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特開2023-12874線状体の張力、線状体の曲げ剛性及び線状体に取り付けられたダンパの特性の算定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012874
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】線状体の張力、線状体の曲げ剛性及び線状体に取り付けられたダンパの特性の算定方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/10 20200101AFI20230119BHJP
【FI】
G01L5/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116601
(22)【出願日】2021-07-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.開催日:令和3年7月6日 2.集会名:鋼構造研究部新人修論発表会 3.開催場所:日本製鉄株式会社 技術開発本部 鉄鋼研究所 鋼構造研究部 4.公開者:廣瀬克也
(71)【出願人】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】古川 愛子
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 克也
(72)【発明者】
【氏名】門田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB04
(57)【要約】
【課題】ダンパが取り付けられた線状体に作用している張力、線状体の曲げ剛性及びダンパの特性を高い精度で算定する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本出願は、ダンパが取り付けられた線状体の張力、線状体の曲げ剛性及びダンパの特性を算定する方法を開示する。算定方法は、線条体の固有振動数の実測値を得る実測工程と、ダンパが線状体に配置されていることを表す境界条件を用いて設定された振動方程式と、固有振動数の実測値と、を用いて、張力、曲げ剛性及びダンパの特性を算定する算定工程と、を備えている。振動方程式は、固有振動数の理論値、張力、曲げ剛性及びダンパの特性を変数として含む関数が所定の値に等しくなる式としてモード次数を含むことなく表されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパが取り付けられた線状体の張力、前記線状体の曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する算定方法であって、
前記線状体上の任意の点における振動を検出し、前記検出された振動に基づいて複数モードの固有振動数の実測値を得る実測工程と、
前記ダンパが前記線状体に配置されていることを表す境界条件を用いて設定された振動方程式と、前記複数モードの固有振動数の前記実測値と、を用いて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する算定工程と、を備え、
前記振動方程式は、前記複数モードの固有振動数の理論値、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を変数として含む関数が所定の値に等しくなる式としてモード次数を含むことなく表されており、
前記算定工程では、
前記複数モードの固有振動数の前記実測値を前記振動方程式の前記関数における前記複数モードの固有振動数の前記理論値に代入するとともに、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性それぞれについて設定された候補値を前記関数に代入して、前記関数の演算値を取得し、
前記取得された演算値と前記所定の値との比較に基づいて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する、算定方法。
【請求項2】
前記算定工程では、
前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性のうち少なくとも1つについて設定された他の候補値と、前記複数モードの固有振動数の前記実測値と、を前記関数に代入することにより他の演算値を取得することを繰り返して、複数の演算値を取得し、
前記複数の演算値の中で前記所定の値に最も近いものが得られた候補値を、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性の算定値として決定する、請求項1に記載の算定方法。
【請求項3】
前記関数において、前記ダンパの特性は、減衰項を虚数で表す式で表されており、
前記振動方程式の前記関数は、実数項と虚数項とを含み、
前記算定工程では、前記演算値における実数部と前記所定の値における実数部との間での大きさの比較及び前記演算値における虚数部と前記所定の値における虚数部との間での大きさの比較に基づいて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する、請求項1に記載の算定方法。
【請求項4】
前記固有振動数の前記理論値は、前記固有振動数の前記実測値で表される実数部と、前記固有振動数の前記理論値の前記実数部の大きさに対する前記固有振動数の前記理論値の虚数部の大きさの比で表される虚実比と前記固有振動数の前記実測値との積で表される虚数部と、の和で表される、請求項3に記載の算定方法。
【請求項5】
前記振動方程式は、前記ダンパが前記線状体に配置されていることと、前記線状体の両端が回転剛性を有していることと、を表す境界条件を用いて設定されているとともに、前記線状体の前記複数モードの固有振動数の前記理論値、前記張力、前記曲げ剛性、前記回転剛性及び前記ダンパの特性の間の関係を表している、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の算定方法。
【請求項6】
ダンパが取り付けられた線状体の張力、前記線状体の曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する算定方法であって、
前記線状体上の任意の点における振動を検出し、前記検出された振動に基づいて複数モードの固有振動数の実測値を得る実測工程と、
前記ダンパが前記線状体に配置されていることを表す境界条件を用いて設定された前記複数モードの固有振動数の理論式と、前記複数モードの固有振動数の前記実測値と、を用いて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する算定工程と、を備え、
前記理論式において、前記ダンパの特性は、減衰項を虚数で表す式で表されているとともに、前記複数モードの固有振動数の理論値は、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性の関数として表され、
前記算定工程では、
前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性の候補値を前記理論式に代入して得られた前記理論値の実数部と、前記実測値と、を比較し、
前記理論値の前記実数部の大きさに対する前記理論値の虚数部の大きさの比と、前記実測値に対する前記理論値の前記虚数部の大きさの比と、を比較し、
これらの比較結果に基づいて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する、算定方法。
【請求項7】
