015】
冷却装置300は、冷却ブロック310と、図示されていないチラーとを備えている。冷却ブロック310は、射出スリーブ121の下方に配置されている。冷却ブロック310の内部には、冷媒が流れる流路が設けられている。本実施形態では、冷媒として、水が用いられる。冷却ブロック310に設けられた流路は、図示されていない配管によってチラーに接続されている。冷却装置300は、各熱電素子200の下面を冷却することによって、各熱電素子200の下面の温度を一定に保つ。温度を一定に保つとは、目標温度が一定であることを意味し、実際の温度はわずかに変動してもよい。なお、他の実施形態では、冷媒として、水ではなく、例えば、油が用いられてもよい。冷却ブロック310のことを冷却部材と呼ぶことがある。
【0016】
固定具400は、射出スリーブ121と熱電素子200と冷却ブロック310とを互いに固定する。本実施形態では、固定具400は、固定バンド410と、固定ブロック420とを備えている。固定具400の具体的な構成については後述する。
【0017】
潤滑剤供給装置500は、射出スリーブ121とプランジャチップ126との間に潤滑剤を供給する。本実施形態では、潤滑剤供給装置500は、潤滑剤を吐出するノズル510を備えており、所定のタイミングで、ノズル510からプランジャチップ126の外周面に所定量の潤滑剤を滴下する。プランジャチップ126の外周面に滴下された潤滑剤は、プランジャチップ126の移動によって、射出スリーブ121の内壁面に塗布される。本実施形態では、潤滑剤として、油性潤滑剤が用いられる。なお、他の実施形態では、潤滑剤として、水性潤滑剤が用いられてもよい。
【0018】
異常検知装置600は、CPUと、メモリと、入出力インターフェースとを備えたコンピュータとして構成されている。本実施形態では、異常検知装置600は、メモリに予め格納された異常検知プログラムをCPUが実行することによって、ダイカストマシン100の異常を検知する。異常検知プログラムは、熱電素子200の発生させる発生電圧を取得する取得機能と、熱電素子200の発生電圧に基づいてダイカストマシン100に異常が発生したか否かを判定する判定機能とをコンピュータに実現させる。本実施形態では、異常検知装置600には、表示装置650が接続されている。表示装置650は、例えば、液晶ディスプレイによって構成されている。異常検知装置600は、ダイカストマシン100に異常が発生したと判定した場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したことを示す情報を表示装置650に表示させる。なお、異常検知装置600は、コンピュータではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0019】
図2は、
図1におけるII-II線断面図である。上述したとおり、熱電素子200は、射出スリーブ121と冷却ブロック310との間に配置されており、射出スリーブ121、熱電素子200、および、冷却ブロック310は、固定具400を用いて互いに固定される。本実施形態では、固定具400は、固定バンド410と、固定ブロック420と、ボルト431と、ナット432と、スプリングワッシャ433とによって構成されている。
【0020】
固定バンド410は、射出スリーブ121の上部に掛け渡されている。固定ブロック420は、射出スリーブ121の下方に配置されている。固定ブロック420の上面には半円形の溝が設けられており、この溝には、射出スリーブ121の下部が嵌め込まれている。固定ブロック420の下面は、冷却ブロック310の上面に向けられている。本実施形態では、冷却ブロック310の上面のうちの射出スリーブ121と上下に重なる部分には、窪みが設けられており、この窪みには、熱電素子200が嵌め込まれている。熱電素子200の近傍には、冷媒の流路315が設けられている。固定ブロック420と冷却ブロック310との間には、熱電素子200が嵌め込まれている部分を除いて、固定ブロック420の熱が冷却ブロック310に伝わることを抑制する断熱構造が設けられることが好ましい。断熱構造は、例えば、固定ブロック420と冷却ブロック310との間に隙間を設けることで構成されてもよいし、固定ブロック420と冷却ブロック310との間に断熱材を設けることで構成されてもよいし、固定ブロック420と冷却ブロック310との接触面積が小さくなるように固定ブロック420の下面と冷却ブロック310の上面とのうちの少なくとも一方に溝や穴などを設けることで構成されてもよい。断熱構造が設けられることによって、ダイカスト製品の製造時の熱電素子200の上面の温度と下面の温度との温度差を大きくすることができる。
