(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128819
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】サツマイモ病原体検出用プライマーセット及びサツマイモ病原体の検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6888 20180101AFI20230907BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230907BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033440
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹下 稔
(72)【発明者】
【氏名】小倉 李来
(72)【発明者】
【氏名】白石 麗依奈
(72)【発明者】
【氏名】青山 実樹
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ07
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS16
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サツマイモ病原ウイルスの検出に使用できるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを提供する。
【解決手段】特定の配列からなる塩基配列及び別の特定の配列からなる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成される4種のプライマーセットから選択される少なくとも1種以上のサツマイモ病原体検出用プライマーセットである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)~(4)からなる群より選択される少なくとも1種以上のサツマイモ病原体検出用プライマーセット:
(1)配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(2)配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(3)配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;及び
(4)配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット。
【請求項2】
サツマイモ由来試料の核酸を鋳型とし、請求項1に記載のプライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のサツマイモ病原体を検出する方法。
【請求項3】
配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のつる割病菌(Fusarium oxysporum)の存在を検出する方法。
【請求項4】
配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中の乾腐病菌(Diaporthe batatas)の存在を検出する方法。
【請求項5】
配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中の基腐病菌(Diaporthe destruens)の存在を検出する方法;
【請求項6】
配列表の配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のウイルスSPLVCの存在を検出する方法。
【請求項7】
以下の(1)~(5)からなる群より選択される2種又は3種以上のプライマーセットを用いて、PCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のサツマイモ病原体の存在を検出する方法:
(1)配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(2)配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(3)配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(4)配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット;及び
(5)配列番号9に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号10に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット。
【請求項8】
請求項1に記載のいずれかのプライマーセットを含むサツマイモ病原体検出用キット。
【請求項9】
以下の(1)~(5)からなる群より選択されるプライマーセットのいずれか2種以上を含むサツマイモ病原体検出用キット:
(1)配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(2)配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(3)配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(4)配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット;及び
(5)配列番号9に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号10に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サツマイモ病原体検出用プライマーセット及びサツマイモ病原体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界には、多種多様な植物ウイルスや糸状菌などの病原体が存在しており、我が国における主要農作物の1つであるサツマイモ(Ipomoea batatas(L.Lam)にも甚大な被害を引き起こしている。
【0003】
これまでにサツマイモ斑紋モザイクウイルス(Sweet potato feathery mottle virus、(SPFMV))、サツマイモ潜在ウイルス(Sweet potato latent virus、(SPLV))、サツマイモシンプトムレスウイルス(Sweetpotato symptomless virus-1、(SPSMV-1))、サツマイモ葉巻ウイルス(Sweet potato leaf curl virus、(SPLCV))、Sweet potato virus G(SPVG)などが報告されている。さらに、諸外国では、これらの他に、Sweet potato chlorotic stunt virus (SPCSV)など多数の種類が報告されている(非特許文献1)。
【0004】
上記の他に、サツマイモに被害を及ぼす病原糸状菌として、基腐病菌(Diaporthe destruens)、乾腐病菌(Diaporthe batatas)、又はつる割病菌(Fusarium oxysporum)などがある。
【0005】
これまでは、サツマイモに感染する個々の糸状菌やウイルスをそれぞれ検出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】YAMASAKI、Sら、Jpn.J.Phytopathol.75:102‐108(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ウイルス種に感染しているサツマイモは、ほぼ他のウイルス種と重複感染していたり、糸状菌などの病原体にも同時に汚染されていたりする場合も多い。このような病原体を同時かつ高感度に検出することは、既存の方法では限度がある。
【0008】
本発明は、高精度でかつ迅速に、複数のサツマイモ病原ウイルス及び病原菌を同時に検出できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、サツマイモウイルスに共通する遺伝子情報、及び基腐病菌、乾腐病菌、及びつる割病菌等の共通遺伝子領域に着目し、プライマーを複数検討し、その中から、網羅的な検出率と特異性を比較して好適なプライマーセットを選抜し、さらに網羅的検出と特異性を向上させるための改良を行った。なお、ウイルスや糸状菌などの病原体を選択する際には、日本を中心とした中国、韓国などの近隣アジア諸国に加えて、北南米、アフリカ諸国由来の分離株も評価対象に加えた。この結果、複数種の病原体を効率的に正しく検出することのできるプライマーセットを確立すること、及び同種系統のウイルスや糸状菌の把握が可能なプライマーセットを確立することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを提供する。
項1.以下の(1)~(4)からなる群より選択される少なくとも1種以上のサツマイモ病原体検出用プライマーセット:
(1)配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(2)配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(3)配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;及び
(4)配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット。
【0011】
本発明はまた、
項2.