前記理論式は、前記ダンパが前記線状体に配置されていることと、前記線状体の両端が回転剛性を有していることと、を表す境界条件を用いて設定されているとともに、前記線状体の前記複数モードの固有振動数の前記理論値、前記張力、前記曲げ剛性、前記回転剛性及び前記ダンパの特性の関係を表している、請求項6に記載の算定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状体に作用している張力、線状体の曲げ剛性及び線状体に取り付けられたダンパの特性を算定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁のケーブル、張弦梁や電線といった線状体に作用している張力を算定するための様々な方法が案出されている。線状体には、振動を抑制するための制振部品(以下、「ダンパ」と称する)が取り付けられていることがあり、特許文献1では、ダンパを考慮した境界条件に基づき作成された固有振動数の理論式を利用して、線状体の張力、剛性及びダンパの特性(以下、「張力等」とも称する)を算定している。
【0003】
この理論式には、張力等を表す変数が含まれており、張力等についての複数の候補値が理論式に代入される。この結果、代入された候補値に対応して複数の演算値が理論式から得られる。理論式から得られた複数の演算値は、線状体の固有振動数の実測値と比較される。実測値に最も近い演算値が得られたときの候補値が、線状体の張力、剛性及びダンパの特性として算定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-165953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、固有振動数の理論式は、ダンパを考慮した境界条件に基づいて作成されているので、特許文献1の方法から算定される張力等は、ダンパを考慮せずに作成された理論式に基づいて算定された張力等よりも高い精度を有している。しかしながら、線状体の実際の張力等が既知である条件の下で張力等の算定値を比較する検証試験の結果、張力等の精度を更に改善する必要性があることが分かった。
【0006】
本発明は、ダンパが取り付けられた線状体の張力、曲げ剛性及びダンパの特性をより高い精度で算定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る算定方法は、ダンパが取り付けられた線状体の張力、前記線状体の曲げ剛性及び前記ダンパの特性の算定に利用可能である。算定方法は、前記線状体上の任意の点における振動を検出し、前記検出された振動に基づいて複数モードの固有振動数の実測値を得る実測工程と、前記ダンパが前記線状体に配置されていることを表す境界条件を用いて設定された振動方程式と、前記複数モードの固有振動数の前記実測値と、を用いて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する算定工程と、を備えている。前記振動方程式は、前記複数モードの固有振動数の理論値、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を変数として含む関数が所定の値に等しくなる式としてモード次数を含むことなく表されている。前記算定工程では、前記複数モードの固有振動数の前記実測値を前記振動方程式の前記関数における前記複数モードの固有振動数の前記理論値に代入するとともに、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性それぞれについて設定された候補値を前記関数に代入して、前記関数の演算値を取得し、前記取得された演算値と前記所定の値との比較に基づいて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する。
【0008】
線状体にダンパが取り付けられている場合、線状体に生じた振動は、ダンパによって減衰されるので、検出された振動のデータから固有振動数の実測値を精度よく得ることが困難になることが生じうる。たとえば、モード次数が1、2及び4である固有振動数が振動のデータ中に現れている一方で、モード次数が3である固有振動数が振動のデータ中に現れていないことが生じうる。この場合、実際にはモード次数が4である固有振動数が、モード次数が3である固有振動数の実測値として取得され得る。
【0009】
特許文献1の張力等の算定方法では、固有振動数の理論式は、固有振動数とモード次数とを含んでいる。このため、上述のように、モード次数が4である固有振動数が、モード次数が3である固有振動数の実測値として取得された場合には、理論式中のモード次数には3が代入される一方で、理論式中の固有振動数には、モード次数が4の固有振動数が代入され得る。このような誤った代入処理がなされた場合には、線状体の張力、曲げ剛性及びダンパの剛性を精度よく算定することはできない。
【0010】
一方、上述の算定方法では、モード次数を含んでいない振動方程式が用いられる。このため、線状体の固有振動数の実測値を、モード次数と対応付けることなく、振動方程式の関数に代入することができ、上述の誤った代入処理が防止される。
【0011】
振動方程式の関数には、線状体の固有振動数の実測値に加えて、張力、曲げ剛性及びダンパの特性(以下、「張力等」と称する)それぞれについて設定された候補値が代入されて演算値が得られる。この演算値が、振動方程式が成り立つときの所定の値に近ければ近いほど、振動方程式の関数に代入された張力等の候補値が、振動方程式を成り立たせる真値に近いことが分かる。したがって、張力等の候補値を振動方程式の関数に代入して得られた演算値と振動方程式が成り立つときの所定の値との比較に基づいて、振動方程式を成り立たせる真値により近い張力等の値を決定することができる。
【0012】
上述の構成に関して、前記算定工程では、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性のうち少なくとも1つについて設定された他の候補値と、前記複数モードの固有振動数の前記実測値と、を前記関数に代入することにより他の演算値を取得することを繰り返して、複数の演算値を取得し、前記複数の演算値の中で前記所定の値に最も近いものが得られた候補値を、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性の算定値として決定してもよい。
【0013】
上述の算定方法では、複数の候補値が振動方程式の関数に代入されるので、複数の演算値が得られる。これらの演算値のうち振動方程式において張力等の変数を含む関数が等しくなる所定の値に近いものが得られた候補値は、振動方程式を成り立たせる真値に比較的近い。このような候補値が張力等の算定値として決定されるので、張力等の算定値の精度が向上する。
【0014】
上述の構成に関して、前記関数において、前記ダンパの特性は、減衰項を虚数で表す式で表されていてもよい。前記振動方程式の前記関数は、実数項と虚数項とを含んでいてもよい。前記算定工程では、前記演算値における実数部と前記所定の値における実数部との間での大きさの比較及び前記演算値における虚数部と前記所定の値における虚数部との間での大きさの比較に基づいて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定してもよい。
【0015】
ダンパの減衰特性は、虚数項で表されるのが一般的である。この場合、振動方程式は、実数項と虚数項とを含む関数が所定の値に等しくなる式として表され得る。この所定の値は、当該関数の実数項及び虚数項からそれぞれ得られた実数部及び虚数部の和として表され得る。また、振動方程式の関数に張力等の候補値を代入して得られた演算値も、実数部及び虚数部の和として表され得る。
【0016】
