(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128706
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電子基板用放熱フィラー及び電子基板用放熱樹脂
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230907BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20230907BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K9/04
C08K3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033250
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 尚史
(72)【発明者】
【氏名】磯部 真吾
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002CD001
4J002CD201
4J002CH071
4J002CM041
4J002DK006
4J002FB266
4J002FD206
4J002GQ00
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】高放熱性かつ低誘電率の両立が可能な電子基板用放熱樹脂を得ることができる電子基板用放熱フィラーを提供する。
【解決手段】体積平均粒子径(D50)が0.5~30μmの窒化ホウ素の粒子と、ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物、無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合物とを反応させてなる電子基板用放熱フィラー。該電子基板用放熱フィラーを含む電子基板用放熱樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径(D50)が0.5~30μmの窒化ホウ素の粒子と、ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物、無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合物とを反応させてなる電子基板用放熱フィラー。
【請求項2】
前記ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物の重量平均分子量が10,000~1,000,000であり、前記無水マレイン酸変性ポリブタジエンの重量平均分子量が10,000~1,000,000であり、前記無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が1,000~100,000である電子基板用放熱フィラー。
【請求項3】
請求項1に記載の電子基板用放熱フィラーを含む電子基板用放熱樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板用放熱フィラー及び電子基板用放熱樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品装置は小型化、高集積化、信号の高速化などに伴って発熱量が増大してきたため、その熱をいかに放散させるかが、電子部品装置の破損防止、安定動作を継続するための重要な課題となっている。
電子基板自身の熱伝導性を向上させるために、窒化ホウ素をシランカップリング剤で処理する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、窒化ホウ素の反応点が少なく、低誘電樹脂であるポリフェニレンエーテルへの混合が困難であった。
また、窒化ホウ素との親和性の高いエポキシ変性ブタジエンオリゴマー樹脂を窒化ホウ素と混合し、分散させる放熱シートも知られている(特許文献2)。しかしながら、誘電率が高く、低誘電基板には使用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-031548号公報
【特許文献2】特開2013-177563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高放熱性かつ低誘電率の両立が可能な電子基板用放熱樹脂を得ることができる電子基板用放熱フィラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、体積平均粒子径(D50)が0.5~30μmの窒化ホウ素の粒子と、ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物、無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合物とを反応させてなる電子基板用放熱フィラー;該電子基板用放熱フィラーを含む電子基板用放熱樹脂である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電子基板用放熱フィラーを含む電子基板用放熱樹脂は、放熱性に優れ、かつ低誘電率であるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<電子基板用放熱フィラー>
本発明の電子基板用放熱フィラーは、体積平均粒子径(以下、単にD50と記載する場合がある)が0.5~30μmの窒化ホウ素の粒子と、ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物、無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合物とを反応させてなる電子基板用放熱フィラーである。
【0008】
<窒化ホウ素の粒子>