サツマイモ由来試料の核酸を鋳型とし、項1に記載のプライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のサツマイモ病原体を検出する方法;
項3.
配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のつる割病菌(Fusarium oxysporum)の存在を検出する方法;
項4.
配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中の乾腐病菌(Diaporthe batatas)の存在を検出する方法;
項5.
配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中の基腐病菌(Diaporthe destruens)の存在を検出する方法;
項6.
配列表の配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のウイルスSPLCVの存在を検出する方法;
に関する。
項7.
以下の(1)~(5)からなる群より選択される2種又は3種以上のプライマーセットを用いて、PCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のサツマイモ病原体の存在を検出する方法:
(1)配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(2)配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(3)配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(4)配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット;及び
(5)配列番号9に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号10に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット。
【0012】
本発明はまた、項1に記載のプライマーセットを含むサツマイモ病原体検出用キットに関する。
本発明はまた、以下の(1)~(5)からなる群より選択されるプライマーセットのいずれか2種以上を含むサツマイモ病原体検出用キット:
(1)配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(2)配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(3)配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原菌検出用プライマーセット;
(4)配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット;及び
(5)配列番号9に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号10に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドで構成されるサツマイモ病原ウイルス検出用プライマーセット
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプライマーセットによれば、サツマイモ病原ウイルスや糸状菌などの病原体の複数種を同時に検知することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例のプライマーセットを用いた場合のサツマイモ病原菌の遺伝子のPCR増幅産物の電気泳動図を示す。
【
図2】実施例のプライマーセットを単独で用いた場合のサツマイモ病原体の遺伝子のPCR増幅産物の電気泳動図を示す。
【
図3】実施例のプライマーセットを複数組み合わせて用いた場合のサツマイモ病原体の遺伝子のPCR増幅産物の電気泳動図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[サツマイモ病原体検出用プライマーセット]
本発明のプライマーセットは、サツマイモ病原体遺伝子を効率よく増幅することのできるオリゴヌクレオチドの対から構成されるプライマーセットであって、サツマイモ病原ウイルス及び/又はサツマイモ病原糸状菌の検出を行うことができる。
【0016】
本発明のサツマイモ病原体検出用プライマーセットを構成するそれぞれのプライマーは、オリゴヌクレオチドであり、フォワードプライマーとリバースプライマーとして設計された20~25塩基の連続したヌクレオチオドである。
