(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128876
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】埋設管位置推定システム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20230907BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01V3/12 B
G01S13/88 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033525
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514018238
【氏名又は名称】株式会社きんそく
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本木 章平
(72)【発明者】
【氏名】八代 成美
(72)【発明者】
【氏名】須田 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】土本 裕之
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105GG01
2G105GG03
2G105LL02
5J070AB01
5J070AC03
5J070AC04
5J070AC19
5J070AE11
5J070AF02
5J070AJ08
5J070AK36
(57)【要約】
【課題】埋設管が埋設された位置の推定を省力化・効率化する。
【解決手段】埋設位置推定部42は、探査位置測定装置が測定した位置とレーダー探査装置が受信した電波の強度パターンとに基づいて、地中埋設物の位置及び深さを推定する。埋設管判定部44は、埋設位置推定部42が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて、前記地中埋設物が線状に連続しているか否かを判定し、線状に連続していると判定した地中埋設物を、埋設管であると判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上を移動し、地中へ向けて電波を照射し地中埋設物に当たって反射した電波を受信するレーダー探査装置と、
前記レーダー探査装置の位置を測定する探査位置測定装置と、
埋設管の埋設位置を推定する埋設管位置推定装置と
を備え、
前記埋設管位置推定装置は、
前記探査位置測定装置が測定した位置と前記レーダー探査装置が受信した電波の強度パターンとに基づいて、前記地中埋設物の位置及び深さを推定する埋設位置推定部と、
前記埋設位置推定部が算出した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて、前記地中埋設物が線状に連続しているか否かを判定し、線状に連続していると判定した地中埋設物を、埋設管であると判定する埋設管判定部と
を有する、埋設管位置推定システム。
【請求項2】
前記埋設管位置推定装置は、
前記レーダー探査装置が受信した電波の強度パターンに基づいて、前記地中埋設物の種類を判別する埋設物判別部を更に備える、
請求項1の埋設管位置推定システム。
【請求項3】
前記埋設位置推定部は、人工知能を用いて、前記地中埋設物の位置及び深さを推定する、
請求項1又は2の埋設管位置推定システム。
【請求項4】
前記埋設管位置推定装置は、
前記埋設管判定部が埋設管であると判定した地中埋設物について、前記埋設位置推定部が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて、三次元モデルを生成する三次元モデル生成部を更に備える、
請求項1乃至3いずれかの埋設管位置推定システム。
【請求項5】
前記三次元モデル生成部は、
前記埋設位置推定部が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて、前記地中埋設物が存在する確率が所定の閾値を超える範囲を算出し、
算出した前記範囲の輪郭を検出し、
検出した前記輪郭上の二つの点を結ぶ線分それぞれについて、前記線分を対角線とする長方形のうち、前記範囲との重なりが最大になる長方形を算出し、