上述の算定方法では、演算値における実数部及び振動方程式が成り立つときの所定の値の実数部の大きさが比較されるだけでなく、演算値における虚数部及び振動方程式が成り立つときの所定の値の虚数部の大きさもが比較された上で、張力等が算定される。したがって、実数部のみを用いて張力等を算定する方法と比べて、より高い精度で張力等が算定され得る。
【0017】
上述の構成に関して、前記固有振動数の前記理論値は、前記固有振動数の前記実測値で表される実数部と、前記固有振動数の前記理論値の前記実数部の大きさに対する前記固有振動数の前記理論値の虚数部の大きさの比で表される虚実比と前記固有振動数の前記実測値との積で表される虚数部と、の和で表される。
【0018】
上述の算定方法では、ダンパの特性は、減衰項を虚数で表す式で表されているので、固有振動数の理論値は、実数部と虚数部とを含む関数で表され得る。虚実比を用いることにより、固有振動数の理論値の実数部だけでなく虚数部をも、固有振動数の実測値で表すことが可能になる。このため、固有振動数の実測値を固有振動数の理論値に代入して、固有振動数の理論値の実数部及び虚数部の両方を考慮しながら、張力等を算定することができる。
【0019】
上述の構成に関して、前記振動方程式は、前記ダンパが前記線状体に配置されていることと、前記線状体の両端が回転剛性を有していることと、を表す境界条件を用いて設定されているとともに、前記線状体の前記複数モードの固有振動数の前記理論値、前記張力、前記曲げ剛性、前記回転剛性及び前記ダンパの特性の間の関係を表していてもよい。
【0020】
特許文献1の算定方法では、線状体が両端においてピン支持されているという前提の下で、理論式が設定されている。この前提の下では、線状体が端部において曲がろうとした場合に、この曲げに対して何ら抗力が生じない。一方、実際の建造物(たとえば、橋梁)に用いられる線状体(たとえば、橋梁のケーブル)の両端は、ある程度拘束された状態(すなわち、両端における線状体の曲げに対して抗力が生ずる状態)で支持されていることが多い。したがって、上述の前提の下で得られた張力等は、実際の建造物中の線状体の張力等を精度よく表していない場合がある。
【0021】
一方、上述の算定方法では、振動方程式は、ダンパが線状体に配置されていることを表す境界条件だけでなく、線状体の両端が回転剛性を有しているという境界条件をも用いて設定されている。回転剛性は、両端における線状体の曲がりにくさを表すので、当該境界条件を用いて設定された振動方程式は、実際の建造物中の線状体の両端における曲げに対する拘束の程度を表すことができる。このような振動方程式に基づいて、張力等が算定されれば、実際の建造物中の線状体の張力等により近い張力等の算定値を得ることができる。
【0022】
本発明の他の局面に係る算定方法は、ダンパが取り付けられた線状体の張力、前記線状体の曲げ剛性及び前記ダンパの特性の算定に利用可能である。算定方法は、前記線状体上の任意の点における振動を検出し、前記検出された振動に基づいて複数モードの固有振動数の実測値を得る実測工程と、前記ダンパが前記線状体に配置されていることを表す境界条件を用いて設定された前記複数モードの固有振動数の理論式と、前記複数モードの固有振動数の前記実測値と、を用いて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する算定工程と、を備えている。前記理論式において、前記ダンパの特性は、減衰項を虚数で表す式で表されているとともに、前記複数モードの固有振動数の理論値は、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性の関数として表されている。前記算定工程では、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性の候補値を前記理論式に代入して得られた前記理論値の実数部と前記実測値との比較と、前記実数部の大きさに対する前記理論値の虚数部の大きさの比と前記実測値に対する前記理論値の前記虚数部の大きさの比との比較と、に基づいて、前記張力、前記曲げ剛性及び前記ダンパの特性を算定する。
【0023】
上述の算定方法では、ダンパの特性は、減衰項を虚数で表す式で表されているので、固有振動数の理論値は、実数部と虚数部とを含み得る。張力等の候補値を理論式に代入して得られた理論値の実数部は、固有振動数の実測値と考えることができる。したがって、理論値の実数部と固有振動数の実測値との比較に基づいて、理論式に代入された張力等の候補値が線状体の実際の張力等に近い値であるか否かを評価し得る。一方、理論値の虚数部に相当する物理量を実測により得ることはできない。このため、固有振動数の実測値に対する理論値の虚数部の大きさの比が、理論値の実数部の大きさに対する理論値の虚数部の大きさの比と比較される。この比較処理により、理論値の実数部だけでなく、理論値の虚数部をも考慮して、理論式に代入された張力等の候補値が線状体の実際の張力等に近い値であるか否かが判断されるので、算定される張力等の精度が向上する。
【0024】
上記の構成に関して、前記理論式は、前記ダンパが前記線状体に配置されていることと、前記線状体の両端が回転剛性を有していることと、を表す境界条件を用いて設定されているとともに、前記線状体の前記複数モードの固有振動数の前記理論値、前記張力、前記曲げ剛性、前記回転剛性及び前記ダンパの特性の関係を表していてもよい。
【0025】
上述の算定方法では、理論式は、ダンパが線状体に配置されていることを表す境界条件だけでなく、線状体の両端が回転剛性を有しているという境界条件をも用いて設定されている。このため、固有振動数の理論式は、実際の建造物中の線状体の両端における曲げに対する拘束の程度を表すことができる。このような理論式に基づいて、張力等が算定されれば、実際の建造物中の線状体の張力等に近い張力等の算定値を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
上述の算定方法は、線状体の張力、曲げ剛性及びダンパの特性を精度よく算定することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ダンパが取り付けられたケーブルの固有振動数の測定に用いられる測定装置の概略図である。
図2】測定装置のケーブルを一次元梁としてモデル化した振動モデルの概略図である。
図3】算定処理を表す概略的なフローチャートである。
図4】フーリエ変換処理後の振動データである。
図5】張力等の最適値を探索する探索処理の概念図である。
図6】フーリエ変換処理後の振動データから固有振動数の実測値のデータを取得する工程を表す図である。
図7】測定装置のケーブルを一次元梁としてモデル化した振動モデルの概略図であり、ケーブルの両端には、回転ばねが挿入されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1は、ダンパ110が取り付けられたケーブル120(線状体)の固有振動数の測定に用いられる測定装置100の概略図である。測定装置100を用いて、ケーブル120の張力、ケーブル120の曲げ剛性及びダンパ110の特性が算定される。
【0029】
測定装置100は、左右に離間した位置に配置された一対の支持部131,132を備えており、ケーブル120は、これらの支持部131,132間で水平に延設されている。ケーブル120の両端部は、支持部131,132に取り付けられている。
【0030】
ケーブル120に取り付けられたダンパ110は、ケーブル120を2つのスパン121,122に左右に分けている。スパン121は、ケーブル120の左端からダンパ110までの長さ部分であり、スパン121の長さを、以下の説明では、記号「l」で表す。また、スパン122は、ケーブル120の右端からダンパ110までの長さ部分であり、スパン121よりも長くなっている。スパン122の長さを、以下の説明では、記号「l」で表す(l≦l)。スパン121,122の長さの和は、ケーブル120の全長であり、以下の説明では、ケーブル120の全長を記号「L」で表す。
