(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128840
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033479
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC02
2C065JC07
2C065JC09
2C065JC12
2C065JC13
(57)【要約】
【課題】 グレーズ層の蓄熱性能を高めることにより、消費電力の増加を抑制することが可能なサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】 サーマルプリントヘッドA10は、基板1と、基板1の少なくとも一部を覆う第1グレーズ層21と、第1方向zにおいて第1グレーズ層21を基準として基板1とは反対側に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層3と、前記複数の発熱部に導通し、かつ抵抗体層3に接して配置された配線層4とを備える。前記複数の発熱部は、第1方向zに対して直交する第2方向に沿って配列されている。第1グレーズ層21には、フィラー211が含有されている。フィラー211は、中空部を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の少なくとも一部を覆う第1グレーズ層と、
第1方向において前記第1グレーズ層を基準として前記基板とは反対側に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、を備え、
前記複数の発熱部は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列されており、
前記第1グレーズ層には、フィラーが含有されており、
前記フィラーは、中空部を有する、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記第1方向に視て、前記複数の発熱部は、前記フィラーに重なる、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記フィラーは、前記中空部を囲む殻部を有し、
前記中空部は、真空である、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記殻部の組成は、二酸化ケイ素を含む、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記フィラーの粒径は、0.3μm以上0.5μm以下である、請求項2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第1グレーズ層の前記第1方向および前記第2方向に対して直交する第3方向の両側に位置する第2グレーズ層をさらに備え、
前記第1グレーズ層のガラス転移点は、前記第2グレーズ層のガラス転移点よりも低い、請求項2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記第2グレーズ層は、前記第1方向において前記基板に対向する側とは反対側を向く基面を有し、
前記基面は、前記第1グレーズ層を挟む一対の端縁を含み、
前記第1グレーズ層は、前記一対の端縁に接している、請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記第1グレーズ層は、前記基面と面一である、請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記第1グレーズ層は、前記基面から突出している、請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記第2方向に視て、前記基面から突出する前記第1グレーズ層の部分の周縁は、凸状の曲線をなす、請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記基板は、前記第1方向において前記配線層が位置する側を向く主面と、前記主面から突出する凸部と、を有し、
前記凸部は、頂面、第1傾斜面および第2傾斜面を有し、
前記頂面は、前記第1方向を向き、かつ前記主面から離れて位置しており、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記主面と前記頂面との間に位置し、かつ前記主面に対して傾斜しており、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記第1方向および前記第2方向に対して直交する第3方向において互いに離れて位置しており、
前記第1グレーズ層は、前記頂面を覆っている、請求項2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記主面から前記頂面に向かうほど互いに近づく、請求項11に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記基板は、半導体材料を含む、請求項12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記主面、前記第1傾斜面、前記第2傾斜面および前記第1グレーズ層を覆う絶縁層をさらに備え、
前記絶縁層は、前記基板と前記配線層との間に位置する、請求項13に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記複数の発熱部を覆う保護層をさらに備える、請求項2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記配線層は、共通配線と、複数の個別配線と、を含み、
前記共通配線は、前記複数の発熱部に導通しており、
前記複数の個別配線は、前記複数の発熱部に個別に導通している、請求項15に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
前記第1方向において前記基板を基準として前記第1グレーズ層とは反対側に位置する放熱部材をさらに備え、
前記基板は、前記放熱部材に接合されている、請求項16に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、感熱紙などの記録媒体に印字するサーマルプリンタの主たる構成要素である。特許文献1には、サーマルプリントヘッドの一例が開示されている。当該サーマルプリントヘッドは、基板と、基板の上に配置された共通電極および複数の個別電極と、共通電極および複数の個別電極に導通する発熱抵抗体とを備える。共通電極および複数の個別電極を介した通電に伴って発熱抵抗体が選択的に発熱することによって、記録媒体にドット印字がされる。
【0003】
