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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128822
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】現金輸送システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0832 20230101AFI20230907BHJP
   G07D 11/245 20190101ALI20230907BHJP
   G06Q 40/02 20230101ALI20230907BHJP
【FI】
G06Q10/08 304
G07D11/245
G06Q40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033449
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】カスワン マダンモハン
(72)【発明者】
【氏名】橋谷 侑希
(72)【発明者】
【氏名】趙 亞男
(72)【発明者】
【氏名】シャーップ デービッド
【テーマコード(参考)】
3E141
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA06
3E141CA04
3E141CA05
3E141CA16
3E141CB04
5L049AA16
5L055BB01
(57)【要約】
【課題】複数国の現金を輸送する現金輸送時に対応する。
【解決手段】現金輸送システムを、店舗に設置され、複数通貨の現金を処理する1又は複数の現金処理装置と、現金処理装置に現金を補充するための店舗への現金輸送の要否、及び現金処理装置から現金を回収するための店舗からの現金輸送の要否を判定する管理装置とを備え、管理装置は、現金輸送が必要であると判定した場合に、複数通貨の中から予め選択された1つの通貨に基づいて、輸送する各通貨の現金の金額を、選択された通貨の金額に換算して合計した輸送金額を算出し、輸送金額が、予め設定された上限金額を超える場合は、所定の通信端末に通知するよう構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗に設置され、複数通貨の現金を処理する1又は複数の現金処理装置と、
前記現金処理装置に現金を補充するための前記店舗への現金輸送の要否、及び前記現金処理装置から現金を回収するための前記店舗からの現金輸送の要否を判定する管理装置と
を備え、
前記管理装置は、
前記現金輸送が必要であると判定した場合に、前記複数通貨の中から予め選択された1つの通貨に基づいて、輸送する各通貨の現金の金額を、選択された通貨の金額に換算して合計した輸送金額を算出し、
前記輸送金額が、予め設定された上限金額を超える場合は、所定の通信端末に通知する
ことを特徴とする現金輸送システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記輸送金額が前記上限金額を超えない場合は、前記現金輸送を依頼する通知を、前記現金輸送を行う現金輸送会社に送信することを特徴とする請求項1に記載の現金輸送システム。
【請求項3】
複数の店舗を経由して各店舗を対象とする現金輸送が行われる場合、
前記管理装置は、
各店舗を対象とする現金輸送で輸送される現金の金額を、前記選択された通貨の金額に換算して合計した輸送金額を算出し、
前記輸送金額が前記上限金額を超える場合は、所定の通信端末に通知する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の現金輸送システム。
【請求項4】
前記輸送金額が前記上限金額を超える場合、
前記管理装置は、
前記現金輸送が現金処理装置から回収する現金の輸送であれば、前記現金処理装置内の各通貨各金種の現金の収納量を比較して、収納量が少ない金種の現金から順に輸送対象から除外することにより、前記輸送金額を前記上限金額以下に調整して、
前記現金輸送が現金処理装置に補充する現金の輸送であれば、前記現金処理装置内の各通貨各金種の現金の収納量を比較して、収納量が多い金種の現金から順に輸送対象から除外することにより、前記輸送金額を前記上限金額以下に調整する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の現金輸送システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記輸送金額が前記上限金額を超える場合、前記選択された通貨以外の現金の少なくとも一部を輸送対象から除外することにより、前記輸送金額を前記上限金額以下に調整することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の現金輸送システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記輸送金額が前記上限金額に満たない場合は、輸送する現金の合計金額が前記上限金額を超えない範囲で、前記現金輸送で輸送する現金を追加することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の現金輸送システム。
【請求項7】
前記現金輸送が現金処理装置から回収する現金の輸送である場合、
前記管理装置は、回収対象の現金の種類及び種類別の数量を前記現金処理装置に通知して、
前記現金処理装置は、装置内の収納部に収納されている現金のうち前記回収対象の現金を前記収納部から回収容器に移動する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の現金輸送システム。
【請求項8】
前記管理装置は、店舗と金融機関との間で輸送される現金の金額を、前記金融機関の口座処理を実行する外部装置に通知して、
前記外部装置は、前記管理装置から通知された情報に基づいて口座処理を実行する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の現金輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数種類の通貨の現金輸送に対応可能な現金輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な場所で現金を処理する現金処理装置が利用されている。例えば、客との取引を行う店舗で、客が代金として支払う現金を処理するために現金処理装置が利用される。このような現金処理装置は、客が入金した現金の合計金額を算出して現金を装置内に収納する。また、現金処理装置は、必要に応じて、合計金額から取引金額を差し引いた釣銭を出金する。装置内の現金が増えて現金を入金できない状況や、装置内の現金が減って釣銭を出金できない状況になると、現金処理装置を利用することができなくなる。このため、現金処理装置に収納された現金の種類及び数量を適切な状態に保つために、現金輸送会社(CIT)が、店舗からの現金の回収、店舗への現金の配送を行う。
【0003】
現金処理装置の中には、装置外へ回収される現金を収納するための回収容器を備えるものがある。現金輸送会社は、現金処理装置から回収容器を取り外すことにより、現金を容易に回収することができる。特許文献1には、現金輸送会社が輸送する現金の上限金額を予め限度額として設定することで、回収容器に収納する現金の合計金額を限度額以下に制限する装置が開示されている。例えば、輸送時の安全を考慮して、輸送現金の金額を制限したい場合や、輸送現金にかけた保険の契約内容に応じて、輸送現金の金額を制限したい場合に、限度額が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8567585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、様々な現金輸送の方法に柔軟に対応できないという問題があった。例えば、上記従来技術は、店舗が設置された国の通貨を輸送することが前提となっているため、店舗で複数の国の通貨が利用される場合に、これらの現金輸送に対応できない。
