(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128875
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】データ収集ユニット及びロボットコントローラ
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033523
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】野口 直之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707HS27
3C707JS03
3C707JS05
3C707JU15
3C707MS15
(57)【要約】
【課題】ロボットにおける故障の予兆の検出などのために設けられるデータ収集ユニットにおいて、別途に電源回路などを用意する必要がなく、かつ、監視装置への接続を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】データ収集ユニット10は、ロボットに設けられたセンサからの検出信号とロボットコントローラから出力される動作データとに基づいて監視用信号を生成する監視用信号生成部22と、複数のネットワークノードの間での通信を可能にするスイッチングハブ部21と、スイッチングハブ部21に接続する複数のLANポート11~13と、を備え、ロボットコントローラに取り付けられてロボットコントローラの電源回路から電源電圧が供給される。監視用信号生成部22は、ネットワークノードとしてスイッチングハブ部21に接続し、動作データは、LANポート11~13のいずれかから入力される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの故障の予兆の検出に必要なデータを収集するデータ収集ユニットであって、
前記ロボットに設けられたセンサからの検出信号と前記ロボットを制御するロボットコントローラから出力される動作データとに基づいて、監視用信号を生成する監視用信号生成部と、
複数のネットワークノードの間での通信を可能にするスイッチングハブ部と、
前記スイッチングハブ部に接続してLANケーブルが着脱可能に取付けられる複数のLANポートと、
を有し、
前記監視用信号生成部はネットワークノードとして前記スイッチングハブ部に接続し、
前記ロボットコントローラに取り付けられて前記ロボットコントローラの電源回路から電源電圧が供給され、前記複数のLANポートのうちの1つを介して前記動作データが前記監視用信号生成部に入力する、データ収集ユニット。
【請求項2】
前記複数のLANポートのうちの1つを介して、前記監視用信号をロボットの動作履歴管理を行う監視装置に送信する、請求項1に記載のデータ収集ユニット。
【請求項3】
前記データ収集ユニットは、前記ロボットコントローラへの取り付け時に前記ロボットコントローラの筺体の表面に現れるフロントパネルと、前記フロントパネルに取り付けられるとともに前記ロボットコントローラへの取り付け時に前記筺体内に位置する配線基板とを有する、請求項1または2に記載のデータ収集ユニット。
【請求項4】
前記フロントパネルの表面に、前記センサとの接続に用いられる信号コネクタと、少なくとも2つの前記LANポートが露出している。請求項3に記載のデータ収集ユニット。
【請求項5】
少なくとも3つの前記LANポートを有する、請求項4に記載のデータ収集ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデータ収集ユニットが組み込まれたロボットコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットにおける故障の予兆などの検出に関し、特に、故障の予兆などのために必要なデータを収集するデータ収集ユニットと、データ収集ユニットを備えるロボットコントローラとに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット(「ロボット」とも称する)は、可動部分である複数の関節と、関節を介して接続されて関節ごとのモータによって駆動される複数のアームとを備え、モータから減速機やプーリ、ベルトを介して関節を駆動することによって、複雑な動きを実現する。一般に可動部分には、使用寿命がある。また可動部分では、その使用寿命に近づくにつれて、微小な振動の発生など、故障の予兆となる現象が発生することが多い。そこで、可動部分の状態や使用状況などを認識することによって、例えば振動センサや温度センサなどを設けて故障の予兆となる現象の発生を検出することによって、使用寿命に近いことをユーザなどに警告することができる。可動部分ごとに使用寿命に近づいたか否かを判定するためには、可動部分の状態や使用状況などの認識を、あるいは故障予兆データの取得を、可動部分ごとに行う必要がある。
