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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128631
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】リニアガイド
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/76 20060101AFI20230907BHJP
   F16C 29/06 20060101ALI20230907BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20230907BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20230907BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
F16C29/06
F16J15/18 A
F16J15/3204 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033112
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】松本 淳
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
3J104
3J216
【Fターム(参考)】
3J006AE15
3J006AE30
3J006AE42
3J006CA01
3J043AA11
3J043CA02
3J043CB13
3J043DA20
3J043HA01
3J104AA03
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA62
3J104CA02
3J104CA03
3J104CA06
3J104CA13
3J104DA04
3J104EA01
3J104EA04
3J216AA12
3J216AA16
3J216AB23
3J216BA30
3J216CC03
3J216CC14
3J216CC33
3J216DA01
3J216DA02
3J216DA11
3J216DA12
(57)【要約】
【課題】スライダ底面と機台の空間を塞ぎ異物の堆積を防止でき、また、スライダ底面と機台との空間の高さが変化しても、高さ調整手段によって、そのような空間を塞ぐ状態を保てるリニアガイドを提供する。
【解決手段】本発明のリニアガイド1の防塵ユニット30は、スライダ20の長手方向の両端部の少なくとも一方の正面側下方に取り付けられる略正方形状の正面板31と、スライダ20の長手方向の少なくとも一方の側面側下方に取付けられる略矩形状の側面板と、機台2に対して、正面板31と側面板32をスライダ20の長手方向と直交方向の高さを調整可能な高さ調整手段33と、正面板31と側面板32は、機台2とスライド部材20との隙間をシールするシール手段と、から構成される防塵ユニットを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台の上面に設置されて一方向に延びる案内レールと、
前記案内レールに複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダと、を備えるリニアガイドであって、
前記スライダには、
前記スライダの長手方向の両端部の少なくとも一方の正面側下方に取り付けられる略正方形状の正面板と、
前記スライダの長手方向の少なくとも一方の側面側下方に取付けられる略矩形状の側面板と、
前記機台に対して前記正面板と前記側面板を前記スライダの長手方向と直交方向の高さを調整可能な高さ調整手段と、
前記正面板と前記側面板は、前記機台と前記スライド部材との隙間をシールするシール手段と、から構成される防塵ユニットを備えることを特徴とするリニアガイド。
【請求項2】
前記シール手段は、前記機台に接触し弾性変形可能なリップを有することを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド。
【請求項3】
前記シール手段は、前記機台に当接せず機台との隙間を有することを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド。
【請求項4】
前記正面板と前記側面板とは、一体の部材であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のリニアガイド。
【請求項5】
