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特開2023-128792渋滞情報提供装置、渋滞情報提供方法、および渋滞情報提供プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128792
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】渋滞情報提供装置、渋滞情報提供方法、および渋滞情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20230907BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G08G1/01 D
G08G1/09 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033393
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋上 智彦
(72)【発明者】
【氏名】萩原 祥行
(72)【発明者】
【氏名】杉井 祐太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敦
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 駿介
(72)【発明者】
【氏名】玉川 大
(72)【発明者】
【氏名】玉田 和也
(72)【発明者】
【氏名】向井 梨紗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大地
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC12
5H181CC14
5H181DD01
5H181DD04
5H181EE03
(57)【要約】
【課題】車両のドライバに対して、車両が渋滞の末尾に到達する到達地点に応じた案内を行う。
【解決手段】車両が走行する道路上で発生している渋滞の末尾位置と、その末尾位置の取得時刻とを対応付けた渋滞情報が入力部に入力される。算出部が渋滞情報を基に、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。生成部が入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置と、算出部が算出した延伸速度とを用いて、この末尾位置よりも上流側に位置する案内地点における案内情報を生成する。生成部が生成した案内情報を出力する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する道路上で発生している渋滞の末尾位置と、その末尾位置の取得時刻とを対応付けた渋滞情報が入力される入力部と、
前記渋滞情報を基に、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する算出部と、
入力された前記渋滞情報が示す渋滞の末尾位置と、前記算出部が算出した延伸速度とを用いて、この末尾位置よりも上流側に位置する案内地点における案内情報を生成する生成部と、
前記生成部が生成した前記案内情報を出力する出力部と、を備えた渋滞情報提供装置。
【請求項2】
前記案内地点を走行している車両の速度を取得する走行速度取得部を備え、
前記生成部は、前記走行速度取得部が取得した前記案内地点を走行している車両の速度をも用いて、当該案内地点における案内情報を生成する、請求項1に記載の渋滞情報提供装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記案内地点を走行している車両が、渋滞に到達する到達地点を推定し、推定した到達地点に応じた前記案内情報を生成する、請求項1、または2に記載の渋滞情報提供装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記案内地点を走行している車両が、渋滞に到達するまでの到達時間を推定し、推定した到達時間に応じた案内情報を生成する、請求項1~3のいずれかに記載の渋滞情報提供装置。
【請求項5】
前記生成部は、車両のドライバに対して、前記案内情報を提示する案内板が設置されている地点別に、その地点の前記案内板で提示する前記案内情報を生成する、請求項1~4のいずれかに記載の渋滞情報提供装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記案内情報として、前記案内地点を走行している車両のドライバに対する案内メッセージを生成する、請求項1~5のいずれかに記載の渋滞情報提供装置。
【請求項7】
入力部に入力された、車両が走行する道路上で発生している渋滞の末尾位置と、その末尾位置の取得時刻とを対応付けた渋滞情報を基に、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する算出ステップと、
前記入力部に入力された前記渋滞情報が示す渋滞の末尾位置と、前記算出ステップで算出した延伸速度とを用いて、この末尾位置よりも上流側に位置する案内地点における案内情報を生成する生成ステップと、
前記生成ステップで生成した前記案内情報を出力する出力ステップと、をコンピュータが実行する渋滞情報提供方法。
【請求項8】
入力部に入力された、車両が走行する道路上で発生している渋滞の末尾位置と、その末尾位置の取得時刻とを対応付けた渋滞情報を基に、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する算出ステップと、
前記入力部に入力された前記渋滞情報が示す渋滞の末尾位置と、前記算出ステップで算出した延伸速度とを用いて、この末尾位置よりも上流側に位置する案内地点における案内情報を生成する生成ステップと、
前記生成ステップで生成した前記案内情報を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させる渋滞情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が走行する道路において発生した渋滞にかかる案内情報を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が走行する道路において発生した渋滞の末尾位置を検出する装置があった(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された装置は、対象車両が渋滞している車両(渋滞車両)であるかどうかを判定する。特許文献1に記載された装置は、対象車両が渋滞車両であると判定すると、後続車両を対象車両に設定し、渋滞車両であるかどうかの判定を繰り返す。後続車両とは、対象車両に連続する車両であって、対象車両の上流側に位置にする車両である。特許文献1に記載された装置は、対象車両が渋滞車両でないと判定すると、最後に渋滞車両であると判定した対象車両の位置を、渋滞の末尾位置であると推定する。
