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  • 特開-ポンプ装置 図1
  • 特開-ポンプ装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128685
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
F04C2/10 341F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033211
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕
(72)【発明者】
【氏名】海野 圭祐
【テーマコード(参考)】
3H041
【Fターム(参考)】
3H041BB03
3H041CC13
3H041CC15
3H041CC17
3H041DD01
3H041DD07
3H041DD17
3H041DD18
3H041DD38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数のポンプ機構における各吐出ポートを駆動軸の径方向で同一方向に配置する用途に良好に適用し得るポンプ装置を提供する。
【解決手段】駆動軸8には軸方向へ間隙を有して複数の外歯歯車2E~5Eを回転方向に係合する。ポンプ本体1には各外歯歯車2E~5Eに対応して駆動軸8の径方向一方側に流体を吸入する吸入ポート2H1~5H1を形成すると共に、各吸入ポート2H1~5H1と駆動軸8を介して径方向に対向して流体を吐出する吐出ポート2L1~5L1を駆動軸8の径方向他方側に形成する。駆動軸8は軸方向に間隙を有して配置した二つの軸受9、10で軸支する。各外歯歯車2E~5Eは両軸受9、10の間に配置した外歯歯車2E、3E、4Eと一方の軸受9より駆動軸8の端部側に配置した外歯歯車5Eとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の駆動軸で複数のポンプ機構を回転駆動するポンプ装置において、ポンプ本体へ駆動軸を回転自在に軸支し、駆動軸には軸方向へ間隙を有して複数のポンプ機構における回転体を回転方向に係合し、ポンプ本体には各ポンプ回転体に対応して駆動軸の径方向一方側に流体を吸入する吸入ポートを形成すると共に、各吸入ポートと駆動軸を介して径方向に対向して流体を吐出する吐出ポートを駆動軸の径方向他方側に形成し、駆動軸は軸方向に間隙を有して配置した二つの軸受で軸支し、各ポンプ回転体は両軸受の間に配置したポンプ回転体と、一方の軸受より駆動軸の端部側に配置したポンプ回転体としたことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記両軸受の間には複数のポンプ回転体を配置し、前記一方の軸受より前記駆動軸の端部側には一つのポンプ回転体を配置したことを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の駆動軸で複数のポンプ機構を回転駆動するポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のポンプ装置は、ポンプ本体に単一の駆動軸を軸受で軸支し、駆動軸に軸方向へ間隙を有してポンプ回転体としての外歯歯車(インナロータ)を連結して回転方向に係合し、各外歯歯車の外歯に噛合う内歯を備える内歯歯車(アウタロータ)を各外歯歯車と偏心配置して複数の内接歯車ポンプ機構を構成し、各ポンプ機構には流体を吸入する吸入ポートと、流体を吐出する吐出ポートを形成している。駆動軸で各外歯歯車を回転駆動すると、各内歯歯車が回転され、吸入ポートより吸入して外歯と内歯との間に搬送した流体を、吐出ポートより吐出する。