(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128785
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/30 20060101AFI20230907BHJP
F16F 13/14 20060101ALI20230907BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
F16F13/30
F16F13/14 A
B60K5/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033377
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】平野 正明
(72)【発明者】
【氏名】久米 廷志
【テーマコード(参考)】
3D235
3J047
【Fターム(参考)】
3D235BB18
3D235BB23
3D235CC01
3D235EE05
3J047AA05
3J047AB05
3J047CA04
3J047CA16
3J047FA01
(57)【要約】
【課題】磁気機能性流体に磁界を及ぼすことで特性の制御を可能としつつ、取付ブラケットや防振連結対象部材等のアウタ装着部材の大型化を抑制できる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】磁気機能性流体が封入された複数の流体室46がオリフィス通路48によって相互に連通されており、オリフィス通路48に磁界を及ぼす磁気ユニット14がアウタ筒部材18に外挿状態で設けられている流体封入式防振装置10において、磁気ユニット14は磁界を形成する磁界発生部50と磁束を誘導する磁路形成部52とを備えて、オリフィス通路48の外周に配された磁路形成部52の磁気ギャップ部68からオリフィス通路48に磁界が及ぼされると共に、アウタ筒部材18の外周面には、アウタ筒部材18と防振連結対象部材84との連結を実現するアウタ装着部材72が取り付けられる取付部70が、磁界発生部50を軸方向に外れて設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナ部材とアウタ筒部材とが本体ゴム弾性体で連結されていると共に、
磁気機能性流体が封入された複数の流体室が内部に設けられて、
それら複数の流体室を相互に連通するオリフィス通路が設けられており、
該オリフィス通路内の磁気機能性流体に磁界を及ぼす磁気ユニットが該アウタ筒部材に対して外挿状態で設けられている流体封入式防振装置において、
前記磁気ユニットは、通電により磁界を形成する磁界発生部と、該磁界発生部が形成した磁界の磁束を誘導する磁路形成部とを、備えており、
該磁路形成部に設けられた磁気ギャップ部が前記オリフィス通路の外周に配置されており、該磁気ギャップ部から該オリフィス通路内の磁気機能性流体に磁界が及ぼされるようになっていると共に、
前記アウタ筒部材の外周面には、前記アウタ筒部材と防振連結対象部材との連結を実現するアウタ装着部材が取り付けられる取付部が、該磁界発生部を軸方向に外れた位置に設けられている流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記アウタ装着部材が前記アウタ筒部材を前記防振連結対象部材に連結する取付ブラケットとされており、
該アウタ筒部材に取り付けられた該取付ブラケットが、前記磁路形成部を貫通している請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記磁路形成部が、前記磁界発生部の内周側を軸方向に延びる内周磁路と、該磁界発生部の外周側を軸方向に延びる外周磁路とを、備えており、
該磁路形成部の前記磁気ギャップ部が該磁路形成部の該内周磁路に形成されていると共に、
前記取付ブラケットが該磁路形成部の該外周磁路を貫通して外周へ突出している請求項2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
複数の前記磁界発生部が前記アウタ筒部材の前記取付部に対して軸方向の両側に配されている請求項1~3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
軸方向内方へ向けて開口する凹形状とされて相互に向かい合わせに配された2つの溝状金具によって前記磁路形成部が構成されており、
各該溝状金具の内側に前記磁界発生部が配されていると共に、
それら2つの溝状金具の内周壁部間に前記磁気ギャップ部が設けられている請求項1~4の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウント等に適用される防振装置に係り、特に内部に封入された流体の流動作用による防振効果が発揮される流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンマウントやデフマウント等に用いられる流体封入式防振装置が知られている。流体封入式防振装置は、独国特許出願公開第102011117749号明細書(特許文献1)等に開示されているように、インナ部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されており、内部に複数の流体室が設けられていると共に、それら流体室を相互に連通するオリフィス通路が形成された構造を有している。そして、流体封入式防振装置は、封入流体がオリフィス通路を通じて流体室間を流動することによって、流体の流動作用に基づく防振効果を発揮する。