本発明における窒化ホウ素の粒子は、体積平均粒子径(D50)が0.5~30μmであれば特に制限はないが、好ましくはD50が0.5~20μm、更に好ましくはD50が4~20μmである。0.5μm未満及び30μmを超えると充填性が悪化する。窒化ホウ素の粒子の形状としては、鱗片状、顆粒状が好ましく、充填性の観点から鱗片状が特に好ましい。
【0009】
<ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物>
本発明におけるポリブタジエン無水マレイン酸共重合物は、ブタジエン及び無水マレイン酸を必須構成単量体として含む共重合物である。
ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物の重量平均分子量は、充填性の観点から、好ましくは10,000~1,000,000、更に好ましくは50,000~1,000,000、特に好ましくは50,000~500,000である。また無水マレイン酸の一部が加水分解され、開環されていてもよい。
【0010】
本発明における前記ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物、後記する無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び後記する無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定したものである。
装置: 「HLC-8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn HXL-H」(1本)、「TSKgel GMHXL」(2本)[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0011】
ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物の製造方法としては、ブタジエンと無水マレイン酸をラジカル重合させる製造方法等が挙げられる。
ラジカル重合には溶媒及び重合開始剤を用いてもよい。
溶媒としては、メチルエチルケトン等が挙げられる。
重合開始剤としては、ジイソブチル過酸化物等が挙げられる。
【0012】
<無水マレイン酸変性ポリブタジエン>
本発明における無水マレイン酸変性ポリブタジエンは、ポリブタジエンに無水マレイン酸を付加させてなる変性ポリブタジエンである。無水マレイン酸変性ポリブタジエンの重量平均分子量は、充填性の観点から、好ましくは10,000~1000,000、更に好ましくは50,000~1,000,000、特に好ましくは50,000~500,000である。また無水マレイン酸の一部が加水分解され、開環されていてもよい。
【0013】
無水マレイン酸変性ポリブタジエンの製造方法としては、ポリブタジエンと無水マレイン酸とをエン反応によって付加させる製造方法等が挙げられる。
エン反応には溶媒を用いてもよい。
溶媒としては、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0014】
<無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル>
本発明における無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルに無水マレイン酸を付加させてなる変性ポリブタジエンである。無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、充填性の観点から、好ましくは1,000~100,000、更に好ましくは1,000~10,000、特に好ましくは1,000~5000である。
無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルの製造方法としては、ポリフェニレンエーテルと無水マレイン酸とをラジカル開始剤共存下で混合して反応させる製造方法等が挙げられる。
反応には溶媒及びラジカル開始剤を用いてもよい。
溶媒としては、メチルエチルケトン等が挙げられる。
ラジカル開始剤としては、前記重合開始剤と同様のものが挙げられる。
【0015】
前記各重合体の含有量は、比誘電率の観点から、電子基板用放熱フィラーの構成成分として窒化ホウ素の粒子の重量に基づいて好ましくは0.1~1重量%である。
【0016】
本発明の電子基板用放熱フィラーの製造方法に制限はなく、窒化ホウ素の粒子と重合物とを公知の方法で混合し、反応させてよい。反応の有無はポリマーの良溶媒で洗浄し、脱離しないことで確認した。
【0017】
<電子基板用放熱樹脂>
本発明の電子基板用放熱樹脂は、電子基板用放熱フィラー及び樹脂を含んでいれば特に制限はない。
【0018】
前記樹脂としては、特に制限はないが、電子基板の銅張積層板、プレプリグ、層間絶縁膜及びレジストへの適応性の観点から、好ましくはポリフェニレンエーテル樹脂、エステル変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びLCP樹脂であり、更に好ましくはポリフェニレンエーテル樹脂である。
【0019】
電子基板用放熱樹脂は、熱伝導率の観点から、樹脂重量に基づいて電子基板用放熱フィラーを好ましくは30重量%~120重量%含む。
【0020】
本発明の電子基板用放熱樹脂は、必要に応じてその他成分を含んでもよい。その他成分としては、例えば、ガラスクロス、分散剤、密着性付与剤、酸化防止剤及び難燃剤等を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の電子基板用放熱樹脂の製造方法に制限はなく、電子基板用放熱フィラーと樹脂とを公知の方法で混合して得ることができる。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0023】
製造例1