特許文献1に開示されているサーマルプリントヘッドは、グレーズ層をさらに備える。発熱抵抗体は、グレーズ層の上に配置されている。発熱抵抗体に隣接する共通電極および複数の個別電極の形成の際、グレーズ層は、基板の表面粗さに起因したこれらの電極に欠損が発生することを防止する。さらにグレーズ層は、発熱抵抗体が発した熱を一時的に蓄える機能を有する。ここで、グレーズ層の蓄熱性能が低下すると、サーマルプリントヘッドの消費電力が増加する。特に寒冷地では、グレーズ層の蓄熱性能の低下が懸念される。したがって、サーマルプリントヘッドの消費電力の増加を抑制すべく、グレーズ層の蓄熱性の向上を図ることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上述の事情に鑑み、グレーズ層の蓄熱性能を高めることにより、消費電力の増加を抑制することが可能なサーマルプリントヘッドを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、前記基板の少なくとも一部を覆う第1グレーズ層と、第1方向において前記第1グレーズ層を基準として前記基板とは反対側に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、を備え、前記複数の発熱部は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列されており、前記第1グレーズ層には、フィラーが含有されており、前記フィラーは、中空部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかるサーマルプリントヘッドが具備する構成によれば、グレーズ層の蓄熱性能が高められるため、当該サーマルプリントヘッドの消費電力の増加を抑制することが可能となる。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの底面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すサーマルプリントヘッドの部分拡大平面図である。
【
図11】
図11は、本開示の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの部分拡大平面図である。
【
図16】
図16は、本開示の第2実施形態の変形例にかかるサーマルプリントヘッドの断面図である。
【
図18】
図18は、本開示の第3実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの平面図である。
【
図24】
図24は、本開示の第4実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの要部の部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1~
図10に基づき、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA10について説明する。サーマルプリントヘッドA10は、基板1、第1グレーズ層21、抵抗体層3、配線層4および保護層5を備える。さらにサーマルプリントヘッドA10は、放熱部材72、複数の駆動素子73、封止樹脂76およびコネクタ77を備える。ここで、
図4および
図5は、理解の便宜上、保護層5の図示を省略している。
【0012】
これらの図に示すサーマルプリントヘッドA10は、抵抗体層3に含まれる複数の発熱部31(詳細は後述)を選択的に発熱させることによって、感熱紙などの記録媒体に印字を施す電子デバイスである。抵抗体層3は、印刷および焼成により形成される。したがって、サーマルプリントヘッドA10は、いわゆる厚膜型と呼ばれる。
【0013】
ここで、説明の便宜上、後述する基板1の主面11の法線方向を「第1方向z」と呼ぶ。第1方向zに対して直交する方向を「第2方向x」と呼ぶ。第2方向xは、サーマルプリントヘッドA10の主走査方向に相当する。第1方向zおよび第2方向xの双方に対して直交する方向を「第3方向y」と呼ぶ。第3方向yは、サーマルプリントヘッドA10の副走査方向に相当する。
【0014】
基板1は、
図1および
図2に示すように、第2方向xに延びている。基板1の組成は、アルミナ(Al
2O
3)を含む。基板1は、アルミナおよび樹脂バインダなどを含む材料からなるセラミックスである。基板1の材料は、これらに加えて遮光材料を含めてもよい。当該遮光材料は、たとえば炭素(C)である。
【0015】
図6および
図7に示すように、基板1は、主面11および裏面12を有する。主面11および裏面12は、第1方向zにおいて互いに反対側を向く。主面11は、第1グレーズ層21に対向している。
【0016】
第1グレーズ層21は、
図6および
図7に示すように、基板1の少なくとも一部を覆っている。サーマルプリントヘッドA10においては、第1グレーズ層21は、基板1の主面11の全体を覆っている。第1グレーズ層21は、基板1の主面11に対して非晶質ガラスを含むペーストをスクリーン印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。当該非晶質ガラスは、たとえばSiO
2-BaO-Al
2O
3-SnO-ZnO系ガラスである。このため、第1グレーズ層21は、透明または白色を呈する。第1グレーズ層21のガラス転移点は、約680℃である。
【0017】
図8に示すように、第1グレーズ層21には、フィラー211が含有されている。
図9に示すように、フィラー211は、中空部211Aおよび殻部211Bを有する。中空部211Aは、真空である。殻部211Bは、中空部211Aを囲んでいる。殻部211Bの組成は、二酸化ケイ素(SiO
2)を含む。フィラー211の粒径Dは、0.3μm以上0.5μm以下である。第1グレーズ層21に対するフィラー211の重量パーセント(wt%)は、30%以上80%以下である。
【0018】
配線層4は、
図5および
図6に示すように、抵抗体層3に接している。配線層4は、抵抗体層3に通電するための導電経路を構成している。サーマルプリントヘッドA10においては、配線層4は、第1グレーズ層21に接している。配線層4は、共通配線41および複数の個別配線42を含む。共通配線41は、複数の発熱部31に導通している。複数の個別配線42は、複数の発熱部31に個別に導通している。サーマルプリントヘッドA10においては、共通配線41から複数の発熱部31を経由して複数の個別配線42に向けて電流が流れる。したがって、共通配線41が正極であり、かつ複数の個別配線42が負極である。配線層4の材料の一例として、金(Au)を主成分とするレジネートペーストが挙げられる。配線層4は、第1グレーズ層21に対してレジネートペーストをスクリーン印刷し、かつ当該ペースト焼成した後、当該ペーストに対してフォトリソグラフィパターニングおよびエッチングを施すことにより形成される。配線層4の厚さの範囲の一例は、0.6μm以上1.2μm以下である。
【0019】
図4に示すように、共通配線41は、基部411および複数の延出部412を有する。基部411は、第3方向yにおいて抵抗体層3を基準として第3方向yの一方側に位置する。基部411は、第2方向xに延びており、かつ第3方向yから離れている。
【0020】
図4および
図5に示すように、複数の延出部412は、基部411から抵抗体層3に向けて第3方向yに延びている。複数の延出部412は、第2方向x沿って等間隔に配列されている。
【0021】
図4に示すように、複数の個別配線42の各々は、基部421および延出部422を有する。複数の個別配線42は、基板1の上において、複数の駆動素子73の各々に対応した束となって配置されている。複数の個別配線42は、複数の発熱部31に個別に電圧を印加する。