算出した前記長方形のうち、他の前記長方形との重なりが所定の閾値を超え、かつ、前記他の長方形と比較して前記範囲との重なりが少ない長方形を除去し、
除去されずに残った長方形を用いて、前記地中埋設物の三次元モデルを生成する、
請求項4の埋設管位置推定システム。
【請求項6】
前記埋設管判定部は、線状に連続した区間について、前記区間の長さと、前記埋設位置推定部が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて算出した前記地中埋設物が前記区間に存在する確率の平均値とに基づいて、前記区間に埋設管が存在する存在確率を算出する、
請求項1乃至5いずれかの埋設管位置推定システム。
【請求項7】
前記埋設管判定部が算出する存在確率は、前記区間の長さが長いほど大きくなるとともに、前記平均値が大きいほど大きくなり、かつ、前記平均値の影響よりも前記区間の長さの影響のほうが大きい、
請求項6の埋設管位置推定システム。
【請求項8】
前記埋設管判定部は、更に、線状に連続した区間について、前記区間の長さと、前記埋設位置推定部が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて算出した前記地中埋設物が前記区間に存在する確率の平均値とに基づいて、前記区間に埋設物が存在する存在確率を算出する、
請求項6又は7いずれかの埋設管位置推定システム。
【請求項9】
前記埋設管判定部が算出する埋設物の存在確率は、前記区間の長さが長いほど大きくなるとともに、前記平均値が大きいほど大きくなり、かつ、前記区間の長さの影響よりも前記平均値の影響のほうが大きい、
請求項8の埋設管位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管、ガス管、電線管など地中に埋設された埋設管の埋設位置を推定する埋設管位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーダー波の反射を用いて埋設管を探査する管路探査法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された探査法は、管路に導電性の液体を注入した場合と注入しない場合とで2回測定をする必要があるので、手間がかかる。また、管路に液体を注入することができない場合は適用できない。
また、得られた波形画像を熟練技術者が目視により解析する必要があるので、解析作業に時間と労力を要する。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
埋設管位置推定システムは、地上を移動し地中へ向けて電波を照射し地中埋設物に当たって反射した電波を受信するレーダー探査装置と、前記レーダー探査装置の位置を測定する探査位置測定装置と、埋設管の埋設位置を推定する埋設管位置推定装置とを備える。前記埋設管位置推定装置は、前記探査位置測定装置が測定した位置と前記レーダー探査装置が受信した電波の強度パターンとに基づいて、前記地中埋設物の位置及び深さを推定する埋設位置推定部と、前記埋設位置推定部が算出した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて、前記地中埋設物が線状に連続しているか否かを判定し、線状に連続していると判定した地中埋設物を、埋設管であると判定する埋設管判定部とを有する。
前記埋設管位置推定装置は、前記レーダー探査装置が受信した電波の強度パターンに基づいて、前記地中埋設物の種類を判別する埋設物判別部を更に備えてもよい。
前記埋設位置推定部は、人工知能を用いて、前記地中埋設物の位置及び深さを推定してもよい。
前記埋設管位置推定装置は、前記埋設管判定部が埋設管であると判定した地中埋設物について、前記埋設位置推定部が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて、三次元モデルを生成する三次元モデル生成部を更に備えてもよい。
前記三次元モデル生成部は、前記埋設位置推定部が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて、前記地中埋設物が存在する確率が所定の閾値を超える範囲を算出し、算出した前記範囲の輪郭を検出し、検出した前記輪郭上の二つの点を結ぶ線分それぞれについて、前記線分を対角線とする長方形のうち、前記範囲との重なりが最大になる長方形を算出し、算出した前記長方形のうち、他の前記長方形との重なりが所定の閾値を超え、かつ、前記他の長方形と比較して前記範囲との重なりが少ない長方形を除去し、除去されずに残った長方形を用いて、前記地中埋設物の三次元モデルを生成してもよい。
