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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128811
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電力供給装置及び電力供給方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20230907BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20230907BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20230907BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230907BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J50/10
H02J50/70
H02J7/00 301D
H02M7/06 G
H02M7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033426
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭彦
(72)【発明者】
【氏名】長洲 正浩
【テーマコード(参考)】
5G503
5H006
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB03
5G503GB03
5G503GB08
5H006CA07
5H006CB01
5H006CB03
5H006CC01
(57)【要約】
【課題】電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線から、静電誘導方式を用いて、簡便、安全かつ高効率に、電力を取り出す方式を提供する。
【解決手段】電力供給装置として、電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線の周囲を包囲する形状を有するシールドと、シールドからの配線が自らの入力端に接続される整流回路と、整流回路の出力端に接続される平滑コンデンサと、静電誘導によってシールドに発生する電力が充電される平滑コンデンサの電圧を入力電圧とする電圧変換回路とを備え、電圧変換回路からの出力電力を外部機器に供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線の周囲を包囲する形状を有するシールドと、
前記シールドからの配線が自らの入力端に接続される整流回路と、
前記整流回路の出力端に接続される平滑コンデンサと、
静電誘導によって前記シールドに発生する電力が充電される前記平滑コンデンサの電圧を入力電圧とする電圧変換回路と
を備え、
前記電圧変換回路からの出力電力を外部機器に供給する
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給装置であって、
前記シールドは、前記交流配線の少なくとも1相の交流配線を個別に包囲し、
前記整流回路は、1以上のダイオードから構成され、当該1以上のダイオードのアノードが1以上の前記シールドからの個別の配線に接続され、当該1以上のダイオードのカソードが前記平滑コンデンサの一方の端子に接続され、
前記平滑コンデンサの他方の端子は、アースに接続される
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力供給装置であって、
前記シールドは、前記交流配線の任意の2相または3相の交流配線の周囲を各々個別に包囲し、
前記整流回路は、前記2相または前記3相の前記シールドからの各配線が自らの入力端に接続される2相または3相のダイオードフルブリッジ回路で構成される、
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力供給装置であって、
前記シールドは、前記交流配線の任意の2相または3相の交流配線の周囲を各々個別に包囲し、
前記2相または前記3相の前記シールドからの各配線が自らの一次側に接続される単相トランスまたは3相トランスを更に備え、
前記整流回路は、前記単相トランスまたは前記3相トランスの二次側の出力を自らの入力とする2相または3相のダイオードフルブリッジ回路で構成される
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力供給装置であって、
前記シールドの取り付け位置が、前記交流負荷の直近位置である
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電力供給装置であって、
前記交流配線の少なくとも1相の交流配線を貫通させる少なくとも1つのトロイダルコアと、
前記トロイダルコアに1回以上巻装されて2つの出力端を有する巻き線と、
前記出力端が自らの入力端に接続される少なくとも1つの2相ダイオードフルブリッジ回路と
を更に備え、
前記2相ダイオードフルブリッジ回路の出力端が前記平滑コンデンサの両端に接続される
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項7】
電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線の周囲を包囲する形状を有するシールドから静電誘導によって発生する電力を整流して平滑コンデンサに充電し、