【0017】
プライマーの設計にあたり、サツマイモに感染する糸状菌及びウイルス遺伝子配列情報を糸状菌種別及びウイルス種別に入手した。塩基配列情報は、刊行物から得ることもできる。本発明者らは、最も登録データ数が多い糸状菌のリボソームDNA(rDNA)、ヒストンH3(Histone H3)遺伝子、及び翻訳促進因子-1α(TEF-1α)遺伝子、ウイルスの外被タンパク質(CP)遺伝子、及び複製関連タンパク質遺伝子等を利用した。その後、糸状菌別、ウイルス種別に両遺伝子領域の核酸配列の比較表を作成した。この時、農産物輸出入の現状を踏まえ、日本を中心とした中国、韓国などの近隣アジア諸国での病原体に加えて、北南米、アフリカ諸国由来の病原体も比較対象とした。塩基配列のアラインメントには、アラインメントソフト(例えば、GENETYX ver.14)を利用することができる。
【0018】
特定した塩基配列に基づき、プライマーを設計した。プライマーの設計にあたっては、従来の縮重プライマーで、同種内の複数系統間の塩基置換に十分な対応ができなかった点を踏まえ、従来の欠点を除くように、オリゴヌクレオチド間の相補性を考慮した。
【0019】
具体的には、特に、つる割病菌(Fusarium oxysporum)、乾腐病菌(Diaporthe batatas)、基腐病菌(Diaporthe destruens)、SPFMV、SPLCV、及びSPVGに着目して、塩基置換対応型の縮重プライマーを作成する点に留意した。
【0020】
このような着目点に基づき、本発明のサツマイモ病原体検出用プライマーセットとして次のプライマーセットを作成することができた。
(プライマーセット:つる割病菌(Fusarium oxysporum)の検出用)フォワード:5’-GGTTGTGGGATTTTTGATGTGTCGTC-3’(配列表の配列番号1)リバース:5’-ATCTCGTCCAAATCGCAACCTG-3’(配列表の配列番号2)
【0021】
(プライマーセット:乾腐病菌(Diaporthe batatas)の検出用)フォワード:5’-CTGGTATGTTTGCTTCCACCAACCCAC-3’(配列表の配列番号3)リバース:5’-CTTCTGTGGGGTTGTTAGTGAATGTTC-3’(配列表の配列番号4)
【0022】
(プライマーセット:基腐病菌(Diaporthe destruens)の検出用)フォワード:5’-CTCTACGTCCCTACATATGCCCAC-3’(配列表の配列番号5)リバース:5’-GATAAGCGGGCTGATAAGCGCAC-3’(配列表の配列番号6)
【0023】
(プライマーセット:SPLCVの検出用)フォワード:5’-CTCTCCTGGATTGCAGARGAAGAYWGTG-3’(配列表の配列番号7)リバース:5’-AGAYCTGCTAGAGGAGGYCAGCAG-3’(配列表の配列番号8)
【0024】
(プライマーセット:SPFMV、SPVGの検出用)フォワード:5’-DTGGTGYATHGARAATGGMACATC-3’(配列表の配列番号9)リバース:5’-TGCACACCCCTCATWCCYAAGAG-3’(配列表の配列番号10)
【0025】
ここで、配列表の配列番号1~10に示される塩基配列中、BはC、G、又はTのいずれかを示し;Dは、A、G又はTのいずれかを示し;Kは、G又はTのいずれかを示し;Mは、A又はCのいずれかを示し;Rは、A又はGのいずれかを示し;Vは、A、C、又はGのいずれかを示し;Wは、A又はTのいずれかを示し;Yは、C又はTのいずれかを示し;Sは、C又はGのいずれかを示す。(配列表ではすべて小文字で示される。)
【0026】
配列表の配列番号1~10に示す配列のGC含量、Tm値はそれぞれ、以下の通りである。
配列番号1:GC含量46%、 Tm値60
配列番号2:GC含量50%、 Tm値59
配列番号3:GC含量52%、 Tm値64
配列番号4:GC含量44%、 Tm値60
配列番号5:GC含量54%、 Tm値60
配列番号6:GC含量57%、 Tm値62
配列番号7:GC含量50%、 Tm値62
配列番号8:GC含量58%、 Tm値63
配列番号9:GC含量42%、 Tm値59
配列番号10:GC含量52%、 Tm値60
【0027】
上記プライマーセット5種は、それぞれで使用することで、所望のサツマイモ病原体である、つる割病菌(Fusarium oxysporum)、乾腐病菌(Diaporthe batatas)、基腐病菌(Diaporthe destruens)、又はウイルスを検出することができる。さらには、2種以上を混合して、マルチプレックスPCR法に利用することで、SPFMV、SPVG、SPLCV、つる割病菌、基腐病菌、及び乾腐病菌という病原体を、複数の組み合わせで同時かつ特異的に検出することも可能となる。
