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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128789
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】流下式製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/12 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
F25C1/12 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033387
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】植田 毅
(72)【発明者】
【氏名】太田 秀治
【テーマコード(参考)】
3L110
【Fターム(参考)】
3L110AA07
3L110AB00
(57)【要約】
【課題】不必要なエラー報知を回避することが可能な流下式製氷機を提供する。
【解決手段】除氷水タンク34に、該タンク34に貯留されている除氷水の温度を検出する除氷水温度センサTH1が配設される。第1報知手段にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行可能な制御手段52が設けられる。制御手段52は、除氷水タンク34への給水時の除氷水温度センサTH1での給水時検出温度と、製氷工程の終了時の除氷水温度センサTH1での製氷終了時検出温度との差が閾値より小さい場合に、第1報知手段にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行し、閾値以上の場合に、第1報知手段にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行しないようにし得るよう構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向きに配置した製氷板に氷塊を生成する製氷工程と、除氷水タンクに貯留されて製氷工程中に温度調節手段により加熱された除氷水を、前記製氷板に供給して氷塊を離脱させる除氷工程と、を交互に繰り返す流下式製氷機において、
前記除氷水タンク内の除氷水の温度を検出する温度検出手段と、
エラー報知処理を実行可能な制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記除氷水タンクへの給水時の前記温度検出手段での検出温度と、前記製氷工程の終了時の前記温度検出手段での検出温度との差が閾値以上の場合に、エラー報知処理を実行しないようにし得る
ことを特徴とする流下式製氷機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記除氷水が設定温度となるように前記温度調節手段を制御すると共に、前記製氷工程の終了時の前記温度検出手段での検出温度と、前記設定温度との差に基づいて、エラー報知処理の実行の要否を判定する請求項1記載の流下式製氷機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記温度検出手段での検出温度が下限温度を下回る場合に、エラー報知処理を実行する請求項1または2記載の流下式製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除氷水タンクに貯留された除氷水を用いて除氷する流下式製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量の氷塊を製造する製氷機として、冷凍系を構成する蒸発管と製氷板とを対向配置し、製氷工程において、蒸発管に循環供給される冷媒により冷却される製氷板の表面(製氷面)に製氷水を散布供給して氷塊を形成し、得られた氷塊を除氷工程において製氷板から離脱させて落下放出する流下式製氷機が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の流下式製氷機は、除氷水タンクに貯留した除氷水を、冷凍系を構成する熱交換器によって製氷工程中に加熱し、除氷工程において、除氷水タンクに貯留されている加熱された除氷水を、製氷板の裏面に供給して氷塊の離脱を促進して除氷するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-56952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の流下式製氷機では、除氷水タンク内の水温を検出する温度検出器が設定温度を検出すると、熱交換器による除氷水の加熱を停止し、温度検出器が設定温度より低い温度を検出すると、熱交換器による除氷水の加熱を再開することで、除氷水タンク内の除氷水の温度を略一定に保つよう構成されている。