前記平滑コンデンサの充電電圧を電圧変換して外部機器に供給する
ことを特徴とする電力供給方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電力供給方法であって、
前記交流配線を貫通させるトロイダルコアから電磁誘導によって発生する電力を前記静電誘導によって発生する電力に重畳させる
ことを特徴とする電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視用センサ等への電力供給装置及び電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のIoT技術の拡がりにより、家電や自動車などの民生分野だけでなく、工場などの機器、風力発電及び鉄道用のモータなどの産業分野においても、様々なセンサーが使われている。
【0003】
これらのセンサの役割は、稼働中の機器の状態をリアルタイムに把握し、故障などの異常が発生した場合に、速やかに機器を停止するだけでなく、収集したデータによって余寿命を診断し、部品の交換時期などを知らせることである。
【0004】
特に、産業分野、中でも風力発電などのように頻繁に人が点検することができない場所にある機器や、鉄道のモータのように1日の大部分が移動時間で点検が困難な機器に対しては、センサで遠隔監視することにより、常時機器の状態を把握し、故障等の異常を速やかに検知し、部品の交換等の必要性を把握するニーズが高まっている。
【0005】
また、電力の送電設備や鉄道のモータ等の高電圧機器では、安全の観点から人が簡単にはアクセスできないように構成されていることもあり、センサによる遠隔監視が必須となっている。
【0006】
ここで、センサを使って遠隔監視システムを構成する場合に課題となるのが、センサ電源の確保である。一般に、センサを使った監視システムの電源は、DC15VやDC24Vの汎用電源や、AC100Vの商用電源を使う場合が多い。しかし、先に述べた風力発電や鉄道用のモータ等は、機器の側に適切な電源が無い場合が多く、センサのためだけに電源を追加する必要が生じ、装置の大型化や製造コストの増加につながるという課題がある。
【0007】
そこで、新たに電源を設けることなくセンサに電力を供給する方法として、交流の電力ケーブルから簡便に電力を取り出す技術が開示されている。電力ケーブルから電力取り出す方法には大きく分けて2種類あり、1つ目は電磁誘導方式、2つ目は静電誘導方式である。例えば、特許文献1には1つ目の電磁誘導方式に関する技術が、また、特許文献2乃至4には静電誘導方式に関する技術、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-027659号公報
【特許文献2】国際公開第2009/072444号
【特許文献3】特開2003-284252号公報
【特許文献4】特開2013-172584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、電磁誘導により電力を取り出す方式について開示し、この方式によれば、電力ケーブルと絶縁を確保した状態で簡便かつ安全に電力を取り出せる。しかし、この方式では、電力ケーブルに流れる電流が少ない場合には誘起される磁界も小さくなり、取り出せる電力が少なくなるという問題がある。
【0010】
特許文献2乃至4は、静電誘導方式により電力を取り出す方式について開示し、この方式によれば、特許文献1に記載の方式における上記問題は発生しないが、一方で、以下に述べる別の問題がある。
【0011】
特許文献2に記載の方式では、同文献の図5(a)に示されているように、電力を取り出すための配線の一端を直接電力線に接続する必要がある。この場合、鉄道用モータなどのAC600Vを超える高電圧機器の場合には、センサを高圧電線に直接接続することとなり、安全性確保、機器保護の観点から絶縁が必要となる。従って、電力ケーブルから簡便かつ安全に電力を取り出す目的を達成することが困難となる。
【0012】
特許文献3に記載の方式では、同文献の図4に示されているように、電力ケーブルとアース電位との間に生じる浮遊容量の一部に負荷を並列に接続して電力を取り出す構成としている。しかし、この構成では、負荷と並列の浮遊容量のインピーダンスが高くないために十分な電力を取り出すことができない。
【0013】
特許文献4に記載の方式では、同文献の図3に示すように、上記した特許文献3の課題に対して、電力取り出しのための浮遊容量に並列にインダクタンスを接続して、並列共振を引き起こすことによって浮遊容量の等価的なインピーダンスを増大させ、負荷に十分な電力を取り出す構成を採用している。しかし、一方でこの構成には以下の問題がある。
【0014】
(1)インダクタンス追加により装置が大型化、高コスト化する。
(2)並列共振の条件成立のためのインダクタンス値には制約があり、自由に選択できない。条件によっては、大きなインダクタンス値にしなければならず、更に装置が大型化、高コスト化する。
(3)長期間の装置の稼働により浮遊容量の値が変化した場合に、共振条件から外れ、電力取り出しの効率が低下する。
【0015】