オートクレーブ内の空気を窒素に置換した後、ブタジエン(東京化成工業(株)製、以下同様)54重量部、無水マレイン酸(東京化成工業(株)製、以下同様)98重量部及びメチルエチルケトン700重量部を加えて混合し、窒素を封入することで5気圧40℃に昇圧させた後、ジイソブチル過酸化物(パーロイルIB、日油(株)製、以下同様)0.07重量部及びメチルエチルケトン10重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、乾燥することでポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)を得た。(A-1)は、酸価370、重量平均分子量500,000であった。
【0024】
製造例2
オートクレーブ内の空気を窒素に置換した後、ブタジエン54重量部、無水マレイン酸98重量部及びメチルエチルケトン700重量部を加えて混合し、窒素を封入することで5気圧40℃に昇圧させた後、ジイソブチル過酸化物2.8重量部及びメチルエチルケトン10重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、乾燥することで、ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-2)を得た。(A-2)は、酸価370、重量平均分子量10,000であった。
【0025】
製造例3
オートクレーブ内の空気を窒素に置換した後、ブタジエン54重量部、無水マレイン酸98重量部及びメチルエチルケトン700重量部を加えて混合し、窒素を封入することで5気圧40℃に昇圧させた後、ジイソブチル過酸化物0.56重量部及びメチルエチルケトン10重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、乾燥することでポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-3)を得た。(A-3)は、酸価370、重量平均分子量50,000であった。
【0026】
製造例4
オートクレーブ内の空気を窒素に置換した後、ブタジエン54重量部、無水マレイン酸98重量部及びメチルエチルケトン700重量部を加えて混合し、窒素を封入することで5気圧40℃に昇圧させた後、ジイソブチル過酸化物0.02重量部及びメチルエチルケトン10重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、乾燥することで、ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-4)を得た。(A-4)は、酸価370、重量平均分子量1,000,000であった。
【0027】
製造例5
オートクレーブ内の空気を窒素に置換した後、ブタジエン150重量部及びメチルエチルケトン700重量部を加えて混合し、窒素を封入することで5気圧40℃に昇圧させた後、ジイソブチル過酸化物0.07重量部及びメチルエチルケトン10重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、常圧まで減圧後、無水マレイン酸98重量部とメチルエチルケトン100重量部の混合液を加え、100℃で12時間混合後、100℃で減圧乾燥することで、無水マレイン酸変性ポリブタジエン(A-5)を得た。(A-5)は、酸価100、重量平均分子量500,000であった。
【0028】
製造例6
オートクレーブ内の空気を窒素に置換した後、ブタジエン150重量部及びメチルエチルケトン700重量部を加えて混合し、窒素を封入することで5気圧40℃に昇圧させた後、ジイソブチル過酸化物2.8重量部及びメチルエチルケトン10重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、常圧まで減圧後、無水マレイン酸98重量部とメチルエチルケトン100重量部の混合液を加え、100℃で12時間混合後、100℃で減圧乾燥することで、無水マレイン酸変性ポリブタジエン(A-6)を得た。(A-6)は、酸価100、重量平均分子量10,000であった。
【0029】
製造例7
オートクレーブ内の空気を窒素に置換した後、ブタジエン150重量部及びメチルエチルケトン700重量部を加えて混合し、窒素を封入することで5気圧40℃に昇圧させた後、ジイソブチル過酸化物0.56重量部及びメチルエチルケトン10重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、常圧まで減圧後、無水マレイン酸98重量部とメチルエチルケトン100重量部の混合液を加え、100℃で12時間混合後、100℃で減圧乾燥することで、無水マレイン酸変性ポリブタジエン(A-7)を得た。(A-7)は、酸価100、重量平均分子量50,000であった。
【0030】
製造例8
オートクレーブ内の空気を窒素に置換した後、ブタジエン150重量部及びメチルエチルケトン700重量部を加えて混合し、窒素を封入することで5気圧40℃に昇圧させた後、ジイソブチル過酸化物0.02重量部及びメチルエチルケトン10重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、常圧まで減圧後、無水マレイン酸98重量部とメチルエチルケトン100重量部の混合液を加え、100℃で12時間混合後、100℃で減圧乾燥することで、無水マレイン酸変性ポリブタジエン(A-8)を得た。(A-8)は、酸価100、重量平均分子量1,000,000であった。
【0031】
製造例9
酸化第一銅(富士フイルム和光純薬(株)製、以下同様)0.125重量部、47重量%臭化水素酸(東京化成工業(株)製、以下同様)2.2重量部、メタノール63重量部を混合した。これに、別容器にてジ-n-ブチルアミン(東京化成工業(株)製、以下同様)3重量部、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成工業(株)製、以下同様)7重量部、メタノール63重量部を混合し、そこへトルエン378重量部に溶解した2,6-ジメチルフェノール(東京化成工業(株)製、以下同様)70重量部とn-ブタノール126重量部を加え、さらに水10重量部を加え、その後3.5時間混合し、メタノールを5000重量部加え、重合物を析出させ、濾別、乾燥することで、ポリフェニレンエーテルを得た。