【0031】
ケーブル120の振動を検出するために、右側のスパン122には加速度計135が取り付けられている。加速度計135は、計測された加速度を表す信号を出力するように構成されている。加速度計135は、ケーブル120の振動の加速度を検出できる限り、ケーブル120上の任意の位置に設置され得る。
【0032】
加速度計135には、データ処理部136が接続されており、加速度計135の信号は、データ処理部136に入力される。データ処理部136は、振動の加速度の時間変化のデータ(時刻歴応答値)を記録するとともに、記録されたデータに対して所定の処理を行うように構成されている。
【0033】
(振動方程式の導出)
測定装置100中のケーブル120は、図2に示すように、両端を単純支持(ピン支持)された一次元梁としてモデル化可能である。図2に示すモデルに基づいて、ダンパ110が取り付けられたケーブル120の振動方程式を以下に導出する。なお、図2に示すモデルにおいて、ケーブル120の両端の位置は、上述の支持部131,132の位置に対応している。
【0034】
図2に示すモデルにおいて、座標軸xは、左側の支持部131を基準に設定されており、「x=0」となる位置は、ケーブル120の左端の位置になっている。また、「x=l」となる位置は、ダンパ110の位置になっている。座標軸xは、ダンパ110を基準に設定されており、「x=0」となる位置は、ダンパ110の位置になっている。また、「x=l」となる位置は、ケーブル120の右端の位置になっている。
【0035】
図2のモデルでは、スパン121,122は、ダンパ110を挟んで連結された2つの梁としてモデル化されている。スパン121,122をそれぞれ一次元梁としてモデル化した場合のスパン121の時間tにおける位置xの撓みy(x、t)及びスパン122の時間tにおける位置xの撓みy(x、t)に関する運動方程式を以下に示す。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
ケーブル120の両端が単純支持されているという仮定の下では、ケーブル120の両端における境界条件は、以下のように表される。
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
ダンパ110の設置位置(x=l,x=0)では、ケーブル120の撓み、撓み角及び曲率が連続しているという境界条件1を設定することができる。ダンパ110の設置位置における境界条件1を以下に示す。
【0042】
【数5】
【0043】
ダンパ110の設置位置(x=l,x=0)では、鉛直方向において力が釣り合っているという境界条件2を更に設定することができる。ダンパ110が粘性せん断ダンパであれば、ダンパ110の特性kは、以下の「数6」のように、減衰定数cを含む減衰項と、バネ定数kの項と、の和で表される。バネ定数kの項は、実数項であるのに対し、減衰項は、虚数単位jで表される虚数項である。この場合、境界条件2は、以下の「数7」によって表され得る。なお、境界条件2を示す「数7」において、右辺は、ダンパ110が受ける反力を表している。
【0044】
【数6】
【0045】
【数7】
【0046】
スパン121の撓みy(x、t)及びスパン122の撓みy(x、t)は、変数分離法により、以下のように表され得る。
【0047】
【数8】
【0048】
上記の「数8」を「数1」及び「数2」の運動方程式に代入すると、「数1」及び「数2」は、以下のように書き換えられる。
【0049】
【数9】
【0050】
上記の「数9」の一般解は、以下のように表される。
【0051】
【数10】
【0052】
これらの一般解を、上記の境界条件の式(「数3」~「数5」,「数7」)に当てはめると、以下の関係式が得られる。
【0053】
【数11】
【0054】
【数12】
【0055】
【数13】
【0056】
【数14】
【0057】
【数15】
【0058】
【数16】
【0059】
【数17】
【0060】
上記の「数12」及び「数14」に基づいて、以下の条件式が得られる。
【0061】
【数18】
【0062】
また、上記の「数16」及び「数17」に基づいて、以下の条件式が得られる。
【0063】
【数19】
【0064】
これらの条件式(「数18」,「数19」)に基づいて、以下の条件式が得られる。
【0065】
【数20】
【0066】
上記の条件式(「数18」~「数20」)は、「B=D=B=D=0」であるとき成立し得るが、この場合、全ての積分係数A~Dがゼロとなり、ケーブル120の振動を表す条件とはなり得ない。このため、上記の条件式(「数18」~「数20」)は、以下の行列式が成立するときに、成り立つ。
【0067】
【数21】
【0068】
上記の行列式(「数21」)は、以下の行列式に分解可能である。
【0069】
【数22】
【0070】
上記の行列式(「数22」)の第1項及び第2項を展開するとともに、加法定理を利用して、展開された式を整理すると、以下の式が得られる。
【0071】
【数23】
【0072】
上記の式(「数23」)は、以下のように変形可能である。
【0073】
【数24】
【0074】
上記の式(「数24」)において、「θ」は、以下の式を満たす値である。
【0075】
【数25】
【0076】
上記の「数24」における最下段の正弦関数の式は、振動の各モードにおいて成り立つ。したがって、当該正弦関数の式は、モード次数iを用いて、以下のように書き換え可能である。以下の式は、本実施形態において用いられる振動方程式である。
【0077】
【数26】
【0078】
上記のi次モードの振動方程式(「数26」)は、上述の如く、ダンパ110がケーブル120に配置されていることを表す境界条件(「数5」,「数7」)に基づいて設定されている。この振動方程式は、モード次数iにおけるケーブル120の固有振動数f、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EI及びダンパ110の特性kの間の関係を表している。なお、上記のi次モードの振動方程式(「数26」)において、ケーブル120の固有振動数f、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EIは、「α」及び「β」に含まれる変数である(「数10」を参照)。
【0079】
「数26」のi次モードの振動方程式において、正弦関数の周期性を考慮すると、以下の関係式を得ることができる。
【0080】
【数27】
【0081】
この関係式に、「数10」のαの式を代入すると、固有振動数の理論値f を表す以下の理論式を得ることができる。この理論式も、ダンパ110がケーブル120に配置されていることを表す境界条件(「数5」,「数7」)に基づいており、ダンパ110がケーブル120に配置されているときのケーブル120の固有振動数の理論値f を表している。ケーブル120の固有振動数の理論値f は、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EI及びダンパ110の特性k等の関数として表され得る。
【0082】
【数28】
【0083】
上記の式の「θ」は、「数25」に示すように、ダンパ110の特性kを含んでいる。ダンパ110の特性kは、「数6」に示すように、虚数項を含んでいるから、固有振動数の理論値f を表す理論式は、以下のように、実数項(理論値における実数部を表す項)と虚数項(理論値における虚数部を表す項)とに分離可能である。
【0084】
【数29】
