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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128788
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230907BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230907BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230907BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/09
C08K3/22
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033384
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小森 清泉
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002BG031
4J002BH021
4J002CC031
4J002CD001
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CF211
4J002DE146
4J002EF007
4J002EF017
4J002EF067
4J002FD016
4J002FD027
4J002GJ02
4J002GQ00
4M109AA01
4M109BA01
4M109BA04
4M109EA03
4M109EA04
4M109EA08
4M109EA11
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB14
4M109EC06
4M109GA05
(57)【要約】
【課題】高放熱性に優れた硬化物が得られるとともに、流動性に優れた封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の封止用樹脂組成物は、(A)α化率が50%以上90%以下であるα化アルミナと、(B)カルボン酸系分散剤と、を含み、以下の条件で測定された熱伝導率が10W/(m・k)以上である。
(条件)
前記封止用樹脂組成物を175℃、120秒間加熱して硬化させてシート硬化物(10mm×10mm×1.0mm厚)を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて前記シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)α化率が50%以上90%以下であるα化アルミナ粒子と、
(B)カルボン酸系分散剤と、を含み、
以下の条件で測定された熱伝導率が10W/(m・k)以上である、封止用樹脂組成物。
(条件)
前記封止用樹脂組成物を175℃、120秒間加熱して硬化させてシート硬化物(10mm×10mm×1.0mm厚)を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて前記シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する。
【請求項2】
(A)α化率が50%以上90%以下であるα化アルミナ粒子と、
(B)カルボン酸系分散剤と、を含み、
α化アルミナ粒子(A)の含有量が65質量%以上である封止用樹脂組成物。
【請求項3】
α化アルミナ粒子(A)の体積基準の粒度分布が0.01μm以上200μm以下である、請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
α化アルミナ粒子(A)は粒度分布の異なる2種以上のαアルミナからなる、請求項1~3のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
カルボン酸系分散剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む、請求項1~4のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、水素原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~5のアルキルカルボキシル基、炭素数1~5のアルコキシカルボキシル基、炭素数1~5のアルキルアルコール基、炭素数1~5のアルコキシアルコール基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。Xは、酸素原子、炭素数1~30のアルキレン基、二重結合を1以上有する炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素基、三重結合を1以上有する炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。nは0~20の整数、mは1~5の整数を示す。)
【請求項6】
カルボン酸系分散剤(B)は、下記一般式(1a)で表される化合物を少なくとも1種含む、請求項1~5のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【化2】
(一般式(1a)中、R、m、nは一般式(1)と同義である。)
【請求項7】
カルボン酸系分散剤(B)は、下記一般式(1b)で表される化合物を少なくとも1種含む、請求項1~5のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【化3】
(一般式(1b)中、Qは炭素数1~5のアルキレン基を示し、Xは炭素数1~30のアルキレン基、二重結合を1以上有する炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素基、三重結合を1以上有する炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素基を示す。)
【請求項8】
カルボン酸系分散剤(B)の含有量は0.05質量%以上5質量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項9】
基板上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止部材と、を備える半導体装置であって、
前記封止部材が、請求項1~8のいずれかに記載の封止用樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等を封止するための材料として、熱硬化性の樹脂組成物(封止用樹脂組成物)が知られている。
【0003】
特許文献1には、液状の熱硬化性アクリル樹脂と、有機過酸化物と、50質量%以上、95質量%以下の範囲内のアルミナ等の無機フィラーと、を含有する、封止用アクリル樹脂組成物が開示されている。特許文献1には、前記無機フィラーには、シランカップリング剤が結合していると記載されている。そして、当該封止用アクリル樹脂組成物の硬化物は熱伝導性に優れており、熱伝導率は、1.0W/mK以上、10W/mK以下の範囲内であると記載されている。
