(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128878
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】埋設物位置推定システム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20230907BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20230907BHJP
G06N 3/04 20230101ALI20230907BHJP
G06N 3/08 20230101ALI20230907BHJP
【FI】
G01V3/12 B
G01S13/88 200
G06N3/04
G06N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033528
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514018238
【氏名又は名称】株式会社きんそく
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本木 章平
(72)【発明者】
【氏名】八代 成美
(72)【発明者】
【氏名】須田 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】土本 裕之
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105GG01
2G105GG03
2G105LL02
5J070AB01
5J070AD02
5J070AE11
5J070AF02
5J070AH31
5J070AJ10
5J070AK40
5J070BD10
(57)【要約】
【課題】埋設物の三次元位置の推定にかかる時間を短縮し、推定精度を高める。
【解決手段】波形画像生成部41は、埋設物探査システムによって観測されたデータに基づいて、所定方向におけるレーダー探査装置の位置を横方向にとりレーダー探査装置が受信した電波の遅延時間を縦方向にとりレーダー探査装置が受信した電波の強度を画素の輝度とした波形画像を、前記所定方向と異なる第二の所定方向におけるレーダー探査装置の位置ごとに生成する。二次元位置推定部42は、波形画像生成部41が生成した波形画像に基づいて、畳み込みニューラルネットワークを用いて、埋設物の二次元位置を推定する。三次元位置推定部43は、二次元位置推定部42が推定した埋設物の二次元位置に基づいて、前記埋設物の三次元位置を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上を移動し地中へ向けて電波を照射し地中埋設物に当たって反射した電波を受信するレーダー探査装置と前記レーダー探査装置の位置を測定する探査位置測定装置とを有する埋設物探査システムによって観測されたデータに基づいて、所定方向における前記レーダー探査装置の位置を横方向にとり前記レーダー探査装置が受信した電波の遅延時間を縦方向にとり前記レーダー探査装置が受信した電波の強度を画素の輝度とした波形画像を、前記所定方向と異なる第二の所定方向における前記レーダー探査装置の位置ごとに生成する波形画像生成部と、
前記波形画像生成部が生成した波形画像に基づいて、畳み込みニューラルネットワークを用いて、埋設物の二次元位置を推定する二次元位置推定部と、
前記二次元位置推定部が推定した埋設物の二次元位置に基づいて、前記埋設物の三次元位置を推定する三次元位置推定部と
を備える、埋設物位置推定システム。
【請求項2】
前記レーダー探査装置の前記所定方向における位置ごとに、実際に埋設物が存在する二次元位置を表す正解データを生成する正解データ生成部を更に備え、
前記二次元位置推定部は、前記畳み込みニューラルネットワークに、前記正解データ生成部が生成した正解データを学習させる、
請求項1の埋設物位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管、ガス管、電線管など地中に埋設された埋設管などの埋設物が埋設された位置を推定する埋設物位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パルス波の反射を用いて地中埋設物を探査するレーダー型地中探査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような探査装置によって得られた情報は、従来、波形画像を熟練技術者が目視により解析する必要があったので、解析作業に時間と労力を要する。
そこで、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などの人工知能を用いてこれを解析することが考えられる。
また、探査装置のアンテナを一次元に移動させるのではなく二次元的に移動させたり、探査装置に一列に並んだ複数のアンテナを設けてアンテナが並んだ方向と異なる方向に一次元的に移動させたりすることにより、地中を三次元的に探索することが考えられる。
