(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128879
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ピーリング機構
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033529
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】522087154
【氏名又は名称】合同会社ポーラス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 喜彦
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA52
5F131BA53
5F131BA54
5F131CA09
5F131DA33
5F131DA53
5F131DB22
5F131DB42
5F131DB62
5F131DB72
5F131EA07
5F131EA14
5F131EA15
5F131EA22
5F131EA23
5F131EB01
5F131EB03
5F131EB63
5F131EC33
5F131EC72
5F131EC75
(57)【要約】
【課題】ダイシングテープをウェハから剥離する際に、折り返し部材がダイシングテープを介してウェハを押圧する、又はダイシングテープと接触して移動することで、ウェハを損傷する可能性がある点。
【解決手段】ピーリング機構1は、ウェハWを負圧吸引するウェハ側吸引ヘッド2と、(ダイシング)テープTを負圧吸引するテープ側吸引ヘッド3と、テープTがテープ側吸引ヘッド3の一方端部に押し付けられるように移動する剥離部5Bと、を備え、テープ側吸引ヘッド3が、ウェハWのテープTとの貼着面と平行な面を移動する構成とした。
【効果】テープTを折り曲げる部材を用いず、何ら(テープTを介して)ウェハWに接触する部材が存在しないので、ウェハWを損傷することがない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシング後のウェハからダイシングテープを剥離するピーリング機構であって、ウェハのダイシング側の面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたウェハ側吸引ヘッドと、ダイシングテープのウェハ貼着面とは反対面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたテープ側吸引ヘッドと、ダイシングテープが前記テープ側吸引ヘッドの一方端部に押し付けられるように前記ウェハと該ダイシングテープとの貼着面に対して直交する方向に移動する剥離部とを備え、前記テープ側吸引ヘッドが、ウェハに貼着した状態のダイシングテープと非接触位置において該ウェハの該ダイシングテープとの貼着面と平行な面を移動するピーリング機構。
【請求項2】
ダイシング後のウェハからダイシングテープを剥離するピーリング機構であって、ウェハのダイシング側の面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたウェハ側吸引ヘッドと、ダイシングテープのウェハ貼着面とは反対面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたテープ側吸引ヘッドと、ウェハとダイシングテープとの間に挿入され、かつウェハに接触することなく、ダイシングテープを前記テープ側吸引ヘッドに押し付けつつウェハと該ダイシングテープとが貼着されている方向に移動する分離部とを備えたピーリング機構。
【請求項3】
