(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128834
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】二次電池の自己放電検査方法及び自己放電検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20230907BHJP
H01M 10/30 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01R31/396
H01M10/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033466
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】室田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】須藤 良介
(72)【発明者】
【氏名】志村 史雄
【テーマコード(参考)】
2G216
5H028
【Fターム(参考)】
2G216BB02
2G216BB23
5H028AA10
5H028BB10
5H028BB11
5H028HH10
(57)【要約】
【課題】製造工程における二次電池の良品と不良品を適切に判定すること。
【解決手段】二次電池の自己放電検査装置は、複数の二次電池を連続して製造する工程における自己放電検査を行い、充放電装置と、電圧測定装置と、演算装置を備えた制御装置を備え、制御装置は、エージング工程の前後の二次電池の電圧の変化である電圧差ΔVを個別に取得し、電圧差ΔVを取得した二次電池である対象二次電池と、当該対象二次電池と隣接して製造された他の二次電池の電圧差ΔVを含む複数の二次電池の移動平均MAを算出し、移動平均MAと、前記対象二次電池の電圧差ΔVとの較差DAを算出し、較差DAと予め設定した閾値Taと比較して不良品か否かを判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を連続して製造する工程における二次電池の自己放電検査方法であって、
無負荷での放電工程の前後の前記二次電池の電圧の変化である電圧差ΔVを個別に取得するΔV取得のステップと、
前記ΔV取得のステップで電圧差ΔVを取得した二次電池である対象二次電池と、当該対象二次電池と隣接して製造された比較二次電池の電圧差ΔVの移動平均MAを算出する移動平均算出のステップと、
前記移動平均算出のステップで算出した前記移動平均MAと、前記ΔV取得のステップで電圧差ΔVを取得した前記対象二次電池との較差DAを算出する較差算出のステップと、
前記較差算出のステップで算出した較差DAと、予め設定した閾値Taと比較して不良品か否かを判定する較差判定のステップと、
を備えた二次電池の自己放電検査方法。
【請求項2】
材料ロットに含まれる前記二次電池の前記電圧差ΔVを母集団としたときの分散に基づいて、前記材料ロットに含まれるそれぞれの前記二次電池の前記電圧差ΔVの標準偏差を算出する相対値算出のステップと、
前記相対値算出のステップで算出した前記二次電池の標準偏差と、予め設定した閾値Trと比較して不良品か否かを判定する相対判定のステップと、
前記較差判定のステップと前記相対判定のステップとのいずれにおいても不良品であると判定された前記二次電池を不良品と判定する最終判定のステップと
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項3】
前記移動平均算出のステップにおける隣接して製造された比較二次電池は、前記ΔV取得のステップで電圧差Vを取得した対象二次電池の前後に製造された二次電池であることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項4】
前記移動平均算出のステップは、異なる材料ロットを跨いで連続的に実施されることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項5】
前記分散が、前記材料ロットの全数の二次電池に基づく母分散σ2である請求項2又は請求項4に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項6】
前記無負荷での放電工程がエージング工程であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項7】
前記二次電池がニッケル水素蓄電池であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項8】
複数の二次電池を材料ロットごとに連続して製造する工程における二次電池の自己放電検査を行う二次電池の自己放電検査装置であって、
前記二次電池の電圧を測定する電圧測定装置と、
演算装置を備えた制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記電圧測定装置によりエージング工程の前後の前記二次電池の電圧の変化である電圧差ΔVを個別に取得し、
前記演算装置により前記電圧差ΔVを取得した二次電池である対象二次電池と、当該対象二次電池と隣接して製造された比較二次電池の電圧差ΔVを含む複数の二次電池の移動平均MAを算出し、
