IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

特開2023-1288封止用樹脂組成物およびこれを用いた電子装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001288
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物およびこれを用いた電子装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20221222BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221222BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C08G59/20
C08K3/013
C08L63/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179459
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2022549881の分割
【原出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021060421
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑衣
(57)【要約】
【課題】高Tgと密着性および高温信頼性のバランスに優れた封止用樹脂組成物および電子装置が提供される。
【解決手段】本発明の封止用樹脂組成物はエポキシ樹脂、硬化剤および無機充填材を含み、エポキシ樹脂が、分子内に2以上6以下のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含み、硬化剤が、分子内に2以上の活性水素を有する化合物を含み、硬化剤の活性水素当量に対するエポキシ樹脂のエポキシ当量の比である当量比が、1.4以上2.0以下である、封止用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤および無機充填材を含み、
前記エポキシ樹脂が、分子内に2以上6以下のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含み、
前記硬化剤が、分子内に2以上の活性水素を有する化合物を含み、
前記硬化剤の活性水素当量に対する前記エポキシ樹脂のエポキシ当量の比である当量比が、1.4以上2.0以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表されるモノマーを含む、封止用樹脂組成物。
【化1】
(前記一般式(1)において、m、nはナフタレン環上のエポキシ基の個数を示し、それぞれ独立して1~3の整数を示す。)
【請求項3】
請求項2に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂が、前記一般式(1)で表されるモノマーを含むエポキシ樹脂と前記モノマーとは異なる1種類または2種類以上のエポキシ樹脂との混合物である、封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記硬化剤が、多官能型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂のうち1種または2種を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記硬化剤が、トリフェニルメタン型フェノール樹脂またはビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
熱機械分析(TMA)において、昇温速度:5℃/minの条件下で測定される当該封止用樹脂組成物のガラス転移温度が190℃以上330℃以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
JIS K 7209に基づいて測定された吸水率が0.6%以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物を175℃で120秒間熱処理した後、200℃で4時間処理して得られる硬化物の、動的粘弾性測定器を用いて測定した300℃における貯蔵弾性率E'300と350℃における貯蔵弾性率E'350の比E'300/E'350が1.4以上2.0以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物を175℃で120秒間熱処理した後、200℃で4時間処理して得られる硬化物の、動的粘弾性測定器を用いて測定した350℃における貯蔵弾性率E'350と400℃における貯蔵弾性率E'400の比E'350/E'400が1.4以上2.0以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
縦軸が動的粘弾性測定器を用いて昇温速度:5℃/分、周波数:10Hz、測定モード:圧縮の条件で測定したtanδ、横軸が温度(℃)のグラフにおいて、tanδの値が減少から上昇に転じる変曲点をガラス転移温度以上400℃以下の温度域で有する、封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物で封止された電子部品を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物およびこれを用いた電子装置に関する。より詳細には、例えば、半導体のような電子部品を封止するための樹脂組成物、およびこのような樹脂組成物で封止された電子部品を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気エネルギーの有効活用等の観点から、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いた素子が搭載されたSiC/GaNパワー半導体装置が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような素子は、従来のSiを用いた素子に比べて、その電力損失が大幅に低減できるばかりでなく、より高い電圧や大電流、200℃以上といった高温下であっても動作することが可能であるため、従来のSiパワー半導体装置では適用が難しかった用途への展開が期待されている。
