(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128847
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】活性酸素消去剤、糖化抑制剤、カルボニル化抑制剤、ニトロ化抑制剤、AGEs分解剤、カルボニル化タンパク質分解剤、ニトロ化タンパク質分解剤。
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230907BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230907BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20230907BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230907BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230907BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20230907BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230907BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20230907BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K36/61
A61P39/06
A61P43/00 111
A61P17/18
A61Q19/08
A61K127:00
A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033490
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲史
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB242
4C083AB312
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC792
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD512
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC13
4C083CC23
4C083CC25
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD30
4C083DD31
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C088AB57
4C088AC04
4C088AC05
4C088BA08
4C088BA10
4C088CA08
4C088MA17
4C088MA35
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
4C088ZC52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】活性酸素を効率的に消去し、またタンパク質の糖化、カルボニル化、ニトロ化を抑制し、さらには生成してしまったAGEs、カルボニル化タンパク質、ニトロ化タンパク質を分解する優れた成分を提供する。
【解決手段】ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有する剤を提供する。
【効果】酸化ストレスによる皮膚老化の予防・改善、さらには生体のタンパク質に対する修飾を抑制し、さらにはそれぞれの修飾生成物を分解することにより、酸化やタンパク質修飾に関連する種々の症状や疾患を予防または改善することが可能となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有する活性酸素消去剤。
【請求項2】
ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有するタンパク質の糖化抑制剤。
【請求項3】
ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有するタンパク質のカルボニル化抑制剤。
【請求項4】
ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有するタンパク質のニトロ化抑制剤。
【請求項5】
ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有するAGEs分解剤。