【0004】
また、特許文献2には、道路上の複数の地点で車両の速度を検出し、検出した速度が閾値よりも低下している地点に基づき、渋滞の発生を検出する構成の装置が記載されている。さらに、特許文献2には、渋滞の発生を検出すると、検出した渋滞の発生地点よりも上流側の地点に設置されている案内板において、渋滞の発生を案内する標示を行う構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5262907号公報
【特許文献2】特開2016-181309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、道路上で渋滞が発生すると、発生した渋滞の末尾位置は上流側に延伸する。したがって、発生した渋滞の上流側において、検出した渋滞の末尾位置に応じた案内を行っても、上流側で渋滞の案内を確認したドライバが運転する車両が渋滞に到達する到達地点は、案内された渋滞末尾位置よりも上流側であった。すなわち、ドライバに対して、運転している車両が渋滞に到達する到達地点に応じた案内が行われていなかった。
【0007】
また、車両が案内された渋滞の末尾位置よりも上流側で、この渋滞に到達することから、ドライバによる車両の減速が遅れ、渋滞の末尾に位置する先行車両に追突する追突事故が発生する可能性を抑制できていなかった。
【0008】
この発明の目的は、車両のドライバに対して、車両が渋滞の末尾に到達する到達地点に応じた案内が行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の渋滞情報提供装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0010】
入力部には、車両が走行する道路上で発生している渋滞の末尾位置と、その末尾位置の取得時刻とを対応付けた渋滞情報が入力される。算出部は、渋滞情報を基に、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。
【0011】
例えば、算出部は、入力部に入力された前回の渋滞情報と、今回の渋滞情報とを用いて、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。具体的には、算出部は、前回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置から、今回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置までの距離を、前回入力された渋滞情報が示す渋滞末尾位置の取得時間と、今回入力された渋滞情報が示す渋滞末尾位置の取得時間との時間差で除することで、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。この延伸速度の算出に用いる渋滞情報の組み合わせは、上記した前回入力された渋滞情報と今回入力された渋滞情報の組み合わせに限らず、前々回入力された渋滞情報と、今回入力された渋滞情報としてもよいし、その他の2つの渋滞状態を用いてもよい。
【0012】
生成部は、入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置と、算出部が算出した延伸速度とを用いて、この末尾位置よりも上流側に位置する案内地点における案内情報を生成する。例えば、生成部は、案内地点を走行している車両が、渋滞の末尾に到達する到達地点を推定し、推定した到達地点に応じた前記案内情報を生成してもよいし、案内地点を走行している車両が、渋滞の末尾に到達するまでの到達時間を推定し、推定した到達時間に応じた案内情報を生成してもよい。
【0013】
また、生成部は、到達地点、または到達時刻の推定において、渋滞の延伸速度の加速度を考慮してもよい。渋滞の延伸速度の加速度は、例えば、算出部が、前回算出した渋滞の延伸速度と、今回算出した渋滞の延伸速度との差分を用いることで算出できる。
【0014】
なお、渋滞の延伸速度の加速度は、上記した例に限らず、他の方法でも算出してもよい。
【0015】
出力部が、生成部が生成した案内情報を出力する。案内情報は、例えば、案内地点に設置されている案内板に表示させる案内メッセージ(渋滞の通知メッセージ)である。
【0016】
この構成によれば、案内地点を走行している車両のドライバに対して、車両が渋滞の末尾に到達する到達地点に応じた案内が行える。これにより、ドライバによる車両の減速が遅れ、渋滞の末尾に位置する先行車両に追突する追突事故が発生するのを抑制できる。
【0017】
また、例えば、生成部は、走行速度取得部が取得した案内地点を走行している車両の速度も用いて、当該案内地点における案内情報を生成する構成にしてもよい。
【0018】
このように構成すれば、案内地点を走行している車両の速度も考慮して、車両が渋滞の末尾に到達する到達地点に応じた案内が行える。したがって、案内地点を走行している車両のドライバに対して、渋滞にかかる案内を一層適正に行える。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、渋滞が発生した場合、車両のドライバに対して、車両が渋滞の末尾に到達する到達地点に応じた案内が行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この例の案内システムの構成を示すブロック図である。
図2】この例の案内システムにおける電波レーダの観測対象エリアを説明する図である。
図3】この例の交通状況推定装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図4】追跡データを示す図である。
図5】状態情報を説明する図である。
図6】この例の渋滞情報提供装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図7】交通状況推定装置の追跡処理を示すフローチャートである。
図8】交通状況推定装置の確定処理を示すフローチャートである。
図9】交通状況推定装置の推定処理を示すフローチャートである。
図10】この例の渋滞情報提供装置の動作を示すフローチャートである。
図11】変形例1の渋滞情報提供装置の動作を示すフローチャートである。
図12】変形例2の渋滞情報提供装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0022】
<1.適用例>
図1は、この例の案内システムの構成を示すブロック図である。図2は、この例の案内システムにおける電波レーダの観測対象エリアを説明する図である。この例の案内システムは、渋滞情報提供装置1と、案内板2と、交通状況推定装置3と、電波レーダ4とを備えている。
【0023】