【0004】
このように、SiC/GaNを用いた素子(半導体素子)に代表される、過酷な状況下で動作可能な素子は、これらの素子を保護するために半導体装置に設けられる半導体封止材に対しても従来以上の耐熱性が求められている。
【0005】
ここで、従来のSiパワー半導体装置では、半導体封止材として、接着性、電気的安定性等の観点から、エポキシ系の樹脂組成物の硬化物を主材料として含む封止材が用いられている。
【0006】
このような樹脂組成物の硬化物の耐熱性を表す指標として、一般的には、ガラス転移温度(Tg)が用いられている。これはTg以上の温度領域では、封止用の樹脂組成物(硬化物)がゴム状になり、これに起因してその強度や接着強度が低下することによる。そのため、Tgを上げるための方法として、樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基当量、または、硬化剤(フェノール樹脂硬化剤)の水酸基当量を下げることにより架橋密度を上げたり、それら官能基(エポキシ基および水酸基)間を繋ぐ構造を剛直な構造にする等の手法がとられる。
【0007】
一方、本発明者らが上記のような高Tgのエポキシ樹脂を用いた樹脂組成物の検討を行ったところ、HAST試験(High Accelerated Stress Test)の結果において改善の余地があることが明らかとなった。
【0008】
したがって、樹脂組成物の耐熱性の向上を図るには、エポキシ樹脂と硬化剤とで形成される樹脂骨格と官能基密度とを最適な条件で設計し、高いTgを有するとともに、密着性および高温信頼性に優れるように設計された樹脂組成物の実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-167035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような背景を鑑み、高いガラス転移温度を有しつつも密着性および高温信頼性に優れた半導体封止材を形成し得る樹脂組成物を提供するものである。また、本発明は、このような樹脂組成物で電子部品を封止することにより得られる電子装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、検討の結果、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0012】
本発明によれば、
エポキシ樹脂、硬化剤および無機充填材を含み、
上記エポキシ樹脂が、分子内に2以上6以下のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含み、
上記硬化剤が、分子内に2以上の活性水素を有する化合物を含み、
上記硬化剤の活性水素当量に対する上記エポキシ樹脂のエポキシ当量の比である当量比が、1.4以上2.0以下である、封止用樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、
上記封止用樹脂組成物で封止された電子部品を備える、電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高Tgと密着性および高温信頼性のバランスに優れた封止用樹脂組成物および電子装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
<樹脂組成物>
まず、本実施形態の樹脂組成物について説明する。
【0017】
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤および無機充填材を含み、上記エポキシ樹脂が、分子内に2以上6以下のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含み、上記硬化剤が、分子内に2以上の活性水素を有する化合物を含み、上記硬化剤の活性水素当量に対する上記エポキシ樹脂のエポキシ当量の比である当量比の下限値が、好ましくは1.4以上であり、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは1.6以上である。また、上記当量比の上限値は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.85であり、さらに好ましくは1.75である。
【0018】
上記エポキシ樹脂のエポキシ基の量を上記範囲内とすることにより、エポキシ樹脂と硬化剤の架橋密度が向上し好適なものとなる。これにより、樹脂組成物中に含まれる遊離イオンの移動および反応を阻害し、樹脂の劣化を防止する効果がある。
ほかにも、上記エポキシ樹脂のエポキシ基の量を上記範囲内とすることにより、未反応の硬化剤の残存量を減少させ、未反応の硬化剤の分極による影響を低下させることができる。
【0019】
また、上記硬化剤の活性水素の量を上記範囲内とすることにより、エポキシ樹脂と硬化剤の架橋密度が向上し好適なものとなる。これにより、樹脂組成物中に含まれる遊離イオンの移動および反応を阻害し、樹脂の劣化を防止する効果がある。
【0020】
さらに、上記当量比を上記下限値以上とすることにより、未反応の硬化剤の残存量を減少させ、未反応の硬化剤の分極による影響を低下させることができるほか、エポキシ樹脂と硬化剤の架橋密度が向上し好適なものとなる。これにより、樹脂組成物中に含まれる遊離イオンの移動および反応を阻害し、樹脂の劣化を防止し、樹脂組成物の高温信頼性を向上させる効果がある。また、上記当量比を上記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性をより好適にし、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、上記樹脂組成物およびリードフレームもしくは基板との密着性を向上させることができる。
【0021】
なお、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。また、本実施形態において複数種のエポキシ樹脂を混合して使用する場合、エポキシ当量としては複数種のエポキシ樹脂を混合した後の当量数とする。