本発明は、上記した課題を生じさせることなく、高電圧で大電流の電力線から低電圧の電力を取り出す手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した課題を解決するために、代表的な本発明に係る電力供給装置の一つは、電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線の周囲を包囲する形状を有するシールドと、シールドからの配線が自らの入力端に接続される整流回路と、整流回路の出力端に接続される平滑コンデンサと、静電誘導によってシールドに発生する電力が充電される平滑コンデンサの電圧を入力電圧とする電圧変換回路とを備え、電圧変換回路からの出力電力を外部機器に供給するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電力ケーブルから絶縁された状態で、静電誘導方式により電力を取り出すため、安全かつ簡便にセンサ用の電源を確保することができる。また、浮遊容量と負荷を直列に接続する構成であるため、電力取り出しの効率を高められる。更に、静電誘導方式であるため、小電流においても効率良く電力を取り出すことが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係る電力供給装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施例2に係る電力供給装置の構成を示す図である。
図3】本発明の実施例3に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
図4】本発明の実施例4に係る電力供給装置の構成を示す図である。
図5】本発明の実施例5に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
図6】本発明の実施例6に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
図7】従来技術の等価回路を示す図である。
図8】実施例1の電力供給装置の等価回路を示す図である。
図9】本発明の実施例7に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
図10】本発明の実施例7に係る電力供給装置の構成の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態として、実施例1~7のそれぞれについて、図を参照しながら説明する。なお、これら実施例により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【実施例0020】
図1は、本発明の実施例1に係る電力供給装置の構成を示す図である。
図1において、モータ駆動用のインバータ(電力変換器)100から、モータ配線である電力ケーブル107を介して交流モータ101に電力が供給される。任意の一相の電力ケーブル107に設けたシールド106は、電力を取り出すための電力供給用として、整流ダイオード104のアノードに接続される。
【0021】
静電誘導によってシールド106に発生する電圧により、整流ダイオード104を介して平滑コンデンサ105に電流が流れ、平滑コンデンサ105を充電する。整流ダイオード104及び平滑コンデンサ105の接続態様としては、整流ダイオード104のカソードを平滑コンデンサ105の一方の端子に接続し、平滑コンデンサ105の他方の端子はアースに接続される。
【0022】
平滑コンデンサ105に蓄えられた電力は、DC-DCコンバータなどの電圧変換回路102に入力され、所望の電圧値に変換してセンサ103に供給され、センサ103を動作させる。
【0023】
実施例1として示す電力供給装置の特徴点は、電力を取り出すためのシールド106に接続した配線を、整流ダイオード104を介して電圧変換回路102及び平滑コンデンサ105に接続した点にある。
【0024】
ここで、従来技術との差異を、図7及び図8を用いて説明する。図7は、従来技術の等価回路を示す図である。
従来技術においては、電力ケーブル107とシールド106との間やシールド106とアースとの間に形成される浮遊容量108、701及び702の直列回路の中から一つの浮遊容量701に並列に負荷109を接続し、そこから電力を取り出す構成としている。
【0025】
この構成の場合には、電力ケーブル107の電位がプラス側に増加して行く際には浮遊容量701に充電電流が流れ、その一部が負荷109にも流れて電力が供給される。次に、電力ケーブル107の極性が反転し、電力ケーブル107の電位がマイナス側に減少して行く際には、浮遊容量701に充電された電荷は全て放電される。このため、電力ケーブル107から供給される電力の一部しか負荷109に取り出すことができず、効率が悪い。
【0026】
図8は、実施例1の電力供給装置の等価回路を示す図である。
実施例1の構成では、整流ダイオード104が平滑コンデンサ105と直列に挿入されているために、電力ケーブル107の極性がマイナスになり電位が減少して行く時にも、電荷を蓄積した平滑コンデンサ105の電荷は放電されることなく、取り出した電力を保持できる。次に、再び電力ケーブル107の電位が再びプラスになるまでの期間は、保持された電力により負荷109に電力を供給する。この構成によれば、電力ケーブルから不断に電力を効率的に供給することが可能となる。
【0027】
また、実施例1の構成では、電力取り出しのための配線を電力ケーブル107とは絶縁されたシールド106に接続するため、例えば特許文献2のように、高電圧が負荷に印加されることはなく、安全上望ましい構成となる。
【0028】
更に、実施例1の構成では、静電誘導により電力を取り出すために電力ケーブル107に流れる電流が少ない場合でも、例えば特許文献1とは異なり、必要な電力を取り出すことが可能となる。先に述べたとおり、電磁誘導方式では、電力ケーブル107に流れる電流が少ない場合には、このケーブルの周囲に発生する磁界も小さくなり、十分な電力を取り出すことができない。一方で、静電誘導方式では、電力ケーブル107の電位変動により電力を取り出すために、電流が少ない場合でも十分な電力を取り出せる。