【0003】
また、特許文献1には、流体室への封入流体として、作用磁界の強さに応じて粘性が変化する磁気粘性流体を採用することが提案されている。特許文献1の流体封入式防振装置は、通電によって磁界を形成する磁気ユニットを備えており、磁気ユニットの発生磁界を磁気粘性流体に及ぼすことによって、磁気粘性流体の流動特性を変化させることが可能とされている。そして、特許文献1の流体封入式防振装置によれば、磁気ユニットから磁気粘性流体に及ぼされる磁界の強さを制御することによって、磁気粘性流体の流動性(粘性)が制御されて、減衰や支持剛性などの特性が変更設定されることから、優れた防振性能やデファレンシャルギアの支持性能等が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011117749号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の
図4に示されているように磁気ユニットを流体封入式防振装置の内部に配設しようとすると、通電される磁気ユニットが封入流体に接触しないように液密なシール構造を設ける必要が生じる等して、構造が複雑になり易い。そこで、特許文献1の
図2,3にも示されているように、磁気ユニットは、アウタ筒部材の外周面に取り付けられる構造とされ得る。
【0006】
しかしながら、磁気ユニットがアウタ筒部材の外周面に取り付けられていると、防振連結対象部材とアウタ筒部材との連結を実現するアウタ装着部材が、アウタ筒部材への取付部分において磁気ユニットの更に外周に配されることとなって、アウタ筒部材への取付部分の大型化が問題になり易いという課題があった。
【0007】
本発明の解決課題は、磁気機能性流体に磁界を及ぼすことで特性の制御を可能としつつ、アウタ筒部材と防振連結対象部材との連結を実現するアウタ装着部材の大型化を抑制することができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第一の態様は、インナ部材とアウタ筒部材とが本体ゴム弾性体で連結されていると共に、磁気機能性流体が封入された複数の流体室が内部に設けられて、それら複数の流体室を相互に連通するオリフィス通路が設けられており、該オリフィス通路内の磁気機能性流体に磁界を及ぼす磁気ユニットが該アウタ筒部材に対して外挿状態で設けられている流体封入式防振装置において、前記磁気ユニットは、通電により磁界を形成する磁界発生部と、該磁界発生部が形成した磁界の磁束を誘導する磁路形成部とを、備えており、該磁路形成部に設けられた磁気ギャップ部が前記オリフィス通路の外周に配置されており、該磁気ギャップ部から該オリフィス通路内の磁気機能性流体に磁界が及ぼされるようになっていると共に、前記アウタ筒部材の外周面には、前記アウタ筒部材と防振連結対象部材との連結を実現するアウタ装着部材が取り付けられる取付部が、該磁界発生部を軸方向に外れた位置に設けられているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、アウタ筒部材の外周面に取り付けられた磁気ユニットが形成する磁界が、流体室に封入された磁気機能性流体に及ぼされることによって、振動減衰性能や振動絶縁性能、パワーユニットやデファレンシャルギア等の支持剛性などの特性を変更することができる。特に、磁気ユニットが磁気機能性流体に及ぼす磁界の強さを制御することによって、上記の如き流体封入式防振装置の特性を調節設定することができて、優れた性能を得ることができる。また、磁気ユニットがアウタ筒部材の外周面に取り付けられていることから、磁気ユニットが流体室に封入された磁気機能性流体に接触せず、配設構造の簡単化が図られる。
【0011】
取付ブラケットや防振連結対象部材等のアウタ装着部材が取り付けられるアウタ筒部材の取付部が、磁気ユニットを構成するコイル等の磁界発生部を軸方向に外れて設定されている。これにより、アウタ装着部材が磁界発生部の外周に配される場合に比して、アウタ装着部材のアウタ筒部材への取付部分を小径化することができる。
【0012】
第二の態様は、第一の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記アウタ装着部材が前記アウタ筒部材を前記防振連結対象部材に連結する取付ブラケットとされており、該アウタ筒部材に取り付けられた該取付ブラケットが、前記磁路形成部を貫通しているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、磁界発生部から軸方向に外れた位置で取付ブラケットをアウタ筒部材の外周面に取り付けながら、磁路形成部の配設態様の自由度を大きく得ることができる。