【0021】
固定バンド410、固定ブロック420、および、冷却ブロック310には貫通穴が設けられており、固定バンド410、固定ブロック420、および、冷却ブロック310は、上方から貫通穴に挿入されたボルト431と冷却ブロック310の下方に配置されたナット432とによって互いに固定されている。冷却ブロック310とナット432との間にはスプリングワッシャ433が設けられており、スプリングワッシャ433によってナット432の緩みが抑制されている。なお、他の実施形態では、ナット432の緩みを抑制するために、スプリングワッシャ433に代えて、例えば、板バネやコイルバネが設けられてもよい。
【0022】
熱電素子200の上面は、射出スリーブ121の下部に接触しており、熱電素子200の上面には、射出スリーブ121からの熱が伝達される。熱電素子200の下面は、冷却ブロック310に接触しており、熱電素子200の下面の温度は、一定に保たれる。熱電素子200の上面が射出スリーブ121に接触するとは、熱電素子200の上面が他の部材を介して射出スリーブ121に接触することをも含む意味であり、熱電素子200の下面が冷却ブロック310に接触するとは、熱電素子200の下面が他の部材を介して冷却ブロック310に接触することをも含む意味である。本実施形態では、熱電素子200の上面は、固定ブロック420を介して射出スリーブ121の下部に接触しており、熱電素子200の下面は、他の部材を介さずに冷却ブロック310に接触している。なお、他の実施形態では、熱電素子200の上面は、固定ブロック420を介さずに射出スリーブ121の下部に接触してもよい。この場合、射出スリーブ121の下面が平坦に構成されていることが好ましい。
【0023】
図3は、熱電素子200の概略構成を示す断面図である。本実施形態では、熱電素子200は、基板210と、複数のP型半導体221と、複数のN型半導体222と、絶縁層230と、伝熱シート240と、カバー250とを備えている。基板210は、熱電素子200の下面を構成している。本実施形態では、基板210は、複数の板が積層されて構成されている。基板210の上には、複数のP型半導体221と複数のN型半導体222とが配置されている。各半導体221,222は、基板210の上面に固定されている。各半導体221,222は、基板210側の端部に設けられた低温側配線225と基板210とは反対側の端部に設けられた高温側配線226とによって、P型とN型とが交互になるように直列接続されている。各半導体221,222の上には、下から順に、アルミナで形成された絶縁層230と、グラファイトで形成された伝熱シート240とが配置されている。各半導体221,222、絶縁層230、および、伝熱シート240は、ステンレス鋼で形成されたカバー250によって覆われている。カバー250は、熱電素子200の上面を構成している。カバー250は、接着剤260によって基板210の上面に固定されている。基板210とカバー250との間は、接着剤260によってシールされている。基板210のうちの低温側配線225に接触する最上層は、低温側配線225の短絡を抑制するために、例えば、樹脂材料などの絶縁材料で形成されることが好ましい。基板210のうちの冷却ブロック310に接触する最下層は、熱伝導性を高めるために、例えば、銅などの金属材料で形成されることが好ましい。
【0024】
図4は、本実施形態における異常検知処理の内容を示すフローチャートである。
図5は、ダイカストマシン100によってダイカスト製品が製造されるときの熱電素子200の発生電圧の推移を示すタイムチャートである。
図5において、横軸は、時間を表している。
図5には、2つの熱電素子200のうちの一方についての、正常時における、熱電素子200の上面の温度T1と、熱電素子200の下面の温度T2と、熱電素子200の発生電圧Veとが表されている。
【0025】
図4に示す異常検知処理は、例えば、異常検知装置600に設けられた開始ボタンが押下された場合に、異常検知装置600のメモリに格納された異常検知プログラムを異常検知装置600のCPUが実行することによって開始される。
【0026】
まず、ステップS110にて、異常検知装置600は、2つの熱電素子200の発生電圧を取得する。