【0004】
特許文献2には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、硬化促進剤、及び球状アルミナを75質量%以上95質量%未満の量で含有する半導体封止用樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、当該半導体封止用樹脂組成物によれば熱伝導性および流動性に優れると記載されている。
【0005】
特許文献3には、エポキシ樹脂、所定の硬化剤、およびアルミナを含む無機充填剤を80重量%以上の量で含有するエポキシ樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、当該エポキシ樹脂組成物は、高い放熱性を有し、成形性に優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/132671号
【特許文献2】特開2019-44006号公報
【特許文献3】特開2008-63571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体チップが小型化しており、半導体チップを封止している半導体装置において熱源が集中することから、放熱性により優れる封止材が求められてきている。放熱性を改良するために、高熱伝導性のアルミナ等の無機充填剤を高充填すると、封止用樹脂組成物の流動性が低下する問題があった。
特許文献1~3に記載の従来の技術においては、封止用樹脂組成物の流動性および放熱性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、α化アルミナとカルボン酸系分散剤とを組み合わせて用いることで、高放熱性に優れるとともに、流動性に優れた封止用樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0009】
本発明によれば、
(A)α化率が50%以上90%以下であるα化アルミナと、
(B)カルボン酸系分散剤と、を含み、
以下の条件で測定された熱伝導率が10W/(m・k)以上である、封止用樹脂組成物を提供することができる。
(条件)
前記封止用樹脂組成物を175℃、120秒間加熱して硬化させてシート硬化物(10mm×10mm×1.0mm厚)を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて前記シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する。
【0010】
本発明によれば、
(A)α化率が50%以上90%以下であるα化アルミナと、
(B)カルボン酸系分散剤と、を含み、
α化アルミナ粒子(A)の含有量が65質量%以上である封止用樹脂組成物を提供することができる。
【0011】
本発明によれば、
基板上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止部材と、を備える半導体装置であって、
前記封止部材が、前記封止用樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高放熱性に優れた硬化物が得られるとともに、流動性に優れた封止用樹脂組成物を提供することができる。言い換えれば、本発明の封止用樹脂組成物はこれらの特性のバランスに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
図2】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、例えば「1~5」は特に断りがなければ「1以上」から「5以下」を表す。
【0015】
本発明の封止用樹脂組成物は、α化アルミナ粒子(A)と、カルボン酸系分散剤(B)と、を含む。本発明の封止用樹脂組成物を、第1実施形態、第2実施形態により説明する。
【0016】
<第1実施形態>
本実施形態の封止用樹脂組成物は、α化アルミナ粒子(A)と、カルボン酸系分散剤(B)と、を含み、以下の条件で測定された熱伝導率が10W/(m・k)以上である。
(条件)
前記封止用樹脂組成物を175℃、120秒間加熱して硬化させてシート硬化物(10mm×10mm×1.0mm厚)を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて前記シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する。
【0017】
このような封止用樹脂組成物によれば、α化アルミナ粒子(A)と、カルボン酸系分散剤(B)と、を含むことにより、高放熱性に優れた硬化物が得られるとともに、流動性に優れる。言い換えれば、本実施形態の封止用樹脂組成物はこれらの特性のバランスに優れる。
【0018】
[α化アルミナ粒子(A)]
本実施形態で用いられるα化アルミナ粒子(A)は、そのα化率が、50%以上90%以下、好ましくは55%以上80%以下、より好ましくは60%以上70%以下である。
α化アルミナ粒子(A)のα化率が上記範囲であると、封止用樹脂組成物の流動性により優れるとともに熱伝導率をより向上させることができる。
【0019】
α化アルミナ粒子(A)の体積基準の粒度分布は、本発明の効果の観点から、好ましくは0.01μm以上200μm以下、より好ましくは0.02μm以上150μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上130μm以下である。
【0020】
粒度分布が0.01μm以上であると放熱性に優れ、粒度分布が200μm以下であると封止用樹脂組成物の流動性に優れる。すなわち、上記範囲内であると、封止用樹脂組成物は高放熱性により優れた硬化物が得られるとともに、流動性にもより優れる。
α化アルミナ粒子(A)の体積基準の粒度分布は、たとえば、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD-7500nano(島津製作所社製))を用いて測定することができる。
α化アルミナ粒子(A)は粒度分布の異なる2種以上のαアルミナを含むことができる。
【0021】
α化アルミナ粒子(A)の平均粒子径は、本発明の効果の観点から、好ましくは3μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上80μm以下、さらに好ましくは10μm以上60μm以下である。
【0022】
本実施形態の封止用樹脂組成物(100質量%)は、α化アルミナ粒子(A)を、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上の量で含む。上限値は特に限定されないが好ましくは96質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、カルボン酸系分散剤(B)を含むことによりα化アルミナ粒子(A)を高充填で含むことができ、高放熱性に優れた硬化物が得られる。