【0006】
本開示は、上記従来技術による課題に鑑みてなされたもので、様々な現金輸送の方法に柔軟に対応可能な現金輸送システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る現金輸送システムは、店舗に設置され、複数通貨の現金を処理する1又は複数の現金処理装置と、前記現金処理装置に現金を補充するための前記店舗への現金輸送の要否、及び前記現金処理装置から現金を回収するための前記店舗からの現金輸送の要否を判定する管理装置とを備え、前記管理装置は、前記現金輸送が必要であると判定した場合に、前記複数通貨の中から予め選択された1つの通貨に基づいて、輸送する各通貨の現金の金額を、選択された通貨の金額に換算して合計した輸送金額を算出し、前記輸送金額が、予め設定された上限金額を超える場合は、所定の通信端末に通知する。
【0008】
上記構成において、前記管理装置は、前記輸送金額が前記上限金額を超えない場合は、前記現金輸送を依頼する通知を、前記現金輸送を行う現金輸送会社に送信してもよい。
【0009】
上記構成において、複数の店舗を経由して各店舗を対象とする現金輸送が行われる場合、前記管理装置は、各店舗を対象とする現金輸送で輸送される現金の金額を、前記選択された通貨の金額に換算して合計した輸送金額を算出し、前記輸送金額が前記上限金額を超える場合は、所定の通信端末に通知してもよい。
【0010】
上記構成において、前記輸送金額が前記上限金額を超える場合、前記管理装置は、前記現金輸送が現金処理装置から回収する現金の輸送であれば、前記現金処理装置内の各通貨各金種の現金の収納量を比較して、収納量が少ない金種の現金から順に輸送対象から除外することにより、前記輸送金額を前記上限金額以下に調整して、前記現金輸送が現金処理装置に補充する現金の輸送であれば、前記現金処理装置内の各通貨各金種の現金の収納量を比較して、収納量が多い金種の現金から順に輸送対象から除外することにより、前記輸送金額を前記上限金額以下に調整してもよい。
【0011】
上記構成において、前記管理装置は、前記輸送金額が前記上限金額を超える場合、前記選択された通貨以外の現金の少なくとも一部を輸送対象から除外することにより、前記輸送金額を前記上限金額以下に調整してもよい。
【0012】
上記構成において、前記管理装置は、前記輸送金額が前記上限金額に満たない場合は、輸送する現金の合計金額が前記上限金額を超えない範囲で、前記現金輸送で輸送する現金を追加してもよい。
【0013】
上記構成において、前記現金輸送が現金処理装置から回収する現金の輸送である場合、前記管理装置は、回収対象の現金の種類及び種類別の数量を前記現金処理装置に通知して、前記現金処理装置は、装置内の収納部に収納されている現金のうち前記回収対象の現金を前記収納部から回収容器に移動してもよい。
【0014】
上記構成において、前記管理装置は、店舗と金融機関との間で輸送される現金の金額を、前記金融機関の口座処理を実行する外部装置に通知して、前記外部装置は、前記管理装置から通知された情報に基づいて座処理を実行してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る現金輸送システムによれば、様々な現金輸送の方法に柔軟に対応することができる。例えば、複数種類の通貨の現金輸送が行われる際には、輸送する現金の合計金額を所定通貨の金額に換算して、この金額が予め設定された上限金額以下となるように、現金輸送に関する作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る現金輸送システム1の概要を説明するための模式図である。
図2図2は、管理装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、現金処理装置に関する設定画面の例を示す図である。
図4図4は、現金輸送で輸送される現金の上限金額を設定する画面例を示す図である。
図5図5は、輸送を依頼する現金を手動で決定する際の画面例を示す図である。
図6図6は、輸送を依頼する現金を手動で設定する別の画面例を示す図である。
図7図7は、複数店舗を対象に管理装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、複数店舗の輸送現金の内訳を決定する方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る現金輸送システムの実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る現金輸送システム1の概要を説明するための模式図である。
【0018】
現金輸送システム1は、インターネット上に構築されたクラウドシステムである。現金輸送システム1は、クラウドサーバである管理装置10によって、現金輸送に関するクラウドサービスを提供する。ただし、管理装置10が実体のない仮想装置に限定されるものではなく、コンピュータ装置から成るサーバ装置が管理装置10として利用される態様であってもよい。
【0019】
現金輸送システム1は、管理装置10と、第1国通貨及び第2国通貨を含む複数通貨を処理可能な現金処理装置100とを含む。図1には、店舗20に設置された現金処理装置100の例を示しているが、現金処理装置100の設置場所は特に限定されない。
【0020】
また、現金輸送システム1に含まれる現金処理装置100の種類及び数も特に限定されない。例えば、現金処理装置100は、精算処理に利用される装置であってもよいし、両替機、販売機等であってもよい。現金輸送システム1が、1つの店舗20に設置された複数の現金処理装置100を含んでいてもよい。現金輸送システム1が、複数の店舗それぞれに設置された現金処理装置100を含んでいてもよい。現金処理装置100が処理可能な通貨の種類及び数も特に限定されず、3種類以上の通貨の現金を処理可能であってもよい。以下、店舗20で客との取引に利用される現金処理装置100が、店舗20がある国の通貨(自国通貨)を第1国通貨、店舗20がある国の通貨とは異なる通貨(他国通貨)を第2国通貨として処理するものとして説明を続ける。なお、本実施形態で言う金種には、通貨を示す情報が含まれる場合がある。例えば、第1国通貨が米国の通貨で、第2国通貨がカナダの通貨である場合、米国の1ドル紙幣とカナダの1ドル紙幣との区別を金種と記載する場合がある。
【0021】
現金処理装置100は、客との取引が行われる店舗20に設置されている。取引時に客が取引金額を支払うための現金の入金処理が、現金処理装置100を利用して行われる。現金処理装置100は、入金口から入金された現金を識別部で識別計数して、装置内の収納部に収納することができる。現金処理装置100は、第1国通貨の入金処理及び第2国通貨の入金処理を実行することができる。取引時に客に返す釣銭を出金する出金処理が、現金処理装置100を利用して行われる。現金処理装置100は、装置内の収納部から繰り出した釣銭を出金口から出金することができる。現金処理装置100は、第1国通貨の出金処理及び第2国通貨の出金処理を実行することができる。
【0022】
現金処理装置100が、両替処理、客の口座から引き出された金額を現金で出金するキャッシュアウト処理等、他の現金処理を実行可能であってもよい。現金処理装置100が、袋、カセット等の回収容器を脱着可能な回収部を備え、装置外へ回収される現金を回収容器に収納する回収処理を実行可能であってもよい。現金処理装置100が、所定枚数の現金を結束又は包装した包装現金を作成する包装処理を実行可能であってもよい。現金処理装置100が、包装現金を出金する束出金処理を実行可能であってもよい。入金口、出金口、識別部、収納部、回収部等の構成部を有し、入金処理、出金処理、両替処理、キャッシュアウト処理、回収処理、包装処理、束出金処理等の現金処理を実行する現金処理装置の構成及び動作は従来知られているため、詳細な説明は省略する。
【0023】
