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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128833
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 W
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033465
(22)【出願日】2022-03-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000159043
【氏名又は名称】菊水電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 京介
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB83
5H730BB88
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FF01
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】無負荷/軽負荷の状態の双方向コンバータにおいて、電力損失を増やすことなく、かつ回路規模を増大させることなく安定動作するDC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】双方向コンバータとして機能するDC-DCコンバータであって、複数の同期整流型のチョッパ回路と、エラーアンプの出力に基づいて前記チョッパ回路の各々のスイッチング素子にゲートドライブ信号を出力する複数のPWM回路を含む制御回路とを備え、前記制御回路は、少なくとも1つのチョッパ回路を力行動作とし、残りの少なくとも1つ以上のチョッパ回路が回生動作を行うように、力行動作を行うチョッパ回路にゲートドライブ信号を出力するPWM回路にのみ、前記エラーアンプの出力に所定のオフセット電圧を加える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向コンバータとして機能するDC-DCコンバータであって、
複数の同期整流型のチョッパ回路と、
エラーアンプの出力に基づいて前記チョッパ回路の各々のスイッチング素子にゲートドライブ信号を出力する複数のPWM回路を含む制御回路とを備え、
前記制御回路は、少なくとも1つのチョッパ回路を力行動作とし、残りの少なくとも1つ以上のチョッパ回路が回生動作を行うように、力行動作を行うチョッパ回路にゲートドライブ信号を出力するPWM回路にのみ、前記エラーアンプの出力に所定のオフセット電圧を加えることを特徴とするDC-DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記オフセット電圧が加えられたPWM回路に対応するチョッパ回路において、回生電流が一定以上に達したことを検出すると、前記オフセット電圧を加えないようにすることを特徴とする請求項1に記載のDC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC-DCコンバータに関し、より詳細には、チョッパ回路を用いた双方向コンバータとして動作するDC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用バッテリーの高電圧化が進められており、バッテリーの充放電試験に用いられる試験装置においても、より高い出力電圧が求められている。試験装置に用いられるDC-DCコンバータは、力行/回生動作が可能な双方向コンバータとして動作することが求められている。双方向コンバータの回路形式として、同期整流型のチョッパ回路が知られている。コンバータから高い電圧を出力するためには、入力電圧として出力電圧以上の電圧を加える必要がある。一方、出力に接続された負荷の状態が無負荷/軽負荷の場合、チョッパ回路をPWM制御しているスイッチング素子であるMOSFETの最小ON幅等の制約によって、出力が不安定になるといった問題があった。
【0003】