前記移動平均MAと、前記対象二次電池の電圧差ΔVとの較差DAを算出し、
前記較差DAと、予め設定した閾値Taと比較して不良品か否かを判定することを特徴とする二次電池の自己放電検査装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記材料ロットに含まれる前記二次電池の前記電圧差ΔVを母集団としたときの分散に基づいて、前記材料ロットに含まれるそれぞれの前記二次電池の前記電圧差ΔVの標準偏差σを算出し、
前記標準偏差σと、予め設定した閾値Trと比較して不良品か否かを判定し、
前記閾値Taとの比較において不良品と判定され、かつ前記閾値Trと比較して不良品と判定された場合に前記二次電池を不良品と最終判定することを特徴とする請求項8に記載の二次電池の自己放電検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二次電池の自己放電検査方法及び自己放電検査装置に係り、詳しくは、製造工程における二次電池の良品と不良品を適切に判定する二次電池の自己放電検査方法及び自己放電検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池を製造するときに、完成品の検査を行うが、その一つとして自己放電が許容される範囲であるか否かを行うエージング工程における自己放電検査がある。エージング工程では、一定の値に充電をしたあと無負荷で高温の状態を維持する方法が挙げられる。このとき二次電池内の微小短絡を解消したり、電極の安定化を図ったりする。そして、エージング工程の完了後に、二次電池の電圧の電圧差ΔV[V]を測定する。このとき、設定した設計値より電圧の電圧差ΔV[V]が大きい場合は、自己放電が大きいとして、検査は不合格となり、不良品として出荷されず原則廃棄処分の対象となる。
【0003】
図13は、従来の設計値に基づいて共通の閾値Tより電圧差ΔV[V]を絶対値で判定する方法を示したグラフである。縦軸は電圧差ΔV[V]を示す。横軸は各ロットに含まれる個別の二次電池を示す。
【0004】
このような電圧差ΔV[V]の検査においては、電圧差ΔV[V]は正極活物質の固溶元素のばらつきや、電解液の添加剤のばらつき、電池内の温度ばらつきなど、その二次電池特有の自己放電のばらつき要因が多数存在する。
【0005】
このようなばらつきを考慮すると二次電池が良品であるか不良品であるかの電圧差ΔV[V]の判定閾値は、不良品の検出漏れを防止するため、過検出(良品を過剰に不良品として誤検出すること)側にマージンを持った閾値を決めざるを得ない。その結果、実際には良品であっても、安全側にみて不良品として判断する二次電池が発生する。このため、二次電池の製造工程でのロスが増加するという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1に開示された発明では、以下の発明が開示されている。ここでは、エージング工程の端子電圧を放電状態の電位とし、検査のロット単位毎に変動するΔV[V]の平均値ΔVAに対して、微小内部短絡した不良電池の端子電圧降下量を想定した基準値ΔVBを絶対値として設定する。そして、ΔVA-ΔVBの値より小さいΔV[V]の電池を不良品と判定する検査方法が開示されている。
【0007】
このようなロット全体の平均値に基づいた絶対値に基づいた検査方法であると、検査対象となる二次電池のばらつきによっては、やはり一部の二次電池の電圧差ΔV[V]の影響で平均値が変動し閾値が影響を受ける。そして、やはり過検出側にマージンを持った閾値となる可能性がある。
【0008】
図14(a)は、検査対象となる材料ロット1と材料ロット2からなる二次電池の電圧差ΔV[V]を示すグラフである。縦軸は電圧差ΔV[V]を示す。横軸は各ロットに含まれる個別の二次電池を示す。
図14(b)は、電圧差ΔV[V]を相対値で判定する方法を示したグラフである。縦軸は確率、横軸は電圧差ΔV[V]の標準偏差σを示す。閾値Trは、任意の標準偏差σ(例えば「+3σ」)に設定される。
【0009】
上述した絶対値判定では、検査対象となる二次電池のばらつきによっては、過検出側にマージンを持った閾値となる可能性がある。ここで、
図14(a)に示す各二次電池は、材料ロット1に含まれる各二次電池も、材料ロット2に含まれる各二次電池も、いずれも自己放電に問題のない良品であるとする。次に
図14(b)に示すようにこれらの二次電池の平均μを求め、分散σ
2を求め、確率分布のグラフL1を作成する。ここで任意の閾値(例えば+3σ)を閾値Trとして、閾値Trを超す標準偏差σの二次電池を異常値として不良品として検出する。しかしながら、
図14(a)に示す前提で述べた通り、全製品が良品Gであり、不良品NGは含まれていない。しかしながら、
図14(b)における閾値Trの設定の如何に拘わらず、閾値Trを超した二次電池は、不良品として検出されてしまうということになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したとおり、従来は、本来良品と判断されるべき二次電池であっても、不良品として過検出される可能性があった。このため、製造工程で良品の二次電池を製造しても不良品として判定されてしまうという問題があった。
