(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128787
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/30 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G01B7/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033380
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福井 淳一
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA35
2F063AA36
2F063BA08
2F063BB03
2F063BC02
2F063CA34
2F063DA01
2F063DA04
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD03
2F063GA52
(57)【要約】
【課題】装置サイズを小型化できる検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置10は、第1従動ギヤ12aに第1被検知部19が取り付けられ、この第1被検知部19を検知部20で検知する。検出装置10は、ロック装置2のロック部材3と一体に動く第2被検知部30と、ロック部材3と一体に動く壁部32とを有する。ロック部材3がロック位置をとる場合、壁部32が第1被検知部19及び検知部20の間に位置することにより、検知部20に対して第2被検知部30が有効となる。ロック部材3がアンロック位置をとる場合、第2被検知部30及び壁部32が検知部20から離隔することにより、検知部20に対して第1被検知部19が有効となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と同軸回りに回転するメインギヤに噛合された従動ギヤに第1被検知部が取り付けられ、前記従動ギヤと一体に動く前記第1被検知部を検知部で検知することにより、前記検知部の検知信号を用いて前記回転体の回転を検出する検出装置であって、
前記回転体の回転をロック可能なロック装置のロック部材と一体に動く第2被検知部と、
前記ロック部材と一体に動くとともに、前記検知部に前記第1被検知部を検知させないような材料から構成された壁部とを備え、
前記ロック部材がロック位置をとる場合、前記壁部が前記第1被検知部及び前記検知部の間に位置することにより、前記検知部に対して前記第1被検知部が無効、かつ前記第2被検知部が有効となり、前記ロック部材がアンロック位置をとる場合、前記第2被検知部及び前記壁部が前記検知部から離隔することにより、前記検知部に対して前記第1被検知部が有効、かつ前記第2被検知部が無効となる検出装置。
【請求項2】
前記第2被検知部及び前記壁部の組は、前記ロック装置がロック状態をとるときに、前記第2被検知部及び前記壁部の間に、前記検知部を実装した基板が位置するように設けられている
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第1被検知部及び前記第2被検知部は、磁石であり、
前記検知部は、前記磁石の磁界を検知する磁気センサであり、
前記壁部は、磁性体によって構成されている
請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記磁気センサは、3軸方向において磁界を検出可能なセンサであり、
前記磁石は、前記従動ギヤに取り付けられた第1磁石と、前記ロック部材に取り付けられた第2磁石とを含み、
前記第1磁石は、前記従動ギヤの軸部の軸線方向に交差する向きを磁極方向とする向きに配置され、
前記第2磁石は、前記第1磁石の磁極方向と交差する向きを磁極方向とする向きに配置されている
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記検知部から入力する前記検知信号を用いて、前記回転体の回転検出と、前記ロック装置の状態検出と、を実行する制御部を備え、
前記磁気センサは、
前記第1磁石を検知することにより、前記検知信号として、前記従動ギヤの回転に応じた第1検知信号を出力する第1出力部と、
前記第2磁石を検知することにより、前記検知信号として、前記ロック部材の位置に応じた第2検知信号を出力する第2出力部とを備え、
前記制御部は、前記第1検知信号を用いて前記回転体の回転位置を判断するとともに、前記第2検知信号に基づき前記ロック部材のロック位置への到達を判断する