この例の案内システムでは、交通状況推定装置3が、車両が走行する道路(例えば、高速道路)において渋滞が発生しているかどうかを検知するとともに、渋滞が発生していることが検知した場合、その渋滞の末尾位置を推定する。渋滞情報提供装置1は、交通状況推定装置3によって推定された渋滞の末尾位置を用いて、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。渋滞情報提供装置1は、渋滞の末尾位置の延伸速度を用いて、案内板2(2a~2c)の設置位置(案内地点)を走行している車両110が、渋滞の末尾に到達する到達地点を推定する。渋滞情報提供装置1は、案内板2毎に、その案内板2に表示させる渋滞情報(案内情報)を生成し、出力する。この渋滞情報は、案内板2の設置位置を走行している車両110について推定した、渋滞の末尾に到達する到達地点に応じた案内情報である。
【0024】
なお、渋滞の末尾位置、到達地点、案内板2の設置位置、電波レーダ4の設置位置は、道路に定められた基準地点からの距離で示される。したがって、渋滞の末尾位置、到達地点、案内板2の設置位置、電波レーダ4の設置位置の相対的な位置関係は、基準地点によって関連付けられる。
【0025】
交通状況推定装置3には、複数の電波レーダ4(4-1~4-n)が接続されている。電波レーダ4は、交通状況推定装置3に有線、または無線で接続される。電波レーダ4は、割り当てられている観測対象エリアSAをミリ波(探査波)で走査し、その反射波を受信することにより、走行している車両110の位置、および走行速度(以下、単に速度と言う。)を検知する。電波レーダ4は、観測対象エリアSAの走査を予め定められた周期(例えば、100msec)で繰り返す。電波レーダ4は、周知のように、探査波を照射した照射方向、探査波の照射から反射波を受信するまでの時間(飛行時間)を用いて走行している車両110(探査波を反射した車両110)の位置を算出する。また、電波レーダ4は、照射した探査波の周波数と、受信した反射波の周波数とを用いて、走行している車両110(探査波を反射した車両110)の速度を算出する。
【0026】
なお、この例の案内システムが備える電波レーダ4は、1つであってもよい。
【0027】
電波レーダ4は、設置位置を基準にし、この設置位置から車両110の走行方向にXm(例えば、20m)離れた地点から、Ym(例えば、150m)離れた地点までの区間が観測対象エリアSAになるように設置されている。また、電波レーダ4は、図1に示す道路の3車線が観測対象エリアSA内に収まるように、探査波を道路の幅方向に走査する範囲を定めている。
【0028】
なお、図1図2では、電波レーダ4は、下流側に向かって探査波を照射する設置例を図示しているが、上流側に向かって探査波を照射するように設置されていてもよい(図1図2に示す走行方向が逆方向であってもよい。)。
【0029】
図1に示すように、この例の案内システムは、複数の電波レーダ4(4-1~4-n)を車両110の走行方向に並べて設置している。したがって、複数の電波レーダ4の観測対象エリアSAは、車両110の走行方向に並んでいる。隣接する2つの電波レーダ4の観測対象エリアSAは、その一部において重なっていてもよいし、接していてもよいし、離れていてもよい。但し、隣接する2つの電波レーダ4の観測対象エリアSAが離れている場合、隣接する2つの観測対象エリアSAの間については、車両110を検知できない区間になる。
【0030】
なお、図1図2では、図示した一部の車両110に符号を付していない。図1図2では、符号を付しているかどうかによって、車両110を区別しているわけではなく、図示をわかりやすくするために省略している。
【0031】
電波レーダ4は、観測対象エリアSAを探査波で走査する毎に、今回の走査で検知した車両110毎に、その車両110の検知データを交通状況推定装置3に出力する。車両110の検知データは、車両110の位置、および速度を示すデータである。
【0032】
この例の交通状況推定装置3は、電波レーダ4から車両110の検知データが入力されると、その電波レーダ4の観測対象エリアSAを車両110の走行方向に区分した複数の区間毎に、その区間における車両110の速度を取得する。図2では、観測対象エリアSAを、車両110の走行方向にm個の区間(第1区間~第m区間)に分割した例を示している。車両110の走行方向における区間の長さは、例えば、5m~20mである。交通状況推定装置3は、区間毎に、その区間において検知された車両110の平均速度を、その区間における車両110の速度として取得してもよいし、その区間において検知された車両110の最低速度を、その区間における車両110の速度として取得してもよいし、他の手法で各区間における車両110の速度を取得してもよい。
【0033】
この例の交通状況推定装置3は、電波レーダ4毎に、その電波レーダ4の観測対象エリアSAを分割した区間毎に、その区間が車両110の渋滞区間であるか、非渋滞区間であるかを確定する。交通状況推定装置3は、確定した状態が渋滞である区間と非渋滞である区間とが連続し、且つ上流側の区間が非渋滞である場合(言い換えれば、下流側の区間が渋滞である場合)、下流側の区間を渋滞の末尾であると推定する。また、交通状況推定装置3は、確定された状態が渋滞である区間と非渋滞である区間とが連続し、且つ上流側の区間が渋滞である場合(言い換えれば、下流側の区間が非渋滞である場合)、上流側の区間を渋滞の先頭であると推定する。
【0034】
この例の交通状況推定装置3は、例えば予め定められた周期で、渋滞の末尾を推定する。交通状況推定装置3は、推定した渋滞の末尾の区間に基づく渋滞末尾位置と、推定時刻(この発明で言う、取得時刻に相当する。)とを対応づけた渋滞情報を渋滞情報提供装置1に出力する。渋滞末尾位置は、推定した渋滞の末尾の区間の上流側の端部の位置にしてもよいし、推定した渋滞の末尾の区間の上流側の端部と下流側の端部との中間の位置にしてもよい。
【0035】
渋滞情報提供装置1は、交通状況推定装置3から入力された渋滞情報を基に、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。例えば、前回入力された渋滞情報と、今回入力された渋滞情報とを用いて、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。具体的には、渋滞情報提供装置1は、前回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置から、今回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置までの距離を、前回入力された渋滞情報が示す渋滞末尾位置の取得時間と、今回入力された渋滞情報が示す渋滞末尾位置の取得時間との時間差で除することで、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。この延伸速度の算出に用いる渋滞情報の組み合わせは、上記した前回入力された渋滞情報と今回入力された渋滞情報の組み合わせに限らず、前々回入力された渋滞情報と、今回入力された渋滞情報としてもよいし、その他の2つの渋滞状態を用いてもよい。