【0022】
図4に示すように、基部421は、第3方向yにおいて抵抗体層3を基準として共通配線41の基部411とは反対側に位置する。複数の個別配線42の各々の基部421は、第3方向yにおいて互いに離れた2つの列をなす。当該2つの列の各々は、第2方向xに沿って配列されている。当該2つの列のうち抵抗体層3から最も近くに位置する列においては、隣り合う2つの基部421の間に延出部422が位置する。
【0023】
図4に示すように、延出部422は、基部421につながっている。さらに延出部422は、第1部422A、第2部422Bおよび第3部422Cを含む。
【0024】
図4および
図5に示すように、第1部422Aは、第3方向yに延びている。第1部422Aは、第2方向xに沿って等間隔に配列されている。共通配線41の複数の延出部412のうち、第2方向xにおいて隣り合う2つの延出部412の間に第1部422Aが位置する。
【0025】
図4および
図5に示すように、第2部422Bは、第1部422Aにつながっている。複数の個別配線42の各々の延出部422の第2部422Bは、その大半が第3方向yに対して傾斜している。
【0026】
図4および
図5に示すように、第3部422Cは、第3方向yにおいて第2部422Bを基準として第1部422Aとは反対側に位置する。第3部422Cは、第2部422Bと基部411とにつながっている。第3部422Cは、第3方向yに延びている。
【0027】
図4に示すように、複数の駆動素子73の各々に対応した複数の個別配線42の1つの束において、第2部422Bと第3部422Cとの境界位置は、第2方向xの楼側で対比すると第3方向yのずれΔLが生じている。
【0028】
抵抗体層3は、
図1および
図4に示すように、第2方向xに延びている。
図5および
図6に示すように、抵抗体層3は、第1グレーズ層21に接している。抵抗体層3は、共通配線41の複数の延出部412と、複数の個別配線42の各々の延出部422の第1部422Aとに交差している。抵抗体層3は、複数の延出部412の各々と、複数の個別配線42の各々の延出部422の第1部422Aとのそれぞれ一部ずつを覆っている。サーマルプリントヘッドA10においては、抵抗体層3は、複数の延出部412と、複数の個別配線42の各々の延出部422の第1部422Aとを跨いでいる。
【0029】
抵抗体層3のうち、複数の延出部412のいずれかを覆う部分と、第2方向xにおいて当該部分の隣に位置する複数の個別配線42の第1部422Aのいずれかを覆う部分とにより挟まれた領域が、複数の発熱部31のいずれかとされている。
図4に示すように、複数の発熱部31は、第2方向xに沿って配列されている。複数の発熱部31は、第1方向zにおいて第1グレーズ層21を基準として基板1とは反対側に位置する。配線層4により選択的に通電されることにより、複数の発熱部31は、選択的に発熱する。これにより、
図3に示す記録媒体にドット印字が施される。抵抗体層3の材料は、配線層4よりも電気抵抗率が高い材料が選択される。抵抗体層3の材料の一例は、酸化ルテニウム(RuO
2)粒子およびガラスフリットを含む導電性ペーストである。抵抗体層3は、導電性ペーストを第1グレーズ層21の上にスクリーン印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。抵抗体層3の最大厚さは、6μm以上10μm以下である。
【0030】
図10に示すように、第1方向zに視て、複数の発熱部31は、第1グレーズ層21のフィラー211に重なる。
【0031】
保護層5は、
図6および
図7に示すように、第1グレーズ層21に接している。保護層5は、複数の発熱部31を覆っている。さらに保護層5は、配線層4の一部を覆っている。サーマルプリントヘッドA10においては、基部411につながる共通配線41の一部と、複数の個別配線42の各々の基部421とを除く配線層4は、保護層5に覆われている。
【0032】
保護層5は、第1グレーズ層21と同じく非晶質ガラスを含む材料からなる。保護層5は、第1グレーズ層21および抵抗体層3と、配線層4の一部とに対して非晶質ガラスを含むペーストをスクリーン印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。
【0033】
放熱部材72は、
図3に示すように、第1方向zにおいて基板1を基準として第1グレーズ層21とは反対側に位置する。基板1の裏面12は、接合材(図示略)を介して放熱部材72に接合されている。放熱部材72の組成は、たとえばアルミニウム(Al)を含む。
【0034】
複数の駆動素子73は、
図1および
図3に示すように、抵抗体層3に対して第3方向yの他方側に位置する。駆動素子73は、基板1の上に搭載されている。駆動素子73の上面には、複数の電極(図示略)が設けられている。複数の電極のいくつかには、駆動素子73に対応する複数の個別配線42の基部421に導電接合された複数の第1ワイヤ74が導電接合されている。これにより、駆動素子73は、これに対応する複数の個別配線42に導通している。他の複数の当該パッドには、基板1に配置された配線に導電接合された複数の第2ワイヤ75が接続されている。駆動素子73は、複数の第1ワイヤ74を介して複数の個別配線42を選択的に通電させる。これにより、複数の発熱部31が選択的に発熱する。この他、駆動素子73は、第3方向yにおいて基板1とは分離され、かつ放熱部材72に支持された配線基板に搭載される構成でもよい。当該配線基板は、たとえばPCB(Printed Circuit Board)である。
【0035】
封止樹脂76は、
図3に示すように、複数の駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、および複数の第2ワイヤ75を覆っている。これらに加え、封止樹脂76は、保護層5に覆われていない複数の個別配線42の一部の領域(複数の基部421など)をさらに覆っている。封止樹脂76は、たとえばアンダーフィルに用いられる黒色かつ軟質の合成樹脂である。この他、封止樹脂76は、黒色かつ硬質の合成樹脂でもよい。
【0036】
コネクタ77は、
図1~
図3に示すように、第3方向yにおいて複数の駆動素子73に対して抵抗体層3とは反対側に位置する。サーマルプリントヘッドA10においては、コネクタ77は、基板1の第3方向yの端部に取り付けられている。コネクタ77は、サーマルプリンタに接続される。コネクタ77は、複数のピン(図示略)を有する。当該複数のピンの一部は、基板1において、複数の第2ワイヤ75が導電接合された配線(図示略)に導通している。さらに、当該複数のピンの別の一部は、基板1において、共通配線41の基部411に導通する配線(図示略)に導通している。これにより、外部からコネクタ77を介して共通配線41に定電圧が印加される。
【0037】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作動について説明する。
【0038】