【0014】
第三の態様は、第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記磁路形成部が、前記磁界発生部の内周側を軸方向に延びる内周磁路と、該磁界発生部の外周側を軸方向に延びる外周磁路とを、備えており、該磁路形成部の前記磁気ギャップ部が該磁路形成部の該内周磁路に形成されていると共に、前記取付ブラケットが該磁路形成部の該外周磁路を貫通して外周へ突出しているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、磁気ギャップ部が内周磁路に形成されていることによって、アウタ筒部材の内周側に封入された磁気機能性流体に対して磁気ギャップ部から磁界を効率的に及ぼすことができる。また、取付ブラケットが外周磁路を貫通していることにより、例えば取付ブラケットの防振連結対象部材への締結部分を磁路形成部よりも外周へ突出させることができる。
【0016】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、複数の前記磁界発生部が前記アウタ筒部材の前記取付部に対して軸方向の両側に配されているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、アウタ装着部材のアウタ筒部材への取付位置が複数の磁界発生部の軸方向間とされることで、例えばアウタ装着部材をアウタ筒部材に対して軸方向中央に近い位置で取り付けることが容易になる。また、アウタ装着部材のアウタ筒部材への取付位置の軸方向両側に磁界発生部を設けることによって、磁界発生部を優れたスペース効率で配することができて、磁界発生部が形成する磁界の強さの設定自由度を大きく得ること等が可能になる。
【0018】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、軸方向内方へ向けて開口する凹形状とされて相互に向かい合わせに配された2つの溝状金具によって前記磁路形成部が構成されており、各該溝状金具の内側に前記磁界発生部が配されていると共に、それら2つの溝状金具の内周壁部間に前記磁気ギャップ部が設けられているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、磁界発生部の周囲に磁路形成部が設けられた磁気ユニットを簡単に得ることができる。また、向かい合わせに配された2つの溝状金具の内周側壁部を軸方向で相互に離隔させることにより、それら2つの溝状金具の内周壁部間に磁気ギャップを容易に設けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、流体封入式防振装置において、磁気機能性流体に磁界を及ぼすことで特性の制御を可能としつつ、アウタ筒部材と防振連結対象部材との連結を実現するアウタ装着部材におけるアウタ筒部材への取付部分の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す斜視図
【
図2】
図1に示すエンジンマウントの断面図であって、
図3のII-II断面に相当する図
【
図4】
図1のエンジンマウントを構成する本体ゴム弾性体の一体加硫成形品にオリフィス部材が取り付けられた状態を示す斜視図
【
図5】
図1のエンジンマウントを構成するオリフィス部材の正面図
【
図6】本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1~
図3には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、マウント本体12に磁気ユニット14が取り付けられた構造を有している。マウント本体12は、インナ部材16とアウタ筒部材18とが本体ゴム弾性体20によって連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは
図2中の上下方向を、左右方向とは
図2中の左右方向を、前後方向とは軸方向である
図1中の左右方向を、それぞれ言う。
【0024】
インナ部材16は、直線的に延びる略円筒形状とされており、金属や合成樹脂等によって形成された高剛性の部材とされている。インナ部材16は、ステンレス鋼や合成樹脂等の非磁性材料で形成されていることが望ましい。インナ部材16の軸方向中央部分には、ストッパ部材22が取り付けられている。ストッパ部材22は、インナ部材16に対して外挿状態で設けられており、径方向(上下方向)の両側へ向けて突出している。
【0025】
インナ部材16の外周側には、中間スリーブ24が配されている。中間スリーブ24は、インナ部材16よりも大径の略円筒形状とされており、インナ部材16に外挿されて配されている。中間スリーブ24は、ステンレス鋼や合成樹脂等の非磁性材料で形成されていることが望ましい。中間スリーブ24は、径方向一方向(