【請求項6】
ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有するカルボニル化タンパク質分解剤。
【請求項7】
ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有するニトロ化タンパク質分解剤。
【請求項8】
化粧料又は医薬部外品である、請求項1乃至請求項7いずか1項に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャボチカバ(Plinia cauliflora)の抽出物を含有する活性酸素消去剤、糖化抑制剤、カルボニル化抑制剤、ニトロ化抑制剤、AGEs分解剤、カルボニル化タンパク質分解剤、ニトロ化タンパク質分解剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、酸素を含む外気と接するだけではなく絶えず紫外線に暴露されている組織であり、最も酸化ストレスを受けやすい組織といわれ、それによる障害も大きいものと考えられている。紫外線等により生体内で生じた活性酸素は、皮脂や脂質の過酸化、タンパク質の変性、酵素阻害等を引き起こすことが知られており、活性酸素や過酸化脂質は、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎、乾癬などの皮膚疾患にも関与すると考えられている。
活性酸素の消去剤としては、アスコルビン酸、トコフェロール、3,5‐tert-ブチル‐4‐ヒドロキシトルエン(BHT)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)等が用いられてきた(特許文献1)。しかし、活性酸素の消去を目的として用いられるSODは不安定であるために製剤化が難しく、トコフェロールも効果が十分であるとは言えない。また、合成化合物であるBHT等は安全性に問題があることから、化学合成品ではなく、安定でかつ副作用が少ないとともに、より活性酸素消去効果、つまり抗酸化効果が高い天然由来成分が望まれてきた。
【0003】
一方で、皮膚老化の一因として、皮膚におけるタンパク質修飾である糖化、カルボニル化、ニトロ化も注目されてきている。
【0004】
タンパク質の糖化では、アミノ酸、タンパク質等のN末端のアミノ基と還元糖が非酵素的に結合し、シッフ塩基を形成し、その後アマドリ転移により安定なアマドリ化合物を形成する。さらに、アマドリ化合物は、温度、水分活性、pH、などの条件により脱水、縮合、環化、架橋形成などの複合的な反応を経て終末糖化産物(advanced glycosylation end products;AGEs)が生成される。
皮膚中における糖化については、角層中のAGEsと表皮粘弾性や皮膚表面形態の平均粗さとの関連性(非特許文献1)だけでなく、表皮中ケラチン10の糖化による角層細胞の形成異常(特許文献2)、真皮コラーゲンの糖化によるコラーゲンの伸縮性喪失が報告されており、これらは皮膚老化の一因となっている。
糖化を阻害する物質としては、アミノグアニジン、アミノプロピオニトリル、ペニシラミンなどがよく知られており、その他、尿素やグアニジン、ベンゾフェノン類についても、糖化を阻害する活性を有することが報告されている。しかし、アミノグアニジンやアミノプロピオニトリルは安全性に問題があることが知られており、その他の化合物は、作用が弱く、実用化のために十分満足のいくものではなかった。
【0005】
タンパク質のカルボニル化では、タンパク質を構成するアミノ酸のうちアルギニンやリジンなどの側鎖が直接的に酸化的分解されて生成されるものと、脂質の過酸化反応により生じるアルデヒド化合物がタンパク質と結合することにより生成されるものがある。
皮膚におけるカルボニル化については、角層中ケラチンのカルボニル化による皮膚の乾燥(特許文献3)、露光部角層のカルボニル化タンパク質による光学的透過性低下(非特許文献2)、角層タンパク質のカルボニル化による肌の柔軟性・弾力性の低下(特許文献4)が報告されている。
このような背景から、タンパク質のカルボニル化を抑制する作用を有し、かつ安全性が高く、広く利用可能な優れた物質の開発が望まれている。
【0006】
タンパク質のニトロ化とは、生体内で発生した活性窒素種によって生じるタンパク質翻訳後修飾のひとつであり、タンパク質を構成する芳香族アミノ酸のチロシン、トリプトファンの残基中のベンゼン環にニトロ基が付与されたものである。ニトロ化反応はアミノ酸中のベンゼン環が、活性窒素種により形成されるニトロニウムイオン(NO2+)や二酸化窒素ラジカルなどと求電子置換反応をおこすことで生じる(非特許文献3)。タンパク質のニトロ化が起きると、酵素やチロシンキナーゼ型受容体の機能低下を引き起こすことで、細胞機能に影響を及ぼすことが知られている(非特許文献4)。また、タンパク質中のニトロチロシンは加齢に伴う数々の疾患(動脈硬化や脳虚血疾患など)で蓄積することが知られており、これらの疾患に関与することが報告されている(非特許文献5)。また、皮膚におけるニトロ化については、角層のニトロ化タンパク質が黄ぐすみの大きな原因となっていることが報告されている(特許文献5)。