【0003】
特許文献1は、ロボット本体の余寿命を精度よく推定するために、駆動による経年的なロボット本体の劣化の度合いを定量的に示す特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいてロボットの故障の兆候の有無を判定し、故障の兆候ありと判定されたときにロボットの余寿命を推定することを開示している。
【0004】
特許文献2は、ロボットに固定された複数のセンサからの出力に基づき、ロボットの状況、例えば振動、発熱、異音、異臭の発生などを監視し、故障の予兆の発生の有無を判定することを開示している。センサは、例えば加速度センサや温度センサ、音響センサ(マイクロホンなど)、臭気センサなどである。センサからの検出信号は微弱レベルのアナログ信号であることが多いので、特許文献3では、ロボットにセンサを配置するとともにセンサに近接してアナログ/デジタル変換回路(AD変換回路)を設け、デジタル信号に変換してから検出信号を駆動用信号生成部に入力させている。監視用信号生成部は、ロボットとは別体に設けられている監視装置に対し、各センサでの検出結果に応じた監視用信号を出力する。監視装置は、送られてきた監視用信号に基づいて、ロボットについての各種の診断や故障の予知などを行う。また特許文献2は、ロボット内から監視用信号生成部に接続する配線の数の増加を防ぐために、各AD変換回路の出力をロボット内においてデイジーチェーン接続して監視用信号生成部に接続してもよいことも開示している。
【0005】
特許文献3は、サーボモータに連結された減速機における異常の有無の判定精度を高めるために、複数のロボットに対して共通に監視装置を設け、各ロボットのサーボモータのトルクデータを監視装置に送信し、監視装置において、(1)サーボモータの等速回転時のトルクデータである等速時トルクデータに基づいて算出される等速時統計処理データと第1基準値との比較結果、(2)等速時トルクデータをFFT(高速フーリエ変換)処理することで求められる等速時FFTデータのピーク値と第2基準値との比較結果、(3)サーボモータの停止時のトルクデータである停止時トルクデータに基づいて算出される停止時統計処理データと第3基準値との比較結果、及び(4)停止時トルクデータをFFT処理することで求められる停止時FFTデータのピーク値と第4基準値との比較結果、の少なくとも1つに基づいて、減速機での異常の有無を判定することを開示している。
【0006】
多数のロボットが設けられている場合などにそれらのロボットの動作履歴を一箇所で蓄積し管理する動作履歴管理システムが知られている。動作履歴管理システムを利用すれば、蓄積された動作履歴を解析することにより、それぞれのロボットでの故障の予兆の有無を容易に判定することができる。特許文献4は、上位装置からロボットコントローラに送信されたコマンドとロボットの位置データ及びサーボデータとを蓄積する動作履歴管理システムを開示している。特許文献5は、ロボットにカメラを取り付けるとともに、動作履歴管理システムを構成する管理装置を用いてロボットの動作履歴データであるトルクデータを収集して管理値を決定し、決定された管理値と現在のトルクデータとを比較して異常かどうかを発生し、異常が発生したと判定したときに、そのときのトルクデータを蓄積するとともにカメラで撮像した撮影データも蓄積することを開示している。
【0007】