【0012】
本発明の二次電池の自己放電検査方法及び自己放電検査装置が解決しようとする課題は、製造工程における二次電池の良品と不良品を適切に判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の二次電池の自己放電検査方法では、複数の二次電池を連続して製造する工程における二次電池の自己放電検査方法であって、無負荷での放電工程の前後の前記二次電池の電圧の変化である電圧差ΔVを個別に取得するΔV取得のステップと、前記ΔV取得ステップで電圧差ΔVを取得した二次電池である対象二次電池と、当該対象二次電池と隣接して製造された比較二次電池の電圧差ΔVの移動平均MAを算出する移動平均算出のステップと、前記移動平均算出のステップで算出した前記移動平均MAと、前記ΔV取得ステップで電圧差ΔVを取得した前記対象二次電池との較差DAを算出する較差算出のステップと、前記較差算出のステップで算出した較差DAと、予め設定した閾値Taと比較して不良品か否かを判定する較差判定のステップと、を備えた。
【0014】
また、前記材料ロットに含まれる前記二次電池の前記電圧差ΔVを母集団としたときの分散に基づいて、前記材料ロットに含まれるそれぞれの前記二次電池の前記電圧差ΔVの標準偏差を算出する相対値算出のステップと、前記相対値算出のステップで算出した前記二次電池の標準偏差と、予め設定した閾値Trと比較して不良品か否かを判定する相対判定のステップと、前記較差判定のステップと前記相対判定のステップとのいずれにおいても不良品であると判定された前記二次電池を不良品と判定する最終判定のステップとをさらに備えることが望ましい。
【0015】
また、前記移動平均算出のステップにおける隣接して製造された比較二次電池は、前記ΔV取得のステップで電圧差Vを取得した対象二次電池の前後に製造された二次電池としてもよい。
【0016】
前記移動平均算出のステップは、異なる材料ロットを跨いで連続的に実施されることが望ましい。前記分散は、前記材料ロットの全数の二次電池に基づく母分散σ2であることが望ましい。前記無負荷での放電工程は、エージング工程とすることができる。
【0017】
前記二次電池がニッケル水素蓄電池である場合に好適に実施できる。
また、本発明の二次電池の自己放電検査装置では、複数の二次電池を材料ロットごとに連続して製造する工程における二次電池の自己放電検査を行う二次電池の自己放電検査装置であって、前記二次電池の電圧を測定する電圧測定装置と、演算装置を備えた制御装置を備え、前記制御装置は、前記電圧測定装置によりエージング工程の前後の前記二次電池の電圧の変化である電圧差ΔVを個別に取得し、前記演算装置により前記電圧差ΔVを取得した二次電池である対象二次電池と、当該対象二次電池と隣接して製造された比較二次電池の電圧差ΔVを含む複数の二次電池の移動平均MAを算出し、前記移動平均MAと、前記対象二次電池の電圧差ΔVとの較差DAを算出し、前記較差DAと、予め設定した閾値Taと比較して不良品か否かを判定することを特徴とする。
【0018】
また、前記制御装置は、さらに前記材料ロットに含まれる前記二次電池の前記電圧差ΔVを母集団としたときの分散に基づいて、前記材料ロットに含まれるそれぞれの前記二次電池の前記電圧差ΔVの標準偏差σを算出し、前記標準偏差σと、予め設定した閾値Trと比較して不良品か否かを判定し、前記閾値Taとの比較において不良品と判定され、かつ前記閾値Trと比較して不良品と判定された場合に前記二次電池を不良品と最終判定することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の二次電池の自己放電検査方法及び自己放電検査装置によれば、製造工程における二次電池の良品と不良品を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態の二次電池の製造装置を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の二次電池の自己放電検査方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】較差判定におけるΔV[V]の移動平均MAの取得を示す図である。
【
図4】較差判定におけるΔV[V]の移動平均MAの取得を示す図である。
【
図5】較差判定において取得した各二次電池B1~B11のΔV[V]の移動平均MAと、その二次電池のΔV[V]を示す図である。
【
図6】較差判定において取得した各二次電池BのΔVの移動平均MAと、その二次電池BのΔV[V]との差を示す図である。
【
図7】材料ロットの切替部での過剰検出の可能性がある場合の相対判定とのクロスチェックをする必要性を示す図である。
【
図9】従来の自己放電検査での不良品検出の模式的な図である。
【
図10】本実施形態の較差判定による自己放電検査での不良品検出の模式的な図である。
【
図11】過検出した良品の比率を示すグラフである。
【
図12】従来を指数100としたときの不良品の検出を示すグラフである。
【
図13】従来の設計値に基づいて共通の閾値Tより電圧差ΔV[V]を絶対値で判定する方法を示したグラフである。
【