ニトロ化タンパク質に対しては、ニトロ化タンパク質の生成に伴う各種疾患を改善するため、ペルオキシナイトライトを消去する効果成分の提案(特許文献6)や、チオール基をもつ物質によるペルオキシナイトライトを補足する効果成分の提案(特許文献7)がなされてきた。しかし、安全性や安定性の面で不都合があることが多く、実用化のために広く利用可能な優れた物質の開発が望まれている。
【0007】
これら糖化、カルボニル化、ニトロ化等、タンパク質の修飾は、それぞれが生じる機序およびその生成物の分解機序が異なるため、効果的にタンパク質修飾を改善するためには、それぞれの修飾を抑制する、またはそれぞれの修飾タンパク質を分解するというように、それぞれの要因に対処する必要があった。
【0008】
一方で、ジャボチカバ(Plinia cauliflora)は、ブラジル、ボリビアなどの南アメリカを原産地とするフトモモ科プリニア属の常緑高木の植物であり、花は幹や太い枝に直接開花し、果実が結実する植物である。ジャボチカバは、特許文献8にはIL-4及び/又はIL-5産生を抑制しアレルギー性疾患の予防・治療に用いられること、特許文献9には長時間保湿効果が継続する保湿性植物成分として用いられていることが示されている。しかしながら、活性酸素を消去する作用や糖化、カルボニル化、ニトロ化などのタンパク質修飾に対する作用に関する知見や先行研究はこれまで報告されていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル,40(9),57-62,2012
【非特許文献2】Int.J.Cosmet.Sci.,30,41-46,2008
【非特許文献3】Chem.Res.Toxicol.,22(5),894-898,2009
【非特許文献4】Diabetes,57(4),889-98,2008
【非特許文献5】Science,290(5493),985-989,2000
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-157293号公報
【特許文献2】特開2017-20833号公報
【特許文献3】特開2004-107269号公報
【特許文献4】特開2006-349372号公報
【特許文献5】特開2017-181423号公報
【特許文献6】特開2002-326922号公報
【特許文献7】特開2005-170849号公報
【特許文献8】特開2006-342078号公報
【特許文献9】特開2001-122731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、活性酸素を効率的に消去し、またタンパク質の糖化、カルボニル化、ニトロ化を抑制し、さらには生成してしまったAGEs、カルボニル化タンパク質、ニトロ化タンパク質を分解する優れた成分を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は、酸化や各種タンパク質修飾に伴う種々の疾患を根本的に解決するには、単に酸化や修飾タンパク質の生成を抑制するだけでなく、生成してしまった修飾タンパク質を分解することが、効果的な解決につながるとの結論に至った。かかる結論に基づき薬剤を検討した結果、ジャボチカバの抽出物に活性酸素を消去する効果、糖化、カルボニル化、ニトロ化を抑制する効果、およびそれぞれの修飾生成物であるAGEs、カルボニル化タンパク質、ニトロ化タンパク質に対して分解効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は、ジャボチカバの抽出物を用いることで、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0013】
酸化ストレスによる皮膚老化の予防・改善、さらには生体のタンパク質に対する修飾を抑制し、さらにはそれぞれの修飾生成物を分解することにより、酸化やタンパク質修飾に関連する種々の症状や疾患を予防または改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用するジャボチカバは、フトモモ科プリニア属の常緑高木の植物であり、学名はPlinia cauliflora (Mart.) Kauselであり、シノニムは多数存在し、Eugenia cauliflora (Mart.) DC.、Eugenia jaboticaba (Vell.) Kiaersk.、Myrcia jaboticaba (Vell.) Baill.、Myrciaria cauliflora (Mart.) O.Berg、Myrciaria jaboticaba (Vell.) O.Berg、Myrtus cauliflora Mart.、Myrtus jaboticaba Vell.、Plinia jaboticaba (Vell.) Kausel、Plinia callosal Sobral、などが知られている。