図2中の上下方向)の両側に一対の窓部26,26を備えている。窓部26は、周方向に半周に満たない長さで延びて、中間スリーブ24を上下方向に貫通している。中間スリーブ24における窓部26,26の周方向間には、溝状部28,28が形成されている。溝状部28は、中間スリーブ24の軸方向中央部分において、外周面に開口する凹状断面で周方向に延びて設けられている。
【0026】
インナ部材16と中間スリーブ24は、本体ゴム弾性体20によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体20は、全体として厚肉の略円筒形状とされており、内周面がインナ部材16に固着されていると共に、外周面がアウタ筒部材18に固着されている。本実施形態の本体ゴム弾性体20は、インナ部材16と中間スリーブ24を備える一体加硫成形品として形成されており、インナ部材16及び中間スリーブ24が本体ゴム弾性体20に加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体20の成形後に中間スリーブ24を八方絞り等の縮径加工によって径方向に縮径することにより、本体ゴム弾性体20の成形後の冷却収縮等による引張歪を低減することができる。
【0027】
本体ゴム弾性体20は、径方向一方向(
図2中の上下方向)の両側に開口する一対のポケット部30,30を備えている。ポケット部30は、窓部26と対応する開口形状を有して、開口周縁部が中間スリーブ24に固着されており、本体ゴム弾性体20の一体加硫成形品において窓部26を通じて外周へ開放されている。インナ部材16に取り付けられたストッパ部材22は、径方向で内周側から外周側へ向けて各ポケット部30内へ突出している。
【0028】
中間スリーブ24の溝状部28,28の内面は、本体ゴム弾性体20と一体形成された嵌合ゴム32によってそれぞれ覆われている。そして、
図4に示すように、溝状部28,28には、オリフィス部材34,34が取り付けられている。オリフィス部材34は、周方向に半周弱の長さで延びる略半円筒形状とされており、窓部26を周方向に跨いで配されて、周方向両端部が溝状部28,28に差し入れられている。オリフィス部材34の周方向一方の端部は、他の部分よりも軸方向寸法を小さくされた幅狭部36とされている。
図5にも示すように、オリフィス部材34の幅狭部36には、軸方向の中央部分において外周面に開口して周方向に延びる凹溝38が形成されている。また、オリフィス部材34における幅狭部36を周方向で外れた他の部分には、凹溝38よりも軸方向寸法が大きくされて径方向に貫通する開口部40が設けられている。開口部40は、凹溝38側の周方向端部が凹溝38へ向けて軸方向で次第に幅狭となっており、凹溝38と開口部40が周方向で連続している。オリフィス部材34は、鉄、ニッケル、クロム、ソフトフェライト等の強磁性材によって形成されている。
【0029】
2つのオリフィス部材34,34は、互いに径方向で向かい合わせに配されており、一方の溝状部28に両方の幅狭部36,36が周方向両側から差し入れられた状態で、中間スリーブ24に取り付けられている。2つのオリフィス部材34,34の幅狭部36,36と反対側の周方向端部は、他方の溝状部28に周方向両側から差し入れられており、それら幅狭部36,36と反対側の周方向端部間には、嵌合ゴム32から外周へ突出する仕切ゴム42が配されている。各オリフィス部材34は、周方向の両端部が溝状部28,28に差し入れられることにより、各一方の窓部26を周方向に跨いで配されており、開口部40が窓部26を通じてポケット部30に連通されている。
【0030】
本体ゴム弾性体20の一体加硫成形品には、アウタ筒部材18が取り付けられている。アウタ筒部材18は、中間スリーブ24よりも大径の略円筒形状とされており、ステンレス鋼や合成樹脂等の非磁性材料で形成されていることが望ましい。アウタ筒部材18は、内周面がシールゴム層44によって覆われている。アウタ筒部材18は、オリフィス部材34,34が装着された中間スリーブ24に外挿された状態で縮径加工されることにより、シールゴム層44で覆われた内周面が中間スリーブ24の外周面に押し当てられて、中間スリーブ24に固定されている。アウタ筒部材18と中間スリーブ24の重ね合わせ面間は、シールゴム層44が圧縮状態で配されていることから、液密に封止されている。なお、アウタ筒部材18とオリフィス部材34,34の重ね合わせ面間は、シールゴム層44によって液密に封止されていてもよい。
【0031】
窓部26,26がアウタ筒部材18によって覆われて、ポケット部30,30の外周開口がアウタ筒部材18によって液密に塞がれることにより、エンジンマウント10の内部に2つの流体室46,46が形成されている。各流体室46には、磁気機能性流体が封入されている。磁気機能性流体は、磁界の作用によって粘度が増大する流体である。磁気機能性流体は、磁気粘性流体(Magneto-Rheological Fluid;MRF),磁性流体(Magnetic Fluid;MF),磁気粘性流体と磁性流体を混合した磁気混合流体(Magnetic Composite Fluid;MCF)の何れであってもよい。磁気機能性流体としては、磁界の作用に対して粘度が大きく変化する磁気粘性流体が望ましいが、磁気粘性流体と磁性流体の混合比率によって粘度の増大幅を容易に調節可能な磁気混合流体も好適に採用される。