そこで、チョッパ回路の出力に、ブリーダ回路を接続することが行われている。抵抗器または半導体素子をチョッパ回路の負荷として動作させるブリーダ回路が一般的に知られている。出力に接続されていた負荷が無負荷の場合であっても、ブリーダ回路に供給する電力によって、チョッパ回路を安定して動作させることができ、コンバータの出力を安定させることができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-063744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のブリーダ回路は、簡便な回路構成でチョッパ回路を安定して動作させることができる一方、ブリーダの効果を強めれば強めるほど電力損失が増えることになり、放熱の問題等、別の問題が発生してしまうという問題があった。
【0006】
また、電力損失を抑えてブリーダの効果を高める方法として、回生ブリーダ回路の使用が挙げられるが、回路規模の増大、装置の大型化といった問題を生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、無負荷/軽負荷の状態の双方向コンバータにおいて、電力損失を増やすことなく、かつ回路規模を増大させることなく力行/回生動作を可能とするDC-DCコンバータを提供することにある。
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、一実施態様は、双方向コンバータとして機能するDC-DCコンバータであって、複数の同期整流型のチョッパ回路と、エラーアンプの出力に基づいて前記チョッパ回路の各々のスイッチング素子にゲートドライブ信号を出力する複数のPWM回路を含む制御回路とを備え、前記制御回路は、少なくとも1つのチョッパ回路を力行動作とし、残りの少なくとも1つ以上のチョッパ回路が回生動作を行うように、力行動作を行うチョッパ回路にゲートドライブ信号を出力するPWM回路にのみ、前記エラーアンプの出力に所定のオフセット電圧を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、力行動作を行うチョッパ回路に対応するPWM回路へのエラーアンプの出力にのみ、所定のオフセット電圧を加えることにより、力行動作を行うチョッパ回路と回生動作を行うチョッパ回路との間で、電流を循環させることができる。これにより、電力損失を増やすことなく、かつ回路規模を増大させることなく力行/回生動作が可能となる。加えて、DC-DCコンバータの定格出力に影響を与えずに、無負荷/軽負荷時の安定動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかるDC-DCコンバータの概略構成を示す図である。
図2】第1の実施形態のDC-DCコンバータの制御回路の概略構成を示す図である。
図3】第1の実施形態のDC-DCコンバータの各電流モニタ波形を示す図である。
図4】第2の実施形態のDC-DCコンバータの制御回路の概略構成を示す図である。
図5】第2の実施形態のDC-DCコンバータの各電流モニタ波形を示す図である。
図6】DC-DCコンバータの定電圧モードにおける出力波形を示す図である。
図7】DC-DCコンバータの定電流モードにおける出力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態のDC-DCコンバータは、双方向コンバータとして機能し、チョッパ回路ごとに力行と回生を分け、チョッパ回路間で電流を循環させ、ブリーダの効果を得ることにより、電力損失を増やすことなく力行/回生動作を可能とし、出力を安定させることができる。
【0012】
図1に、本発明の第1の実施形態にかかるDC-DCコンバータの概略の構成を示す。DC-DCコンバータ10は、入力側の直流電圧源11と出力端子との間であって、平滑コンデンサC1,C2の間に並列に接続された、2つの同期整流型のチョッパ回路12,13を含む。チョッパ回路12,13は、それぞれにスイッチング素子S21-S22,S31-S32、およびインダクタンスL21,L31を備える。また、DC-DCコンバータ10には、インダクタンスL21,L31のインダクタ電流と、DC-DCコンバータ10の出力電圧を検出し、スイッチング素子S21-S22,S31-S32を制御する制御回路14が含まれている。
【0013】
制御回路14は、チョッパ回路12のスイッチング素子S21-S22と、チョッパ回路13のスイッチング素子S31-S32とを個別に制御し、通常動作時は、スイッチング周期の半分をずらしたインターリーブ制御を行っている。力行(入力側→出力側)、回生(出力側→入力側)のどちらの動作になるかは、入力電圧/出力電圧の比と、PWM回路のデューティ比によって決まる。
【0014】
[第1の実施形態]