【0036】
渋滞情報提供装置1には、複数の案内板2が設置されている。図1では、3つの案内板2a~2cを例示している(渋滞情報提供装置1に接続されている案内板2が3つであるという意味ではない。)。
【0037】
この例では、案内板2a~2cの設置位置は、車両110の走行方向において、異なる位置である。すなわち、案内板2a~2cは、交通状況推定装置3がある時点で推定した渋滞末尾位置までの距離が異なる位置に設置されている。案内板2a~2cは、設置位置の少し上流側を走行している車両110のドライバに対して、発生している渋滞にかかる案内情報を表示する。
【0038】
渋滞情報提供装置1は、案内板2毎に、その案内板2において表示する渋滞にかかる情報を生成する。この例では、「〇〇km先で、渋滞の末尾に到達します。注意して走行してください。」という案内メッセージを発生している渋滞にかかる情報として生成する。この案内メッセージにおける「〇〇km」は、案内板2の設置位置、車両110の速度、入力された最新の渋滞情報が示す渋滞の末尾位置、および算出した渋滞の末尾位置の延伸速度を用いて算出した値である。
【0039】
具体的には、案内板2の設置位置から、入力された最新の渋滞情報が示す渋滞の末尾位置までの距離をLkmとする。また、案内板2の設置位置付近における車両110の走行速度をV1km/h、渋滞の末尾位置の延伸速度をV2km/hとする。この場合、渋滞情報提供装置1は、「L×(1-V2/(V1+V2))km」を、案内情報の「〇〇km」として算出する。
【0040】
なお、V1は、道路における車両110の走行方向(上流側から下流側に向かう方向)が正の値であり、V2は、道路における車両110の走行方向の逆方向(下流側から上流側に向かう方向)が正の値である。また、Lは、案内板2の設置位置が、渋滞の末尾位置よりも上流側である場合、正の値である。
【0041】
上記の説明から明らかなように、渋滞情報提供装置1は、渋滞の延伸速度を考慮し、車両110が渋滞の末尾に到達するまでの距離(案内板2の設置位置から、渋滞の末尾に到達する到達地点までの距離)を推定し、推定した距離に応じた渋滞案内を案内板2で行う。すなわち、車両110のドライバに対して、車両110が渋滞の末尾に到達する到達地点に応じた案内が行える。
【0042】
<2.構成例>
図3は、この例の交通状況推定装置の主要部の構成を示すブロック図である。交通状況推定装置3は、制御ユニット31と、検知データ入力部32と、追跡DB33と、入出力部34と、を備えている。
【0043】
制御ユニット31は、交通状況推定装置3本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット31は、検知データ取得部31a、走行速度取得部31b、仮判定部31c、確定部31d、および推定部31eを有している。制御ユニット31が有する、検知データ取得部31a、走行速度取得部31b、仮判定部31c、確定部31d、および推定部31eについては後述する。
【0044】
検知データ入力部32には、電波レーダ4(4-1~4-n)が接続される。電波レーダ4は、有線、または無線で交通状況推定装置3と接続される。各電波レーダ4は、割り当てられている観測対象エリアSAを探査波で走査する毎に、今回の走査で検知した車両110毎に、その車両110の位置、および速度を対応付けた検知データを出力する。検知データ入力部32には、接続されている電波レーダ4毎に、その電波レーダ4が出力した検知データが入力される。
【0045】
追跡DB33は、電波レーダ4によって検知された車両110の追跡データを記憶する。追跡データは、電波レーダ4毎に、その電波レーダ4によって検知された車両110別に記憶される。図4は、追跡データを示す図である。図4は、電波レーダ4-nによって検知されたIDが「123456789」である車両110の追跡データを例示したものである。追跡データは、車両110を識別するIDに、各検知時刻の検知データを対応づけたデータである。検知時刻は、例えば、電波レーダ4が探査波による観測対象エリアSAの走査を開始した時刻であってもよいし、終了した時刻であってもよいし、開始時刻と終了時刻との中間の時刻であってもよいし、電波レーダ4から検知データが入力された時刻であってもよい。
【0046】
検知データは、検知した車両110の速度と位置とを含んでいる。位置は、観測対象エリアSAにおける車両110の走行方向の位置と、車両110の車幅(全幅)方向の位置である。車両110の走行方向の位置は、電波レーダ4の設置位置から車両110までの距離に対応する。また、車両110の車幅方向の位置は、車両110が走行している車線に対応する。
【0047】
なお、交通状況推定装置3は、電波レーダ4間で、検知された車両110を同定する処理を行う構成であってもよいし、電波レーダ4間で、検知された車両110を同定する処理を行わない構成であってもよい。
【0048】
入出力部34は、渋滞情報提供装置1との間でデータの入出力を行う。
【0049】
次に、制御ユニット31が有する、検知データ取得部31a、走行速度取得部31b、仮判定部31c、確定部31d、および推定部31eについて説明する。
【0050】
検知データ取得部31aは、電波レーダ4から入力された車両110の検知データを処理し、追跡DB33に記憶させる。検知データ取得部31aは、電波レーダ4が今回の探査波による観測対象エリアSAの走査で検知した車両110を、前回の探査波による観測対象エリアSAの走査で検知した車両110に対応づける同定処理を行う。
【0051】
なお、ここで言う同定処理は、同じ電波レーダ4によって検知された車両110を同定する処理であって、隣接して設置された2つの電波レーダ4間で検知された車両110を同定する処理ではない。
【0052】
検知データ取得部31aは、電波レーダ4が今回の探査波による観測対象エリアSAの走査で検知した車両110のIDを、対応付けた前回の探査波による観測対象エリアSAの走査で検知した車両110のIDにする。また、検知データ取得部31aは、電波レーダ4が今回の探査波による観測対象エリアSAの走査で検知した車両110を、前回の探査波による観測対象エリアSAの走査で検知した車両110に対応づけられなかった場合、今回検知された車両110に新たなIDを付与する。
【0053】
走行速度取得部31bは、検知データが入力された電波レーダ4について、その電波レーダ4の観測対象エリアSAの区分された区間毎に、車両110の速度を取得する。走行速度取得部31bは、各区間の車両110の走行速度として、例えば当該区間を走行していた車両110の速度の平均値を取得してもよいし、当該区間を走行していた車両110の最低速度を取得してもよい。
【0054】
以下の説明では、電波レーダ4-Nの観測対象エリアSAを分割した区間Mを、便宜的に区間N-Mと記載する場合もある。Nは、電波レーダ4を特定する符号であり、この例では1~nである。Mは、観測対象エリアSAを車両110の走行方向に区分した区間を特定する符号であり、この例では1~mである。