【0032】
磁気機能性流体は、例えば、水や油などのベース液に強磁性微粒子を分散させた懸濁液又はコロイド溶液であって、強磁性微粒子がベース液内において凝集や沈降を生じ難いように、強磁性微粒子の表面が界面活性剤によって被覆されている、或いは強磁性微粒子が界面活性剤を添加したベース液内に分散されていることが望ましい。
【0033】
強磁性微粒子は、例えば、鉄,フェライト,磁鉄鉱(マグネタイト)等の金属粒子であって、好適には、8nm~10μm程度の粒子径とされている。ベース液は、強磁性微粒子を分散させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、水,イソパラフィン,アルキルナフタレン,パーフルオロポリエーテル,ポリオレフィン,シリコーンオイル等が採用可能である。また、ベース液は、非圧縮性流体であることが望ましい。界面活性剤は、ベース液に応じて適宜に選択され、例えば、オレイン酸等が好適に採用される。なお、磁気粘性流体と磁性流体は、主として強磁性微粒子の粒子径が異なり、磁気粘性流体は磁性流体よりも強磁性微粒子の粒子径が大きい。
【0034】
流体室46,46は、オリフィス通路48によって相互に連通されている。オリフィス通路48は、オリフィス部材34,34の凹溝38,38の外周開口がアウタ筒部材18によって覆われて塞がれることにより形成されている。オリフィス通路48は、流体室46,46の周方向間で周方向に延びており、周方向の両端部が流体室46,46に連通されている。オリフィス通路48は、流体室46,46の壁ばね剛性や磁気機能性流体の粘性等を考慮しながら、通路断面積と通路長の比を設定することにより、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が、防振対象振動の周波数に応じて適宜に設定されている。
【0035】
なお、本実施形態のオリフィス通路48は、流体室46,46の周方向間に設けられているが、オリフィス通路は、例えば、ポケット部30の開口を周方向に延びるように設けられていてもよく、それによって通路長をより長く確保することができる。このような長いオリフィス通路は、例えば、オリフィス部材34において凹溝38が周方向でより長い範囲に形成されて、開口部40の周方向長さが短くされることによって実現される。
【0036】
マウント本体12には、磁気ユニット14が取り付けられている。磁気ユニット14は、磁界発生部としてのコイル50と、磁路形成部としてのヨーク52とを、備えている。より具体的には、本実施形態の磁気ユニット14は、2つのコイル50,50が2つの溝状金具54,54の内側に配設されて、それら2つの溝状金具54,54が何れも軸方向内方へ向けて開口するように向かい合わせに配された構造を有している。
【0037】
コイル50は、導電性の金属線材によって形成されており、非磁性のボビン56に巻き付けられている。コイル50は、ボビン56に設けられた図示しないコネクタを介して外部の電源装置に接続されており、コイル50への通電によって、コイル50の周囲に磁界が形成される。
【0038】
溝状金具54は、軸方向内側へ開口する凹状溝形の断面形状で周方向環状に連続しており、各筒状の内周壁部58と外周壁部60とが軸方向外端において底壁部62でつながった構造とされている。溝状金具54は、鉄、ニッケル、クロム、ソフトフェライト等の強磁性材によって形成されている。溝状金具54における内周壁部58と外周壁部60との径方向間に配されたコイル50は、溝状金具54の底壁部62に軸方向内側から重ね合わされている。
【0039】
それぞれコイル50が内側に配された2つの溝状金具54,54は、軸方向で向かい合わせに配されており、外周壁部60,60が軸方向で突き合わされていると共に、内周壁部58,58が軸方向で相互に離れて配されている。このように、2つの溝状金具54,54が向かい合わせに配されることにより、それら溝状金具54,54によってヨーク52が構成されている。本実施形態において、ヨーク52の内周磁路64が溝状金具54の内周壁部58,58によって構成されていると共に、ヨーク52の外周磁路66が溝状金具54の外周壁部60,60によって構成されている。コイル50が溝状金具54の内側に配されており、内周磁路64がコイル50の内周側を軸方向延びて設けられていると共に、外周磁路66がコイル50の外周側を軸方向延びて設けられている。ヨーク52の内周磁路64には、内周壁部58,58の軸方向間において磁気ギャップ部68が形成されている。そして、コイル50への通電によってコイル50の周囲に形成される磁界の磁束が、ヨーク52によって誘導されて、磁気ギャップ部68において外部へ磁界が効率的に及ぼされる。外周壁部60,60は、本実施形態では軸方向で相互に当接しているが、例えば、磁気ギャップ部68よりも短い離隔距離で相互に離れていてもよい。
【0040】