【0029】
加えて、例えば特許文献4のように、並列共振現象を使っていないために、共振条件成立のための各主回路定数の制限もなく、また、経年劣化による共振点の変動に起因する電力供給効率の低下の懸念もなく、長期の信頼性を向上できる。
【実施例0030】
図2は、本発明の実施例2に係る電力供給装置の構成を示す図である。
実施例2の特徴点は、先の実施例1の電力供給装置を、3相の電力ケーブル107全てに敷設した点にある。すなわち、3相の電力ケーブル107全てに対して、シールド106及び整流ダイオード104を設け、整流ダイオード104を共通して平滑コンデンサ105に接続する構成とする。
【0031】
図1に示す実施例1の構成では、単相の電力ケーブル107からのみ電力を取り出しているために、電力を平滑コンデンサ105に充電できるのは、電力ケーブル107の電位がプラス側にある場合に限られ、電力ケーブル107の電位がマイナス側になる場合には、電力を取り出すことができなかった。
【0032】
図2に示す実施例2の構成によれば、3相から同時に取り出す構成としたことにより、充電できない期間が無くなる。3相の電力ケーブル107は、一般には120度ずつ位相がシフトしていることから、これらを組み合わせると、例えば電力ケーブル107のある一相がマイナス電位になっている時でも残りの相の電位がプラスとなるために、充電が可能となる。
【0033】
以上により、実施例2の構成では、実施例1の構成に比べて最大で3倍の電力を取り出すことが可能となる。その他の作用効果については、実施例1の場合と同じである。
【0034】
また、実施例1は、単相の電力ケーブル107のみから、また、実施例2は、3相全ての電力ケーブル107から、電力を取り出す構成としたが、3相の内の任意の2相の電力ケーブル107から電力を取り出す構成を排除するものではない。この場合には、図示はしないが、3相の内の任意の2相の電力ケーブル107それぞれに対して、シールド106及び整流ダイオード104を設け、整流ダイオード104を共通して平滑コンデンサ105に接続する構成とする。
【実施例0035】
図3は、本発明の実施例3に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
実施例3の特徴点は、電力の取り出し配線を、シールド106とアースの間ではなく、任意の2つの相の間に接続した点にある。
【0036】
実施例3の構成では、図3に示すように、異なる二つの相にそれぞれシールド106を設け、そのシールド106を整流ダイオード104で構成される2相のダイオードブリッジ整流回路に入力して電力を取り出す。
【0037】
この構成によれば、電力を取り出す配線の一方をアースに接続する必要がないため、設置の自由度が高まる。鉄道車両のモータにセンサを取り付ける場合などでは、走行中の車両であるため直接アースに配線を接続できない。
【0038】
そこで、車体などの擬似アースに配線を接続する方法が考えられる。しかし、この方法では、電力取り出し回路の電流が、車体に流れ込み漏洩電流となる。そのため、車体からの放射ノイズの原因となり、各種信号機器の誤動作などを引き起こす。
【0039】
実施例3の構成では、アースに配線を接続する必要がなく、上記のような問題が発生せず、アースのある場合に比べてより簡便に電力を取り出すことが可能となる。その他の作用効果については、実施例1及び2の場合と同じである。
【実施例0040】
図4は、本発明の実施例4に係る電力供給装置の構成を示す図である。
実施例4の特徴点は、実施例3の構成の中の電力取り出し配線を、任意の2相から3相全ての電力ケーブル107に対して拡張した点にある。
【0041】
すなわち、実施例3の構成では、2相の電力ケーブルの電位変化により電力を取り出すが、実施例4の構成では、3相全ての電位変化から電力を取り出すため、実施例3に比べて1.5倍の電力の取り出しが可能となる。その他の作用効果に関しては、実施例1乃至3の場合と同じである。
【実施例0042】
図5は、本発明の実施例5に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
実施例5の特徴点は、整流ダイオード104とシールド106との間にトランス200を介在させている点にある。
【0043】
シールド106の電位は、電力ケーブル107の電位変動により誘導されて発生するが、この電圧が負荷の必要とする電圧よりも低い場合には、何らかの手段により昇圧する必要がある。そこで、電圧変換回路102に昇圧機能を持たせることにより、ある程度は昇圧できるが、一般にこの電圧変換回路102としては、DC-DCコンバータなどのスイッチングレギュレータを使用することとなる。そのため、昇圧比が高くなると、電圧変換回路102での損失が大きくなり回路全体の効率が低下するか、そもそも昇圧できないなどの問題が生じる可能性がある。
【0044】
実施例5の構成では、トランス200を採用することにより、大きな昇圧比が必要な場合には昇圧トランスとすることで、損失を最小限に抑えて昇圧が可能となる。これにより、システム全体の高効率化が図れることになる。また、その他の作用効果に関しては、実施例1乃至4の場合と同じである。
【0045】
ここで、シールド106に発生する電圧が負荷の必要とする電圧よりも高い場合には、電圧変換回路102でトランス200を降圧トランスとすることで、適正な電圧を簡易に得ることが可能となる。
【0046】
反対に、発生する電圧が低く負荷にかかる電圧が不足する場合には、上記のとおり、トランス200を昇圧トランスとして発生電圧を昇圧し、負荷に供給する。