現金処理装置100は、現金処理が行われて、装置内に収納されている現金の種類と数量の少なくともいずれか一方が変化すると、この変化に関する情報を管理装置10に送信する。例えば、現金処理が行われて、現金処理装置100に収納されている第1国通貨の現金が増加又は減少すると、増加又は減少した第1国通貨の現金の金種及び金種別数量が管理装置10に送信される。同様に、現金処理が行われて、現金処理装置100に収納されている第2国通貨の現金が増加又は減少すると、増加又は減少した第2国通貨の現金の金種及び金種別数量が管理装置10に送信される。
【0024】
図1に示すように、管理装置10は、現金処理装置100に収納されている現金の在高を管理することができる(A1)。管理装置10が管理する在高情報には、現金処理装置100に収納されている第1国通貨の金種及び各金種の現金の数量と、第2国通貨の金種及び各金種の現金の数量とが含まれる。現金処理装置100が、回収容器を脱着可能な回収部を備え、回収対象の現金を回収容器に収納可能な構成である場合、管理装置10が管理する在高情報には、回収部に収納されている現金の通貨、金種及び金種別数量が含まれる。
【0025】
管理装置10は、在高情報を利用して、現金輸送会社30による現金輸送の要否を判定することができる(A2)。現金輸送の要否判定には、店舗20への現金配送の要否判定と、店舗20からの現金回収の要否判定と、の少なくともいずれか一方が含まれる。
【0026】
例えば、現金処理装置100への現金補充の要否を判定するための補充条件が、現金輸送の要否判定に利用される。管理装置10は、現金処理装置100内の現金が減少して補充条件を満たすと、店舗20に現金を配送する現金輸送が必要であると判定する。また、例えば、現金処理装置100からの現金回収の要否を判定するための回収条件が、店舗20からの現金輸送の要否判定に利用される。管理装置10は、現金処理装置100内の現金が増加して回収条件を満たすと、店舗20から現金を回収する現金輸送が必要であると判定する。
【0027】
なお、1つの店舗20に複数の現金処理装置100が設置されている場合、複数の現金処理装置100に収納されている現金を対象に、現金輸送の要否を判定するための補充条件及び回収条件が設定されていてもよい。同様に、複数の店舗それぞれに現金処理装置が設置されている場合、これら複数の現金処理装置を対象に、現金輸送の要否を判定するための補充条件及び回収条件が設定されていてもよい。具体的には、複数台の現金処理装置に収納されている同一金種の現金の数量を合計した値に基づいて、補充の要否と回収の要否、すなわち現金輸送の要否が判定されてもよい。
【0028】
管理装置10は、現金輸送が必要であると判定すると、現金輸送に関する情報を、予め設定された通知先へ通知することができる(A3)。通知される情報には、現金の輸送元及び輸送先を含む輸送情報と、輸送される現金の通貨、金種、金種別数量を含む現金情報との少なくともいずれか一方が含まれる。通知先には、店舗20、現金輸送会社30、金融機関40、店舗20を管理する本社50のうち少なくともいずれか1つが含まれる。通知は、例えば、店舗20、現金輸送会社30、金融機関40及び本社50それぞれの場所で利用される通信端末に、輸送情報と現金情報の少なくともいずれか一方を送信することによって行われる。店舗20、現金輸送会社30、金融機関40及び本社50は、管理装置10からの通知を受けて、現金輸送に関する作業を開始することができる。なお、現金輸送システム1では、輸送金額が、予め設定された上限金額を超える場合に、これを示す情報が通知される点に1つの特徴を有している。これについては後述する。
【0029】
次に、店舗20へ補充する現金の現金輸送について説明する。現金処理装置100の現金が減少して、現金の補充が必要となった場合、管理装置10は、補充する現金の金種及び金種別数量を、金融機関40から店舗20へ輸送される現金の現金情報として通知を実行する。
【0030】
管理装置10から通知を受けた現金輸送会社30は、金融機関40で現金を受け取り、店舗20へ配送することができる。管理装置10から通知を受けた店舗20は、現金輸送会社30が店舗20へ配送した現金を受け取り、現金処理装置100へ補充することができる。
【0031】
管理装置10から通知を受けた金融機関40は、店舗20へ配送する現金の準備を開始することができる。また、金融機関40は、金融機関40から店舗20へ輸送される現金の金額を、店舗20の口座又は本社50の口座から出金する口座処理を実行することができる。例えば、管理装置10が、輸送金額及び該輸送金額の出金元となる口座情報を、口座処理を実行する外部装置に通知して、外部装置が口座処理を実行する。口座処理を実行する外部装置は、例えば、金融機関40のサーバ装置である。
【0032】
現金輸送会社30が金融機関40から現金を受け取る際に、店舗20が口座から現金を引き出したとみなされて、口座処理が実行される。例えば、現金輸送会社30が、輸送する現金を金融機関40から受け取る際に、受け取りに関する情報を管理装置10に通知する所定操作を行う。通知を受けた管理装置10は、外部装置に口座処理の実行を要求する。
【0033】
ただし、現金輸送会社30が金融機関40から現金を受け取る前、すなわち現金輸送が行われる前に、仮出金として口座処理が実行される態様であってもよい。例えば、管理装置10が、現金輸送を決定した際に、外部装置に口座処理の実行を要求することにより、仮出金の口座処理が実行されてもよい。この場合、現金輸送会社30が、金融機関40から現金を受け取る際に、受け取りに関する情報を管理装置10に通知する所定操作を行う。通知を受けた管理装置10が外部装置に口座処理の確定を要求して、外部装置が出金の口座処理を確定すればよい。現金輸送会社30が通知を外部装置に送信して、外部装置が出金の口座処理を確定してもよい。
【0034】
次に、店舗20から回収する現金の現金輸送について説明する。現金処理装置100の現金が増加して装置外への現金の回収が必要となった場合、管理装置10は、回収する現金の金種及び金種別数量を、店舗20から金融機関40へ輸送される現金の現金情報として通知を実行する。
【0035】
管理装置10から通知を受けた店舗20は、回収される現金を現金処理装置100から取り出して、現金回収の準備を開始することができる。管理装置10から通知を受けた現金輸送会社30は、店舗20から現金を回収して、金融機関40へ輸送することができる。
【0036】
管理装置10から通知を受けた金融機関40は、店舗20から金融機関40へ輸送される現金の金額を、店舗20の口座又は本社50の口座に入金する口座処理を実行することができる。例えば、管理装置10が、輸送金額及び該輸送金額の入金先となる口座情報を、口座処理を実行する外部装置に通知して、外部装置が口座処理を実行する。口座処理を実行する外部装置は、例えば、金融機関40のサーバ装置である。
【0037】
現金輸送会社30が金融機関40に現金を届けた際に、店舗20が口座に現金を預け入れたとみなされて、口座処理が実行される。例えば、現金輸送会社30が、輸送した現金を金融機関40に届けた際に、輸送完了に関する情報を管理装置10に通知する所定操作を行うことにより、通知を受けた管理装置10が、外部装置に口座処理の実行を要求する。
【0038】
現金輸送会社30が金融機関40に現金を届ける前、すなわち現金輸送が完了する前に、仮入金として口座処理が実行される態様であってもよい。例えば、管理装置10が、現金輸送を決定した際に、外部装置に口座処理の実行を要求することにより、仮入金の口座処理が実行されてもよい。この場合、現金輸送会社30が、金融機関40に現金を届けた際に、輸送完了に関する情報を管理装置10に通知する所定操作を行う。通知を受けた管理装置10が外部装置に口座処理の確定を要求して、外部装置が入金の口座処理を確定すればよい。現金輸送会社30が通知を外部装置に送信して、外部装置が入金の口座処理を確定してもよい。
【0039】
現金処理装置100は、回収される現金を装置外へ排出するための処理を実行することができる。管理装置10は、回収される第1国通貨の金種及び金種別数量と、第2国通貨の金種及び金種別数量とを、現金処理装置100に通知する。通知を受けた現金処理装置100は、装置内の収納部に収納されている現金のうち、回収される第1国通貨及び第2国通貨の現金を、収納部から回収部の回収容器に移動する。これにより、現金輸送会社30は、回収容器を現金処理装置100から取り外して現金を回収することができる。現金処理装置100が複数の回収容器を利用可能である場合、現金処理装置100は、第1国通貨の現金と第2国通貨の現金とを別々の回収容器に分けて収納することもできる。