磁気ユニット14は、アウタ筒部材18の外周面に取り付けられている。即ち、磁気ユニット14は、ヨーク52の内周磁路64がアウタ筒部材18の外周面に外嵌されることによって、アウタ筒部材18に外挿状態で固定されている。磁気ユニット14がアウタ筒部材18に固定された状態において、コイル50,50は、アウタ筒部材18の軸方向両端部の外周に配置されている。本実施形態では、コイル50,50がアウタ筒部材18よりも軸方向外側に突出して配置されている。また、ヨーク52の磁気ギャップ部68は、アウタ筒部材18の軸方向中央部分に位置しており、オリフィス通路48の外周に配置されている。要するに、磁気ギャップ部68とオリフィス通路48が軸方向において相互に位置合わせされている。そして、磁気ギャップ部68がオリフィス通路48の近傍に配されていることにより、コイル50,50の発生磁界がヨーク52で導かれて磁気ギャップ部68からオリフィス通路48内の磁気機能性流体に及ぼされる。また、磁気ギャップ部68は、コイル50,50に対して軸方向内側に離れた位置に設けられている。アウタ筒部材18の外周面は、内周磁路64が重ね合わされていると共に、磁気ギャップ部68において外周へ露出しており、当該露出部分が取付部70とされている。取付部70は、コイル50,50を軸方向に外れた位置に配されており、コイル50,50の軸方向間に配されている。換言すれば、アウタ筒部材18の外周面には、取付部70を軸方向に外れた両側にコイル50,50が取り付けられている。
【0041】
磁気ユニット14のコイル50,50を軸方向に外れた位置では、アウタ装着部材としての取付ブラケット72がアウタ筒部材18の外周面に取り付けられている。取付ブラケット72は、
図3に示すように、略円筒形状とされてアウタ筒部材18の外周面に外嵌固定される取付筒部74を備えている。取付筒部74は、軸方向中央部の内周面が軸方向両端部の内周面よりも小径となっており、内周へ突出する嵌合突部76が軸方向中央部に設けられている。取付筒部74は、コイル50,50の軸方向間に配されており、コイル50,50を軸方向に外れた位置において、嵌合突部76がアウタ筒部材18の外周面の取付部70に嵌合固定されている。
【0042】
このように、取付ブラケット72は、取付筒部74が磁気ユニット14のコイル50,50を軸方向に外れた位置でアウタ筒部材18の外周面に取り付けられていることから、コイル50,50の外周側に配される構造に比して取付筒部74の小径化が図られて、取付ブラケット72の大型化が回避される。
【0043】
図2に示すように、嵌合突部76の軸方向両側において、取付筒部74とアウタ筒部材18の径方向間には隙間が形成されており、当該隙間に磁気ユニット14の内周壁部58,58が差し入れられている。換言すれば、取付ブラケット72は、取付筒部74の嵌合突部76が、ヨーク52の磁気ギャップ部68を貫通して、アウタ筒部材18の外周面の取付部70に嵌合されることにより、アウタ筒部材18に取り付けられている。取付ブラケット72は、ステンレス鋼や合成樹脂等の非磁性材料で形成されており、磁気ギャップ部68に近接して配されていても、磁束がヨーク52から取付ブラケット72へ逃げ難い。
【0044】
取付ブラケット72は、
図3に示すように、取付筒部74から外周側へ突出する2つの締結片78,78を備えている。締結片78は、略矩形板状とされており、厚さ方向に貫通するボルト穴80を備えている。2つの締結片78,78は、取付筒部74から左右方向の両側へ向けて突出している。2つの締結片78,78は、上下方向において何れも取付筒部74の中央を外れていると共に、上下方向において相互にずれた位置に設けられている。締結片78,78は、
図1,
図3に示すように、ヨーク52の外周磁路66を貫通する挿通窓82,82を通じて、磁気ユニット14よりも外周へ突出している。
【0045】
このように、取付ブラケット72の締結片78,78が、ヨーク52の外周磁路66を貫通して外周へ突出する構造とすることにより、取付ブラケット72の車両への取付構造(取付位置)によってヨーク52の構造が制限されたり、ヨーク52の構造によって取付ブラケット72の車両への取付構造(取付位置)が制限されるのを防ぐことができて、大きな設計自由度を実現することができる。
【0046】
このような構造とされたエンジンマウント10は、例えば、インナ部材16が挿通される図示しないインナボルトによって一方の防振連結対象部材であるパワーユニット側に取り付けられる。また、2つの締結片78,78が他方の防振連結対象部材である車両ボデー84側にボルト固定されることにより、アウタ筒部材18が車両ボデー84側に取付ブラケット72を介して取り付けられる。これにより、図示しないパワーユニットがエンジンマウント10によって車両ボデー84に防振支持される。
【0047】
上記の如き車両装着状態において、エンジンマウント10のインナ部材16とアウタ筒部材18の間へ振動が入力されて、流体室46,46間に相対的な圧力変動が惹起されると、それら流体室46,46の間でオリフィス通路48を通じた流体流動が生じる。特に、入力振動の周波数がオリフィス通路48のチューニング周波数に相当する場合には、オリフィス通路48において流体流動が共振状態で積極的に生じて、流体の流動作用に基づく防振効果が発揮される。