【0085】
固有振動数の実測値は、実数であるから、上記の「数29」の実数項の値として表され得る。
【0086】
【数30】
【0087】
「数29」と「数30」とに基づいて、固有振動数の理論値f は、固有振動数の実測値f と減衰比hを用いて、以下のように表される。
【0088】
【数31】
【0089】
「数31」に示すように、虚実比Hは、「数29」の理論値における実数部に対する虚数部の比を意味している。虚実比Hを用いることによって、虚数部を含んでいるケーブル120の固有振動数の理論値f の実数項及び虚数項をケーブル120の固有振動数の実測値f でそれぞれ表すことができる。すなわち、固有振動数の理論値f の実数項は、固有振動数の実測値f で表され、固有振動数の理論値f の虚数項は、固有振動数の実測値f と虚実比Hとの積で表される。固有振動数の理論値f は、このような実数項と虚数項との和として表され得る。
【0090】
固有振動数の理論値f を用いて、i次モードにおける「α」及び「β」は、以下のように表され得る。
【0091】
【数32】
【0092】
固有振動数の理論値f は、上記の「数31」に示すように、固有振動数の実測値f を用いて表され得るから、i次モードにおける「α」及び「β」は、固有振動数の実測値f を用いて、以下のように表され得る。
【0093】
【数33】
【0094】
上記のi次モードの振動方程式(「数26」)は、実数項と虚数項とを含む関数がゼロの値に等しくなる等式として、以下のように表すことができる。以下の振動方程式は、ケーブル120の固有振動数の理論値f 、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EI及びダンパ110の特性k間の関係を、モード次数iを含むことなく表している。
【0095】
【数34】
【0096】
「数34」の振動方程式において、実数項及び虚数項がともにゼロになれば、当該振動方程式が成り立つ。
【0097】
「数34」の振動方程式の実数項及び虚数項は、以下の定数及び変数を含んでいる。「数34」の振動方程式は、以下の定数及び変数を含む関数がゼロの値に等しくなる等式として表されている。
・ケーブル120の全長:L
・ケーブル120のスパン121,122の長さ:l,l
・ケーブル120の密度:ρ
・ケーブル120の断面積:A
・ケーブル120の固有振動数の実測値:f (=理論値f
・ケーブル120の張力:T
・ケーブル120の曲げ剛性:EI
・ダンパ110の特性:k(k,c)
・虚実比(ケーブル120の振動の減衰特性):H
【0098】
(張力T等の算定式の導出)
「数34」の振動方程式の実数項及び虚数項の定数及び変数に数値を代入することにより、実数部と虚数部とを含む演算値が得られる。代入された数値が、振動方程式を成り立たせる真値に近いか否かを判定するために、以下の比較処理がなされる。
・演算値における実数部を、「数34」の振動方程式が成り立つときの実数項の値(すなわち、ゼロ)と比較する処理。
・演算値における虚数部を、「数34」の振動方程式が成り立つときの虚数項の値(すなわち、ゼロ)と比較する処理。
【0099】
上述の比較処理を行うために、以下の算定式が設定され得る。
【0100】
【数35】
【0101】
上記の算定式(「数35」)では、実数項及び虚数項の演算値の正負の問題をなくすため、「数34」の振動方程式の実数項の平方和と虚数項の平方和との和を算定している。実数項から得られる演算値及び虚数項から得られる演算値の両方の大きさがゼロに近ければ、「数35」の算定式から得られた演算値は、ゼロに近くなる。なお、「数35」の算定式は、モード次数iを含んでいない「数34」の振動方程式に基づいているから、モード次数iを含んでいない。
【0102】
(張力T等の算定方法)
張力T、曲げ剛性EI、ダンパ110の特性k及び虚実比Hを算定する方法を、図3を参照して説明する。
【0103】
ケーブル120に関する以下の構造データが取得される(ステップS105)。以下の構造データは、「数35」の算定式に固定値として代入される。なお、構造データのうちケーブル120のスパン121,122の長さl,l、ケーブル120の密度ρ及び断面積Aは、上記の算定式(「数35」)の「α」及び「θ」が含む定数に代入される値である(「数10」,「数25」を参照)。
・ケーブル120の全長:L
・ケーブル120のスパン121,122の長さ:l,l
・ケーブル120の密度:ρ
・ケーブル120の断面積:A
【0104】
構造データの取得の後、ケーブル120に測定装置100が取り付けられる。その後、測定装置100が取り付けられたケーブル120のスパン122が、ハンマ137によって叩かれ、ケーブル120に振動が加えられる(ステップS110)。
【0105】
ケーブル120に生じた振動の加速度は、加速度計135によって測定される。測定された振動の加速度は、データ処理部136に時刻歴応答値として記録される(ステップS115)。データ処理部136は、時刻歴応答値に対してフーリエ変換を行い、フーリエ変換後のデータのピーク値から固有振動数の実測値f が取得される(ステップS120)。
【0106】
上述のフーリエ変換の結果、たとえば、図4に示すようなデータが得られる。振動強度のピークが現れた周波数が、固有振動数の実測値f ~f として取得される。「数35」の算定式は、モード次数iを含んでいないので、「数35」の算定式への代入処理(後述される)のために、固有振動数の実測値f ~f をモード次数iと対応付けて取得する必要はない。したがって、たとえば、図4に示すように、周波数が小さな順から固有振動数の実測値f ~f を取得してもよい。
【0107】
なお、図4に示すデータでは、大きなピークが現れた周波数は、スパン121よりも長いスパン122の固有振動数であり、小さなピークが現れた周波数は、スパン121の固有振動数であることが分かる。図4に示すように、固有振動数の実測値f ~f がスパン121,122のいずれのものであるかを識別可能な場合もあるが、本実施形態では、このような識別作業は必要とされない。
【0108】
ステップS105において取得された構造データ及びステップS120において取得された固有振動数の実測値f ~f のデータは、「数35」の算定式に代入される。この結果、「数35」の算定式は、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EI、ダンパ110の特性k及び虚実比H(ケーブル120の減衰特性)を変数として含む関数として取り扱い可能になる。算定式への構造データ及び固有振動数の実測値f ~f のデータの入力の後、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EI、ダンパ110の特性k(バネ定数k,減衰定数c)及び虚実比Hの最適解を求めるための探索処理が行われる(ステップS125)。
【0109】
探索処理について、図5を参照して説明する。図5は、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EI、ダンパ110の特性k(バネ定数k,減衰定数c)及び虚実比Hを変化させたときの算定式(「数35」)の演算値の変化を表すグラフである。図5は、二次元座標として描かれているが、探索処理は、六次元座標(算定式の演算値、張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hの(5+n)個 (nは、ステップS120において取得された固有振動数の実測値f の数である)上で行われる。
【0110】
探索処理では、N通りの初期値が、張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hに対して設定される。図5では、1~6通り目の初期値が設定されている。