請求項4に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転検出とロック装置の状態検出との両方を実行する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、車両のステアリングホイールの回転角を検出する舵角センサが周知である。この舵角センサは、ステアリングシャフトと一体回転する駆動ギヤと、駆動ギヤに噛合された2つの大小の従動ギヤとを有する。大小の従動ギヤは、磁石を各々有する。そして、磁石の磁界が各々組をなすセンサで検出されるとともに、これらセンサの電圧変化に基づいて回転角が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、多くの車両には、車両盗難の防止のために、ステアリングホイールの回転をロック可能なロック装置(いわゆる、ステアリングロック装置)が搭載されている。ロック装置は、例えば、車両の駐車時、アクチュエータ等により動くロック部材をステアリングシャフトに係合することにより、ステアリング操作を不可とする。
【0005】
この種のロック装置の場合、ロック装置の高い信頼性を満足するためには、作動(例えば、ロック作動)の完遂を監視する必要がある。具体的には、ロック作動時、ロック部材が正しくロック位置に到達したか否かをセンサ等によって監視することが好ましい。よって、このようなロック装置の場合、ロック部材がロック位置に到達したか否かを検出するための機構を別途設ける必要がある。
【0006】
ところで、近年、前述したステアリングホイールの回転検出の機構と、前述したロック装置の状態検出の機構とを、一体化することが検討されている。すなわち、ステアリングホイールの回転検出とロック装置の状態検出との両方を実行可能な検出装置について、開発が行われている。この種の検出装置においては、装置サイズをできる限り小さくしたいニーズが高い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する検出装置は、回転体と同軸回りに回転するメインギヤに噛合された従動ギヤに第1被検知部が取り付けられ、前記従動ギヤと一体に動く前記第1被検知部を検知部で検知することにより、前記検知部の検知信号を用いて前記回転体の回転を検出する。前記検出装置は、前記回転体の回転をロック可能なロック装置のロック部材と一体に動く第2被検知部と、前記ロック部材と一体に動くとともに、前記検知部に前記第1被検知部を検知させないような材料から構成された壁部とを備え、前記ロック部材がロック位置をとる場合、前記壁部が前記第1被検知部及び前記検知部の間に位置することにより、前記検知部に対して前記第1被検知部が無効、かつ前記第2被検知部が有効となり、前記ロック部材がアンロック位置をとる場合、前記第2被検知部及び前記壁部が前記検知部から離隔することにより、前記検知部に対して前記第1被検知部が有効、かつ前記第2被検知部が無効となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、装置サイズを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の検出装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】回転体の軸方向から見た検出装置の構成図である。
【
図4】回転体の軸直交方向から見た検出装置の構成図である。
【
図6】ロック装置がロック時の検出装置の状態図である。
【
図7】(a)、(b)は、ロック装置がロック時の検知部の出力波形図である。
【
図8】ロック装置がアンロック時の検出装置の状態図である。
【
図9】(a)、(b)は、ロック装置がロック時の検知部の出力波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
[回転体1の概要]
図1に示すように、回転体1は、軸心L1回りに回転する円柱状に形成されている。回転体1は、例えば、車両に搭載される場合、ハンドルの操作と同期回転するステアリングシャフトである。回転体1は、軸心L1回りの両方向に回転する。このように、回転体1は、右回り及び左回りのどちらにも回る。
【0011】
[ロック装置2の構成]
図2に示すように、回転体1は、回転体1の回転をロック可能なロック装置2を備えている。ロック装置2は、回転体1がステアリングシャフトの場合、ステアリングシャフトの回転をロック可能なステアリングロック装置である。ロック装置2は、ロック作動時において回転体1に係合するロック部材3と、ロック部材3の動きの駆動源となるアクチュエータ4と、アクチュエータ4の駆動力をロック部材3に伝達するギヤ機構5とを備えている。ロック部材3は、例えば、ロック位置及びアンロック位置の間を往復直線移動するように動く。アクチュエータ4は、例えば、モータである。ギヤ機構5は、例えば、ウォームギヤが使用される。
【0012】