前記高さ調整手段は、前記正面板または前記側面板の少なくとも一方に設けられ、前記正面板または前記側面板の側辺と平行して延びる長穴を介して高さ調整され、前記スライダに設けられた固定ねじ穴に固定ねじで螺合し、前記スライダに防塵ユニットが固定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のリニアガイド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械などの生産設備に用いられるリニアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に工作機械などの生産設備では、切屑やクーラントなどの異物が、リニアガイドにふりかかる可能性がある。リニアガイドのスライダ内部に、異物が入り込むと、転動体の循環が阻害されて、リニアガイドの損傷のおそれがある。例えば、図19に示すように、機台2の上面2aに設置された案内レール10と、案内レール10を跨いでこの案内レール10の長手方向に沿って相対移動自在に組み付けられたスライダ20とを備えたリニアガイド1において、スライダ底面20a、20bと機台2の上面2a,2bとの空間(隙間)に堆積する。特に、機台2のいわゆる肩高さが左右の上面2a,2bで異なると肩高さが低い側の空間(隙間)に多くの異物が堆積するので問題となる。
すなわち、図19において、機台2の肩高さが左の上面2bよりも右の上面2aの方がDだけ高くなっていることから、左側のスライダ底面20bと機台2の上面2bの空間(隙間)の方が多くの異物が侵入し堆積するため、リニアガイドにおける防塵対策が重要である。
【0003】
このような防塵に関する特許文献1は、スライダ底面に設置されるアンダーシールが示されている。このアンダーシールは、スライダとレール間の隙間から異物が入ることを防ぐことできる。
しかし、当該特許文献1の発明には、リニアガイドを正面(直動方向)から見たとき、スライダ底面と、レールが固定される機台の間には、空間がある。異物の量が多いと、この空間に異物が溜まる場合がある。そして、異物が多量に溜まると、アンダーシールを押しのけて、スライダ内に異物が入るおそれがある問題が残る。
【0004】
そこで、さらにこの問題を解決するために、特許文献2と3は、スライダ底面と機台の空間を狭めたリニアガイドが示されている。この特許文献2では、スライダ正面に設けたスカートで、当該の空間を狭めている。また、この特許文献3は、スライダ本体の高さを適切に設定することで、当該の空間を狭めている。これらの発明は、スライダ底面と機台の空間が狭まり、異物の堆積を防げるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2000-018244号公報
【特許文献2】特開第2006-307924号公報
【特許文献3】特開第2008-121785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2と特許文献3であっても、スライダ底面と機台の空間の高さは、機台の設計によって異なる。すなわち、先の図19で示したように、案内レールを固定するときの基準となるいわゆる「肩」の高さが異なると、スライダ底面と機台の空間の高さが変わる。そして、特許文献2、特許文献3とも、スライダ底面と機台の空間の高さが変化すると、部品の変更または追加工が必要となる。すなわち、設計が異なる機台には柔軟に対応できない課題がある。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、スライダ底面と機台の空間を塞ぎ異物の堆積をシール手段によって防止でき、また、スライダ底面と機台との空間の高さが変化しても、高さ調整手段によって、そのような空間を塞ぐ状態を保てるリニアガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上記の目的を達成するために、機台の上面に設置されて一方向に延びる案内レールと、
前記案内レールに複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダと、を備えるリニアガイドであって、
前記スライダには、
前記スライダの長手方向の両端部の少なくとも一方の正面側下方に取り付けられる略正方形状の正面板と、
前記スライダの長手方向の少なくとも一方の側面側下方に取付けられる略矩形状の側面板と、
前記機台に対して前記正面板と前記側面板を前記スライダの長手方向と直交方向の高さ調整可能な高さ調整手段と、
前記正面板と前記側面板は、前記機台と前記スライド部材との隙間をシールするシール手段と、で構成される防塵ユニットを備えることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記シール手段は、前記機台に接触し弾性変形可能なリップを有することを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明において、前記シール手段は、前記機台に当接せず機台との隙間を有することを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記正面板と前記側面板とは、一体の部材であることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかにおいて、前記高さ調整手段は、前記正面板または前記側面板の少なくとも一方に設けられ、前記正面板または前記側面板の側辺と平行して延びる長穴を介して高さ調整され、前記スライダに設けられた固定ねじ穴に固定ねじで螺合し、前記スライダに防塵ユニットが固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スライダ底面と機台の空間を塞ぎ異物の堆積をシール手段によって防止でき、また、スライダ底面と機台との空間の高さが変化しても、高さ調整手段によって、そのような空間を塞ぐ状態を保てるリニアガイドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のリニアガイドを上側からみた斜視図である。