【0111】
張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hそれぞれの初期値が、算定式(「数35」)に代入されると、初期値における算定式の演算値が得られる。その後、張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hのうち少なくとも1つが初期値から変更される。変更後の値が算定式に代入され、算定式から他の演算値が得られる。張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hのうち少なくとも1つを順次変更して算定式から演算値を得る処理を繰り返すことにより、算定式における複数の極小値が取得され得る。以下の説明において、算定式に順次代入される張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hの値を、「候補値」と称する。
【0112】
図5には、4つの極小値(以下の説明において、「第1極小値」、「第2極小値」、「第3極小値」及び「第4極小値」と称する)が示されている。1通り目の初期値及び2通り目の初期値から探索が開始されると、第1極小値を得ることができる。3通り目の初期値から探索が開始されると、第2極小値を得ることができる。4通り目の初期値及び5通り目の初期値から探索が開始されると、第3極小値を得ることができる。6通り目の初期値から探索が開始されると、第4極小値を得ることができる。
【0113】
複数の極小値が得られた後、これらの極小値の中で最小のもの(すなわち、ゼロに最も近いもの)が得られたときの候補値が、張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hの算定値として決定される。図5では、第3の極小値が最小であるので、第3の極小値が得られたときの候補値が、張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hの算定値として決定される。
【0114】
上述の実施形態では、ケーブル120にダンパ110が取り付けられている。ダンパ110は、ケーブル120に生じた振動を減衰させる。このため、フーリエ変換によって得られたデータ中のピークは、ダンパ110が取り付けられていないケーブル120から得られるデータ中のピークよりも小さくなりやすい。したがって、固有振動数の実測値f を取得する工程(図3のステップS120)において、フーリエ変換後のデータからピークが見落とされやすい。
【0115】
たとえば、図6に示すように、固有振動数の実測値f に対応するピークが見落とされた場合、図4において固有振動数の実測値f ~f として取得された固有振動数は、固有振動数の実測値f ~f として取得され得る。この場合において、「数35」に示す算定式は、モード次数iを含んでいないので、ステップS120において取得された固有振動数の実測値をモード次数iと対応付けて代入する必要はない。したがって、固有振動数の実測値f に対応するピークが見落とされたとしても、モード次数iと固有振動数の実測値f との対応付けの誤りに起因する誤演算は生じない。このため、張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k、減衰定数c及び虚実比Hは、精度よく算定され得る。
【0116】
上述の実施形態では、「数34」の振動方程式中の虚数項から得られる虚数値を評価するために、虚実比H(ケーブル120の振動の減衰特性)を1つの変数として探索処理(図3のステップS125,図5)を行っている。振動方程式中の虚数項は、「数6」に示すダンパ110の特性の減衰項に由来するものであり、虚実比Hを用いて探索処理を行うことにより、ダンパ110の減衰特性をケーブル120の張力T等の算定に反映することができる。このため、ケーブル120の張力T等の算定精度は高くなる。
【0117】
虚実比Hを用いて探索処理を行うことにより、ケーブル120の張力T等の算定精度は高くなるが、探索処理における演算負荷は高くなる。したがって、探索処理における演算負荷を軽減するために、虚実比Hを考慮することなく探索処理が行われてもよい。すなわち、「数33」に示す「α」及び「β」の式は、以下に示すように、虚実比Hがゼロであるものとして表され得る。
【0118】
【数36】
【0119】
「数36」から得られる「α」及び「β」は、実数値であり、虚数を含まないので、張力T等を算定するための算定式は、以下に示すように、虚数項を持たない形式で表され得る。
【0120】
【数37】
【0121】
「数37」に示す算定式が用いられる場合、構造データ及び固有振動数の実測値f の代入処理の後、張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k及び減衰定数cを変数として、図5に示すものと同様の探索処理が行われる。この探索処理において、「数37」に示す算定式から得られた演算値がゼロに最も近くなるときの張力T、曲げ剛性EI、バネ定数k及び減衰定数cの候補値が、これらの算定値として決定される。
【0122】
「数37」に示す算定式も、「数35」に示す算定式と同様に、モード次数iを含んでいないので、ステップS120において取得された固有振動数をモード次数iと対応付けて代入する必要はない。したがって、モード次数iと固有振動数fとの対応付けの誤りに起因する誤演算は生じない。
【0123】
<第2実施形態>
第1実施形態では、振動方程式は、張力T等を変数として含む関数がゼロの値に等しくなる等式で表されている。振動方程式の関数の変数に様々な数値を代入して得られた複数の演算値を、張力T等を変数として含む振動方程式の関数が等しくなるゼロの値と比較することにより、張力T等が算定されている。代替的に、「数28」の固有振動数の理論式から得られる理論値と固有振動数の実測値とを比較して、張力T等が算定されてもよい。固有振動数の理論式は、「数28」に示すように、「θ」を含んでいるので、この理論式から得られる理論値は、実数部と虚数部とを含むが、実数部だけでなく虚数部をも考慮して張力T等を算定することにより、高い算定精度が得られる。なお、固有振動数の理論式は、「数28」に示すように、モード次数iを含んでいるが、振動強度のピークの見落としが生じにくい条件(たとえば、スパン121,122がともに長い場合など)では、固有振動数の理論値と実測値との比較に基づく張力T等の算定方法でも高い算定精度を得ることが可能である。第2実施形態では、固有振動数の理論値と実測値との比較に基づく張力T等の算定方法を説明する。
【0124】
固有振動数の実測値f は、実数であるから、固有振動数の理論式から得られる理論値f (「数28」及び「数29」)の実数部として表され得る。したがって、固有振動数の実測値f を基準とした理論値f の実数部の大きさ(すなわち、固有振動数の実測値f に対する理論値f の実数部の大きさの比)は、以下のように表され得る。
【0125】
【数38】
【0126】
「数28」の固有振動数の理論値f は、以下の定数及び変数を含んでいる。
・ケーブル120の全長:L
・ケーブル120のスパン121,122の長さ:l,l
・ケーブル120の密度:ρ
・ケーブル120の断面積:A
・ケーブル120の張力:T
・ケーブル120の曲げ剛性:EI
・ダンパ110の特性:k(k,c)
【0127】
「数28」の固有振動数の理論式における上述の定数及び変数に数値を代入することにより、固有振動数の理論値f の演算値が得られる。得られた演算値の実数部を固有振動数の実測値f と比較することにより、代入された数値が、固有振動数の実測値f を得るのに近い条件を表しているか否かを判定することが可能になる。すなわち、「数38」では、固有振動数の実測値f に対する演算値の実数部の比が1に近ければ近いほど、固有振動数の理論式に代入された数値が固有振動数の実測値f を得るのに近い条件を表していることが分かる。