前記埋設管判定部は、線状に連続した区間について、前記区間の長さと、前記埋設位置推定部が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて算出した前記地中埋設物が前記区間に存在する確率の平均値とに基づいて、前記区間に埋設管が存在する存在確率を算出してもよい。
前記埋設管判定部が算出する存在確率は、前記区間の長さが長いほど大きくなるとともに、前記平均値が大きいほど大きくなり、かつ、前記平均値の影響よりも前記区間の長さの影響のほうが大きくてもよい。
前記埋設管判定部は、更に、線状に連続した区間について、前記区間の長さと、前記埋設位置推定部が推定した前記地中埋設物の位置及び深さに基づいて算出した前記地中埋設物が前記区間に存在する確率の平均値とに基づいて、前記区間に埋設物が存在する存在確率を算出してもよい。
前記埋設管判定部が算出する埋設物の存在確率は、前記区間の長さが長いほど大きくなるとともに、前記平均値が大きいほど大きくなり、かつ、前記区間の長さの影響よりも前記平均値の影響のほうが大きくてもよい。
【発明の効果】
【0006】
前記埋設管位置推定システムによれば、熟練技術者による解析が不要となり、省力化・効率化をすることができる。また、見落としを防ぐことができるので、現場の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】埋設管位置推定システムの一例を示す概略図。
【
図2】埋設管位置推定装置の一例を示すブロック図。
【
図3】反射波の強度パターンの一例を示すグラフ図。
【
図4】反射波の強度パターンの一例を示すグラフ図。
【
図5】反射波の強度パターンの一例を示すグラフ図。
【
図6】三次元モデルに基づいて生成される埋設管の俯瞰図の一例を示す図。
【
図7】三次元モデル生成部の一例を示すブロック図。
【
図10】輪郭検出部が検出する輪郭の一例を示す図。
【
図11】長方形算出部が算出する線分の一例を示す図。
【
図12】長方形算出部が算出する円の一例を示す図。
【
図13】長方形算出部が算出する長方形の一例を示す図。
【
図14】長方形算出部が算出する長方形の一例を示す図。
【
図15】長方形抽出部が抽出する長方形の一例を示す図。
【
図17】埋設管判定部が算出する存在確率の一例を示す図。
【
図18】埋設管判定部が算出する存在確率の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すとおり、埋設管位置推定システム10は、例えば、台車11と、レーダー探査装置21と、探査位置測定装置31と、埋設管位置推定装置41とを有する。
台車11は、例えば、車輪12を有し、地面80の上を移動できる。台車11は、人力で移動させてもよいし、自動車などに牽引されて移動してもよいし、自走してもよい。
【0009】
レーダー探査装置21は、台車11に搭載され、台車11とともに移動する。レーダー探査装置21は、更に台車11に対して相対的に移動してもよい。レーダー探査装置21は、例えば、アンテナ22を有し、パルス状の電波を地中に向けて放射して、地中に埋設された埋設物81や埋設管82などの地中埋設物に当たって反射した電波を受信する。電波を放射してから受信するまでにかかった時間から、地中埋設物までの距離がわかる。アンテナ22は、送信アンテナと受信アンテナとに分かれていてもよい。
【0010】
探査位置測定装置31は、台車11に搭載され、台車11とともに移動する。探査位置測定装置31は、台車11の移動によって移動するレーダー探査装置21の位置を測定する。探査位置測定装置31は、例えば、車輪12が回転した回数から台車11の移動距離を算出してもよいし、例えば加速度センサなどによって測定した加速度に基づいて台車11の移動方向や速度を算出してもよい。あるいは、全地球測位システム(GPS)受信機などの測位装置を用いて台車11の位置を測定してもよい。レーダー探査装置21が台車11に対して移動する場合、探査位置測定装置31は、台車11の絶対位置と、レーダー探査装置21の台車11に対する相対位置とから、レーダー探査装置21の絶対位置を算出してもよい。
【0011】
埋設管位置推定装置41は、レーダー探査装置21が受信した電波の強度パターンと、探査位置測定装置31が測定したレーダー探査装置21の位置とに基づいて、埋設管82の位置を推定する。