図2】本発明の実施形態のリニアガイドを下側からみた斜視図である。
図3】本発明の実施形態のリニアガイドから防塵ユニットを分解して上側からみた斜視図である。
図4】本発明の実施形態の防塵ユニットの平面視略断面図である。
図5】(a)は本発明の実施形態の防塵ユニットを上側からみた斜視図で、(b)は本発明の実施形態の防塵ユニットを下側からみた斜視図である。
図6】本発明の実施形態のリニアガイドの長手方向両端からみた正面図である。
図7】本発明の実施形態のリニアガイドの長手方向からみた側面図である。
図8】本発明の実施形態の変形例1の防塵ユニットの平面視略断面図である。
図9】本発明の実施形態の変形例2のリニアガイドの長手方向両端からみた正面図である。
図10】本発明の実施形態の変形例2のリニアガイドの長手方向からみた側面図である。
図11】本発明の実施形態の変形例3のリニアガイドの上からみた斜視図である。
図12】本発明の実施形態の変形例3のリニアガイドの長手方向からみた側面図である。
図13】本発明の実施形態の変形例4のリニアガイドの上からみた斜視図である。
図14】本発明の実施形態の変形例4のリニアガイドから防塵ユニットを分解して上側からみた斜視図である。
図15】本発明の実施形態の変形例4のリニアガイドの長手方向からみた側面図である。
図16】本発明の実施形態の変形例4のリニアガイドの長手方向両端からみた片側部分の正面図である。
図17】本発明の実施形態の変形例5のリニアガイドから防塵ユニットを分解して上側からみた斜視図である。
図18】本発明の実施形態の変形例5のリニアガイドの長手方向からみた側面図である。
図19】従来技術のリニアガイドの長手方向両端からみた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明のリニアガイド1は、図1および図2に示すように、一方向に延びる案内レール10と、この案内レール10に図示しない複数の転動体を介してスライドし相対移動可能に跨設されるスライダ20と、防塵ユニット30を備えている。この防塵ユニット30は、スライダ20の長手方向の両端部の少なくとも一方の正面側下方に取り付けられる正面板31と、スライダ20の長手方向の少なくとも一方の側面側下方に取付けられる略矩形状の側面板32と、機台2に対して正面板31と側面板32をスライダ20の長手方向と直交方向(スライダ20の上下方向)の高さを調整可能な高さ調整手段33と、から構成されている。また、案内レール10は、図6図9に示すように機台2の上面に設置されている。以下、当該構成について詳細に説明する。
【0012】
案内レール10は、図1に示すように、両端の外側面に、長手方向(軸方向)に沿って延びた転動体転動面10a,10aが2つずつ形成されている。
【0013】
スライダ20は、スライダ本体21と、その長手方向両端部の前後面に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ22とで構成されている。
スライダ本体21は、図2に示すように、案内レール10の長手方向に沿って、案内レール10の移動方向の両端の開口部が略コ字状に形成され、案内レール10上に跨架されている。また、スライダ20には、長手方向に沿った左右両側に袖部を有し、その内側面には、スライダ側軌道面(転動体転動溝)21a,21aが案内レール1の転動体転動面10a,10aに相対向して長手方向に沿って2つずつ形成されている。
【0014】
そして、案内レール10の転動体転動面10aとスライダ20の転動体転動溝21aとの間に転動体列(例えば、4列)のローラ(図示しない)が転動自在に装填される。これらのローラの転動を介してスライダ20が案内レール10上を長手方向に沿って相対移動にスライドされる。
【0015】
エンドキャップ22は、スライダ本体21と同じく開口部が略コ字状に形成され、スライダ本体21の長手方向の両端部に固定するための固定ねじ穴と固定ねじからなる固定手段22bを有し、固定手段22bを通してスライダ本体21に固定される。そして、スライダ本体21の内形状に沿って案内レール10が移動可能とする溝22a、22aが相対向して形成されている。
【0016】
図3は、スライダ20から防塵ユニット30を外した分解図で、スライド20(スライダ本体21とエンドキャップ22)と、防護ユニット30(正面板31、側面板32)とスライダ20に防塵ユニット30が取り付けられる固定ねじ34が図示されている。
さらに、防塵ユニット30は、スライダ20の長手方向の両端部に取り付けられる正面板31(31a、31b)と、スライダ20の長手方向の両端に沿って両袖の側外面に取り付けられる側面板32(32a、32b)と、スライダ底面20a(図2参照)と機台2との空間の高さを調整可能な高さ調整手段33(33a、33b)とで構成される。