【0022】
上記活性水素当量とは、エポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(以下、活性水素基とする。加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)の個数のことである。
【0023】
活性水素基としては、具体的には酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、カルボキシル基(-COOH)やフェノール性水酸基(-OH)は1モルと、アミノ基(-NH)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ当量が既知のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
【0024】
なお、本実施形態において複数種の硬化剤を混合して使用する場合、活性水素当量としては複数種の硬化剤を混合した後の当量数とする。
【0025】
以下、樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0026】
(エポキシ樹脂)
本実施形態においては、エポキシ樹脂として、下記一般式(1)に示されるモノマーを含むことが望ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
このとき、m、nはナフタレン環上のエポキシ基の個数を示し、それぞれ独立して1~3の整数を示している。
【0029】
なお、一般式(1)のモノマーとしては、以下のいずれか1種以上を使用することが好ましい。
【0030】
【化2】
【0031】
また、本実施形態に用いることができるエポキシ樹脂としては、上記の一般式(1)に示すものに加えて、一般的に封止用のエポキシ樹脂組成物に使用される公知のエポキシ樹脂が挙げられる。公知のエポキシ樹脂としては、フ
ェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの;例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D等のジグリシジルエーテル;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;フェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル型樹脂やビフェニレン骨格フェノールアラルキル型樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂等アラルキル型樹脂のエポキシ化物;スチルベン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂;及びこれらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0032】
また、本発明の一実施形態において、上記一般式(1)で表されるモノマーを含むエポキシ樹脂を単独で用いてもよいし、上記一般式(1)で表されるモノマー以外の上記公知のエポキシ樹脂を単独で用いてもよいし、上記公知のエポキシ樹脂から選択される1種および2種以上のエポキシ樹脂と上記一般式(1)で表されるモノマーを含むエポキシ樹脂とを混合して用いてもよい。その中でも、上記エポキシ樹脂が、上記一般式(1)で表されるモノマーを含むエポキシ樹脂と上記モノマーとは異なる1種類または2種類以上のエポキシ樹脂との混合物であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中の全エポキシ樹脂の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や密着性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる半導体装置について、高温信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の全エポキシ樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。
【0034】
本実施形態において、樹脂組成物は、高温信頼性の観点から、イオン性不純物であるNaイオンやClイオン、Sイオンを極力含まないことが好ましい。
【0035】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中の全エポキシ樹脂のエポキシ当量量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や密着性の向上を図る観点から、好ましくは100g/eq以上であり、より好ましくは120g/eq以上であり、さらに好ましくは150g/eq以上である。
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる半導体装置について、高温信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の全エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは500g/eq以下であり、より好ましくは480g/eq以下であり、さらに好ましくは450g/eq以下である。
【0036】
(硬化剤)
本実施形態に用いることができる硬化剤としては、一般的に封止用のエポキシ樹脂組成物に使用される公知の硬化剤が挙げられる。公知の硬化剤として具体的には、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤(アミノ基を有する硬化剤)などを挙げることができる。
【0037】
フェノール系硬化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂やビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂等の多官能フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂が挙げられる。
【0038】