【0023】
[カルボン酸系分散剤(B)]
カルボン酸系分散剤(B)としては、本発明の効果を発揮することができれば特に限定されることなく従来公知の化合物を用いることができる。
【0024】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、カルボン酸系分散剤(B)を含むことにより流動性が向上し成形性に優れるとともに、α化アルミナ粒子(A)を高充填で含むことができ高放熱性に優れた硬化物が得られる。
カルボン酸系分散剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0025】
【化1】
【0026】
一般式(1)中、Rは、水素原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~5のアルキルカルボキシル基、炭素数1~5のアルコキシカルボキシル基、炭素数1~5のアルキルアルコール基、炭素数1~5のアルコキシアルコール基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0027】
Rは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~5のアルキルカルボキシル基であることが好ましい。
【0028】
Xは、酸素原子、炭素数1~30のアルキレン基、二重結合を1以上有する炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素基、三重結合を1以上有する炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。2価の鎖状炭化水素基としては、アルキレン基等が挙げられる。
【0029】
Xは、酸素原子、炭素数1~20のアルキレン基、二重結合を1以上有する炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基であることが好ましく、酸素原子、炭素数1~20のアルキレン基、二重結合を1つ有する炭素数1~20のアルキレン基であることが好まし。
nは0~20の整数、mは1~5の整数を示す。
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、以下の一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物であることが好ましい。カルボン酸系分散剤(B)は、これらから選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0031】
【化2】
【0032】
一般式(1a)中、R、m、nは一般式(1)と同義である。
【0033】
【化3】
【0034】
一般式(1b)中、Qは炭素数1~5のアルキレン基を示し、炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましい。Xは、炭素数1~30のアルキレン基、二重結合を1以上有する炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素基、三重結合を1以上有する炭素数1~30の2価の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数10~30のアルキレン基、二重結合を1以上有する炭素数10~30の2価の鎖状炭化水素基、三重結合を1以上有する炭素数10~30の2価の鎖状炭化水素基がより好ましく、二重結合を1以上有する炭素数10~30の2価の鎖状炭化水素基が特に好ましい。
【0035】
本実施形態においては、カルボン酸系分散剤(B)として、カルボキシル基を2以上有するポリカルボン酸系分散剤を含むことができる。
【0036】
カルボン酸系分散剤(B)の酸価は、5~500mgKOH/g、好ましくは10~350mgKOH/g、より好ましくは15~100mgKOH/gである。酸価が上記範囲であると、流動性により優れており成形性に優れるとともに、α化アルミナ粒子(A)をより高充填で含むことができ高放熱性にさらに優れた硬化物が得られる。
カルボン酸系分散剤(B)は、固体状もしくはろう状であることが好ましい。
【0037】
カルボン酸系分散剤(B)の含有量は、本発明の効果の観点から、封止用樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上1質量%以下である。
【0038】
カルボン酸系分散剤(B)に含まれる一般式(1)で表される化合物としては、CRODA社製の、Hypermer KD-4(質量平均分子量:1700、酸価:33mgKOH/g)、Hypermer KD-9(質量平均分子量:760、酸価:74mgKOH/g)、Hypermer KD-12(質量平均分子量:490、酸価:111mgKOH/g)、Hypermer KD-16(質量平均分子量:370、酸価:299mgKOH/g)等を挙げることができる。
【0039】
[熱硬化性樹脂]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含むことができる。
熱硬化性樹脂は、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、およびマレイミド樹脂からなる群から選択される一種類または二種類以上を含む。これらの中でも、硬化性、保存性、耐熱性、耐湿性、および耐薬品性を向上させる観点から、エポキシ樹脂を含むことがとくに好ましい。
【0040】
熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。本実施形態において、エポキシ樹脂は、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリスフェノール型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種類または二種類以上を含む。
【0041】
これらのうち、本発明の効果の観点から、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、およびビスフェノールA型エポキシ樹脂から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
前記エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂骨格の繰り返し構造に3つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含むことも好ましい。
【0042】
多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、α-2,3-エポキシプロポキシフェニル-ω-ヒドロポリ(n=1~7){2-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンジリデン-2,3-エポキシプロポキシフェニレン}等が挙げられる。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