オートクレーブに、得られたポリフェニレンエーテル29重量部、無水マレイン酸1.5重量部及びメチルエチルケトン100重量部を加えて混合し、空気を窒素置換し40℃に温調し、ジイソブチル過酸化物1重量部及びメチルエチルケトン50重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、溶剤を乾燥後、250℃で減圧乾燥することで無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(A-9)を得た。(A-9)は、酸価18、重量平均分子量5,000であった。
【0032】
製造例10
酸化第一銅)0.49重量部、47重量%臭化水素酸4.6重量部、メタノール63重量部を混合した。これに、別容器にてジ-n-ブチルアミン16.8重量部、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン36重量部、メタノール63重量部を混合し、そこへトルエン378重量部に溶解した2,6-ジメチルフェノール70重量部とn-ブタノール126重量部を加え、さらに水10重量部を加え、その後3.5時間混合し、メタノールを5000重量部加え、ポリマーを析出させ、濾別、乾燥することで、ポリフェニレンエーテルを得た。
オートクレーブに、得られたポリフェニレンエーテル29重量部、無水マレイン酸(東京化成工業(株)製)1.5重量部及びメチルエチルケトン100重量部を加えて混合し、空気を窒素置換し40℃に温調し、ジイソブチル過酸化物1重量部及びメチルエチルケトン50重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、溶剤を乾燥後、250℃で減圧乾燥することで無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(A-10)を得た。(A-10)は、酸価18、重量平均分子量1,000であった。
【0033】
製造例11
酸化第一銅0.05重量部、47重量%臭化水素酸0.46重量部、メタノール63重量部を混合した。これに、別容器にてジ-n-ブチルアミン1.68重量部、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン3.6重量部、メタノール63重量部を混合し、そこへトルエン378重量部に溶解した2,6-ジメチルフェノール70重量部とn-ブタノール126重量部を加え、さらに水10重量部を加え、その後3.5時間混合し、メタノールを5000重量部加え、ポリマーを析出させ、濾別、乾燥することで、ポリフェニレンエーテルを得た。
オートクレーブに、得られたポリフェニレンエーテル29重量部、無水マレイン酸1.5重量部及びメチルエチルケトン100重量部を加えて混合し、空気を窒素置換し40℃に温調し、ジイソブチル過酸化物1重量部及びメチルエチルケトン50重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、溶剤を乾燥後、250℃で減圧乾燥することで無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(A-11)を得た。(A-11)は、酸価18、重量平均分子量10,000であった。
【0034】
製造例12
酸化第一銅0.005重量部、47重量%臭化水素酸0.05重量部、メタノール63重量部を混合した。これに、別容器にてジ-n-ブチルアミン0.168重量部、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン0.36重量部、メタノール63重量部を混合し、そこへトルエン378重量部に溶解した2,6-ジメチルフェノール70重量部とn-ブタノール126重量部を加え、さらに水10重量部を加え、その後3.5時間混合し、メタノールを5000重量部加え、ポリマーを析出させ、濾別、乾燥することで、ポリフェニレンエーテルを得た。
オートクレーブに、得られたポリフェニレンエーテル29重量部、無水マレイン酸(東京化成工業(株)製)1.5重量部及びメチルエチルケトン100重量部を加えて混合し、空気を窒素置換し40℃に温調し、ジイソブチル過酸化物1重量部及びメチルエチルケトン50重量部の混合物を3時間かけて滴下し、その後6時間混合し、溶剤を乾燥後、250℃で減圧乾燥することで無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(A-12)を得た。(A-12)は、酸価18、重量平均分子量100,000であった。
【0035】
実施例1
ポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)0.6重量部及びメチルエチルケトン3重量部の混合物に、D50が20μmの窒化ホウ素の粒子(SGP、デンカ(株)製)100重量部及びトルエン100重量部の混合物を加えて混合し、粒子を濾別、粒子をトルエン100重量部に再分散させ濾別する操作を、未反応の(A-1)が取り除かれ、粒子の酸価が変化しなくなるまで繰り返した後、乾燥させることで、粒子に(A-1)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-1)を得た。
なお、(A-1)の含有量はフィラーの構成成分として、フィラーの酸価/(A-1)の量は酸価の比からフィラーの重量/窒化ホウ素の粒子の重量の比を算出して求めた。以下の実施例の重合物の含有量についても同様にして求めた。
放熱フィラー(S-1)の粒子径はメチルエチルケトンに0.5重量%分散させた液を作成し、レーザー回折式粒度分布測定装置「LA-750」[(株)堀場製作所製]を用いて測定した。なお、後記する重合物の修飾量及び電子基板用放熱フィラーの粒子径についても上記と同様に測定して算出した。
