(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128775
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】多目的車両
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230907BHJP
F01M 11/00 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
B62D25/20 N
F01M11/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033362
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】門出 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D203
3G015
【Fターム(参考)】
3D203AA37
3D203BB03
3D203BB27
3D203CB34
3D203DA02
3G015BK00
3G015DA01
3G015EA17
3G015FA04
(57)【要約】
【課題】開口を大きくすることなく、スキッドプレートに付着したエンジンオイル等の廃液がスキッドプレートの広範囲に広がってしまうことを防ぎ、さらに当該廃液を簡易に取り除くことができる多目的車両を提供する。
【解決手段】下方から車体本体を覆うスキッドプレート32と、廃液用のドレン口と、が備えられ、スキッドプレート32は、スキッドプレート32のうちドレン口に対向する箇所に設けられた開口部42を有し、スキッドプレート32のうち開口部42の外周部を囲うように設けられ、開口部42の付近に付着した液状物の広がりを防ぐ広がり防止部43が備えられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から車体本体を覆うスキッドプレートと、
廃液用のドレン口と、が備えられ、
前記スキッドプレートは、前記スキッドプレートのうち前記ドレン口に対向する箇所に設けられた開口部を有し、
前記スキッドプレートのうち前記開口部の外周部を囲うように設けられ、前記開口部の付近に付着した液状物の広がりを防ぐ広がり防止部が備えられている多目的車両。
【請求項2】
前記広がり防止部は、前記スキッドプレートの上面部から上方に隆起している凸形状に形成されている請求項1に記載の多目的車両。
【請求項3】
前記広がり防止部から前記開口部の位置する側とは反対側に延びるように構成されている補強部が備えられている請求項1又は2に記載の多目的車両。
【請求項4】
前記補強部は、前記スキッドプレートの上面部から上方に隆起している凸形状に形成されている請求項3に記載の多目的車両。
【請求項5】
前記ドレン口は、オイル排出用のドレン口である請求項1から4のいずれか一項に記載の多目的車両。
【請求項6】
前記ドレン口は、ラジエータ冷却水排出用のドレン口である請求項1から4のいずれか一項に記載の多目的車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の底面に下方から車体を保護するスキッドプレートが備えられている多目的車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、多目的車両は、荷台の下方にエンジンが備えられているものがある。エンジンの底部には、エンジンオイルが貯留されているオイルパンが備えられている。一般に、オイルパンには、オイルパンに貯留されているエンジンオイルを排出するためのドレン口が設けられている。
【0003】
また、多目的車両は、車体の底面に下方から車体を覆い、車両走行による飛び石等からエンジン等を保護するスキッドプレートが備えられているものがある。スキッドプレートには、ドレン口から排出されたエンジンオイルを通過させるための開口が形成されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術では、オイルパンのドレン口から排出されたエンジンオイルを、スキッドプレートの開口を通過させて、廃液用容器に収容していたが、このとき、スキッドプレートの開口の付近にエンジンオイルが付着し、風等により、付着したエンジンオイルがスキッドプレートの広範囲に広がってしまうことがあった。スキッドプレートに広がったエンジンオイルを取り除くためには、広範囲にわたり清掃作業をする必要があるが、このような清掃作業は、スキッドプレートを取り外す必要があり、手間がかかるものであった。
【0006】