【0017】
正面板31(31a、31b)は、略正方形状に形成され、一辺の長さはスライダ本体21の長手方向の幅の略半分以下と短く形成されている。また、高さ調整手段33(33a、33b)用の固定ねじ34、34を通す長穴31c、31dが正面板31(31a、31b)に設けられている。
この固定ねじ34は、スライダ本体21に形成されている固定ねじ穴(図示しない、以下同じ)に、スクリュードライバなどで差込むように頭部の駆動部分は十字(プラス)穴(またはマイナス穴)が切欠かれているなべ頭を用いている(図6参照)。また、長穴31c、31dは、固定ねじ34のねじ部の呼び径よりも大きく頭部の径よりも小さくした範囲で、案内レール10側のスライダ20の開口部寄りで、側面板32(32a、32b)の側辺と平行して縦長に穴抜き加工されている。
【0018】
側面板32(32a、32b)は、長手方向の横長の略矩形状に形成され、その長さは、スライダ本体21の全長とエンドキャップ20が2つを合計した長さと略等しく形成されている。また、側面板32(32a、32b)の側辺(短辺)の長さは、正面板31の略正方形の側辺と等しく、かつ、スライダ本体21の長手方向の側面上下幅の略半分以下と短く形成されている。
【0019】
このような正面板31(31a、31b)および側面板32(32a、32b)は、一体の同一部材で厚さが略均一の鋼板から形成され、スライダ20(エンドキャップ22を含む)の長手方向両端部の前後面および短手方向両端の側面20a,20bのそれぞれ下部分を覆うよう断面視略コ字状の平板状の部材である。
【0020】
防塵ユニット30の正面板31および側面板32は、金属材料を用い、板金加工・切削加工・金属射出成形などの加工方法で製作される。これらの加工方法のいずれかで成形後、両端を略L字形状に折り曲げ、略コ字形状にすることで形成される。なお、材質としては、鋼、アルミ、真鍮、ステンレス鋼材、硬質樹脂でもよい。
【0021】
さらに、図3図4および図5を用いて説明をする。図5の(a)は防塵ユニット30の片側、例えば、図面において左側の正面板31bおよび側面板32bを上側からみた斜視図で、(b)は底面からみた斜視図である。これらの図に示されるように、防塵のための正面板31のシール手段35は、正面板31(31a、31b)の案内レール10と対向する側辺と機台2と対向する底辺の2箇所に、および側面板32のシール手段36は、側面板32(32a,b)の機台と対向する底辺の1箇所に設けられ、一つのシール部材が略コ字形状に折り曲げられる部分を山として、側辺と底辺で帯状のリップを形成している。
具体的には、正面板31(31a、31b)の案内レール10と対向する側辺には側面リップ35a、35bが設けられて案内レール10と当接するともに、正面板31(31a、31b)の機台2と対向する底辺には、底面リップ35c、35dが設けられており機台2と当接する。また、側面板32(32a、32b)の機台2と対向する底辺には、底面リップ36a、36bが設けられており機台2と当接する。本実施形態では、これらの底面リップ35cと底面リップ36a、底面リップ35dと底面リップ36bはそれぞれ継ぎ目のない一連のリップである。
【0022】
このように、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a、32b)のリップが案内レール10と機台2と対向する部分だけ帯状に成形としているは、シール手段と関係ない正面板31と側面板32の領域までリップで覆う必要ないからである。
【0023】
また、図4の正面板31a、31bの部分拡大図の円内に示すように、側面リップ35a、35bとの内側のリップ肉厚d1と外側のリップ肉厚d2は、内側肉厚d1が薄く外側肉厚d2が厚くなっている。底面リップ36a、36bでも同様に形成されている。これは、防塵の影響は外側から受けるためシール強度を内側よりもより強くするためである。
また、側面リップ35a、35bと底面リップ35c、35dの先端が略コ字形状に折り曲げられ山形状(円弧)に盛り上がって側面部分よりも肉厚としている。これにより、案内レール10と機台2との当接の際により密着性を持たせシール機能を十分に発揮させるためである。
【0024】
すなわち、シール手段35、36の側面リップと35a、35bと底面リップ35c、35d、および底面リップ36a、36bは、弾性変形された状態で、案内レール10および機台2に当接して隙間が無くなるので防塵効果が高い効果を奏する。特に、底面リップ36a、36bによって、側面方向からの異物の侵入が防げる。
【0025】
シール手段35、36(リップ)は、略コ字形状に折り曲げ可能で弾性材力を有する軟質プラスチック、エラストマー、ゴム材料で製作される。防塵ユニット本体に一体インサート成形、または別個に製作されて接着などの接合方法で一体化される。
例えば、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a、32b)とシール手段35、36(リップ)との接着は、接着剤のみで固定しても良いし、インサート成形あるいは接着剤とインサート成形の併用のいずれでも良い。