図14】
図14(a)は、検査対象となる材料ロット1と材料ロット2からな二次電池の電圧差ΔV[V]を示すグラフである。
図14(b)は、電圧差ΔV[V]を相対値で判定する方法を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の二次電池の自己放電検査方法及び自己放電検査装置を、ニッケル水素蓄電池の自己放電検査方法及び自己放電検査装置の実施形態により
図1~11を参照して説明する。
【0022】
<本実施形態の二次電池の構成>
本実施形態の二次電池Bは、電気自動車やハイブリッド車両の駆動用の車載電池であるニッケル水素蓄電池を例示するが、これに限定されるものではない。ニッケル水素蓄電池では、例えば正極板は、発泡ニッケルの多孔体の正極基板に水酸化ニッケルなどを正極活物質として正極合材層が充填されている。一方、負極板は、ニッケル製のパンチング板からなる負極基板に水素吸蔵合金を負極活物質として負極合材層が形成されている。これらの正極板と負極板がセパレータを介して積層され電極群が形成されている。電極群は、電池ケースに複数設けられた電槽に収容され、直列に接続されるとともに外部接続端子が接続される。ここに水酸化カリウム水溶液などのアルカリ電解液が注液され、電池ケースに蓋体が装着される電池モジュールの組立が完了する。
【0023】
このようなニッケル水素蓄電池は、電池要素の組立が完了しても電池として未完成であり、初充電やコンディショニングを経て、容量、電圧、内部抵抗などの検査が行われる。また、所定の電圧に充電された電池が高温で無負荷の状態とされるエージングが行われる。エージングにより、微短の解消や電極の化学的な安定が図られる。一般的には、このエージング工程を利用して、自己放電の検査が行われる。
【0024】
ニッケル水素蓄電池は、材料ロットの特性のばらつきに起因して、正極の自己分解などのばらつきが生じやすい。このため、このようなニッケル水素蓄電池の、材料ロットの特性のばらつきに起因した自己放電と、微短による自己放電との区別が難しい(
図10参照)。このため、本実施形態に係る二次電池の自己放電検査方法は、ニッケル水素蓄電池について好適に実施することができる。
【0025】
なお、二次電池は、ニッケル水素蓄電池を例示するがニッケル水素蓄電池に限定する意図はなく、本発明が実施できる限りリチウムイオン二次電池など他の二次電池でも実施できることは言うまでもない。
【0026】
<二次電池の自己放電検査装置>
図1は、本実施形態の二次電池の製造装置を示すブロック図である。本実施形態の二次電池の製造装置1は、組立装置2により複数の二次電池Bを材料ロットごとに連続して組み立てる。充放電装置5は、二次電池の製造装置1の組立装置2において、組立が完了した二次電池Bの充放電を行う。充放電装置5は、図示しない電圧計、電流計などのセンサを備える。この充放電装置5は、制御装置4により制御される。本実施形態の自己放電検査装置3は、充放電装置5にて一定の充電状態に制御された二次電池の自己放電検査を行う。なお、本実施形態のエージング工程(
図2:S1)は自己放電の検査を目的とするため、比較的低い充電率(例えばSOC10[%]以下)であると、自己放電による電圧差ΔVが大きくなるため、好ましい。
【0027】
本実施形態の二次電池の自己放電検査装置3は、と、二次電池Bの電池電圧を測定する電圧測定装置6と、演算装置を備えた制御装置4を備える。この制御装置4は、充放電装置5と共有される。
【0028】
組立が完了した二次電池Bは、図示を省略したが、初充電、コンディショニングが行われ、さらに各種の検査が行われる。検査には、電池電圧や内部抵抗などが測定される。
組立が完了した二次電池は、制御装置4に制御された充放電装置5によりエージング工程のステップが開始される(
図2:S1)。エージング工程のステップは、制御装置4が充放電装置5により一定の値まで充電した後、準備段階として図示しない加熱装置で二次電池Bを所定の温度まで上昇させる。そして、ここから一定時間無負荷で放置するエージング工程を行う。このエージング工程において、例えば微小金属粉などに由来する微小短絡などを解消する。また、電池内が化学的に安定した状態となる。本実施形態では、自己放電の検査もその目的の一つである。このエージング工程では無負荷であるので、電力の外部放電はない。しかしながら、微小短絡や、電解液を介した放電が生じ、「自己放電」による電圧の低下が生じる。自己放電が大きいと、使用しなくても電圧の低下が早く、電池の性能が低下する。そこで、二次電池Bの組立が完了した場合は、まず、充放電装置5において、設定した充電率まで充電した後、自己放電検査装置3で自己放電検査としてのエージング工程のステップ(S1)が行われる。
【0029】
制御装置4では、事前電池電圧V測定のステップ(S2)および、事後電池電圧V測定のステップ(S3)において、電圧測定装置6により、個別の二次電池B1~B9…の電圧が取得され、記憶される。
【0030】
制御装置4は、CPU、RAM、ROM、記憶手段を備えたコンピュータを備える。制御装置4は、充放電装置5及び自己放電検査装置3の制御を行う。そして、事前電池電圧V測定のステップ(S2)および、事後電池電圧V測定のステップ(S3)においてそれぞれ各二次電池Bの電池電圧を測定する。測定した結果は、記憶手段に記憶し、その電圧差ΔV[V]を記憶する。記憶したΔV[V]は、後述する手順で演算し、較差判定や相対判定を行って、各二次電池の自己放電を検査して、その二次電池が良品か不良品かを判定する。