【0055】
交通状況推定装置3は、電波レーダ4-Nから車両110の検知データが入力されると、走行速度取得部31bは電波レーダ4-Nの観測対象エリアSAに属する区間N-M毎に、その区間N-Mにおける車両110の走行速度を取得する。
【0056】
仮判定部31cは、走行速度取得部31bが車両110の走行速度を取得した区間N-M毎に、その区間N-Mの状態が、渋滞であるか、非渋滞であるかを仮判定する。この例では、仮判定部31cは、走行速度取得部31bが取得した車両110の走行速度が予め定めた渋滞閾値速度を超えている区間N-Mの状態を非渋滞と仮判定し、走行速度取得部31bが取得した車両110の走行速度が渋滞閾値速度を超えていない区間N-Mの状態を渋滞と仮判定する。渋滞閾値速度は、例えば5~10km/hである。
【0057】
確定部31dは、観測対象エリアSAの車両110の走行方向における、仮判定された状態の並びを基に、各区間N-Mの状態の仮判定結果を訂正し、各区間N-Mの状態を確定する。例えば、確定部31dは、渋滞であると仮判定された区間N-Mであって、観測対象エリアSAの車両110の走行方向に連続している区間N-Mをグループ化し、そのグループに属する区間N-Mの個数が予め定めた第1設定個数を超えていない場合、当該グループに属する区間N-Mの状態を非渋滞に訂正する。また、確定部31dは、渋滞であると仮判定された区間N-Mであって、観測対象エリアSAの車両110の走行方向に連続している区間N-Mをグループ化し、そのグループに属する区間N-Mの個数が予め定めた第1設定個数を超えている場合、当該グループに属する区間N-Mの状態を渋滞のままとする。
【0058】
また、確定部31dは、非渋滞であると仮判定された区間N-Mであって、観測対象エリアSAの車両110の走行方向に連続している区間N-Mをグループ化し、そのグループに属する区間N-Mの個数が予め定めた第2設定個数を超えていない場合、当該グループに属する区間N-Mの状態を渋滞に訂正する。また、確定部31dは、非渋滞であると仮判定された区間N-Mであって、観測対象エリアSAの車両110の走行方向に連続している区間N-Mをグループ化し、そのグループに属する区間N-Mの個数が予め定めた第2設定個数を超えている場合、当該グループに属する区間N-Mの状態を非渋滞のままとする。
【0059】
第1設定個数と、第2設定個数とは、同じ値(個数)であってもよいし、異なる値であってもよい。また、第1設定個数、および第2設定個数は、車両の走行方向における区間の長さに応じて設定するのがよい。例えば、この例では、数十m(20m~80m)にわたって、仮判定された状態が同じでなければ、確定部31dが、なんらかの交通事情によって仮判定の結果が誤っていると判断し、訂正する。例えば車両110の走行方向における区間N-Mの長さが5mであり、仮判定された区間N-Mの状態が50mにわたって連続していなければ、仮判定の結果が誤っていると判断する場合、第1設定個数、および第2設定個数は10個に設定される。
【0060】
確定部31dは、今回状態を確定した区間の状態を更新する。例えば、交通状況推定装置3は、各区間の状態を登録した状態情報をメモリに記憶している。図5は、この状態情報を説明する図である。状態情報は、区間(区間1-1~区間n-m)毎に、確定部31dによって確定された状態を示すデータである。図5では、確定部31dによって確定された状態が渋滞である区間をハッチングで示している。言い換えれば、図5では、確定部31dによって確定された状態が非渋滞である区間をハッチングで示していない。
【0061】
図5において、状態が渋滞である区間と、非渋滞である区間とが車両110の走行方向に連続している箇所が、渋滞の先頭、または渋滞の末尾である。具体的には、下流側の区間の状態が非渋滞であり、上流側の区間の状態が渋滞である場合、この上流側の区間が渋滞の先頭である。また、下流側の区間の状態が渋滞であり、上流側の区間の状態が非渋滞である場合、この下流側の区間が渋滞の末尾である。
【0062】
推定部31eは、予め定められた推定周期(例えば、30秒~5分)で、図5に示した状態情報を参照して渋滞の末尾の位置を推定する。推定部31eは、推定した渋滞の末尾の位置と、推定時刻とを対応づけた渋滞情報を渋滞情報提供装置1に出力する。
【0063】
なお、推定部31eは、いずれかの電波レーダ4から車両110の検知データが入力され、仮判定部31cがその電波レーダ4の観測対象エリアSAの各区間の状態について、渋滞、または非渋滞を仮判定し、確定部31dが図5に示した状態情報を更新すると、渋滞の末尾位置を推定する構成であってもよい。
【0064】
また、推定部31eは、前回渋滞の末尾位置であると推定した区間が観測対象エリアSA内に属する電波レーダ4、およびこの電波レーダ4よりも上流側に位置する電波レーダ4から車両110の検知データが入力され、仮判定部31cがその電波レーダ4の観測対象エリアSAの各区間の状態について、渋滞、または非渋滞を仮判定し、確定部31dが図5に示した状態情報を更新すると、渋滞の末尾位置を推定してもよい。
【0065】
なお、この例の交通状況推定装置3は、渋滞の先頭である区間を推定してもよいし、推定しなくてもよい。交通状況推定装置3は、渋滞の先頭である区間を推定することによって、時間経過にともなう渋滞長(渋滞の先頭から末尾までの長さ)の変化を取得できる。
【0066】
交通状況推定装置3の制御ユニット31は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、交通状況推定プログラムを実行したときに、検知データ取得部31a、走行速度取得部31b、仮判定部31c、確定部31d、および推定部31eとして動作する。また、メモリは、この交通状況推定プログラムを展開する領域や、この交通状況推定プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット31は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。
【0067】
図6は、この例の渋滞情報提供装置の主要部の構成を示すブロック図である。この例の渋滞情報提供装置1は、制御ユニット11と、入力部12と、渋滞情報記憶部13と、出力部14とを備えている。
【0068】
制御ユニット11は、渋滞情報提供装置1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット11は、速度取得部11a、算出部11b、および生成部11cを有している。制御ユニット11が有する速度取得部11a、算出部11b、および生成部11cについては後述する。
【0069】
入力部12は、交通状況推定装置3と有線、または無線で接続されている。入力部12には、交通状況推定装置3が上記した推定周期で渋滞の末尾位置を推定する毎に出力した渋滞情報が入力される。渋滞情報は、推定した渋滞の末尾位置と、その末尾位置の取得時刻(推定時刻)とを対応付けた情報である。
