(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128811
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電力供給装置及び電力供給方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/05 20160101AFI20230907BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20230907BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20230907BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230907BHJP
H02M 7/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J50/10
H02J50/70
H02J7/00 301D
H02M7/06 G
H02M7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033426
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭彦
(72)【発明者】
【氏名】長洲 正浩
【テーマコード(参考)】
5G503
5H006
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB03
5G503GB03
5G503GB08
5H006CA07
5H006CB01
5H006CB03
5H006CC01
(57)【要約】
【課題】電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線から、静電誘導方式を用いて、簡便、安全かつ高効率に、電力を取り出す方式を提供する。
【解決手段】電力供給装置として、電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線の周囲を包囲する形状を有するシールドと、シールドからの配線が自らの入力端に接続される整流回路と、整流回路の出力端に接続される平滑コンデンサと、静電誘導によってシールドに発生する電力が充電される平滑コンデンサの電圧を入力電圧とする電圧変換回路とを備え、電圧変換回路からの出力電力を外部機器に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線の周囲を包囲する形状を有するシールドと、
前記シールドからの配線が自らの入力端に接続される整流回路と、
前記整流回路の出力端に接続される平滑コンデンサと、
静電誘導によって前記シールドに発生する電力が充電される前記平滑コンデンサの電圧を入力電圧とする電圧変換回路と
を備え、
前記電圧変換回路からの出力電力を外部機器に供給する
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給装置であって、
前記シールドは、前記交流配線の少なくとも1相の交流配線を個別に包囲し、
前記整流回路は、1以上のダイオードから構成され、当該1以上のダイオードのアノードが1以上の前記シールドからの個別の配線に接続され、当該1以上のダイオードのカソードが前記平滑コンデンサの一方の端子に接続され、
前記平滑コンデンサの他方の端子は、アースに接続される
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力供給装置であって、
前記シールドは、前記交流配線の任意の2相または3相の交流配線の周囲を各々個別に包囲し、
前記整流回路は、前記2相または前記3相の前記シールドからの各配線が自らの入力端に接続される2相または3相のダイオードフルブリッジ回路で構成される、
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力供給装置であって、
前記シールドは、前記交流配線の任意の2相または3相の交流配線の周囲を各々個別に包囲し、
前記2相または前記3相の前記シールドからの各配線が自らの一次側に接続される単相トランスまたは3相トランスを更に備え、
前記整流回路は、前記単相トランスまたは前記3相トランスの二次側の出力を自らの入力とする2相または3相のダイオードフルブリッジ回路で構成される
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力供給装置であって、
前記シールドの取り付け位置が、前記交流負荷の直近位置である
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電力供給装置であって、
前記交流配線の少なくとも1相の交流配線を貫通させる少なくとも1つのトロイダルコアと、
前記トロイダルコアに1回以上巻装されて2つの出力端を有する巻き線と、
前記出力端が自らの入力端に接続される少なくとも1つの2相ダイオードフルブリッジ回路と
を更に備え、
前記2相ダイオードフルブリッジ回路の出力端が前記平滑コンデンサの両端に接続される
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項7】
電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線の周囲を包囲する形状を有するシールドから静電誘導によって発生する電力を整流して平滑コンデンサに充電し、
前記平滑コンデンサの充電電圧を電圧変換して外部機器に供給する
ことを特徴とする電力供給方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電力供給方法であって、
前記交流配線を貫通させるトロイダルコアから電磁誘導によって発生する電力を前記静電誘導によって発生する電力に重畳させる