【0040】
また、例えば、管理装置10が、回収される第1国通貨と第2国通貨の現金の内訳に加えて、回収方法を現金処理装置100に通知すると、現金処理装置100は、通知された回収方法で、回収される現金を準備することができる。回収方法には、図1に示すように、容器回収、束回収、バラ回収が含まれる。容器回収とは、現金処理装置100が所定の回収容器に現金を収納して、回収容器を取り外すことにより行われる回収方法を言う。回収容器は袋であってもよいしカセットであってもよい。束回収とは、現金処理装置100が包装現金を出金することにより行われる回収方法を言う。バラ回収とは、現金処理装置100が現金を1枚ずつ出金することにより行われる回収方法を言う。
【0041】
現金処理装置100は、管理装置10が通知した回収方法により、回収される現金を、回収容器に収納することもできるし、束で出金することもできるし、バラで出金することもできる。容器回収の場合は、店舗20又は現金輸送会社30が、現金処理装置100から回収容器を取り外して回収する。束回収の場合は、店舗20又は現金輸送会社30が現金処理装置100で所定操作を行うと、現金処理装置100が、回収される第1国通貨及び第2国通貨の現金を包装現金で出金する。バラ回収の場合は、店舗20又は現金輸送会社30が現金処理装置100で所定操作を行うと、現金処理装置100が、回収される第1国通貨及び第2国通貨の現金を1枚ずつ出金する。
【0042】
次に、現金輸送に関する処理の流れについて説明する。現金輸送システム1は、輸送される各通貨の現金の金額を所定通貨の金額に換算して合計することにより、輸送される現金の合計金額を所定通貨の金額で算出し、この合計金額が、予め設定された上限金額以下になるように、現金輸送を支援する点に1つの特徴を有している。
【0043】
図2は、管理装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。管理装置10は、店舗20と金融機関40との間で現金を輸送する必要があるか否かを監視している(ステップS1;No)。
【0044】
例えば、現金処理装置100内の現金が減少して、予め設定された補充条件を満たすと、管理装置10は、金融機関40から店舗20に現金を輸送する必要があると判定する(ステップS1;Yes)。同様に、現金処理装置100内の現金が増加して、予め設定された回収条件を満たすと、管理装置10は、店舗20から金融機関40に現金を輸送する必要があると判定する(ステップS1;Yes)。また、例えば、店舗20又は本社50が、管理装置10に対して現金輸送を要求する所定操作を行うことにより、管理装置10は現金輸送が必要であると判定する(ステップS1;Yes)。
【0045】
現金輸送が必要になると、管理装置10は、輸送する現金のうち第1国通貨の現金の金額を算出する(ステップS2)。管理装置10は、第1国通貨と第2国通貨の換算率を特定し(ステップS3)、この換算率を利用して、輸送する現金のうち第2国通貨の現金の金額を第1国通貨の金額に換算する(ステップS4)。例えば、管理装置10は、インターネット上の所定のウェブサイト、又は所定の外部装置から、第1国通貨と第2国通貨のレートを取得して、これを換算率として利用する。管理装置10が、予め決定された換算率を利用してもよい。換算率を含むデータシートを予め管理装置10内に準備して、管理装置10がデータシートから換算率を読み出して利用すればよい。管理装置10は、複数の通貨間の換算率が登録されたデータシートから、通貨の種類に応じた換算率を読み出して利用することができる。
【0046】
管理装置10は、輸送する第1国通貨の現金と第2国通貨の現金の合計金額を算出する(ステップS5)。具体的には、第1国通貨の現金の金額と、第2国通貨の現金の金額を第1国通貨に換算した金額との合計金額を、輸送金額として算出する。
【0047】
管理装置10は、算出した合計金額が、予め設定された上限金額を超えるか否かを判定する(ステップS6)。例えば、店舗20又は本社50が、1回の現金輸送で現金輸送会社30が輸送する現金の上限金額を予め設定する。上限金額は、第1国通貨の金額で設定される。
【0048】
輸送金額が上限金額を超える場合(ステップS6;Yes)、管理装置10は警告処理を実行する(ステップS7)。上限金額を超えない場合(ステップS6;No)、管理装置10は通知処理を実行する(ステップS8)。通知処理では、上述したように、管理装置10が輸送情報及び現金情報の通知処理を実行して、現金輸送に関する作業及び処理が開始される。
【0049】
警告処理では、輸送金額が上限金額を超えることが、店舗20又は本社50へ通知される。一方、現金輸送を行うことが決定されるまで、現金輸送会社30及び金融機関40への通知は行われない。
【0050】
通知を受けた店舗20又は本社50は、輸送金額が上限金額を超えることを認める承認操作、輸送金額が上限金額を超えないよう輸送現金の内訳を変更して該変更を確定する確定操作、現金輸送をキャンセルする操作のいずれかを行うことができる。キャンセル操作が行われた場合、現金輸送は行われない。
【0051】
輸送される現金の内訳を変更する場合、管理装置10にアクセスした通信端末を利用して、輸送金額が上限金額を超えないように、内訳を変更する操作と、変更を確定する操作とが行われる。
【0052】
店舗20又は本社50が承認操作又は確定操作を行うと、管理装置10は、現金輸送を行うことを、現金輸送会社30及び金融機関40に通知する。輸送現金の内訳が変更された場合、変更後の現金情報が現金輸送会社30及び金融機関40に通知され、変更後の内訳で現金が輸送される。
【0053】
なお、ステップS8の通知処理においても、現金輸送会社30による輸送金額が上限金額を超えないことが、管理装置10から店舗20又は本社50へ通知される態様であってもよい。
【0054】
例えば、店舗20又は本社50への通知後、現金輸送の承認操作が行われたことを条件に、管理装置10から現金輸送会社30及び金融機関40への通知が実行され、その後、現金輸送に関する作業及び処理が開始される態様であってもよい。この場合、店舗20又は本社50が承認操作を行わなければ、現金輸送はキャンセルされる。
【0055】
また、例えば、通知を受けた店舗20又は本社50が、輸送現金の内訳を手動で変更可能であってもよい。例えば、管理装置10が、輸送金額が上限金額に満たないことに加えて、輸送金額と上限金額との差額を通知する。通知を受けた店舗20又は本社50は、輸送金額と上限金額の差額が0(ゼロ)に近付くように、輸送現金の内訳を変更することができる。この場合、店舗20又は本社50が手動で内訳を変更して、現金輸送を行うことが決定された後、管理装置10が現金輸送会社30及び金融機関40への通知を行って現金輸送に関する作業及び処理を開始すればよい。
【0056】
次に、現金輸送システム1において行われる設定について説明する。図3は、現金処理装置100に関する設定画面の例を示す図である。店舗20又は本社50が通信端末から管理装置10にアクセスして所定操作を行うことにより、通信端末の画面上に図3に示す設定画面が表示される。店舗20又は本社50は、この画面上で、現金処理装置100に収納される現金の通貨、金種、最小枚数、理想枚数及び最大枚数を設定することができる。
【0057】
図3に示す画面は、現金処理装置100が米国通貨及びメキシコ通貨を含む複数通貨を処理する場合の例を示している。本実施形態に示す画面例で下線が付されている部分は内容を変更可能であることを示し、チェックボックスを伴う部分は選択可能な内容であることを示している。
【0058】
図3に示す通貨の項目は、現金処理装置100内に収納される通貨を示し、金種は各通貨の金種を示している。最小枚数は補充条件の1つであり、現金処理装置100内の現金が減少して最小枚数に達すると、現金の補充が必要であると判定される。理想枚数は、現金処理装置100内に収納されていることが望ましい枚数を示す。例えば、釣銭を出金するために必要となる現金、所謂釣銭準備金の枚数が、理想枚数として設定される。最大枚数は回収条件の1つであり、現金処理装置100内の現金が増加して最大枚数に達すると、現金の回収が必要であると判定される。