埋設管位置推定装置41は、例えばコンピュータであり、記憶装置が記憶したプログラムを処理装置が実行することにより、以下に説明する機能ブロックを実現する。
【0012】
図2に示すとおり、埋設管位置推定装置41は、例えば、画像生成部48と、埋設位置推定部42と、埋設物判別部43と、埋設管判定部44と、三次元モデル生成部45とを有する。
【0013】
画像生成部48は、レーダー探査装置21が受信した電波の強度パターンと、探査位置測定装置31が測定したレーダー探査装置21の位置とに基づいて、レーダー探査装置21が受信した電波の強度パターンを表す画像を生成する。
例えば、レーダー探査装置21が直線的に移動した場合、単一の反射点からの反射波の強度パターンは、地中埋設物の反射率が大きいほど反射波の振幅は大きくなり、強度が強く明瞭な強度パターンとなる。
横軸にレーダー探査装置21の移動距離、縦軸に電波を送信してから受信するまでの遅延時間をとると、
図3に示すように、反射波の振幅が大きい変化点を繋ぐと双曲線になる。
【0014】
地中を電波が伝播する速度は、地中の比誘電率によって定まる。したがって、地中の比誘電率がわかれば、電波を送信してから受信するまでの遅延時間から、地中反射体の深さを求めることができる。
画像生成部48は、例えば、地中の比誘電率として設定された所定の値を用いて、電波を送信してから受信するまでの遅延時間から、地中反射体の深さを算出する。そして、横方向にレーダー探査装置21の移動距離、縦方向に遅延時間から算出した反射体の深さをとり、レーダー探査装置21が受信した電波の強度をピクセルの属性とする画像を生成する。例えば、受信した電波の強度をピクセルの明度で表し、強度が弱いほど明度が低く(すなわち暗く)なり、強度が強いほど明度が高く(すなわち明るく)なる白黒画像を生成する。あるいは、逆に、強度が弱いほど明度が高くなり、強度が強いほど明度が低くなる白黒画像を生成してもよいし、明度ではなく色相によって電波の強度を表すカラー画像を生成してもよい。
【0015】
このようにして生成した画像には、
図3と同様の双曲線パターンが現れる。しかし、地中には多数の地中埋設物が存在しているので、レーダー探査装置21は、多数の反射点からの反射波を受信する。このため、画像生成部48が生成する画像には、例えば、
図4に示すように、複雑なパターンが現れる。
【0016】
埋設位置推定部42は、画像生成部48が生成した画像に基づいて、地中埋設物の位置を推定する。例えば人工知能(AI)を用いて、
図4のような複雑なパターンを解析し、地中埋設物(反射体)の位置を推定する。例えば、埋設位置推定部42は、画像生成部48が生成した画像を人工知能に入力する。人工知能には、このような画像をあらかじめ多数学習させておき、人工知能は、学習した学習モデルを使って、入力した画像を解析して、地中埋設物の位置を推定する。例えば、埋設位置推定部42は、地中埋設物がその位置に存在する確率を算出する。
【0017】
埋設物判別部43は、画像生成部48が生成した画像に基づいて、地中埋設物の種類を判別する。
例えば、地中埋設物が金属製の管である場合、レーダー探査装置21が受信する電波の強度は、遅延時間が短い(すなわち、レーダー探査装置21に近い)ほうから順に、いったん強度が弱くなったのち、強度が強くなり、その後また強度が弱くなる。したがって、画像生成部48が生成する画像には、例えば、パターン91のような黒(強度が弱いことを表す)、白(強度が強いこと表す)、黒の縞模様が現れる。
これに対し、地中埋設物が非金属製の管である場合、レーダー探査装置21が受信する電波の強度は、逆に、遅延時間が短いほうから順に、いったん強度が強くなったのち、強度が弱くなり、その後また強度が強くなる。したがって、画像生成部48が生成する画像には、パターン91とは逆に、例えば、パターン92のような白、黒、白の縞模様が現れる。
また、管のなかに水が存在している場合、画像生成部48が生成する画像には、
図5に示すように、パターン93のような多重反射波現象が観察される。
【0018】
そこで、埋設物判別部43は、このようなパターンの違いに基づいて、地中埋設物の種類を判別する。例えば、人工知能にこのようなパターンをあらかじめ多数学習させておき、人工知能は、学習した学習モデルを使って、パターンを解析して、地中埋設物の種類を推定する。例えば、埋設物判別部43は、地中埋設物がその種類のものである確率を算出する。なお、埋設物判別部43の人工知能は、埋設位置推定部42のものと同一であってもよい。すなわち、一つの人工知能が、地中埋設物の位置及び種類を同時に推定してもよい。