使用する部位は、特に限定されないが、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根皮、根、種子、果皮又は果実を用いることができる。また、果実は成熟果実だけでなく、未成熟の果実(緑色)を用いてもよい。就中、葉、果実が特に好適である。
【0015】
ここで前記抽出物を得る方法としては公知の方法が利用できる。抽出物の調製は特に限定されないが、例えば抽出物は上記ジャボチカバを種々の適当な溶媒を用いて、低温下から加温下で抽出される。抽出溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチルなどのアルキルエステル;ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素;ジエチルエーテル等のエーテル;ジクロルメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルカン等の1種または2種以上を用いることが出来る。就中、水、エチルアルコール、1,3-ブチレングリコールの1種または2種以上の混合溶媒が特に好適である。
【0016】
本発明に用いることのできるジャボチカバ抽出物の抽出方法は特に限定されない。ジャボチカバの任意の部位をそのまま乾燥せずに予め裁断して小片にしてから抽出してもよいし、乾燥したものを裁断して小片、もしくは粉砕して粉末状にしてから抽出することができる。例えば生のものであれば重量比で1~100倍量、特に4~20倍量の溶媒を用い、常温抽出の場合には、0℃以上、特に20℃~40℃で1時間以上、特に3~7日間抽出することが好ましい。また、加熱抽出の場合には、60~100℃で1時間以上、特には4時間以上加熱して抽出することが好ましい。また、10℃以下の抽出溶媒が凍結しない程度の温度で、1時間以上、特に1~7日間抽出しても良い。
【0017】
上記の如く得られたジャボチカバ抽出物は、効果を損なわない範囲で必要に応じて活性炭又は活性白土、スチレン-ジビニルベンゼン系合成吸着剤(HP-20:三菱化成社製)やオクタデシルシラン処理シリカ(ChromatorexODS:富士シリシア化学製)等により精製することができる。場合によっては、固液分離後の液相を、スプレードライ法、凍結乾燥法等、常法に従って固体化し、さらに必要に応じて粉砕して粉末状とした上で用いてもよい。
【0018】
ここで、本実施形態における抽出物には、植物原体から溶媒を用いて抽出された抽出液、この抽出液の希釈した液もしくは濃縮した液、あるいは抽出液の溶媒を蒸発させて得られた乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製したものが含まれる。
【0019】
また、ジャボチカバ抽出物を本願発明の各剤として用いる場合は、ジャボチカバ抽出物をそのまま剤としてもよいし、一般的な基剤にジャボチカバ抽出物を混合して用いても差し支えない。最終形態として、液状、乳化物状、ゲル状、固形状、粉末状、顆粒状等のどのような形態であっても問題なく、その効果を損なわない範囲で皮膚外用剤に用いられる任意配合成分を必要に応じて適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、例えば、油剤、界面活性剤、粉体、色材、水、アルコール類、増粘剤、キレート剤、シリコーン類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、防腐剤、香料、各種薬効成分、pH調整剤、中和剤などが挙げられる。また、前記最終形態として、例えば、皮膚外用剤であれば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、ジェル、パック、洗顔料等の基礎化粧料、口紅、ファンデーション、リキッドファンデーション、メイクアッププレスドパウダー等のメイクアップ化粧料、洗顔料、ボディーシャンプー、石けん等の清浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
各剤中におけるジャボチカバ抽出物の配合量は、所望の効果に応じて適宜調整すればよいが、乾燥重量に換算して0.0001重量%~100重量%を任意に使用することができる。好ましい配合量としては、0.01重量%~20重量%、更に好ましい配合量としては、0.1重量%~10重量%である。