【0026】
次に、高さ調整手段33(33a、33b)は、正面板31(31a、31b)または側面板32(32a、32b)の少なくとも一方に設けられ、正面板31(31a、31b)または側面板32(32a、32b)の側辺と平行に延びる長穴を介して高さ調整され、スライダ20に設けられた固定ねじ穴に固定ねじ34、34で螺合し、スライダ20に防塵ユニット30が固定される。
図6は、機台2に設置されたリニアガイド1の案内レール10の長手方向の両端の正面図で、図7は、機台2に設置されたリニアガイド1の案内レール10の長手方向片側の側面図である。図6および図7に示されるように、スライダ20に設けられた固定ねじ穴、正面板31a、31bのスライダ20取付穴用の長穴31c,31dと固定ねじ34、34によって構成される。
【0027】
また、エンドキャップ22に固定ねじ34を厚さ方向に貫通させる通し穴(図示しない)が形成されている。このエンドキャップ22の通し穴(図示しない)を貫通した固定ねじ34、34がスライダ20に設けられた固定ねじ穴に螺合され、ねじ止め固定される。
【0028】
高さ調整手段33(33a、33b)の高さ調整手順としては、次のとおりである。図6および図7において、案内レール10の正面視右側面をいわゆる肩に押し当てることで、案内レール10を機台2にまっすぐに固定する。この図6では、案内レール10の左側面には機台2の肩がないので、スライダ20の底面20a(図2参照)から機台2までの空間の高さが図面の左側と右側で異なる。つまり、機台2に設置される案内レール10上の左袖のスライダ20側の機台2の上面2a1に比べて、機台2に設置される案内レール10上の右袖のスライダ20側の機台2の上面2a2に比べてレール固定基準である肩高さHだけ高い位置にある。
【0029】
防塵ユニット30をスライダ20に取り付ける取付穴用の長穴31c,31dは、案内レール10側のスライダ20の開口部寄りで、側面板32(32a、32b)の側辺と平行して縦長に形成されている。これにより、スライダ底面20aと機台2の上面との空間(隙間)の高さが変化しても、長穴である取付穴31c、31dの所定の長さ範囲内で、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a、32b)がスライド移動され調整可能である。
【0030】
図6では、取付穴用の長穴31cの固定ねじ34の位置を肩高さHだけ高い位置にある距離分だけ下げていることが分かる。機台2の上面2a1と正面板31b/側面板32bとの隙間が無いように高さ調整され(長穴31dの上端部分に移動)、また、機台2の片高さの上面2a2と正面板31a、側面板32aとの隙間が無いように高さを調整され(長穴31cの中央部分に移動)、スライダ20に固定ねじ34,34でねじ止めして固定される。
【0031】
このように、レール固定基準である肩高さHが変化しても、正面板31(31a、31b)/側面板32(32a、32b)の高さ位置を調整することで(矢印S1,S2で示す、図6参照))、スライダ底面20a,20bと機台2の上面2a1,2a2との空間をシール手段36である底面リップ35c、35d/底面リップ36a,36bが弾性変形した状態で機台2に接触し隙間がないので、防塵効果が高い。これにより、スライダ底面20a、20bと機台2の上面2a1,2a2との空間を適切に塞ぎ異物がリニアガイド1に堆積することを防げる。
【0032】
〔防塵ユニットの変形例1〕
今までの図3に示す実施形態は、正面板31(31a、31b)および側面板32(32a、32b)は、同一部材で形成され、スライダ20(エンドキャップ22を含む)の長手方向両端部の前後面および短手方向両端の側面20a,20bのそれぞれ下部分を覆うよう断面視略コ字状の平板状の部材である。そして、防塵のためのシール手段35、36として、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a,32b)の下側の縁の部分には、一枚のシール手段が略コ字形状に折り曲げられるようにして、正面板31(31a、31b)に側面リップ35a、35b/底面リップ35c、35d、側面板32(32a、32b)に底面リップ36a、36bが設けられる。
【0033】
これに対して、防塵ユニット30の変形例1の実施形態では、図8の平面視略断面図で示すように、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a,32b)をそれぞれ別部材で構成し、ねじ37,37で一体化してもよい。また、ねじ締結以外の溶接或いは接着などの各種接合方法で一体化してもよい。この変形例1の場合、正面板31(31a、31b)と側面板32(32a、32b)が別部材であることから、底面リップ35c、35dと底面リップ36a、36bも別部材として機台2と当接する。
【0034】
正面板31(31a、31b)と側面板32(32a、32b)が別部材となることで、一体の部材で製作する場合と比べて、スライダ長さを変更したい場合に、側面板32(32a、32b)だけを作り直せばよい利点がある。
【0035】