【0043】
封止用樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、4重量%以上であることがとくに好ましい。熱硬化性樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、成形時における流動性を向上させることができる。このため、常温保管性により優れ、さらに充填性や成形安定性の向上も図ることができる。一方で、封止用樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがとくに好ましい。熱硬化性樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0044】
[硬化剤]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。
硬化剤としては、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。
【0045】
硬化剤として用いられる重付加型の硬化剤は、たとえばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂などのフェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類からなる群から選択される一種類または二種類以上を含む。
【0046】
硬化剤として用いられる触媒型の硬化剤は、たとえばベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;BF3錯体などのルイス酸からなる群から選択される一種類または二種類以上を含む。
【0047】
硬化剤として用いられる縮合型の硬化剤は、たとえばレゾール型フェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂などの尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂などのメラミン樹脂からなる群から選択される一種類または二種類以上を含む。
【0048】
これらの中でも、本発明の効果の観点から、フェノール樹脂系硬化剤を含むことがより好ましい。フェノール樹脂系硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量、分子構造は特に限定されない。硬化剤として用いられるフェノール樹脂系硬化剤は、たとえばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物からなる群から選択される一種類または二種類以上を含む。これらの中でも、封止用樹脂組成物の硬化性を向上させる観点からは、ノボラック型フェノール樹脂、およびフェノールアラルキル型フェノール樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
【0049】
封止用樹脂組成物中における硬化剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがとくに好ましい。硬化剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、常温保管性により優れるとともに、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図ることができる。一方で、封止用樹脂組成物中における硬化剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して40重量%以下であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがとくに好ましい。硬化剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0050】
[硬化触媒]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化触媒を含むことができる。
硬化触媒としては、公知の硬化触媒を用いることができるが、フェニルイミダゾール骨格、フェニルピリジン骨格、またはフェニルキノリン骨格を備える化合物であることが好ましい。これらの骨格を備えることにより、熱硬化性樹脂との相溶性が調整され、本発明の効果をより発揮することができる。
硬化触媒としては、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等を挙げることができる。
【0051】
本実施形態において用いられる硬化触媒は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、前記硬化触媒を0.35質量部以上1.2質量部以下、好ましくは0.4質量部以上1.1質量部以下、さらに好ましくは0.45質量部以上1.0質量部以下の量で含むことができる。
このような量で硬化触媒を含むことより、本実施形態の封止用樹脂組成物の硬化性をより改善することができ、アフターキュアを不要とすることができる。
【0052】
[繊維フィラー]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらに繊維フィラーを含むことができる。
繊維フィラーとしては、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、全芳香族ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステルアミド繊維、全芳香族ポリエーテル繊維、全芳香族ポリカーボネート繊維、全芳香族ポリアゾメチン繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、ポリ(パラ-フェニレンベンゾビスチアゾール)(PBZT)繊維、ポリベンゾイミダゾール(PBI)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリアミドイミド(PAI)繊維、ポリイミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリ(パラ-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)(PBO)繊維が挙げられる。これらの繊維フィラーBは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本実施形態においては、軽量性と強度とのバランス向上を図る観点から、繊維フィラーとしてガラス繊維を用いることがより好ましい。なお、ガラス繊維は、封止用樹脂組成物の常温保管性の観点から、アミノシラン処理を施さないものを用いることが好ましい。
【0054】