しかし、冷凍系を構成する各種部品の故障等の不具合によって、除氷水タンク内の除氷水の温度が設定温度まで上昇しない事態が発生することがある。除氷水が設定温度まで上昇することなく、該除氷水が除氷に用いられると、除氷工程に時間が掛かって製氷能力が低下することのみならず、各種部品等の不具合が原因であれば、製氷ができなくなってしまう恐れがある。そこで、製氷工程から除氷工程に移行するまでに、除氷水の温度が設定温度まで上昇しない場合は、エラー報知を行い、使用者に不具合が発生していることを知らせる対策が採られている。
【0005】
ここで、前記除氷水が設定温度まで上昇しない原因は、各種部品等の不具合に限らず、冬期等のように周囲温度や水温が著しく低くなる外部環境が原因である場合もあるが、このような外部環境が原因の場合であっても、エラー報知が行われると、メーカーのサービスマンが製氷機の不具合内容を確認するために現地に出向いている。しかし、除氷水が設定温度まで上昇しない原因が外部環境である場合は、外部環境が変化することによって原因が解消するものであることから、点検が無駄になると共に、点検のために製氷機の運転を休止することにより日生製氷能力が低下する問題も招く。
【0006】
そこで、本願発明者は、従来技術に内在している前記課題を解決するために種々実験を重ねた結果、除氷水タンクへの給水時における除氷水の温度と、製氷工程の終了時の除氷水の温度との差が、各種部品の不具合が原因の場合と、外部環境が原因の場合とでは異なることを知見した。そして、この知見を利用することで、除氷水の温度が設定温度まで上昇しない原因が外部環境であることを判別して、不必要なエラー報知を回避し得る流下式製氷機を案出したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、不必要なエラー報知を回避することが可能な流下式製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る流下式製氷機は、
縦向きに配置した製氷板(12)に氷塊を生成する製氷工程と、除氷水タンク(34)に貯留されて製氷工程中に温度調節手段(44)により加熱された除氷水を、前記製氷板(12)に供給して氷塊を離脱させる除氷工程と、を交互に繰り返す流下式製氷機において、
前記除氷水タンク(34)内の除氷水の温度を検出する温度検出手段(TH1)と、
エラー報知処理を実行可能な制御手段(52)と、を備え、
前記制御手段(52)は、前記除氷水タンク(34)への給水時の前記温度検出手段(TH1)での検出温度(T2)と、前記製氷工程の終了時の前記温度検出手段(TH1)での検出温度(T3)との差が閾値(X)以上の場合に、エラー報知処理を実行しないようにし得ることを要旨とする。
請求項1の発明によれば、除氷水タンクへの給水時の除氷水の温度と、製氷工程の終了時の除氷水の温度との差が閾値以上の場合に、エラー報知処理を実行しないようにし得るよう構成したので、外部環境を原因とする不具合での不必要なエラー報知を回避することが可能となり、無駄な点検作業や、運転休止による日生製氷能力の低下を防ぐことができる。
【0009】
請求項2の発明では、前記制御手段(52)は、前記除氷水が設定温度(T1)となるように前記温度調節手段(44)を制御すると共に、前記製氷工程の終了時の前記温度検出手段(TH1)での検出温度(T3)と、前記設定温度(T1)との差に基づいて、エラー報知処理の実行の要否を判定することを要旨とする。
請求項2の発明によれば、製氷工程の終了時の除氷水の温度と、設定温度との差に基づいてエラー報知処理の実行の要否を判定することで、外部環境を原因とする不具合での不必要なエラー報知をより精度よく回避することができる。また、製氷工程の終了時の除氷水の温度が、除氷能力が低下するような温度であることを報知することも可能となる。