【0059】
図4は、現金輸送で輸送される現金の上限金額を設定する画面例を示す図である。店舗20又は本社50が通信端末から管理装置10にアクセスして所定操作を行うことにより、通信端末の画面上に図4に示す設定画面が表示される。店舗20又は本社50は、図4に示す枠201内で、基本通貨を指定して、現金輸送の上限金額を設定することができる。例えば、自国通貨である第1国通が選択されて、基本通貨として設定される。上限金額は、基本通貨による金額で設定される。選択される通貨は、自国通貨に限定されず、他国通貨を基本通貨として設定することもできる。例えば、店舗がある地域での流通量が多い他国通貨を基本通貨として設定してもよい。
【0060】
図4に示す枠202内では、輸送回数を設定することができる。例えば、上限金額が、現金輸送1回当たりではなく、1日当たりの金額である場合、輸送現金に関する各処理で利用される上限金額が、輸送回数に応じて変更される。店舗20の営業開始前及び営業終了後というように1日に行われる現金輸送の回数が決まっている場合に、この回数が輸送回収として入力されて、1回当たりの最大輸送金額が枠202内に表示される。例えば、1日当たりの上限金額が米国通貨10万ドルである場合、配送回数を2回と入力すると、最大輸送金額が米国通貨5万ドルに設定される。図3に示す最大輸送金額が上限金額と異なる場合、管理装置10は、1回の現金輸送で輸送される現金の合計金額が最大輸送金額以下となるように各処理を実行する。すなわち、最大輸送金額を上限金額として各処理が実行されることになる。
【0061】
図4に示す枠203内では、現金輸送の依頼を手動で行うか自動で行うかを選択することができる。自動を選択した場合、管理装置10が、現金輸送の要否及び輸送する現金の内訳を決定して、図2に示す処理を実行する。これにより、店舗20及び本社50は、現金輸送の要否の判断、輸送現金の内訳の決定に関する作業を行う必要はなく、必要に応じて管理装置10が現金輸送の実行を決定して、現金輸送会社30が店舗20と金融機関40との間で、決定された現金輸送を行うことになる。ただし、図2で説明したように、店舗20又は本社50が現金輸送を承認するか又は輸送現金の内訳を変更する作業が必要となる場合がある。
【0062】
次に、輸送される現金の内訳を決定する方法について説明する。現金輸送は複数の現金処理装置100を対象に行われる場合もあるが、説明を簡単にするため、現金処理装置100が1台である場合を例に説明を続ける。複数の現金処理装置を対象とする場合は、以下に説明する現金処理装置100の現金の情報を、複数装置の現金の情報と読み替えればよい。
【0063】
図4に示す画面の枠203内で「手動」を選択した場合、店舗20又は本社50が、現金輸送会社30に輸送を依頼する現金を手動で決定することができる。以下、店舗20の店員が、紙幣の輸送を依頼する場合を例に説明を続ける。
【0064】
図5は、輸送を依頼する現金を手動で決定する際の画面例を示す図である。店員が通信端末から管理装置10にアクセスして所定操作を行うことにより、通信端末の画面上に図5に示す画面が表示される。画面上の枠210内には、図4に示す設定画面で予め設定された基本通貨及び上限金額が表示される。店員は、枠211内で、金融機関40から店舗20へ現金を輸送する「補充」と、店舗20から金融機関40へ現金を輸送する「回収」との少なくともいずれか一方を選択することができる。また、店員は、枠211内で、紙幣と硬貨の少なくともいずれか一方を選択して輸送を依頼することができる。
【0065】
枠212内には、図3に示す設定画面で予め設定された通貨及び金種、すなわち現金処理装置100に収納可能な通貨及び金種が表示される。図5に示す例では、枠211内で補充が選択されているため、枠212の左上に「補充」と表示されているが、回収が選択された場合は「回収」の設定枠が表示され、補充と回収の両方が選択された場合は「補充」の設定枠212に加えて、「回収」の設定枠が表示されることになる。店員は、枠212内各金種の左側に表示されたチェックボックスにチェックを入れることにより、輸送を依頼する現金の通貨及び金種を選択することができる。
【0066】
枠212内の通貨及び金種は自動的に表示されるが、店員は、輸送を依頼する通貨及び金種を変更することもできる。店員が、通貨の項目に表示されている「米国」や「メキシコ」の通貨の表示を選択する操作を行うと、画面上に複数の通貨の選択肢が一覧表示される。店員は一覧表示された通貨の中から、輸送を依頼する通貨を選択することができる。この場合、金種の項目には、店員が選択した通貨の各金種が表示される。店員は、表示された金種のチェックボックスにチェックを入れることにより、輸送を依頼する金種を選択することができる。
【0067】
店員は、枠212内に輸送単位として表示された選択肢左側のチェックボックスにチェックを入れると共に、選択した輸送単位の右側に数量を入力することにより、輸送を依頼する各金種の現金の数量を指定することができる。
【0068】
図5に示す例では、所定枚数の紙幣が収納された収納容器(図中「容器」)と、所定枚数の紙幣を束ねた紙幣束(図中「束」)と、バラ紙幣(図中「バラ」)とが、輸送単位の選択肢に含まれている。例えば、収納容器が、150枚の紙幣が収納された収納袋である場合、店員は、図5に示すように「容器」を選択して数量を「1」と入力することにより150枚の紙幣が収められた収納袋の輸送を依頼することができる。すなわち店員は「容器」を選択することにより150枚単位で紙幣の輸送を依頼することができる。同様に、紙幣束が100枚の紙幣の束である場合、店員は「束」を選択して数量を入力することにより100枚単位で紙幣の輸送を依頼し、現金輸送会社30から、依頼した数の紙幣束を受け取ることができる。また、店員は「バラ」を選択して数量を入力することにより、1枚単位で紙幣の輸送を依頼することができる。店員は、こうして各通貨の輸送単位及び数量を指定することにより、現金輸送会社30に輸送を依頼する現金の内訳を決定する。
【0069】
なお、容器については、所定枚数の紙幣が収納された収納袋である場合に限定されない。例えば、容器が、現金処理装置100に脱着されるカセット式の収納部であってもよい。また、容器を選択する場合に、容器の数量に加えて、各容器に収納する紙幣枚数を指定可能であってもよい。例えば、店員が、カセット式の収納部である容器の数量を「1」、該容器に収納する紙幣枚数を「1000」というように、回収容器及び紙幣枚数を指定可能であってもよい。
【0070】
図5に示す画面で、店員が金種、輸送単位及び数量を指定すると、指定された各通貨の現金の合計金額が、枠212内の換算金額の項目に表示される。換算金額は、管理装置10が、店員が指定した現金の通貨別の合計金額を算出し、これに換算率を乗算することにより基本通貨の金額に換算した金額である。
【0071】
図5に示す例では、米国通貨が基本通貨であるため、米国通貨の換算率は「1.00」で、輸送される米国通貨の合計金額が、そのまま換算金額となる。一方、メキシコ通貨については、輸送されるメキシコ通貨の合計金額(メキシコペソ)に、米国通貨とメキシコ通貨とのレート(換算率)を乗算して、換算金額(米ドル)が算出される。
【0072】
図5に示す画面の枠213内には、店員が指定した現金の合計金額である輸送金額が、基本通貨の金額で表示される。具体的には、管理装置10は、枠212内の各通貨の換算金額を合計した金額を枠213内に表示する。
【0073】
画面上には、輸送金額と上限金額との比較結果に基づく通知枠214(214a、214b)が表示される。図5には通知枠214aを実線で示し、通知枠214bを破線で示しているが、これは、通知枠214aと通知枠214bとが同時に表示されることはなく、いずれか一方が表示されることを示している。
【0074】