【0019】
埋設管判定部44は、埋設位置推定部42が推定した地中埋設物の位置に基づいて、地中埋設物が埋設管であるか否かを判定する。
地中には、様々なものが埋まっているが、水道管、ガス管、電線管などの埋設管82は、線状に延在している。これに対し、石などの埋設物81は、孤立して存在している。
そこで、埋設管判定部44は、地中埋設物が線状に延在している場合に、それが埋設管82であると判定する。
【0020】
更に、埋設管判定部44は、埋設物判別部43が判別した地中埋設物の種類に基づいて、線状に延在している地中埋設物が埋設管82であるか否かを判定してもよい。例えば、線状に延在している地中埋設物が金属管又は非金属管であると埋設物判別部43が判別した場合に、それが埋設管82であると判定し、それ以外のものであると埋設物判別部43が判別した場合は、埋設管82ではないと判定してもよい。
【0021】
三次元モデル生成部45は、埋設管判定部44が埋設管82であると判定した地中埋設物について、埋設位置推定部42が推定した位置と、埋設物判別部43が判別した種類とに基づいて、三次元モデルを生成する。
三次元モデルは、例えばBIM(建築情報モデリング/管理)やCIM(建設情報モデリング/管理)などと連携できる形式のデータや、三次元CAD(コンピュータ支援設計)用のデータなどであり、埋設管82の位置や種類を表す情報を含むものである。
三次元モデル生成部45は、生成した三次元モデルに基づいて、例えば
図6に示すような俯瞰図を作成してもよい。俯瞰図では、埋設管82の種類に応じて色分けしてもよい。また、三次元モデル生成部45は、生成した三次元モデルに基づいて、平面図などの二次元CAD用のデータを作成してもよい。
【0022】
このように、埋設位置推定部42が推定した地中埋設物の位置及び深さに基づいて、地中埋設物が線状に連続しているか否かを判定し、線状に連続していると判定した地中埋設物を埋設管82であると判定するので、埋設管82の位置を精度よく推定することができる。
地中埋設物の種類を判別することにより、埋設管82が金属管であるか非金属管であるか、埋設管82のなかに水が存在しているか否かなどを、容易に判別することができる。
人口知能を使うことにより、推定精度を向上することができる。
三次元モデルを生成することにより、推定した結果をBIM/CIMなど他のシステムで容易に利用することができる。
【0023】
建設工事において、地下掘削により、水道管、ガス管、電線管などの地中埋設管を損傷させる事故が発生している。地中埋設物を探査する方法として地中レーダー探査機を用いた方法があり、地中にレーダーを照射しその反射波の特性から地中内の埋設物位置を推測するものである。
しかし、従来は、地中レーダー探査機により得られた波形画像から熟練技術者が目視により埋設物を判別し、地中埋設物の位置等を図化し報告書を作成していた。このため、解析業務に労力と時間を要していた。そこで、埋設物判別にAIを用いて解析業務をシステム化することで、省力化・効率化をすることができる。
解析から図化までに要する時間と労力とを削減でき、省力化・効率化を図ることができる。
埋設管探索でレーダー波形に熟練した技術者による作業が不要となり、人材不足に対応できる。
波形画像からの埋設物反応を見落とす可能性がなく、解析精度を向上させ、安全性向上に寄与することができる。
地中レーダーの波形画像解析にAIを活用し、埋設物反応を自動判別する。埋設物反応の連続性から埋設管位置を推定するアルゴリズムを構築する。最終的に埋設管位置を自動的に2次元/3次元CAD化する。これら一連のプロセスをシステム化することで、解析業務の省力化・効率化を図ることができる。
地中レーダー波形画像解析にAIを用いて埋設物反応を自動検出する。例えば、山形の波形画像(地中の断面図)の特徴点をAIによる画像解析にて認識し、埋設物反応としてマーキングする。
埋設物反応の連続性から埋設管の三次元位置を推定する。例えば、地中レーダー探査機により取得された膨大な波形画像(断面図)から埋設物反応を抽出し、その連続性から埋設管位置を推定する。
埋設管位置の2次元/3次元モデルを自動作成する。例えば、三次元モデルでは、埋設管の管種(金属・非金属、管内水の有無)毎に色分けしたモデルで出力する。