なお、今までの実施形態と同じく、この変形例1の実施形態では、正面板31(31a、31b)と側面板32(32a、32b)においても、スライダ20に固定ねじ34,34で取り付けられ、スライダ底面20aと機台2との空間の高さが調整される。
【0036】
〔防塵ユニットの変形例2〕
今までの図3に示すよう実施形態は、正面板31(31a、31b)および側面板32(32a、32b)は、同一部材で形成され、スライダ20(エンドキャップ22を含む)の長手方向両端部の前後面および短手方向両端の側面20a,20bのそれぞれ下部分を覆うよう断面視略コ字状の平板状の部材である。そして、防塵のためのシール手段35、36として、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a,32b)の下側の縁の部分には、一枚のシール手段が略コ字形状に折り曲げられるようにして、正面板31(31a、31b)に側面リップ35a、35b/底面リップ35c、35d、側面板32(32a、32b)に底面リップ36a、36bが設けられる。
【0037】
これに対して、防塵ユニットの変形例2の実施形態では、図9および図10に示されるように、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a,32b)は同一部材で構成されている点で変わりはないが、正面板31(31a、31b)に側面リップ35a、35b/底面リップ35c、35d、側面板32(32a、32b)に底面リップ36a、36bのシール手段が無い。
【0038】
また、図9において、機台2の上面2a1と正面板31b/側面板32bとの隙間(符号Hbで示す)に高さ調整され(長穴31dの上端部分に移動)、また、機台2の片高さの上面2a2と正面板31a、側面板32aとの隙間(符号Haで示す)に高さを調整され(長穴31cの中央部分に移動)、スライダ20に固定ねじ34,34でねじ止めして固定される。
【0039】
本実施形態では、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a,32b)と機台2との隙間Ha,Hbを、小さな隙間(例えば、0.05~0.5mm程度)とすることで、これにより大きな異物の侵入を防ぐシール手段が可能とされる。かつ、機台2の上面と正面板/側面板とは非接触となるのでこれら部材間の摩耗のおそれがない利点がある。
【0040】
〔防塵ユニットの変形例3〕
今までの図3に示すよう実施形態は、正面板31(31a、31b)および側面板32(32a、32b)は、同一部材で形成され、スライダ20(エンドキャップ22を含む)の長手方向両端部の前後面および短手方向両端の側面20a,20bのそれぞれ下部分を覆うよう断面視略コ字状の平板状の部材である。そして、防塵のためのシール手段35、36として、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a,32b)の下側の縁の部分には、一枚のシール手段が略コ字形状に折り曲げられるようにして、正面板31(31a、31b)に側面リップ35a、35b/底面リップ35c、35d、側面板32(32a、32b)に底面リップ36a、36bが設けられる。
【0041】
これに対して、防塵ユニット30の変形例3の実施形態では、図11および図12に示すように、正面板31(31a、31b)のみで構成され、側面板32(32a,32b)を持っていない。この変形例3の場合、正面板31(31a、31b)における側面リップ35a、35bと底面リップ36a、36bのみが機台2の上面2aと当接する。
【0042】
なお、今までの実施形態と同じく、この変形例3の正面板31(31a、31b)においても、スライダ20に固定ねじ34,34で取り付けられ、スライダ底面20aと機台2との空間の高さを調整される。
【0043】
本実施形態において、正面板31(31a、31b)部分の構成は変形前の実施形態と同じで、同様の作用効果を得られる。特に、正面板31(31a、31b)の下面が機台2の上面2aと接して、スライダ20と機台2の空間の異物の堆積を防ぐ。さらにまた、スライダ2の正面方向(前後方向)から異物が降りかかる場合に有効である。
側面方向からの異物の侵入の防止効果は、変形前の実施形態に比べて劣る場合があっても、部品点数が少なく、スライダ長さによらず同一部品を使用できる利点がある。
また、正面板31(31a、31b)の下面が機台2の上面2aと接して、スライダ20と機台2の空間の異物の堆積を防ぐ。特に、スライダ20の正面方向(前後方向)から異物が降りかかる場合に有効である。
【0044】
〔防塵ユニットの変形例5〕
今までの図3に示すよう実施形態は、正面板31(31a、31b)および側面板32(32a、32b)は、同一部材で形成され、スライダ20(エンドキャップ22を含む)の長手方向両端部の前後面および短手方向両端の側面20a,20bのそれぞれ下部分を覆うよう断面視略コ字状の平板状の部材である。そして、防塵のためのシール手段35、36として、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a,32b)の下側の縁の部分には、一枚のシール手段が略コ字形状に折り曲げられるようにして、正面板31(31a、31b)に側面リップ35a、35b/底面リップ35c、35d、側面板32(32a、32b)に底面リップ36a、36bが設けられる。