図5に示すように、射出スリーブ121内に溶湯MMが注ぎ込まれると、射出スリーブ121の下部から熱電素子200の上面に溶湯MMの熱が伝達されるので、熱電素子200の上面の温度T1は増加する。その後、射出スリーブ121内から金型150内に溶湯MMが射出されるので、熱電素子200の上面の温度T1は低下する。ダイカスト製品が繰り返し製造されるときには、射出スリーブ121内への溶湯MMの注入と、射出スリーブ121内から金型150内への溶湯MMの射出とが繰り返されるので、熱電素子200の上面の温度T1は、のこぎりの歯のような波形になる。一方、ダイカスト製品が繰り返し製造される間、熱電素子200の下面の温度T2は、冷却装置300によって一定に保たれる。そのため、正常時には、熱電素子200の発生電圧Veは、のこぎりの歯のような波形になり、第2電圧V2よりも高くかつ第1電圧V1よりも低い範囲内で推移する。
【0027】
次に、
図4のステップS120にて、異常検知装置600は、2つの熱電素子200の発生電圧に基づいて、ダイカストマシン100に異常が発生したか否かを判定する。本実施形態では、2つの熱電素子200のうちの少なくとも1つの熱電素子200の発生電圧が所定の第1電圧V1以上になった場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。また、本実施形態では、2つの熱電素子200のうちの少なくとも1つの熱電素子200の発生電圧が第1電圧V1よりも低い所定の第2電圧V2以下になった場合にも、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。さらに、本実施形態では、2つの熱電素子200の発生電圧の電圧差の絶対値が所定の基準値以上になった場合にも、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。
【0028】
後述するように、熱電素子200の発生電圧Veが第1電圧V1以上になった場合には、射出スリーブ121内の潤滑剤不足によるダイカストマシン100の異常が発生した可能性がある。熱電素子200の発生電圧Veが第2電圧V2以下になった場合には、射出スリーブ121の曲げ変形によるダイカストマシン100の異常、あるいは、射出スリーブ121内の潤滑剤過剰によるダイカストマシン100の異常が発生した可能性がある。射出スリーブ121の曲げ変形によって、熱電素子200の内部断線が発生することがあるので、熱電素子200の発生電圧Veがゼロになった場合には、射出スリーブ121の曲げ変形によるダイカストマシン100の異常が発生した可能性がある。射出スリーブ121の軸方向に沿って並んで配置された2つの熱電素子200の発生電圧Veの電圧差の絶対値が所定の基準値以上になった場合には、射出スリーブ121の曲げ変形によるダイカストマシン100の異常が発生した可能性がある。第1電圧V1および第2電圧V2は、予め行われる試験によって、ダイカストマシン100に異常が発生するときの熱電素子200の発生電圧Veを調べることによって決定できる。上述した基準値は、予め行われる試験によって、ダイカストマシン100に異常が発生するときの2つの熱電素子200の発生電圧Veの差の絶対値を調べることによって決定できる。なお、第2電圧V2のことを第3電圧V3と呼ぶことがある。電圧ゼロのことを、第3電圧V3と呼ぶこともある。
【0029】
ステップS120でダイカストマシン100に異常が発生したと判定されなかった場合、異常検知装置600は、ステップS130に処理を進める。一方、ステップS120でダイカストマシン100に異常が発生したと判定された場合、ステップS125にて、異常検知装置600は、ダイカストマシン100に異常が発生したことを報知した後、ステップS130に処理を進める。本実施形態では、異常検知装置600は、ダイカストマシン100に異常が発生したことを表すメッセージを表示装置650に表示させることによって、ダイカストマシン100の異常を報知する。異常検知装置600は、各熱電素子200の発生電圧Veによってダイカストマシン100の異常の種類を推定し、ダイカストマシン100の異常の種類を表示装置650に表示させてもよい。
【0030】