店員が指定した現金の合計金額が上限金額に達していない場合、管理装置10は、上限金額から合計金額を差し引いた差額を含む通知枠214aを表示する。店員は、通知枠214aの差額を確認しながら、輸送を依頼する現金を増やすことができる。一方、店員が指定した現金の合計金額が上限金額を超えた場合、管理装置10は、これを示す警告と、合計金額から上限金額を差し引いた差額とを含む通知枠214bを表示する。警告を確認した店員は、通知枠214bの差額を確認して、輸送金額が上限金額以下となるように、輸送を依頼する現金を減らすことができる。
【0075】
図5に示すように、画面下部に保存、キャンセル、依頼実行の各ボタンが表示される。店員がキャンセルボタンを押した場合は現金輸送会社30への輸送依頼は行われない。店員が依頼実行ボタンを押した場合、店員が画面上で指定した内容で現金輸送会社30への現金輸送の依頼が行われる。具体的には、管理装置10が、店員が画面上で指定した内容を現金輸送会社30に通知して、通知を受けた現金輸送会社30が店員の指定に基づく現金輸送を行うことになる。
【0076】
店員が保存ボタンを押した場合、現金輸送会社30への依頼は行われず、店員が画面上で指定した内容が管理装置10内に保存される。現金輸送システム1では、店員が保存した内容で自動的に現金輸送会社30への依頼を実行することも可能となっている。店員が、現金輸送の指定内容を保存すると共に、この指定内容による現金輸送を現金輸送会社30へ依頼するタイミングを指定する所定操作を行うと、管理装置10は、指定されたタイミングで、保存された指定内容を現金処理装置100に送信して現金輸送を依頼する。例えば、店員が、曜日及び時刻を指定した場合、指定された曜日の指定時刻になると管理装置10が現金輸送会社30への現金輸送の依頼を自動的に実行する。
【0077】
図6は、輸送を依頼する現金を手動で設定する別の画面例を示す図である。店舗20の店員が、通信端末から管理装置10にアクセスして所定操作を行うことにより、通信端末の画面上に図6に示す設定画面が表示される。店員は、図5又は図6のいずれかの画面を選択して、輸送を依頼する現金の内訳を指定することができる。
【0078】
図6に示す画面は、輸送する現金を指定するための枠215が図5に示す画面例の枠212と異なっている。他は同じであるため、枠215内の情報を利用した輸送現金の指定方法について説明する。
【0079】
枠215内には、図5に示した通貨、金種、換算率及び換算金額に加えて、現状枚数、利用予測、予測枚数、理想枚数、提案枚数、輸送依頼枚数の項目が表示される。現状枚数は、現金処理装置100内に収納されている現金の現在の枚数を示している。
【0080】
利用予測は、管理装置10が、現金処理装置100における過去の在高の推移から予測した、所定期間内の現金の変化量を示している。例えば、管理装置10は、現金処理装置100における過去の在高の推移を解析して、店舗20が閉店するまでに各金種の現金がどのくらい減少又は増加するかを予測し、これを利用予測の項目に表示する。利用予測がマイナスの値である場合は現金が減少することを示し、プラスの値である場合は現金が増加することを示す。現金の変化量の予測は、機械学習、統計的手法等の周知の技術を利用して行えばよい。
【0081】
予測枚数は、現状枚数に利用予測の枚数を加算した値である。利用予測が閉店までの現金の予測変化量である場合、予測枚数は、現金の補充及び回収を行わずに店舗20の営業を続けた場合に、閉店後に現金処理装置100内に残っていると予測される現金枚数になる。
【0082】
理想枚数は、図3に示す設定画面で設定された値で、現金処理装置100内に収納されていることが望ましい現金枚数を示している。例えば、釣銭準備金の枚数が理想枚数として設定されている。提案枚数は、管理装置10が店員に提案する現金の輸送枚数である。理想枚数と予測枚数との差が提案枚数になる。利用予測が、閉店までの現金の予測変化量である場合、提案枚数は、閉店後に現金処理装置100内に残っている現金枚数を、理想枚数とするために、現金輸送会社30に輸送を依頼する必要がある現金枚数になる。
【0083】
例えば、図6に示す例は、現金処理装置100内に米国通貨の1ドル紙幣が300枚収納されていることを示している。また、管理装置10は、米国1ドル紙幣が、店舗20の閉店までにさらに80枚減少して220枚になると予測し、閉店後に理想枚数の400枚とするために、米国1ドル紙幣180枚の輸送を依頼するよう提案している。同様に、管理装置10は、メキシコ通貨の20ペソ紙幣については、過去の在高推移に基づく予測から、店舗20の営業終了時に理想枚数とするために10枚の輸送を依頼するよう提案している。
【0084】
なお、予測枚数が理想枚数を超える場合、補充における提案枚数は0枚となる。例えば、上述した米国1ドル紙幣の例で、閉店後の予測枚数が理想枚数の400枚を超える場合、管理装置10は、米国1ドル紙幣の補充は不要であるとして提案枚数を0枚にする。この場合、回収を依頼する現金を指定する画面上で、提案枚数が表示されることになる。例えば、米国1ドル紙幣の閉店後の予測枚数が420枚である場合、回収を依頼する現金を店員が指定する画面で、閉店後の枚数が理想枚数の400枚となるように、回収を提案する提案枚数が20枚と表示される。
【0085】
図6に示す枠215内の輸送依頼枚数には、提案枚数の枚数が自動入力されるが、店員は、輸送依頼枚数を手動で変更することもできる。図6に示す画面においても、図5に示す画面と同様に、換算金額の項目には、通貨、金種、輸送依頼枚数及び換算率に基づいて算出された各通貨の合計金額を、基本通貨の金額に換算した金額が表示される。また、枠213内には各通貨の換算金額を合計した金額が表示され、枠213内の金額と上限金額との比較結果に基づいて、通知枠214a又は214bが表示される。店員は、通知枠214a又は214bで通知された金額を確認しながら、輸送を依頼する現金の内訳を変更することができる。
【0086】
図5及び図6では現金処理装置100に補充する現金の指定、すなわち金融機関400から店舗20への輸送を依頼する現金の指定を示したが、現金処理装置100から回収する現金の指定、すなわち店舗20から金融機関400への輸送を依頼する現金の指定も同様に行われる。この場合も、設定画面上で、店員が手動で現金の内訳を指定すると、現金輸送会社30が輸送することになる現金の合計金額と、この合計金額が上限金額を超えるか否かを示す情報とが画面上に表示される。店員は、これらの表示を確認しながら、現金輸送会社30に輸送を依頼する現金の内訳を決定することができる。
【0087】
なお、図4に示す設定画面で輸送回数が2回以上に設定されている場合、図5及び図6に示す画面では、最大輸送金額が上限金額として利用される。この場合、管理装置10は、店員が指定した現金の合計金額と最大輸送金額との比較結果に基づいて通知枠214a又は214bを表示する。
【0088】
次に、輸送される現金の内訳を自動的に決定する方法について説明する。図4に示す画面の枠203内で「自動」を選択した場合、管理装置10は、現金輸送の要否と、輸送を依頼する現金の内訳とを自動的に決定する。このとき、管理装置10は、図3に示した画面で設定された最小枚数、理想枚数及び最大枚数の情報を利用することができる。
【0089】
現金処理装置100について、米国20ドル紙幣の最小枚数が100枚、理想枚数が150枚、最大枚数が200枚と設定され、メキシコ500ペソ紙幣の最小枚数が50枚、理想枚数が100枚、最大枚数が150枚と設定されているものとして具体的に説明する。
【0090】
例えば、米国20ドル紙幣が減少して80枚になって最小枚数の100枚を下回ると、管理装置10は、現金の補充が必要であると判定する。管理装置10は、米国20ドル紙幣の枚数が理想枚数の150枚となるように、補充枚数を70枚(=理想枚数150枚-現状枚数80枚)と決定する。このとき、管理装置10は、他の通貨及び他の金種を補充対象に含める。例えば、現金処理装置100に収納されているメキシコ500ペソ紙幣の枚数が90枚である場合、補充が必要とされる最小枚数50枚を超えているが、管理装置10は、紙幣枚数が理想枚数の100枚となるように、メキシコ500ペソ紙幣10枚(=理想枚数100枚-現状枚数90枚)を補充対象の現金に含める。管理装置10は、同様に、米国通貨の他金種及びメキシコ通貨の他金種についても各金種の現金が理想枚数となるように、補充する現金を決定する。管理装置10は、こうして決定した現金を対象に、図2に示したステップS2以降の処理を実行することができる。このように1つの金種の現金を輸送する必要が生じた場合に、他の金種の現金を輸送対象に含めることで、現金輸送の回数を減らすことが可能となる。