アミン系硬化剤としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等を挙げることができる。
【0039】
その他の硬化剤としては、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類等を挙げることができる。
【0040】
この中でも半導体封止用樹脂組成物に用いる硬化剤としては、密着性および高温信頼性の観点から、多官能型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂のうち1種または2種を含むことが好ましく、トリフェニルメタン型フェノール樹脂またはビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂を含むことがさらに好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や密着性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる半導体装置について、高温信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0042】
(無機充填材)
無機充填材は、樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下を低減する機能を有するものであり、当該分野で一般的に用いられる無機充填材を使用することができる。
【0043】
無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素および窒化アルミ等が挙げられ、これらの無機充填材は、単独でも混合して使用してもよい。
【0044】
無機充填材の平均粒径D50は、例えば0.01μm以上、150μm以下とすることができる。
【0045】
樹脂組成物中における無機充填材の量の下限値は、樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下を、より効果的に低減することができ、したがって硬化物の耐半田クラック性をさらに改善することができる。
【0046】
また、樹脂組成物中の無機充填材の量の上限値は、樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは93質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。
【0047】
なお、後述する、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤を用いる場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機充填材の合計量を上記範囲内とすることが好ましい。
【0048】
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物は、硬化剤、エポキシ樹脂および無機充填材に加え、以下に示す成分を含み得る。
【0049】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の反応基との反応を促進する機能を有するものであり、当該分野で一般に使用される硬化促進剤が用いられる。
【0050】
硬化促進剤の具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、さらには前記アミジン、アミンの4級塩等の窒素原子含有化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、硬化性の観点からはリン原子含有化合物が好ましく、また耐半田性と流動性の観点では、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、連続成形における金型の汚染が軽度である点では、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物は特に好ましい。
【0051】
樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィン;およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0052】
(カップリング剤)
カップリング剤は、樹脂組成物中に無機充填材が含まれる場合に、エポキシ樹脂と無機充填材との密着性を向上させる機能を有するものであり、例えば、シランカップリング剤等が用いられる。
【0053】
シランカップリング剤としては、各種のものを用いることができるが、アミノシランを用いるのが好ましい。これにより、樹脂組成物の流動性および耐半田性を向上させることができる。
【0054】
アミノシランとしては、特に限定されないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナミン等が挙げられる。
【0055】
シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合の下限値としては、全樹脂組成物中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填材との界面強度が低下することがなく、電子装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合の上限値としては、全樹脂組成物中1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填材との界面強度が低下することがなく、装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合が上記範囲内であれば、樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、電子装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0056】
(無機難燃剤)
無機難燃剤は、樹脂組成物の難燃性を向上させる機能を有するものであり、一般に使用される無機難燃剤が用いられる。
【0057】
具体的には、燃焼時に脱水、吸熱することによって燃焼反応を阻害する金属水酸化物や、燃焼時間の短縮することができる複合金属水酸化物が好ましく用いられる。