ことを特徴とする電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視用センサ等への電力供給装置及び電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のIoT技術の拡がりにより、家電や自動車などの民生分野だけでなく、工場などの機器、風力発電及び鉄道用のモータなどの産業分野においても、様々なセンサーが使われている。
【0003】
これらのセンサの役割は、稼働中の機器の状態をリアルタイムに把握し、故障などの異常が発生した場合に、速やかに機器を停止するだけでなく、収集したデータによって余寿命を診断し、部品の交換時期などを知らせることである。
【0004】
特に、産業分野、中でも風力発電などのように頻繁に人が点検することができない場所にある機器や、鉄道のモータのように1日の大部分が移動時間で点検が困難な機器に対しては、センサで遠隔監視することにより、常時機器の状態を把握し、故障等の異常を速やかに検知し、部品の交換等の必要性を把握するニーズが高まっている。
【0005】
また、電力の送電設備や鉄道のモータ等の高電圧機器では、安全の観点から人が簡単にはアクセスできないように構成されていることもあり、センサによる遠隔監視が必須となっている。
【0006】
ここで、センサを使って遠隔監視システムを構成する場合に課題となるのが、センサ電源の確保である。一般に、センサを使った監視システムの電源は、DC15VやDC24Vの汎用電源や、AC100Vの商用電源を使う場合が多い。しかし、先に述べた風力発電や鉄道用のモータ等は、機器の側に適切な電源が無い場合が多く、センサのためだけに電源を追加する必要が生じ、装置の大型化や製造コストの増加につながるという課題がある。
【0007】
そこで、新たに電源を設けることなくセンサに電力を供給する方法として、交流の電力ケーブルから簡便に電力を取り出す技術が開示されている。電力ケーブルから電力取り出す方法には大きく分けて2種類あり、1つ目は電磁誘導方式、2つ目は静電誘導方式である。例えば、特許文献1には1つ目の電磁誘導方式に関する技術が、また、特許文献2乃至4には静電誘導方式に関する技術、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-027659号公報
【特許文献2】国際公開第2009/072444号
【特許文献3】特開2003-284252号公報
【特許文献4】特開2013-172584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、電磁誘導により電力を取り出す方式について開示し、この方式によれば、電力ケーブルと絶縁を確保した状態で簡便かつ安全に電力を取り出せる。しかし、この方式では、電力ケーブルに流れる電流が少ない場合には誘起される磁界も小さくなり、取り出せる電力が少なくなるという問題がある。
【0010】
特許文献2乃至4は、静電誘導方式により電力を取り出す方式について開示し、この方式によれば、特許文献1に記載の方式における上記問題は発生しないが、一方で、以下に述べる別の問題がある。
【0011】
特許文献2に記載の方式では、同文献の
図5(a)に示されているように、電力を取り出すための配線の一端を直接電力線に接続する必要がある。この場合、鉄道用モータなどのAC600Vを超える高電圧機器の場合には、センサを高圧電線に直接接続することとなり、安全性確保、機器保護の観点から絶縁が必要となる。従って、電力ケーブルから簡便かつ安全に電力を取り出す目的を達成することが困難となる。
【0012】
特許文献3に記載の方式では、同文献の
図4に示されているように、電力ケーブルとアース電位との間に生じる浮遊容量の一部に負荷を並列に接続して電力を取り出す構成としている。しかし、この構成では、負荷と並列の浮遊容量のインピーダンスが高くないために十分な電力を取り出すことができない。
【0013】
特許文献4に記載の方式では、同文献の
図3に示すように、上記した特許文献3の課題に対して、電力取り出しのための浮遊容量に並列にインダクタンスを接続して、並列共振を引き起こすことによって浮遊容量の等価的なインピーダンスを増大させ、負荷に十分な電力を取り出す構成を採用している。しかし、一方でこの構成には以下の問題がある。
【0014】
(1)インダクタンス追加により装置が大型化、高コスト化する。
(2)並列共振の条件成立のためのインダクタンス値には制約があり、自由に選択できない。条件によっては、大きなインダクタンス値にしなければならず、更に装置が大型化、高コスト化する。
(3)長期間の装置の稼働により浮遊容量の値が変化した場合に、共振条件から外れ、電力取り出しの効率が低下する。
【0015】
本発明は、上記した課題を生じさせることなく、高電圧で大電流の電力線から低電圧の電力を取り出す手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した課題を解決するために、代表的な本発明に係る電力供給装置の一つは、電力変換器と交流負荷とを接続する交流配線の周囲を包囲する形状を有するシールドと、シールドからの配線が自らの入力端に接続される整流回路と、整流回路の出力端に接続される平滑コンデンサと、静電誘導によってシールドに発生する電力が充電される平滑コンデンサの電圧を入力電圧とする電圧変換回路とを備え、電圧変換回路からの出力電力を外部機器に供給するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電力ケーブルから絶縁された状態で、静電誘導方式により電力を取り出すため、安全かつ簡便にセンサ用の電源を確保することができる。また、浮遊容量と負荷を直列に接続する構成であるため、電力取り出しの効率を高められる。