動作履歴管理システムと類似のシステムとして、特許文献6に開示された異常判定システムがある。特許文献6に開示された異常判定システムは、上位制御装置からの位置指令によって制御されるモータ駆動機器の動作異常を判定するものであって、位置指令に基づいてモータを制御するとともにモータ駆動機器の動作異常を検知可能なサーボアンプと、サーボアンプとの間で基準データと動作データを送受信するデータ収集ユニットと、データ収集ユニットとの間で基準データ及び動作データを送受信するとともに、動作データと基準データとの比較によりモータ駆動機械の動作異常を検知可能なエッジサーバと、を備えている。基準データは、動作異常の有無をサーボアンプにおいて判定するための基準となるデータであって、特許文献6に記載されたシステムでは、データ収集ユニットを介してエッジサーバが集めたモータの動作データに基づいて、エッジサーバによって作成される。作成された基準データは、エッジサーバからデータ収集ユニットを介して各サーボアンプに送信される。この異常判定システムでは、エッジサーバとデータ収集ユニットとを設けることによって、監視対象となるモータ駆動機器が多数設けられている場合に、上位制御装置の処理負荷を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-195862号公報
【特許文献2】特開2021-102261号公報
【特許文献3】特開2021-84164号公報
【特許文献4】特開2016-150400号公報
【特許文献5】特開2019-171490号公報
【特許文献6】特許第6593715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
動作履歴管理システムを構成する監視装置に対し、ロボットコントローラ内のサーボ制御機構で取得できるトルク値データなどのデータのみを送信する場合には、ロボットコントローラが内蔵する通信ポートを使用してデータを送信することができる。しかしながら、特許文献2に記載されるように、ロボットに加速度センサや温度センサを設ける場合には、これらのセンサでの検出データはロボットのモータのサーボ制御には使用されないので、一般的なロボットコントローラではこれらのセンサの検出データをロボットコントローラの本体から得ることはできない。したがって、センサからの検出データを監視装置に送信する何らかの仕組みが必要となる。特許文献2に開示されたシステムでは、センサで検出したデータをロボットコントローラ側の監視用信号生成部に送信し、監視用信号生成部において監視用信号を生成して監視装置に送信している。監視用信号生成部は、ロボット側のセンサに対して信号線により接続される必要があり、従来は、ロボットコントローラ本体の筺体とは別筺体であるデータ収集ユニットとして、ロボットコントローラの筺体の外側に取り付けられていた。この場合、データ収集ユニットがロボットコントローラに取り付けられているといっても、監視用信号生成部であるデータ収集ユニットのための電源回路を別途用意する必要がある。また、データ収集ユニットから出力される監視用信号は、ロボットコントローラからは離れた位置に設けられている監視装置に送られる。多数のロボットが設けられていてロボットごとに監視用信号を監視装置に送信する場合には、各ロボットのデータ収集ユニットと監視装置とを監視装置が中心となるスター状配線で接続すると、監視装置の近傍において配線が輻輳する。
【0010】
本発明の目的は、ロボットにおける故障の予兆の検出などのために設けられるデータ収集ユニットであって、別途に電源回路などを用意する必要がなく、かつ、監視装置への接続を容易に行うことができるデータ収集ユニットと、そのようなデータ収集ユニットを備えたロボットコントローラとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のデータ収集ユニットは、ロボットの故障の予兆の検出に必要なデータを収集するデータ収集ユニットであって、ロボットに設けられたセンサからの検出信号とロボットを制御するロボットコントローラから出力される動作データとに基づいて、監視用信号を生成する監視用信号生成部と、複数のネットワークノードの間での通信を可能にするスイッチングハブ部と、スイッチングハブ部に接続してLAN(ローカルエリアネットワーク)ケーブルが着脱可能に取付けられる複数のLANポートと、を有し、監視用信号生成部はネットワークノードとしてスイッチングハブ部に接続し、ロボットコントローラに取り付けられてロボットコントローラの電源回路から電源電圧が供給され、複数のLANポートのうちの1つを介して動作データが監視用信号生成部に入力する。
【0012】
本発明のデータ収集ユニットは、スイッチングハブとしての機能を備えるとともに、ロボットコントローラに組み込まれてロボットコントローラの電源回路から電源電圧を供給される。これによりデータ収集ユニットでは、別途に電源回路などを用意する必要がなく、かつ、高い自由度で信号伝送用の配線を配置することができて監視装置への接続を容易に行うことができるようになる。