【0128】
固有振動数の理論値f の実数部の大きさを基準とした理論値f の虚数部の大きさの比は、「数31」に示すように、虚実比Hとして定義されている。上述の如く、固有振動数の実測値f は、固有振動数の理論値f (「数29」)の実数部として表され得るので、以下の関係式が得られる。
【0129】
【数39】
【0130】
固有振動数の実測値f に対する「数28」の理論式の定数及び変数に数値を代入して得られた演算値の虚数部の大きさの比を、虚実比Hと比較することにより、代入された数値が、実測値f を得るのに近い条件を表しているか否かを判定することが可能になる。すなわち、「数39」では、固有振動数の実測値f に対する演算値の虚数部の大きさの比が虚実比Hに近ければ近いほど、固有振動数の理論式に代入された数値が固有振動数の実測値f を得るのに近い条件を表していることが分かる。
【0131】
「数38」及び「数39」に基づいて、張力T等を算定するための算定式を、以下のように設定することができる。
【0132】
【数40】
【0133】
「数40」の算定式の右辺の第1項は、「数38」の平方和であり、この第1項の定数及び変数に数値を代入することにより、固有振動数の理論値f (「数29」)の実数部と固有振動数の実測値f との比較処理がなされ得る。また、「数40」の算定式の右辺の第2項は、「数39」の平方和であり、この第2項の定数及び変数に数値を代入することにより、固有振動数の実測値f に対する演算値の虚数部の大きさ比と虚実比Hとの比較処理がなされ得る。
【0134】
すなわち、「数40」の算定式に代入された数値が、固有振動数の実測値f を得るのに近い条件を表していれば、「数40」の算定式から得られる演算値は、ゼロに近くなる。「数40」の算定式から得られる演算値がゼロに近くなるような張力T等の値を見出すために、第1実施形態と同様の代入処理(図3のステップS105~S120)及び探索処理(図3のステップS125,図5)が行われる。すなわち、「数40」の算定式に、構造データ(ケーブル120の長さL等)及び固有振動数の実測値f が代入され、その後、張力T等の候補値を順次変更しながら「数40」の算定式の演算値がゼロに最も近くなる条件が見いだされる。「数40」の算定式の演算値がゼロに最も近くなった演算値が得られたときの張力T等の候補値が、張力T等として算定される。
【0135】
固有振動数の理論値f の虚数部を実測することはできないが、虚実比Hを用いることにより、固有振動数の理論値における虚数部を考慮して、張力T等を算定することができる。したがって、虚数部を考慮しない張力T等の算定方法と比べて、張力T等の算定値の精度は高くなり得る。
【0136】
<第3実施形態>
第1実施形態の振動方程式(「数34」)は、図2に示すモデルに基づいて導出されている。図2に示すモデルでは、ケーブル120の両端は、単純支持(ピン支持)されている。しかしながら、実際の建築物(たとえば、橋梁)にケーブル120が組み込まれる場合には、ケーブル120の両端が回転剛性を有しており、単純支持されているとみなすことができないこともある。第3実施形態では、ケーブル120の両端が回転剛性を有している条件を付した図7に示すモデルに基づいて、振動方程式を導出する。
【0137】
図7に示すモデルでは、ケーブル120の両端が回転剛性を有している条件を付すために、ケーブル120の両端に、回転ばねが挿入されている。スパン121側の端部の回転ばね剛性は、スパン121側の端部の回転剛性を表し、以下の説明では、記号「K 」で表記する。また、スパン122側の端部の回転ばね剛性は、スパン122側の端部の回転剛性を表し、以下の説明では、記号「K 」で表記する。これらの回転ばね剛性K ,K は、ケーブル120の端部におけるケーブル120の傾斜のしやすさを表している。これらの回転ばね剛性K ,K がゼロに近ければ近いほど、図7に示すモデルは、図2に示すモデルにおける両端の支持構造(すなわち、単純支持構造)に近づく。一方、回転ばね剛性K ,K が大きくなればなるほど、ケーブル120の両端は、固定端に近づく。
【0138】
また、図7に示すモデルでは、計算量の低減のために、スパン122に対応して設けられた座標軸xの原点を、ダンパ110ではなく、スパン122側のケーブル120の端部に設けている。
【0139】
図7に示すモデルにおいて、ケーブル120の左端(x=0)における境界条件は、以下のように表される。
【0140】
【数41】
【0141】
図7に示すモデルにおいて、ケーブル120の右端(x=0)における境界条件は、以下のように表される。
【0142】
【数42】
【0143】
ダンパ110の設置位置(x=l,x=l)では、ケーブル120の撓み、撓み角及び曲率が連続しているという境界条件1を設定することができる。ダンパ110の設置位置における境界条件1を以下に示す。
【0144】
【数43】
【0145】
ダンパ110の設置位置(x=l,x=l)では、鉛直方向において力が釣り合っているという境界条件2を更に設定することができる。境界条件2は、以下の「数44」によって表され得る。
【0146】
【数44】
【0147】
「数10」に示す一般解を、上述の境界条件の式(「数41」~「数44」)に当てはめると、ケーブル120の左端について、以下の関係式が得られる。なお、以下の関係式は、計算量を低減するために、左右の回転ばね剛性K ,K は互いに等しいという仮定の下で作成されており、これらの回転ばね剛性K ,K は、記号「K」で表されている。
【0148】
【数45】
【0149】
「数45」は、以下の行列式で表され得る。
【0150】
【数46】
【0151】
ケーブル120の右端は、左端と対称であるから、ケーブル120の右端について、以下の関係式が得られる。
【0152】
【数47】
【0153】
ダンパ110の設置位置については、以下の関係式が成り立つ。
【0154】
【数48】
【0155】
【数49】
【0156】
上記の「数48」及び「数49」は、「数46」及び「数47」に基づいて、以下の行列式で表記され得る。
【0157】
【数50】
【0158】
行列式Mは、ゼロになるので、行列式Mを以下のように展開することができる。
【0159】
【数51】
【0160】
加法定理を用いて、「数51」は、以下のように書き換え可能である。
【0161】
【数52】
【0162】
「数52」のG~Gは、以下のように表される。
【0163】
【数53】
【0164】
「数52」に対して、正規化処理をした式を以下に示す。
【0165】
【数54】
【0166】
「数54」は、以下のようにi次モードの式に書き換えられる。
【0167】
【数55】
【0168】
「数55」の分母及び分子は、「eβL」で割られており、この処理により、「数55」の桁落ち及び発散が防止されている。「eβL」で割る処理により、G1i~G3i中の双曲線関数は、例えば、以下のように表され得る。
【0169】
【数56】
【0170】
「数55」中のsinαL及びcosαLは、複素数であるから、以下のように表され得る。
【0171】
【数57】
【0172】
「数57」に示すように、sinαL及びcosαLは、双曲線関数を含むので、桁落ち及び発散を防止するために、以下の数式で示される処理が行われ得る。
【0173】
【数58】
【0174】
「数58」を、「数55」に適用すると、「数55」は、以下のように書き換えられ得る。以下の式は、ケーブル120の両端に、回転ばねが挿入された図7のモデルのi次モードの振動方程式である。
【0175】
【数59】
【0176】