【0070】
なお、渋滞情報には、渋滞の先頭位置が追加的に含まれていてもよい。
【0071】
渋滞情報記憶部13は、交通状況推定装置3から入力された渋滞情報を記憶する。
【0072】
出力部14には、各地点に設置された案内板2が優先、または無線で接続されている。出力部14は、接続されている案内板2毎に、その案内板2に対して生成した案内メッセージ(案内情報)を出力する。
【0073】
次に、制御ユニット11が有する速度取得部11a、算出部11b、および生成部11cについて説明する。
【0074】
速度取得部11aは、案内板2毎に、その案内板2の設置位置周辺における車両110の速度を取得する。速度取得部11aは、案内板2の設置位置周辺が非渋滞状態である場合、この設置位置周辺の制限速度を車両110の速度として取得してもよい。また、速度取得部11aは、交通状況推定装置3を介して、電波レーダ4によって検出された案内板2の設置位置周辺を走行している車両110の速度を、この設置位置周辺における車両110の速度として取得してもよい。
【0075】
算出部11bは、案内板2毎に、その案内板2の設置位置周辺を走行している車両110が、渋滞の末尾に到達する到達地点を推定する。例えば、案内板2の設置位置から、入力された最新の渋滞情報が示す渋滞の末尾位置までの距離をLkmとする。また、案内板2の設置位置付近における車両110の走行速度をV1km/h、渋滞の末尾位置の延伸速度をV2km/hとする。この場合、算出部11bは、車両110が、渋滞の末尾に到達する到達地点を、案内板2の設置位置から、L×(1-V2/(V1+V2))km下流側の地点であると算出する。
【0076】
なお、V1は、道路における車両110の走行方向(上流側から下流側に向かう方向)が正の値であり、V2は、道路における車両110の走行方向の逆方向(下流側から上流側に向かう方向)が正の値である。また、Lは、案内板2の設置位置が、渋滞の末尾位置よりも上流側である場合、正の値である。
【0077】
このように算出部11bは、渋滞の延伸速度V2を考慮し、車両110が渋滞の末尾に到達するまでの走行距離を算出(推定)する。
【0078】
生成部11cは、案内板2毎に、その案内板2に対して算出部11bが推定した渋滞の末尾に到達するまでの走行距離に応じた案内メッセージを生成する。例えば、生成部11cは、「〇〇km先で、渋滞の末尾に到達します。注意して走行してください。」等の案内メッセージを生成する。
【0079】
また、渋滞情報に渋滞の先頭位置が含まれている場合、生成部11cは、
「〇〇km先で、渋滞の末尾に到達します。注意して走行してください。この渋滞はXXkmです。」等の案内メッセージを生成してもよい。
【0080】
出力部14が、案内板2毎に、その案内板2に対して、生成部11cが生成した案内メッセージを送信する。
【0081】
各案内板2は、渋滞情報提供装置1において生成された案内メッセージを表示する。
【0082】
渋滞情報提供装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる渋滞情報提供プログラムを実行したときに、速度取得部11a、算出部11b、および生成部11cとして動作する。また、メモリは、この渋滞情報提供プログラムを展開する領域や、この渋滞情報提供プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット31は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる渋滞情報提供方法を実行するコンピュータである。
【0083】
<3.動作例>
図7は、この例の交通状況推定装置の追跡処理を示すフローチャートである。追跡処理は、いずれかの電波レーダ4から入力された車両110の検知データを処理し、図4に示した追跡データを生成し追跡DB33に記憶させる処理である。
【0084】
交通状況推定装置3は、いずれかの電波レーダ4が出力した検知データが検知データ入力部32に入力されるのを待つ(s1)。この例では、電波レーダ4は、割り当てられた観測対象エリアSAを探査波で走査し、今回の走査で検知した車両110毎に、その車両110の位置、および速度を対応付けた検知データを出力する。また、電波レーダ4は、100msec周期で観測対象エリアSAを探査波で走査する。したがって、この例では、交通状況推定装置3には、電波レーダ4毎に、その電波レーダ4から100msec周期で、検知データが検知データ入力部32に入力される。
【0085】
検知データ取得部31aは、今回検知された車両110であって、以下に示すs3~s7にかかる処理を行っていない車両110(未処理の車両110)の中から、対象車両を選択する(s2)。検知データ取得部31aは、s2で選択した対象車両が前回も検知されていた車両110であるかどうかを判定する(s3)。s3では、対象車両の位置、および速度を用いて、対応する車両110が前回検知されていたかどうかを判定する。
【0086】
検知データ取得部31aは、対象車両が前回も検知されていた車両110であれば、この対象車両のIDを、前回付与したIDに合わせ(s4)、追跡DB33に記憶している、該当するIDの車両110の追跡データに今回の対象車両の検知データを追加する(s5)。
【0087】
検知データ取得部31aは、対象車両が前回検知されていなかった車両110であれば、この対象車両に対してIDを発行して付与する(s6)。検知データ取得部31aは、今回発行したIDを付与した対象車両の追跡データを追跡DB33に登録する(s7)。s6で、他の車両110と区別できるIDを発行する。s7で登録する追跡データに含まれる検知データは、今回の検知データのみである。
【0088】
検知データ取得部31aは、s5、またはs7にかかる処理を行うと、電波レーダ4によって今回検知された車両110であって、s3~s7にかかる処理を行っていない未処理の車両110の有無を判定する(s8)。検知データ取得部31aは、未処理の車両110があればs2に戻る。また、検知データ取得部31aは、未処理の車両110が無ければs1に戻る。
【0089】
この例の交通状況推定装置3は、この追跡処理を実行することにより、電波レーダ4毎に、その電波レーダ4に割り当てられている観測対象エリアSA内において検知された車両110の走行軌跡を示す追跡データを取得する。
【0090】
なお、上記の説明から明らかなように、追跡DB33に登録されている各車両110の追跡データは、各電波レーダ4から入力された車両110の検知データに基づいて更新される。
【0091】
図8は、この例の交通状況推定装置の確定処理を示すフローチャートである。この例の交通状況推定装置3は、図7に示した追跡処理によって追跡データが更新されるのを待つ(s11)。交通状況推定装置3は、追跡データが更新されると、走行速度取得部31bが今回追跡データが更新された観測対象エリアSAに属する区間毎に、その区間における車両110の速度を取得する(s12)。走行速度取得部31bは、s12にかかる処理を、例えば、追跡DB33に記憶されている追跡データを参照することにより行う。