封止用樹脂組成物中における繊維フィラーの含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して2重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。繊維フィラーの含有量を上記下限値以上とすることにより、封止樹脂の強度を向上させ、製品信頼性を向上させることができる。一方で、封止用樹脂組成物中における繊維フィラーの含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して25重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。繊維フィラーの含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0055】
[無機充填剤]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、α化アルミナ以外の無機充填剤を含むこともできる。
無機充填剤としては、たとえば溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、窒化珪素、および窒化アルミからなる群から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。これらの中でも、汎用性に優れている観点から、シリカ、炭酸カルシウムを含むことがより好ましい。
【0056】
(その他の成分)
本実施形態の封止用樹脂組成物には、必要に応じて、たとえば離型性付与剤、着色剤、イオン捕捉剤、カップリング剤、オイル、低応力剤、難燃剤および酸化防止剤等の各種添加剤のうち1種以上を適宜配合することができる。
【0057】
離型性付与剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックスや酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類、ならびにパラフィンから選択される一種類または二種類以上を含むことができる。着色剤は、たとえばカーボンブラックおよび黒色酸化チタンのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
【0058】
イオン捕捉剤は、たとえばハイドロタルサイトを含むことができる。オイルは、たとえばシリコーンオイルを含むことができる。低応力剤は、たとえばシリコーンゴムを含むことができる。難燃剤は、たとえば水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、およびホスファゼンから選択される一種類または二種類以上を含むことができる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびチオエーテル系酸化防止剤から選択される一種類または二種類以上を含むことができる。
【0059】
<第2実施形態>
本実施形態の封止用樹脂組成物は、α化率が50%以上90%以下であるα化アルミナ粒子(A)と、カルボン酸系分散剤(B)と、を含み、α化アルミナ粒子(A)の含有量が65質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上の量で含む。上限値は特に限定されないが好ましくは96質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0060】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、カルボン酸系分散剤(B)を含むことによりα化アルミナ粒子(A)を高充填で含むことができ、高放熱性に優れた硬化物が得られるとともに、流動性にも優れる。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、α化アルミナ粒子(A)、カルボン酸系分散剤(B)、さらにその他の成分、さらにこれらの含有量等は第1実施形態と同一であるので説明を省略する。
【0061】
<半導体装置>
本実施形態における半導体装置は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により半導体素子が封止されているものである。半導体素子の具体例としては、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。半導体素子は、好ましくは、受光素子および発光素子(発光ダイオード等)等の光半導体素子を除く、いわゆる、光の入出を伴わない素子である。
【0062】
半導体装置の基材は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。
【0063】
封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体装置としては、たとえば、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
以下、図面を参照してさらに具体的に説明する。
【0064】
図1および図2は、いずれも、半導体装置の構成を示す断面図である。なお、本実施形態において、半導体装置の構成は、図1および図2に示すものには限られない。
まず、図1に示した半導体装置100は、基板30上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止してなる封止材50と、を備えている。
封止材50は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物により構成されている。
【0065】
また、図1には、基板30が回路基板である場合が例示されている。この場合、図1に示すように、基板30のうちの半導体素子20を搭載する一面とは反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール60が形成される。半導体素子20は、基板30上に搭載され、かつワイヤ40を介して基板30と電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基板30に対してフリップチップ実装されていてもよい。ここで、ワイヤ40としては、限定されないが、たとえば、Ag線、Ni線、Cu線、Au線、Al線が挙げられ、好ましくは、ワイヤ40はAg、NiまたはCuあるいはこれらの1種以上を含む合金で構成される。
【0066】
封止材50は、たとえば半導体素子20のうちの基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うように半導体素子20を封止する。図1に示す例においては、半導体素子20の上記他面と側面を覆うように封止材50が形成されている。
【0067】
本実施形態において、封止材50は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。このため、半導体装置100においては、封止材50とワイヤ40との密着性に優れており、これにより、半導体装置100は信頼性に優れるものである。
封止材50は、たとえば封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成することができる。
【0068】