スキッドプレートの開口の周囲にエンジンオイルが付着してしまうことを防ぐには、開口を大きくするという方法が考えられるが、開口を大きくすると、飛び石等からエンジンを防ぐ能力が低下してしまうおそれがあった。また、開口を大きくすることにより、スキッドプレートの強度が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、開口を大きくすることなく、スキッドプレートに付着したエンジンオイル等の廃液がスキッドプレートの広範囲に広がってしまうことを防ぎ、さらに当該廃液を簡易に取り除くことができる多目的車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多目的車両は、下方から車体本体を覆うスキッドプレートと、廃液用のドレン口と、が備えられ、前記スキッドプレートは、前記スキッドプレートのうち前記ドレン口に対向する箇所に設けられた開口部を有し、前記スキッドプレートのうち前記開口部の外周部を囲うように設けられ、前記開口部の付近に付着した液状物の広がりを防ぐ広がり防止部が備えられている。
【0009】
本特徴構成によれば、開口部の付近にエンジンオイルのような液状物が付着したとしても、広がり防止部により、当該液状物の広がりが防止される。また、広がり防止部が開口部の外周部に設けられていることにより、当該液状物は、開口部の付近の外周部に留まることとなるため、開口部を介して布等により拭き取り作業を行えばよく、簡易に清掃作業を行うことができる。
【0010】
本発明においては、前記広がり防止部は、前記スキッドプレートの上面部から上方に隆起している凸形状に形成されていると好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、広がり防止部を形成するためには、スキッドプレートの一部を隆起させるだけでよく、容易に広がり防止部を形成することが可能となる。
【0012】
本発明においては、前記広がり防止部から前記開口部の位置する側とは反対側に延びるように構成されている補強部が備えられていると好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、広がり防止部の外周部分が補強部により補強され、開口部及び広がり防止部の外周部分の強度を上げることが可能となる。
【0014】
本発明においては、前記補強部は、前記スキッドプレートの上面部から上方に隆起している凸形状に形成されていると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、補強部を形成するためには、スキッドプレートの一部を隆起させるだけでよく、容易に補強部を形成することが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記ドレン口は、オイル排出用のドレン口であると好適である。
【0017】
本特徴構成によれば、オイル排出用のドレン口から排出されたオイルがスキッドプレートに付着したとしても、スキッドプレート上にオイルが広がることを防ぐことができる。
【0018】
本発明においては、前記ドレン口は、ラジエータ冷却水排出用のドレン口であると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、ラジエータ冷却水排出用のドレン口から排出されたラジエータ冷却水がスキッドプレートに付着したとしても、スキッドプレート上にラジエータ冷却水が広がることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】車体フレーム及びスキッドプレートの構成を示す平面図である。
【
図3】開口部及び広がり防止部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態における前後方向及び上下方向は、特段の説明がない限り、以下のように記載している。矢印Fの方向を「前」(
図1参照)、矢印Bの方向を「後」(
図1参照)、矢印Uの方向を「上」(
図1参照)、矢印Dの方向を「下」(
図1参照)とする。前後方向での前向き姿勢を基準として右側に相当する方向が「右」であり、左側に相当する方向が「左」である。
【0022】
〔全体構成について〕
図1には、多目的車両を示している。多目的車両には、車体フレーム3を有する車両本体が備えられている。車体フレーム3の前部に、右及び左の前輪1が支持され、車体フレーム3の後部に、右及び左の後輪2が支持されている。車両本体において、前輪1と後輪2との間に搭乗者が搭乗可能な運転部4が備えられている。運転部4の後側に荷台6が備えられている。走行機体における荷台6よりも下方には、エンジン8が備えられている。
【0023】
運転部4の内部の前側に前側座席11及び後側に後側座席12が備えられている。前側座席11の前方の運転パネル13に、前輪1を操向操作する操縦ハンドル14が備えられている。
【0024】
〔エンジンの構成について〕
エンジン8の底部には、オイルパン8aが備えられている。オイルパン8aには、エンジンオイルが貯留されている。