【0020】
本願発明の修飾タンパク質の分解は、修飾タンパク質またはその構成アミノ酸が、消化あるいは切断されて消失するだけでなく、特徴となる官能基において酸化還元、その他の化学反応を受けて特徴となる官能基が異なる官能基や物質に変換されることが含まれる。
【0021】
タンパク質の修飾を抑制する効果、および分解する効果については、薬剤の存在によりその抑制する割合や分解した割合が高くなれば効果ありと判定することができる。例えば、薬剤の存在によりタンパク質の修飾を抑制する効果を抑制率で示す場合、所望する効果の程度により適宜設定すればよいが、概ね20%以上抑制することができれば効果ありと判定することができ、50%以上であれば優れた効果があると判断できる。薬剤の存在により修飾タンパク質を分解する効果についても同様である。
【実施例0022】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。さらに、ジャボチカバ抽出物を用いた皮膚外用剤への応用処方例等について述べるが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、特記しない限り配合量は質量%で示す。また、特記しない限りエタノールは試薬特級(99.5%)を用いた。
【0023】
<製造例:抽出物の調製>
ジョボチカバの生の葉10gに精製水もしくは50V/V% エタノール水溶液 60mLを加え、60℃、4時間加熱抽出した後、ろ過により葉を取り除き、ジャボチカバの葉抽出液を得た。
ジョボチカバの生の果皮を含む果実(未成熟果実または成熟果実)10gに精製水もしくは50V/V% エタノール水溶液 40mLを加え、60℃、4時間加熱抽出した後、ろ過により果実を取り除き、ジャボチカバの果実抽出液を得た。
以下の実験では、これら得られた抽出液を抽出物としてそのまま用い、系中で希釈される濃度で評価を行った。
【0024】
<活性酸素消去作用試験;DPPH試験>
[DPPH溶液の調製]DPPH溶液は、以下に示す各成分を、(A):(B):(C)=1:4:3容量の割合で混合し調製した。
(A)MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)5.52gを水100mLに溶かし、1N-NaOHでpH6.1に調製した。
(B)DPPH(1,1-ジフェニルー2-ピクリルヒドラジル)15.7mgをエタノール100mLに溶解した。
(C)精製水
[Trolox溶液の調製]Trolox 25mgをDMSO(ジメチルスルホキシド)10mLに溶解し、10mM溶液を作製した。
[DPPH試験]10μLの被験物質またはTrolox溶液(0.078mM、0.156mM、0.313mM、0.625mM、1.25mM)を96well plateの各well中に加え、次いでDPPH溶液190μLを迅速に加え混合した。10分後、各wellの吸光度を540nmで測定した。Trolox濃度と540nmの吸光度値の検量線を作成し、被験物質の540nmの吸光度から、被験物質のTrolox当量を算出した。
Troloxを1とした場合、活性酸素消去剤として知られているα-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールは、それぞれ0.50、0.74、1.36を示すといわれているため、Trolox当量が0.5以上であれば、十分な活性酸素消去作用であると言える。
【0025】
【0026】
表1より、それぞれの抽出物の活性酸素消去作用(Trolox当量)は5mMよりも高い値を示し、すべての抽出物には著しく高い活性酸素消去作用が認められた。
【0027】
<糖化抑制作用試験>
[反応溶液]
リン酸緩衝液(67 mM, pH7.4)を調製し、D-グルコースを最終濃度10%、D-リボースを最終濃度1%、ウシ血清アルブミンを最終濃度1%になるように溶解した。
[陽性対照]
塩酸アミノグアニジンを10 mMとなるように精製水に溶解した。
[糖化抑制作用の測定]
反応溶液に対して1/10容量の被験物質もしくは陽性対照を加えて混合し、60℃で3日間反応させた。コントロールには被験物質の代わりにリン酸緩衝液を加えた。また、未反応コントロールには被験物質の代わりにリン酸緩衝液を加え、冷蔵庫に3日間静置した。反応後、96well plateに反応液を200μL分注し、蛍光マイクロプレートリーダーにより360nmで励起した際の465nmの蛍光強度を測定し、反応によって生成したAGEsの量を算出した。