ロック装置2は、ロック装置2をロック状態に切り替える条件が満足された場合、アクチュエータ4をロック方向に作動させることにより、ロック部材3を回転体1の溝部6に係合させる。これにより、ロック部材3が回転体1の複数の溝部6の1つに係合するため、ロック状態となる。ロック状態への切り替えの条件は、例えば、車両の走行駆動源(走行モータ、エンジンなど)が停止されるとともに、降車によるドア開閉が検出されたことなどがある。
【0013】
ロック装置2は、ロック装置2をアンロック状態に切り替える条件が満足された場合、アクチュエータ4をアンロック方向に作動させることにより、ロック部材3を回転体1の溝部6から離脱させる。これにより、ロック装置2がアンロック状態となる。アンロック状態への切り替えの条件は、例えば、車両の電源状態がイグニッションオンとなったことなどがある。
【0014】
[検出装置10の回転検出機能の構成]
図1に示す通り、回転体1は、回転体1の回転を検出するための検出装置10を備えている。本例の検出装置10は、回転体1の回転検出機能の他に、ロック装置2がロック/アンロックのいずれの状態にあるのかを検出するロック/アンロック検出機能も有する。このように、1つの検出装置10において、回転体1の回転検出とロック装置2の状態検出とを実行する。
【0015】
検出装置10は、回転体1と同軸回り(軸心L1回り)に回転するメインギヤ11と、メインギヤ11に噛合された従動ギヤ12とを備えている。メインギヤ11は、回転体1が通された開口筒13と、開口筒13の外周面に設けられた歯部14とを有する。メインギヤ11は、例えば、回転体1の側面に設けられた突起(図示略)をメインギヤ11の内周面に係合することにより、回転体1に対して一体回転可能に取り付けられている。
【0016】
従動ギヤ12は、例えば、複数(本例は、2つ)設けられている。この場合、一方の従動ギヤ12を「第1従動ギヤ12a」とし、他方の従動ギヤ12を「第2従動ギヤ12b」とする。第1従動ギヤ12a及び第2従動ギヤ12bは、平面方向に並び配置されている。従動ギヤ12は、回転の軸となる軸部15と、軸部15の外周面に設けられた歯部16とを有する。従動ギヤ12は、軸部15の中心である軸線L2回りに回転する。第1従動ギヤ12a及び第2従動ギヤ12bは、例えば、歯数が異なるように形成されている。
【0017】
検出装置10は、回転体1とともに回転する第1従動ギヤ12a及び第2従動ギヤ12bの回転数の組み合わせから、回転体1の回転数(回転位置)を検出する。そのため、第1従動ギヤ12aには、同一軸心上に第1被検知部19が取り付けられている。第1従動ギヤ12aは、同期回転する第1被検知部19が検知部20によって検知されることにより、回転が検出される。従動ギヤ12の回転の検出方式は、例えば、磁気式である。検出装置10が磁気式の場合、第1被検知部19は、磁石(第1磁石21)である。
【0018】
第2従動ギヤ12bには、同一軸心上に従動ギヤ用被検知部22が取り付けられている。第2従動ギヤ12bは、同期回転する従動ギヤ用被検知部22が従動ギヤ用検知部23によって検知されることにより、回転が検出される。第2従動ギヤ12bの回転の検出方式は、例えば、磁気式である。検出装置10が磁気式の場合、従動ギヤ用被検知部22は、磁石(従動ギヤ用磁石24)である。
【0019】
検知部20及び従動ギヤ用検知部23は、検出装置10に設けられた基板26に実装されている。検知部20は、組をなす第1被検知部19に対して対向配置されている。従動ギヤ用検知部23は、組をなす従動ギヤ用被検知部22に対して対向配置されている。検出装置10が磁気式の場合、検知部20は、例えば、付与される磁界に応じた信号を出力する磁気センサ27である。また、検出装置10が磁気式の場合、従動ギヤ用検知部23も同様に磁気センサ28である。
【0020】
[検出装置10のロック/アンロック検出機能の構成]
図1に示す通り、検出装置10は、ロック部材3と一体に動く第2被検知部30を備えている。第2被検知部30は、ロック部材3の底面に設けられた凹部(図示略)に取り付け固定されている。検出装置10が磁気式の場合、第2被検知部30は、磁石(第2磁石31)である。
【0021】
検出装置10は、第1被検知部19及び第2被検知部30の一方を選択的に検知部20に検知させる壁部32を備えている。本例の壁部32は、ロック部材3と一体に動くとともに、検知部20に第1被検知部19を検知させないような材料から構成されている。壁部32は、例えば、磁性体から形成されるとともに、板状をなしている。本例の壁部32は、ロック部材3の底面から延びる腕部33の先端に取り付けられている。
【0022】
図3に示すように、検出装置10は、検出装置10の部品群を収容するハウジング34を備えている。ロック部材3は、回転体1の直径方向に沿って延びる略棒状(直方体形状)に形成されている。そして、ロック部材3は、回転体1の直径方向に沿って往復動する。具体的には、ロック部材3は、ロック作動のとき、アンロック位置から同図の矢印A1方向にスライド移動する。また、ロック部材3は、アンロック作動のとき、ロック位置から同図のA2方向にスライド移動する。