前記ウェハ側吸引ヘッドが、ウェハをダイシングした後の複数のウェハチップを一度に次工程に移送する請求項1又は2記載のピーリング機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープを剥離する際に、ウェハを傷つけたり、ウェハに対して間接的な接触圧力を加えたりすることのないピーリング機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリコンウェハは表面処理時に処理しない側の面の保護のために保護テープが貼着され、所定の処理後に、保護テープの裏面側に個片に切断(ダイシング)する際に個片(ウェハチップ)が移動しないようにダイシングテープが貼着され、ダイシング後に、ダイシングテープとウェハチップとを分離して、該ウェハチップを別工程へ移動させる。別工程とは、例えば、検査工程、出荷工程、製造工程などである。
【0003】
昨今のウェハチップは、大きさ(面積)も、厚みも極めて小さくなってきており、この傾向は今後も顕著となる見通しである。そのとき、前記極小のウェハチップを個別にダイシングテープから剥離し、かつ別工程に移載させることが困難になっていきている。
【0004】
例えば特許文献1(特開2001-345368号公報)、特許文献2(特開2008-270282号公報)には、それまでのニードルによってダイシングテープを突き破ってウェハチップを持ち上げることで両者を分離する方式において、ウェハチップを損傷する可能性があることを課題として、次の方法を提案している。
【0005】
すなわち、特許文献1は、複数のウェハチップが形成されダイシングテープが貼り付けられたシリコンウェハを、ダイシングテープを残してダイシングし、各ウェハチップのダイシングテープが貼り付けられた面の反対側の面を吸引固定し、ダイシングテープをウェハチップから剥離し、ウェハチップの吸引固定を解除すると共に、ウェハチップを拾い上げて搬送するウェハチップ剥離・搬送方法を提案している。
【0006】
特許文献2は、個片化されたシリコンウェハの裏面に接着剤を塗布する工程と、個片化されたシリコンウェハを、粘着性テープの剥離方向に対して、少なくとも2つの吸着エリアに分離された多孔質材からなるウェハ吸着部を備える保持テーブルに載置し、吸着エリアに対応して設けられた第1の吸引経路で吸引して吸着固定する工程と、粘着性テープの端部を引いて剥離する工程と、隣接する吸着エリア近傍の粘着性テープの一部が剥離されたときに、吸着エリアに対応する第2の吸引経路に切り換えてシリコンウェハを吸着固定する工程と、粘着性テープの剥離終了後に、保持テーブルと吸着コレットとを相対的に移動させ、ピックアップの対象となるウェハチップ上に吸着コレットを移動させる工程と、個々のウェハチップを吸着コレットで吸着してピックアップする工程とを具備した半導体装置の製造方法を提案している。
【0007】
しかしながら、特許文献1,2は、ダイシングテープのウェハチップから剥がした辺縁部を、折り返し部材を中心に、未だ貼着されている側に折り返して剥離する構成であったため、この折り返し部材がダイシングテープとウェハチップとを押圧して、両者の剥離を妨げる可能性があった。
【0008】
また、折り返し部材はダイシングテープ上(の貼着側)を擦りながら移動するから、上記のようにダイシングテープとウェハチップとを押圧して、両者の剥離を妨げる可能性があると共に、押圧することはないとしても少なくとも折り返し部材がダイシングテープに接触して該ダイシングテープを介してウェハチップを擦ることとなり、ウェハチップを損傷する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-345368号公報
【特許文献2】特開2008-270282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題は、従来は、ダイシングテープを、折り返し部材を中心に貼着側に折り返して剥離する構成であったため、ダイシングテープとウェハチップとを押圧して、両者の剥離を妨げる可能性があると共に、折り返し部材がダイシングテープを介してウェハチップを擦ることとなり、ウェハチップを損傷する可能性がある点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のピーリング機構は、ウェハのダイシング側の面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたウェハ側吸引ヘッドと、ダイシングテープのウェハ貼着面とは反対面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたテープ側吸引ヘッドと、ダイシングテープが前記テープ側吸引ヘッドの一方端部に押し付けられるように前記ウェハと該ダイシングテープとの貼着面に対して直交する方向に移動する剥離部と、を備え、前記テープ側吸引ヘッドが、ウェハに貼着した状態のダイシングテープと非接触位置において該ウェハの該ダイシングテープとの貼着面と平行な面を移動することを主要な構成とした。