図2は、本実施形態における半導体装置100の構成を示す断面図であって、図1とは異なる例を示すものである。図2に示す半導体装置100は、基板30としてリードフレームを使用している。この場合、半導体素子20は、たとえば基板30のうちのダイパッド32上に搭載され、かつワイヤ40を介してアウターリード34へ電気的に接続される。また、封止材50は、図1に示す例と同様にして、本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0069】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0070】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例においては以下の成分を用いた。
【0071】
(α化アルミナ粒子)
・α化アルミナ粒子1:日鉄ケミカル&マテリアル社製(α化率63%、平均粒径50μm、粒度分布0.01μm~150μm)
・α化アルミナ粒子2:日鉄ケミカル&マテリアル社製(α化率63%、平均粒径25μm、粒度分布0.01μm~100μm)
・α化アルミナ粒子3:製品名CB-60C、昭和電工社製(α化率30%、平均粒径18μm、粒度分布0.01μm~100μm)
【0072】
(フィラー)
・シリカフィラー1:製品名レオロシ-ルCP102、株式会社トクヤマ製
・シリカフィラー2:株式会社アドマテックス製、平均粒径0.7μm
【0073】
(着色剤)
・カーボンブラック:東海カーボン社製
【0074】
(カップリング剤)
・カップリング剤:製品名CF-4083(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング社製)
【0075】
(熱硬化性樹脂)
・エポキシ樹脂:下記化学式で表されるテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(2官能エポキシ化合物、メソゲン構造あり、三菱ケミカル社製、製品名YX4000HK)
【化4】
【0076】
(硬化剤)
・フェノール硬化剤1:オルソクレゾールノボラック型フェノール硬化剤(住友ベークライト社製、製品名PR-55617)
・フェノール硬化剤2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂(明和化成社製、製品名MEH-7851SS)
【0077】
(硬化触媒)
・硬化触媒1:テトラフェニルホスホニウム・4,4’-スルフォニルジフェノラート
・硬化触媒2:下記一般式(2)で表されるオニウム塩化合物のリン系触媒(テトラフェニルホスホニウムのビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート付加物)
【化5】
【0078】
(分散剤)
・カルボン酸系分散剤:Hypermer KD-9(質量平均分子量:760、酸価:74mgKOH/g、CRODA社製)
【0079】
(シリコーンオイル)
シリコーンオイル:下記化学式(3)で示されるシリコーンオイル(FZ-3730、東レ・ダウコーニング社製)
【化6】
【0080】
[実施例1~2、比較例1~2(封止用樹脂組成物の製造)]
表1に記載された各成分を記載された量比で混合し、混合物を得た。混合は、常温でヘンシェルミキサーを用いて行った。その後、その混合物を、70~100℃でロール混練し、混練物を得た。得られた混練物を冷却し、その後、粉砕し、封止用樹脂組成物を得た。
【0081】
<評価>
各例で得られた樹脂組成物または当該組成物を用いて以下の方法で評価用試料を作製し、得られた試料の密着性および信頼性を以下の方法で評価した。
【0082】
[スパイラルフロー(SF)]
実施例および比較例の封止用樹脂組成物を用いてスパイラルフロー試験を行った。
試験は、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS-15」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で封止用樹脂組成物を注入し、流動長を測定することにより行った。数値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
【0083】
(矩形流路圧(NGFP))
各例で得られた封止用樹脂組成物の矩形流路圧(矩形圧)を次のように測定した。まず、低圧トランスファー成形機(NEC社製、40tマニュアルプレス)を用いて、金型温度175℃、注入速度24.7mm/secの条件にて、幅13mm、厚さ0.5mm、長さ175mmの矩形状の流路に封止用樹脂組成物を注入した。このとき、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力(kgf/cm)を測定し、これを矩形圧とした。矩形圧は、溶融粘度のパラメータであり、数値が小さい方が、溶融粘度が低いことを示す。
【0084】
(キュラストメーターによる測定)
キュラストメーター(オリエンテック社製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用い、金型温度175℃にて、各例で得られた封止用樹脂組成物の硬化トルクを経時的に60秒後、90秒後、120秒後および300秒後に測定した。
【0085】
(機械強度の評価(曲げ強度/曲げ弾性率))
各例で得られた封止用樹脂組成物を、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製「KTS-30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で金型に注入成形した。これにより、幅10mm、厚み4mm、長さ80mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間の条件で後硬化させた。これにより、機械的強度の評価用の試験片を作製した。そして、試験片の室温(25℃)または260℃における曲げ強度(N/mm)および曲げ弾性率(N/mm)を、JIS K 6911に準拠して測定した。
【0086】
(熱伝導率)
各例で得られた封止用樹脂組成物を175℃、120秒間加熱し硬化させてシート硬化物(10mm×10mm×1.0mm厚)を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて前記シート硬化物の厚み方向の熱伝導率(W/(m・k))を測定した。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に記載のように、本発明に係る実施例の封止用樹脂組成物は、高放熱性に優れた硬化物が得られるとともに、流動性に優れていた。当該樹脂組成物を硬化してなる封止材で半導体素子を封止する半導体装置は、放熱性に優れており製品信頼性に優れることが推察された。
【符号の説明】
【0089】
20 半導体素子
30 基板
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ワイヤ
50 封止材
60 半田ボール
100 半導体装置
図1
図2