波形画像の形状(形状の特徴点)から金属・非金属や管内水の有無について分類することができる。
これにより、解析業務の工数を半分に削減できる。例えば、探査範囲が500m2の場合、従来は4人工であったものが、2人工に削減できる。
また、目視判別による埋設物反応の見落としを防止でき、解析精度を向上できるので、現場の安全性向上に寄与することができる。
【0024】
次に、三次元モデル生成部45の詳細について説明する。
図7に示すとおり、三次元モデル生成部45は、例えば、範囲算出部52と、領域算出部53と、輪郭検出部54と、長方形算出部55と、長方形抽出部56と、モデル算出部57とを有する。
【0025】
範囲算出部52は、埋設管判定部44が埋設管82であると判定した地中埋設物について、埋設位置推定部42が推定した地中埋設物の位置及び深さに基づいて、例えば
図8に示すように、地中埋設物が存在する確率が所定の閾値を超える範囲を算出する。
例えば、範囲算出部52は、探索範囲を所定の大きさの正方形に分割し、分割したそれぞれの正方形について、その正方形の下に埋設管82が存在する確率(上面図における埋設管確率分布、確率マップ)を算出する。範囲算出部52は、算出した確率と閾値とを比較して、埋設管82の存在確率が閾値を超える正方形のみを抽出する。
図8には、範囲算出部52が抽出した正方形が白色のピクセル、抽出されなかった正方形が黒色のピクセルで表されている。
なお、範囲算出部52が使用する閾値は、あらかじめ定められた一定の値であってもよいし、埋設管82の存在確率の分布や抽出された正方形などに基づいて算出した値であってもよい。例えば、埋設管82の存在確率の平均値に基づいて閾値を算出してもよいし、抽出される正方形の割合が所定の値になるように閾値を調整してもよい。
【0026】
領域算出部53は、範囲算出部52が算出した範囲に基づいて、例えば
図9に示すように、埋設管82が存在する領域を算出する。
例えば、領域算出部53は、範囲算出部52が抽出した正方形のうち、隣接して所定の面積以上の範囲を形成している抽出正方形だけを抽出し、所定の面積に満たない範囲しか形成しない孤立した抽出正方形を抽出範囲から取り除く。同様に、範囲算出部52が抽出しなかった正方形のうち、隣接して所定の体積に満たない範囲しか形成しない孤立した非抽出正方形を抽出範囲に加える。領域算出部53は、このようにして調整した抽出範囲を、埋設管82が存在する領域とする。
【0027】
輪郭検出部54は、領域算出部53が算出した領域に基づいて、それぞれの領域について、例えば
図10に示すように、その領域の輪郭95を検出する。
例えば、輪郭検出部54は、領域算出部53が算出した抽出範囲のなかから、抽出範囲に含まれる隣接した正方形によって形成される一つの連続した領域を取り出す。輪郭検出部54は、その領域に含まれる正方形と、その領域に含まれない正方形との間の境界を検出して、その境界を近似する多角形を算出して輪郭95とする。これをすべての領域について繰り返す。
【0028】
長方形算出部55は、輪郭検出部54が検出した輪郭95に基づいて、例えば
図11に示すように、その輪郭95上の二つの点を結ぶ線分96を算出する。
例えば、長方形算出部55は、輪郭検出部54が算出した多角形の頂点を結ぶ対角線を算出し、算出した対角線のなかから所定の条件を満たすものだけを抽出して、線分96とする。
【0029】
長方形算出部55は、更に、算出した線分96に基づいて、それぞれの線分について、その線分を対角線とする長方形を算出し、算出した長方形のなかから、前記領域との重なりが最大になる長方形を算出する。
例えば、長方形算出部55は、算出した線分96のなかから、一つの線分96を取り出す。長方形算出部55は、例えば
図12に示すように、その線分96を直径とする円97を算出する。次に、例えば
図13に示すように、算出した円97上に頂点98を配置して、線分96を対角線とする長方形99を算出する。頂点98を動かすことにより、長方形99が変化するので、線分96を対角線とする長方形99のなかから、対象領域との重なりが最大になる長方形99を算出して、その線分96に対応する長方形99とする。
長方形99と対象領域との重なりは、例えば以下のようにして算出する。すなわち、長方形99と対象領域との両方に含まれる部分の面積を算出して重複面積とし、長方形99に含まれるが対象領域には含まれない部分の面積を算出して非重複面積とする。そして、重複面積から非重複面積を差し引いた差を算出して、長方形99と対象領域との重なりとする。