しかし、このような三次元的探索によって得られるデータは、非常に大きなものになるので、畳み込みニューラルネットワークを用いて埋設物の三次元位置を推定する(以下、埋設物の三次元位置を推定する畳み込みニューラルネットワークを「三次元畳み込みニューラルネットワーク」と呼ぶ。同様に、埋設物の二次元位置を推定する畳み込みニューラルネットワークを「二次元畳み込みニューラルネットワーク」と呼ぶ。)には、非常に多くの計算が必要となり、処理に時間がかかる。また、埋設物の三次元位置を正しく推定できるよう三次元畳み込みニューラルネットワークに学習させるのにも手間がかかり、推定精度を上げるのが難しい。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
埋設物位置推定システムは、地上を移動し地中へ向けて電波を照射し地中埋設物に当たって反射した電波を受信するレーダー探査装置と前記レーダー探査装置の位置を測定する探査位置測定装置とを有する埋設物探査システムによって観測されたデータに基づいて、所定方向における前記レーダー探査装置の位置を横方向にとり前記レーダー探査装置が受信した電波の遅延時間を縦方向にとり前記レーダー探査装置が受信した電波の強度を画素の輝度とした波形画像を、前記所定方向と異なる第二の所定方向における前記レーダー探査装置の位置ごとに生成する波形画像生成部と、前記波形画像生成部が生成した波形画像に基づいて、畳み込みニューラルネットワークを用いて、埋設物の二次元位置を推定する二次元位置推定部と、前記埋設物位置推定部が推定した埋設物の二次元位置に基づいて、前記埋設物の三次元位置を推定する三次元位置推定部とを備える。
埋設物位置推定システムは、前記レーダー探査装置の前記所定方向における位置ごとに、実際に埋設物が存在する二次元位置を表す正解データを生成する正解データ生成部を更に備えてもよい。前記二次元位置推定部は、前記畳み込みニューラルネットワークに、前記正解データ生成部が生成した正解データを学習させてもよい。
【発明の効果】
【0006】
前記埋設管位置推定システムによれば、三次元畳み込みニューラルネットワークを用いて埋設物の三次元位置を直接推定するのではなく、二次元畳み込みニューラルネットワークを用いて埋設物の二次元位置を推定した結果に基づいて、埋設物の三次元位置を推定するので、処理にかかる時間を短縮でき、推定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】埋設管位置推定システムの一例を示す概略図。
【
図2】埋設管位置推定装置の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示す埋設物探査システム10は、地中へ向けて電波を送信し地中埋設物に当たって反射した電波を受信することにより、地中埋設物の位置に関する情報を収集する。埋設物探査システム10は、例えば、台車11と、複数のレーダー探査装置21と、探査位置測定装置31とを有する。
台車11は、例えば、車輪12を有し、地面80の上を移動できる。台車11は、人力で移動させてもよいし、自動車などに牽引されて移動してもよいし、自走してもよい。
【0009】
レーダー探査装置21は、台車11に搭載され、台車11とともに移動する。レーダー探査装置21は、例えば、アンテナ22を有し、パルス状の電波を地中に向けて放射して、地中に埋設された埋設物81や埋設管82などの地中埋設物に当たって反射した電波を受信する。電波を放射してから受信するまでにかかった時間から、地中埋設物までの距離がわかる。アンテナ22は、送信アンテナと受信アンテナとに分かれていてもよい。
複数のレーダー探査装置21は、例えば、台車11が移動する方向とは異なる方向(好ましくは台車11の移動方向に対して垂直な方向)に一列に並べて配置されている。複数のレーダー探査装置21は、例えばそれぞれ異なる周波数の電波を送受信するなど、同時に探査しても混信しないよう構成されている。これにより、一列分のデータを同時に取得することができる。
なお、埋設物探査システム10は、複数のレーダー探査装置21を有するのではなく、台車11が移動する方向とは異なる方向に移動可能な一つのレーダー探査装置21を有してもよい。その場合、台車11の移動速度に対して相対的に速い速度でレーダー探査装置21を移動させることにより、複数のレーダー探査装置21を有する場合と同じように、一列分のデータを取得できる。
あるいは、埋設物探査システム10は、台車11が移動する方向とは異なる方向に移動可能な複数のレーダー探査装置21を有してよい。
【0010】
探査位置測定装置31は、台車11に搭載され、台車11とともに移動する。探査位置測定装置31は、台車11の移動によって移動するレーダー探査装置21の位置を測定する。探査位置測定装置31は、例えば、車輪12が回転した回数から台車11の移動距離を算出してもよいし、例えば加速度センサなどによって測定した加速度に基づいて台車11の移動方向や速度を算出してもよい。あるいは、全地球測位システム(GPS)受信機などの測位装置を用いて台車11の位置を測定してもよい。レーダー探査装置21が台車11に対して移動する場合、探査位置測定装置31は、台車11の絶対位置と、レーダー探査装置21の台車11に対する相対位置とから、レーダー探査装置21の絶対位置を算出してもよい。
【0011】