被験物質を添加した反応後の蛍光強度をA1、リン酸緩衝液に被験物質を添加したものの蛍光強度をB1とし、AGEsの量を算出した(A1値-B1値)。コントロールの場合は、コントロールの蛍光強度A2から未反応コントロールの蛍光強度B2を差し引いた値をコントロールのAGEsの量とした。なお、コントロールを100としたときの被験物質添加群のAGEsの割合を、100から差し引いた値を糖化抑制率として算出した。
【0028】
【0029】
【0030】
表2より、ジャボチカバ成熟果実抽出物では糖化を30%以上も抑制する作用が認められ、ジャボチカバ抽出物には糖化を抑制する作用が確認された。特に、葉抽出物および未成熟果実抽出物には著しく高い糖化抑制作用が認められた。
【0031】
<AGEs分解作用試験>
[反応溶液]
100mM リン酸緩衝液(pH7.4) 25mL、2M D-グルコースと200mM D-リボースの混合液 5mL、40mg/mL ウシ血清アルブミン10mL、精製水10mLを混合し、60℃で40時間インキュベートした。
[陽性対照]
塩酸アミノグアニジンを10 mMとなるように精製水に溶解した。
[AGEs分解作用の測定]
100mM Tris-HCl(pH7.4)と反応溶液を当量混合した混合液に1/10容量の被験物質もしくは陽性対照を添加して混合し、37℃で18時間インキュベートした。コントロールには被験物質の代わりにリン酸緩衝液を加えた。インキュベート終了後は、蛍光マイクロプレートリーダーにより360 nmで励起した際の465 nmの蛍光強度を測定し、AGEsの量を算出した。
被験物質を添加した反応後の蛍光強度をA、リン酸緩衝液に被験物質を添加したものの蛍光強度をBとし、AGEs量を算出した(A値-B値)。なお、コントロールを100としたときの被験物質添加群のAGEsの割合を、100から差し引いた値をAGEs分解率として算出した。
【0032】
【0033】
【0034】
表3より、ジャボチカバ成熟果実抽出物においては40%近くのAGEsを分解する作用が認められ、ジャボチカバ抽出物にはAGEsを分解する作用が確認された。特に、未成熟果実抽出物には高いAGEs分解作用が認められ、さらには葉抽出物においてはこれを上回る著しく高いAGEs分解作用が認められた。
【0035】
<カルボニル化抑制作用試験>
[被験物質の調製]
それぞれの抽出物を精製水にて5倍希釈した。
[陽性対照]
塩酸アミノグアニジンを40 mMとなるように精製水に溶解した。
[カルボニル化抑制作用の測定]
0.5mM アクロレイン(富士フィルム和光純薬)溶液と被験物質もしくは陽性対照を当量ずつ混合した後、Cellmatrix Type1-A(新田ゼラチン)を被覆した96 well plateに分注し、37℃で20時間反応させた。コントロールには被験物質の代わりに精製水を加えた。なお、未反応コントロールとする反応プレートには精製水を分注し、室温で20時間静置した。反応後は精製水で十分洗浄した。その後Fluorescein-5-thiosemicarbazide/0.1 M MES-Na(pH 5.5) (FTSC溶液)を添加して室温で染色し、FTSC溶液を除去した後、十分洗浄した。蛍光マイクロプレートリーダーにより465nmで励起した際の535nmの蛍光強度を測定し、カルボニル化タンパク質の量を算出した。
被験物質を添加した反応後の蛍光強度A1から未反応コントロールの蛍光強度Bを差し引いてカルボニル化タンパク質量を算出した(A1値-B値)。コントロールの場合は、コントロールの蛍光強度A2から未反応コントロールの蛍光強度Bを差し引いた値をコントロールのカルボニル化タンパク質量とした(A2値-B値)。なお、コントロールを100としたときの被験物質添加群のカルボニル化タンパク質量の割合を、100から差し引いた値をカルボニル化抑制率として算出した。
【0036】
【0037】
【0038】
表4より、それぞれの抽出物において、カルボニル化を90%以上も抑制する作用が認められ、カルボニル化に対してはそのほとんどを抑制するぐらいの著しい作用を有すると考えられた。このことからジャボチカバ抽出物には著しく高いカルボニル化抑制作用が確認された。
【0039】
<カルボニル化タンパク質分解作用試験>
[反応プレート]
Cellmatrix Type1-A(新田ゼラチン)を被覆した96 well plateに0.5mM アクロレイン(富士フィルム和光純薬)を添加して37℃で20時間反応させた。反応後は十分洗浄し、反応プレートとした。
[陽性対照]
塩酸アミノグアニジンを200 mMとなるように精製水に溶解した。
[カルボニル化タンパク質分解作用の測定]
反応プレートの各ウェルに精製水と1/10容量の被験物質もしくは陽性対照を混合した混合液を分注し、37℃で2日間反応させた。コントロールには被験物質の代わりに精製水を加えた。反応後は精製水で十分洗浄した。その後Fluorescein-5-thiosemicarbazide/0.1 M MES-Na(pH 5.5) (FTSC溶液)を添加して室温で染色し、FTSC溶液を除去した後、十分洗浄した。蛍光マイクロプレートリーダーにより465nmで励起した際の535nmの蛍光強度を測定し、カルボニル化タンパク質の量を算出した。