【0031】
(本実施形態の手順)
上述したとおり、従来の絶対値判定は、相対判定もいずれも良品であっても、不良品として過検出される可能性があった。このため、製造工程で良品の二次電池を製造しても不良品として判定されてしまうという過検出の問題があった。
【0032】
一方相対判定も単独では、過検出による問題があった。ここで、本実施形態では、絶対値判定と相対判定の考え方を組み合わせることとした。しかしながら、単純に絶対値判定と相対判定を組み合わせたところで、いずれの問題点が解決するわけではない。
【0033】
そこで本発明者らは、絶対値判定と相対判定の特徴を生かすために独自の方法を見出した。
(本実施形態の二次電池の自己放電検査方法)
図2は、本実施形態の二次電池の自己放電検査方法の手順を示すフローチャートである。以下、フローチャートを参照して本実施形態の二次電池の自己放電検査方法の手順を説明する。
【0034】
<ΔV[V]の取得>
この方法は、まず、制御装置4が自己放電検査装置3によりエージング工程のステップ(S1)の手順を開始する。なお、エージング工程のステップ(S1)は、「事後電池電圧V測定のステップ(S3)」により電圧測定装置6で二次電池Bの電池電圧Vの測定が完了するまで継続される。エージング工程のステップ(S1)が開始されると、まず所定の充電率(例えばSOC10%)まで充電した二次電池Bを、加熱して所定の温度まで上昇させる。二次電池Bを所定の温度まで上昇させたら、その後は二次電池Bの温度を一定に維持する。
【0035】
二次電池Bの温度が所定温度まで上昇したら、制御装置4は「事前電池電圧V測定のステップ(S2)」により電圧測定装置6で二次電池Bの電池電圧Vを測定する。その後、定温のエージング工程が行われ、設定された時間を経過したら、制御装置4は、「事後電池電圧V測定のステップ(S3)」により電圧測定装置6で二次電池Bの電池電圧Vを測定する。そして、「ΔV取得のステップ(S4)」の手順を実行する。「ΔV取得のステップ(S4)」においては、「事前電池電圧V測定のステップ(S2)」で測定した電圧と、「事後電池電圧V測定のステップ(S3)」で測定した電圧の電圧差ΔV[V]を取得する。電圧差ΔVは、それぞれの二次電池B1,B2…ごとに取得する。なお、本実施形態では、この「ΔV取得のステップ(S4)」で電圧差ΔV[V]を取得した検査対象となる二次電池Bを「対象二次電池」という。
【0036】
<移動平均MAの算出>
続く「移動平均算出のステップ(S5)」では、「対象二次電池」と隣接して製造された比較用の「比較二次電池」の電圧差ΔV[V]の移動平均MAを算出する。
【0037】
二次電池の製造工程においては、製造ラインで二次電池Bが順次連続して生産される。ここで、「隣接する二次電池」とは、少なくとも「対象二次電池」の前、若しくは「対象二次電池」の後の二次電池を含む。さらに前後、あるいは前と後に2つずつの計5つの二次電池の移動平均を取得するようにしてもよい。
【0038】
なお、生産開始時は、「前に隣接した二次電池」は存在しないが、その場合は、取得できるデータのみで移動平均を取るか、取得できないデータを他のデータで代替してもよい。例えば、「対象二次電池」に前後に隣接した2つの「比較二次電池」と計3つの二次電池で移動平均MAを取る場合を原則とする。但し、最初に製造する二次電池が対象二次電池である場合は、「対象二次電池」と、後ろに隣接する「比較二次電池」の2つで移動平均MAをとってもよい。あるいは、「対象二次電池」と、後ろに隣接する「比較二次電池」のΔV[V]を二倍して、3つ分のΔV[V]で移動平均MAをとってもよい。
【0039】
このような取り扱いは、最後に生産する二次電池が「対象二次電池」となるような場合にも同様に適用することができる。
<移動平均MAの具体例>
図3は、較差判定におけるΔV[V]の移動平均MAの取得を示す図である。ここでは測定対象である二次電池B2を対象二次電池とし、その前の二次電池B1とその後ろの二次電池B3を比較二次電池としてグループG1とする。この3つの二次電池B1~B3からなるグループG1の移動平均MAを算出する。算出は、単純平均で3つの電圧差ΔV[V]の和を、二次電池Bの数で除する。このように算出した移動平均MAは、二次電池B2の移動平均となる。
【0040】
図4は、較差判定におけるΔV[V]の移動平均MAの取得を示す図である。ここでは測定対象である二次電池B3を対象二次電池とし、その前の二次電池B2とその後ろの二次電池B4を比較二次電池としてグループG2とする。この3つの二次電池B2~B4からなるグループG2の移動平均MAを算出する。算出は、単純平均で3つの電圧差ΔV[V]の和を、二次電池Bの数で除する。このように算出した移動平均MAは、二次電池B3の移動平均となる。
【0041】
<較差DA算出>
図5は、較差判定において取得した各二次電池B1~B11のΔV[V]の移動平均MAと、その二次電池のΔV[V]を示す図である。
図3及び