図3に示すように、サーマルプリントヘッドA10の複数の発熱部31は、サーマルプリンタに組み込まれたプラテンローラ79に保護層5を介して対向している。プラテンローラ79は、記録媒体を送り出すためのローラ状の機構である。複数の発熱部31を覆う保護層5の領域と、プラテンローラ79との間に、記録媒体が挟み込まれている。サーマルプリンタの作動時は、プラテンローラ79が回転することにより、記録媒体が第3方向yに一定速度で送り出される。その際、複数の発熱部31が選択的に発熱すると、熱が保護層5を介して記録媒体に伝わることにより、当該記録媒体に印字が施される。同時に、複数の発熱部31から発生した熱は、第1グレーズ層21にも伝わる。第1グレーズ層21に伝わった熱の一部は、第1グレーズ層21に蓄えられる。その他の熱は、基板1および放熱部材72を介してサーマルプリントヘッドA10の外部に放出される。
【0039】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作用効果について説明する。
【0040】
サーマルプリントヘッドA10の第1グレーズ層21は、基板1の少なくとも一部を覆っている。抵抗体層3の複数の発熱部31は、第1方向zにおいて第1グレーズ層21を基準として基板1とは反対側に位置する。第1グレーズ層21には、フィラー211が含有されている。フィラー211は、中空部211Aを有する。本構成をとることにより、第1グレーズ層21の熱伝導率がより低下する。したがって、複数の発熱部31から第1グレーズ層21に伝わった熱がより長い時間において第1グレーズ層21に留まるため、第1グレーズ層21の蓄熱性能が高まる。したがって、本構成によれば、サーマルプリントヘッドA10において、グレーズ層の蓄熱性能が高められるため、サーマルプリントヘッドA10の消費電力の増加を抑制することが可能となる。
【0041】
第1方向zに視て、複数の発熱部31は、フィラー211に重なる。本構成をとることにより、第1グレーズ層21の蓄熱性を効率よく高めることができる。
【0042】
フィラー211は、中空部211Aを囲む殻部211Bを有する。中空部211Aは、真空である。本構成をとることにより、第1グレーズ層21となる非晶質ガラスを含むペーストを焼成する際、中空部211Aの熱膨張に伴うフィラー211の爆裂を防止できる。
【0043】
フィラー211の殻部211Bの組成は、二酸化ケイ素を含む。本構成をとることにより、フィラー211の線膨張係数が、第1グレーズ層21の線膨張係数と略等しくなる。これにより、フィラー211と第1グレーズ層21との界面における熱応力の発生が低減されるため、第1グレーズ層21に亀裂が発生することを抑止できる。
【0044】
第1グレーズ層21の蓄熱性能が高められることによって、当該蓄熱性能を損なわない範囲内で第1グレーズ層21の厚さをより薄くすることができる。本構成をとることにより、主面11に対して第1グレーズ層21となる非晶質ガラスを含むペーストをスクリーン印刷する際、当該ペーストの周囲に位置する乳剤等に起因した表面張力が低減される。これにより、第1グレーズ層21がより平坦なものとなる。
【0045】
サーマルプリントヘッドA10は、複数の発熱部31を覆う保護層5をさらに備える。本構成をとることにより、サーマルプリントヘッドA10に対する記録媒体の摩擦抵抗をより低減できる。
【0046】
サーマルプリントヘッドA10は、第1方向zにおいて基板1を基準として第1グレーズ層21とは反対側に位置する放熱部材72をさらに備える。基板1は、放熱部材72に接合されている。本構成をとることにより、第1グレーズ層21の過度な温度上昇が抑止される。これにより、印字品位の低下が防止される。
【0047】
〔第2実施形態〕
図11~
図13に基づき、本開示の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA20について説明する。これらの図において、先述したサーマルプリントヘッドA10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、
図11は、理解の便宜上、保護層5の図示を省略している。
【0048】
サーマルプリントヘッドA20においては、第1グレーズ層21の構成と、第2グレーズ層22をさらに備えることとが、先述したサーマルプリントヘッドA10の場合と異なる。
【0049】
第2グレーズ層22は、
図12および
図13に示すように、基板1の主面11の一部を覆っている。第2グレーズ層22は、基板1の主面11に対して準結晶(半結晶)ガラスを含むペーストをスクリーン印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。当該準結晶ガラスは、たとえばSiO
2-B
2O
3-Al
2O
3-ZrO
2系ガラスである。このため、第2グレーズ層22は、白色を呈する。第2グレーズ層22のガラス転移点は、約740℃である。したがって、第1グレーズ層21のガラス転移点は、第2グレーズ層22のガラス転移点よりも低い。
【0050】
図11~
図13に示すように、第2グレーズ層22は、第1グレーズ層21の第3方向yの両側に位置する。第2グレーズ層22は、第1方向zにおいて基板1と対向する側とは反対側を向く基面221を有する。さらに第2グレーズ層22には、第1方向zに貫通する開口22Aが形成されている。開口22Aは、第2方向xに延びている。開口22Aにおいて、基板1の主面11が露出している。
【0051】
図12および
図13に示すように、第1グレーズ層21の少なくとも一部は、第2グレーズ層22の開口22Aに収納されている。第1グレーズ層21は、基板1の主面11に接している。第2グレーズ層22の基面221は、第1グレーズ層21を挟む一対の端縁221Aを含む。第1グレーズ層21は、一対の端縁221Aに接している。
【0052】
図12および
図13に示すように、サーマルプリントヘッドA20においては、第1グレーズ層21は、第2グレーズ層22の基面221から突出している。第2方向xに視て、基面221から突出する第1グレーズ層21の部分の周縁は、凸状の曲線をなす。
【0053】
次に、
図14および
図15に基づき、サーマルプリントヘッドA20の製造方法のうち、第1グレーズ層21および第2グレーズ層22の形成方法について説明する。
図14および
図15の断面位置は、
図12の断面位置と同一である。
【0054】
最初に、
図14に示すように、基板1の主面11の一部を覆う第2グレーズ層22を形成する。第2グレーズ層22は、基板1の主面11に対して準結晶ガラスを含むペーストをスクリーン印刷した後、当該ペーストを焼成することにより形成される。スクリーン印刷の際、第2グレーズ層22に開口22Aが形成されるように主面11に乳剤等を塗布する。
【0055】
次いで、
図15に示すように、第1グレーズ層21を形成する。第1グレーズ層21の形成にあたっては、第2グレーズ層22の開口22Aに非晶質ガラスを含むペーストをディスペンサにより塗布する。当該ペーストには、フィラー211が含有されている。その後、当該ペーストを焼成する。焼成温度は、第2グレーズ層22のガラス転移点を超えないように調整する。以上により、第1グレーズ層21および第2グレーズ層22が形成される。
【0056】
<変形例>
図16および
図17に基づき、サーマルプリントヘッドA20の変形例であるサーマルプリントヘッドA21について説明する。サーマルプリントヘッドA21は、第1グレーズ層21の構成が、サーマルプリントヘッドA20の当該構成と異なる。