そして、各ポンプ機構の吐出ポートを駆動軸の径方向へ異なる位置に配置し、吐出ポートから吐出する流体の圧力に基づく作用力を駆動軸に異なる方向から作用させ、駆動軸に対して特定の方向に曲げ作用力が作用しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-85377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来のポンプ装置では、複数のポンプ機構における各吐出ポートを駆動軸の径方向へ異なる位置に配置しているため、各吐出ポートを駆動軸の径方向で同一方向に配置しなければならない用途には、良好に適用できない問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、複数のポンプ機構における各吐出ポートを駆動軸の径方向で同一方向に配置する用途に良好に適用し得るポンプ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
単一の駆動軸で複数のポンプ機構を回転駆動するポンプ装置において、ポンプ本体へ駆動軸を回転自在に軸支し、駆動軸には軸方向へ間隙を有して複数のポンプ機構における回転体を回転方向に係合し、ポンプ本体には各ポンプ回転体に対応して駆動軸の径方向一方側に流体を吸入する吸入ポートを形成すると共に、各吸入ポートと駆動軸を介して径方向に対向して流体を吐出する吐出ポートを駆動軸の径方向他方側に形成し、駆動軸は軸方向に間隙を有して配置した二つの軸受で軸支し、各ポンプ回転体は両軸受の間に配置したポンプ回転体と、一方の軸受より駆動軸の端部側に配置したポンプ回転体としたことを特徴とするポンプ装置がそれである。
【0007】
この場合、前記両軸受の間には複数のポンプ回転体を配置し、前記一方の軸受より前記駆動軸の端部側には一つのポンプ回転体を配置してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、ポンプ本体には各ポンプ回転体に対応して駆動軸の径方向一方側に流体を吸入する吸入ポートを形成すると共に、各吸入ポートと駆動軸を介して径方向に対向して流体を吐出する吐出ポートを駆動軸の径方向他方側に形成し、駆動軸は軸方向に間隙を有して配置した二つの軸受で軸支し、各ポンプ回転体は両軸受の間に配置したポンプ回転体と、一方の軸受より駆動軸の端部側に配置したポンプ回転体とした。このため、両軸受の間に配置したポンプ回転体における吐出ポートの流体の圧力に基づく作用力と一方の軸受より駆動軸の端部側に配置したポンプ回転体における吐出ポートの流体の圧力に基づく作用力とは、一方の軸受を支点として駆動軸に対向する方向に作用するから、駆動軸が特定の方向に曲げ作用することなくでき、複数のポンプ機構における各吐出ポートを駆動軸の径方向で同一方向に配置する用途に良好に適用することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、両軸受の間には複数のポンプ回転体を配置し、一方の軸受より駆動軸の端部側には一つのポンプ回転体を配置した。このため、一方の軸受より駆動軸の端部までの長さ寸法を一つのポンプ回転体を配置する短い寸法にできるから、一方の軸受より駆動軸の端部側を一方の軸受で良好に軸支することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示したポンプ装置の縦断面図である。
図2図1の線A-Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2において、ポンプ装置は、第1ポンプ機構2と第2ポンプ機構3と第3ポンプ機構4と第4ポンプ機構5との4つのポンプ機構2~5を備えている。各ポンプ機構2~5は内接歯車ポンプ機構で、それぞれ直方体形状の第1ハウジング2A、第2ハウジング3A、第3ハウジング4A、第4ハウジング5Aを有している。ポンプ装置のポンプ本体1は、各ハウジング2A~5Aを連設して後端に蓋部材6を配置し、各ハウジング2A~5Aと蓋部材6を複数のボルト部材7で締結して構成している。
【0012】