【0023】
図4に示すように、第2被検知部30及び壁部32の組は、ロック装置2がロック状態をとるときに、第2被検知部30及び壁部32の間に、検知部20を実装した基板26が位置するように設けられている。このため、ロック装置2がロック状態をとるときには、第1被検知部19である第1磁石21の磁界が壁部32によって遮られるため、第1被検知部19が検知部20で検知されない。一方、第2被検知部30が検知部20と対向するため、第2被検知部30が検知部20によって検知される。
【0024】
[検知部20及び従動ギヤ用検知部23の検出構成]
図4に示す通り、第1磁石21は、第1従動ギヤ12aの軸部15の軸線方向(軸線L2方向:
図4のZ軸方向)に交差する向き(
図4のY軸方向)を磁極方向(N-S方向)とする向きに配置されている。このため、第1磁石21が検知部20と対向する状態となったとき、第1磁石21から検知部20には、平面方向(
図4のX-Y平面方向)の磁場「E1」が付与される。
【0025】
第2磁石31は、第1磁石21の磁極方向と交差する向き(
図4のZ軸方向)を磁極方向(N-S方向)とする向きに配置されている。このため、第2磁石31が検知部20と対向する状態となったとき、第2磁石31から検知部20には、略垂直方向(
図4のZ軸方向)の磁場「E2」が付与される。
【0026】
図5に示すように、検知部20は、磁気センサ27の場合、例えば、X軸、Y軸、及びZ軸の3軸方向の磁界を検知するセンサが使用されている。磁気センサ27は、例えば、ホールICである。磁気センサ27は、検知した磁界の強さに応じた検知信号S1を出力する。
【0027】
本例の磁気センサ27は、平面方向(X-Y平面方向)の磁界に応じた第1検知信号S1aを出力する第1出力部35と、平面直交方向(Z軸方向)の磁界に応じた第2検知信号S1bを出力する第2出力部36とを備えている。本例の第1出力部35は、磁気センサ27に付与される平面方向の磁界、すなわち、第1磁石21を検知することにより、検知信号S1として、従動ギヤ12(第1従動ギヤ12a)の回転に応じた第1検知信号S1aを出力する。本例の第2出力部36は、磁気センサ27に付与される平面直交方向の磁界、すなわち、第2磁石31を検知することにより、検知信号S1として、ロック部材3の位置に応じた第2検知信号S1bを出力する。
【0028】
従動ギヤ用検知部23は、磁気センサ28の場合、例えば、MREセンサである。MREセンサは、検知した磁界の向きに応じた検知信号S2を出力する。本例の従動ギヤ用検知部23の検知信号S2は、平面方向(X-Y平面方向)の磁界の向きに応じた信号である。
【0029】
[検出装置10の検出制御]
図5に示す通り、検出装置10は、回転検出機能及びロック/アンロック検出機能の動作を制御する制御部38を備えている。本例の制御部38は、検知部20から入力する検知信号S1と、従動ギヤ用検知部23から入力する検知信号S2とに基づき、回転体1の回転検出と、ロック装置2のロック/アンロックの状態検出を実行する。制御部38は、例えば、検知信号S1、S2に基づき、回転体1の回転検出を実行する。制御部38は、検出した回転情報を他のECU(Electronic Control Unit)に出力する。
【0030】
制御部38は、アクチュエータ4の動作を制御することにより、ロック装置2のロック/アンロックの状態切り替えを実行する。すなわち、制御部38は、ロック作動の条件が満足されたときにアクチュエータ4を介してロック装置2のロックへの切り替えを実行するとともに、アンロック作動の条件が満足されたときにアクチュエータ4を介してロック装置2のアンロックへの切り替えを実行する。制御部38は、例えば、検知信号S1に基づき、ロック装置2のロック/アンロックの状態検出を実行する。
【0031】
図4に示す通り、検出装置10は、ロック部材3がロック位置をとる場合、壁部32が第1被検知部19及び検知部20の間に位置することにより、検知部20に対して第1被検知部19が無効、かつ第2被検知部30が有効となる。このとき、検知部20は、第2被検知部30を選択的に検知する。よって、制御部38は、検知部20から、ロック部材3の位置に応じた値をとる検知信号S1を入力可能となる。
【0032】
図3に示す通り、検出装置10は、ロック部材3がアンロック位置をとる場合、第2被検知部30及び壁部32が検知部20から離隔することにより、検知部20に対して第1被検知部19が有効、かつ第2被検知部30が無効となる。このとき、検知部20は、第1被検知部19を選択的に検知する。よって、制御部38は、検知部20から、従動ギヤ12の回転角度に応じた値をとる検知信号S1を入力可能となる。
【0033】
次に、本実施形態の検出装置10の作用について説明する。
[ロック装置2のロック作動時]