【0057】
図16および
図17に示すように、第1グレーズ層21は、第2グレーズ層22の基面221と面一である。第1グレーズ層21の厚さは、第2グレーズ層22の厚さに等しい。
【0058】
次に、サーマルプリントヘッドA20の作用効果について説明する。
【0059】
サーマルプリントヘッドA20の第1グレーズ層21は、基板1の少なくとも一部を覆っている。抵抗体層3の複数の発熱部31は、第1方向zにおいて第1グレーズ層21を基準として基板1とは反対側に位置する。第1グレーズ層21には、フィラー211が含有されている。フィラー211は、中空部211Aを有する。したがって、本構成によれば、サーマルプリントヘッドA20においても、グレーズ層の蓄熱性能が高められるため、サーマルプリントヘッドA20の消費電力の増加を抑制することが可能となる。さらにサーマルプリントヘッドA20においては、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成を具備することにより、サーマルプリントヘッドA10と同等の作用効果を奏する。
【0060】
サーマルプリントヘッドA20においては、第1グレーズ層21の第3方向yの両側に位置する第2グレーズ層22をさらに備える。第2グレーズ層22の基面221は、第1グレーズ層21を挟む一対の端縁221Aを含む。第1グレーズ層21は、一対の端縁221Aに接している。本構成をとることにより、第1グレーズ層21の体積が過度に縮小されることを防止できる。これにより、第1グレーズ層21の機能を確保しつつ、サーマルプリントヘッドA20の製造に必要な第1グレーズ層21の材料費を縮減できる。
【0061】
サーマルプリントヘッドA20においては、第1グレーズ層21は、第2グレーズ層22の基面221から突出している。さらに第2方向xに視て、基面221から突出する第1グレーズ層21の部分の周縁は、凸状の曲線をなす。本構成をとることにより、記録媒体への印字の際、サーマルプリントヘッドA20に対する記録媒体の接触面積を最小限に抑えつつ、複数の発熱部31からの熱を記録媒体に伝えることができる。これにより、印字品位のさらなる向上が図られる。
【0062】
〔第3実施形態〕
図18~
図23に基づき、本開示の第3実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA30について説明する。これらの図において、先述したサーマルプリントヘッドA10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0063】
サーマルプリントヘッドA30は、要部および付随部により構成される。サーマルプリントヘッドA30の要部は、基板1、絶縁層23、抵抗体層3、配線層4および保護層5を備える。サーマルプリントヘッドA30の付随部は、配線基板71、放熱部材72、複数の駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、複数の第2ワイヤ75、封止樹脂76およびコネクタ77を備える。ここで、
図18においては、理解の便宜上、保護層5、複数の第1ワイヤ74、複数の第2ワイヤ75、および封止樹脂76の図示を省略している。
図19および
図20においては、理解の便宜上、保護層5の図示を省略している。
【0064】
サーマルプリントヘッドA30においては、
図21に示すように、サーマルプリントヘッドA30の要部をなす基板1は、放熱部材72に接合されている。さらに、配線基板71は、第3方向yにおいて基板1の隣に位置する。配線基板71は、基板1と同じく放熱部材72に接合されている。基板1の上には、抵抗体層3の一部をなし、かつ第2方向xに沿って配列された複数の発熱部31が形成されている。複数の発熱部31は、配線基板71に搭載された複数の駆動素子73により選択的に発熱する。複数の駆動素子73は、コネクタ77を介して外部から送信される印字信号にしたがって駆動する。
【0065】
基板1は、
図18に示すように、第1方向zに視て第2方向xに延びる矩形状である。基板1は、半導体材料を含む。当該半導体材料は、ケイ素(Si)を組成とする単結晶材料を含む。
【0066】
図21に示すように、サーマルプリントヘッドA30においては、主面11がプラテンローラ79に対向し、かつ裏面12が放熱部材72に対向する。基板1の結晶構造に基づく主面11の面方位は、(100)面である。
【0067】
図22に示すように、基板1は、凸部13を有する。凸部13は、主面11から第1方向zに突出している。
図18および
図19に示すように、凸部13は、第2方向xに延びている。凸部13は、基板1に対して水酸化カリウム(KOH)溶液を用いた異方性エッチングにより形成される。
【0068】
図22および
図23に示すように、凸部13は、頂面130、第1傾斜面131および第2傾斜面132を有する。頂面130、第1傾斜面131および第2傾斜面132は、第2方向xに延びている。頂面130は、第1方向zを向き、かつ主面11から離れて位置する。第1傾斜面131および第2傾斜面132は、主面11と頂面130との間に位置する。サーマルプリントヘッドA30においては、第1傾斜面131および第2傾斜面132は、主面11および頂面130につながっている。第1傾斜面131および第2傾斜面132は、第3方向yにおいて互いに離れて位置する。第1傾斜面131および第2傾斜面132は、主面11に対して傾斜している。第1傾斜面131および第2傾斜面132は、主面11から頂面130に向かうほど互いに近づいている。主面11に対する第1傾斜面131および第2傾斜面132の各々の傾斜角αは、互いに等しい。
【0069】
第1グレーズ層21は、凸部13の頂面130を覆っている。第2方向xに視て、第1方向zにおいて頂面130よりも複数の発熱部31が位置する側における第1グレーズ層21の部分の周縁は、凸状の曲線をなす。
【0070】
絶縁層23は、
図22および
図23に示すように、基板1の主面11と、凸部13の第1傾斜面131および第2傾斜面132と、第1グレーズ層21とを覆っている。絶縁層23は、基板1と配線層4との間に位置する。絶縁層23により、基板1は、抵抗体層3および配線層4に対して電気絶縁されている。絶縁層23は、たとえば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を原材料とした二酸化ケイ素からなる。絶縁層23の厚さの例は、1μm以上15μm以下である。絶縁層23の熱伝導率は、第1グレーズ層21の熱伝導率よりも高い。
【0071】
抵抗体層3は、
図22および
図23に示すように、基板1の主面11および凸部13の上に配置されている。抵抗体層3は、絶縁層23に接している。これにより、サーマルプリントヘッドA30において、絶縁層23は、基板1と抵抗体層3との間に挟まれている。抵抗体層3は、たとえば窒化タンタル(TaN)からなる。抵抗体層3の厚さの例は、0.02μm以上0.1μm以下である。
【0072】
図19、
図20および