【0010】
請求項3の発明では、前記制御手段(52)は、前記温度検出手段(TH1)での検出温度が下限温度(T4)を下回る場合に、エラー報知処理を実行することを要旨とする。
請求項3の発明によれば、除氷水の温度が下限温度を下回る場合にエラー報知することで、下限温度を下回る除氷水で除氷が行われることでの不具合の発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る流下式製氷機によれば、外部環境を原因とする不具合での不必要なエラー報知処理を回避することが可能となり、無駄な点検作業や運転休止の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係る流下式製氷機の概略構成図である。
図2】流下式製氷機の制御ブロック図である。
図3】除氷水タンク内の除氷水の温度変化を示す説明図である。
図4】エラー報知判定に係る制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る流下式製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例0014】
図1に示す如く、実施例に係る流下式製氷機(以下、単に製氷機と指称する)の製氷機構10は、所定間隔離間して対向配置した垂直な製氷板12,12の対向面(裏面)に、冷凍系14から導出して横方向に蛇行する蒸発管16が密着固定され、製氷工程時に蒸発管16に冷媒を循環させて製氷板12,12を冷却するよう構成される。製氷機構10の直下には、集水樋18が配設され、製氷工程に際し製氷板12,12の各製氷面(表面)に供給された製氷水が、集水樋18を介して製氷水タンク20に回収貯留される。製氷水タンク20内には、オーバーフロー管21が設けられ、余剰水を外部に排出するよう構成される。
【0015】
図1に示す如く、前記製氷水タンク20から製氷水循環ポンプPM1を介して導出した製氷水供給管22は、製氷板12,12の上方に設けた製氷水散布器24に接続している。製氷水散布器24には、多数の散水孔(図示せず)が穿設され、製氷工程時に製氷水タンク20から圧送された製氷水を、氷結温度にまで冷却されている製氷板12,12の製氷面に散水孔から散布して流下させ、製氷面に氷塊を生成するよう構成される。
【0016】
図1に示す如く、前記冷凍系14では、圧縮機CMで圧縮された気化冷媒が、吐出管26および後述の熱交換部48を経て凝縮器CDで液化した後に膨張弁EVで減圧され、蒸発管16で蒸発する過程で製氷板12,12と熱交換を行って、各製氷板12を氷点下にまで冷却するよう構成される。また、蒸発管16で蒸発した気化冷媒は、吸入管28を経て圧縮機CMに帰還する。なお、符号FMは、凝縮器CDを冷却する冷却ファンである。更に、圧縮機CMの吐出管26からホットガス管30が分岐され、このホットガス管30はホットガス弁HVを経て、蒸発管16の入口側に連通されている。このホットガス弁HVは、除氷工程にのみ開放し、製氷工程では閉成される。製氷機は、除氷工程において、ホットガス弁HVを開放してホットガスを圧縮機CMからホットガス管30を介して蒸発管16に直接供給することで、両製氷板12,12を加熱するようになっている。そして、冷凍系14における蒸発管16の出口側(製氷板12,12から導出される部位近傍)には、当該部位を流通する冷媒の温度を測定する切換用温度センサTH2が配設されている。
【0017】
前記製氷機は、除氷工程において製氷板12,12の裏面に除氷水を散布して、その昇温による除氷促進を行うための除氷水供給手段32が、製氷水タンク20や製氷水循環ポンプPM1等の製氷水供給系とは別に設けられている。除氷水供給手段32は、図1に示す如く、除氷水を貯留する除氷水タンク34と、対向する製氷板12,12の間の上部に設けた除氷水散布器36と、除氷水タンク34と除氷水散布器36とを接続する除氷水供給管38と、この除氷水供給管38に配設され、除氷水タンク34から除氷水を除氷水散布器36に圧送する除氷水供給ポンプPM2とを備えている。すなわち、製氷機は、除氷工程において、ホットガスによる加熱と共に、除氷水を除氷水タンク34から圧送して除氷水散布器36に穿設した多数の散水孔(図示せず)を介して製氷板12,12の裏側に散布することで、製氷面に生成された氷塊の氷結面を融解させて、氷塊を自重により落下させる。なお、製氷板12,12の裏側を流下した除氷水は、製氷水と同様に集水樋18を介して製氷水タンク20に回収され、これが次回の製氷水として使用される。