【0036】
実施例2
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)をポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-2)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-2)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-2)を得た。
【0037】
実施例3
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)をポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-3)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-3)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-3)を得た。
【0038】
実施例4
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)をポリブタジエン・無水マレイン酸共重合物(A-4)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-4)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-4)を得た。
【0039】
実施例5
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)を無水マレイン酸変性ポリブタジエン(A-5)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-5)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-5)を得た。
【0040】
実施例6
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)を無水マレイン酸変性ポリブタジエン(A-6)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-6)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-6)を得た。
【0041】
実施例7
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)を無水マレイン酸変性ポリブタジエン(A-7)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-7)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-7)を得た。
【0042】
実施例8
実施例1に記載のポリブタジエン・無水マレイン酸共重合物(A-1)を無水マレイン酸変性ポリブタジエン(A-8)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-8)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-8)を得た。
【0043】
実施例9
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)を無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(A-9)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-9)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-9)を得た。
【0044】
実施例10
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)を無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(A-10)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-10)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-10)を得た。
【0045】
実施例11
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)を無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(A-11)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-11)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-11)を得た。
【0046】
実施例12
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)を無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル(A-12)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-12)が0.5重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-12)を得た。
【0047】
実施例13
実施例1に記載のD50が20μmの窒化ホウ素の粒子(SGP、デンカ(株)製)をD50が0.5μmの窒化ホウ素の粒子(UHP-52、昭和電工(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-1)が0.5重量%反応して修飾された、D50が0.5μmの電子基板用放熱フィラー(S-13)を得た。
