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特開2023-128812吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128812
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20230907BHJP
   B66C 23/52 20060101ALI20230907BHJP
   B63B 27/10 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B66C13/22 M
B66C23/52
B63B27/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033428
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】小川 普史
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204CA03
3F204EA03
3F205AA10
(57)【要約】
【課題】クレーン船の大きさや吊荷の重量等に限定されることなく、簡易な構成によりクレーン船に吊り下げられた吊荷の動揺を低減することを可能とする吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システムを提案する。
【解決手段】波の波高および周期を計測する波高計測工程と、波高および周期に基づいてクレーン船3の動揺量である船体動揺量を算定する船体動揺算定工程と、船体動揺量に基づいて杭2の動揺量である吊荷動揺量を算出する吊荷動揺算出工程と、クレーン31の先端と杭2の間においてクレーン3により吊下された重錘を吊荷動揺量に応じて上下移動させる動揺低減工程とを行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン船のクレーンにより吊下された吊荷の動揺を抑制する吊荷動揺抑制方法であって、
波の波高および周期を計測する波高計測工程と、
前記波高および前記周期に基づいて前記クレーン船の動揺量である船体動揺量を算定する船体動揺算定工程と、
前記船体動揺量に基づいて前記吊荷の動揺量である吊荷動揺量を算出する吊荷動揺算出工程と、
前記クレーンの先端と前記吊荷の間において、前記クレーンにより吊下された重錘を前記吊荷動揺量に応じて上下移動させる動揺低減工程と、を備えていることを特徴とする、吊荷動揺抑制方法。
【請求項2】
前記吊荷動揺算出工程では、前記船体動揺量と、前記クレーンのブームの仰角および前記ブームの水平角と、に基づいて前記吊荷動揺量を算出することを特徴とする、請求項1に記載の吊荷動揺抑制方法。
【請求項3】
前記船体動揺算定工程では、
前記クレーン船の上下方向の並進移動量と、前記クレーン船の船体長軸周りの回転量と、前記クレーン船の船体短軸回りの回転量と、に基づいて前記船体動揺量を算出することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の吊荷動揺抑制方法。
【請求項4】
前記重錘の質量および加速度と、前記吊荷動揺量および前記吊荷の質量に基づいて、前記吊荷動揺量に応じた前記重錘の移動による動揺低減力を算出することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吊荷動揺抑制方法。
【請求項5】
クレーン船のクレーンにより吊下された吊荷の動揺を抑制する吊荷動揺抑制システムであって、
前記クレーンの先端と前記吊荷との間に設けられた動揺低減装置と、
波の波高および周期を計測する波高計と、
前記波高および前記周期に基づいて前記吊荷の動揺量を算定する算出手段と、
前記動揺低減装置を制御する制御手段と、を備えており、
前記動揺低減装置は、上下に間隔をあけて設けられた一対の電磁石と、前記一対の電磁石の間において当該電磁石の磁力により上下動する重錘と、を有し、
前記制御手段は、前記動揺量に応じて、前記重錘が上下に移動するように前記電磁石を制御することを特徴とする、吊荷動揺抑制システム。
【請求項6】
前記吊荷を吊下する吊荷用ワイヤーは、前記動揺低減装置の中央に形成された貫通孔を非接触で貫通しており、
前記動揺低減装置は、装置用吊りワイヤーにより前記クレーンから吊り下げられていることを特徴とする、請求項5に記載の吊荷動揺抑制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン船の吊荷の動揺を抑制する吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン船を利用した荷物の積み下ろしでは、クレーン船の揺れによって吊荷が動揺し、所望の位置に荷物を下ろすことが困難になる場合がある。例えば、パイルグリッパーを用いて水底に杭を打ち込む場合には、クレーン船により吊り下げた杭をパイルグリッパーにセットする(建て込む)必要があるが、杭が動揺していると、杭の建込作業が困難になる。