「数59」の振動方程式は、ケーブル120の固有振動数の理論値f 、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EI、回転ばね剛性K及びダンパ110の特性k等の間の関係を表している。「数59」の振動方程式において、実数項及び虚数項がともにゼロになれば、当該振動方程式が成り立つ。
【0177】
「数59」の振動方程式は、以下の定数及び変数を含んでいる。
・ケーブル120の全長:L
・ケーブル120のスパン121,122の長さ:l,l
・ケーブル120の密度:ρ
・ケーブル120の断面積:A
・ケーブル120の固有振動数の理論値:f
・ケーブル120の張力:T
・ケーブル120の曲げ剛性:EI
・ダンパ110の特性:k(k,c)
・虚実比(ケーブル120の振動の減衰特性):H
・回転ばね剛性:K
【0178】
「数59」の振動方程式の左辺の関数の定数及び変数に数値を代入することにより、演算値が得られる。当該演算値を、「数55」の振動方程式が成り立つときの実数項及び虚数項の値(すなわち、ゼロ)と比較することにより、代入された数値が、振動方程式を成り立たせる真値に近いか否かを判定することが可能になる。この比較処理のために、振動方程式の左辺の関数を以下のように表す。
【0179】
【数60】
【0180】
「数60」を用いて、張力T等を算定するための算定式を以下のように設定することができる。
【0181】
【数61】
【0182】
上記の算定式(「数61」)では、実数項及び虚数項の演算値の正負の問題をなくすため、「数61」の振動方程式の実数項の平方和と虚数項の平方和との和を算定している。実数項から得られる演算値及び虚数項から得られる演算値の両方の大きさがゼロに近ければ、「数61」の算定式から得られた演算値は、ゼロに近くなる。すなわち、「数61」の算定式からゼロに近い演算値が得られれば、「数59」の振動方程式の実数項及び虚数項の大きさの和がゼロに近くなる。この場合、「数61」の算定式の右辺に代入された各値(ケーブル120の全長L~回転ばね剛性K)が、「数59」の振動方程式を成り立たせる真値に近いことが推定される。
【0183】
「数61」の算定式を用いた張力T等の算定方法は、第1実施形態の算定方法と同様である。すなわち、「数61」の算定式に、ケーブル120に関する構造データ(ケーブル120の全長L,ケーブル120のスパン121,122の長さl,l,ケーブル120の密度ρ,ケーブル120の断面積A)が代入される(図3のステップS105)。加えて、ケーブル120の固有振動数の実測値f が更に代入される(図3のステップS110~ステップS120)。これらの代入処理の結果、「数61」の算定式は、以下の変数を有する関数になる。
・ケーブル120の張力:T
・ケーブル120の曲げ剛性:EI
・ダンパ110の特性:k(k,c)
・虚実比(ケーブル120の振動の減衰特性):H
・回転ばね剛性:K
【0184】
これらの変数について、最適値を探索する探索処理(図3のステップS125,図5)が行われると、「数61」の算定式の演算値がゼロに最も近くなる張力T等が算定される。
【0185】
「数59」の振動方程式は、モード次数iを含んでいない。したがって、「数59」の振動方程式に基づいて作成された「数61」の算定式も、モード次数iを含んでいない。このため、算定式にケーブル120の固有振動数の実測値f を代入するときにおいて、モード次数iと固有振動数の実測値f とを対応付ける必要はなく、モード次数iと固有振動数の実測値f との間の不整合に起因する誤演算は生じない。
【0186】
「数59」の振動方程式及び「数61」の算定式は、図7に示すモデルに基づいており、図7に示すモデルでは、ケーブル120の両端に回転ばねが挿入されている。回転ばねの特性は、回転ばね剛性Kで表される。回転ばね剛性Kが大きければ、ケーブル120の両端は、固定端に近い状態になっており、逆に、回転ばね剛性Kが小さければ、ケーブル120の両端は、自由端に近い状態になっている。回転ばね剛性Kは、探索処理(図3のステップS125,図5)において、張力T等とともに変数として取り扱われる。このような探索処理が行われれば、ケーブル120の両端の状態を考慮しながら、張力T等が算定され得る。このため、張力T等の算定値の精度が高くなる。
【0187】
<第4実施形態>
第2実施形態において、ケーブル120の固有振動数の理論式(「数28」)に基づいて、張力T等を算定するための算定式(「数40」)が導出されている。「数28」の理論式は、図2のモデルに基づいているが、図7のモデルが、ケーブル120の固有振動数の理論式を導出するために用いられてもよい。この場合、ケーブル120の両端の回転ばね剛性Kを考慮した理論式を得ることができる。第4実施形態では、ケーブル120の両端の回転ばね剛性Kを考慮した理論式の導出方法及び導出された理論式を利用した張力T等の算定方法が説明される。
【0188】
図7のモデルに基づいて導出された「数55」は、以下のように書き換え可能である。
【0189】
【数62】
【0190】
「数62」の「G4i」及び「θ」の式について、分母及び分子を「eβL」で割ることにより、桁落ちや発散の問題は解消される。
【0191】
「数62」に基づいて、以下の関係式を得ることができる。
【0192】
【数63】
【0193】
「数63」と「数32」とから、以下のように固有振動数の理論式が導出される。以下の理論式は、第3実施形態において説明された境界条件(「数41」~「数44」)に基づいて設定されている。したがって、以下の理論式は、ケーブル120の固有振動数の理論値f 、ケーブル120の張力T、ケーブル120の曲げ剛性EI、回転ばね剛性K及びダンパ110の特性k等の間の関係を表している。
【0194】
【数64】
【0195】
「数64」の理論式を、「数40」の算定式に当てはめて、第2実施形態と同様の演算処理(探索処理等:図3図5を参照)を行うことにより、固有振動数の理論値における虚数部を考慮して、張力T等を算定することができる。「数64」の理論式は、回転ばね剛性Kを「G4i」に含んでいるので(「数46」,「数53」,「数62」を参照)、張力T等は、ケーブル120の両端の状態を考慮しながら算定され得る。このため、張力T等の算定値の精度が高くなる。
【0196】
第1実施形態乃至第4実施形態において、ダンパ110の特性kは、「数6」で表されている。「数6」は、粘性せん断ダンパの特性を表しているが、ダンパ110の特性kを表す式は、ダンパ110の種類に応じて変更され得る。たとえば、高減衰ゴムダンパがダンパ110として用いられる場合には、ダンパ110の特性kは、「数65」のように表され得る。また、オイルダンパがダンパ110として用いられる場合には、ダンパ110の特性kは、「数66」のように表され得る。したがって、第1実施形態乃至第4実施形態の算定方法は、ダンパ110の特性kの式を、ダンパ110の種類に応じて変更することにより、様々な種類のダンパ110が設けられたケーブル120の張力T等の算定に利用可能である。
【0197】
【数65】
【0198】
【数66】
【産業上の利用可能性】
【0199】
上述の実施形態に関連して説明された技術は、一次元梁としてモデル化可能な様々な線状体に作用している張力の調査や線状体に取り付けられたダンパの特性の調査に好適に利用される。
【符号の説明】
【0200】
110・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダンパ
120・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケーブル(線状体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7