図4に示したような方法で、二次電池B1~B11を対象二次電池とし、その前後を比較二次電池として移動平均MAのグラフを示す。なお、二次電池B1は、比較二次電池を二次電池B2のみとした。また、二次電池B11は、比較二次電池を二次電池B10のみとした。
【0042】
「較差算出のステップ(S6)」では、「移動平均算出のステップ(S5)」で算出した移動平均MAと、「ΔV取得のステップ」で電圧差ΔV[V]を取得した「対象二次電池」との較差DAを算出する。
【0043】
<較差判定>
図6は、較差判定において取得した各二次電池BのΔVの移動平均MAと、その二次電池BのΔV[V]との差を示す図である。較差DAは、その二次電池BのΔV[V]から移動平均MAを引いた差として表す。例えば、二次電池B1は、
図5に示すように、ΔV[V]が、移動平均MAより大きいため、正の数となる。次に、二次電池B2では、
図5に示すように、ΔV[V]が、移動平均MAより小さいため、負の数となる。二次電池B7では、ΔV[V]が極めて大きいため、較差DAは、大きな正の数となる。二次電池B11も同様に較差DAは、大きな正の数となる。
【0044】
複数の隣接した二次電池(ここでは、対象二次電池に対する比較二次電池)は、その材料などの特性がほぼ同じであると推定できる。移動平均MAのΔV[V]から「対象二次電池」のΔV[V]が大きく較差があれば、その材料ロットの材料のばらつきなどの特性が原因ではなく、「対象二次電池」の固有の特性に差があることを示す。その意味で、この「較差DA」は、狭い範囲での相対評価を行っている。従来の相対評価では、製品全体や材料ロットとの比較である。しかし、本実施形態の較差DAは、狭い範囲で相対評価を行っていることとなるので、その材料などの特性がほぼ同じであると推定できる複数の近接した二次電池と比較することで、精度を高めることができる。
【0045】
ここで、閾値Taは、較差DAを判定するための基準値である。すなわち、較差DAが大きいということは、移動平均MAに対して、ΔV[V]が極めて大きいということである。すなわち、対象二次電池が比較二次電池と比較して、自己放電が大きいことを示すため、この対象二次電池は、自己放電に関して問題があると判断できる。この閾値Taは、製造される二次電池の材料のばらつきから予想される範囲を超えた場合に、「対象二次電池」自体の問題で、自己放電が大きくなっていると判断できる。この製造される二次電池の材料のばらつきは、狭い範囲でより小さくなっているものと思われるため、この閾値Taもより高い精度で設定できる。
【0046】
よって、「較差判定のステップ(S7)」では、「較差算出のステップ(S6)」で算出した較差DAと、予め設定した閾値Taと比較して良品か不良品か否かを判定することができる。ここでの判定結果は、制御装置4の記憶手段に記憶されている。
【0047】
<異なる材料ロット間での移動平均MA>
図7は、材料ロットの切替部での過剰検出の可能性がある場合の相対判定とのクロスチェックをする必要性を示す図である。
【0048】
本実施形態では、異なる材料ロット(異なる原材料を用いた生産ロット)の二次電池Bも連続して製造している。この場合、同一材料ロット内では、比較的材料のばらつきが少ないものと推定できる。一方、異なる材料ロット間では、比較的材料のばらつきが大きいものと推定できる。このため、異なる材料ロットを跨いで移動平均MAを算出した場合には、同一材料ロット内での移動平均MAよりも比較二次電池のΔV[V]のばらつきが大きくなる。このため、較差DAも大きくなる傾向がある。その結果、同一の閾値Taであれば、良品を不良品と判断する過検出が生じる可能性が高くなる。
【0049】
対象二次電池B5は、材料ロット2を用いた二次電池である。
図7に示すように材料ロット1では、材料ロット2よりも全体にΔV[V]が平均A1と高くなっている。一方、材料ロット2では、材料ロット1よりも全体にΔV[V]が平均A2と低くなっている。なお、二次電池B7や二次電池B11は不良品であるので影響を無視する。そうすると材料ロット1の平均A1と材料ロット2の平均A2とは、平均差ΔAができる。そうすると、移動平均MAは、材料ロット2の影響を受けて低くなるため、対象二次電池である二次電池B4の較差DAが大きくなる。このような理由から、材料ロットを跨いだ移動平均MAの場合は、過検出の可能性が高くなる。
【0050】
<相対判定>
そこで、このような場合は、「相対値算出のステップ(S8)」、「相対判定のステップ(S9)」を行う。
【0051】
「相対値算出のステップ(S8)」では、同一材料ロット内における相対判定を行うことで、このような過検出を抑制する。相対判定は、一つの材料ロットに含まれる二次電池Bの電圧差ΔV[V]を母集団としたときの母分散を求める。続いて、その材料ロットに含まれるそれぞれの二次電池Bの電圧差ΔV[V]の母標準偏差σを算出する。
【0052】
「相対判定のステップ(S9)」では、算出したそれぞれの二次電池Bの母標準偏差σと、予め設定した閾値Trと比較して、不良品か否かを判定する。
この実施形態では、各ロットの全数のΔV[V]を集計している。
【0053】
図8は、母分散σ
2を求める式である。母分散は具体的には、平均値からの偏差の自乗の平均に等しい。大きさが「n」であるデータx
1,x
2、…,x
nの母集団の母分散「σ