8は各ポンプ機構2~5を回転駆動する単一の駆動軸で、各ハウジング2A~5Aを貫通して先端を第1ハウジング2Aより突出すると共に、後端を蓋部材6で覆っている。駆動軸8は二つの軸受9、10でポンプ本体1へ回転自在に軸支している。一方の軸受9は第4ハウジング5Aに配置した円筒ころ軸受である。他方の軸受10は第1ハウジング2Aに配置した玉軸受である。2Bは第1内歯歯車、3Bは第2内歯歯車、4Bは第3内歯歯車、5Bは第4内歯歯車で、それぞれ第1ハウジング2A~第4ハウジング5Aに穿設した収装孔2C、3C、4C、5Cへ回転自在に収装している。各内歯歯車2B~5Bは径方向内方に突出して5個の内歯2Dを有している。11は駆動軸8を軸封するシール部材で、軸受10の軸方向外方に隣接して第1ハウジング2Aに配設している。
【0013】
第1ハウジング2Aに穿設する収装孔2Cの一端開口は連設する第2ハウジング3Aで閉塞する。同様に、第2ハウジング3Aに穿設する収装孔3Cの一端開口は連設する第3ハウジング4Aで閉塞し、第3ハウジング4Aに穿設する収装孔4Cの一端開口は連設する第4ハウジング5Aで閉塞し、第4ハウジング5Aに穿設する収装孔5Cの一端開口は蓋部材6で閉塞する。
【0014】
2Eは第1外歯歯車、3Eは第2外歯歯車、4Eは第3外歯歯車、5Eは第4外歯歯車で、ポンプ回転体としてそれぞれ各収装孔2C~5Cへ各内歯歯車2B~5Bと偏心して配置し、各内歯歯車2B~5Bの内歯2Dと噛合う4個の外歯2Fを有している。各外歯歯車2E~5Eは、駆動軸8の軸方向に間隙を有して配置し、キー2G、3G、4G、5Gにより駆動軸8と回転方向に係合している。そして、第1外歯歯車2E、第2外歯歯車3E、第3外歯歯車4Eの3個は両軸受9、10の間に配置している。また、第4外歯歯車5Eの1個は一方の軸受9より蓋部材6側となる駆動軸8の端部側に配置している。各ポンプ機構2~5は、各内歯歯車2B~5Bの内歯2Dと各外歯歯車2E~5Eの外歯2Fとでポンプ室Pを区画形成し、各ポンプ室Pは両歯車2B~5B、2E~5Eの回転により膨張域空間では容積が増加すると共に、収縮域空間では容積が減少する。
【0015】
ポンプ本体1を構成する第1ハウジング2Aには、駆動軸8の径方向一方側で収装孔2Cの底面に流体を吸入する吸入ポート2H1を開口形成し、吸入ポート2H1はポンプ室Pの膨張域空間に連通している。また、収装孔2Cの一端開口を閉塞する第2ハウジング3Aの閉側面には流体を吸入する吸入ポート2H2を開口形成している。吸入ポート2H2はポンプ室Pの膨張域空間に連通し、両歯車2B、2Eを介して吸入ポート2H1と軸方向に対向配置している。吸入ポート2H1と吸入ポート2H2とは第1ハウジング2Aに形成した接続流路2Iで接続し、さらに流体の吸入流路2Jに接続している。吸入流路2Jは第1ハウジング2Aに形成し、駆動軸8の径方向一方側となる第1ハウジング2Aの一側面2Kに開口している。
【0016】
第1ハウジング2Aと同様に、ポンプ本体1を構成する第2~第4ハウジング3A~5Aには、駆動軸8の径方向一方側で収装孔3C、4C、5Cの底面に流体を吸入する吸入ポート3H1、4H1、5H1を開口形成し、各吸入ポート3H1~5H1は各ポンプ室Pの膨張域空間に連通する。また、各収装孔3C~5Cの一端開口を閉塞する各ハウジング4A、5Aおよび蓋部材6の閉側面には流体を吸入する吸入ポート3H2、4H2、5H2を開口形成している。各吸入ポート3H2~5H2は各ポンプ室Pの膨張域空間に連通し、両歯車3B~5B、3E~5Eを介して各吸入ポート3H1~5H1と軸方向に対向配置している。各吸入ポート3H1~5H1と各吸入ポート3H2~5H2とは各ハウジング3A~5Aに形成した接続流路3I、4I、5Iで接続し、さらに流体の吸入流路3J、4J、5Jに接続している。各吸入流路3J~5Jは各ハウジング3A~5Aに形成し、駆動軸8の径方向一方側となる各ハウジング3A~5Aの一側面3K、4K、5Kに開口している。
【0017】