そのため、例えば、特許文献1には、吊荷の動揺低減を目的として、水底に設置された係留用の反力材とクレーン船のクレーンとをワイヤーを介して連結することで、クレーン船の動揺を低減させる方法が開示されている。
また、特許文献2には、クレーンを介して吊荷を昇降させるウィンチの回転速度をクレーン船の動揺に応じて制御することで、吊荷の動揺を抑制する方法が開示されている。
ところが、モノパイルのような重量物の動揺を特許文献1の動揺低減方法により抑制するには、重量物に応じてクレーン船が大型となり、このクレーン船の動揺を抑制するための反力材も大規模になる。そのため、大規模な反力材の構築や設置に手間と費用がかかる。また、反力材による動揺低減方法は、クレーン船と反力材との位置関係で決まる特定方向の動揺のみを抑制することが可能なため、クレーンのブームの方向によっては、動揺低減効果が期待できないおそれがある。
また、特許文献2の動揺低減方法は、クレーン船の動揺量を予測してウィンチの回転速度を制御するものであるが、瞬時に動揺する際には、ウィンチの制御が間に合わないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-070025号公報
【特許文献2】特開2021-091529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、クレーン船の大きさや吊荷の重量等に限定されることなく、簡易な構成によりクレーン船に吊り下げられた吊荷の動揺を低減することを可能とする吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の吊荷動揺抑制方法は、波の波高および周期を計測する波高計測工程と、前記波高および前記周期に基づいて前記クレーン船の動揺量である船体動揺量を算定する船体動揺算定工程と、前記船体動揺量に基づいて前記吊荷の動揺量である吊荷動揺量を算出する吊荷動揺算出工程と、前記クレーンの先端と前記吊荷の間において前記クレーンにより吊下された重錘を前記吊荷動揺量に応じて上下移動させる動揺低減工程とを備えている。
また、本発明の吊荷動揺抑制システムは、前記クレーンの先端と前記吊荷との間に設けられた動揺低減装置と、波の波高および周期を計測する波高計と、前記波高および前記周期に基づいて前記吊荷の動揺量を算出する算出手段と、前記動揺低減装置を制御する制御手段とを備えている。前記動揺低減装置は、上下に間隔をあけて設けられた一対の電磁石と、前記一対の電磁石の間において当該電磁石の磁力により上下動する重錘とを有し、前記制御手段は、前記動揺量に応じて前記重錘が上下に移動するように前記電磁石を制御する。
かかる吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システムによれば、クレーン船に吊り下げられた重錘を上下動させることで、吊荷の動揺を低減できるため、大規模な設備を要しない。また、波の波高および周期により算出されるクレーン船の動揺量に基づいて、クレーンのブームの向きや高さから吊荷の動揺量を算出するため、吊荷の動揺に応じて重錘の上下動を制御することができ、その結果、効果的に吊荷の動揺を抑制できる。また、重錘の上下移動のみで吊荷の動揺を低減できるため、瞬時の動揺に対しても効果的である。このように吊荷の動揺を低減することで、クレーン船の稼働効率が向上し、工期短縮化および工事費の低減化を図ることができる。
【0006】
また、前記船体動揺算定工程では、前記クレーン船の上下方向の並進移動量と、前記クレーン船の船体長軸周りの回転量と、前記クレーン船の船体短軸回りの回転量とにより前記船体動揺量を算出すればよい。
なお、前記吊荷動揺算出工程では、前記船体動揺量と、前記クレーンのブームの仰角および前記ブームの水平角とに基づいて前記吊荷動揺量を算出すればよい。このようにしてクレーン先端位置に応じた吊荷動揺量を算出することで、より正確な吊荷動揺量の推定が可能となる。
さらに、前記吊荷動揺量に応じた前記重錘の移動による動揺低減力は、前記重錘の質量および加速度と、前記吊荷動揺量および前記吊荷の質量に基づいて算出すればよい。
前記動揺低減装置が、装置用吊りワイヤーにより前記クレーンから吊り下げられている場合には、前記吊荷を吊下する吊荷用ワイヤーは前記動揺低減装置の中央に形成された貫通孔を非接触で貫通しているのが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システムによれば、クレーン船の大きさや吊荷の重量等に限定されることなく、簡易な構成によりクレーン船に吊り下げられた吊荷の動揺を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る水上施設を示す正面図である。
図2】(a)および(b)は杭の建込状況を示す側面図である。
図3】吊荷動揺抑制システムの概要を示す模式図である。
図4】動揺低減装置の概要を示す図であって、(a)は側面図、(b)は拡大側面図である。
図5】波高計の例を示す概略図である。
図6】吊荷動揺抑制方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、洋上風力発電施設(水上施設)1の基礎構造を施工する場合について説明する。図1に本実施形態の水上施設を示す。図1に示すように、本実施形態の洋上風力発電施設1は、杭基礎13に風車11の支柱12が支持されたいわゆるモノパイル基礎からなる。