【0013】
本発明のデータ収集ユニットでは、監視用信号が、複数のLANポートのうちの1つを介して、ロボットの動作履歴管理を行う監視装置に送信されるようにしてもよい。このように構成することにより、一般的なネットワークケーブル、LANケーブルを用いてデータ収集ユニットを監視装置に接続できるので、監視装置への接続をより容易に行うことができる。
【0014】
本発明のデータ収集ユニットは、ロボットコントローラへの取り付け時にロボットコントローラの筺体の表面に現れるフロントパネルと、フロントパネルに取り付けられるとともにロボットコントローラへの取り付け時に筺体内に位置する配線基板とを有することが好ましい。このように構成することにより、データ収集ユニット独自の筺体を不要にすることができる。この場合、フロントパネルの表面に、センサとの接続に用いられる信号コネクタと、少なくとも2つのLANポートが露出していることが好ましい。フロントパネルの表面に信号コネクトとLANポートとを露出させることにより、センサへの配線の接続やLANケーブルの接続を容易に行えるようになる。
【0015】
本発明のデータ収集ユニットは、少なくとも3つのLANポートを有することがコンマしい。LANポートが少なくとも3つあれば、動作履歴管理システムを構成する監視装置に監視用信号を伝送するときに、監視装置側からみて複数のデータ収集ユニットをカスケードに接続することが可能となり、データ収集ユニットと監視装置とを接続するための信号ケーブルの使用量を削減することができる。
【0016】
本発明のロボットコントローラは、本発明のデータ収集ユニットが組み込まれていることを特徴とする。本発明のロボットコントローラによれば、データ収集ユニットをロボットコントローラとは別個に設ける必要がなくなり、また、動作履歴管理システムによってロボットの動作履歴の管理やロボットにおける故障の予兆の検出を行うときに、ロボットコントローラと動作履歴管理システムの監視装置との接続を容易に行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ロボットにおける故障の予兆の検出などのために設けられるデータ収集ユニットにおいて、別途に電源回路などを用意する必要がなくなるとともに、監視装置への接続を容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の一形態のデータ収集ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図2】(a),(b)は、それぞれ、データ収集ユニットの正面図及び右側面図である。
【
図3】ロボットコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図4】データ収集ユニットが取り付けられた状態のロボットコントローラを示す背面図である。
【
図5】駆動履歴管理システムにデータ収集ユニットを組み込むときの接続例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の一形態のデータ収集ユニットの構成の一例を示している。
図1に示すデータ収集ユニット10は、ロボットごとにそのロボットでの故障の予兆を検出するためなどに必要なデータを収集し、そのデータを、例えば動作履歴管理システムを構成する監視装置などに送信するものである。動作履歴管理システムにおいて複数のロボットの動作履歴が管理されるとして、データ収集ユニット10は、ロボットごとに設けられる。特に本実施形態では、データ収集ユニット10は、上位装置(例えばプログラマブルロジックコントローラ)からの動作指令に応じてロボットの各軸のモータをサーボ制御するロボットコントローラ50(
図3及び
図4参照)内に組み込まれるものである。ロボットコントローラ50へのデータ収集ユニット10の組み込みの形態については、後述する。
【0020】
データ収集ユニット10は、イーサネット(登録商標)ケーブルなどのLAN(ローカルエリアネットワーク)ケーブルが取り外し可能に接続される3個のLANポート11~13と、ロボット内に設けられている加速度センサや温度センサからの検出信号が入力する信号コネクタ14と、ロボットコントローラ50の内部の電源回路53(