【0048】
エンジンマウント10は、オリフィス通路48内の磁気機能性流体に対して、入力振動に応じた強さの磁界を及ぼすことにより、オリフィス通路48のチューニング周波数を変更設定することが可能とされている。即ち、磁気機能性流体は、及ぼされる磁界の強さ(磁束密度)に応じて粘度が増大する。それゆえ、コイル50への通電を制御することにより、磁界の強さを制御して、磁気機能性流体の粘性を調節することができる。従って、オリフィス通路48内の磁気機能性流体に及ぼされる磁界の強さを制御することにより、オリフィス通路48の通路断面積及び通路長が一定であっても、オリフィス通路48のチューニング周波数を変更することができる。それ故、より広い周波数域の振動に対して、有効な防振性能を得ることができる。
【0049】
本実施形態では、磁束を導くヨーク52の内周磁路64に磁気ギャップ部68が設けられており、磁気ギャップ部68がオリフィス通路48と軸方向で位置合わせされている。これにより、コイル50への通電時に磁気ギャップ部68の両側に形成される磁極からオリフィス通路48内の磁気機能性流体へ磁界が効率的に及ぼされて、特性の変更設定を有効に実現することができる。磁気ギャップ部68が設けられる内周磁路64は、底壁部62,62の内周端から軸方向に延びていることから、内周磁路64における磁気ギャップ部68の軸方向位置の設定自由度が大きく、磁極が形成される内周磁路64の磁気ギャップ部68側の端部の位置をオリフィス通路48の軸方向位置に対して、大きな自由度で設定することができる。従って、例えば、磁極が形成される内周磁路64の端部をオリフィス部材34に十分に近い位置に配して、オリフィス部材34からオリフィス通路48へ磁束を効率的に通過させることもできる。
【0050】
図6には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第二の実施形態として、自動車用のサスペンションブッシュ90が示されている。サスペンションブッシュ90は、ブッシュ本体92に磁気ユニット94が取り付けられた構造を有しており、第一の実施形態のエンジンマウント10と同様に、磁気ユニット94からオリフィス通路48内の磁気機能性流体に及ぼされる磁界を制御することによって、防振特性や支持剛性等の特性を変更することが可能とされている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、同一の符号を付すことで説明を省略する場合がある。
【0051】
ブッシュ本体92は、オリフィス部材34がアウタ筒部材18の軸方向中央に対して軸方向の一方側(
図6中の左側)へ偏倚して配されており、オリフィス通路48がアウタ筒部材18の軸方向中央を外れて軸方向一方側に偏った位置に設けられている。
【0052】
磁気ユニット94は、略矩形断面形状の空間を備えたヨーク96の内部に1つのコイル50が配された構造を有している。コイル50は、アウタ筒部材18の軸方向一方の端部の外周に配されている。磁気ユニット94は、アウタ筒部材18の軸方向中央よりも軸方向一方側に配されており、アウタ筒部材18の軸方向中央よりも軸方向他方側(
図6中の右側)は、磁気ユニット94よりも軸方向他方側へ突出している。磁気ユニット94は、磁気ギャップ部68が内周磁路64の軸方向中央に対して軸方向他方側にずれた位置に設けられており、オリフィス通路48に対して軸方向で位置合わせされて、オリフィス通路48の外周側に配置されている。なお、磁気ギャップ部68は、コイル50に対して軸方向他方側へ離れた位置に設けられている。
【0053】
オリフィス通路48が軸方向においてアウタ筒部材18の中央を外れていても、磁気ギャップ部68がアウタ筒部材18の軸方向中央を外れた位置に配されて、オリフィス通路48と磁気ギャップ部68とが軸方向で位置合わせされていることから、コイル50への通電によって発生する磁界をオリフィス通路48内の磁気機能性流体に効率的に及ぼすことができる。磁気ギャップ部68は、前記第一の実施形態と同様に、軸方向に延びる内周磁路64の途中に設けられており、軸方向における位置の設定自由度が大きいことから、オリフィス通路48の位置に合わせて配することができて、オリフィス通路48内の磁気機能性流体に磁界を有効に作用させることができる。特に本実施形態では、ヨーク96がコイル50よりも軸方向他方側(後述するリンクアーム98側)へ延び出している。これにより、ヨーク96における磁気ギャップ部68の位置や大きさを、コイル50の配置に拘束されることなく、大きな自由度で設定することができる。その結果、例えば、オリフィス通路48の軸方向での位置や軸方向の幅寸法に対応する磁気ギャップ部68を設定し易くなって、設計自由度の向上が図られる。
【0054】