更に、静電誘導方式であるため、小電流においても効率良く電力を取り出すことが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に係る電力供給装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例2に係る電力供給装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施例3に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例4に係る電力供給装置の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例5に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施例6に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】実施例1の電力供給装置の等価回路を示す図である。
【
図9】本発明の実施例7に係る電力供給装置の構成の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例7に係る電力供給装置の構成の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態として、実施例1~7のそれぞれについて、図を参照しながら説明する。なお、これら実施例により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【実施例0020】
図1は、本発明の実施例1に係る電力供給装置の構成を示す図である。
図1において、モータ駆動用のインバータ(電力変換器)100から、モータ配線である電力ケーブル107を介して交流モータ101に電力が供給される。任意の一相の電力ケーブル107に設けたシールド106は、電力を取り出すための電力供給用として、整流ダイオード104のアノードに接続される。
【0021】
静電誘導によってシールド106に発生する電圧により、整流ダイオード104を介して平滑コンデンサ105に電流が流れ、平滑コンデンサ105を充電する。整流ダイオード104及び平滑コンデンサ105の接続態様としては、整流ダイオード104のカソードを平滑コンデンサ105の一方の端子に接続し、平滑コンデンサ105の他方の端子はアースに接続される。
【0022】
平滑コンデンサ105に蓄えられた電力は、DC-DCコンバータなどの電圧変換回路102に入力され、所望の電圧値に変換してセンサ103に供給され、センサ103を動作させる。
【0023】
実施例1として示す電力供給装置の特徴点は、電力を取り出すためのシールド106に接続した配線を、整流ダイオード104を介して電圧変換回路102及び平滑コンデンサ105に接続した点にある。
【0024】
ここで、従来技術との差異を、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、従来技術の等価回路を示す図である。
従来技術においては、電力ケーブル107とシールド106との間やシールド106とアースとの間に形成される浮遊容量108、701及び702の直列回路の中から一つの浮遊容量701に並列に負荷109を接続し、そこから電力を取り出す構成としている。
【0025】
この構成の場合には、電力ケーブル107の電位がプラス側に増加して行く際には浮遊容量701に充電電流が流れ、その一部が負荷109にも流れて電力が供給される。次に、電力ケーブル107の極性が反転し、電力ケーブル107の電位がマイナス側に減少して行く際には、浮遊容量701に充電された電荷は全て放電される。このため、電力ケーブル107から供給される電力の一部しか負荷109に取り出すことができず、効率が悪い。
【0026】
図8は、実施例1の電力供給装置の等価回路を示す図である。
実施例1の構成では、整流ダイオード104が平滑コンデンサ105と直列に挿入されているために、電力ケーブル107の極性がマイナスになり電位が減少して行く時にも、電荷を蓄積した平滑コンデンサ105の電荷は放電されることなく、取り出した電力を保持できる。次に、再び電力ケーブル107の電位が再びプラスになるまでの期間は、保持された電力により負荷109に電力を供給する。この構成によれば、電力ケーブルから不断に電力を効率的に供給することが可能となる。
【0027】
また、実施例1の構成では、電力取り出しのための配線を電力ケーブル107とは絶縁されたシールド106に接続するため、例えば特許文献2のように、高電圧が負荷に印加されることはなく、安全上望ましい構成となる。
【0028】
更に、実施例1の構成では、静電誘導により電力を取り出すために電力ケーブル107に流れる電流が少ない場合でも、例えば特許文献1とは異なり、必要な電力を取り出すことが可能となる。先に述べたとおり、電磁誘導方式では、電力ケーブル107に流れる電流が少ない場合には、このケーブルの周囲に発生する磁界も小さくなり、十分な電力を取り出すことができない。一方で、静電誘導方式では、電力ケーブル107の電位変動により電力を取り出すために、電流が少ない場合でも十分な電力を取り出せる。
【0029】
加えて、例えば特許文献4のように、並列共振現象を使っていないために、共振条件成立のための各主回路定数の制限もなく、また、経年劣化による共振点の変動に起因する電力供給効率の低下の懸念もなく、長期の信頼性を向上できる。
以上により、実施例2の構成では、実施例1の構成に比べて最大で3倍の電力を取り出すことが可能となる。その他の作用効果については、実施例1の場合と同じである。
また、実施例1は、単相の電力ケーブル107のみから、また、実施例2は、3相全ての電力ケーブル107から、電力を取り出す構成としたが、3相の内の任意の2相の電力ケーブル107から電力を取り出す構成を排除するものではない。この場合には、図示はしないが、3相の内の任意の2相の電力ケーブル107それぞれに対して、シールド106及び整流ダイオード104を設け、整流ダイオード104を共通して平滑コンデンサ105に接続する構成とする。