図2に、第1の実施形態のDC-DCコンバータの制御回路の概略構成を示す。制御回路14は、インダクタ電流の電流モニタ信号CURR_MON1, CURR_MON2と駆動信号DRIVE1, DRIVE2との差分に応じた差分電圧を、差動増幅器41,51からPWM回路を構成する比較器43,53に入力する。PWM回路では、入力された差分電圧と、鋸歯状波生成回路42,52で生成した鋸歯状波とを比較器43,53で比較し、PWM変調する。変調されたパルスを、スイッチング素子S21-S22,S31-S32のゲートドライブ信号PWM_OUT1, PWM_OUT2として出力する。
【0015】
駆動信号DRIVE1, DRIVE2は、エラーアンプから供給される。エラーアンプは、定電圧モード、定電流モード等の制御方式において、誤差信号を供給する。図2に示した制御回路は、定電圧モードの場合を例示し、エラーアンプ61は、DC-DCコンバータ10の出力電圧値VOLT_MONと基準電圧値VOLT_REFとを比較して誤差信号を出力する。例えば、出力電圧値VOLT_MONが基準電圧値VOLT_REFより低ければ、エラーアンプ61の誤差信号電圧は上昇し、PWM変調におけるデューティ比が大きくなり、DC-DCコンバータ10の出力電圧は上昇する。
【0016】
第1の実施形態における駆動信号DRIVE1, DRIVE2の生成について詳細に述べる。エラーアンプ61の出力は、チョッパ回路13を制御する差動増幅器51の入力としては、そのままの電圧値を加え、チョッパ回路12を制御する差動増幅器41の入力には、オフセット回路62によりオフセット電圧を加える。従って、チョッパ回路12の出力電圧は、チョッパ回路13の出力電圧よりもオフセット電圧に応じた分だけ高くなるので、チョッパ回路12からチョッパ回路13に電流が流れる。
【0017】
オフセット回路62のオフセット電圧は、ツェナーダイオードD1のツェナー電圧(Vz)とダイオードD2の順方向電圧(Vf)の差(Vz-Vf)であり、本実施形態では固定電圧であるが、可変電圧を加えるようにしてもよい。
【0018】
図3に、第1の実施形態のDC-DCコンバータの各電流モニタ波形を示す。実線がチョッパ回路12の出力電流を示し、破線はチョッパ回路13の出力電流を示す。図中のAの区間は、DC-DCコンバータ10の出力電圧が0Vとなるように、基準電圧値VOLT_REFを設定し、出力電圧値VOLT_MONが0Vの場合を示している。エラーアンプ61の出力電圧も0Vであり、チョッパ回路12は3Aの電流を出力、すなわち力行動作し、チョッパ回路13は3Aの電流を入力、すなわち回生動作していることが分かる。DC-DCコンバータ10の出力が、ほぼ0V、0Aの状態であっても、双方のチョッパ回路は、安定動作できるだけの電流を入出力しているので、DC-DCコンバータ10の出力電圧も安定させることができる。
【0019】
図3のBの区間は、力行/回生動作から通常動作に遷移する区間である。DC-DCコンバータ10の出力を所望の電圧となるように、基準電圧値VOLT_REFの設定を上げると、エラーアンプ61の誤差信号電圧も上昇する。エラーアンプ61の誤差信号電圧が上昇しても、オフセット電圧より低い場合は、オフセット電圧が優先されるため、チョッパ回路12の出力電流3Aの力行動作は変化しない。チョッパ回路13は、エラーアンプ61の誤差信号電圧に応じて、駆動信号DRIVE2が上昇して、回生電流が減少する。力行側のチョッパ回路12の出力は変化せず、回生側のチョッパ回路13の回生電流が減少するので、DC-DCコンバータ10の出力端子からは電流が出力され、コンバータ全体としては力行動作する。
【0020】
図3のCの区間は、通常動作を示している。基準電圧値VOLT_REFの設定をさらに上げると、エラーアンプ61の誤差信号電圧はオフセット電圧より高くなり、チョッパ回路12,13の双方ともに力行動作となる。区間B-Cの境界付近では、チョッパ回路12,13ともに4Aの出力電流であり、DC-DCコンバータ10としては合計8Aの出力電流となっている。
【0021】
第1の実施形態においては、2つの同期整流型のチョッパ回路を並列に接続したDC-DCコンバータを例に説明した。2以上のチョッパ回路を並列に接続したDC-DCコンバータに適用する場合、少なくとも1つのチョッパ回路を力行動作とし、残りの少なくとも1つ以上のチョッパ回路が回生動作を行うように設定する。このとき、力行動作を行うチョッパ回路の各々に、所定のオフセット電圧が加わるように、オフセット回路を設計すればよい。無負荷/軽負荷の状態において、力行動作を行うチョッパ回路と回生動作を行うチョッパ回路との間で電流を循環させ、ブリーダの効果を得ることにより、電力損失を増やすことなく、かつ回路規模を増大させることなく力行/回生動作をさせることができる。