2」は、「x
1,x
2,…,x
n」に対して、母平均値を「μ」で表すとき、
図8に示す式で表すことができる。ここで「σ
2」は、母分散であり、「σ」は母標準偏差である。
【0054】
なお、材料ロットの母集団が大きい場合は、対象となる二次電池の全数の集計ではなく、標本による「分散s2」を求めてもよい。「母標準偏差σ」がわからないときは、母標準偏差σに替えて「標準偏差s」を用いてもよい。
【0055】
また、「母標準偏差σ」がわからないときは、母集団の標準偏差の推定値として、標本の不偏偏差を用いることもできる。
なお、この相対判定は、単独で用いた場合は、従来技術で述べた通り過検出を防止することができない。つまり、異なる材料ロットを跨いだ移動平均MAに基づいて較差DAの較差判定により過検出により不良品と判定された二次電池Bに対して、相対判定によりこれが過検出であるとして、良品と判定するものである。ここでの各二次電池Bの判定結果は、制御装置4の記憶手段に記憶されている。
【0056】
<最終判定>
「最終判定のステップ(S10)」では、較差判定のステップ(S7)と相対判定のステップ(S9)とのいずれにおいても不良品であると判定された前記二次電池を不良品と判定する。最終判定のステップ(S10)では、まず検査対象となる二次電池Bが、較差判定のステップ(S7)で、良品か否かを制御装置4の記憶手段から読み出す。ここで良品と判断されていれば、そのまま良品と判断して(S11)、処理を終了する。
【0057】
一方、検査対象となる二次電池Bが、較差判定のステップ(S7)で、良品か否かを制御装置4の記憶手段から読み出す。ここで不良品と判断されていれば、相対判定のステップ(S9)での判定が良品か否かを制御装置4の記憶手段から読み出す。相対判定のステップ(S9)で、良品と判断されていれば、そのまま良品と判断して(S11)、処理を終了する。
【0058】
一方、相対判定のステップ(S9)で、良品か否かを制御装置4の記憶手段から読み出し不良品と判断されている場合は、較差判定のステップ(S7)においても既に不良品と判断されているので、最終判定として不良品と判定し(S12)処理を終了する。
【0059】
(本実施形態の作用)
<較差判定の作用>
図9は、従来の自己放電検査での不良品検出の模式的な図である。
図9に示すように、エージング工程における自己放電は、その二次電池固有の微小短絡などを起因とする自己放電がある。その一方で、材料ロットの原料のばらつきに起因する正極の自己分解による自己放電がある。これらは、ΔV[V]の検出だけでは区別がつかない。材料ロットの原料のばらつきに起因する正極の自己分解による自己放電は、その二次電池の特性といえるものであり、直ちに不良品と判断することはできない。しかしながら、従来は、ΔV[V]の検出だけでは区別がつかないため、良品である材料ロット1に属する二次電池も不良品として過検出する可能性があった。
【0060】
図10は、本実施形態の較差判定による自己放電検査での不良品検出の模式的な図である。本実施形態では、移動平均MAを用いることで、同一の材料ロットで共通する材料ロットの原料のばらつきに起因する正極の自己分解によるΔV[V]を打ち消すことで、その二次電池固有の微小短絡などを起因とする自己放電を検出することができる。そうすると、本実施形態の較差判定のステップ(S7)において、その二次電池固有の微小短絡などを起因とする自己放電を検出の閾値Taにより、より正確に微小短絡などを起因とする自己放電を生じている二次電池を適正に検出することができる。
【0061】
<過検出の抑制>
図11は、過検出した良品の比率を示すグラフである。ここで「過検出」とは、良品を過剰に不良品として誤検出することをいう。従来の絶対値判定による比較例では、過検出した良品の比率は、100万個当たりおよそ2100個の0.21%であった。一方、本実施形態の自己放電検査方法によれば、過検出した良品の比率は、0.02%と劇的に減少した。このため、二次電池の製造工程におけるロスを大幅に低減することができた。
【0062】
<不良品の検出漏れの抑制>
図12は、従来を指数100としたときの不良品の検出を示すグラフである。従来の絶対値判定による不良品の検出を指数100とした比較例に対して、本実施形態の自己放電検査方法による実施例によれば、指数101となった。すなわち、比較例において良品等判定された潜在的な不良品が、実施例では、正しく不良品として顕在化されたことを意味する。
【0063】
本実施形態の自己放電検査方法による実施例によれば、このように良品及び不良品をそれぞれ正しく検出できるという作用がある。
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態の二次電池Bの自己放電検査方法及び自己放電検査装置3によれば、製造工程における二次電池の良品と不良品を適切に判定することができる。
【0064】
(2)本実施形態では、ΔV取得ステップ(S4)で二次電池Bの電圧差ΔVを取得する。そして、移動平均算出のステップ(S5)で対象二次電池Boと、隣接して製造された比較二次電池Bcの電圧差ΔVの移動平均MAを算出する。このため、同一材料ロットで同様な特性を有した二次電池との相対評価ができる。
【0065】