【0091】
また、例えば、米国20ドル紙幣が増加して210枚になって最大枚数の200枚を上回ると、管理装置10は、現金の回収が必要であると判定する。管理装置10は、米国20ドル紙幣の枚数が理想枚数の150枚となるように、回収枚数を60枚(=現状枚数210枚-理想枚数150枚)と決定する。このとき、管理装置10は、他の通貨及び他の金種を回収対象に含める。例えば、現金処理装置100に収納されているメキシコ500ペソ紙幣の枚数が130枚である場合、回収が必要とされる最大枚数150枚を超えていないが、管理装置10は、紙幣枚数が理想枚数の100枚となるように、メキシコ500ペソ紙幣30枚(=現状枚数130枚-理想枚数100枚)を回収対象の現金に含める。管理装置10は、同様に、米国通貨の他金種及びメキシコ通貨の他金種についても各金種の現金が理想枚数となるように、補充する現金を決定する。管理装置10は、こうして決定した現金を対象に、図2に示したステップS2以降の処理を実行することができる。
【0092】
管理装置10は、図6に示した提案枚数を利用して、輸送対象の現金を自動決定することもできる。この場合、管理装置10は、図6で説明したように算出された提案枚数を各通貨及び各金種の輸送枚数とすることにより輸送対象を決定して、図2に示したステップS2以降の処理を実行すればよい。
【0093】
図2の警告処理の説明では、輸送金額が上限金額を超える場合に、輸送する現金の内訳を手動で変更する例を説明したが、管理装置10が内訳を自動的に変更する設定とすることもできる。例えば、上述したように輸送対象の現金が手動又は自動で決定された後、管理装置10は、輸送対象の現金の合計金額が上限金額以下となるまで、現状枚数と理想枚数との差が最も小さい金種から順に、一金種ずつ輸送対象から除外すればよい。また、各通貨各金種の現金における過去の在高の推移に基づいて、店舗20から現金が回収される場合は、所定期間内の在高の増加率が最も小さいものから順に、店舗20へ現金が補充される場合は、所定期間内の在高の低下率が最も小さいものから順に、一金種ずつ輸送対象から除外してもよい。すなわち、現金を回収する現金輸送では在高が増加しにくい現金を優先して輸送対象から除外して、現金を補充する現金輸送では在高が減少しにくい現金を優先して輸送対象から除外すればよい。このとき、管理装置10が、基本通貨ではない通貨を優先して輸送対象から除外してもよい。
【0094】
図2の通知処理の説明では、輸送金額が上限金額に満たない場合に、輸送する現金の内訳を手動で変更する例を説明したが、管理装置10が内訳を自動的に変更する設定とすることもできる。例えば、上述したように輸送対象の現金が手動又は自動で決定された後、管理装置10は、輸送対象の現金の合計金額が上限金額を超えない範囲で、現状枚数と理想枚数との差が最も大きい金種から順に、輸送枚数を所定枚数ずつ増やせばよい。また、各通貨各金種の現金における過去の在高の推移に基づいて、店舗20から現金が回収される場合は、所定期間内の在高の増加率が最も大きいものから順に、店舗20へ現金が補充される場合は、所定期間内の在高の低下率が最も大きいものから順に、一金種ずつ輸送枚数を所定枚数増やしてもよい。すなわち、現金を回収する現金輸送では在高が増加しやすい現金を優先して輸送枚数を増やし、現金を補充する現金輸送では在高が減少しやすい現金を優先して輸送枚数を増やせばよい。このとき、管理装置10が、基本通貨を優先して輸送枚数を増やしてもよい。
【0095】
図3では1台の現金処理装置100を対象に枚数設定を行う例を示したが、現金処理装置100の設置場所毎に枚数設定を行うことも可能となっている。例えば、店舗20が、食料品、日用品等の複数の売り場を含み、各売り場で複数の現金処理装置が利用されている場合、店員は、図3に示す画面で、売り場毎に現金枚数を設定することができる。また、例えば、店舗20が2階以上のフロアを含む場合、店員は、図3に示す画面で、フロア毎に現金枚数を設定することができる。この場合、画面上に、売り場、フロア等の各設置場所を示す情報が表示され、店員は、各設置場所の現金枚数を設定することになる。設置場所毎に現金枚数が設定された場合、各設置場所に設置されている複数の現金処理装置それぞれに収納されている現金の数量を集計して、現金輸送の要否判定、輸送する現金の内訳の決定、上限金額との比較等の各処理が上述したように実行される。例えば、図5及び図6に示す画面においても、輸送する現金を指定する枠212、215が設置場所別に表示され、その設置場所にある全ての現金処理装置を対象とする現金の情報が枠内に表示される。店員は、設置場所別に輸送現金の内訳を指定することができる。また、例えば、管理装置10が、現金輸送の要否及び輸送現金の内訳を自動決定する処理も、設置場所別に行われる。ただし、輸送金額と上限金額との比較は、各設置場所を対象とする輸送現金を集計した合計金額を利用して行われるため、複数の設置場所を対象として現金輸送が行われる場合も、店舗20と金融機関40の間の輸送金額が上限金額を超えないように輸送現金の内訳が決定される。
【0096】
次に、複数の店舗を対象に行われる現金輸送について説明する。本社50が、自社に属する複数店舗で行われる現金輸送を対象として輸送現金の上限金額を設定した場合、管理装置10は、複数店舗を対象に行う1回の現金輸送の輸送金額が上限金額を超えないように、各店舗を対象とする輸送金額を管理する。店舗の数は限定されないが、店舗A及び店舗Bの2つの店舗が本社50に属する場合を例に具体的に説明する。
【0097】
図7は、複数店舗を対象に管理装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。管理装置10は、店舗Aを対象に行われる現金輸送の輸送金額が上限金額より小さいか否かを判定する(ステップS11)。輸送金額が上限金額より小さい場合(ステップS11;Yes)、管理装置10は、店舗Bを対象に輸送する現金があるか否かを判定する(ステップS12)。店舗Bを対象に輸送可能な現金がある場合(ステップS12;Yes)、管理装置10は、店舗Bを対象に輸送する現金を決定する。これにより、店舗A及び店舗Bを対象に輸送する現金の内訳が決定される(ステップS13)。管理装置10は、店舗A及び店舗Bを対象に行う現金の輸送計画の通知処理を実行する(ステップS14)。一方、店舗Aを対象に行われる現金輸送の輸送金額が上限金額以上である場合(ステップS11;No)、又は輸送金額が上限金額より小さいが(ステップS11;Yes)、店舗Bを対象に輸送する現金がない場合(ステップS12;No)、管理装置10は、現金の輸送対象を店舗Aのみとして輸送計画の通知処理を実行する(ステップS14)。なお、図7には示していないが、店舗Aを対象に行われる現金輸送の輸送金額が上限金額を超える場合は、上述したように、現金輸送の承認、又は上限金額を超えないようにするための輸送現金の内訳変更が行われることになる。
【0098】
図8は、複数店舗の輸送現金の内訳を決定する方法を説明するための模式図である。店舗Aで、上述したように手動で又は管理装置10によって自動的に、輸送現金の内訳が決定され、図8に示すように、輸送される第1国通貨の現金の金額がA1、第2国通貨の現金の金額を第1国通貨に換算した金額がA2、合計金額がTa(=A1+A2)であったとする。
【0099】
店舗Aから現金を回収する現金輸送で、店舗Aから回収する現金の合計金額Taが上限金額Uより小さい場合に、管理装置10は、店舗Bから回収可能な現金があるか否かを判定する。例えば、管理装置10は、店舗Bの現金処理装置の中に、装置内の現金の数量が理想枚数を超える通貨及び金種がある場合に、店舗Bから回収可能な現金があると判定する。
【0100】