【0022】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、DC-DCコンバータ10として力行動作する場合を説明した。次に、DC-DCコンバータ10として回生動作する場合について説明する。このとき、図2に示した制御回路において、チョッパ回路12の駆動信号DRIVE1は、オフセット電圧以下にはならないので、チョッパ回路12,13の間で回生電流のバランスが崩れてしまう。そこで、第2の実施形態では、以下に説明するようにオフセット回路に付加回路を加える。
【0023】
図4に、第2の実施形態のDC-DCコンバータの制御回路の概略構成を示す。図3に示したオフセット回路62加えて付加回路63を付加し、オフセット回路62のオフセット電圧を切り替える。付加回路63は、オフセット電圧を加えるPWM回路に対応するチョッパ回路12の電流モニタ信号CURR_MON1により、回生電流が一定以上に達したことを検出したとき、オフセット電圧を設定しているツェナーダイオードを短絡する。すなわち、エラーアンプ61からPWM回路への出力にオフセット電圧が加わらないように、略0Vに切り替える。スイッチSWを開放するポイントは、回生電流が十分流れていて不安定動作とならないポイントとし、例えば、定格電流の10%とする。
【0024】
図5に、第2の実施形態のDC-DCコンバータの各電流モニタ波形を示す。図中の無負荷の領域と力行の領域とは、図3に示した波形と同様である。無負荷の領域では、チョッパ回路12,13は力行動作と回生動作とに分かれており、DC-DCコンバータ10の出力端子を通して電流の流れはない。回生の領域では、回生電流が少ない部分では、チョッパ回路12,13の出力電流はアンバランスだが、一定以上の回生電流になるとチョッパ回路12,13の双方が回生動作を行う。
【0025】
第2の実施形態によれば、力行/回生動作のどちらの場合においても、無負荷/軽負荷の状態において、2つのチョッパ回路の間で電流を循環させ、安定動作を図ると共に、各チョッパ回路の定格電流が流れる前に、双方のチョッパ回路において電流のバランスを取ることができる。これにより、DC-DCコンバータ10の定格出力電力を、本実施形態の実施の有無によって変化させることなく、無負荷/軽負荷時の安定動作を実現することができる。
【0026】
[本実施形態の効果]
第1および第2の実施形態にかかるDC-DCコンバータ10の安定動作について詳述する。図6に、DC-DCコンバータの定電圧モードにおける出力波形を示す。図6(a)は従来のDC-DCコンバータ、図6(b)は第1の実施形態にかかるDC-DCコンバータのそれぞれを適用した実機の測定結果を示している。いずれも、定電圧モード、入力電圧600V、出力電圧1Vであり、PWM変調におけるデューティ比は0.2%である。出力電圧波形は1目盛0.2Vに拡大し、出力電流波形は、1目盛0.5Aに拡大して、合わせて1画面に表示させた結果である。
【0027】
従来のDC-DCコンバータでは、無負荷で低電圧を出力していることから、電圧が安定せず、出力電流も大きく乱れている。一方、第1の実施形態にかかるDC-DCコンバータでは、同じ条件であっても、内部のチョッパ回路には安定動作ができるだけの電流が流れており、安定した出力電圧が得られることが分かる。
【0028】
図7に、DC-DCコンバータの定電流モードにおける出力波形を示す。図7(a)は従来のDC-DCコンバータ、図7(b)は第2の実施形態にかかるDC-DCコンバータのそれぞれを適用した実機の測定結果を示している。いずれも、出力に100Ωの電子負荷装置を接続し、出力電流が400mAになるように定電流モードとして動作させている。出力電圧波形は1目盛50Vに拡大し、出力電流波形は1目盛0.2Aに拡大して、合わせて1画面に表示させた結果である。
【0029】
従来のDC-DCコンバータでは、無負荷では動作が安定せず、第2の実施形態にかかるDC-DCコンバータでは、安定した出力電流が出力されていることがわかる。
【符号の説明】
【0030】
10 DC-DCコンバータ
11 直流電圧源
12,13 チョッパ回路
14 制御回路
41,51 差動増幅器
42,52 鋸歯状波生成回路
43,53 比較器
61 エラーアンプ
62 オフセット回路
63 付加回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7