(3)較差算出のステップ(S6)では、求めた移動平均MAと閾値Taと比較することで、較差DAを算出する。そして、較差判定のステップ(S7)で、較差DAを閾値Taと比較することで、その対象二次電池Boに特有な自己放電をする不良品NGを容易かつ正確に検出することができる。
【0066】
(4)同様に、較差DAを閾値Taと比較することで、不良品NGである対象二次電池Boを良品Gとして検出漏れをすることを容易かつ正確に検出することができる。
(5)また、移動平均MAを異なる材料ロットを跨いだ場合に較差判定のステップ(S7)で良品Gが不良品NGとして検出される場合がある。この場合は、相対値算出のステップ(S8)、相対判定のステップ(S9)において、同一材料ロット内での相対判定で問題が無ければ、最終判定のステップで良品と判定し、過検出を抑制することができる。
【0067】
(6)そのため、異なる材料ロットによる二次電池Bも、連続的に製造することができるため、生産効率を向上させることができる。
(7)相対判定は、その材料ロットに属するすべての二次電池Bを母集団として、平均値μ、母分散σ2、母標準偏差σを用いて判定するため、正確な判定をすることができる。
【0068】
(8)本実施形態では、無負荷での放電工程としてエージング工程のステップ(S1)を利用している。このため、通常の二次電池Bの生産工程を妨げることなく、生産効率を低下させることもない。
【0069】
(9)本実施形態における二次電池は、ニッケル水素蓄電池を例示している。ニッケル水素蓄電池は、材料のばらつきに起因する自己放電によるΔVの変化が大きいため、本実施形態の二次電池の自己放電検査方法による検査により、より適切な検査が可能になるという効果もある。
【0070】
(10)本実施形態の二次電池の自己放電検査装置3は、本実施形態の二次電池の自己放電検査方法を制御装置4により実行させることで、容易に本実施形態を実施することができる。そのため、特殊な装置などを必要とせず、既存の設備を活用して実施することができる。
【0071】
(別例)
○本実施形態に二次電池Bは、車載用のニッケル水素蓄電池の電池モジュールを例示したが、対象となる二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケルカドミウム電池、全固体電池など自己放電の検査が必要な広い範囲の二次電池において適用できる。
【0072】
○また、二次電池Bの用途も、車両用に限定するものではなく、コンピュータなどの電源や、家庭や工場における蓄電設備などにおいての使用を目的とすることができる。
○本実施形態では、異なる材料ロットを跨いで、連続生産する場合を想定しているが、単一の材料ロットのみを対象に製造することもできる。その場合は、相対値算出のステップ(S8)、相対判定のステップ(S9)、最終判定のステップ(S10)を省略することもできる。この場合は、較差判定のステップ(S7)の判定により、良品G若しくは不良品NGを判断する。
【0073】
○本実施形態では、検査の対象となる対象二次電池Boの前後に隣接する二次電池を比較二次電池Bcの3つで、移動平均MAを算出している。しかしながら、前述したように、比較二次電池Bcは、対象二次電池Boの前若しくは後のいずれか一方に隣接する二次電池として、2つの二次電池Bの移動平均とすることもできる。さらに、対象二次電池Boの前後に隣接する2つずつの比較二次電池Bcの5つで、移動平均MAを算出するようにしてもよい。
【0074】
○また、製造開始時や製造終了時、異なる材料ロットにおける移動平均の求め方は、その変形例は上述したが、さらに当業者により、適切な方法を採用することができる。
○また、相対値算出のステップ(S8)では、母集団となる同一材料ロットに含まれる二次電池Bの全数から、平均値μ、母分散σ2などを求めたが、前述したように標本を抽出して行ってもよい。その判定の方法は、当業者により適宜選択できる。
【0075】
○また、本実施形態の無負荷での放電工程がエージング工程である場合を説明したが、自己放電による電圧低下が適切に測定できれば、エージング工程に限定されるものではない。
【0076】
○
図1に示す本実施形態の二次電池の製造装置1は、前提となる最低限の構成を示す模式的なブロック図であり、二次電池の製造装置1や自己放電検査装置3は、このような態様に限定されるものではない。
【0077】
○本願明細書に記載された数値や範囲、材質などは一例であり、当業者により適宜最適化されて実施できる。
○
図2に示すフローチャートは、手順の一例であり、当業者により、その手順を付加し、削除し、変更し、またその順序を変更しても実施できる。
【0078】
○本発明は、実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、当業者によりその構成を付加し、削除し、変更しても実施できる。
【符号の説明】
【0079】
1…二次電池の製造装置
2…組立装置
3…自己放電検査装置
4…(演算装置を備えた)制御装置
5…充放電装置
6…電圧測定装置
B(B1,B2…)…二次電池
Bo…対象二次電池
Bc…比較二次電池
ΔV…電圧差
MA…移動平均
DA…較差
Ta…閾値
μ…母平均値
σ2…母分散
σ…母標準偏差
Tr…閾値
NG…不良品
G…良品
E…過検出された二次電池