【0058】
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニアを挙げることができる。
【0059】
複合金属水酸化物としては、2種以上の金属元素を含むハイドロタルサイト化合物であって、少なくとも一つの金属元素がマグネシウムであり、かつ、その他の金属元素がカルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、または亜鉛から選ばれる金属元素であればよく、そのような複合金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が市販品で入手が容易である。
【0060】
なかでも、密着性と高温信頼性のバランスの観点からは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が好ましい。
【0061】
無機難燃剤は、単独で用いても、2種以上用いてもよい。また、密着性への影響を低減する目的から、シランカップリング剤等の珪素化合物やワックス等の脂肪族系化合物等で表面処理を行って用いてもよい。
【0062】
なお、本発明では前記無機難燃剤を使用することは差し支えないが、好ましくは無機難燃剤を125℃で20時間乾燥処理し、デシケータ-内で冷却後の重量を初期重量として、200℃の高温槽に前記無機難燃剤を投入し、1000時間加熱処理、デシケータ内で冷却後の重量を処理後重量とした場合の初期重量に対する処理後の重量減少率が0.1重量%以上である難燃剤を使用しないことが好ましく、さらには無機難燃剤を使用せず、難燃性を有するレジンのみで樹脂組成物を構成することが望ましい。
【0063】
すなわち、本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂が分子内に2以上6以下のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含み、硬化剤が分子内に2以上の活性水素を有する化合物を含み、上記硬化剤の活性水素当量に対する上記エポキシ樹脂のエポキシ当量の比である当量比が1.4以上2.0以下であることから高い難燃性を有し、難燃剤としての機能をも有している。そのため、200℃以上の高温下で水を放出し、その結果、硬化物の重量減少率の増加を招く可能性のある金属水酸化物系難燃剤の配合を省略したとしても、難燃剤を添加した場合と同様の特性を、樹脂組成物に付与することができる。
【0064】
また、上述したその他の成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;イオン捕捉剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力添加剤を適宜配合してもよい。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、上記の硬化剤およびエポキシ樹脂、ならびに必要に応じて上記のその他の成分を、当該分野で通常用いられる方法により混合することにより得ることができる。
【0066】
本発明の一実施形態において、熱機械分析(TMA)において、昇温速度:5℃/min、測定モード:圧縮の条件下で測定される、上記封止用樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)の下限値は、好ましくは190℃であり、より好ましくは200℃であり、さらに好ましくは210℃である。このとき、測定開始温度としては特に限定されないが、例えば25℃である。
Tgが上記下限値以上であることにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を用いて電子部品を封止した場合、リフロー処理のような高温処理時における樹脂組成物の硬化物の強度や、樹脂組成物とリードフレームもしくは基板との接着強度の低下を防止でき、高温信頼性に向上させることができる。
【0067】
また、上記封止用樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)の上限値は、好ましくは330℃であり、より好ましくは290℃であり、さらに好ましくは250℃である。Tgが上記上限値以下であることにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、樹脂組成物の硬化物の弾性率が高くなりすぎず、封止時の応力緩和に有利になる。
【0068】
本発明の一実施形態において、上記樹脂組成物のJIS K 7209に基づいて測定された吸水率の下限値は、好ましくは0%であり、より好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.28%である。
吸水率が上記下限値以上であることにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、上記樹脂組成物およびリードフレームもしくは基板との密着性に優れる。
また、上記吸水率の上限値は、好ましくは0.6%であり、より好ましくは0.4%であり、さらに好ましくは0.32%である。
吸水率が上記上限値以下であることにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、高温信頼性に優れ、装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0069】
本発明の一実施形態において、上記樹脂組成物を175℃で120秒間熱処理した後、200℃で4時間処理して得られる硬化物を、動的粘弾性測定器を用いて測定した際の300℃における貯蔵弾性率E'300と350℃における貯蔵弾性率E'350の比E'300/E'350の下限値は、好ましくは1.4であり、より好ましくは1.45であり、さらに好ましくは1.5である。比E'300/E'350が上記下限値以上であることにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、上記樹脂組成物およびリードフレームもしくは基板との密着性に優れる。