洋上風力発電施設(水上施設)1の基礎構造を構成する杭2の施工は、クレーン船3に設けられたパイルグリッパー33により保持した杭2を、水底(地盤G)に打設することにより行う。図2に杭2の建込状況を示す。杭2をパイルグリッパー33にセットする際には、クレーン船3のクレーン31により杭2を吊り下げた状態で行う。クレーン31から延設された吊荷用ワイヤー32により吊下した杭2は、図2(a)および(b)に示すように、波によるクレーン船3の動揺(図2では上下揺+縦揺)に連動して動揺する。杭2が動揺した状態だと、パイルグリッパー33へのセットが困難になるため、本実施形態では、吊荷動揺抑制システム4を利用した吊荷動揺抑制方法によりクレーン31に吊られた杭2の動揺を低減させて、杭2の打設作業の効率化を図る。図3に本実施形態の吊荷動揺抑制システム4の概要を示す。図3に示すように、吊荷動揺抑制システム4は、動揺低減装置5と、波高計6と、算出手段7と、制御手段8とを備えている。
【0010】
図4に動揺低減装置5を示す。動揺低減装置5は、図4(a)に示すように、クレーン31(ブーム)の先端と杭2(吊荷)との間に設けられている。図4(b)に示すように、動揺低減装置5は、上下に間隔をあけて設けられた一対の電磁石51,51と、一対の電磁石51,51の間において電磁石51の磁力により上下動する重錘52とを有している。本実施形態では、一対の電磁石51,51および重錘52が円筒状の容器50に収納されている。電磁石51は、容器50の上端部および下端部にそれぞれ固定されている。重錘52の外径は、容器50の内径よりも小さく、重錘52は容器50内において一対の電磁石51,51の間を上下に移動可能である。
動揺低減装置5は、杭2を吊下するための吊荷用ワイヤー32とは異なるワイヤーである装置用ワイヤー53によりクレーン31から吊り下げられている。また、動揺低減装置5の下端には、動揺低減装置5から杭2の吊り治具21に至る装置用ワイヤー53が取り付けられている。また、動揺低減装置5の中央には、吊荷用ワイヤー32を挿通可能な貫通孔54が形成されている。貫通孔54の内径は吊荷用ワイヤー32の外径よりも大きい。
なお、吊荷用ワイヤー32は、貫通孔54を非接触で貫通しているとともに、動揺低減装置5の下方において、杭2の上端に設けられた吊り治具21に係止されている。
【0011】
図5に波高計6の例を示す。図5に示すように、波高計6は、クレーン船3から離れた位置において、波の波高および周期を計測する。波高計6は、クレーン船3から離れた位置に設置されたブイ等に設けられている。波高計6の形式は限定されるものではなく、例えば、GPS波高計や超音波式波高計が使用可能である。波高計6の計測結果は、算出手段7に送信される。
【0012】
算出手段7は、杭2の動揺量(吊荷動揺量)を算定する。杭2の動揺量の算定は、波高計6から送信された波の波高および周期に基づいて算定する。算出手段7には、数値解析によってデータベース化された波高および周期に対する船体動揺量が保存されている。なお、波高の1/2が波の振幅となる。船体動揺量は、波高がゼロ(波の振幅がゼロ)のときの船体の位置(高さ)を基準(動揺量ゼロ)とする。算出手段7は、波高計6から送信されたデータに基づく船体動揺量をデータベースから抽出し、この船体動揺量と、ブームの向き(仰角・水平角)とを用いて吊荷動揺量を計算する。吊荷動揺量を算出したら、杭2の動揺低減に必要な力(動揺低減力)とそれを作用させるタイミング(作用時間)を算出する。動揺低減力は、重錘52の質量、重錘52の移動速度および加速度、および吊荷(杭2)の動揺量の関数により算出する。動揺低減力と作用時間を算出したら、計算結果(動揺低減力と作用時間)を制御手段8に送信する。
【0013】
制御手段8は、算出手段7から送信された動揺低減力と作用時間に基づいて、動揺低減装置5を制御する。制御手段8は重錘52が上下に移動するように、電磁石51の通電を制御する。電磁石51に磁力を発生させるべく、一端もしくは両端の電磁石51に電力を供給すると、重錘52が移動した瞬間に移動方向と逆方向に反力が生じ、移動方向の電磁石51側に重錘52が衝突することで衝撃力が発生する。このように発生させた動揺低減力を、装置用ワイヤー53を介して上下に作用させ、クレーン31により吊り下ろされた吊荷(杭2)の動揺を低減させる。
動揺低減力の作用時間については、次の通りである。杭2が下に動揺する際には、上の電磁石51側に重錘52を衝突させることで上向きの衝撃力と、一端もしくは両端の電磁石51に電力を供給して、杭2の動揺量に応じた加速度により重錘52を下に移動させることで上向きの反力を、それぞれ杭2に装置用ワイヤー53を介して作用させる。一方、杭2が上に動揺する際には、下の電磁石51側に重錘52を衝突させることで下向きの力と、一端もしくは両端の電磁石51に電力を供給して、杭2の動揺量に応じた加速度により重錘52を上に移動させることで下向きの反力を、それぞれクレーン31(ブーム)に装置用ワイヤー53を介して作用させる。
【0014】