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明のピーリング機構は、ウェハのダイシング側の面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたウェハ側吸引ヘッドと、ダイシングテープのウェハ貼着面とは反対面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたテープ側吸引ヘッドと、ウェハとダイシングテープとの間に挿入され、かつウェハに接触することなく、ダイシングテープを前記テープ側吸引ヘッドに押し付けつつウェハと該ダイシングテープとが貼着されている方向に移動する分離部とを備えたことを主要な構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ダイシングテープを折り曲げる部材を用いず、よって折り曲げることなくウェハから剥離するので、ウェハをダイシングした後のウェハチップには何も接触せず、よってウェハチップを損傷することがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のピーリング機構の第1実施例構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明のピーリング機構の第1実施例構成を示す部分断面図である。
【
図3】(a)~(d)は本発明のピーリング機構の第1実施例構成においてダイシングテープの剥離状況を説明するための図である。
【
図4】本発明のピーリング機構の第2実施例構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明のピーリング機構の第2実施例構成を示す部分断面図である。
【
図6】(a)~(e)は本発明のピーリング機構の第2実施例構成においてダイシングテープの剥離状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ウェハが損傷しないようにダイシングテープを剥離するという目的を、ウェハのダイシング側の面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたウェハ側吸引ヘッドと、ダイシングテープのウェハ貼着面とは反対面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたテープ側吸引ヘッドと、ダイシングテープが前記テープ側吸引ヘッドの一方端部に押し付けられるように前記ウェハと該ダイシングテープとの貼着面に対して直交する方向に移動する剥離部とを備え、前記テープ側吸引ヘッドが、ウェハに貼着した状態のダイシングテープと非接触位置において該ウェハの該ダイシングテープとの貼着面と平行な面を移動する構成により達成した。
【0016】
また、本発明は、上記同目的を、ウェハのダイシング側の面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたウェハ側吸引ヘッドと、ダイシングテープのウェハ貼着面とは反対面を負圧吸引する、ポーラスプレートを用いたテープ側吸引ヘッドと、ウェハとダイシングテープとの間に挿入され、かつウェハに接触することなく、ダイシングテープを前記テープ側吸引ヘッドに押し付けつつウェハと該ダイシングテープとが貼着されている方向に移動する分離部とを備えた構成によっても達成できる。
【0017】