また上記E'300/E'350の上限値は、好ましくは2.0であり、より好ましくは1.95であり、さらに好ましくは1.9である。比E'300/E'350が上記上限値以下であることにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、高温信頼性に優れ、装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、上記樹脂組成物を175℃で120秒間熱処理した後、200℃で4時間処理して得られる硬化物を、動的粘弾性測定器を用いて測定した際の350℃における貯蔵弾性率E'350と400℃における貯蔵弾性率E'400の比E'350/E'400の下限値は、好ましくは1.4であり、より好ましくは1.5であり、さらに好ましくは1.6である。比E'350/E'400が上記下限値以上であることにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、上記樹脂組成物およびリードフレームもしくは基板との密着性に優れる。
また上記E'350/E'400の上限値は、好ましくは2.0であり、より好ましくは1.9であり、さらに好ましくは1.8である。比E'350/E'400が上記上限値以下であることにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、高温信頼性に優れ、装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0071】
本発明の一実施形態では、縦軸が動的粘弾性測定器を用いて昇温速度:5℃/分、周波数:10Hz、測定モード:圧縮の条件で測定したtanδ、横軸が温度(℃)のグラフにおいて、tanδの値が減少から上昇に転じる変曲点を、好ましくはガラス転移温度以上、より好ましくは310℃以上、さらに好ましくは320℃以上で有する。上記の特徴を有することにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、上記樹脂組成物およびリードフレームもしくは基板との密着性に優れる。
また、上記変曲点を好ましくは400℃以下、より好ましくは390℃以下、さらに好ましくは380℃以下で有する。上記の特徴を有することにより、例えば本実施形態における樹脂組成物を電子部品の封止に用いた場合において、高温信頼性に優れ、装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0072】
このような形態を取る理由は定かではないが、本実施形態では硬化剤の活性水素当量に対するエポキシ樹脂のエポキシ当量の比である当量比が従来よりも高く、エポキシリッチの形態であるために、従来の樹脂組成物であればゴム状弾性領域である温度域においてもゴム状弾性体とならず、tanδが上昇すると考えられる。
【0073】
次に、封止用樹脂組成物の形状について説明する。
本実施形態において、封止用樹脂組成物の形状は、封止用樹脂組成物の成形方法等に応じて選択することができ、たとえばタブレット状、粉末状、顆粒状等の粒子状;シート状が挙げられる。
【0074】
また、封止用樹脂組成物の製造方法については、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、粉砕後、成形して粒子状またはシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。たとえば、タブレット状に打錠成形して粒子状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また、たとえば真空押し出し機によってシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また得られた封止用樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
【0075】
本実施形態において得られる封止用樹脂組成物は、高いガラス転移温度を有するため、金属部材との密着性に優れたものである。さらに具体的には、本実施形態によれば、封止材と、Ag、Ni、Cuまたはこれらの1以上を含む合金により構成された部材との密着性を向上することも可能となる。
また、本実施形態において得られる封止用樹脂組成物を用いることにより、高温信頼性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0076】
本発明の一実施形態において、上記の封止用樹脂組成物によって電子部品を封止し、電子装置とすることができる。なお、電子装置としては公知の電子装置のいずれにも適用できるが、例えば半導体チップを封止した半導体パッケージに用いることが好ましい。また、半導体チップの好ましい態様としては、炭化ケイ素(SiC)および窒化ガリウム(GaN)を用いた半導体チップが挙げられる。
【0077】
本実施形態では、本発明の電子装置は各種公知の形態の半導体パッケージに適用することができ、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、マトリクス・アレイ・パッケージ・ボール・グリッド・アレイ(MAPBGA)、チップ・スタックド・チップ・サイズ・パッケージ等のメモリやロジック系素子に適用されるパッケージのみでなく、パワートランジスタなどのパワー系素子を搭載するTO-220等のパッケージにも好ましく適用することができる。
【0078】
以上、本発明の樹脂組成物および電子装置について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0079】
例えば、本発明の樹脂組成物には、同様の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。
【0080】
また、本発明の電子装置の各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【実施例0081】
<実施例、比較例>
(封止用樹脂組成物の調製)
各実施例および各比較例のそれぞれについて、以下のように封止用樹脂組成物を調製した。
まず、表1に示す各成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物を、ロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である封止用樹脂組成物を得た。