【0092】
仮判定部31cが、今回追跡データが更新された観測対象エリアSAの区間毎に、状態(渋滞、または非渋滞)を仮判定する(s13)。仮判定部31cは、走行速度取得部31bが取得した車両110の走行速度が予め定めた渋滞閾値速度を超えている区間については非渋滞区間であると仮判定し、走行速度取得部31bが取得した車両110の走行速度が渋滞閾値速度を超えていない区間については渋滞区間であると仮判定する。
【0093】
確定部31dは、観測対象エリアSAの車両110の走行方向における、仮判定された状態の並びを基に、各区間の状態の仮判定結果を訂正し、各区間の状態を確定する(s14)。この例では、確定部31dは、渋滞であると仮判定された区間であって、観測対象エリアSAの車両110の走行方向に連続している区間をグループ化し、そのグループに属する区間の個数が予め定めた第1設定個数を超えていない場合、当該グループに属する区間の状態を非渋滞に訂正する。また、確定部31dは、渋滞であると仮判定された区間であって、観測対象エリアSAの車両110の走行方向に連続している区間をグループ化し、そのグループに属する区間の個数が予め定めた第1設定個数を超えている場合、当該グループに属する区間の状態を渋滞のままとする。
【0094】
また、確定部31dは、非渋滞であると仮判定された区間であって、観測対象エリアSAの車両110の走行方向に連続している区間をグループ化し、そのグループに属する区間の個数が予め定めた第2設定個数を超えていない場合、当該グループに属する区間の状態を渋滞に訂正する。また、確定部31dは、非渋滞であると仮判定された区間であって、観測対象エリアSAの車両110の走行方向に連続している区間をグループ化し、そのグループに属する区間の個数が予め定めた第2設定個数を超えている場合、当該グループに属する区間の状態を非渋滞のままとする。
【0095】
確定部31dは、メモリに記憶している状態情報を更新し(s15)、s11に戻る。
【0096】
このように、この例の交通状況推定装置3は、この確定処理を行うことによって、ほぼリアルタイムに、各区間の状態を更新できる。
【0097】
図9は、この例の交通状況推定装置の推定処理を示すフローチャートである。推定部31eは、推定タイミングになるのを待つ(s21)。推定部31eは、推定タイミングになると、メモリに記憶している状態情報を参照し、渋滞区間と非渋滞区間とが連族している箇所を抽出する(s22)。推定部31eは、s22で抽出した箇所で、下流側の区間の状態が非渋滞であり、上流側の区間の状態が渋滞であれば、上流側の区間を渋滞の先頭であると推定する(s23)。また、推定部31eは、s22で抽出した箇所で、下流側の区間の状態が渋滞であり、上流側の区間の状態が非渋滞であれば、下流側の区間を渋滞の末尾であると推定する(s24)。
【0098】
交通状況推定装置3は、推定部31eがs23で推定した渋滞の先頭の区間の位置(渋滞の先頭位置)と、s24で推定した渋滞の末尾の区間の位置(渋滞の末尾位置)と、今回の推定時刻とを対応付けた渋滞情報を渋滞情報提供装置1に出力し(s25)、s21に戻る。
【0099】
なお、ここでは、渋滞情報には、渋滞の先頭位置が含まれているとしているが、含まれていなくてもよい。
【0100】
このように、この例の交通状況推定装置3は、推定タイミングの周期で、渋滞の先頭、および末尾の位置を推定する。すなわち、推定タイミングの周期を、短くすれば、渋滞の先頭、および末尾の位置の推定が、ほぼリアルタイムに行える。
【0101】
図10は、この例の渋滞情報提供装置の動作を示すフローチャートである。渋滞情報提供装置1は、交通状況推定装置3から渋滞情報が入力されるのを待つ(s31)。渋滞情報提供装置1は、渋滞情報が入力部12に入力されると、入力された渋滞情報を渋滞情報記憶部13に記憶する(s32)。算出部11bが、渋滞の延伸速度を算出する(s33)。
【0102】
算出部11bは、例えば、前回入力された渋滞情報と、今回入力された渋滞情報とを用いて、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。具体的には、算出部11bは、前回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置から、今回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置までの距離を、前回入力された渋滞情報が示す渋滞末尾位置の取得時間と、今回入力された渋滞情報が示す渋滞末尾位置の取得時間との時間差で除することで、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する。
【0103】
なお、この延伸速度の算出に用いる渋滞情報の組み合わせは、上記した前回入力された渋滞情報と今回入力された渋滞情報の組み合わせに限らず、前々回入力された渋滞情報と、今回入力された渋滞情報としてもよいし、その他の2つの渋滞状態を用いてもよい。
【0104】
生成部11cは、今回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置よりも上流に設置されている案内板2を抽出する(s34)。生成部11cは、s34で抽出した案内板2の中から、その案内板2に対して案内メッセージを生成していない案内板2(未処理の案内板2)を処理対象の案内板2として選択する(s35)。
【0105】
速度取得部11aが、s35で選択した処理対象の案内板2の設置位置周辺における車両110の走行速度を取得する(s36)。速度取得部11aは、s35で選択した処理対象の案内板2の設置位置周辺の制限速度を車両110の速度として取得してもよい。また、速度取得部11aは、交通状況推定装置3を介して、電波レーダ4によって検出された処理対象の案内板2の設置位置周辺を走行している車両110の速度を、この設置位置周辺の車両110の速度として取得してもよい。
【0106】
生成部11cは、s35で選択した処理対象の案内板2の設置位置周辺を走行している車両110が渋滞の末尾に到達する地点(到達地点)を推定する(s37)。生成部11cは、今回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置、s33で算出した渋滞の延伸速度、s35で選択した処理対象の案内板2の設置位置、およびs36で取得した処理対象の案内板2の設置位置周辺における車両110の走行速度を用いて、到達地点を推定する。具体的には、今回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置と、処理対象の案内板2の設置位置との距離Lkm、案内板2の設置位置周辺における車両110の走行速度V1km/h、渋滞の延伸速度V2km/hとした場合、案内板2の設置位置から、L×(1-V2/(V1+V2))km下流側の地点を到達地点と推定する。