管理装置10は、店舗Bから回収する第1国通貨の金額B1と、第2国通貨の金額を第1国通貨に換算した金額B2との合計金額Tbが、上限金額Uから金額Taを差し引いた金額以下となるように、店舗Bから回収する第1国通貨及び第2国通貨の現金を決定する。言い換えれば、図8に示すように、店舗Aから回収する現金の金額Taと、店舗Bから回収する現金の金額Tbとの合計金額が、上限金額U以下となるように、店舗Bから回収する第1国通貨及び第2国通貨の現金の内訳B1及びB2を決定する。
【0101】
例えば、管理装置10は、店舗Bの現金処理装置に収納されている各通貨各金種の現金で理想枚数を超える枚数分を回収対象に仮決定して、回収対象とする現金の合計金額Tbを算出する。図6で説明したように過去の現金の在高の推移に基づく利用予測から得られた提案枚数を、回収対象に仮決定してもよい。仮決定した現金の合計金額Tbを店舗Aからの回収金額Taに加算しても、上限金額Uを超えない場合、管理装置10は、仮決定した全ての現金を店舗Bからの回収対象に決定する。
【0102】
一方、金額Taと金額Tbの合計が上限金額Uを超える場合、管理装置10は、店舗Bから回収する現金を上述したように調整する。例えば、管理装置10は、金額Taと金額Tbの合計金額が上限金額以下となるまで、店舗Bの現金処理装置内における収納枚数が理想枚数に最も近い金種から順に一金種ずつ回収対象から除外してゆく。このとき、管理装置10が、基本通貨ではない通貨を優先して回収対象から除外してもよい。
【0103】
店舗Aに現金を配送する現金輸送で、店舗Aに配送する現金の合計金額Taが上限金額Uより小さい場合に、管理装置10は、店舗Bに配送可能な現金があるか否かを判定する。例えば、管理装置10は、店舗Bの現金処理装置の中に、装置内の現金の数量が理想枚数に満たない通貨及び金種がある場合に、店舗Bに配送可能な現金があると判定する。
【0104】
管理装置10は、店舗Bに配送する第1国通貨の金額B1と、第2国通貨の金額を第1国通貨に換算した金額B2との合計金額Tbが、上限金額Uから金額Taを差し引いた金額以下となるように、店舗Bへ配送する第1国通貨及び第2国通貨の現金を決定する。言い換えれば、図8に示すように、店舗Aに配送する現金の金額Taと、店舗Bに配送する現金の金額Tbとの合計金額が、上限金額U以下となるように、店舗Bへ配送する現金の内訳B1及びB2を決定する。
【0105】
例えば、管理装置10は、店舗Bの現金処理装置に収納されている、現状枚数が理想枚数に満たない各通貨各金種の現金の枚数を、理想枚数から差し引いた枚数分を、配送対象に仮決定して、補充対象とする現金の合計金額Tbを算出する。図6で説明したように過去の現金の在高の推移に基づく利用予測から得られた提案枚数を、配送対象に仮決定してもよい。仮決定した現金の合計金額Tbを店舗Aへの配送金額Taに加算しても、上限金額Uを超えない場合、管理装置10は、仮決定した全ての現金を店舗Bへの配送対象に決定する。
【0106】
一方、金額Taと金額Tbの合計が上限金額Uを超える場合、管理装置10は、店舗Bへ配送する現金を上述したように調整する。例えば、管理装置10は、金額Taと金額Tbの合計金額が上限金額以下となるまで、店舗Bの現金処理装置内における収納枚数が理想枚数に最も近い金種から順に一金種ずつ配送対象から除外してゆく。このとき、管理装置10が、基本通貨でない第2国通貨を優先して配送対象から除外してもよい。
【0107】
こうして、店舗A及び店舗Bに配送する現金の内訳が決定すると、管理装置10が通知処理を実行して、1つの店舗20を対象として説明した場合と同様に各処理及び各対応が進められることになる。このとき通知される現金情報には、店舗Aを対象に輸送される第1国通貨及び第2国通貨の金種及び金種別数量と、店舗Bを対象に輸送される第1国通貨及び第2国通貨の金種及び金種別数量とが含まれる。
【0108】
なお、店舗Bを対象として輸送する現金の決定が手動で行われる態様であってもよい。例えば、店舗Aを対象として輸送する現金の金額Taが上限金額Uに満たないことを認識した管理装置10が、輸送対象の現金を決定するよう店舗Bに通知して、店舗Bが、図5及び図6で説明したように輸送する現金を決定すればよい。管理装置10が本社50に通知して、店舗Bを対象とする輸送現金を本社50が手動で決定してもよい。この場合、図5及び図6に示す画面では、上限金額Uから金額Taを差し引いた金額を、店舗Bを対象として輸送する現金の上限金額として、通知枠214a又は214bが表示される。これにより、店舗B又は本社50は、店舗Aを対象とする輸送金額Taと、店舗Bを対象とする輸送金額Tbとの合計金額が上限金額Uを超えないように、店舗Bを対象に輸送される現金の内訳を決定することができる。
【0109】
また、管理装置10が、店舗Aを対象に輸送する現金と、店舗Bを対象に輸送する現金との内訳を、各店舗における過去の在高の推移に基づいて調整する態様であってもよい。例えば、現金が回収される場合は、所定期間内の在高の増加率が高い店舗を優先して、この店舗から回収する現金の合計金額が、他の店舗から回収する現金の合計金額より大きくなるように調整すればよい。すなわち、現金の在高が増加しやすい店舗から優先して現金を回収してもよい。また、例えば、現金が補充される場合は、所定期間内の在高の低下率が高い店舗を優先して、この店舗に補充する現金の合計金額が、他の店舗に補充する現金の合計金額より大きくなるように調整すればよい。すなわち、現金の在高が減りやすい店舗に優先して現金を補充してもよい。例えば、各店舗の過去の在高の変化率に基づいて、各店舗を対象とする輸送金額の比率を決定してから、上述したように、各店舗を対象に輸送する現金の内訳を決定すればよい。
【0110】
本実施形態では、主に紙幣を例に説明したが、現金輸送システム1では、硬貨についても同様に、上述した各処理を行うことができる。また、第1国通貨及び第2国通貨の2つの通貨を例に説明した処理については、現金処理装置が3つ以上の通貨を処理する場合でも、各通貨を対象として上述した各処理を行うことができる。また、店舗A及び店舗Bの2つの店舗を例に説明した処理については、店舗が3つ以上である場合も、各店舗を対象として上述した各処理を行うことができる。
【0111】
本実施形態では、管理装置10が実行可能な様々な処理を示したが、管理装置10が全ての処理を実行する態様に限定されず、一部の処理を実行する態様であってもよい。例えば、現金輸送の要否決定及び輸送現金の内訳決定が、管理装置10を利用して手動で実行される場合と、管理装置10によって自動的に実行される場合とを示したが、手動と自動のいずれかで行われる態様であってもよい。また、上述した輸送現金に関する複数の処理のうち一部が実行される態様であってもよい。
【0112】
本実施形態に示した現金輸送システム1の構成は、機能概略的なものであり、現金輸送システム1の構成が物理的に該構成に限定されるものではない。例えば、管理装置10が、上述した現金処理装置100の機能及び動作の一部又は全部を実現する態様であってもよい。また、現金処理装置100が、上述した管理装置10の機能及び動作の一部又は全部を実現する態様であってもよい。各装置の分散・統合の形態は上述した例に限定されず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0113】
上述したように、現金輸送システムによれば、予め所定通貨の金額によって上限金額を設定すれば、管理装置が、店舗から輸送される現金及び店舗に輸送される現金の金額が上限金額以下となるように、現金輸送で輸送される現金の内訳を自動的に決定する。現金の内訳は、現金輸送システムの利用者が手動で決定することも可能となっており、この場合は、管理装置が決定作業を支援する。これにより、現金輸送に関する店舗の作業負担を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上のように、本開示に係る現金輸送システムは、様々な現金輸送の方法に柔軟に対応するために有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 現金輸送システム
10 管理装置
100 現金処理装置
図1
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図8