【0028】
具体的には、上記プライマーセットを構成する各フォワードプライマー及びリバースプライマーは、その塩基配列のB、D、K、M、R、V、W、Y、Sの位置にそれぞれ指定された2種または3種の塩基を同時に含んでいる縮重プライマーであり、縮重プライマー中の各プライマーの割合はいかなる割合でもよいが、等当量ずつであることが好ましい。
【0029】
上記プライマーセットの各プライマーは、当業者に公知のオリゴヌクレオチドの合成法で作成することができる。例えば、DNA自動合成装置(Applied Biosystems社製Model 394など)を利用して合成することも可能である。
【0030】
本発明のプライマーセットを用いて試料中のサツマイモ病原体を検出する方法は、サツマイモ試料からRNAを抽出し、逆転写反応により合成したcDNAを鋳型とし、上記プライマーセットのいずれか又は2種以上又はそれらのすべてを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、遺伝子を増幅させる工程と、該PCRにより得られた増幅断片を解析する工程を含む。
【0031】
サツマイモ試料としては、葉、茎、塊根、などのサツマイモの植物体のいずれの部位から調製しても良い。サツマイモ試料が、葉の場合、例えば、コルクポーラーでくり抜き、1個体から数10mg(例えば50mg程度)をサンプリングすることができる。この時、サンプリング部位は、葉脈間の葉肉部分で、斑点や葉巻などの症状を呈する部分がある場合には、そのような部位を選ぶことが好ましい。サツマイモ試料が、塊根の場合、カッターの刃などを使用し、表皮のみを数10mg(例えば50mg程度)切取って調製することができる。
【0032】
本発明のプライマーセットを用いたサツマイモ病原体の検出は、DNAウイルス及びRNAウイルスの両方をターゲットとすることもできる。そのため核酸抽出は、DNA及びRNAを同時に抽出しても良く、このような場合には、標準プロトコールを改変することで、DNA及びRNAの同時抽出を行う。
【0033】
サツマイモ試料の調製後、核酸を抽出する。核酸の抽出は、当業者に公知の方法で行うことができる他、植物組織からRNAを抽出・精製するための市販のキットを使用することもできる。試料からRNAを抽出し、RNAを鋳型としてcDNAを合成する方法を採用することもできる。核酸の抽出には、限定はされないが、例えばISOSPIN Plant RNA(NIPPON GENE社製)のようなキットを使用することもできる。あるいは、まず、イソチオシアネート、フェノール及びクロロホルムを用いたRNA抽出法又は、市販のRNA抽出試薬(例えば、TRIZOL Reagentキット(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製、15596-018))を用いて、抽出し、その後、RNAを鋳型としてcDNAを合成する。ここで、プライマーとしては市販のランダムプライマーを用い、dNTPsの存在下で、逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。逆転写酵素としては、例えば、SuperScriptII(Invitrogen社製)、Thermoscript RT、AMV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素、等を用いることができる。
【0034】
次に、合成したcDNAを鋳型として、本発明のプライマーセットの1種又は2種以上を用いて、PCR増幅反応を行う。PCR増幅は本発明のプライマーセット又はそれらの組み合わせのいずれか又はすべてを用いることができる。それ以外の点については、常法に従って行うことができる。PCRは、PCR法またはリアルタイムPCR法(qPCR)である。PCRでは、具体的には、鋳型DNAの変性、プライマーのアニーリング、及び耐熱性酵素を用いたプライマーの伸長反応を含むサイクルを繰り返すことにより、各外被タンパク質遺伝子領域の塩基配列を含む断片を増幅させる。PCR反応液の組成、PCR反応条件は、当業者に公知の物を適切に選択及び設定することができる。プライマーのTmに基づいて最適なPCR反応条件を選択する方法は、知られている。
【0035】