被験物質を添加した反応後の蛍光強度をA、コントロールの蛍光強度をBとし、コントロールを100としたときの被験物質添加群のカルボニル化タンパク質量の割合を、100から差し引いた値をカルボニル化タンパク質分解率として算出した。
【0040】
【0041】
【0042】
表5より、ジャボチカバ成熟果実抽出物においてはおおよそ30%近くのカルボニル化タンパク質を分解する作用が認められ、ジャボチカバ抽出物にはカルボニル化タンパク質を分解する作用が確認された。特に、葉抽出物には高いカルボニル化タンパク質分解作用が認められた。
【0043】
<ニトロ化抑制作用試験>
[チロシン溶液]
L―Tyrosine(味の素) 18.12mgを1M リン酸緩衝液(pH7.4) 100mLに溶解した。
[陽性対照]
フェルラ酸を300 mMとなるように精製水に溶解した。
[ニトロ化抑制作用の測定]
チロシン溶液に1/100容量の被験物質もしくは陽性対照を混合した後、ペルオキシナイトライト溶液(DOJINDO)を100μMになるように添加し、37℃で1時間反応させた。コントロールには被験物質の代わりに精製水を加えた。反応後、フィルターでろ過し、HPLC バイアルに反応液を分注した。HPLCを用いて、以下の条件で分析した。
カラム : Chemcobond 5-ODS-W (150 mm × 6.0mm)
流速 : 1.0 mL/min
カラム温度 : 40℃
検出波長: 355nm
移動相 : 10 mM リン酸緩衝液 (pH 2.8) - MeOH (9:1)
ニトロチロシン量の算出では、ニトロチロシンを25、50、100μM の濃度になるように溶解した標準溶液を用いて検量線を作成し、各被験物質反応液におけるニトロチロシン量を算出した。コントロールを100としたときの被験物質添加群のニトロチロシン量の割合を、100から差し引いた値をニトロ化抑制率として算出した。
【0044】
【0045】
【0046】
表6より、それぞれの抽出物において、ニトロ化を60%以上も抑制する作用が認められ、ジャボチカバ抽出物にはニトロ化を抑制する高い作用が確認された。特には未成熟果実抽出物には90%近くニトロ化を抑制作用が認められ、ニトロ化に対してはそのほとんどを抑制するぐらいの著しい作用を有すると考えられた。
【0047】
<ニトロ化タンパク質分解作用試験>
[陽性対照]
亜ジチオン酸ナトリウムを10 mMとなるように精製水に溶解した。
[ニトロ化タンパク質分解作用の測定]
ニトロ化タンパク質の構成アミノ酸であるニトロチロシン(3-ニトロチロシン)をPBS(ー)に溶解し、終濃度が0.2mMのニトロチロシン溶液を調製した。PBS(-)またはニトロチロシン溶液を96well-plateに225μLずつ分注し、さらに被験物質もしくは陽性対照を25μLずつ分注した。コントロールには被験物質の代わりに精製水を加えた。37℃で72時間インキュベートした後、プレートリーダーにて450nmの吸光度を測定した。
被験物質を添加した反応後の吸光度をA、PBS(-)に被験物質を添加したものの吸光度をBとし、ニトロチロシン量を算出した(A値-B値)。なお、コントロールを100としたときの被験物質添加群のニトロチロシン量の割合を、100から差し引いた値をニトロチロシン分解率として算出した。
【0048】
【0049】
【0050】
表7より、ジャボチカバ葉抽出物においては40%近くのニトロチロシンを分解する作用が認められ、つまりジャボチカバ抽出物にはニトロ化タンパク質を分解する作用が確認された。特に、成熟果実抽出物には70%以上もニトロチロシンを分解する高い作用が認められ、さらには未成熟果実抽出物においてはこれを上回る著しく高いニトロチロシンを分解する作用が認められたことから、著しく高いニトロ化タンパク質分解作用を有することが確認された。
【0051】
以下、本発明における各剤の処方例を示す。なお、含有量は質量%である。製法は、常法による。なお、処方は代表例であり、本発明は本処方例に限定されるものではない。また、処方例中の各種抽出物の濃度は乾燥残分としての濃度である。以下の処方においても本願の効果が確認された。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
本発明によれば、ジャボチカバ抽出物を用いることで、活性酸素を効率的に消去し、タンパク質の糖化、カルボニル化、ニトロ化による修飾を抑制し、できてしまった修飾タンパク質を分解することが出来るため、酸化やタンパク質修飾に起因する各種症状を改善することが期待出来る。