図6に示すように、ロック装置2がロック状態をとるとき、第1被検知部19及び検知部20の間に壁部32が位置するとともに、第2被検知部30が検知部20に対向する位置をとる。このため、第1被検知部19である第1磁石21の磁場が壁部32によって遮断され、一方で、第2被検知部30である第2磁石31の磁場が検知部20に届く。本例の検知部20には、第2磁石31から放射される平面直交方向(
図6のZ軸方向)の磁場が付与される。
【0034】
図7(a)、(b)に、ロック装置2がロック状態のときの検知部20の検知信号S1の出力波形を図示する。
図7(a)に示すように、検知部20に対しては平面直交方向(Z軸方向)の磁場が付与されるため、検知部20からX-Y平面方向の磁場に応じた値で出力される第1検知信号S1aは、「0」となる。一方、
図7(b)に示すように、検知部20からZ軸方向の磁場に応じた値で出力される第2検知信号S1bは、磁場の大きさに応じた「V1」の値をとる。
【0035】
制御部38は、第2検知信号S1bが「V1」の値の場合、ロック装置2がロック状態をとると認識する。すなわち、制御部38は、アンロック位置のロック部材3をロック位置に移動させるロック作動時、第2検知信号S1bが「V1」となったとき、正常にロック状態に切り替わったとして、アクチュエータ4を停止させる。また、制御部38は、第2検知信号S1bが「V1」をとるとき、ロック装置2がロック状態にある、すなわち、回転体1が回転操作されないとして、第1検知信号S1aに基づく回転検出の処理を実行しない。
【0036】
[ロック装置2のアンロック作動時]
図8に示すように、ロック装置2がアンロック状態をとるべくロック部材3が溝部6から離脱すると、第2被検知部30及び壁部32の組が検知部20から離隔する。このため、第1被検知部19である第1磁石21の磁場のみが検知部20に届く。本例の検知部20には、第1磁石21から放射される平面方向(
図8のX-Y平面方向)の磁場が付与される。
【0037】
図9(a)、(b)に、ロック装置2がアンロック状態をとり、かつ、回転体1が回転したときの検知部20の検知信号S1の出力波形を図示する。
図9(a)に示すように、検知部20に対しては平面方向(X-Y平面方向)の磁場が付与されるため、検知部20からX-Y平面方向の磁場に応じた値で出力される第1検知信号S1aは、回転体1の回転位置に応じた値をとる。一方、
図9(b)に示すように、検知部20に対しては平面直交方向(Z軸方向)の磁場が付与されないため、第2検知信号S1bは「0」となる。
【0038】
制御部38は、第2検知信号S1bが「0」の値の場合、ロック装置2のロック状態が解除されたと認識する。すなわち、制御部38は、第2検知信号S1bが「0」をとるとき、ロック装置2のアンロック状態下で回転体1が回転操作されるため、第1検知信号S1aに基づく回転検出の処理を実行する。なお、ロック部材3がアンロック位置に到達したこと検知するセンサ(図示略)を別途設けて、ロック部材3がアンロック位置に位置したことを制御部38に認識させてもよい。
【0039】
[実施形態の効果]
上記実施形態の検出装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)検出装置10は、回転体1と同軸回りに回転するメインギヤ11に噛合された従動ギヤ12(本例は、第1従動ギヤ12a)に第1被検知部19が取り付けられ、従動ギヤ12と一体に動く第1被検知部19を検知部20で検知することにより、検知部20の検知信号S1を用いて回転体1の回転を検出する。検出装置10は、回転体1の回転をロック可能なロック装置2のロック部材3と一体に動く第2被検知部30と、ロック部材3と一体に動くとともに、検知部20に第1被検知部19を検知させないような材料から構成された壁部32とを備えている。そして、ロック部材3がロック位置をとる場合、壁部32が第1被検知部19及び検知部20の間に位置することにより、検知部20に対して第1被検知部19が無効、かつ第2被検知部30が有効となり、ロック部材3がアンロック位置をとる場合、第2被検知部30及び壁部32が検知部20から離隔することにより、検知部20に対して第1被検知部19が有効、かつ第2被検知部30が無効となる。
【0040】
本構成によれば、1つの検知部20を回転体1の回転検出とロック装置2の状態検出とで共用する。このため、検出機能ごとに検知部20を設ける必要がなくなる。よって、検出装置10において、装置サイズを小型化できる。
【0041】
(2)第2被検知部30及び壁部32の組は、ロック装置2がロック状態をとるときに、第2被検知部30及び壁部32の間に、検知部20を実装した基板26が位置するように設けられている。この構成によれば、第1被検知部19を検知部20に近づけて配置することが可能となるので、第1被検知部19を検知部20で検知させ易くすることが可能となる。よって、第1被検知部19のサイズを大きくするなどの対策をとらずに済むので、装置サイズの小型化に一層寄与する。