図3参照)との接続に用いられる電源コネクタ15と、スイッチングハブ部21と、監視用信号を生成する監視用信号生成部22と、制御部23と、表示部24とを備えている。LANポート11~13は、いずれも例えばRJ-45コネクタ(ジャック型)である。電源コネクタ15を介してデータ収集ユニット10には、例えば+5V及び+24Vの電源電圧が供給される。ロボット内でのセンサの配置形態は特許文献2に記載されたものと同様であり、各センサで得られるアナログ形式の検出信号は、ロボット内に設けられたAD変換回路によってデジタル信号に変換され、その後、ロボットからデータ収集ユニット10に出力される。ロボット内でAD変換回路をデイジーチェーン接続し、各センサからの検出信号が多重化された状態でデータ収集ユニット10に供給されるようにしてもよい。
【0021】
スイッチングハブ部21は、LANポート11~13及び監視用信号生成部22との間でのMACアドレスに基づくレイヤー2(データリンク層)でのスイッチを行うものである。ロボットコントローラ50の本体内の制御演算部51(
図3参照)は、動作データとして、ロボットの各モータの位置や速度、トルク値のデータなどを出力している。監視用信号生成部22は、制御演算部51から出力される動作データと、ロボット内のセンサから信号コネクタ14を介して入力する検出信号とに基づき、ロボットの動作履歴のデータや故障の予兆の検出に必要なデータを含む監視用信号を生成する。監視用信号生成部22は、スイッチングハブ部21に対し、LANポート11~13で使用されるものと同じ通信プロトコルを使用して接続しており、ロボットコントローラ50の制御演算部51から出力される動作データをスイッチングハブ部21を介して受け取る。また、監視用信号生成部22は、生成した監視用信号を動作履歴管理システムの監視装置に送信するときは、スイッチングハブ部21を介して送信する。すなわち、スイッチングハブ部21は、ネットワークノード間の通信を可能にするものであって、監視用信号生成部22はネットワークノードとしてスイッチングハブ部21に接続する。また、制御演算部51や監視装置もネットワークノードの1つである。そして本実施形態では、データリンク層に例えばイーサネット(登録商標)を使用し、ネットワーク層及びトランスポート層のプロトコルに例えばTCP/IPを使用して、スイッチングハブ部21を介し、監視装置や監視用信号生成部22、制御演算部51などを含む各ネットワークノード間での通信が行われる。
【0022】
制御部23は、データ収集ユニット10の全体の動作制御を行なうものであるが、特に、データ収集ユニット10やそこに接続されている各センサの動作状態を判定して動作状態を示す表示を表示部24に表示させる。例えば4桁の7セグメント表示デバイスによって構成された表示部24において数字や文字の表示を行うことによって、利用者はデータ収集ユニット10の動作状態を知ることができる。例えば、データ収集ユニット10において何らかのエラーが発生した場合には、制御部23は、そのエラーの発生を検出して、そのエラーに対応するセラーコードを表示部24に表示させることができる。
【0023】
本実施形態のデータ収集ユニット10は、形態としてはロボットコントローラ50に対する拡張モジュールとして、ロボットコントローラ50に組み込まれるものである。
図2(a)はデータ収集ユニット10の正面図であり、
図2(b)は右側面図である。データ収集ユニット10は、ロボットコントローラ50に組み込んだときにロボットコントローラ50の表面の一部として露出するフロントパネル31と、フロントパネル31の裏面に対して取り付けられた配線基板32とを備えており、配線基板32は、データ収集ユニット10をロボットコントローラ50に組み込んだときにロボットコントローラ50の筺体の内部に位置する。LANポート11~13、信号コネクタ14及び表示部24は配線基板32の図示上側の表面においてフロントパネル31に近接した位置に取り付けられており、フロントパネル31には、LANポート11~13、信号コネクタ14及び表示部24に対応して開口が設けられている。その結果、ロボットコントローラ50にデータ収集ユニット10が組み込まれた状態において、フロントパネル31の表面側にLANポート11~13及び信号コネクタ14が露出し、これらに対してアクセスしてこれらにケーブルを取り外し可能に接続することができ、また表示部24における表示内容を外部から視認することができる。
【0024】