【0048】
実施例14
実施例1に記載のD50が20μmの窒化ホウ素の粒子(SGP、デンカ(株)製)をD50が4μmの窒化ホウ素の粒子(SP-2、デンカ(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-1)が0.5重量%反応して修飾された、D50が4μmの電子基板用放熱フィラー(S-14)を得た。
【0049】
実施例15
実施例1に記載のD50が20μmの窒化ホウ素の粒子(SGP、デンカ(株)製)をD50が30μmの窒化ホウ素の粒子(XGP、デンカ(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-1)が0.5重量%反応して修飾された、D50が30μmの電子基板用放熱フィラー(S-15)を得た。
【0050】
実施例16
実施例1に記載のポリブタジエン無水マレイン酸共重合物(A-1)の配合量を0.6重量部から0.12重量部に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-1)が0.1重量%反応して修飾された、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S-16)を得た。
【0051】
実施例17
実施例1に記載のポリブタジエン・無水マレイン酸共重合物(A-1)の配合量を0.6重量部から2重量部に変更した以外は実施例1と同様に作成し、粒子に(A-1)が1重量%反応して修飾された、D50が20μmの放熱フィラー(S-17)を得た。
【0052】
比較例1
グリシドキシオクチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)1重量部及びメチルエチルケトン3重量部を混合し、D50が20μmの窒化ホウ素(SGP、デンカ(株)製)100重量部及びトルエン100重量部の混合物を加えて混合、乾燥することで、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S’-1)を得た。
【0053】
比較例2
数平均分子量5,900のポリブタジエンのエポキシ変性物(エポリード PB3600、ダイセル化学工業(株)製)10重量部及びメチルエチルケトン3重量部を混合し、D50が20μmの窒化ホウ素(SGP、デンカ(株)製)100重量部及びトルエン100重量部の混合物を加えて混合、乾燥することで、D50が20μmの電子基板用放熱フィラー(S’-2)を得た。
【0054】
<窒化ホウ素充填率>
ポリフェニレンエーテル(Noryl SA9000樹脂、SABICジャパン合同会社製)50重量部、トルエン50重量部を混合し、その混合液を各電子基板用放熱フィラー50重量部に添加することで、放熱樹脂組成物を得て窒化ホウ素の充填率を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
窒化ホウ素充填率の評価方法
容器を傾けてペースト状の樹脂組成物が流動する点を滴下の終点とした。このときの窒化ホウ素の充填率を窒化ホウ素充填率とした。窒化ホウ素の密度を2.20g/cm3、及び樹脂の密度を1.06g/cm3として、トルエンの密度を0.867g/cm3として、樹脂組成物の全体積に対する窒化ホウ素の体積割合を窒化ホウ素充填率として算出した。
【0056】
[窒化ホウ素充填率の判定基準]
◎:窒化ホウ素充填率が60体積%以上
○:窒化ホウ素充填率が46体積%以上60体積%未満
△:窒化ホウ素充填率が43.5体積%以上46体積%未満
×:窒化ホウ素充填率が43.5体積%未満
【0057】
<比誘電率>
ポリフェニレンエーテル(Noryl SA9000樹脂、SABICジャパン合同会社製)50重量部、トルエン50重量部及び各電子基板用放熱フィラー15重量部を混合し、離形PET上に厚み50μmで塗布後、乾燥させ、離形PETから剥離することで、厚み20μmの電子基板用放熱樹脂を得た。60mm×60mmに切り取り、試験サンプルを作製し、20℃、湿度20%下に24時間静置し、作製した試験サンプルを20℃、湿度20%下でLCRメータE4980A(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて静電容量を測定し、1MHzにおける比誘電率を算出した。結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
実施例18
ポリフェニレンエーテル(Noryl SA9000樹脂、SABICジャパン合同会社製)100重量部、トルエン100重量部及び電子基板用放熱フィラー(S-1)30重量部を混合し、離形PET上に厚み100μmで塗布後、乾燥させ、離形PETから剥離することで、厚み60μmの電子基板用放熱フィラーを含む電子基板用放熱樹脂を得た。
【0060】
実施例19
ポリフェニレンエーテル(Noryl SA9000樹脂、SABICジャパン合同会社製)100重量部、トルエン100重量部及び電子基板用放熱フィラー(S-1)120重量部を混合し、離形PET上に厚み80μmで塗布後、乾燥させ、離形PETから剥離することで、厚み60μmの電子基板用放熱フィラーを含む電子基板用放熱樹脂を得た。
【0061】
比較例3
実施例18に記載の電子基板用放熱フィラー(S-1)を電子基板用放熱フィラー(S’-3)に変更した以外は実施例18と同様に作成し電子基板用放熱樹脂を得た。
【0062】
比較例10
実施例18に記載の電子基板用放熱フィラー(S-1)を電子基板用放熱フィラー(S’-4)に変更した以外は実施例18と同様に作成し電子基板用放熱樹脂を得た。
【0063】
<電子基板用放熱フィラーを含む電子基板用放熱樹脂の熱伝導率>
得られた放熱樹脂を縦120mm、横40mmにカットし、熱伝導率計[「Kemtherm QTM-D3」、京都電子工業株式会社製]を用い、熱線法にて熱伝導率(単位:W/m・K)を測定した。結果を表2に示す。
【0064】