【0107】
生成部11cは、s35で選択した処理対象の案内板2で表示させる案内メッセージを生成し(s38)、ここで生成した案内メッセージをs35で選択した処理対象の案内板2に出力する(s39)。例えば、生成部11cは、s37で推定した到達地点に基づき、
「〇〇km先で、渋滞の末尾に到達します。注意して走行してください。」等の案内メッセージを生成する。
【0108】
生成部11cは、未処理の案内板2の有無を判定し(s40)、未処理の案内板2があれば、s35に戻って上記処理を繰り返す。また、生成部11cは、未処理の案内板2が無いと判定すると、本処理を終了する。
【0109】
このように、この例の案内システムによれば、各案内板2において、その案内板2の周辺を走行している車両110のドライバに対して、渋滞の末尾に到達する到達地点に応じた渋滞の案内が行える。したがって、ドライバによる車両110の減速が遅れ、渋滞の末尾に位置する先行車両に追突する追突事故が発生するのを抑制できる。
【0110】
<4.変形例>
・変形例1
上記した例の渋滞情報提供装置1の動作を、図11に示す処理に置き換えてもよい。図11では、図10に示した処理と同じ処理については、同じステップ番号を付している。
【0111】
図11に示すように、この変形例1では、渋滞情報提供装置1は、s31で交通状況推定装置3から渋滞情報が入力されたと判定すると、入力された渋滞情報に基づいて渋滞が発生しているかどうかを判定する(s51)。s51にかかる判定は、入力された渋滞情報に渋滞の末尾位置が含まれているかどうかを確認することによって行える。
【0112】
渋滞情報提供装置1は、s51で渋滞が発生していると判定すると、上記したs32以降の処理を行う。また、渋滞情報提供装置1は、s51で渋滞が発生してないと判定すると、s31に戻る。
【0113】
この変形例では、渋滞情報提供装置1の処理負荷を抑制できる。
【0114】
・変形例2
上記した例では、渋滞情報提供装置1は、案内板2に対して、到達地点までの距離に応じた案内メッセージを生成するとしたが、案内板2の周辺を走行している車両110が渋滞の末尾に到達するまでの時間に応じた案内メッセージを生成する構成にしてもよい。
【0115】
具体的には、この変形例2の渋滞情報提供装置1は、図12に示すように、上記したs37にかかる処理に替えて、以下に示すs52にかかる処理で、案内板2の周辺を走行している車両110が渋滞の末尾に到達するまでの時間を推定する。
【0116】
生成部11cは、今回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置、s33で算出した渋滞の延伸速度、s35で選択した処理対象の案内板2の設置位置、およびs36で取得した処理対象の案内板2の設置位置周辺における車両110の走行速度を用いて、車両110が渋滞の末尾に到達する時間を推定する。具体的には、今回入力された渋滞情報が示す渋滞の末尾位置と、処理対象の案内板2の設置位置との距離Lkm、案内板2の設置位置周辺における車両110の走行速度V1km/h、渋滞の延伸速度V2km/hとした場合、現時点から「(L/(V1+V2))×60」(分)後に渋滞の末尾に到達すると推定する。
【0117】
生成部11cは、s38で、s52で推定した時間に応じた案内メッセージを生成する。例えば、「△△分後に、渋滞の末尾に到達します。注意して走行してください。」という案内メッセージを生成する。
【0118】
また、生成部11cは、設置位置周辺を走行している車両110が渋滞末尾に到達するまでの時間が所定時間(例えば、5分程度)未満であれば、s52で推定した時間に応じた案内メッセージを生成し、設置位置周辺を走行している車両110が渋滞末尾に到達するまでの時間が所定時間以上であれば、s37で推定した到達地点までの距離に応じた案内メッセージを生成する構成にしてもよい。
【0119】
・変形例3
また、渋滞情報提供装置1は、車線毎に、渋滞の延伸速度を算出する構成にしてもよい。この場合、渋滞情報提供装置1には、交通状況推定装置3から車線毎に、渋滞の末尾位置と、その末尾位置の取得時刻とが入力される。
【0120】
渋滞情報提供装置1は、車線毎の渋滞末尾に到達するまでの時間を、案内板2で表示させる案内メッセージとして生成してもよい。例えば、
「追越車線は、後3分程度で渋滞の末尾に到達します。走行車線は、後5分程度で渋滞の末尾に到達します。」という案内メッセージを生成してもよい。
【0121】
この場合、渋滞情報提供装置1には、各案内板2の設置位置周辺における、各車線の車両110の走行速度が入力される構成が好ましいが、案内板2の設置位置周辺の制限速度を基準にして、渋滞の末尾に到達する時間を算出してもよい。例えば、走行車線は、車両110の走行速度を、案内板2の設置位置周辺の制限速度として渋滞の末尾に到達する時間を算出し、追越車線は、車両110の走行速度を、案内板2の設置位置周辺の制限速度+α(αは、10km/h以下)として渋滞の末尾に到達する時間を算出してもよい。
【0122】
・変形例4
上記の案内システムでは、交通状況推定装置3が、発生している渋滞の末尾位置を推定し、推定結果に基づく渋滞情報を渋滞情報提供装置1に出力するとしたが、発生している渋滞の末尾位置を推定する装置は、上記した装置に限らず、他の装置であってもよい。例えば、上記した特許文献1に記載された装置や、特許文献2に記載された装置が、渋滞情報を渋滞情報提供装置1に出力する装置であってもよい。
【0123】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。また、上記した全ての例の説明で示したフローチャートにおける各ステップの順番は、あくまでも一例であり、可能な範囲で適宜入れ替えてもよい。
【0124】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
車両(110)が走行する道路上で発生している渋滞の末尾位置と、その末尾位置の取得時刻とを対応付けた渋滞情報が入力される入力部(12)と、
前記渋滞情報を基に、渋滞の末尾位置の延伸速度を算出する算出部(11b)と、
入力された前記渋滞情報が示す渋滞の末尾位置と、前記算出部(11b)が算出した延伸速度とを用いて、この末尾位置よりも上流側に位置する案内地点における案内情報を生成する生成部(11c)と、
前記生成部(11c)が生成した前記案内情報を出力する出力部(14)と、を備えた渋滞情報提供装置(1)。
【符号の説明】
【0125】
1…渋滞情報提供装置
2(2a~2c)…案内板
3…交通状況推定装置
4(4-1~4-n)…電波レーダ
11…制御ユニット
11a…速度取得部
11b…算出部
11c…生成部
12…入力部
13…渋滞情報記憶部
14…出力部
110…車両
図1
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図12