【0018】
図1に示す如く、前記除氷水タンク34には、外部水道源に接続する供給部としての給水管40が連通され、給水管40に介挿した給水弁WVを開放することにより、除氷水タンク34に水道水(除氷水)が供給される。また、除氷水タンク34には、水位検出手段としてのフロートスイッチFLが配設され、このフロートスイッチFLにより内部に貯留される除氷水の設定水位(貯留量)が規定される。すなわち、除氷工程において除氷水供給ポンプPM2によって除氷水タンク34から除氷水散布器36へ除氷水を圧送することで、除氷水タンク34内の水位が設定水位を下回ると、後述する制御手段52によって給水弁WVが開放されて、フロートスイッチFLが設定水位を検出するまで除氷水タンク34への給水が行われる。また、除氷水タンク34には、内部に貯留した除氷水の温度を検出する除氷水温度センサ(温度検出手段)TH1が配設されている。なお、除氷水タンク34は、フロートスイッチFLで規定される設定水位より上方に設定された上限水位を越えた余剰の除氷水を、外部に排出するためのオーバーフロー管42を備えている。
【0019】
前記製氷機は、除氷水タンク34に貯留した除氷水の温度を調節する温度調節手段44を備えている。温度調節手段44は、図1に示す如く、冷凍系14を構成する圧縮機CMの吐出管26の一部を蛇行状に形成した熱交換部48に除氷水を接触させる熱交換器46と、除氷水タンク34と熱交換器46を接続する熱交換用供給管50と、該熱交換用供給管50に配設され、除氷水タンク34から熱交換器46へ除氷水を圧送する熱交換用ポンプPM3とを有している。なお、熱交換器46は、傾斜下端を除氷水タンク34の内部に臨ませて配設され、傾斜上端に供給された除氷水が流下する過程で熱交換部48との接触により加熱され、この加熱した除氷水が除氷水タンク34へ戻るようになっている。
【0020】
図2に示すように、製氷機は、圧縮機CM、冷却ファンFM、製氷水循環ポンプPM1、除氷水供給ポンプPM2、熱交換用ポンプPM3、ホットガス弁HVおよび給水弁WVの各種機器類が制御手段52に電気的に接続され、この制御手段52により制御される。また製氷機は、除氷水温度センサTH1、切換用温度センサTH2およびフロートスイッチFL等の検出手段が制御手段52に電気的に接続され、これらの検出手段の信号が制御手段52に入力される。製氷機では、制御手段52の制御下に、製氷工程において切換用温度センサTH2が製氷完了温度を検出したことを条件として製氷工程を終了して除氷工程に移行し、除氷工程において切換用温度センサTH2が除氷完了温度を検出したことを条件として除氷工程を終了して製氷工程に移行するよう構成される。また製氷機は、制御手段52の制御下に、フロートスイッチFLが下限水位を検出した際に、給水弁WVを開放して除氷水タンク34に除氷水を供給し、フロートスイッチFLが設定水位を検出した際に、給水弁WVを閉成して除氷水の供給を停止する。また、制御手段52は、各種データを記憶する記憶部54を備え、該記憶部54に、除氷水温度センサTH1により検出される除氷水の検出温度を記憶し得るよう構成される。
【0021】
前記温度調節手段44は、制御手段52で設定された設定温度T1を目標値として、除氷水温度センサTH1による除氷水の検出温度に基づいて、熱交換用ポンプPM3が駆動または停止される。具体的に温度調節手段44は、除氷水温度センサTH1の検出温度が設定温度T1を下回っている場合は、熱交換用ポンプPM3を駆動して熱交換器46に除氷水を供給し、熱交換部48との接触により加熱された除氷水が除氷水タンク34に還流することで、除氷水タンク34に貯留された除氷水が設定温度T1に近づくよう次第に昇温される。そして、除氷水温度センサTH1の検出温度が設定温度T1になると、熱交換用ポンプPM3を停止し、熱交換器46による除氷水の加熱を停止する。このようにして、温度調節手段44では、除氷水タンク34内の除氷水の温度を設定温度T1に保つよう構成される。前記設定温度T1は、除氷工程において除氷時間との関係で製氷板12,12に最適な熱量を付与し得る除氷水の温度であって、製氷水タンク20に回収された除氷水を次の製氷工程で製氷水として用いる際に支障がでない等の要件を勘案して決定され、実施例では、例えば25℃に設定される。
【0022】