吊荷動揺抑制システム4を利用した吊荷動揺抑制方法を示す。図6に吊荷動揺抑制方法の手順を示す。本実施形態の吊荷動揺抑制方法は、図6に示すように、波形計測工程S1と、船体動揺算定工程S2と、吊荷動揺算出工程S3と、動揺低減工程S4とを備えている。
波形計測工程S1は、波高計6により波の波高および周期を計測する工程である。波高計6による計測結果は、算出手段7に送信される。
【0015】
船体動揺算定工程S2は、波高および周期に基づいてクレーン船3の動揺量である船体動揺量を算定する工程である。本実施形態では、予め数値解析により波高Hおよび周期Tに対する応答振幅(RAO,RAO、RAO)を算出してデータベース化し、このデータベースに基づいて波高および周期に応じた船体動揺量を算定する。なお、船体動揺量は、クレーン船3の上下方向の並進移動量と、クレーン船3の船体長軸周りの回転量と、クレーン船3の船体短軸回りの回転量とについてそれぞれ算出する(式1~3)。
船体動揺量 dh=f(H,RAOh(T))=H×RAOh(T):上下方向の並進移動 (Heave) ・・・式1
dr=f(H,RAOr(T))=H×RAOr(T):船体長軸周りの回転 (Roll) ・・・式2
dp=f(H,RAOp(T))=H×RAOp(T):船体短軸周りの回転 (Pitch) ・・・式3
ここで、波の条件として、H:波高、T:周期とする。応答振幅(RAO,RAO、RAO)は、波高振幅1mに対する船体動揺量の振幅であり、波の周期Tの関数として表される。
【0016】
吊荷動揺算出工程S3は、船体動揺量に基づいて吊荷(杭2)の動揺量である吊荷動揺量を算出する工程である。吊荷動揺算出工程S3では、船体動揺量と、クレーン31のブームの仰角およびブームの水平角とに基づいて吊荷動揺量を算出する(式4)。
吊荷動揺量 δ = f(dh, dr, dp, φ, θ) 。・・・式4
ここで、クレーン31のブームの条件として、φ:ブーム仰角、θ:ブーム水平角とする。
【0017】
動揺低減工程S4では、杭2の動揺の低減化を行う。杭2の動揺の低減化は、重錘52をクレーン31の先端と杭2との間において吊荷動揺量に応じた加速度で上下移動させることにより行う。吊荷動揺量に応じた加速度で重錘52を上下に移動させることで、衝撃力と反力を発生させて杭2の動揺を低減する。杭2の上昇時には、重錘52を降下させて下の電磁石51側に重錘52を衝突させることで下向きの衝撃力が作用し、下の電磁石51から重錘52を上昇させることで下向きの反力が作用する。杭2の降下時には、上の電磁石51側に重錘52を衝突させることで上向きの衝撃力が作用し、上の電磁石51から重錘を降下させることで上向きの反力が作用する。このとき、電磁石51に通電させる電流量を調整することで、重錘52の加速度の大きさを調整する。動揺低減力は、重錘52の質量、重錘52の移動速度および加速度と、吊荷動揺量および吊荷の質量に基づいて算出する(式5)。
動揺低減力 衝撃力:Fim = m・vm・f(δ, M)/Δt
反力:Fre= m・αm・f(δ, M) ・・・式5
ここで、重錘の条件として、m:重錘の質量、v:重錘の移動速度、αm:重錘の移動加速度、Δt:重錘が静止するまでの時間、吊荷の条件として、M:杭の質量とする。
【0018】
本実施形態の吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システム4によれば、クレーン船3に吊り下げられた重錘52を上下動させることで、杭2の動揺の低減化を可能としているため、大規模な設備を要することなく、杭2の打設作業の効率化を図ることができる。
また、波の波高および周期により算出されるクレーン船3の動揺量に基づいて、杭2の動揺量を算出するため、杭2の動揺に応じて重錘52の上下動を制御することで、効果的に杭2の動揺を抑制できる。
また、重錘52の上下移動のみで杭2の動揺の低減化を可能としているため、瞬時の動揺に対して効果的に低減できる。このように杭2の動揺を低減することで、クレーン船3の稼働効率が向上し、工期短縮化および工事費の低減化を図ることができる。
また、クレーン先端位置に応じた吊荷動揺量を算出することで、より正確な吊荷動揺量の推定ができる。
動揺低減装置5は、吊荷用ワイヤー32を挿通させる構造のため、クレーン31や台船(クレーン船3)の構造を変更することなく設置可能である。そのため、簡易かつ安価に設置できる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、杭施工時の場合について説明したが、吊荷動揺抑制方法および吊荷動揺抑制システム4の用途は限定されるものではなく、例えば、一般海上工事におけるクレーン作業や、積み荷の上げ下ろし等、水上におけるあらゆる吊荷の動揺抑制に採用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 洋上風力発電施設(水上施設)
2 杭
3 クレーン船
31 クレーン
32 吊荷用ワイヤー
33 パイルグリッパー
4 吊荷動揺抑制システム
5 動揺低減装置
51 電磁石
52 重錘
53 装置用ワイヤー
54 貫通孔
6 波高計
7 算出手段
8 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6