磁気ユニット94よりも軸方向他方側へ突出したアウタ筒部材18には、防振連結対象部材としてのリンクアーム98が取り付けられている。リンクアーム98は、端部に筒状装着部100を備えており、筒状装着部100がアウタ筒部材18の外周面に取り付けられている。要するに、本実施形態では、アウタ筒部材18の略軸方向半分に磁気ユニット94が取り付けられていると共に、アウタ筒部材18の他の略軸方向半分にリンクアーム98が取り付けられている。リンクアーム98の筒状装着部100が、磁気ユニット94を軸方向に外れた位置でアウタ筒部材18に取り付けられることから、磁気ユニット94の外周に配される場合に比して筒状装着部100の小径化が図られる。
【0055】
このように、アウタ筒部材の外周面に取り付けられるアウタ装着部材は、必ずしも前記実施形態の取付ブラケット72のような防振連結対象部材(車両ボデー84)とアウタ筒部材18の間に介装される部材に限定されず、防振連結対象部材(リンクアーム98)の一部によっても構成され得る。この場合には、防振連結対象部材が他部材を介することなくアウタ筒部材18の取付部70に直接取り付けられることによって、アウタ筒部材18と防振連結対象部材との連結が実現される。また、前記第一の実施形態では、取付ブラケット72がヨーク52を含む磁気ユニット14の軸方向中央部分に配されて、ヨーク52の一部を貫通していたが、アウタ筒部材18の外周面に取り付けられる取付ブラケットや防振連結対象部材は、磁気ユニットに対して軸方向で離れて或いは隣接して配置されていてもよい。なお、本実施形態では、筒状装着部100を含むリンクアーム98が非磁性材料によって形成されており、リンクアーム98がヨーク96と軸方向で隣接して配されていても、ヨーク96によって導かれる磁束がリンクアーム98へ逃げ難くなっている。尤も、ヨーク96とリンクアーム98が十分に離れて配される場合等には、リンクアーム98を磁性材料で形成することもできる。
【0056】
本実施形態に係るサスペンションブッシュ90のようにアウタ筒部材18の軸方向の一部に磁気ユニット94を取り付けて、磁気ユニット94から軸方向に突出させたアウタ筒部材18の軸方向の他の部分にアウタ装着部材を取り付ける構造において、アウタ装着部材は、防振連結対象部材(リンクアーム98)ではなく取付ブラケットであってもよく、当該取付ブラケットを介してアウタ筒部材18をリンクアームなどの防振連結対象部材に連結することもできる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、磁気ユニット14のコイル50の数は、3つ以上であってもよい。例えば、ボビン56に巻き付けられた状態のコイル50を取付ブラケット72の取付筒部74の軸方向両側に2つずつ配することにより、複数のコイル50の巻き数の合計を規格化されたコイル50の組み合わせによって調節して、それら複数のコイル50が形成する磁界の最大強さ等を調節することができる。
【0058】
前記第一の実施形態に示した2つの締結片78,78の配置は、あくまでも例示であって、適宜に変更され得る。具体的には、例えば、2つの締結片が左右方向で同じ側へ延び出していてもよいし、互いに直交する径方向へ延び出していてもよい。また、締結片は1つだけであってもよいし、3つ以上が設けられていてもよい。更に、取付ブラケットの防振連結対象部材への取付部分は、必ずしも締結片78のような板状に限定されず、ブロック状や柱状、筒状などであってもよいし、取付筒部74に締結用のボルトが植設されている等してもよい。
【0059】
前記実施形態では、本発明に係る流体封入式防振装置として筒形防振装置を例示したが、例えば、インナ部材がアウタ筒部材の軸方向一方側に配されて、インナ部材の軸方向他方側に複数の流体室が軸方向で並んで配された、所謂お椀型の防振装置に対しても、本発明構造を適用することができる。
【0060】
前記第一の実施形態ではエンジンマウント10を例示し、前記第二の実施形態ではサスペンションブッシュ90を例示したが、本発明に係る流体封入式防振装置は、例えばデフマウント等、従来の流体封入式防振装置と同様の範囲に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 エンジンマウント(第一の実施形態 流体封入式防振装置)
12 マウント本体
14 磁気ユニット
16 インナ部材
18 アウタ筒部材
20 本体ゴム弾性体
22 ストッパ部材
24 中間スリーブ
26 窓部
28 溝状部
30 ポケット部
32 嵌合ゴム
34 オリフィス部材
36 幅狭部
38 凹溝
40 開口部
42 仕切ゴム
44 シールゴム層
46 流体室
48 オリフィス通路
50 コイル(磁界発生部)
52 ヨーク(磁路形成部)
54 溝状金具
56 ボビン
58 内周壁部
60 外周壁部
62 底壁部
64 内周磁路
66 外周磁路
68 磁気ギャップ部
70 取付部
72 取付ブラケット(アウタ装着部材)
74 取付筒部
76 嵌合突部
78 締結片
80 ボルト穴
82 挿通窓
84 車両ボデー(防振連結対象部材)
90 サスペンションブッシュ(第二の実施形態 流体封入式防振装置)
92 ブッシュ本体
94 磁気ユニット
96 ヨーク(磁路形成部)
98 リンクアーム(防振連結対象部材,アウタ装着部材)
100 筒状装着部