図2に示す埋設物位置推定システム40は、埋設物探査システム10が収集した情報に基づいて地中埋設物の位置を推定する。埋設物位置推定システム40は、例えばコンピュータであり、記憶装置が記憶したプログラムを処理装置が実行することにより、以下に説明する機能ブロックを実現する。埋設物位置推定システム40は、例えば、波形画像生成部41と、二次元位置推定部42と、三次元位置推定部43と、正解データ生成部44とを有する。
【0012】
波形画像生成部41は、埋設物探査システム10が収集した情報に基づいて、複数の波形画像を生成する。例えば、台車11の移動方向におけるレーダー探査装置21の位置にしたがって、レーダー探査装置21が受信した電波の強度パターンを分類し、台車11の移動方向におけるレーダー探査装置21の位置それぞれについて、波形画像を一つずつ生成する。それぞれの波形画像は、例えば、
図3に示すように、複数のピクセル(画素)が碁盤の目状に並んだビットマップ画像である。ピクセルの横方向における位置は、例えば、レーダー探査装置21が並んだ方向(あるいは、レーダー探査装置21が移動する方向)におけるレーダー探査装置21の位置を示す。ピクセルの縦方向における位置は、例えば、レーダー探査装置21が電波を送信してから受信するまでの遅延時間を示す。そして、ピクセルの輝度は、例えば、レーダー探査装置21が受信した電波の強度を示す。
【0013】
二次元位置推定部42は、波形画像生成部41が生成した波形画像に基づいて、地中埋設物の位置を推定する。二次元位置推定部42は、例えば、台車11の移動方向におけるレーダー探査装置21の特定の位置について波形画像生成部41が生成した一つの波形画像に基づいて、その特定の位置で地中を切断した断面における地中埋設物の位置(二次元位置)を推定する。
二次元位置推定部42は、この推定に畳み込みニューラルネットワークを用いる。畳み込みニューラルネットワークは画像処理に適した人工知能であり、畳み込みニューラルネットワークを用いることにより、地中埋設物の位置を精度よく推定することができる。
【0014】
三次元位置推定部43は、二次元位置推定部42が推定した地中埋設物の二次元位置に基づいて、地中埋設物の位置を推定する。三次元位置推定部43は、例えば、二次元位置推定部42が推定した複数の断面における地中埋設物の位置を集積することにより、特定の断面に依存しない三次元的な位置を推定する。
【0015】
正解データ生成部44は、二次元位置推定部42が用いる畳み込みニューラルネットワークに学習させるための正解データを生成する。例えば、正解データ生成部44は、掘削やマンホールの位置などから判明した埋設管の位置など、実際に地中埋設物がある位置を入力し、入力した位置に基づいて、二次元位置推定部42が地中埋設物の位置を推定した断面における実際の地中埋設物の位置を算出する。
そして、二次元位置推定部42は、正解データ生成部44が生成した正解データを畳み込みニューラルネットワークに学習させることにより、推定の精度を高める。
【0016】
三次元畳み込みニューラルネットワークを用いて、地中埋設物の三次元位置を直接推定するためには、特定の断面についての波形画像だけでなく、多数の断面についての波形画像を三次元畳み込みニューラルネットワークに入力する必要がある。しかし、三次元畳み込みニューラルネットワークは、入力するデータが大きいと、推定に必要な計算量が膨大になり、実用的ではない。
これに対し、地中埋設物の二次元位置を推定するためには、一つの波形画像だけを二次元畳み込みニューラルネットワークに入力すればよいので、計算量が少なくなる。これを断面の数だけ繰り返し、更に、推定した二次元位置から三次元位置を推定する処理を付け加えたとしても、三次元位置を直接推定する場合よりもはるかに少ない計算量で済む。したがって、推定処理にかかる時間を大幅に削減することができる。
【0017】
また、地中埋設物の三次元位置を直接推定できるよう三次元畳み込みニューラルネットワークに学習させるためには、三次元の正解データを作成する必要がある。地中埋設物の三次元位置を正しく推定できるようにするには、そのような正解データを多数用意する必要があり、非常に手間がかかる。したがって、地中埋設物の三次元位置を正しく推定できるようになるまでには、何回も探索を行う必要がある。
これに対し、地中埋設物の二次元位置を推定できるよう二次元畳み込みニューラルネットワークに学習させるためには、二次元の正解データを作成すればよく、正解データ作成の手間を削減できる。しかも、一回の探索に対して多数の断面についての正解データを作成できるから、地中埋設物の二次元位置を正しく推定できるようになるまでにかかる手間をかなり削減できる。
【0018】
このように、探査レーダーから得られた多数の断面図を分割し、単一の断面図それぞれ
を二次元データとして扱い、二次元データに対して学習および推論を行い、推論後の二次元データを合体し、もとの三次元構造に戻すことにより、動作が軽くなり、精度が高くなり、正解データの作成コストが低くなる。
【0019】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 埋設物探査システム、11 台車、12 車輪、21 レーダー探査装置、22 アンテナ、31 探査位置測定装置、40 埋設物位置推定システム、41 波形画像生成部、42 二次元位置推定部、43 三次元位置推定部、44 正解データ生成部、81 埋設物、82 埋設管。