【0047】
なお、図5では、図4に示す実施例4の構成、すなわち、3相全てにシールド106を設けた場合に対してトランス200を介在させるため3相トランスとしているが、この構成に限定されるものではない。図3に示す実施例3の構成、すなわち、任意の2相にシールド106を設けた場合に対してトランス200を介在させる場合には、単相トランスとなる。
【実施例0048】
図6は、本発明の実施例6に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
実施例6の特徴点は、シールド106の取り付け位置を交流モータ101側の直近とした点にある。
【0049】
一般に、現在広く普及している電力変換器であるインバータとしては、電圧型インバータが知られており、各相に出力される電圧は、LoレベルとHiレベルとから成る矩形波で、この矩形波の幅を制御することで所望の実効電圧を出力する。
【0050】
この電圧矩形波が、負荷である交流モータ101の端子に到達すると、電力ケーブル107のインピーダンスと交流モータ101のインピーダンスの違いから反射現象が起こり、交流モータ101の端子部分では対地電圧が2倍になることがある。そこで、この部分にシールド106を設ければ取り出せる電力も大きくなり、効率良く大きな電力を取り出すことが可能となる。また、その他の作用効果に関しては、実施例1の場合と同じである。
【0051】
上記した反射による波形は、交流モータ101の端子部分で最も波高値が高く、インバータ(電力変換器)100側に戻るにつれて減衰して行く。このため、効率良く電力を取り出すために、シールド106は、インバータ(電力変換器)100と交流モータ101の中間よりもモータ側に設けることが好ましい。特に、交流モータ101の端子直近に配置するのが好適である。
【0052】
図6では、図1に示す実施例1の構成に対して、実施例6の特徴点を適用した場合の構成を示したが、他の実施例2から実施例5に対しても実施例6の特徴点を適用した構成を採用することができる。
【実施例0053】
図9及び図10は、本発明の実施例7に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。実施例7では、図9及び図10に示すように、ダイオードブリッジ回路901、電力取り出し用の巻線を施したトロイダルコア902が追加されている。
【0054】
実施例7の特徴点は、実施例1乃至6にて説明した静電誘導型の電力供給装置に加えて、電磁誘導型の電力供給装置を並列して設けた点にある。
【0055】
図9に示す実施例7の構成の一例では、図1に示す実施例1の静電誘導型の電力供給装置に、シールド106を備える相に設けたトロイダルコア902及び単相のダイオードブリッジ回路901から成る電磁誘導型の電力供給装置を並列して設けている。
【0056】
図10に示す実施例7の構成の他の一例では、図4に示す実施例4の静電誘導型の電力供給装置に、3相の電力ケーブル107それぞれに設けたトロイダルコア902及び3相のダイオードブリッジ回路901から成る電磁誘導型の電力供給装置を並列して設けている。
【0057】
シールド106による静電誘導型の電力供給装置は、電力ケーブル107の電流値によらず印加電圧により決まる電力を供給できるため、小電流から大電流まで安定して電力を取り出せる特徴がある。しかし反面で、電磁誘導式に比べると取り出せる電力の絶対値は小さくなるという課題がある。
【0058】
一方で、電磁誘導式は、電流値により取り出せる電力が変わり、小電流領域では小さな電力しか取り出せないが、大電流領域では大きな電力を取り出せるメリットがある。
【0059】
そこで、実施例7では、静電誘導型と電磁誘導型とを組み合わせて上記したそれぞれの長所を活用することにより、小電流から大電流まで全領域で効率良く電力を供給できる手段を提供する。
【0060】
なお、実施例7に示す構成は、図9に示す単相での実施態様及び図10に示す3相での実施態様であるが、実施例2、3及び5の各構成においても、静電誘導方式と電磁誘導方式とを組み合わせる構成で同様の作用効果が得られることは、当業者にとって明らかであろう。
【0061】
また、上述した実施例1乃至7では、静電誘導方式の電力の取り出し方法として、シールドを用いた構成を例に説明した。しかし、シールド以外にも、電力ケーブルと絶縁された容量を介して電力を取り出せる構成であるならば、同様の作用効果を得ることは可能である。例えば、板状のシールド板のような物や、電力ケーブルに沿って配された配線状の電極などでも、得られる作用効果は同じである。
【0062】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0063】
また、本発明の用途としては、電力変換器がモータ駆動用のインバータで、交流負荷が交流モータである場合には、鉄道車両や鉄鋼の圧延工程などへの適用、更には、風力発電などへの適用が想定されるが、これらに限定されるものではなく、大電力を取り扱う分野などで、監視用センサなどへの供給電力を、簡便、安全かつ高効率に取り出したい場合に好適である。
【符号の説明】
【0064】
100:インバータ(電力変換器)、101:交流モータ、102:電圧変換回路、
103:センサ、104:整流ダイオード、105:平滑コンデンサ、
106:シールド、107:電力ケーブル、109:負荷、200:トランス、
108、701、702:浮遊容量、901:ダイオードブリッジ回路、
902:トロイダルコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10