PCR法の核酸増幅工程で使用されるDNAポリメラーゼは特に限定されるものではないが、例えば、KOD DNA ポリメラーゼ、Pfu DNA ポリメラーゼ等のα型DNAポリメラーゼ;Taq DNA ポリメラーゼ、Tth DNA ポリメラーゼ等のPol I型DNAポリメラーゼ等を用いることができる。特に限定はされないが、市販の、KOD DNA ポリメラーゼ(東洋紡製)、Pfu DNA ポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いることもできる。
【0036】
PCRの一連の操作は、市販のPCRキットやPCR装置を利用して、その操作説明書に従って行うこともできる。例えば、PCRの反応液はSYBR Green Real-Time PCR Master Mixes(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製、#A25742)を用い、PCR装置は7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems社製)を用いることもできる。
【0037】
PCR反応は、鋳型の熱変性、プライマーのアニーリング、及び伸長反応を1サイクルとして、複数サイクル行うことで実施できる。通常の当業者に公知の条件のいずれを使用することもでき、限定はされないが、例えば、最初に90℃~96℃で20秒~1分の熱変性、次いで、50℃~58℃程度の温度範囲で20秒~1分程度のアニーリング、70℃~73℃で20秒~1分程度の伸長反応を1サイクルとして、30~40サイクル程度を行うことが好ましい。特に、アニーリングの温度は、54℃~60℃程度がより好ましく、56℃~58℃程度がさらに好ましい。アニーリング温度を相対的に高く設定することで、非特異的増幅のリスクをより低くすることができる。
【0038】
また、PCRによって得られた増幅産物の検出は、特に限定されず、アガロースゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、RFLP法、インターカレーターを用いて増幅産物を検出する方法、増幅された産物の塩基配列に特異的に結合する核酸プローブを用いて増幅産物を検出する方法が挙げられる。より好ましくは核酸プローブを用いて増幅産物を検出する方法であり、当該核酸プローブとして、例えばTaqMqnプローブや消光プローブ(Quenching Probe;QProbe)、MolecularBeaconが挙げられる。増幅及び検出におけるその他の条件は公知の核酸増幅及び核酸検出技術を考慮して適宜選択することができる。
【0039】
[サツマイモ病原体を検出する方法]
本発明はまた、本発明のプライマーセットの1種または複数種を用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析して、試料中のサツマイモ病原体を検出する方法に関する。
【0040】
本発明においては、配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析することで、試料中のサツマイモ病原体つる割病菌を特異的に検出することができる。
【0041】
本発明においては、配列表の配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析することで、試料中のサツマイモ病原体乾腐病菌を特異的に識別することができる。
【0042】
本発明においては、配列表の配列番号5に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析することで、試料中のサツマイモ病原体基腐病菌を特異的に識別することができる。
【0043】
本発明においては、配列表の配列番号7に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号8に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析することで、試料中のサツマイモ病原ウイルスであるSPLCVを特異的に識別することができる。
【0044】
本発明においては、配列表の配列番号9に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号10に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとから構成されるサツマイモ病原体検出用プライマーセットを用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析することで、試料中のサツマイモ病原ウイルスSPFMV及びSPVGを網羅的に検出することができる。
【0045】