電源コネクタ15は、配線基板32の図示上面において、フロントパネル31とは反対側となる端部に取り付けられている。配線基板32の下方には、配線基板32の図示下面側を保護する保護板33が、配線基板32との間にスペーサ34を介在させてボルトにより固定されている。配線基板32の図示上面の中央部には、スイッチングハブ部21、監視用信号生成部22及び制御部23を構成するための回路部品群35が取り付けられている。回路部品群35には、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ、コンデンサなどが含まれる。
【0025】
次に、本実施形態のデータ収集ユニット10が組み込まれるロボットコントローラ50について説明する。
図3は、ロボットコントローラ50の基本的な構成を示すブロック図である。ロボットコントローラ50は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの上位装置41から入力する動作指令に基づいて、ロボット内の各軸のモータをサーボ制御するものである。ロボットコントローラ50は、上位装置41からの動作指令に基づいて演算を行い、各モータに対する位置指令などの指令を出力する制御演算部51と、位置指令に基づくサーボ制御を行なってモータを駆動するサーボアンプ52と、外部の商用電源から電力の供給を受けてロボットコントローラ50内で使用される電源電圧を生成する電源回路53と、備えている。特に電源回路53は、制御演算部51やデータ収集ユニット10で使用される+5Vと+24Vの電源電圧を発生し、ロボットのモータの駆動のためにサーボアンプ52供給される電源電圧を発生する。ロボットの各モータにはそのモータの回転位置を検出するエンコーダが取り付けられており、エンコーダで検出されたモータ位置は、制御演算部51とサーボアンプ52とにフィードバックする。制御演算部51には、図示破線で示すように、ティーチングペンダント42が接続されてもよい。
図3ではサーボアンプ52は1つしか描かれていないが、実際には、ロボットに設けられるモータの数だけサーボアンプ52が設けられる。制御演算部51は、ロボットの動作に関するデータ(すなわち動作データ)、例えば、モータへの位置指令値、モータの現在位置、モータへの速度指令値、モータの現在速度、モータへのトルク指令値などを出力する機能も有する。速度指令値やトルク指令値は、サーボアンプ52内での演算によって得られるのが一般的であるので、これらの指令値はサーボアンプ52から制御演算部51に伝達されてから、制御演算部51から動作データとして出力される。本実施形態では、制御演算部51からの動作データの出力には、データ収集ユニット10のLANポート11~13において使用されるものと同じ通信プロトコルが使用される。
【0026】
図4は、データ収集ユニット10を組み込んだ状態でのロボットコントローラ50の背面図である。ロボットコントローラ50は、略直方体の筺体55を備えたものであって、その背面には、ロボットコントローラ50に対して挿抜が可能な拡張モジュールを受け入れるための拡張スロットが設けられており、データ収集ユニット10は、その拡張スロットに挿し込まれて固定されることによって、ロボットコントローラ50に組み込まれている。データ収集ユニット10をロボットコントローラ50に固定するときは、まず、ロボットコントローラ50の内部の電源回路53とデータ収集ユニット10の電源コネクタ15とを電源ケーブルで接続し、その後、データ収集ユニット10を拡張スロットに挿入して、フロントパネル31をロボットコントローラ50の背面板にねじ止めする。
【0027】
ロボットコントローラ50の背面には、制御演算部51からの動作データを外部に出力するためのLANポート60と、電源回路53への接続のために商用電源からの配電ケーブルをロボットコントローラ50の内部に引き込むための電源入力部61と、電源回路53に付随するブレーカー(遮断器)62と、コネクタ63~66が設けられている。コネクタ63は、ロボット内に設けられているモータへの駆動用配線が接続されるコネクタである。コネクタ64は、ロボットのモータに機械的に接続したエンコーダからの信号配線が接続されるコネクタである。コネクタ65は、上位装置41との接続に用いられるコネクタである。コネクタ66は、例えばティーチングペンダント42などとの接続に用いられるコネクタである。動作データをデータ収集ユニット10に送信するために、LANポート60は、LANケーブル69によって、データ収集ユニット10のLANポート11~13のいずれかに接続される。図示される例では、LANポート60は、LANケーブル69によってLANポート11に接続している。