前記制御手段52には、図2に示す如く、報知手段として、ブザーやスピーカ等の音によるエラー報知が可能な第1報知手段56およびランプ等の光によるエラー報知が可能な第2報知手段58が電気的に接続され、制御手段52は、製氷機に発生した不具合(異常)の種類に応じて第1報知手段56および第2報知手段58を選択してエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行し得るよう構成される。なお、光によりエラー報知を行う第2報知手段58は、使用者に対する報知レベルは低く、注意喚起する程度であるのに対し、音によりエラー報知を行う第1報知手段56は、第2報知手段58より使用者に対する報知レベルが高い手段であり、両報知手段56,58での報知態様の違いによって、使用者にエラー(異常)の種類の違いを認識可能に構成されている。なお、各報知手段56,58でエラー報知が実行された場合に、使用者による解除操作あるいは報知時間の経過によってエラー報知は終了するよう構成される。
【0023】
図3は、除氷水タンク34内における除氷水の温度変化を示す説明図であって、前記給水弁WVの開放により除氷水タンク34に新たな除氷水が供給されると、タンク内の水温は低下した後、前記熱交換器46による加熱によって上昇するが、何らかの原因によって除氷水の温度が設定温度T1に至る前に製氷工程が終了すると、除氷工程への移行により除氷水タンク34内の水位が下限水位まで低下して再び除氷水タンク34への給水が行われると、タンク内の水温は新たな除氷水の供給によって低下する。このように、製氷工程中において、前記除氷水タンク34内の除氷水の温度が設定温度T1に至らない場合があり、その原因としては、以下のことが考えられる。
1.冷凍系14の各種部品の故障や、冷媒漏れ等による熱交換器46での熱交換量の低下の不具合。
2.熱交換器46の汚れや、熱交換部48のはんだはがれ等による熱交換器46での熱交換量の低下の不具合。
3.熱交換用ポンプPM3や給水弁WVの故障等によって、外部水道源から水(除氷水)が除氷水タンク34に供給し続けられる不具合。
4.冬期等のように、製氷機の周囲温度や外部水道源の水温が著しく低くなる外部環境に起因する原因。
前記1.~3.は、冷凍系や製氷機を構成する各種部品の故障等の不具合を原因とするものであって、エラー報知により不具合を使用者に知らせて、その不具合を解消するための対処を促す必要がある。これに対し、前記4.は、外部環境を原因とするものであり、外部環境の変化によって自然に解消するものであって、エラー報知により使用者に知らせる必要はない。
【0024】
前記1.~3.のように、各種部品の故障等の不具合を原因として除氷水の温度が設定温度T1に至らない場合と、前記4.のように、外部環境を原因として除氷水の温度が設定温度T1に至らない場合とでは、種々の実験によって、除氷水タンク34への外部水道源からの給水時の除氷水の温度と、製氷工程の終了時の除氷水の温度との差が異なることを知見した。これは、各種部品の故障等の不具合を原因とする場合は、熱交換器46の正規の能力が発揮できないことで熱交換量が大きく低下し、除氷水タンク34への給水時の除氷水の温度が、製氷工程が終了するまでに上昇する上昇度は小さく、この結果として、製氷工程の終了時の除氷水の温度と、除氷水タンク34への給水時の除氷水の温度との差も小さくなる。これに対し、外部環境を原因とする場合は、熱交換器46自体には不具合がないので正規の能力を発揮でき、除氷水タンク34への給水時の除氷水の温度が、製氷工程が終了するまでに上昇する上昇度は大きく、この結果として、製氷工程の終了時の除氷水の温度と、除氷水タンク34への給水時の除氷水の温度との差も大きくなるからと考えられる。すなわち、各種部品の故障等の不具合を原因とする場合に表われる差と、外部環境を原因とする場合に表われる差との境界を閾値Xとすることで、除氷水の温度が設定温度T1に至らない原因が、外部環境であることを判別し得ることを知見したものである。そこで、実施例では、制御手段52が、除氷水タンク34への給水時の除氷水温度センサTH1での検出温度(給水時検出温度T2)と、製氷工程の終了時の除氷水温度センサTH1での検出温度(製氷終了時検出温度T3)との差が閾値X以上の場合は、除氷水の温度が設定温度T1に至らない原因は外部環境であると判断して、エラー報知処理を実行しないようにし得るようにし、前記給水時検出温度T2と、製氷終了時検出温度T3との差が閾値Xより小さい場合は、除氷水の温度が設定温度T1に至らない原因は各種部品の故障等の不具合であると判断して、前記第1報知手段56にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行するよう構成したものである。また、種々の実験によって、前記閾値Xを、例えば15℃に設定することで、除氷水の温度が設定温度T1に至らない原因が、外部環境であることを適正に判断し得ることは確認されている。なお、閾値Xは、熱交換器46の能力や製氷機自体の能力のばらつき等に応じて、任意の値に設定することができる。