本発明においては、配列番号1、2、3、4、5、及び6に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをサツマイモ病原体検出用プライマーとして用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析することで、試料中のサツマイモ病原体であるつる割病菌、乾腐病菌、及び基腐病菌の存在を一括かつ同時あるいは区別して検出することができる。
【0046】
本発明においては、配列番号3、4、5、6、7、8、9、及び10に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをサツマイモ病原体検出用プライマーとして用いてPCRを行い、該PCRにより得られた増幅断片を解析することで、試料中のサツマイモ病原体である乾腐病菌、基腐病菌、SPLCV、及びSPFMVの存在を一括かつ同時あるいは区別して検出することができる。
【0047】
本発明のこれらのプライマーセットは、マルチプレックスRT-PCRに使用することも可能である。本発明のプライマーセットを用いて、マルチプレックスRT-PCR(リバーストランスクリプターゼPCR)を行うことで、病原体を直接識別することもでき、省力かつ迅速に検定することも可能となる。
【0048】
つる割病菌、乾腐病菌、及び基腐病菌を同時に検出する場合には、例えば、モル濃度比で、配列番号1及び2を1とした場合に、配列番号3及び4を2~8倍程度とし、配列番号5及び6を3~12倍程度として用いることが望ましい。
【0049】
乾腐病菌、基腐病菌、SPLCV、及びSPFMVを同時に検出する場合には、例えば、モル濃度比で、配列番号3及び4を1とした場合に、配列番号5及び6を0.2~1倍程度とし、配列番号7及び8を1.5~5倍程度とし、配列番号9及び10を1.5~5倍程度として用いることが望ましい。
【0050】
限定はされないが、本発明において、これらのオリゴヌクレオチドは、それぞれ、好ましくは、0.1μM~50μM、より好ましくは、0.3μM~15μMの範囲、さらに好ましくは、0.5~10μMの範囲で用いられ得る。
【0051】
限定されない1つの例としては、つる割病菌、乾腐病菌、及び基腐病菌を同時に検出する場合に、モル濃度で、配列番号1及び2を0.5μM、配列番号3及び4を3μM、配列番号5及び6を5μMとして用いることが望ましい。
【0052】
限定されない1つの例としては、乾腐病菌、基腐病菌、SPLCV、及びSPFMVを同時に検出する場合に、モル濃度で、配列番号3及び4を2μM、配列番号5及び6を1μM、配列番号7及び8を5μM、配列番号9及び10を5μMとして用いることが望ましい。
【0053】
[キット]
本発明のプライマーセットは、キット化することができる。本発明のキットは、[サツマイモ病原体検出用プライマーセット]の項で述べたプライマーセットのうち、少なくとも1つ又は2つ以上を含み、検出すべき対象ウイルスによって、適宜変更することができる。さらに、任意に、核酸増幅の検出を行う際に必要な各種の試薬類を一緒に含ませることもできる。具体的には、本発明のプライマー、核酸合成の基質となる4種類のdNTP、鋳型依存性核酸合成酵素、緩衝液や塩類、又は指示書をキット化して提供することもできる。このようなキットは、例えば、サツマイモの苗が病原体に感染しているか否かを検定するのに好都合に使用することができる。
【実施例0054】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例において、各配列番号でしめされるすべての縮重プライマーにおいて、同一配列番号内での各プライマーの割合は、等当量ずつであった。
【0055】
(実施例1)プライマーセットの設計
NCBIサイトにて、糸状菌遺伝子のヌクレオチド配列の情報を収集した。それらのヌクレオチド配列について、GENETYX ver.14を使用して、マルチプルアライメントを作成した。この比較によれば、リボソームDNA(rDNA)、ヒストンH3(Histone H3)遺伝子、及び翻訳促進因子-1α(TEF-1α)遺伝子領域の配列が保存されていた。従って、この保存性は異なる菌種を同時に検出することに利用できると考えた。特に、リボソームDNA(rDNA)、ヒストンH3(Histone H3)遺伝子、及び翻訳促進因子-1α(TEF-1α)遺伝子に相補的であるフォワードプライマー、及びリバースプライマーを、候補プライマーとして複数設計した。
【0056】
サツマイモ試料としては、葉と塊根を用いた。サツマイモ試料が、葉の場合、コルクポーラーでくり抜き、1個体から50mgをサンプリングした。サンプリング部位は、葉脈間の葉肉部分で、斑点や葉巻などの症状を呈する部分とした。サツマイモ試料が、塊根の場合、カッターの刃を使用し、表皮のみを50mg切取って調製した。