ステップS120またはステップS125の後、ステップS130にて、異常検知装置600は、異常検知処理を終了するか否かを判定する。異常検知装置600は、例えば、異常検知装置600に設けられた終了ボタンが押下された場合に、異常判定処理を終了すると判定する。この終了ボタンは、例えば、ダイカスト製品の製造を終了するときに、ユーザによって押下される。ステップS130で異常検知処理を終了すると判断されなかった場合には、異常検知装置600は、ステップS110に処理を戻して、ステップS110からステップS130までの処理を再び実行する。一方、ステップS130で異常検知処理を終了すると判断された場合には、異常検知装置600は、異常検知処理を終了する。なお、異常検知処理によって実現される方法のことを異常検知方法と呼ぶことがある。ステップS110のことを取得工程と呼ぶことがある。ステップS120のことを判定工程と呼ぶことがある。ステップS125のことを報知工程と呼ぶことがある。
【0031】
図6は、射出スリーブ121の曲げ変形によるダイカストマシン100の異常発生時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係を示すグラフである。
図7は、射出スリーブ121内の潤滑剤不足によるダイカストマシン100の異常発生時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係を示すグラフである。
図8は、射出スリーブ121内の潤滑剤過剰によるダイカストマシン100の異常発生時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係を示すグラフである。
図6から
図8において、横軸は、熱電素子200の発生電圧Veを表しており、縦軸は、射出スリーブ121に導入された溶湯MMの温度と熱電素子200の下面の温度との温度差を表している。
【0032】
図6には、正常時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係が実線で表されており、射出スリーブ121の曲げ変形による異常発生時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係が破線で表されている。射出スリーブ121内に注ぎ込まれた溶湯MMは、金型150内に圧送されるまで、射出スリーブ121の下部に滞留する。そのため、射出スリーブ121の下部の温度は、射出スリーブ121の上部の温度よりも高くなる。射出スリーブ121の上部の温度と下部の温度との温度差によって、射出スリーブ121には、下方に向けて突き出した弧を描くように曲げ変形が生じる。射出スリーブ121の曲げ変形量が大きくなると、プランジャチップ126の移動時に、プランジャチップ126が射出スリーブ121の内壁面に擦り付けられて、射出スリーブ121の内壁面に引っ掻き傷を付けることがある。射出スリーブ121の曲げ変形量が大きくなるほど、射出スリーブ121と固定ブロック420とが接触する面積が減少して、熱電素子200の上面の温度が低下する。熱電素子200の下面の温度は、冷却装置300によって一定に保たれるので、射出スリーブ121の曲げ変形量が大きくなるほど、熱電素子200の上面の温度と下面の温度との温度差が小さくなる。そのため、射出スリーブ121に曲げ変形が生じると、射出スリーブ121に曲げ変形が生じていないときに比べて、熱電素子200の発生電圧Veが小さくなる。さらに、射出スリーブ121の曲げ変形量が大きくなるほど、射出スリーブ121と固定ブロック420との間の隙間の大きさにばらつきが生じるので、射出スリーブ121の軸方向に沿って並んで配置された各熱電素子200の発生電圧Veの差の絶対値が大きくなる。
【0033】
図7には、正常時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係が実線で表されており、射出スリーブ121内の潤滑剤不足による異常発生時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係が破線で表されている。射出スリーブ121の内壁面に塗布される潤滑剤の量が不足すると、射出スリーブ121とプランジャチップ126との間に働く摩擦力が大きくなるので、射出スリーブ121やプランジャチップ126の寿命が短くなる。射出スリーブ121やプランジャチップ126の寿命が短くなると、射出スリーブ121やプランジャチップ126の交換頻度が高くなるので、射出スリーブ121やプランジャチップ126の交換のための費用が多くなるだけではなく、ダイカスト製品の製造個数が少なくなる。射出スリーブ121の内壁面に塗布される潤滑剤の量が不足すると、溶湯MMと射出スリーブ121の内壁面との間で気化する油分が少なくなって、気化した油分を介さずに溶湯MMが射出スリーブ121の内壁面に接触する面積が増加し、熱電素子200の上面の温度が上昇する。そのため、射出スリーブ121の内壁面に塗布される潤滑剤の量が不足すると、射出スリーブ121の内壁面に塗布される潤滑剤の量が適切なときに比べて、熱電素子200の発生電圧Veが大きくなる。