2L1、3L1、4L1、5L1は流体を吐出する吐出ポートで、ポンプ本体1を構成する各ハウジング2A~5Aに形成し、各吸入ポート2H1~5H1と駆動軸8を介して径方向に対向する駆動軸8の径方向他方側で各収装孔2C、3C、4C、5Cの底面に開口し、各ポンプ室Pの収縮域空間に連通している。収装孔2C~5Cの一端開口を閉塞する各ハウジング3A~5Aおよび蓋部材6の閉側面には、両歯車2B~5B、2E~5Eを介して吐出ポート2L1~5L1と軸方向に対向する位置に凹部2L2、3L2、4L2、5L2を窪み形成し、各凹部2L2~5L2は各ポンプ室Pの圧縮域空間に連通している。両歯車2B~5B、2E~5Eには各吐出ポート2L1~5L1の流体圧力に基づく作用力と各凹部2L2~5L2の流体圧力に基づく作用力とが軸方向に平衡作用している。各吐出ポート2L1~5L1は流体の吐出流路2M、3M、4M、5Mに接続している。各吐出流路2M~5Mは各ハウジング2A~5Aに形成し、駆動軸8の径方向他方側となる各ハウジング2A~5Aの他側面2N、3N、4N、5Nに開口している。
【0018】
次にかかる構成の作動を説明する。
図1の状態で、駆動軸8を回転駆動すると、各外歯歯車2E~5Eが駆動軸8とともに回転する。各外歯歯車2E~5Eの回転に伴い、各外歯2Fと各内歯2Dが内接噛合いする各内歯歯車2B~5Bが回転し、各ポンプ室Pの容積を増減する。
【0019】
両歯車2B~5B、2E~5Eの回転により容積が増加する膨張域空間の各ポンプ室Pには、各吸入流路2J~5Jより各吸入ポート2H1~5H1、2H2~5H2を流通して流体が吸入される。また、両歯車2B~5B、2E~5Eの回転により容積が減少する収縮域空間の各ポンプ室Pの流体は、各吐出ポート2L1~5L1を流通して各吐出流路2M~5Mより吐出される。このように、両歯車2B~5B、2E~5Eの回転に伴い流体の吸入吐出を連続して行うポンプ作動をする。そして、駆動軸8の回転駆動を停止すると、ポンプ作動を停止する。
【0020】
かかる作動において、ポンプ本体1を構成する各ハウジング2A~5Aには、各ポンプ回転体としての各外歯歯車2E~5Eに対応して駆動軸8の径方向一方側に流体を吸入する吸入ポート2H1~5H1を形成すると共に、各吸入ポート2H1~5H1と駆動軸8を介して径方向に対向して流体を吐出する吐出ポート2L1~5L1を駆動軸8の径方向他方側に形成し、駆動軸8は軸方向に間隙を有して配置した二つの軸受9、10で軸支し、各外歯歯車2E~5Eは両軸受9、10の間に配置した外歯歯車2E、3E、4Eと、一方の軸受9より駆動軸8の端部側に配置した外歯歯車5Eとした。このため、両軸受9、10の間に配置した外歯歯車2E、3E、4Eにおける吐出ポート2L1、3L1、4L1の流体の圧力に基づく作用力と一方の軸受9より駆動軸8の端部側に配置した外歯歯車5Eにおける吐出ポート5L1の流体の圧力に基づく作用力とは、一方の軸受9を支点として駆動軸8に対向する方向に作用するから、駆動軸8が特定の方向に曲げ作用することなくでき、複数のポンプ機構2~5における各吐出ポート2L1~5L1を駆動軸8の径方向で同一方向に配置する用途に良好に適用することができる。
【0021】
また、両軸受9、10の間には複数の外歯歯車2E、3E、4Eを配置し、一方の軸受9より駆動軸8の端部側には一つの外歯歯車5Eを配置した。このため、一方の軸受9より駆動軸8の端部までの長さ寸法を一つの外歯歯車5Eを配置する短い寸法にできるから、一方の軸受9より駆動軸8の端部側を一方の軸受9で良好に軸支することができる。
【0022】
なお、前述の一実施形態では、ポンプ機構2~5を内接歯車ポンプ機構とし、ポンプ回転体を外歯歯車2E~5Eとしたが、ポンプ機構をベーンポンプ機構とし、ポンプ回転体をベーンを備えたローターとしてもよい。また、両軸受9、10間に3個の外歯歯車2E~4Eを配置すると共に、一方の軸受9より駆動軸8の端部側に1個の外歯歯車5Eを配置したが、両軸受間に2個や3個以上のポンプ回転体を配置すると共に、一方の軸受より駆動軸の端部側に2個以上のポンプ回転体を配置してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1:ポンプ本体
2:第1ポンプ機構
3:第2ポンプ機構
4:第3ポンプ機構
5:第4ポンプ機構
2E:第1外歯歯車(ポンプ回転体)
3E:第2外歯歯車(ポンプ回転体)
4E:第3外歯歯車(ポンプ回転体)
5E:第4外歯歯車(ポンプ回転体)
2H1、2H2、3H1、3H2、4H1、4H2、5H1、5H2:吸入ポート
2L1、3L1、4L1、5L1:吐出ポート
8:駆動軸
9、10:軸受
図1
図2