【0057】
菌株からの核酸抽出、RT-PCR増幅の手法及び条件は、以下の手順で行った。
【0058】
核酸抽出は、ISOSPIN PLANT RNA kit(NIPPON GENE)あるいはDNeasy Plant Mini kit(QIAGEN)を用いた。ここで、プライマーセットは、各病原菌の遺伝子をターゲットとして、DNAもしくはDNA及びRNA両核酸を抽出することとした。
【0059】
PCR増幅は、PrimeTaq(Genetbio)を用いて行った。PCR反応液組成及び条件は下記のとおりである。反応後、PCR増幅産物3μlを2.0%アガロースゲル電気泳動にて解析した。
【0060】
(PCR反応液組成:1反応つき10μl)核酸 1μl各プライマー 1.0μl (各5pmol)PrimeTaq DNA Polymerase 2μl10mM dNTPs Mixture 1μl10× Reaction Buffer 5μlRNase Free dH2O up to 50μl
【0061】
(PCR条件)
PCR反応は、95℃で5分の熱変性を1サイクル、次いで95℃で30秒の熱変性、60℃で30秒のアニーリング、72℃で20秒の伸長を1サイクルとして計35サイクル、その後、72℃で5分の最終伸長反応を行った。
【0062】
PCR解析結果から、下記表1に示す配列(各欄の上の配列はフォワードプライマー、下の配列はリバースプライマー)を有するプライマーセットを最終的に決定し、それらのプライマーセットから構成されるプライマーセットを設定した。
【0063】
【0064】
(実施例2)プライマーセットの設計
NCBIサイトにて、ウイルス遺伝子のヌクレオチド配列の情報を収集した(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/)。それらのヌクレオチド配列について、GENETYX ver.14を使用して、マルチプルアライメントを作成した。この比較によれば、外被タンパク質遺伝子及び複製関連タンパク質遺伝子領域の配列が保存されていた。従って、この保存性は異なる株を同時に検出することに利用できると考えた。特に、SPFMV、SPVG、及びSPLCVのウイルスに着目し、外被タンパク質遺伝子領域の一部及び複製関連タンパク質遺伝子に相補的であるフォワードプライマー、及びリバースプライマーを、候補プライマーとして複数設計した。
【0065】
これまでに既知のサツマイモ病原ウイルスSPFMV-S株、SPFMV-O株、SPFMV-Bungo株について、上記で設計した複数の候補プライマーを用いてウイルスの存在を検出し、プライマーを一次選抜した。さらに、標的とする3種ウイルスへの混合感染株を用いてさらにプライマーを改良した。
【0066】
上記サツマイモ病原ウイルス株は、日本SPFMV-S株、日本SPFMV-O株、日本SPFMV-Bungo株で構成されていた。
【0067】
サツマイモ試料としては、葉と塊根を用いた。サツマイモ試料が、葉の場合、コルクボーラーでくり抜き、1個体から50mgをサンプリングした。サンプリング部位は、葉脈間の葉肉部分で、斑点や葉巻などの症状を呈する部分とした。サツマイモ試料が、塊根の場合、カッターの刃を使用し、表皮のみを50mg切取って調製した。
【0068】
ウイルス株からの核酸抽出、RT-PCR増幅の手法及び条件は、以下の手順で行った。
【0069】
ウイルス株からの核酸抽出は、ISOSPIN Plant RNA(NIPPON GENE)を用いた。ここで、プライマーセットはDNAウイルス及びRNAウイルスの両方をターゲットとして、両核酸を抽出することとした。そこで、標準プロトコールのPT Wash 1 BufferとDNase I 溶液による処理を省くことで、両核酸の同時抽出を行った。サンプルの破砕には、Micro SmashTM MS-100R(トミー精工)を用い、4200rpmで160秒、ステンレスビーズφ4.8を1サンプルにつき1個用いた条件下で実施した。
【0070】
逆転写反応及びPCR増幅は、PrimeScriptTMII HighFidelityOne Step RT-PCR Kit (Takara、 Japan)を用いて行った。PCR反応液組成及び条件は下記のとおりである。反応後、PCR増幅産物3μlを2.0%アガロースゲル電気泳動にて解析した。
【0071】
(1-Step RT-PCR反応液組成:1反応つき10μl)核酸 1μl各プライマー 0.2μl PrimeScriptTMII RT Enzyme Mix 1μlPrimeSTAR GXL for 1Step RT-PCR 4.0μl2×1 step High Fidelity Buffer 25μlRNase Free dH2O up to 50μl。