【0025】
ここで、給水時検出温度T2と、製氷終了時検出温度T3との差が閾値X以上である場合であっても、製氷終了時検出温度T3が、製氷板12に生成されている氷塊の氷結面の融解を充分に促進することができない低い温度である場合は、除氷能力が低下してしまう。そこで、実施例では、前記制御手段52は、前記除氷水温度センサTH1による製氷終了時検出温度T3と、前記設定温度T1との差に基づいて、エラー報知処理の実行の要否を判定するよう構成される。すなわち、製氷終了時検出温度T3が設定温度T1に近く、その差が小さければ除氷能力の低下を許容範囲に抑えることができる一方で、製氷終了時検出温度T3が設定温度T1から離れ、その差が大きければ許容範囲を超えて除氷能力が低下してしまう。従って、実施例では、製氷終了時検出温度T3と設定温度T1との差が、除氷能力の低下を許容範囲に抑えることができる判定値Y以下の場合は、エラー報知処理を実行しないようにし、製氷終了時検出温度T3と設定温度T1との差が判定値Yより大きい場合に、前記第1報知手段56にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行するよう設定される。また、製氷終了時検出温度T3が設定温度T1に近いということは、熱交換器46が正規の能力を発揮していると判断でき、製氷終了時検出温度T3と設定温度T1との差に基づいてエラー報知処理の実行の要否を判定することで、除氷水の温度が設定温度T1に至らない原因が、外部環境であることをより精度よく判別できるものである。なお、判定値Yは、実施例では、例えば、2℃に設定されるが、該判定値は、熱交換器46の能力や製氷機自体の能力のばらつき等に応じて、任意の値に設定することができる。
【0026】
また、前記制御手段52は、除氷水温度センサTH1での検出温度が下限温度T4を下回る場合に、前記第2報知手段58にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行するよう構成される。下限温度T4は、当該下限温度T4を下回る除氷水で除氷が行われることで、除氷工程が著しく長くなったり、製氷板12から氷塊を離脱できなくなるおそれがある温度であって、例えば、4℃に設定される。
【0027】
図4を参照して、エラー報知判定に係る制御処理の流れを説明する。
前記制御手段52は、前記除氷水温度センサTH1の検出温度を常に監視し、該検出温度が、下限温度T4を下回るか否かを判定し(ステップS1)、肯定であればステップS2において前記第2報知手段58にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行し、第2報知手段58で光によるエラー報知を行う。ステップS1が否定されると、制御手段52は、除氷水温度センサTH1の検出温度が設定温度T1に至ることなく製氷工程が終了した場合に、該製氷工程の終了時の製氷終了時検出温度T3と、前記記憶部54に記憶されている給水時検出温度T2との差が、閾値X以上であるか否かを判定する(ステップS3)。そして、ステップS3が否定の場合は、制御手段52は、除氷水の温度が設定温度T1に至らない原因が、各種部品の故障等の不具合であると判断し、ステップS5に移行して第1報知手段56にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行し、第1報知手段56で音によるエラー報知を行う。なお、製氷終了時検出温度T3と比較する給水時検出温度T2は、終了した製氷工程の直前の除氷工程における給水時の給水時検出温度T2であり、前記記憶部54に記憶される給水時検出温度T2は、製氷工程の終了によって更新される。
【0028】