本発明において、ウェハをダイシングした後の個々を対象とするときはウェハチップというが、ダイシング後で未だダイシングテープに貼着された状態、又は後述ウェハ側吸引ヘッドによりダイシングテープが剥離されてもなお整列した状態の「ウェハチップ全体」のことを対象とするときは「ウェハ」ということとする。結果として、本発明の以下の説明では、ウェハチップと称することはない。また、本発明において、貼着方向とは、未だウェハとダイシングテープとが貼着されている方向を意味する。
【0018】
本発明は、ウェハをウェハ側吸引ヘッドで、ダイシングテープをテープ側吸引ヘッドで、各々負圧吸引しているので、ウェハから剥離したダイシングテープは捩れたり、皺になったりすることはなく、一方、ダイシング後のウェハは、ダイシングテープが剥離されても整列状態を保つことができる。
【0019】
また、テープ側吸引ヘッドは、剥離中、及び剥離後のダイシングテープを負圧吸引するから、剥離する力に抗してダイシングテープ(ウェハ)を押さえる必要がなく、ウェハに対してダイシングテープ以外の接触物がなく、かつ貼着面側から何らの圧力が加わることがない。よって、ダイシングテープの剥離時にウェハを(ダイシングテープを介して)擦ることがない。
【0020】
そして、請求項1の発明では、剥離部は、ウェハにおけるダイシングテープ貼着面に近づくことなく、また、ダイシングテープを介してウェハを押さえることなく、ウェハ載置位置から少し離れた位置において、ダイシングテープをウェハにおけるダイシングテープの貼着面と直交する方向に離間移動すると、ダイシングテープだけが前記同方向に傾斜状に引っ張られ、このときウェハからダイシングテープが剥離する。
【0021】
また、請求項2の発明では、分離部は、ウェハとダイシングテープとの間に挿入され、かつウェハに接触することなく、ダイシングテープをテープ側吸引ヘッドに押し付けつつウェハと該ダイシングテープとが貼着されている方向に移動すると、ダイシングテープだけがテープ側吸引ヘッドに吸引され、このときウェハからダイシングテープが剥離する。
【0022】
また、本発明は、上記構成において、前記ウェハ側吸引ヘッドが、ウェハをダイシングした後の複数のウェハチップを一度に次工程に移送する構成を付加してもよい。こうすることで逐一、しかもウェハチップ個片をノズルやコレットによって移動させる必要がなく、処理を高速化できる。
【実施例0023】
以下、
図1~
図6を参照して本発明の具体的実施形態について説明する。本発明のピーリング機構1は、第1実施例構成と第2実施例構成とされ、共通する部材について以下共通した参照符号を付し、後の重複する説明を省略する。
【0024】
本発明のピーリング機構1は、ダイシング後のウェハWからダイシングテープT(以下テープTという)を剥離するものである。そして、本発明に用いられるテープTは、個々の円形とされたものではなく、長尺反物状とされたものを巻き取ったロールを用いる。
【0025】
さらに、本発明のピーリング機構1は、後述のウェハ側吸引ヘッド2を使って、上流工程にあるウェハWをテープTが載置された後述のテープ側吸引ヘッド3に移載して該ウェハWとテープTとを貼着し、ウェハ側吸引ヘッド2をウェハW上方から退避移動させて、この代わりにダイシング機構(不図示)を位置させてウェハWのダイシングを行い、その後、再度ダイシング機構に代えてウェハ側吸引ヘッド2をウェハW上方に介入移動させて、ダイシング後のウェハWからテープTを剥離して、テープT剥離後のウェハWを複数一度に他工程に移載する、という処理、つまり、上流工程からの移載と、ダイシング処理と、ピーリング処理と、下流工程への移載を行うことができる。
【0026】
以下、第1実施例及び第2実施例では上記のうちウェハWからテープTを剥離して、テープT剥離後のウェハWを複数一度に他工程に移載する、という処理に特化した構成について説明する。
【0027】
(第1実施例)
図1~
図3に示す第1実施例のピーリング機構1は、次の構成とされている。2は、ウェハWのダイシング側の面を負圧吸引するウェハ側吸引ヘッドである。このウェハ側吸引ヘッド2は、図示する下面に形成された開口2aを除く他5面が閉塞した内部中空の筐体2Aと、開口2aに設けられた超微細孔のポーラスプレート2Bと、を備えている。
【0028】
筐体2におけるポーラスプレート2Bは、扱うウェハWの相対する面の全域を覆う大きさとされている。よって、筐体2Aは、下面においてポーラスプレート2Bが寸法上収まる大きさとされている。なお、厚みは特に限定しない。