【0072】
(1-tep RT-PCR条件)
cDNA合成は、45℃で10分、98℃で2分間インキュベートし、続くPCR反応は、98℃で10秒の熱変性、56℃で10秒のアニーリング、68℃で10秒の伸長を1サイクルとして計40サイクルを行った。
【0073】
PCR解析結果から、下記表2に示す配列(各欄の上の配列はフォワードプライマー、下の配列はリバースプライマー)を有するプライマーセットを決定し、それらのプライマーセットから構成されるプライマーセットを設定した。
【0074】
【0075】
(実施例3)プライマーセットによるサツマイモ病原菌の検出
実施例1で確立したプライマーセットによるサツマイモ病原菌の検出を、サツマイモ病原菌つる割病菌、乾腐病菌、及び基腐病菌を用いて調べた。菌株の核酸の抽出は、実施例1と同様である。PCR反応液組成及び条件は以下のとおりである。
【0076】
プライマーは、以下の表3に示す量(pmol/μL)を反応液10μLあたり1.0μL使用した。さらに、マルチプレックスPCRを試みた。
【表3】
【0077】
鋳型核酸濃度
レーン1(Fusarium oxysporum):5.3(ng/μl)
レーン2(Diaporthe batatas):3.2(ng/μl)
レーン3(Diaporthe destruens):2.7(ng/μl)
レーン4~7(全菌種のMix):80.4(ng/μl)
【0078】
PCR反応は、95℃で5分の熱変性を1サイクル、次いで95℃で30秒の熱変性、60℃で30秒のアニーリング、72℃で20秒の伸長を1サイクルとして計35サイクル、その後、72℃で5分の最終伸長反応を行った。
【0079】
アガロースゲルで電気泳動を行い、PCR増幅産物を検証した。
その結果を
図1に示す。
なお、図中、レーンは下記の通りである。
M:DNAマーカー
1:つる割病菌用の配列番号1及び2のプライマーを使用
2:乾腐病菌用の配列番号3及び4のプライマーを使用
3:基腐病菌用の配列番号5及び6のプライマーを使用
4:配列番号1、2、5、及び6のプライマーを使用
5:配列番号1、2、3、及び4のプライマーを使用
6:配列番号3、4、5、及び6のプライマーを使用
7:配列番号1~6のすべてのプライマーを使用。
【0080】
いずれも検証できるレベルではあり、単独のプライマーセットを使用した場合のみならず、複数のプライマーセットを同時に使用する条件下で、2種又は3種の病原菌を明確に判定することができ、良好な結果を示した。
【0081】
(実施例4)プライマーセットによる、サツマイモ病原体の検出
実施例1及び2で確立したプライマーセットによるサツマイモ病原体の検出を、行った。菌株の核酸の抽出は、実施例1と同様である。PCR反応液組成及び条件は以下のとおりである。
【0082】
プライマーは、以下の表4及び表5に示す量(pmol/μL)を反応液10μLあたり0.2μL使用した。さらに、マルチプレックスPCRを試みた。
【0083】
【0084】
【0085】
鋳型核酸濃度
図2レーン1(SPLCV):226.0(ng/μl)
図2レーン2(SPFMV-O):595.0(ng/μl)
図2レーン3(Diaporthe batatas):33.9(ng/μl)
図2レーン4(Diaporthe destruens):30.8(ng/μl)
図3レーン1~4(4種病原体のMix):179.3(ng/μl)
【0086】
PCR反応は、cDNA合成は、45℃で10分、94℃で2分間インキュベートし、続くPCR反応は、98℃で10秒の熱変性、56℃で15秒のアニーリング、68℃で10秒の伸長を1サイクルとして計40サイクルを行った。
【0087】
アガロースゲルで電気泳動を行い、PCR増幅産物を検証した。
表4のプライマーを用いた結果を
図2に、表5のプライマーを用いた結果を
図3に示す。
なお、図中、レーンは下記の通りである。
【0088】
図2
M:DNAマーカー
1:SPLCV用の配列番号7及び8のプライマーを使用
2:SPFMV及びSPVG用の配列番号9及び10のプライマーを使用
3:乾腐病菌用の配列番号3及び4のプライマーを使用
4:基腐病菌用の配列番号5及び6のプライマーを使用
【0089】
図3
M:DNAマーカー
1、2、3、4:配列番号3~10のすべてのプライマーを使用
(ただし、濃度違い)
【0090】
いずれも検証できるレベルであり、単独のプライマーセットを使用した場合のみならず、複数のプライマーセットを同時に使用する条件下で、4種の病原体を明確に判定することができ、良好な結果を示した。