表1中の各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中に示す各成分の配合割合は、樹脂組成物全体に対する配合割合(質量%)を示している。
(原料)
(無機充填材)
無機充填材1:溶融シリカ(FB-560、デンカ社製、平均粒径:30μm)
無機充填材2:溶融シリカ(FB-105、デンカ社製、平均粒径:10μm)
【0082】
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラック(カーボン#5、三菱ケミカル社製)
【0083】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CF4083、東レ・ダウコーニング社製)
【0084】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:多官能エポキシ樹脂(YL6677、三菱ケミカル社製、エポキシ当量:163g/eq)
エポキシ樹脂2:多官能エポキシ樹脂(HP-4700-RC、DIC社製、エポキシ当量:156g/eq、一般式(1)(m=n=2)で表されるモノマーを含むエポキシ樹脂)
【0085】
(硬化剤)
硬化剤1:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(HE910-20、エア・ウォーター社製、活性水素当量:101)
硬化剤2:以下式(2)で示すビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂(活性水素当量:135)
【0086】
【化3】
【0087】
式(2)中、2つのYは、それぞれ互いに独立して、下記式(2-1)または下記式(2-2)で表されるヒドロキシフェニル基を表し、Xは、下記式(2-3)または下記式(2-4)で表されるヒドロキシフェニレン基を表す。また、nは0以上10以下の整数を表す。
【0088】
【化4】
【0089】
上記硬化剤2は、以下の方法で合成した。
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、1,3-ジヒドロキシベンゼン(東京化成工業社製、「レゾルシノール」、融点111℃、分子量110、純度99.4%)291質量部、フェノール(関東化学社製特級試薬、「フェノール」、融点41℃、分子量94、純度99.3%)235質量部、あらかじめ粒状に砕いた4,4'-ビスクロロメチルビフェニル(和光純薬工業社製、「4,4'-ビスクロロメチルビフェニル」、融点126℃、純度95%、分子量251)125質量部を、セパラブルフラスコに秤量し、窒素置換しながら加熱し、フェノールの溶融の開始に併せて攪拌を開始した。
【0090】
その後、系内温度を110~130℃の範囲に維持しながら3時間反応させた後、加熱し、140~160℃の範囲に維持しながら3時間反応させた。
【0091】
なお、上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。
【0092】
反応終了後、150℃、2mmHgの減圧条件で未反応成分を留去した。次いで、トルエン400質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分等の揮発成分を留去し、上記式(2)で表される硬化剤2(重合体)を得た。
なお、この硬化剤2における水酸基当量は135であった。
【0093】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラート
【0094】
(離型剤)
離型剤1:カルナバワックス(TOWAX-132、東亜合成社製)
【0095】
(イオン捕捉剤)
イオン捕捉剤1:イオン捕捉剤(DHT-4H、協和化学工業社製)
(低応力剤)
低応力剤1:シリコーンオイル(FZ-3730、東レ・ダウコーニング社製)
【0096】
(物性評価)
各例で得られた樹脂組成物の各物性を、以下の方法で評価した。
【0097】
(スパイラルフロー(SF)・ゲルタイム)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、「KTS-15」)を用いて、ANSI/ASTM D 3123-72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で、各実施例および各比較例の樹脂組成物を注入し、流動長を測定し、これをスパイラルフローとした。また、注入開始から樹脂組成物が硬化し流動しなくなるまでの時間を測定し、ゲルタイムとした。
なお、スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。
【0098】
(ガラス転移温度(Tg)、TMA)
各実施例および各比較例の樹脂組成物のガラス転移温度は、JIS K 6911に準じて測定した。すなわち、各実施例および各比較例の樹脂組成物について、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間90秒で、80mm×10mm×4mmの試験片を成形し、175℃2時間で後硬化し、熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、TMA/SS6000)を用いて、5℃/分の昇温速度で得られた試験片の熱膨張率を測定した。次いで、得られた測定結果に基づき、熱膨張率の変曲点から硬化物のガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0099】
(貯蔵弾性率、tanδ、DMA)
各実施例および各比較例の樹脂組成物の貯蔵弾性率E'は、以下の方法で測定した。すなわち、各実施例および各比較例の樹脂組成物について、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で、80mm×10mm×4mmの試験片を成形し、200℃4時間で後硬化し、動的粘弾性測定器(エーアンドディ社製、「DDV-25GP」)を用いて貯蔵弾性率およびtanδを測定した(昇温速度:5℃/分、周波数:10Hz、荷重:800g)。