【0029】
また、ウェハ側吸引ヘッド2は、筐体2Aの、ウェハ側吸引ヘッド2の移動に邪魔にならない一部に、不図示の吸引ポンプと接続したチューブ2bが接続されている。ウェハ側吸引ヘッド2は、吸引ポンプを駆動することでチューブ2bを介して筐体2の内部空気を吸引して負圧を発生させる。
【0030】
さらに、ウェハ側吸引ヘッド2は、筐体2の、ポーラスプレート2Bを設けた下面と反対面、つまり上面に該ウェハ側吸引ヘッド2全体を上下及び前後左右に移動させるための不図示の移動機構と接続された腕部2cが設けられている。
【0031】
3は、テープTにおけるウェハWの貼着面とは反対面(以下、この面を裏面という)を負圧吸引するテープ側吸引ヘッドである。テープ側吸引ヘッド3は、図示する上面に形成された開口3aを除く他5面が閉塞した内部中空の筐体3Aと、
図2(b)に詳細に示すように開口3aに設けられた超微細孔のポーラスプレート3Bと、を備えている。
【0032】
筐体3におけるポーラスプレート3Bは、扱うウェハWの相対する面の全域を覆う大きさとされている。よって、筐体3Aは、上面においてポーラスプレート3Bが寸法上収まる大きさとされている。なお、厚みは特に限定しない。
【0033】
また、テープ側吸引ヘッド3は、筐体3Aの、テープ側吸引ヘッド3の移動に邪魔にならない一部に、不図示の吸引ポンプと接続したチューブ3bが接続されている。テープ側吸引ヘッド3は、吸引ポンプを駆動することでチューブ3bを介して筐体3の内部空気を吸引して負圧を発生させる。
【0034】
なお、ウェハ側吸引ヘッド2とテープ側吸引ヘッド3との負圧は、ウェハ側吸引ヘッド2の方が高く設定している。つまり、ウェハ側吸引ヘッド2は、テープ側吸引ヘッド3より強く吸引するように設定している。
【0035】
さらに、テープ側吸引ヘッド3は、筐体3の、本例では例えばポーラスプレート3Bを設けた上面に対する下面中央に台車3cが設けられている。この台車3cには、ピーリング機構1の設置面と接触する下部に、前記上面に隣接する4側面における対向する2側面方向(以下、この方向を前後方向という)に移動させるための車輪3dが、前後方向と直交する側面に2輪ずつ設けられている。
【0036】
4は、本例では例えば上記台車3c及び設置面に設けられた移動機構である。この移動機構4は、テープ側吸引ヘッド3を前後方向に直線状に移動させ、かつ移動速度のコントロールを行うためのものである。移動機構4は、前後方向にその両端を配置した移動ねじ軸4Aと台車3c内に設けられ、移動ねじ4Aに螺着されたボールナット4Bと、移動ねじ軸4Aの一端(これを以下、後とする)とその出力軸とを接続したモータ4Cと、該移動ねじ軸4Aの他端(これを以下、前とする)と、出力軸側の一端を枢支した軸受4Dとにより構成されている。
【0037】
なお、テープ側吸引ヘッド3の前後方向への移動させる手法や構成は、上記に限定されないが、テープ側吸引ヘッド3を正確に前後方向に直線移動させることが条件となる。
【0038】
5は、テープTをウェハWから剥離する剥離機構である。第1実施例における剥離機構5は、前後方向における一方側にテープTの原反を枢支した枢支部5Aと、他方側にテープTの巻き取りと剥離とを行うための剥離部5B(剥離部材)とを有している。
【0039】
枢支部5Aは、テープTの原反をその軸部に枢支し、軸部5Aaの回転をロックさせることができるようになっている。枢支部5Aは、テープTをウェハWに貼着する際と、剥離する際には、軸部5Aaの回転をロックしてテープTが不用意に送り出されないように制御される。また、枢支部5Aは、テープ側吸引ヘッド3のテープ載置面とテープTの搬送面高さを維持するためのガイドローラ5Abを有している。
【0040】
剥離部5Bは、テープTの送り出し端部が設けられ、巻取軸5Baを回転させることでテープTの巻き取りができるようになっている。また、剥離部4Bは巻取軸5Baの両端の水平が維持され、該巻取軸5Baは両端部が同期して上下に移動するように軸部移動部5Cに支持されている。
【0041】
上記構成の第1実施例のピーリング機構1は、