前記ステップS3が肯定であれば、制御手段52は、ステップS4に移行して、除氷水温度センサTH1による製氷終了時検出温度T3と設定温度T1との差が、判定値Y以下か否かを判定する。ステップS4が肯定であれば、制御手段52は、第1報知手段56にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行することなく制御処理を終了する。また、ステップS4が否定の場合は、制御手段52は、除氷水の温度が、除氷能力を低下させる温度であると判断し、ステップS5に移行し、第1報知手段56にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行し、第1報知手段56で音によるエラー報知を行う。
【0029】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る流下式製氷機の作用について説明する。
実施例の流下式製氷機では、製氷工程中において、前記除氷水タンク34内の除氷水の温度が設定温度T1に至らない状況において、除氷水タンク34への給水時の除氷水温度センサTH1による給水時検出温度T2と、製氷工程の終了時の除氷水温度センサTH1による製氷終了時検出温度T3との差が閾値X以上の場合に、エラー報知処理を実行しないようにし得るよう構成した。これにより、外部環境を原因とする不具合での不必要なエラー報知を回避することが可能となり、無駄な点検作業や、運転休止による日生製氷能力の低下を防ぐことができる。
【0030】
また、実施例の流下式製氷機では、除氷水温度センサTH1による製氷終了時検出温度T3と給水時検出温度T2との差が閾値X以上の場合に、製氷終了時検出温度T3と設定温度T1との差が判定値Y以下か否かを判定し、判定値Y以下であれば第1報知手段56にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行しない一方で、判定値Yより大きい場合には第1報知手段56にエラー報知を行わせるエラー報知処理を実行するよう構成した。これにより、外部環境を原因とする不具合での不必要なエラー報知をより精度よく回避することができると共に、製氷工程の終了時の除氷水の温度が、除氷能力が低下するような温度であることを報知することも可能となる。
【0031】
また、除氷水の温度が下限温度T4を下回る場合に、前記第2報知手段58によりエラー報知を行うことで、使用者に注意喚起して、エラーに対する対処を促すことができ、下限温度T4を下回る除氷水で除氷が行われることでの不具合の発生を防ぐことができる。
【0032】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。また、以下の変更例に限らず、実施例に記載した構成については、本発明の主旨の範囲内において種々の実施形態を採用し得る。
1.実施例では、蒸発管を挟んで一対の製氷板を対向配置した製氷機構を例示したが、蒸発管と1つの製氷板とを対向配置した製氷機構であってもよい。
2.実施例では、製氷終了時検出温度と給水時検出温度との差が閾値以上の場合に、更に製氷終了時検出温度と設定温度との差が判定値以下か否かを判定して、外部環境を原因とする不具合での不必要なエラー報知を回避するようにしたが、製氷終了時検出温度と設定温度との差が判定値以下か否かの判定を省略し、製氷終了時検出温度と給水時検出温度との差が閾値以上の場合に、エラー報知処理を実行しないように構成してもよい。
3.実施例では、報知手段として2種類の報知手段を設けたが、報知手段は1種類であってもよい。また、除氷水の温度が設定温度に至らない原因が、各種部品の故障等の不具合であると場合や外部環境を原因とする場合、および除氷水の温度が、除氷能力を低下させる場合や下限温度を下回る場合の、各場合毎にエラー報知する報知手段の種類を異ならせたり、あるいは1つの報知手段での報知態様を異ならせる構成を採用することができる。
4.実施例では、除氷水タンク内に配設した除氷水温度センサで、給水時検出温度を検出するようにしたが、給水時検出温度は、給水管に配設した温度検出手段で検出する構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0033】
12 製氷板,34 除氷水タンク,44 温度調節手段,52 制御手段
TH1 除氷水温度センサ(温度検出手段),T1 設定温度,T2 給水時検出温度
T3 製氷終了時検出温度,T4 下限温度,X 閾値
図1
図2
図3
図4