図23に示すように、抵抗体層3は、複数の発熱部31を含む。抵抗体層3において、複数の発熱部31は、配線層4から露出する部分である。複数の発熱部31に対して配線層4から選択的に通電されることによって、複数の発熱部31は、記録媒体を局所的に加熱する。複数の発熱部31は、第2方向xに沿って配列されている。複数の発熱部31のうち、第2方向xにおいて隣り合う2つの発熱部31は、互いに離れて位置する。複数の発熱部31は、絶縁層23に接して形成されている。サーマルプリントヘッドA30においては、複数の発熱部31は、基板1の凸部13の頂面130の上に形成されている。複数の発熱部31は、頂面130の第3方向yの中央に位置する。
図21に示すように、複数の発熱部31は、プラテンローラ79に対向している。
【0073】
配線層4は、
図22および
図23に示すように、抵抗体層3に接して配置されている。配線層4は、抵抗体層3の複数の発熱部31に導通している。配線層4の電気抵抗率は、抵抗体層3の電気抵抗率よりも低い。配線層4は、たとえば銅(Cu)からなる金属層である。配線層4の厚さの例は、0.3μm以上2.0μm以下である。この他、配線層4は、抵抗体層3の上に積層されたチタン(Ti)層と、当該チタン層の上に積層された銅層との2つの金属層からなる構成でもよい。この場合のチタン層の厚さの例は、0.1μm以上0.2μm以下である。
図18に示すように、配線層4は、基板1の主面11の周縁から離れて位置する。
【0074】
図18に示すように、配線層4は、共通配線41、および複数の個別配線42を含む。共通配線41は、第3方向yにおいて抵抗体層3の複数の発熱部31を基準として複数の駆動素子73とは反対側に位置する。複数の個別配線42は、第3方向yにおいて複数の発熱部31を基準として共通配線41とは反対側に位置する。共通配線41は、複数の発熱部31に導通している。複数の個別配線42は、複数の発熱部31に個別に導通している。
【0075】
図19および
図20に示すように、共通配線41は、基部411と、基部411につながる複数の延出部412とを有する。基部411は、第3方向yにおいて複数の延出部412を基準として抵抗体層3の複数の発熱部31とは反対側に位置する。基部411は、第2方向xに延びる帯状である。複数の延出部412は、基板1の凸部13に対向する基部411の端部から、複数の発熱部31に向けて第3方向yに延びる帯状である。複数の延出部412は、第2方向xに沿って配列されている。複数の延出部412の各々の一部は、凸部13の第2傾斜面132の上に位置する。共通配線41においては、基部411から複数の延出部412を介して複数の発熱部31に電流が流れる。
【0076】
図19および
図20に示すように、複数の個別配線42の各々は、基部421と、基部421につながる延出部422を有する。基部421は、第3方向yにおいて延出部422を基準として抵抗体層3の複数の発熱部31とは反対側に位置する。複数の個別配線42の各々の基部421は、第3方向yにおいて互いに離れた2つの列をなす。当該2つの列の各々は、第2方向xに沿って配列されている。当該2つの列のうち複数の発熱部31から最も近くに位置する列においては、隣り合う2つの基部421の間に延出部422が位置する。
【0077】
図19および
図20に示すように、延出部422は、基板1の凸部13に対向する基部421の端部から、複数の発熱部31に向けて第3方向yに延びる帯状である。複数の個別配線42の各々の延出部422は、第2方向xに沿って配列されている。複数の個別配線42の各々の延出部422の一部は、凸部13の第1傾斜面131の上に位置する。複数の個別配線42の各々においては、複数の発熱部31のいずれかから延出部422を介して基部421に電流が流れる。第1方向zに視て、複数の発熱部31の各々は、複数の個別配線42のいずれかの延出部422と、共通配線41の複数の延出部412のいずれかとに挟まれている。
図19および
図20に示す配線層4、および複数の発熱部31の構成は一例である。したがって、本開示における配線層4、および複数の発熱部31の構成は、
図19および
図20に示す構成に限定されない。
【0078】
保護層5は、
図22に示すように、絶縁層23の一部、抵抗体層3の複数の発熱部31、および配線層4を覆っている。保護層5は、電気絶縁性を有する。保護層5の組成は、ケイ素を含む。保護層5は、たとえば、二酸化ケイ素および窒化ケイ素(Si
3N
4)のいずれかからなる。あるいは、保護層5は、これらの物質のうち複数種類からなる積層体でもよい。
図21に示すプラテンローラ79によって、複数の発熱部31を覆う保護層5の部位に記録媒体が押し当てられる。
【0079】
図22に示すように、保護層5は、配線開口5Aを有する。配線開口5Aは、第1方向zに保護層5を貫通している。配線開口5Aから、複数の個別配線42の各々の基部421と、複数の個別配線42の各々の延出部422一部とが露出している。
【0080】
配線基板71は、
図21に示すように、第3方向yにおいて基板1の隣に位置する。
図18に示すように、第1方向zに視て、複数の個別配線42は、第3方向yにおいて抵抗体層3の複数の発熱部31と、配線基板71との間に位置する。第1方向zに視て、配線基板71の面積は、基板1の面積よりも大である。さらに、第1方向zに視て、配線基板71は、第2方向xを長手方向とする矩形状である。配線基板71は、たとえばPCB基板である。配線基板71には、複数の駆動素子73、およびコネクタ77が搭載されている。
【0081】
放熱部材72は、
図21に示すように、基板1の裏面12と対向している。裏面12は、放熱部材72に接合されている。配線基板71は、ねじなどの締結部材により放熱部材72に接合されている。サーマルプリントヘッドA30の使用時において、抵抗体層3の複数の発熱部31から発生した熱の一部は、基板1を介して放熱部材72に伝導される。放熱部材72に伝導された熱は、外部へと放熱される。放熱部材72は、たとえばアルミニウム(Al)からなる。
【0082】
複数の駆動素子73は、
図18および
図21に示すように、電気絶縁性を有するダイボンディング材(図示略)を介して配線基板71に搭載されている。複数の駆動素子73は、種々の回路が構成された半導体素子である。複数の駆動素子73には、複数の第1ワイヤ74の一端と、複数の第2ワイヤ75の一端とが導電接合されている。複数の第1ワイヤ74の他端は、複数の個別配線42の各々の基部421に個別に導電接合されている。複数の第2ワイヤ75の他端は、配線基板71に設けられ、かつコネクタ77に導通する配線(図示略)に導電接合されている。
【0083】
上述により、印字にかかる電気信号と、複数の駆動素子73の制御にかかる電気信号とが、外部からコネクタ77を介して複数の駆動素子73に入力される。複数の駆動素子73は、これらの電気信号に基づき、複数の個別配線42に電圧を選択的に印加させる。さらに、外部からコネクタ77を介して共通配線41に定電圧が印加される。この場合において、共通配線41と、複数の個別配線42のいずれかとの間に電位差が生じることによって、抵抗体層3の複数の発熱部31が選択的に発熱する。
【0084】
封止樹脂76は、
図21に示すように、複数の駆動素子73、複数の第1ワイヤ74、および複数の第2ワイヤ75を覆っている。さらに封止樹脂76は、絶縁層23および配線基板71の各々の一部と、複数の個別配線42の各々の一部とを覆っている。
【0085】
コネクタ77は、
図18および