図4に示すように、オイルパン8aの底面部には、エンジンオイル排出用のドレン45が形成されている。ドレン45は、廃液用のドレン口45bにドレンボルト45aが装着されている。メンテナンス作業の際には、ドレンボルト45aを取り外すことにより、オイルパン8aに貯留されているエンジンオイルを排出することができる。
【0025】
〔車体フレームの構成について〕
図1から
図3に示すように、左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2はそれぞれ、サスペンション機構7(
図3参照)を介して上下移動可能に車体フレーム3に支持されている。車体フレーム3は、前後方向に延びる複数のフレーム体、横方向に延びる複数のフレーム体、縦方向に延びる複数のフレーム体等からなる枠組み形状に構成されている。
【0026】
車体フレーム3における前後方向に延びる複数のフレーム体として、
図2に示すように、運転部4の下方に位置する外前部フレーム21と、エンジン8の下方に位置する後下部フレーム22とが備えられている。左右一対の外前部フレーム21と左右一対の後下部フレーム22とは、前後方向に沿って連なるように、連結部材23を介して連結されている。
【0027】
左右の後下部フレーム22は、それぞれ、角筒材(角パイプ)にて構成され、かつ、外前部フレーム21の後部に連なり機体前後方向に延びる前側部分22aと、前側部分22aの後部に連なり後側に向かうほど機体内側に位置するように傾斜する状態で延びる中間傾斜部分22bと、中間傾斜部分22bの後部に連なり機体前後方向に延びる後側部分22cとを備えている。すなわち、左右一対の前側部分22aは左右の外前部フレーム21と同じ幅広の間隔を有する状態で備えられている。一方、左右一対の後側部分22cは、それよりも幅狭の間隔を有する状態で備えられている。左右の後下部フレーム22は、後輪2の後側部分に対応する位置まで延びている。
【0028】
左右の外前部フレーム21の機体内側に、機体前後方向に延びる左右の前後方向支持部材25が備えられている。前後方向支持部材25は、外前部フレーム21の前後中央部分に対応する位置から外前部フレーム21の前端に対応する位置まで延びている。左右の前後方向支持部材25の前端側部分には、前後方向に沿って連なるように、機体前後方向前方に延びる内前部フレーム24が接続されている。左右の内前部フレーム24は、それぞれ、角筒材(角パイプ)にて構成されている。左右の内前部フレーム24は、前輪1の前側部分に対応する位置まで延びている。
【0029】
左右それぞれにおいて、内前部フレーム24の後側端部と外前部フレーム21の前側端部とに亘って、斜め支持部材26が備えられている。斜め支持部材26は、それぞれ、直線状の部材からなり、前側に向かうほど機体内側に位置するように配置されている。
【0030】
車体フレーム3における横方向に延びる複数のフレーム体として、第一横向き支持部材27、第二横向き支持部材28、第三横向き支持部材29、第四横向き支持部材30及び第五横向き支持部材31が備えられている。
【0031】
第一横向き支持部材27は、左右の外前部フレーム21のうち斜め支持部材26よりも後側部分に、左右の外前部フレーム21に亘って備えられている。第二横向き支持部材28は、左右の外前部フレーム21のうち第一横向き支持部材27よりも後側部分、かつ、機体前後方向中央側に、左右の外前部フレーム21に亘って備えられている。
【0032】
第三横向き支持部材29は、後下部フレーム22の前端部分に、左右の後下部フレーム22に亘って備えられている。第四横向き支持部材30は、後側部分22cの前側部分に、左右の後側部分22cに亘って備えられている。第五横向き支持部材31は、後下部フレーム22の後端部分に、左右の後下部フレーム22に亘って備えられている。
【0033】
〔スキッドプレートの構成について〕
図2に示すように、車体本体の底部には、車体本体を下方から覆うスキッドプレート32が備えられている。スキッドプレート32は、複数のプレートからなり、それぞれ、左右の外前部フレーム21の間、及び、左右の後下部フレーム22の間に取り付けられている。
【0034】
スキッドプレート32は、スキッドプレート32を構成する複数のプレートとして、第一プレート32A、第二プレート32B、第三プレート32C、第四プレート32D及び第五プレート32Eを有しており、これら複数のプレートは、それぞれ、複数の開口が形成されたパンチングメタルから構成されている、
【0035】
左右の斜め支持部材26と第一横向き支持部材27との間には、第一プレート32Aが取り付けられている。第一横向き支持部材27と第二横向き支持部材28との間には、第二プレート32Bが取り付けられている。第二横向き支持部材28と第三横向き支持部材29との間には、第三プレート32Cが取り付けられている。第三横向き支持部材29と第四横向き支持部材30との間には、第四プレート32Dが取り付けられている。第四横向き支持部材30と第五横向き支持部材31との間には、第五プレート32Eが取り付けられている。