長方形算出部55は、これを複数の線分96について繰り返すことにより、例えば
図15に示すように、複数の長方形99を算出する。
【0030】
長方形抽出部56は、長方形算出部55が算出した長方形99に基づいて、例えば
図15に示すように、長方形99を抽出する。
例えば、長方形抽出部56は、長方形算出部55が算出した長方形99のなかから、別の第二の長方形99との重なりが所定の閾値を超える長方形99を選択する。長方形抽出部56は、その長方形99と対象領域との重なりと、第二の長方形99と対象領域との重なりとを比較する。その長方形99と対象領域との重なりが、第二の長方形99と対象領域との重なりよりも少ない場合、長方形抽出部56は、その長方形99を取り除く。このようにして長方形99を振るい落としていき、最後まで残った長方形99だけを抽出する。
なお、長方形99同士の重なりは、長方形99と対象領域との重なりを算出する場合と同様の方式で算出してもよいし、長方形99と対象領域との重なりを算出する場合とは異なる方式で算出してもよい。
【0031】
モデル算出部57は、長方形抽出部56が抽出した長方形99に基づいて、地中埋設物の三次元モデルを生成する。
例えば、モデル算出部57は、長方形抽出部56が抽出した長方形99の短辺を直径とし、長方形99の長辺方向へ延びる円柱を算出して、埋設管82の三次元モデルとする。
このようにして抽出した長方形に基づいて三次元モデルを生成することにより、埋設管82が複雑に交差していたり分岐していたりする場合であっても、埋設管82の位置関係を正しく推定することができる。
【0032】
以上のように、人工知能によるモデル(推定結果)の上面図における埋設管確率分布を出力し、閾値を調整して一定の面積を持つ領域のみを残し、領域を一つ選択し、輪郭を検出して多角形で表現し、多角形の各頂点から二点を選択し、その二点間に直線を引き、条件を満たすものを残し、直線を一つ選択し、その直線が直径となるような円を描き、円をベースに回転角ごとの矩形を描き、矩形と管推定機領域の重なる面積が最大となるものを選び、各直線に対してこの処理を繰り返し、すべての矩形候補を集め、一定割合以上重なっている矩形領域に対して管推定領域の比率・面積が最も大きいもののみを残すことにより、確率マップ上で複数の管の位置関係を推定することができる。
【0033】
埋設管判定部44は、地中埋設物が埋設管であるか否かを判定する代わりに、地中埋設物が埋設管である確率を算出してもよい。
例えば、埋設管判定部44は、
図16に示すように、領域抽出部441と、区間抽出部442と、長さ算出部443と、平均強度算出部444と、存在確率算出部445と有する。
【0034】
領域抽出部441は、埋設位置推定部42が算出した地中埋設物の位置に基づいて、地中埋設物の反応強度(確率)が所定の閾値(例えば5%)を超える領域を抽出する。例えば、探索対象範囲の地下を所定の大きさの直方体(例えば一辺10cmの立方体)に分割し、それぞれの直方体について地中埋設物の強度が閾値を超えるか否かを判定し、地中埋設物の強度が閾値を超えた直方体をすべて抽出する。
【0035】
区間抽出部442は、領域抽出部441が抽出した領域のなかで、線状に連続する区間を抽出する。例えば、領域抽出部441が抽出した領域と交差する直線を引いて、領域抽出部441が抽出した領域に含まれる直方体のなかからその直線が通る直方体をすべて抽出して、一つの直線区間とする。これを直線の位置や向きを変えて繰り返すことにより、複数の区間を抽出する。
なお、区間の長さに制限を設けてもよい。例えば、領域抽出部441が抽出した領域と直線とが交差する長さが所定の閾値(例えば100cm)を超える場合は、複数の区間に分割して抽出する。この場合、抽出する複数の区間は、互いに重複していてもよい。例えば、交差する長さが120cmである場合、100cmの区間を10cmずつずらして3つ抽出してもよい。
また、区間抽出部442が抽出する区間は、直線状に連続したものに限らず、曲線状に連続したものであってもよい。その場合、曲線の曲率に制限を設けてもよい。例えば、曲率が1/100cm-1未満の区間だけを抽出してもよい。
【0036】
長さ算出部443は、区間抽出部442が抽出した区間のそれぞれについて、区間の長さを算出する。例えば、直線区間に含まれる直方体のうち、一方の端にある直方体の中心点と、他方の端にある直方体の中心点との間の距離を算出して、区間の長さとする。