【0034】
図8には、正常時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係が実線で表されており、射出スリーブ121内の潤滑剤過剰による異常発生時の熱電素子200の発生電圧Veと温度差との関係が破線で表されている。射出スリーブ121の内壁面に塗布される潤滑剤の量が過剰になると、気化した潤滑剤の油分が金型150内に混入して、ダイカスト製品にブローホールなどの欠陥が生じやすくなる。射出スリーブ121の内壁面に塗布される潤滑剤の量が過剰になると、溶湯MMと射出スリーブ121の内壁面との間で気化する油分が多くなって、気化した油分を介さずに溶湯MMが射出スリーブ121の内壁面に接触する面積が減少し、熱電素子200の上面の温度が低下する。そのため、射出スリーブ121の内壁面に塗布される潤滑剤の量が過剰になると、射出スリーブ121の内壁面に塗布される潤滑剤の量が適切なときに比べて、熱電素子200の発生電圧Veが小さくなる。
【0035】
以上で説明した本実施形態における異常検知システム50によれば、熱電素子200の下面の温度が冷却装置300によって一定に保たれるので、ダイカストマシン100の異常によって熱電素子200の上面の温度が変化すると、異常検知装置600によって取得される熱電素子200の発生電圧Veが変化する。そのため、射出スリーブ121の上方に計測機器を設けなくても、異常検知装置600は、射出スリーブ121の下方に配置された熱電素子200の発生電圧Veに基づいてダイカストマシン100の異常を検知できる。したがって、例えば、自動給湯機のように射出スリーブ121の周辺に設けられる装置の配置の自由度が低下することを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態では、異常検知装置600は、2つの熱電素子200の発生電圧Veのうちの少なくとも一方が第1電圧V1以上になった場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。そのため、射出スリーブ121内の潤滑剤不足によるダイカストマシン100の異常を検知できる。
【0037】
また、本実施形態では、異常検知装置600は、2つの熱電素子200の発生電圧Veのうちの少なくとも一方が第1電圧V1以上になった場合だけではなく、2つの熱電素子200の発生電圧Veのうちの少なくとも一方が第2電圧V2以下になった場合にも、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。そのため、射出スリーブ121の曲げ変形によるダイカストマシン100異常や、射出スリーブ121内の潤滑剤過剰によるダイカストマシン100の異常を検知できる。
【0038】
また、本実施形態では、異常検知装置600は、2つの熱電素子200の発生電圧Veの電圧差が基準値以上になった場合にも、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。そのため、1つの熱電素子200の発生電圧Veに基づいて射出スリーブ121の変形による異常を検知する形態に比べて精度良く射出スリーブ121の曲げ変形による異常を検知できる。
【0039】
なお、他の形態では、例えば、射出スリーブ121の下方に設置されたレーザ変位計を用いて、射出スリーブ121の変位を計測し、レーザ変位計によって計測された射出スリーブ121の変位に基づいて、射出スリーブ121の曲げ変形による異常を検知してもよい。しかしながら、この他の形態では、レーザ変位計によって射出スリーブ121の変位を計測するための消費電力がかかる。これに対して、本実施形態では、熱電素子200の発生電圧Veに基づいて、射出スリーブ121の曲げ変形による異常を検知することができるので、上述した他の形態に比べて、射出スリーブ121の曲げ変形による異常を検知するための消費電力を低減できる。
【0040】
また、他の形態では、例えば、射出スリーブ121の下部に貼付された熱電対温度計を用いて、射出スリーブ121の下部の温度を計測し、熱電対温度計によって計測された温度に基づいて、潤滑剤の過不足による射出スリーブ121の異常を検知してもよい。しかしながら、熱電対温度計では、射出スリーブ121のうちの極めて狭い領域の温度しか計測できないので、多数の熱電対温度計を用いなければ、潤滑剤の過不足を適切に判定することができない。これに対して、本実施形態では、熱電対温度計を用いる形態における熱電対温度計の数よりも少ない数の熱電素子200によって、潤滑剤の過不足を適切に判定することができる。