図3に示すように動作する。ウェハWはテープ側吸引ヘッド3に載置されたテープTに貼着されて、ダイシングが行われた状態となっている。テープTは、枢支部5A及び剥離部5Bが共に該テープTの撓みがないように所定の張力が付与された状態で軸部5Aa、巻取軸5Baがロックされると共に、軸部移動部5Cがテープ側吸引ヘッド3のテープTの載置面高さとされている。
【0042】
図3(a)において、ウェハ側吸引ヘッド2を、ダイシング後のウェハWの全域がポーラスプレート2Bで覆われる水平位置に移動調整して、テープ側吸引ヘッド3に向けて下降させる。ウェハ側吸引ヘッド2は、テープ側吸引ヘッド3の上面に載置されているウェハWの上面で所定の間隔を存して下降を停止する。
【0043】
図3(b)において、ウェハ側吸引ヘッド2が所定位置まで下降した際に、筐体2A内部を負圧状態とする。筐体2Aが負圧状態になるとウェハWはテープTごと該ウェハ側吸引ヘッド2に吸引される。ウェハWがウェハ側吸引ヘッド2に吸引された後、
図3(c)に示すようにテープ側吸引ヘッド3の筐体3A内を負圧状態とする。
【0044】
図3(c)において、ウェハWがウェハ側吸引ヘッド2に吸引された後、剥離機構5における剥離部5Bの巻取軸5Baを軸部移動部5Cにより下降させると共に、移動機構4におけるモータ4Bを、テープ側吸引ヘッド3が移動ねじ軸4Aの一端側に移動するよう、つまり後退するよう回転駆動する。
【0045】
テープTは、ウェハ側吸引ヘッド2(に吸引されたテープTを介したウェハWの下面)とテープ側吸引ヘッド3との隙間と、該テープ側吸引ヘッド3の前端と、により、該テープ側吸引ヘッド3の前端を支点として、剥離部5Bの巻取軸5Baの下降に伴って傾斜状、つまりウェハWの下面に対して所定角度が生じ、この結果、ウェハWから少しずつ剥離されることとなる。なお、テープTの剥離時、ウェハWの下面にはテープT以外に、何らの接触物が存在しない。
【0046】
図3(d)において、剥離部5Bの巻取軸5Baが最下降し、かつテープ側吸引ヘッド3が最後退したとき、ダイシング後のウェハWの下面全域からテープTが剥離した状態となる。このとき、テープTの前側は、巻取軸5Baの下降により、ウェハWに再貼着しない位置にあり、一方、テープTの後側は、テープ側吸引ヘッド3の吸引により、ウェハW側に移動してしまうことがない。この後、ウェハ側吸引ヘッド2を上昇させて、該ウェハ側吸引ヘッド2を前後左右に移動させてウェハWを一度に全て、別の工程へ移載する。
【0047】
(第2実施例)
図4~
図6に示す第2実施例のピーリング機構1は、次の構成とされている。2は、ウェハWのダイシング側の面を負圧吸引するウェハ側吸引ヘッドであり、第1実施例と同じ構成である。第2実施例において、第1実施例と異なる構成は、テープ側吸引ヘッド3が前後方向に移動しないので台車3cの構成を有してなく、これに伴い移動機構4の構成も有していない点、及び剥離機構5が搬送機構6及び分離機構7に構成が変更されている点が異なっている。以下、説明する。
【0048】
6は、テープTの送り出しと巻きとりを行う搬送機構である。搬送機構6は、テープTの送り出し及び巻き取りの方向(以下、前後方向)における、一方端部(後側)にテープTの原反の軸部6Aaを枢支した枢支部6Aと、他方端部(前側)にテープTを巻き取る巻取軸6Baを枢支した枢支部6Bとを有している。
【0049】
枢支部6Aは、テープTをウェハWに貼着する際と、剥離する際には、軸部6Aaの回転をロックしてテープTが不用意に送り出されないように制御される。一方、枢支部6Bは、テープTの送り出し端部が設けられ、巻取軸6Baを回転させることでテープTの巻き取りができるようになっている。そして、枢支部6A,6Bには、共にテープ側吸引ヘッド3のテープ載置面とテープTの搬送面高さを維持するためのガイドローラ6Ab,6Bbを有している。
【0050】
7は、テープTとウェハWとを分離するための分離機構である。分離機構7は、テープ側吸引ヘッド3の上面と同高さ位置にその周面が位置する分離部7Aと、この分離部7Aの軸部両端を支持して該分離部7Aを前後方向に水平移動させる移動部7Bとからなる。
【0051】