【0042】
(3)第1被検知部19及び第2被検知部30は、磁石(第1磁石21、第2磁石31)である。検知部20は、磁石(第1磁石21、第2磁石31)の磁界を検知する磁気センサ27である。壁部32は、磁性体によって構成されている。この構成によれば、磁気式という簡素な方式によって、回転体1の回転検出とロック装置2の状態検出とを実行することができる。
【0043】
(4)磁気センサ27は、3軸方向において磁界を検出可能なセンサである。磁石は、従動ギヤ12(第1従動ギヤ12a)に取り付けられた第1磁石21と、ロック部材3に取り付けられた第2磁石31とを含む。第1磁石21は、従動ギヤ12(第1従動ギヤ12a)の軸部15の軸線方向(軸線L2方向)に交差する向きを磁極方向とする向きに配置されている。第2磁石31は、第1磁石21の磁極方向と交差する向きを磁極方向とする向きに配置されている。
【0044】
この構成によれば、第1磁石21から磁気センサ27に付与される平面方向(例えば、3軸のX-Y平面方向)の磁界に基づき、回転体1の回転検出を実行することが可能となる。また、第2磁石31から磁気センサ27に付与される平面直交方向(例えば、3軸のZ軸方向)の磁界に基づき、ロック装置2の状態検出を実行することが可能となる。よって、回転体1の回転検出とロック装置2の状態検出とにおいて、検知部20で検知される磁界特性を異なるようにしたので、各々の検出を精度よく実行できる。
【0045】
(5)検出装置10は、検知部20から入力する検知信号S1を用いて、回転体1の回転検出と、ロック装置2の状態検出と、を実行する制御部38を備えている。磁気センサ27は、第1出力部35及び第2出力部36を備えている。第1出力部35は、第1磁石21を検知することにより、検知信号S1として、従動ギヤ12(第1従動ギヤ12a)の回転に応じた第1検知信号S1aを出力する。第2出力部36は、第2磁石31を検知することにより、検知信号S1として、ロック部材3の位置に応じた第2検知信号S1bを出力する。制御部38は、第1検知信号S1aを用いて回転体1の回転位置を判断するとともに、第2検知信号S1bに基づきロック部材3のロック位置への到達を判断する。
【0046】
この構成によれば、回転体1の回転検出とロック装置2の状態検出とを、それぞれ異なる第1検知信号S1a、第2検知信号S1bで実行することが可能となる。よって、回転体1の回転検出とロック装置2の状態検出とを、精度よく実行することができる。
【0047】
[他の実施形態]
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・ロック部材3の形状は、棒状に限定されず、例えば、板状や円柱状などの他の形状に変更してもよい。
・第2従動ギヤ12bは、第1従動ギヤ12aに噛み合うものでもよい。
【0049】
・腕部33は、ロック部材3の背面から延びることに限定されず、例えば、ロック部材3の側面から延びていてもよい。
・第1磁石21及び第2磁石31の配置向きは、実施例以外の他の向きに変更してもよい。
【0050】
・第2磁石31及び壁部32の組は、基板26(検知部20)を挟むように配置されることに限定されない。例えば、第2磁石31及び壁部32の組が基板26と第1磁石21との間に配置されてもよい。
【0051】
・検知部20は、3軸検出対応のセンサの場合、X軸、Y軸、Z軸の軸ごとに信号を出力するセンサでもよい。
・第1被検知部19及び第2被検知部30は、磁石に限定されず、検出装置10の検出方式に応じて、他の部材に変更されてもよい。
【0052】
・検知部20は、第1被検知部19の変化特性と第2被検知部30の変化特性とをセンシングできる部材であればよい。
・検知部20は、磁気式のセンサに限らず、例えば、光学センサなどの他の検出方式のセンサに変更してもよい。
【0053】
・壁部32は、磁性体に限定されず、磁場を遮蔽可能な部材から構成されたものであればよい。また、壁部32の形状も適宜変更してもよい。
・ロック装置2は、ステアリングロック装置に限定されず、他のロック装置に変更してもよい。
【0054】
・回転体1は、ステアリングシャフトに限定されず、検出装置10が搭載される対象に応じて、他の部材に変更されてもよい。
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0055】
1…回転体、2…ロック装置、3…ロック部材、10…検出装置、11…メインギヤ、12…従動ギヤ、12a…第1従動ギヤ、15…軸部、19…第1被検知部、20…検知部、21…第1磁石、27…磁気センサ、30…第2被検知部、31…第2磁石、32…壁部、35…第1出力部、36…第2出力部、38…制御部、S1…検知信号、S1a…第1検知信号、S1b…第2検知信号、S2…検知信号、L2…軸線方向。