各実施例においては、縦軸に測定したtanδ、横軸に温度(℃)を取ったグラフにおいて、tanδの値が減少から上昇に転じる変曲点をガラス転移温度以上400℃以下で有していた。一方、各比較例においては上記変曲点を有していなかった。
【0100】
(曲げ弾性率、曲げ強さ)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物を注入成形し、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形物を得た。得られた成形物を、後硬化として200℃で4時間加熱処理したものを試験片とし、曲げ弾性率および曲げ強さをJIS K 6911に準じて25℃および260℃の雰囲気温度下で測定した。
【0101】
(吸水率)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力7.4MP、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物を注入成形して直径50mm、厚さ3mmの試験片を作製し、200℃で4時間後硬化した。その後、得られた試験片を煮沸環境下で24時間加湿処理し、加湿処理前後の重量変化を測定し吸水率を求めた。
【0102】
(評価)
各例で得られた樹脂組成物を用いて以下の方法で評価用試料を作製し、得られた試料の信頼性を以下の方法で評価した。
【0103】
(高温信頼性:HAST試験)
各例で得られた封止用樹脂組成物について、低圧トランスファー成形機(アピックヤマダ社製「MSL-06M」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10MPa、硬化時間180秒で16pSOP(Cuワイヤー)を成形し、200℃で4時間硬化させることでテスト用の半導体装置を作製した。封止したテスト用半導体装置を、温度:130℃、湿度:85%RH、電圧:20Vの環境下に静置し、40h毎に240hまで抵抗値を測定した。抵抗値が初期値の1.2倍以上を不合格とし、200h以上合格した場合を〇、200hより前に不合格となった場合を×とした。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例では高いガラス転移温度(Tg)を有し、かつHAST試験において良好な結果を示しており、密着性および高温信頼性に優れる封止用樹脂組成物の提供が可能であった。
【0106】
この出願は、2021年3月31日に出願された日本出願特願2021-060421号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤および無機充填材を含み、
前記エポキシ樹脂が、分子内に2以上6以下のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含み、
前記硬化剤が、分子内に2以上の活性水素を有する化合物を含み、
前記硬化剤の活性水素当量に対する前記エポキシ樹脂のエポキシ当量の比である当量比が、1.4以上2.0以下である、封止用樹脂組成物であって、
前記封止用樹脂組成物中の全エポキシ樹脂の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して15質量%以下であり、
前記封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量が、前記封止用樹脂組成物全体に対して1質量%以上10質量%以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表されるモノマーを含む、封止用樹脂組成物。
【化1】
(前記一般式(1)において、m、nはナフタレン環上のエポキシ基の個数を示し、それぞれ独立して1~3の整数を示す。)
【請求項3】
請求項2に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂が、前記一般式(1)で表されるモノマーを含むエポキシ樹脂と前記モノマーとは異なる1種類または2種類以上のエポキシ樹脂との混合物である、封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記硬化剤が、多官能型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂のうち1種または2種を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記硬化剤が、トリフェニルメタン型フェノール樹脂またはビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
熱機械分析(TMA)において、昇温速度:5℃/minの条件下で測定される当該封止用樹脂組成物のガラス転移温度が190℃以上330℃以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
JIS K 7209に基づいて測定された吸水率が0.6%以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物を175℃で120秒間熱処理した後、200℃で4時間処理して得られる硬化物の、動的粘弾性測定器を用いて測定した300℃における貯蔵弾性率E'300と350℃における貯蔵弾性率E'350の比E'300/E'350が1.4以上2.0以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
当該封止用樹脂組成物を175℃で120秒間熱処理した後、200℃で4時間処理して得られる硬化物の、動的粘弾性測定器を用いて測定した350℃における貯蔵弾性率E'350と400℃における貯蔵弾性率E'400の比E'350/E'400が1.4以上2.0以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
縦軸が動的粘弾性測定器を用いて昇温速度:5℃/分、周波数:10Hz、測定モード:圧縮の条件で測定したtanδ、横軸が温度(℃)のグラフにおいて、tanδの値が減少から上昇に転じる変曲点をガラス転移温度以上400℃以下の温度域で有する、封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物で封止された電子部品を備える、電子装置。