図21に示すように、配線基板71の第3方向yの端部に取り付けられている。コネクタ77は、複数のピン(図示略)を有する。当該複数のピンの一部は、配線基板71において、複数の第2ワイヤ75が導電接合された配線(図示略)に導通している。さらに、当該複数のピンの別の一部は、配線基板71において、共通配線41の基部411に導通する配線(図示略)に導通している。
【0086】
次に、サーマルプリントヘッドA30の作用効果について説明する。
【0087】
サーマルプリントヘッドA30の第1グレーズ層21は、基板1の少なくとも一部を覆っている。抵抗体層3の複数の発熱部31は、第1方向zにおいて第1グレーズ層21を基準として基板1とは反対側に位置する。第1グレーズ層21には、フィラー211が含有されている。フィラー211は、中空部211Aを有する。したがって、本構成によれば、サーマルプリントヘッドA30においても、グレーズ層の蓄熱性能が高められるため、サーマルプリントヘッドA30の消費電力の増加を抑制することが可能となる。さらにサーマルプリントヘッドA30においては、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成を具備することにより、サーマルプリントヘッドA10と同等の作用効果を奏する。
【0088】
サーマルプリントヘッドA30においては、基板1は、主面11から第1方向zに突出する凸部13を有する。第1グレーズ層21は、凸部13の頂面130を覆っている。本構成をとることにより、複数の発熱部31は、凸部13の上に位置する。これにより、記録媒体への印字の際、サーマルプリントヘッドA30に対する記録媒体の接触面積を最小限に抑えつつ、複数の発熱部31からの熱を記録媒体に伝えることができる。したがって、記録媒体への印字品位の向上が図られる。
【0089】
サーマルプリントヘッドA30は、基板1の主面11と、凸部13の第1傾斜面131および第2傾斜面132と、第1グレーズ層21とを覆う絶縁層23をさらに備える。絶縁層23は、基板1と配線層4との間に位置する。本構成をとることにより、基板1が半導体材料を含むものであっても、基板1と、抵抗体層3および配線層4との電気絶縁を図ることができる。さらに、絶縁層23の熱伝導率を第1グレーズ層21の熱伝導率よりも高く設定することにより、複数の発熱部31から第1グレーズ層21に伝導される熱の損失を抑制できる。
【0090】
〔第4実施形態〕
図24~
図28に基づき、本開示の第4実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA40について説明する。これらの図において、先述したサーマルプリントヘッドA10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、
図24は、理解の便宜上、後述する第1保護層51および第2保護層52と、後述する配線層4の保護部材45との図示を省略している。
【0091】
サーマルプリントヘッドA40は、基板1および配線層4の構成と、保護層5に替えて第1保護層51および第2保護層52を備えることと、絶縁層23を備えないこととが、先述したサーマルプリントヘッドA30の場合と異なる。サーマルプリントヘッドA40は、いわゆる薄膜型である。
【0092】
基板1は、たとえばAlN(窒化アルミニウム)やAl2O3(アルミナ)などの熱伝導率が比較的高いセラミックスを含む。したがって、基板1は、電気絶縁性を有する。
【0093】
図24~
図26に示すように、第1グレーズ層21は、基板1の主面11に接している。第1グレーズ層21は、x方向に沿って延びており、かつy方向およびz方向を面内方向とする断面においてz方向に膨出している。第1グレーズ層21は、サーマルプリントヘッドA10の構成と同様に、主面11の全体にわたって形成してもよい。
【0094】
図24に示すように、共通配線41は、基部411および延出部412に加えて迂回部413を有する。迂回部413は、基部411のx方向の一方側につながり、かつ基部411からy方向において複数の個別配線42が位置する側に延びている。
【0095】
図24に示すように、配線層4は、接地部43を含む。接地部43は、z方向に沿って視て矩形状である。接地部43は、y方向において共通配線41の迂回部413と、複数の個別配線42との間に位置する。接地部43は、コネクタ77の内部に配置されたグランド端子に導通している。
図26に示すように、接地部43は、接続部431および延出部432を有する。接続部431の組成は、共通配線41、および複数の個別配線42の組成と同一である。延出部432の組成は、抵抗体層3の組成と同一である。
図28に示すように、接続部431に第1ワイヤ74の一端が接続され、当該第1ワイヤ74の他端は、基板1の主面11の上に配置された第2配線712に接続されている。第2配線712は、コネクタ77の内部に位置する接地端子に導通している。z方向に沿って視て、延出部432は、接続部431からy方向において抵抗体層3の複数の発熱部31が位置する側に延びている。
【0096】
第1保護層51は、
図25および
図26に示すように、基板1の主面11の一部と、抵抗体層3の複数の発熱部31、および配線層4とを覆っている。第1保護層51は、電気絶縁性を有する。第1保護層51の組成は、ケイ素を含む。第1保護層51は、たとえば、二酸化ケイ素および窒化ケイ素のいずれからなる。あるいは、第1保護層51は、これらの物質のうち複数種類からなる積層体でもよい。プラテンローラ79により複数の発熱部31を覆う第1保護層51の領域に記録媒体が重なるようになっている。
【0097】
第2保護層52は、
図27および
図28に示すように、第1保護層51を覆っている。第2保護層52は、導電性を有する。第2保護層52は、たとえばC/SiC(炭素および炭化ケイ素が混合された圧粉体)を含む材料からなる。
図25および
図26に示すプラテンローラ79により記録媒体が第2保護層52に押し当てられる。
【0098】
図24に示すように、配線層4は、導電部材44を含む。
図27に示すように、導電部材44は、接地部43の接続部431と、第2保護層52とに導通している。導電部材44は、第1保護層51の端面に接している。導電部材44は、たとえば銀粒子が含有された樹脂を含む材料からなる。
【0099】
図25に示すように、配線層4は、保護部材45を含む。保護部材45は、導電部材44を覆っている。保護部材45は、電気絶縁性を有する。保護部材45は、たとえば樹脂を含む材料からなる。さらに保護部材45は、接地部43の延出部432と、複数の個別配線42の各々の一部とを覆っている。
【0100】
図24に示すように、複数の個別配線42は、複数の第1ワイヤ74、複数の駆動素子73、および複数の第2ワイヤ75を介して複数の第1配線711に導通している。複数の第1配線711は、基板1の主面11の上に配置されている。複数の第1配線711は、コネクタ77に導通している。
【0101】
次に、サーマルプリントヘッドA40の作用効果について説明する。
【0102】