【0036】
スキッドプレート32には、スキッドプレート32の剛性を高める補強リブ41(「補強部」に相当)が設けられている。補強リブ41は、機体前後方向及び機体左右方向に沿った直線状に設けられている。それぞれの補強リブ41は、スキッドプレート32の上面部から上方に隆起している凸形状に形成されており、曲げ成形によりスキッドプレート32に一体形成されている。
【0037】
図2及び
図3に示すように、第三プレート32Cのうち、オイルパン8aのドレン口45bに対向する箇所に開口部42が設けられている。開口部42は、中心Xを中心とした円形に形成されている。
【0038】
第三プレート32Cのうち開口部42の周囲には、ドレン口45bから排出されたエンジンオイル等の液状物が開口部42の付近に付着した際、付着した液状物の広がりを防ぐ広がり防止部43が備えられている。
【0039】
広がり防止部43は、第三プレート32Cのうち開口部42の外周部を囲うように設けられている。具体的には、広がり防止部43は、開口部42の縁から所定距離だけ離れた箇所に、開口部42の縁に沿った形状、つまり、開口部42の中心Xを中心とし、開口部42と同心円となるように形成されている。
図4に示すように、広がり防止部43は、スキッドプレート32の上面部から上方に隆起している凸形状に形成されており、曲げ成形によりスキッドプレート32に一体形成されている。
【0040】
図2及び
図3に示すように、広がり防止部43は、機体前後方向に沿って延びるように形成された補強リブ41と機体左右方向に沿って延びるように形成された補強リブ41とが交差する位置に形成されている。これにより、広がり防止部43から開口部42の位置する側とは反対側に延びるように機体前後方向及び機体前後方向に沿って延びるように補強リブ41が形成され、補強リブ41と広がり防止部43とは一体的に構成される。つまり、広がり防止部43は、補強リブ41の一部として構成されており、スキッドプレート32に付着した液状物の広がりを防ぐだけでなく、スキッドプレート32の剛性を高める機能をも有する。
【0041】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。以下の別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してよい。なお、本発明の範囲は、各実施形態の内容に限定されるものではない。
【0042】
(1)上記実施形態において、開口部42及び広がり防止部43は、円形に形成されている場合を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、開口部42及び広がり防止部43は、矩形形状に構成されていてもよい。また、開口部42と広がり防止部43とは、異なる形状に形成されていてもよい。
【0043】
(2)上記実施形態において、広がり防止部43は、機体前後方向に沿って延びるように形成された補強リブ41と機体左右方向に沿って延びるように形成された補強リブ41とが交差する位置に形成されている場合を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、広がり防止部43は、補強リブ41とは別体に構成されていてもよい。また、
図3に示すように、広がり防止部53の一部を補強リブ41で構成されている構成、つまり、直線状の補強リブ41と半円形状に形成された広がり防止部53とを組み合わせることにより、開口部52を囲むように構成されていてもよい。
【0044】
(3)上記実施形態において、開口部42及び広がり防止部43は、スキッドプレート32と一体に形成されている場合を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、開口部42及び広がり防止部43は、角筒材等で構成され、スキッドプレート32の上面部に取り付けられている構成としてもよい。
【0045】
(4)上記実施形態において、スキッドプレート32のうち、オイルパン8aのドレン口45bに対向する箇所に開口部42が設けられている場合を例に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、例えば、ラジエータが備えられた多目的車両においては、ラジエータ冷却水排出用のドレン口に対向する位置に開口部42が設けられる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、人員の移動や荷物の運搬、レクリエーション等に使用される多目的車両に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
32 :スキッドプレート
41 :補強リブ(補強部)
42 :開口部
43 :広がり防止部
45b :ドレン口