【0037】
平均強度算出部444は、区間抽出部442が抽出した区間のそれぞれについて、地中埋設物の平均強度を算出する。例えば、区間に含まれる直方体それぞれについての地中埋設物の反応強度を合計し、区間に含まれる直方体の数で割ることにより、平均強度を算出する。
【0038】
存在確率算出部445は、直線区間抽出部442が抽出した区間のそれぞれについて、長さ算出部443が算出した長さと、平均強度算出部444が算出した平均強度とに基づいて、その区間に埋設管が存在する確率を算出する。例えば、二つの変数を入力とする関数を用いて、存在確率を算出する。あるいは、
図17に示すように、長さ及び平均強度と存在確率との間の対応を表す対応表を用いて、存在確率を算出してもよい。
ここで、長さ及び平均強度と存在確率との間の関係は、以下の三つの条件を満たすようあらかじめ定めておく。(1)長さが長いほど存在確率が大きくなる。(2)平均強度が高いほど存在確率が大きくなる。(3)平均強度よりも長さのほうが存在確率に及ぼす影響が大きい。すなわち、平均強度が低くても長さが長ければ、埋設管の存在確率は大きくなる。これは、線状に連続して反応がある場合は、反応が弱くても、埋設管が存在する可能性が高いからである。逆に、平均強度が高くても長さが短ければ、埋設管の存在確率は小さくなる。これは、反応が強くても、線状に連続していなければ、それが埋設管である可能性は低いからである。
【0039】
埋設管判定部44は、直線区間抽出部442が抽出した区間のそれぞれについて、存在確率算出部445が算出した存在確率をそのまま出力してもよい。このとき、区間抽出部442が抽出した区間すべてについて存在確率を出力してもよいし、所定の条件を満たす区間についての存在確率だけを出力してもよい。例えば、存在確率が所定の閾値を超えるものだけを出力してもよいし、近接する区間のなかで存在確率が最も大きいものだけを出力してもよい。
あるいは、埋設管判定部44は、探索対象範囲を分割した直方体それぞれについて、その直方体を含む区間について存在確率算出部445が算出した存在確率のうち最大のものを、その直方体についての埋設管の存在確率として出力してもよい。
【0040】
また、存在確率算出部445は、埋設管の存在確率だけでなく、埋設管だけでなく埋設管以外のものも含むすべての埋設物がその区間に存在する確率を算出してもよい。その場合、例えば
図18に示すように、長さ及び平均強度と存在確率との間の関係は、以下の三つの条件を満たすようあらかじめ定めておく。(1)長さが長いほど存在確率が大きくなる。(2)平均強度が高いほど存在確率が大きくなる。(3)長さよりも平均強度のほうが存在確率に及ぼす影響が大きい。すなわち、長さが長くても平均強度が低ければ、埋設物の存在確率は小さくなり、長さが短くても平均強度が高ければ、埋設物の存在確率は大きくなる。これは、埋設物には、埋設管のように線状の延びていないものも含まれるため、反応が強ければ、線状に連続していなくても、そこに何かがある可能性が高いからである。
【0041】
以上のように、反応の長さと強度とに基づいて埋設管の存在確率を求めるので、埋設管の検出精度が高くなる。反応強度よりも長さを重視することにより、一般的な埋設物ではなく、埋設管に限定して精度よく検出することができる。
また、埋設管に限定せずそれ以外のものも含む埋設物の存在確率を求めることもできるので、一般的な埋設物についても、精度よく検出することができる。
したがって、状況に応じて適切な確率計算をすることができ、埋設管や埋設物の見落としを防ぐことができる。
【0042】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 埋設管位置推定システム、11 台車、12 車輪、21 レーダー探査装置、22 アンテナ、31 探査位置測定装置、41 埋設管位置推定装置、48 画像生成部、42 埋設位置推定部、43 埋設物判別部、44 埋設管判定部、441 領域抽出部、442 区間抽出部、443 長さ算出部、444 平均強度算出部、445 存在確率算出部、45 三次元モデル生成部、52 範囲算出部、53 領域算出部、54 輪郭検出部、55 長方形算出部、56 長方形抽出部、57 モデル算出部、80 地面、81 埋設物、82 埋設管、91~93 パターン、95 輪郭、96 線分、97 円、98 頂点、99 長方形。