【0041】
B.他の実施形態:
(B1)上述した実施形態の異常検知システム50では、射出スリーブ121の下方には2つ熱電素子200が設けられている。これに対して、射出スリーブ121の下方に設けられる熱電素子200の数は、1つでもよい。
【0042】
(B2)上述した実施形態の異常検知システム50では、異常検知装置600は、複数の熱電素子200のうちの少なくとも1つの熱電素子200の発生電圧Veが第1電圧V1以上になった場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。これに対して、異常検知装置600は、複数の熱電素子200のうちの少なくとも1つの熱電素子200の発生電圧Veが第1電圧V1以上になった場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断しなくてもよい。この場合、異常検知装置600は、例えば、複数の熱電素子200のうちの少なくとも1つの熱電素子200の発生電圧Veが第2電圧V2以下になった場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。
【0043】
(B3)上述した実施形態の異常検知システム50では、異常検知装置600は、複数の熱電素子200のうちの少なくとも1つの熱電素子200の発生電圧Veが第2電圧V2以下になった場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。これに対して、異常検知装置600は、複数の熱電素子200のうちの少なくとも1つの熱電素子200の発生電圧Veが第2電圧V2以下になった場合に、射出スリーブ121に異常が生じたと判断しなくてもよい。この場合、異常検知装置600は、例えば、複数の熱電素子200のうちの少なくとも1つの熱電素子200の発生電圧Veが第1電圧V1以上になった場合に、ダイカストマシン100に異常が生じたと判断する。
【0044】
(B4)上述した実施形態の異常検知システム50では、異常検知装置600は、2つの熱電素子200の発生電圧Veの電圧差の絶対値が所定値を超えた場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断する。これに対して、異常検知装置600は、2つの熱電素子200の発生電圧Veの電圧差の絶対値が所定値を超えた場合に、ダイカストマシン100に異常が発生したと判断しなくてもよい。
【0045】
(B5)上述した実施形態の異常検知システム50では、異常検知装置600は、ダイカストマシン100に異常が発生したと判定した場合に、表示装置650を用いてダイカストマシン100の異常を報知する。これに対して、異常検知装置600に接続されたランプが設けられ、異常検知装置600は、ダイカストマシン100に異常が発生したと判定した場合に、ランプを点灯させることによって、ダイカストマシン100の異常を報知してもよい。また、異常検知装置600に接続されたブザーが設けられて、異常検知装置600は、ダイカストマシン100に異常が発生したと判定した場合に、ブザーを鳴動させることによって、ダイカストマシン100の異常を報知してもよい。
【0046】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
50…異常検知システム、100…ダイカストマシン、110…型締装置、111…固定盤、112…可動盤、115…タイバー、120…射出装置、121…射出スリーブ、122…導入口、125…射出プランジャ、126…プランジャチップ、130…押出装置、131…押出ピン、132…押出板、150…金型、151…固定型、152…可動型、200…熱電素子、210…基板、221…P型半導体、222…N型半導体、225…低温側配線、226…高温側配線、230…絶縁層、240…伝熱シート、250…カバー、260…接着剤、300…冷却装置、310…冷却ブロック、315…流路、400…固定具、410…固定バンド、420…固定ブロック、431…ボルト、432…ナット、433…スプリングワッシャ、500…潤滑剤供給装置、510…ノズル、600…異常検知装置、650…表示装置