サーマルプリントヘッドA40の第1グレーズ層21は、基板1の少なくとも一部を覆っている。抵抗体層3の複数の発熱部31は、第1方向zにおいて第1グレーズ層21を基準として基板1とは反対側に位置する。第1グレーズ層21には、フィラー211が含有されている。フィラー211は、中空部211Aを有する。したがって、本構成によれば、サーマルプリントヘッドA40においても、グレーズ層の蓄熱性能が高められるため、サーマルプリントヘッドA40の消費電力の増加を抑制することが可能となる。さらにサーマルプリントヘッドA40においては、サーマルプリントヘッドA10と共通する構成を具備することにより、サーマルプリントヘッドA10と同等の作用効果を奏する。
【0103】
サーマルプリントヘッドA40においては、第2保護層52は、導電性を有する。さらに配線層4は、接地部43と、接地部43および導電部材44に導通する導電部材44を含む。本構成をとることによって、サーマルプリントヘッドA40の使用の際、記録媒体の接触に伴って第1保護層51および第2保護層52に帯電した静電気を、導電部材44および接地部43を経て速やかに外部に流すことができる。したがって、サーマルプリントヘッドA40が静電破壊することを防止できる。
【0104】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0105】
本開示は、以下の付記に記載した実施形態を含む。
[付記1]
基板と、
前記基板の少なくとも一部を覆う第1グレーズ層と、
第1方向において前記第1グレーズ層を基準として前記基板とは反対側に位置する複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記複数の発熱部に導通し、かつ前記抵抗体層に接して配置された配線層と、を備え、
前記複数の発熱部は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って配列されており、
前記第1グレーズ層には、フィラーが含有されており、
前記フィラーは、中空部を有する、サーマルプリントヘッド。
[付記2]
前記第1方向に視て、前記複数の発熱部は、前記フィラーに重なる、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記3]
前記フィラーは、前記中空部を囲む殻部を有し、
前記中空部は、真空である、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記4]
前記殻部の組成は、二酸化ケイ素を含む、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記5]
前記フィラーの粒径は、0.3μm以上0.5μm以下である、付記2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記6]
前記第1グレーズ層の前記第1方向および前記第2方向に対して直交する第3方向の両側に位置する第2グレーズ層をさらに備え、
前記第1グレーズ層のガラス転移点は、前記第2グレーズ層のガラス転移点よりも低い、付記2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記7]
前記第2グレーズ層は、前記第1方向において前記基板に対向する側とは反対側を向く基面を有し、
前記基面は、前記第1グレーズ層を挟む一対の端縁を含み、
前記第1グレーズ層は、前記一対の端縁に接している、付記6に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記8]
前記第1グレーズ層は、前記基面と面一である、付記7に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記9]
前記第1グレーズ層は、前記基面から突出している、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記10]
前記第2方向に視て、前記基面から突出する前記第1グレーズ層の部分の周縁は、凸状の曲線をなす、付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記11]
前記基板は、前記第1方向において前記配線層が位置する側を向く主面と、前記主面から突出する凸部と、を有し、
前記凸部は、頂面、第1傾斜面および第2傾斜面を有し、
前記頂面は、前記第1方向を向き、かつ前記主面から離れて位置しており、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記主面と前記頂面との間に位置し、かつ前記主面に対して傾斜しており、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記第1方向および前記第2方向に対して直交する第3方向において互いに離れて位置しており、
前記第1グレーズ層は、前記頂面を覆っている、付記2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記12]
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記主面から前記頂面に向かうほど互いに近づく、付記11に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記13]
前記基板は、半導体材料を含む、付記12に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記14]
前記主面、前記第1傾斜面、前記第2傾斜面および前記第1グレーズ層を覆う絶縁層をさらに備え、
前記絶縁層は、前記基板と前記配線層との間に位置する、付記13に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記15]
前記複数の発熱部を覆う保護層をさらに備える、付記2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記16]
前記配線層は、共通配線と、複数の個別配線と、を含み、
前記共通配線は、前記複数の発熱部に導通しており、
前記複数の個別配線は、前記複数の発熱部に個別に導通している、付記15に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記17]
前記第1方向において前記基板を基準として前記第1グレーズ層とは反対側に位置する放熱部材をさらに備え、
前記基板は、前記放熱部材に接合されている、付記16に記載のサーマルプリントヘッド。
【符号の説明】
【0106】
A10,A20,A30,A40:サーマルプリントヘッド
1:基板
11:主面
12:裏面
13:凸部
130:頂面
131:第1傾斜面
132:第2傾斜面
21:第1グレーズ層
211:フィラー
211A:中空部
211B:殻部
22:第2グレーズ層
22A:開口
221:基面
221A:端縁
23:絶縁層
3:抵抗体層
31:発熱部
4:配線層
41:共通配線
411:基部
412:延出部
413:迂回部
42:個別配線
421:基部
422:延出部
422A:第1部
422B:第2部
422C:第3部
43:接地部
431:接続部
432:延出部
44:導電部材
45:保護部材
5:保護層
5A:配線開口
51:第1保護層
52:第2保護層
71:配線基板
711:第1配線
712:第2配線
72:放熱部材
73:駆動素子
74:第1ワイヤ
75:第2ワイヤ
76:封止樹脂
77:コネクタ
79:プラテンローラ
z:第1方向
x:第2方向
y:第3方向