【0028】
本実施形態のデータ収集ユニット10は、ロボットコントローラ50のための拡張モジュールの1つとしてロボットコントローラ50の拡張スロットに取り付けられ、ロボットコントローラ50の電源回路53から電源電圧が供給されるので、データ収集ユニット10自体に電源回路やノイズフィルタ、ブレーカなどを設けなく済むという利点を有するとともに、独自の筺体を必要としない、という利点を有する。また、3個のLANポート11~13を備えるとともにスイッチングハブとしての機能を有するので、複数のロボットの動作履歴を1つの監視装置で監視してロボットごとに故障の予兆などを検出するときに、信号配線を容易に設けることが可能になる。例えば3個のLANポート11~13は、そのうち1つをロボットコントローラ50の制御演算部51との接続に使用したとして、残りの2つのうちの1つを監視装置との接続に使用し、残った1つを別のロボットコントローラに取り付けられているデータ収集ユニットとの接続やロボットの保守に使用されるPC(パーソナルコンピュータ)端末との接続に使用することができる。なお、制御演算部51との接続に用いるLANポートは、ロボットコントローラ50の筺体55内で制御演算部51との接続が可能であるときは、フロントパネル31において露出するように設けられている必要はない。また、データ収集ユニット10に設けられるLANポートの数を4以上とすれば、さらに配線の自由度が向上する。なお、データ収集ユニット10に設けられるLANポートの数は、最低で2であるが、その場合は、後述するように複数のデータ収集ユニット10をカスケードに接続することが難しくなる。
【0029】
図5は、ロボットの動作履歴を管理しロボットにおける故障の予兆の検出を行う駆動履歴管理システムに、本実施形態のデータ収集ユニット10を組み込むときの接続例を示す概略的に示す図である。ここでは、2台のロボットが設けられているとして、これらのロボットは、それぞれ、ロボットコントローラ50A,50Bによって制御されるものとする。ロボットコントローラ50A,50Bは、いずれも、
図3及び
図4に示したロボットコントローラ50と同様のものであって、本実施形態のデータ収集ユニット10が組み込まれている。駆動履歴管理システムには、複数のロボットの動作履歴を蓄積する監視装置71が設けられている。そして、ロボットコントローラ50Aのデータ収集ユニット10は、その3つのLANポート11~13を使用して、図示太線で示すように、ネットワーク72を介して監視装置71に接続し、そのロボットコントローラ50Aの制御演算部51に接続し、もう1つのロボットコントローラ50Bのデータ収集ユニット10に接続する。ロボットコントローラ50Bのデータ収集ユニット10は、そのLANポート11~13を介して、このようにロボットコントローラ50Aのデータ収集ユニット10に接続するとともに、ロボットコントローラ50Bのの制御演算部51に接続する。この例では、監視装置71の側から見てデータ収集ユニット10がカスケードに接続されていることになる。
【0030】
図5に示した例では、ロボットコントローラごとに設けられるデータ収集ユニット10がスイッチングハブ機能を有することにより、監視装置71の側から見て、各ロボットコントローラ側からの監視用信号の伝送経路が集約されることになるので、監視用信号の伝送に設けられるケーブルの使用量を削減でき、監視装置71の周りでの信号ケーブルの輻輳などを防ぐことができる。また、1つのデータ収集ユニット10に設けられるLANポートの数を4以上とすれば、監視用信号の伝送に関し、1つのデータ収集ユニット10の下に他の2以上のデータ収集ユニットを収容させることも可能になる。
【符号の説明】
【0031】
10…データ収集ユニット;11~13,60…LANポート;14…信号コネクタ;15…電源コネクタ;21…スイッチングハブ部;22…監視用信号生成部;23…制御部;24…表示部;31…フロントパネル;32…配線基板;33…保護板;34…スペーサ;35…回路部品群;41…上位装置;42…ティーチングペンダント;50,50A,50B…ロボットコントローラ;51…制御演算部;52…サーボアンプ;53…電源回路;55…筺体;61…電源入力部;62…ブレーカ;63~66…コネクタ;69…LANケーブル;71…監視装置;72…ネットワーク。