【0045】
これに対して、防塵ユニット30の変形例5の実施形態では、図13および図14に示すように、側面板32(32a,32b)のみで構成され、正面板31(31a、31b)を持っていないので、底面リップ36aのみが機台2の上面2aと当接する。
【0046】
今までの実施形態における高さ調整手段30(30a、30b)は、正面板31(31a、31b)において、スライダ20に固定ねじ34,34で取り付けられ、スライダ底面20aと機台2との空間の高さが調整されているが、本変形例5では側面板32(32a,32b)に高さ調整手段40(40a、40b)が構成される。
【0047】
具体的には、図13図14図15図16に示すように、高さ調整手段40(40a、40b)は、スライダ20の固定ねじ穴41、41、防塵ユニット30の取付穴用の側面板32(32a,32b)の側辺に平行して延びる長穴42、42、固定ねじ43、43によって構成され、側面板32(32a,32b)は、固定ねじ43,43が長穴42、42を介してスライダ20の固定ねじ穴41、41に螺合してねじ止め固定される。
したがって、この高さ調整手段40(40a、40b)によって、防塵ユニット30の側面板32(32a,32b)の位置は、スライダ20の長手方向と直交方向(スライダ20の上下方向)に調整可能で、機台2の肩高さが変化しても、防塵ユニット30の高さ位置を調整することで、スライダ底面20aと機台2との空間を適切に覆うことができる。
【0048】
このことは、図16から分かるように、側面板32aの下面である底面リップ36aが機台2の上面2aと当接して、スライダ20と機台2の空間の異物の堆積を防ぐ。特に、側面方向から異物が降りかかる場合に有効である。正面方向からの異物の侵入の防止効果が変形前の実施形態に比べて劣るといえるが、部品点数が少なく製造コスト面での利点がある。
【0049】
〔防塵ユニットの変形例6〕
今までの図3に示すよう実施形態は、正面板31(31a、31b)および側面板32(32a、32b)は、同一部材で形成され、スライダ20(エンドキャップ22を含む)の長手方向両端部の前後面および短手方向両端の側面20a,20bのそれぞれ下部分を覆うよう断面視略コ字状の平板状の部材である。そして、防塵のためのシール手段35、36として、正面板31(31a、31b)のおよび側面板32(32a,32b)の下側の縁の部分には、一枚のシール手段が略コ字形状に折り曲げられるようにして、正面板31(31a、31b)に側面リップ35a、35b/底面リップ35c、35d、側面板32(32a、32b)に底面リップ36a、36bが設けられる。
【0050】
これに対して、本実施形態は、図17および図18に示す変形例3の実施形態の図11の正面板31(31a、31b)と、変形例5の実施形態の図13の側面板32(32a,32b)を組み合わせた変形例6である。すなわち、変形例3の実施形態では、正面板31(31a、31b)における側面リップ35a、35bと底面リップ36a、36bのみが機台2の上面2aと当接し、また、側面板32(32a,32b)の底面リップ36aのみが機台2の上面2aとが個別に当接する。
【0051】
また、高さ調整手段30(30a、30b)において、正面板31(31a、31b)が、スライダ20に固定ねじ34,34で取り付けられ、スライダ底面20aと機台2との空間の高さを調整されるとともに、高さ調整手段40(40a、40b)において、側面板32(32a,32b)が、スライダ20の固定ねじ穴41、41で取り付けられ、スライダ底面20aと機台2との隙間空間の高さが調整される。
【0052】
また、本実施形態では、正面板31a,31bを4枚、側面板32a、32bを2枚用いている。しかし、異物のふりかかる方向に応じて、必要な箇所にだけ、正面板または側面板を取り付けるようにしてもよい。このようにすれば、部品数を最小限に減らして、かつ、効果的な防塵能力を得られる。
【符号の説明】
【0053】
1 リニアガイド
2 機台
2a、2a1、2a、2a2、2b 上面(機台)
10 案内レール
10a 転動体転動面
20 スライダ
20a スライダ底面
21 スライダ本体
21a スライダ側軌道面(転動体転動溝)
22 エンドキャップ
22a 溝
22b 固定手段
30 防塵ユニット
31 、31a,31b 正面板
31c、31d 長穴
32、32a、32b 側面板
33、33a、33b 高さ調整手段
34 固定ねじ
35 シール手段(正面板)
35a、35b 側面リップ(正面板)
35c、35d 底面リップ(正面板)
36 シール手段(側面板)
36a、36b 底面リップ(側面板)
37 ねじ
40、40a、40b、高さ調整手段
41 固定ねじ
D 、H 肩高さ
d1、d2 リップ肉厚
S1、S2 高さ調整の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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