また、分離部7は、本例では例えば外形が断面円状とされ、軸回転可能なように移動部7Bに水平移動可能に枢支されている。なお、分離部7の軸回転は、テープTとの粘着と前記水平移動による、つまり分離部7は自身で回転しないフリーの構成でもよいし、該分離部7が自身で回転して前記移動部7と連携して水平移動をする構成であってもよい。
【0052】
分離部7Aは、後述のとおり、ウェハ側吸引ヘッド2に吸引されたウェハW及びテープTの間を、前方から後方に移動部7Bにより移動することで、テープTをテープ側吸引ヘッド3側に分離して吸引させる。
【0053】
上記の第2実施例構成のピーリング機構1の動作について説明する。
まず、説明する直前の状態は、ダイシング後のウェハWがテープTに貼着された状態で、テープ側吸引ヘッド2上に載置されている。搬送機構6は、テープTに不要な張力を付与せず、かつ不要な弛みもない状態で、枢支部6Aの軸部6Aaと、枢支部6Bの巻取軸6Baが回転しないようロックされた状態となっている。また、分離機構7は、分離部7Aが前方、枢支部6B近傍位置でテープTの上面に接触した状態とされている。
【0054】
図6(a)において、ウェハ側吸引ヘッド2を、ダイシング後のウェハWの全域がポーラスプレート2Bで覆われる水平位置に移動調整して、テープ側吸引ヘッド3に向けて下降させる。ウェハ側吸引ヘッド2は、テープ側吸引ヘッド3の上面に載置されているウェハWの上面で所定の間隔を存して下降を停止する。
【0055】
図6(b)において、ウェハ側吸引ヘッド2が、ウェハWの上面と所定間隔を空けた位置まで下降した際に、筐体2A内部を負圧状態とする。筐体2Aが負圧状態になるとウェハWはテープTごと該ウェハ側吸引ヘッド2に吸引される。ウェハWがウェハ側吸引ヘッド2に吸引された後、テープ側吸引ヘッド3の筐体3A内を
図6(c)に示すように負圧状態とする。
【0056】
図6(c)(d)において、分離機構7における移動部7Bを駆動して、今、前方に位置する分離部7Aを枢支部6A方向(後方)へ移動させる。分離部7Aが、ウェハWの下面部位に位置すると、分離部7Aは、テープTをテープ側吸引ヘッド3方向に押し下げる。テープTは分離部7Aによって押し下げられると直ちにテープ側吸引ヘッド3のポーラスプレート3Bに吸引されて、ウェハWに再貼着することがない。
【0057】
また、分離部7Aは、テープ側吸引ヘッド3(テープTのウェハWとの貼着面)の高さで一定のまま前後に移動するだけなので、テープTをテープ側吸引ヘッド3側に押し下げることがあっても、ウェハWと接触することはない。
【0058】
図6(e)において、分離部7Aが、再後方まで移動したとき、ダイシング後のウェハWの下面全域からテープTが剥離した状態となる。このとき、剥離済みテープTは、テープ側吸引ヘッド3の吸引により、ウェハW側に移動してしまうことがない。この後、ウェハ側吸引ヘッド2を上昇させて、該ウェハ側吸引ヘッド2を前後左右に移動させてウェハWを一度に全て、別の工程へ移載する。
【0059】
なお、上記第1実施例、第2実施例においては、テープTについては長尺ロール状のものを用いる構成、すなわち、テープTを送り出したり、巻き取ったり、する構成、を要していたが、通常の円形のものであっても採用できる。
【0060】
テープTが円形の場合は、テープTを送り出したり、巻き取ったり、する構成に代えて、テープTの半径方向の直径対向するウェハWからはみ出した位置をクリップする構成を採用すればよい。このクリップする構成とは、ダイシング時にテープTの外周縁部に設けるリングを代用してもよい。この場合、第2実施例ではクリップする構成以外の変形はないが、第1実施例ではテープTのクリップ位置とウェハWとの間の該ウェハWからはみ出した位置を押し下げる部材(これが剥離部に相当)を設ければよい。
【0061】
このように、本発明のピーリング機構1は、第1実施例、第2実施例、いずれにおいてもダイシング後のウェハWからテープTを剥離する際に、何も接触する部材がなく、また、接触する部材が無いと共にウェハWの貼着面を擦ることがないので、ウェハWに疵をつけることがない。また、テープTの剥離後のダイシング後のウェハWを一括して移載することができるので、全体作業効率が向上する。